説明

高周波ユニット

【課題】小型化の促進が容易であると共に回路主要部分の不法改造を防止できる高周波ユニットを提供する。
【解決手段】高周波回路の配線パターンが設けられた配線基板1と、配線基板1上に実装された回路部品群と、配線基板1上に搭載されて回路部品群を覆う金属カバー4とを備えた高周波ユニットにおいて、金属カバー4の側板部11に配線基板1の上面との間に隙間を画成する切欠き11aを設けると共に、回路部品群のうち切欠き11aの近傍に配置される部品を一端部に接地用電極15aを有するチップ部品15とし、このチップ部品15を、その接地用電極15側の端面が近傍の切欠きに露出して他方の端面が該切欠きに背を向けた姿勢となるように実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板上の回路部品群が金属カバーで覆われている小型の高周波ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
配線パターンを有する配線基板の上面に回路部品群が実装されていると共に、この回路部品群を覆う金属カバーが配線基板上に搭載されている小型の高周波ユニットは、例えば通信や放送に使用される送受信ユニット等として好適である。この種の高周波ユニットにおいて、金属カバーは回路部品群を電磁的にシールドするシールドケースとして機能しており、矩形状等の平板部の周縁から側板部や脚部を垂設した形状の金属カバーが一般的である。
【0003】
例えば従来より、箱状に成形された金属カバーの側板部によって配線基板上の回路部品群が包囲されるように構成した高周波ユニットが広く知られている。しかしながら、このものは、金属カバーの側板部と接触する虞のない領域に回路部品を実装しようとすると必然的に実装スペースが狭くなってしまうので、所要の実装スペースを確保するために高周波ユニットを大型化しなければならないという不具合があった。
【0004】
また、四隅の脚部を残して側板部のほとんどを除去した金属カバーを用い、この金属カバーを各脚部を介して配線基板上に搭載した高周波ユニットも従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。このものは、脚部と脚部の間に比較的大きな開口部を生じさせることができるため、この開口部の近傍に回路部品を配置させても金属カバーと接触する虞がなくなり、配線基板上における回路部品群の実装スペースが広げやすくなっている。つまり、金属カバーの側板部が省略されていると、高周波ユニットの小型化が促進しやすくなる。
【特許文献1】特開2006−344812号公報(5−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように金属カバーの側板部が省略されていると、高周波ユニットの小型化には有利となるが、問題がないわけではない。すなわち、側板部を省略して金属カバーの側面領域に大きな開口部を生じさせると、この開口部を介して配線基板上の回路部品群が露出した状態になってしまうため、開口部の外方(金属カバーの側方)から半田ごて等の治具が差し込まれて高周波回路の主要部分が不法改造される虞があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化の促進が容易であると共に回路主要部分の不法改造を防止できる高周波ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、高周波回路の配線パターンが設けられた配線基板と、この配線基板上に実装された回路部品群と、前記配線基板上に搭載されて前記回路部品群を覆う金属カバーとを備えた高周波ユニットにおいて、前記金属カバーの側板部に前記配線基板の上面との間に隙間を画成する切欠きを設けると共に、前記回路部品群のうち前記切欠きの近傍に配置される部品を一端部に接地用電極を有するチップ部品となし、このチップ部品の前記接地用電極側の端面を前記切欠きに対峙させる構成とした。
【0008】
このように構成された高周波ユニットは、金属カバーの側板部の切欠きの近傍に実装したチップ部品を、その接地用電極側の端面が該切欠きに露出して他方の端面(信号用電極側の端面)が該切欠きに背を向けた姿勢となるように設定してあるため、切欠きを介して金属カバーの内部空間へ半田ごて等の治具を差し込んでも、該切欠きに対峙するチップ部品の信号経路に対して改造を行うことは困難であり、よって回路主要部分に対する不法改造を防止することができる。また、金属カバーの切欠きの近傍にチップ部品を配置させることによって、回路部品群の実装スペースを広げることができるため、高周波ユニットの小型化が促進しやすい。
【0009】
上記の構成において、チップ部品の接地用電極側の端面が金属カバーの切欠きと略重なり合う位置に配置されていると、回路部品群の実装スペースを一層広げることができて好ましい。
【0010】
また、上記の構成において、金属カバーの前記隙間の高さ寸法(切欠きの配線基板上面からの高さ寸法)が1ミリメートル以下に設定されていると、切欠きを介して金属カバーの内部空間へ半田ごて等の治具を差し込むことがほとんど不可能となるため、回路主要部分の不法改造を一層防止しやすくなる。
【0011】
また、上記の構成において、金属カバーが、配線基板の上面と所定の間隔を存して対向する放射導体板と、この放射導体板の給電部から配線基板側へ垂下して配線パターンに接続された給電導体部とを有するアンテナ素子であると、アンテナ一体型でコンパクトかつ安価な送受信ユニットが得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高周波ユニットは、金属カバーの側板部の切欠きの近傍に実装したチップ部品を、その接地用電極側の端面が該切欠きに露出して他方の端面が該切欠きに背を向けた姿勢となるように設定してあるため、切欠きを介して金属カバーの内部空間へ半田ごて等の治具を差し込んでも、チップ部品の信号経路に対して改造を行うことは困難である。それゆえ、この高周波ユニットは回路主要部分が不法改造される危険性が少ない。また、金属カバーの切欠きの近傍にチップ部品を配置させることによって、回路部品群の実装スペースを広げることができるため、この高周波ユニットは小型化の促進が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る高周波ユニットの一部破断平面図、図2は該高周波ユニットの側面図、図3は該高周波ユニットに用いられた金属カバーの斜視図である。
【0014】
図1と図2に示す高周波ユニットは、アンテナ一体型の送受信ユニットとして製造されたものである。この高周波ユニットは、上下両面に高周波回路の配線パターン(図示せず)が設けられて内層にグランドパターン(接地導体層)2が設けられた矩形状の配線基板1と、配線基板1の上面に実装されて前記配線パターンに接続されたチップ部品やIC等の回路部品群3と、配線基板1上に搭載されて回路部品群3を覆っている板金製の金属カバー4とによって主に構成されている。
【0015】
金属カバー4は、回路部品群3を覆う矩形状の金属平板である放射導体板5と、この放射導体板5の周縁から配線基板1側へ垂下する給電導体部6と短絡導体部7,8および保持導体部9,10と、これら各導体部6〜10を除く位置で放射導体板5の周縁に沿って延在する側板部11〜14とによって構成されている。図3に示すように、放射導体板5の一方の長辺に沿う側板部11は、長手方向一端側が給電導体部6と連続し他端側が保持導体部9と連続している折り曲げ片であり、この側板部11の下端部に切欠き11aが設けられている。放射導体板5の他方の長辺に沿う側板部12は、長手方向の一端側が短絡導体部8と連続し他端側が保持導体部10と連続している折り曲げ片であり、この側板部12の下端部に切欠き12aが設けられている。これら切欠き11a,12aによって、側板部11,12と配線基板1の上面との間にはそれぞれ隙間が画成されている。また、側板部13は放射導体板5の長手方向の一端側の短辺に沿って延在する折り曲げ片であり、側板部14は放射導体板5の長手方向の他端側の短辺に沿って延在する折り曲げ片である。これら側板部13,14の各下端部にも切欠き13a,14aが設けられているため、側板部13,14と配線基板1の上面との間にはそれぞれ隙間が画成されている。なお、各切欠き11a〜14aによって形成される前記各隙間の高さ寸法は、1ミリメートル以下に設定されていることが好ましい。
【0016】
金属カバー4の各導体部6〜10について説明すると、金属カバー4の長手方向の一端側の隅部2箇所に設けられた短絡導体部7,8の下端部はいずれもグランドパターン2に接続されており、一方の短絡導体部7の近傍に給電導体部6が設けられている。この給電導体部6の下端部は前記配線パターンの給電線路に接続されており、所定の高周波信号が給電導体部6を介して放射導体板5の給電部へ供給されるようになっている。金属カバー4の長手方向の他端側の隅部2箇所に設けられた保持導体部9,10の下端部はいずれも電気的に孤立した半田ランドに接続されているため、これら保持導体部9,10は電気的にオープンな状態に保たれている。このように各導体部6〜10の下端部がすべて配線基板1に固定されているため、放射導体板5は配線基板1と所定の間隔を存して対向する位置に安定的に支持されている。
【0017】
回路部品群3のうち、金属カバー4の切欠き11a〜14aの近傍に配置されている部品はすべて、一端部に接地用電極15aを有して他端部に信号用電極15bを有するチップ部品15である(図1参照)。各チップ部品15の接地用電極15a側の端面はその近傍に位置する切欠きと対峙しており、これらチップ部品15は、その接地用電極15a側の端面が切欠きに露出して他方の端面(信号用電極15b側の端面)が切欠きに背を向けた姿勢となるように実装されている。例えば、側板部11の切欠き11aの近傍に配置されているチップ部品15は、接地用電極15a側の端面を切欠き11aに露出させた姿勢で実装されており、その信号用電極15b側の端面を該切欠き11aを介して外部から目視することはほとんど不可能である。なお、各チップ部品15の接地用電極15aは配線基板1のグランドパターン2に接続されている。
【0018】
このように構成された高周波ユニットは、回路部品群3を覆う金属カバー4がグランドパターン2に接続されているため、この金属カバー4をシールドケースとして機能させることができる。また、金属カバー4の矩形状の放射導体板5は、その長手方向の一端側に短絡導体部7,8が垂設されて他端側が電気的にオープンな状態に保たれており、給電導体部6からの給電によってこの放射導体板5を励振させることが可能なため、金属カバー4を逆Fアンテナのアンテナ素子として動作させることができる。したがって、別部品のアンテナ素子とシールドケースを平面的に並べて配設する構成に比べると、小型化や低コスト化が図りやすく、コンパクトで安価なアンテナ一体型の送受信ユニットとなっている。
【0019】
また、この高周波ユニットでは、金属カバー4の側板部11〜14の切欠き11a〜14aに各チップ部品15の接地用電極15a側の端面が露出していることから、各チップ部品15の他方の端面(信号用電極15b側の端面)が近傍の切欠きに背を向けた状態になっている。そのため、これら切欠き11a〜14aを介して金属カバー4の内部空間へ半田ごて等の治具を差し込んでも、チップ部品15の信号経路に対して改造を行うことは困難であり、よって回路主要部分が不法改造される危険性は少ない。特に、各切欠き11a〜14aによって形成される前記各隙間の高さ寸法が、すべて1ミリメートル以下に設定されている場合には、金属カバー4の内部空間へ半田ごて等の治具を差し込むことが困難となるため、回路主要部分の不法改造が一層防止しやすくなる。
【0020】
また、この高周波ユニットは、金属カバー4の切欠き11a〜14aの近傍に各チップ部品15を配置させることによって、回路部品群3の実装スペースが広くなっているため、小型化が促進しやすくなっている。特に本実施形態例の場合、各チップ部品15の接地用電極15a側の端面を近傍の切欠きと略重なり合う位置に配置させているため、回路部品群3の実装スペースが極めて広くなっている。ただし、各チップ部品15の接地用電極15a側の端面を近傍の切欠きよりも若干内側に配置させて該切欠きと正対させてもよい。
【0021】
なお、上記実施形態例において、配線基板1の下面にグランドパターン2が設けられていてもよい。また、金属カバー4の形状も適宜選択可能であり、例えば側板部14の切欠き14aによる隙間を狭めることによって、アンテナ素子の電界領域に大きな容量が装荷されるようにしてもよい。さらに、上記実施形態例では、回路部品群3を覆う金属カバー4がアンテナ素子を兼ねている場合について説明したが、金属カバーがアンテナ素子を兼ねていない場合でも、本発明を適用することによって小型化の促進や不法改造の防止が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態例に係る高周波ユニットの一部破断平面図である。
【図2】該高周波ユニットの側面図である。
【図3】該高周波ユニットに用いられた金属カバーの斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 配線基板
2 グランドパターン
3 回路部品群
4 金属カバー
5 放射導体板
6 給電導体部
7,8 短絡導体部
9,10 保持導体部
11〜14 側板部
11a〜14a 切欠き
15 チップ部品
15a 接地用電極
15b 信号用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路の配線パターンが設けられた配線基板と、この配線基板上に実装された回路部品群と、前記配線基板上に搭載されて前記回路部品群を覆う金属カバーとを備えた高周波ユニットであって、
前記金属カバーの側板部に前記配線基板の上面との間に隙間を画成する切欠きを設けると共に、前記回路部品群のうち前記切欠きの近傍に配置される部品を一端部に接地用電極を有するチップ部品となし、このチップ部品の前記接地用電極側の端面を前記切欠きに対峙させたことを特徴とする高周波ユニット。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記チップ部品の前記接地用電極側の端面が前記切欠きと略重なり合う位置に配置されていることを特徴とする高周波ユニット。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記隙間の高さ寸法が1ミリメートル以下に設定されていることを特徴とする高周波ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記金属カバーが、前記配線基板の上面と所定の間隔を存して対向する放射導体板と、この放射導体板の給電部から前記配線基板側へ垂下して前記配線パターンに接続された給電導体部とを有するアンテナ素子であることを特徴とする高周波ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−277629(P2008−277629A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121119(P2007−121119)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】