説明

高周波ユニット

【課題】周辺部品の性能劣化や破壊を来たすことなく、また、シールド効果を損なうことなく、良好な放熱効果が得られる高周波受信ユニットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】電気回路が実装された回路基板5と、回路基板5を内包する、枠状のシールドケース1およびその開口部を覆うシールドカバー2を含む筐体と、その内面の一部を発熱部品61に接触させる放熱板25とを備え、放熱板25の周辺には、複数の切起し羽23が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波ユニットに関し、特に、周辺部品の性能劣化や破壊を生じることなく、また、シールド効果を損なうことなく、良好な放熱効果を得ることのできる高周波ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型集積化に伴い,高周波ユニットにおいても、その中身についてICの1チップ化が進んできた。多くの機能をICに集積すると、その部品の消費電力が大きくなり、発熱量も増加する。そのため、発熱に対する信頼性を高めるために、より効果的に放熱を行なうことが要求されていた。
【0003】
そこで、従来の電子機器においては、IC等の発熱部品6の温度上昇を抑制するために、たとえば図5に示すように、電子部品を電磁遮蔽するシールドケース1のシールドカバー2a,2bに、切込み22a,22bにより折曲片を形成し、この折曲片をICの上面に当接させて、発生した熱を伝熱により外部へ放出するようにしたものがある(たとえば特許文献1参照)。図6には、従来の高周波ユニットのシールドカバーを、それが取付けられる高周波ユニットの内側から見た構造が示されており、この図では、高周波ユニットのとく面に2つのF型コネクタ4a,4bが設けられた例が示されている。
【0004】
また、ケースに着脱可能に嵌合される金属製の枠体に、伝熱板部をばね機構を介して回線基板と平行に形成し、伝熱板部の当接面部を発熱部品に当接するようにした構造が、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2001−244689号公報
【特許文献2】特開2002−190684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に記載の構造では、折曲片22a,22bが発熱部品に確実かつ安定して当接させることが容易ではないために、放熱効果が期待できないおそれがある。また、放熱のためにシールドカバー2a,2bを設けることが必須であることから、シールドケースの構造が複雑になるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の構造では、シールドケースの一部またはシャーシの一部を発熱部品に接触させて放熱効果を得るものであるが、これだけで放熱効果を得られなかった場合は、シールドケースに穴をあけて、外部に熱が流れるようにする必要がある。しかしながら、放熱効果をあげようとして穴を大きくすると、シールド効果がなくなったり、シールドケースの強度が弱くなったりするという問題があった。あるいは、発熱する部品に、表面積を大きくしたアルミニウム等の放熱板を、別部品として取付ける必要があった。
【0007】
上記従来の問題点を解消するため、本発明は、周辺部品の性能劣化や破壊を来たすことなく、また、シールド効果を損なうことなく、良好な放熱効果が得られる高周波ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の高周波ユニットは、一つの局面においては、電気回路が実装された回路基板と、回路基板を内包する、枠状のケースおよびこのケースの開口部を覆うカバーを含む筐体とを備え、筐体の表面に複数の切起し羽を配設している。切起し羽は、筐体の外側に向かって切起しても、筐体の内側に向かって切起してもよく、また、切起し羽を筐体の内側および外側の両方に向かって切起してもよい。さらに切起し羽は、高周波ユニットが取付けられる親基板側は筐体内側に、親基板に対向する側は外側に向かって切起した構造とすることもできる。本発明の一実施形態においては、切起し羽の自由端が発熱部品側にある。また、切起し羽によって形成される孔の周長は、使用周波数のλ/4未満とすることができる。
【0009】
本発明の高周波ユニットは、他の局面においては、電気回路が実装された回路基板と、
前記回路基板を内包する、枠状のシールドケースおよびこのケースの開口部を覆うシールドカバーを含む筐体と、筐体の内面の一部を発熱部品に接触させる放熱板とを備え、放熱板の周辺に複数の切起し羽を配設している。放熱板と発熱部品との接触部の一部は露出していてもよい。また、回路基板の発熱部品が搭載される部分の反対側の面に当接するように、筐体の内面の一部を切起して発熱部品に接触させた、もう一つの放熱板を備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係る高周波ユニットによれば、回路基板にシールドケースまたはシールドケースとシールドカバーを取付けた構造を有する高周波ユニットに対し、シールドケースまたはシールドカバー本体平面部より根元部を残して切り離し、その根元部で折り曲げられた舌片の周辺に切起した羽を形成することにより、シールドカバーの空気にふれる面積を減らすことなく、筐体の放熱効果を向上することができる。また、筐体とは別体の放熱板等の付加材料を用いることなく放熱構造が得られ,材料費や作業費の削減が可能である。また、放熱効果を高めることにより、部品の発熱を抑えることによって、部品本体の性能劣化や破壊等が防ぐことができるだけでなく、周辺部品の性能劣化や破壊も防ぐことができ、信頼性の向上が図れる。また、シールド効果を損なうことなく、放熱効果が得られる。
【0011】
また、高周波ユニットの近くにファンなどの空気を対流させるものがあれば、その空気の流れを切起し羽によって出来る孔から高周波ユニット内部に取り込み、内部の空気を対流させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態では、衛星放送受信用チューナに内蔵された高周波ユニットに本発明を適用した場合について説明する。高周波ユニットの概略構成は、上記従来技術の説明に用いた図5に示すように、電気回路が実装された回路基板5と、この回路基板に取付けられた枠状のシールドケース1とを備えている。このシールドケース1を覆うシールドカバー2a,2bが、シールドケース1の開口部を覆うように、図5中の一点鎖線の矢印の上下方向から被せられて構成される。シールドケース1の内側においては、ブロック間のシールドのためのシールド板3が設けられている。また、シールドケース1の一つの側面には、F型コネクタ4が配設されている。
【0013】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1について、図1に基づいて説明する。実施形態1においては、図1に示すように、シールドカバー2に切込み22を設けて、この切込み22の水平部分である放熱板25を、回路基板5上に形成された電子部品61の上面に当接させている。また、シールドカバー2の一部を上方に切起して、複数個の切起し羽23を設けている。このように、切起し羽23を設けることにより、シールドケース1の内部で発生した熱がシールドカバー2に伝わり、切起し羽23を形成することにより開口されたシールドカバーの穴が、シールドケース1の内外の空気の流通を可能とする。したがって、切起し羽23を設けることにより、放熱面積が大きくなり、放熱効果を向上させることができる。
【0014】
なお、上記実施形態1においては、放熱板25と切起し羽23とを併用した構造を示したが、放熱25を有することなく、シールドカバー2に複数の切起し羽23のみを設けることによっても、放熱効果が得られることは言うまでもない。
【0015】
上記実施の形態1の変形例として、図2に示すように、切起し羽24をシールドカバーの下方に向かって切起してもよい。また、図2に示す切起し羽24aのように、発熱部品一部の切起し羽24をシールドカバーの上方に切起したものを併用してもよい。このような切起し羽24は、発熱部材が、図2に示す電子部品62のように、シールドカバー2の下面に近接する高さを有する場合に、電子部品62に接触しないように設けることできるという点で、有効である。
【0016】
また、図2に示す電子部品63のように、その上端が、電子部品お62に比べるとシールドカバー2の下面からは離れているものの、シールドカバー2を切起した切起し羽24bが周辺部品に接触するおそれがある場合は,その切起し羽24bの切起し羽角度をより小さくすることによって調整することができる。
【0017】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図3を用いて説明する。図3に示された高周波ユニットは、回路基板5の上面に装着された電子部品61の上面に、上側シールドカバー30を下方に切起して形成された放熱板25aが当接している。また、回路基板5には、電子部品61のほぼ中央下方の位置に、貫通孔5aが設けられ、回路基板5の下面には、下側シールドカバー31を上方に切起して形成された放熱板25bが当接している。下側シールドカバー31の下面が、端子を介して、高周波ユニットを取付けるセットのマザーボード7に取付けている。上側シールドカバー30には、上側に切起した切起し羽30aが形成され、下側シールドカバー31には、切起し羽30bが、マザーボード7に当たらないように、上側に切起して形成されている。本実施形態の高周波ユニットの側部には、F型コネクタ4aが取付けられている。本実施の形態の構造によれば、回路基板5の上下両面から放熱板25a,25bが当接し、上下シールドカバー30,31の双方に複数の切起し羽30a,31bが設けられていることから、さらに放熱効果が向上する。貫通孔5aは、電子部品61の下面の基板パターンと、回路基板5の裏面のパターンとを伝kk的に接続するためのスルーホールとしても利用することができる。
【0018】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について、図4を用いて説明する。図4は、実施形態3におけるシールドカバーを、それが取付けられる高周波ユニットの下側から見た図である。本実施形態においては、図4に示すように、シールドカバーに形成された放熱板25の隣接する2辺の側から取り囲むように、シールドカバーに、複数列の切起し羽26が設けられている。この切起し羽26の配列位置を、その自由端26aが放熱板25に近くなるように設けることにより、より高い放熱効果を得ることが可能である。その理由は、次のとおりである。まず、自由端を熱源(発熱部品及び発熱部品の放熱板)に向けることにより、熱源から空間を通して伝導する熱が自由端に伝わって、シールドカバー全体に拡散する。また、自由端が熱源に近いということは、切り起し羽によって出来た開口も熱源の方向を向いていることになり、発熱によって温まった空気の放熱が向上し、全体の放熱効果が高まる。
【0019】
以上述べた構造は、切り起し羽を筐体の内側に向かって切り起した場合であるが、筐体の外側に向かって切り起した場合においても、筐体の外部にファン等の冷却装置を備えることにより、同様の効果を奏することができる。
【0020】
また、放熱板25の発熱部品と接触する部分には、図4に示すように、貫通孔27が設けられている。この貫通孔27により、放熱板25が発熱部品に確実に接触しているかどうかの視認が可能となる。
【0021】
本実施形態の一変形例として、切起し羽26をうろこ状、すなわち、たとえば半円状などの角がない形状に形成してもよい。切起し羽26をうろこ状に形成することにより、製造工程において引っ掛かりが生じないために作業がし易く、また、シールドカバーを形成するための金型の磨耗を少なくすることができるという利点がある。
【0022】
シールドカバーに切起し羽26を形成したことによりできる開口の最大径(開口が円の場合には直径)は、高周波ユニットで使用される高周波の波長をλとしたときに、λ/4未満にしてもよい。このように、シールドカバーに切起し羽26を形成したことによりできる開口の最大径をλ/4未満にすることにより、高周波のシールド効果を損なうことなく、放熱効果を向上させることができる。その理由は、次のとおりである。
【0023】
本発明が適用される高周波ユニットは、具体的には衛星放送受信用チューナを想定しており、その使用周波数は950MHz〜2150MHzである。シールドすべき対象の最高周波数を、たとえば3000MHzとすると、そのλ/4は、
λ=(c/f)/4
=(3×108[m/s]/3000×106[Hz]/4
=0.025m(2.5cm)となる。そのため、開口部の最大直線距離が2.5cm未満(厳密には2.5cmに対して無視できる値)であればシールド効果が損なわず、開口による放熱効果が向上する。
【0024】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1の高周波ユニットの内部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の高周波ユニットの一変形例の内部構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態2の高周波ユニットの内部構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態3におけるシールドカバーを、それが取付けられる高周波ユニットの下側から見た図である。
【図5】従来の実施形態の高周波ユニットのシャーシ構造の外観を示す分解斜視図である。
【図6】従来の高周波ユニットのシールドカバーを、それが取付けられる高周波ユニットの内側から見た図である。
【符号の説明】
【0026】
1 シールドケース、2a,2b シールドカバー、3 シールド板、4a,4b F型コネクタ、5 回路基板、5a 貫通穴、23,24,24a,24b,26,30a,31a 切起し羽、25,25a,25b 放熱板、30 上側シールドカバー、31 下側シールドカバー、61,62,63 電子部品(発熱部品)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路が実装された回路基板と、
前記回路基板を内包する、枠状のケースおよびこのケースの開口部を覆うカバーを含む筐体とを備え、
前記筐体の表面に複数の切起し羽を配設した、高周波ユニット。
【請求項2】
前記切起し羽を、筐体の外側に向かって切起した、請求項1に記載の高周波ユニット。
【請求項3】
前記切起し羽を、筐体の内側に向かって切起した、請求項1に記載の高周波ユニット。
【請求項4】
前記切起し羽を筐体の内側および外側に向かって切起した、請求項1に記載の高周波ユニット。
【請求項5】
前記切起し羽は、高周波ユニットが取付けられる親基板側は筐体内側に、親基板に対向する側は外側に向かって切起した、請求項1に記載の高周波ユニット。
【請求項6】
前記切起し羽の自由端が発熱部品側にある、前記1〜5のいずれかに記載の高周波ユニット。
【請求項7】
前記切起し羽によって形成される孔の周長が、使用周波数のλ/4未満である、請求項1〜6のいずれかに記載の高周波ユニット。
【請求項8】
電気回路が実装された回路基板と、
前記回路基板を内包する、枠状のシールドケースおよびこのケースの開口部を覆うシールドカバーを含む筐体と、
前記筐体の内面の一部を発熱部品に接触させる放熱板とを備え、
前記放熱板の周辺に複数の切起し羽を配設した、高周波ユニット。
【請求項9】
前記放熱板と前記発熱部品との接触部の一部が露出している、請求項8に記載の高周波ユニット。
【請求項10】
電気回路が実装された回路基板と、
前記回路基板を内包する、枠状のシールドケースと、このシールドケースの開口部を覆うシールドカバーとを含む筐体と、
前記筐体の内面の一部を切起して発熱部品に接触させた第1の放熱板と、
前記回路基板の前記発熱部品が搭載される部分の反対側の面に当接する、前記筐体の内面の一部を切起して発熱部品に接触させた第2の放熱板とを備える、高周波ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−212452(P2009−212452A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56430(P2008−56430)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】