説明

高周波加温バルーンカテーテル

【課題】バルーン内の対流熱による上下間温度格差を確実に解消でき、バルーンと接触する組織を均一に至適温度で加温して、患部を安全に温熱治療する高周波バルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】高周波加温バルーンカテーテルは、外筒シャフト(1)と内筒シャフト(2)とからなるカテーテルシャフト(3)と、膨張した状態で標的病変部(41)に接触可能な形状を有する外筒シャフトの先端部と内筒シャフトの先端部近傍との間に設置されたバルーン(4)と、高周波電力を伝送可能なバルーンの壁内又はバルーン内に配設された高周波通電用電極(6)と、高周波通電用電極に電気的に接続されるリード線(7)と、バルーン内の温度をモニター可能な温度センサー(8)と、バルーン内に導入された流体内に対流熱によりバルーン内の上下間に形成される上下間温度格差を解消するように、前記バルーン内の流体を前記上下間で旋回させ渦を形成する渦形成手段(12:16、20)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波加温バルーンカテーテルに係り、特に循環器疾患を治療するために用いられる高周波温熱治療用のバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈発生源や動脈硬化等の病変に対して、収縮自在なバルーンの内部に高周波通電用電極を配設し、ここから高周波電界を放射してバルーンと接触する組織を加温し治療する方法が提案されている(例えば、本出願人による特許第2538375号、特許第2510428号、特許第2574119号公報、米国特許No.6,491,710B2号公報)。
【0003】
高周波電界を放射してバルーンと接触する標的組織を適正に加温し治療するためには、標的組織の電気的状態を把握する必要がある。
【0004】
従来、標的組織の電気的状態を把握する方法としては、バルーンアブレーション用カテーテルと診断用電極カテーテルとは別々の装置として構成され、バルーンによるアブレーション(焼灼)の前後で診断用電極カテーテルを使用して心内電位の記録をおこなっていた。診断用電極カテーテルとしては、例えばバスケット型やラッソ環状型等の電極が知られている。
【0005】
しかしながら、バルーンアブレーションの前後で診断用電極カテーテルを使用して心内電位の記録を行う場合では、アブレーション中の電位変化がわからないという問題がある。
【0006】
そこで、アブレーション中の標的組織の電気的状態を把握する第1の方法として、アブレーション用の電極とは別に、高周波加温バルーンカテーテルの内筒シャフトの先端部に付属電極を設け、この付属電極によって標的組織の電気的状態を検出することが試みられている。
【0007】
また、アブレーション中の標的組織の電気的状態を把握する第2の方法として、アブレーション用の電極とは別に、極細環状の電極カテーテルを高周波加温バルーンカテーテルの内筒シャフト内に挿入し、この極細環状の電極カテーテルによって標的組織の電気的状態を検出することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−102850号公報
【特許文献2】特開2005−177293号公報
【特許文献3】特開2003−210590号公報
【特許文献4】特開2005−000654号公報
【特許文献5】特開2003−235821号公報
【特許文献6】特開2003−230635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、付属電極を用いる第1の方法では、バルーンの前端部から離れた位置にある内筒シャフトの前端にある部位に、内筒シャフトにコイル状に直接的に巻かれて設置されているため、付属電極の位置が標的組織から半径方向に距離があり焼灼部位の詳細な電位記録ができないという問題があった。また、電極がコイル状である等のために、熱伝導や電磁結合により付属電極が加熱され付属電極の表面に血栓が形成され塞栓症をおこす危険があるという問題があった。
【0010】
また、極細環状電極カテーテルを用いる第2の方法では、次のような問題があった。高周波加温バルーンカテーテルの内筒シャフトは細く形成されているものであり、内筒シャフト内に極細環状電極カテーテルを挿入しているために、極細環状電極カテーテルに加えて、内筒シャフト内にガイドワイヤを挿通することができない。このために、バルーンが膨張した状態で標的病変部に接触する状態を内筒シャフトの前端から突出するガイドワイヤを用いて十分に支持する手法を採用することができない。一方、極細環状電極カテーテルは細く曲がりやすく、ガイドワイヤの代役を務めることができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解消し、内筒シャフト内にガイドワイヤを挿通させてガイドワイヤを使用することを可能にするとともに、アブレーション中の標的組織の電位等の電気的状態を把握することを可能にする高周波加温バルーンカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の高周波加温バルーンカテーテルは、ガイドシース内に押し入れて使用される高周波加温バルーンカテーテルであって、外筒シャフトと内筒シャフトとからなるカテーテルシャフトと、膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有する前記外筒シャフトと前記内筒シャフトとの間に設置されたバルーンと、高周波電力を伝送可能な前記バルーンの壁内又はバルーン内に配設された高周波通電用電極と、前記バルーン内の温度をモニター可能な温度センサーと、前記内筒シャフト内に挿通され前記内筒シャフトの前端部から突出するガイドワイヤーと、前記バルーンの前方に位置する前記内筒シャフトのバルーン近接部位に取り付けられ、前記バルーンが膨張した状態で前記標的病変部の近傍部の電位をモニター可能なモニター用電極と、を備え、前記モニター用電極は、前記内筒シャフトの外側回りに配設され、前記ガイドシース内にある拘束状態から抜け出ると前記内筒シャフトの軸心に直交する方向に展開可能である1本以上の電気的に絶縁被覆された針金部材と、前記1本以上の針金部材の各々の針金部材に取り付けられ前記標的病変部近傍の電位を検出する電極部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、前記バルーンの前方の前記内筒シャフトに固定して設けられ、前記1本以上の針金部材の各々の針金部材の後方側端部が取り付けられる電気的絶縁性の後方電極保持部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記後方電極保持部の前方の前記内筒シャフト上に、前記内筒シャフトの軸心方向にスライド可能に設けられ、前記1本以上の針金部材の各々の針金部材の前方側端部が取り付けられる電気的絶縁性の前方電極保持部を備え、前記前方電極保持部が後方側へスライドして前記モニター用電極が展開する
ことを特徴とする。
【0015】
また、前記内筒シャフトに接する前記前方電極保持部の面は、断面視において前記内筒シャフトの軸方向の周面に対して弓状の曲面に形成されている
ことを特徴とする。
【0016】
また、前記針金部材は、弓状に展開可能であり、前記電極部は前記針金部材の中間部に設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、前記針金部材は、先端部が自由端であって、釣鐘状に展開可能であり、前記電極部は前記針金部材の前記前方側端部に設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、前記後方電極保持部は前記バルーンの外側にあることを特徴とする。
【0019】
また、前記後方電極保持部は前記バルーンの内側にあることを特徴とする。
【0020】
また、前記針金部材は形状記憶合金からなることを特徴とする。
【0021】
また、前記1本以上の針金部材の本数は1本乃至10本のいずれかである
ことを特徴とする。
【0022】
また、前記電極部は、1個乃至10個の電極ユニットからなることを特徴とする。
【0023】
また、前記電極部は、前記カテーテルシャフトを介して体外電位測定器に接続され、1個乃至10個の電極ユニットからなることを特徴とする。
【0024】
また、前記バルーン後方側の前記カテーテルシャフトに第2のモニター用電極を備えることを特徴とする。
【0025】
また、前記モニター用電極と前記第2モニター用電極との間に微小直流電流を流し電極間インピーダンスの変化を測定するインピーダンス測定器が外部に接続されていることを特徴とする。
【0026】
また、前記モニター用電極と前記第2モニター用電極との間に交流と直流を分離する信号分離器が外部に接続され、前記信号分離器にバルーン周囲電位を測定するバルーン電位測定器と前記直流インピーダンスとが接続され、電極間インピーダンスと前記バルーン周囲電位とを同時に記録してアブレーションの進行度合を測定可能であることを特徴とする。
【0027】
また、前記1本以上の針金部材は複数本の針金部材であり、前記複数本の針金部材の各々の針金部材は弓状に展開し、全体でバスケット状に展開可能であり、展開した前記複数本の針金部材は、膨張した状態の前記バルーンが標的病変部を支持することを補助するように、標的病変部の近傍部位を支持可能に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
モニター用電極は前記バルーンの前方側端部に近接する前記内筒シャフトのバルーン近接部位に取り付けられているので、内筒シャフトへのガイドワイアーの挿入が妨げられないので、バルーンをガイドワイアーを用いて至適部位へ導入し支持することができる。
【0029】
この結果、内筒シャフト内に挿通され内筒シャフトの前端部から突出するガイドワイヤーによって、膨張した状態で標的病変部に接触するバルーンを支持することができるとともに、バルーンの前方側端部に近接する内筒シャフトのバルーン近接部位に取り付けられたモニター用電極によって、バルーンが膨張した状態で標的病変部の近傍部の電気的状態をモニターし、アブレーション中の標的病変部の電気的状態を把握することが可能になる。
【0030】
また、モニター用電極は、高周波通電用電極やガイドワイアーから離れた部位に位置することになるので、高周波通電中も電磁結合や熱伝導による血栓形成を生じないようにすることができる。
【0031】
また、前記バルーンの前方側端部の前記内筒シャフトの部位に固定して後方電極保持部を設けたので、モニター用電極を確実に内筒シャフトのバルーン近接部位に取り付けることが可能になる。
【0032】
また、前方電極保持部を備えるので、前記前方電極保持部が後方側へスライドして前記モニター用電極を確実に展開することができる。
【0033】
また、弓状に展開された複数の針金部材は内藤シャフトの周囲にバスケット状に配置されることによって、針金部材は内側から肺静脈等の組織を支えることができ、バルーンを標的病変部に保持することに対する助けとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第1の実施形態を示す図であり、高周波バルーンカテーテルによる肺静脈口周囲心房側を焼灼する例を示す。
【図2】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第1の実施形態におけるモニター用電極を示す図。
【図3】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第1の実施形態における前方電極保持部の断面を説明する図。
【図4】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第1の実施形態を示す図であり、モニター用電極がガイドシースから抜けている状態を示す。
【図5】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第2の実施形態を示す図であり、モニター用電極がイドシース内にある状態を示す。
【図6】バルーンカテーテルの振動伝播偏向手段を示し、図5のC−Cにおける断面図。
【図7】本発明の高周波加温バルーンカテーテルの第2の実施形態を示す図であり、モニター用電極が挿入シース内にある状態を示す。
【図8】高周波バルーンカテーテルによる肺静脈口周囲心房側の患部を焼灼することを示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に本発明に係る肺静脈高周波加温バルーンカテーテルの実施の形態を添付した図面を参照して説明する。以下の説明において、「前方」とは、高周波加温バルーンカテーテル1いおいて、ガイドワイヤー9の先端部がある側をさし、「外方」とは、操作者によって扱われる側をさす。
【0036】
まず、本願発明の第1の実施形態について説明する。
図1及び図2において、高周波加温バルーンカテーテル1は、外筒シャフト1と内筒シャフト3とからなるカテーテルシャフト4と、膨張した状態で標的病変部5に接触可能な形状を有する外筒シャフト2の先端部と内筒シャフト3の中間部との間に設置されたバルーン6と、高周波電力を伝送可能なバルーン6内に配設された高周波通電用電極7と、バルーン6内の温度をモニター可能な温度センサー8と、内筒シャフト3内に挿通され内筒シャフト3の前端部から突出するガイドワイヤー9と、バルーン6の前方側端部に近接する内筒シャフト3のバルーン近接部位3aに取り付けられ、バルーン6が膨張した状態で標的病変部6の近傍部10の電位等の電気的状態をモニター可能なモニター用電極11とを備えている。なお、モニター用電極11は、バルーン6の前方側端部に近接する内筒シャフト3のバルーン近接部位3aに取り付けられるとしたが、バルーン6の前方であればバルーン6の前方側端部に限る必要はない。以下も同様である。
【0037】
モニター用電極11は、内筒シャフト3の外側回りに配設され、ガイドシース12内にある拘束状態から抜け出ると内筒シャフト3の軸心に直交する方向に展開可能である1本以上の針金部材13と、1本以上の針金部材13の各々の針金部材13に取り付けられ標的病変部5の近傍部10の電位を検出する電極部14とを有する。
【0038】
バルーン6の前方側端部の内筒シャフト3の部位に後方電極保持部15が固定して設けられており、後方電極保持部15は針金部材13の後方側端部が取り付けられ電気的絶縁性に形成されている。後方電極保持部15は、バルーン6の外側にバルーン6に接して設けられている。なお、後方電極保持部15をバルーン6の内側にバルーン6に接して設けることも可能である。
【0039】
前方電極保持部16が、内筒シャフト3の軸心方向にスライド可能に、後方電極保持部15の前方側の内筒シャフト3に設けられている。前方電極保持部16には、針金部材13の前方側端部が取り付けられている。前方電極保持部16は電気的絶縁性である。
【0040】
このように、針金部材13の後方側端部が後方電極保持部15に取り付けられ、針金部材13の前方側端部が前方電極保持部16に取り付けられている。
【0041】
モニター用電極11において、針金部材13の本数は、1〜10本、例えば4本である。1本の針金部材13には、1〜10個の電極部14が設けられている。図1に示す例では、1本の針金部材13に1個の電極部14が針金部材13の中央部に設けられている。なお、複数個、例えば2〜10個の電極部14を1本の針金部材13に設けることも可能であり、この場合には、標的病変部5の近傍部10の電気状態をより高精度に把握することが可能になる。
【0042】
内筒シャフト3に接する前方電極保持部16の面は、滑り易くするために、図3に示すように、断面視において内筒シャフト3の軸方向の周面に対して弓状の曲面に形成されている。
【0043】
図4において、モニター用電極11の針金部材13は、形状記憶合金で形成されており、ガイドシース12内にあるときには拘束力を受けで直線状の形状を保ち、ガイドシース12から抜け出ると予め記憶された形状になるように変形し内筒シャフト3の軸心に直交する方向に展開する。
【0044】
モニター用電極11の針金部材13が複数の場合に、展開された複数の針金部材13はバスケット状に配置される。
【0045】
なお、針金部材13を形状記憶合金で形成する代わりに、適度な弾性を有する金属材で形成し、ガイドシース12内にあるときは弾性力に抗して拘束状態にあり、拘束状態から抜け出ると弾性力によって自動的に内筒シャフト3の軸心に直交する方向に展開するようにしてもよい。
【0046】
図4において、前方電極保持部16が後方側へスライドして、図1に示すようにモニター用電極11が弓状に展開する。
【0047】
モニター用電極11は、ガイドシース12から抜け出ると、針金部材13を形成する形状記憶合金の特性に従って、針金部材13を形成する金属材の弾性特性に従って、前方電極保持部16が後方側へスライドするとともに針金部材13が弓状に展開する。この状態で、図1に示すように、針金部材13の中央部にある電極部14が標的病変部5の近傍部10に接触し、近傍部10の電位をリング状に分布する部位を検出することによりバルーン6で焼灼中の標的病変部5の電位等の電気的状態を把握することが可能になる。
【0048】
また、弓状に展開された複数の針金部材13は内藤シャフト3の周囲にバスケット状に配置されることになり、これによって、複数の針金部材13は内側から肺静脈等の組織を支えることができ、バルーン6を標的病変部5に保持することに対する助けとすることができる。
【0049】
また、バルーン6の後方側のカテーテルシャフト4の外筒シャフト2に第2のモニター用電極17が設けられている。モニター用電極11と前記第2モニター用電極との間にバルーン6が位置する。第2のモニター用電極17は、モニター用電極11に対してバルーン6を挟んでバルーン6に近接して位置するために、バルーン6による標的病変部5の焼灼による電位等の電気的状態をモニターする上で、非常に好適な基準電位を与えることができる。
【0050】
モニター用電極11と第2モニター用電極17との間に微小直流電流を流し電極間インピーダンスの変化を測定するためのインピーダンス測定器31が外部で接続されている。
【0051】
また、モニター用電極11と第2モニター用電極17との間に交流と直流を分離する信号分離器33が接続されている。信号分離器33には、インピーダンス測定器31とバルーン6の周囲電位を測定するためのバルーン電位測定器32が接続されている。これによって、モニター用電極11と第2モニター用電極17との間の電極間インピーダンスとバルーン周囲電位とを同時に記録し、アブレーションの進行度合を測定することが可能になる。
【0052】
また、高周波通電用電極7には、カテーテルシャフト4を介して高周波発生器30によって高周波電力が供給される。
【0053】
また、高周波バルーンカテーテル1による標的病変部5をアブレーション(焼灼)するに際し、高周波バルーンカテーテル1は内筒シャフト3の前端部から突出するガイドワイヤー9を備えているので、ガイドワイヤー9を患部の近傍に当接してバルーン6を支持することができ、バルーン6と標的病変部5との接触を適正に行うことができる。
【0054】
図8は高周波バルーンカテーテル1による肺静脈口周囲心房側の患部をアブレーション(焼灼)することを示す。
【0055】
バルーン6内を外筒シャフト2の注入口より何度も図示しない注射器により生理食塩水で注入吸引をくりかえして、空気抜きを行う。高周波バルーンカテーテル1を血管に挿入時はバルーン6を収縮させながら内筒シャフト3をスライドさせて前方に限界まで押し出す。このとき内筒シャフト3の前方部と外筒シャフト2の先端部の間がひろがるので、バルーン6の径は最小となる。この状態で、前方にモニター用電極11のついたバルーン6を大腿静脈内へガイドワイヤー9とガイドシース12を用いて挿入する。高周波バルーンカテーテル1を操作して、経心房中隔的に肺静脈口に近づけたところで、内筒シャフト3をひきながらバルーン6を造影剤と生理食塩水を注入して肺静脈口の大きさより5〜10mm大きく拡張させ、さらにカテーテルを細かく操作してバルーン6を肺静脈口周囲左心房40の標的病変部5に接触させる。
【0056】
また、カテーテルシャフト4には、バルーン6の内部の流体の温度を空間的に均一化するために、バルーン6の内部の流体に振動を与えるための振動発生器34が接続されている。図1においてバルーン6内に示される矢印は、バルーン6内で流体が振動によって循環されていることを示す。
【0057】
次に、バルーンカテーテルの具体的な操作は次のように行う。
高周波発生器30により高周波電流(13.56MHz)を高周波通電用電極7と図示しない外部の対極板に流すと容量結合型加熱が生じ、バルーン6およびバルーン6と接触する標的病変部5が高周波加熱される。バルーン内温度分布は通常であれば対流熱により温度格差があるが、振動発生器34の作用によって旋回する渦により攪拌されてこの温度格差が解消され、バルーン6と接触する標的病変部5は均一に加温される。肺静脈を電気的に隔離しかつ肺静脈口周囲左心房40を焼灼して肺静脈および肺静脈口の周囲を起源とする心房細動を適正に治療することが可能になる。
【0058】
以上のように、本願発明の上述の本実施形態によれば、モニター用電極11はバルーン6の前方側端部に近接する内筒シャフト3のバルーン近接部位3aに取り付けられているので、内筒シャフト3へのガイドワイアー9の挿入が妨げられないので、バルーン6をガイドワイアー9を用いて至適部位へ導入し支持することができる。この結果、内筒シャフト3から突出するガイドワイヤー9によって、膨張した状態で標的病変部5に接触するバルーン6を支持することができるとともに、モニター用電極11によって、バルーン6が膨張した状態で標的病変部5の近傍部の電気的状態をモニターし、アブレーション中の標的病変部5の電気的状態を把握することが可能になる。
【0059】
また、モニター用電極11は、高周波通電用電極7やガイドワイアー9から離れた部位に位置することになるので、高周波通電中も電磁結合や熱伝導による血栓形成を生じないようにすることができる。
【0060】
また、バルーン6の前方側端部の内筒シャフト3の部位に固定して後方電極保持部15を設けたので、常に後方電極保持部15の一端部がバルーン6の前方側端部に近接し、モニター用電極15を確実に内筒シャフト3のバルーン近接部位3aに取り付けることが可能になる。
【0061】
また、前方電極保持部16を備えるので、前方電極保持部15が後方側へスライドしてモニター用電極11を確実に簡易に展開することが可能になる。
【0062】
また、内筒シャフト3に接する前方電極保持部16の面は、断面視において内筒シャフト3の軸方向の周面に対して弓状の曲面に形成されているので、前方電極保持部16を簡易な構成で内筒シャフト3上を容易にスライドさせることができる。
【0063】
また、第2のモニター用電極17は、モニター用電極11に対してバルーン6を挟んでバルーン6に近接して位置するように設けられているので、バルーン6による標的病変部5の焼灼による電気的状態の変化のみを適正に抽出することが可能になる。
【0064】
また、第2モニター用電極17を設けたので、モニター用電極11と第2モニター用電極17との間の電極間インピーダンスの変化を測定することが可能になる。
【0065】
また、信号分離器33と、これに接続してインピーダンス測定器31とバルーン電位測定器32を設けたので、電極間インピーダンスとバルーン周囲電位とを同時に記録し、アブレーションの進行度合を測定することが可能になる。
【0066】
次に、図5,図6及び図7を参照して、本願発明の第2の実施形態について説明する。
【0067】
本実施形態では、モニター用電極21は、ガイドシース12内にある拘束状態から抜け出ると内筒シャフト3の軸心に直交する方向に転回可能である1本以上の針金部材23と、各々の針金部材23の先端部に取り付けられ標的病変部5の近傍部10の電位を検出する球状の電極部24とを有する。
【0068】
後方電極保持部15は、バルーン6の内側にバルーン6に接して内藤シャフト3に固定して設けられている。モニター用電極21の針金部材23において、その後方側端部は後方電極保持部15に取り付けられており、その前方側端部は自由端として形成されている。
【0069】
モニター用電極21の針金部材23は形状記憶合金で形成されている。針金部材23は、ガイドシース12内にある拘束状態から抜け出ると釣鐘状に展開するようになっている。モニター用電極21が釣鐘状に展開すると、針金部材23の自由端に取り付けられた電極部24が標的病変部5の近傍部10に接触する。
【0070】
図7において、符合25は挿入シースを示している。高周波バルーンカテーテル1は、挿入シース25内を通って挿入シース25に付属する逆流防止弁26を通過しガイドシース12内へ送られる。
【0071】
ガイドシース12内では、モニター用電極21は拘束されて直線状の状態にあり、ガイドシース12の前端から抜けると、針金部材23が形状記憶合金で形成されている効果として、釣鐘状に展開する。
【0072】
以上のように、モニター用電極21の針金部材23は釣鐘状に展開可能であり、電極部24は針金部材23の前方側端部に設けられているので、確実に電極部24を標的病変部5の近傍部10に接触させることができる。
【0073】
また、電極部24は球状に形成されているので、標的病変部5の近傍部10を損傷させることなく接触することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 高周波加温バルーンカテーテル
2 外筒シャフト
3 内筒シャフト
3a 内筒シャフトのバルーン近接部位
4 カテーテルシャフト
5 標的病変部
6 バルーン
7 高周波通電用電極
8 温度センサー
10 標的病変部5の近傍部
11 モニター用電極
12 ガイドシース
13、23 針金部材
14、24 電極部
15 後部電極保持部
16 前方電極保持部
17 第2モニター用電極
25 挿入シース
30 高周波発生器
31 インピーダンス測定器
32 バルーン電位測定器
33 信号分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドシース内に押し入れて使用される高周波加温バルーンカテーテルであって、
外筒シャフトと内筒シャフトとからなるカテーテルシャフトと、
膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有する前記外筒シャフトと前記内筒シャフトとの間に設置されたバルーンと、
高周波電力を伝送可能な前記バルーンの壁内又はバルーン内に配設された高周波通電用電極と、
前記バルーン内の温度をモニター可能な温度センサーと、
前記内筒シャフト内に挿通され前記内筒シャフトの前端部から突出するガイドワイヤーと、
前記バルーンの前方に位置する前記内筒シャフトのバルーン近接部位に取り付けられ、前記バルーンが膨張した状態で前記標的病変部の近傍部の電位をモニター可能なモニター用電極と、
を備え、
前記モニター用電極は、
前記内筒シャフトの外側回りに配設され、前記ガイドシース内にある拘束状態から抜け出ると前記内筒シャフトの軸心に直交する方向に展開可能である1本以上の電気的に絶縁被覆された針金部材と、
前記1本以上の針金部材の各々の針金部材に取り付けられ前記標的病変部近傍の電位を検出する電極部とを有する
ことを特徴とする高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの前方の前記内筒シャフトに固定して設けられ、前記1本以上の針金部材の各々の針金部材の後方側端部が取り付けられる電気的絶縁性の後方電極保持部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項3】
前記後方電極保持部の前方の前記内筒シャフト上に、前記内筒シャフトの軸心方向にスライド可能に設けられ、前記1本以上の針金部材の各々の針金部材の前方側端部が取り付けられる電気的絶縁性の前方電極保持部を備え、
前記前方電極保持部が後方側へスライドして前記モニター用電極が展開する
ことを特徴とする請求項2に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項4】
前記針金部材は、弓状に展開可能であり、
前記電極部は前記針金部材の中間部に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項5】
前記内筒シャフトに接する前記前方電極保持部の面は、断面視において前記内筒シャフトの軸方向の周面に対して弓状の曲面に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項6】
前記針金部材は、先端部が自由端であって、釣鐘状に展開可能であり、
前記電極部は前記針金部材の前記前方側端部に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項7】
前記後方電極保持部は前記バルーンの外側にある
ことを特徴とする請求項2に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項8】
前記後方電極保持部は前記バルーンの内側にある
ことを特徴とする請求項2に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項9】
前記針金部材は形状記憶合金からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項10】
前記1本以上の針金部材の本数は1本乃至10本のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項11】
前記電極部は、1個乃至10個の電極ユニットからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項12】
前記バルーン後方側の前記カテーテルシャフトに第2のモニター用電極を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項13】
前記モニター用電極と前記第2モニター用電極との間に微小直流電流を流し電極間インピーダンスの変化を測定するインピーダンス測定器が外部に接続されている
ことを特徴とする請求項12に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項14】
前記モニター用電極と前記第2モニター用電極との間に交流と直流を分離する信号分離器が外部に接続され、前記信号分離器にバルーン周囲電位を測定するバルーン電位測定器と前記直流インピーダンスとが接続され、電極間インピーダンスと前記バルーン周囲電位とを同時に記録してアブレーションの進行度合を測定可能である
ことを特徴とする請求項13に記載の高周波加温バルーンカテーテル。
【請求項15】
前記1本以上の針金部材は複数本の針金部材であり、
前記複数本の針金部材の各々の針金部材は弓状に展開し、全体でバスケット状に展開可能であり、
展開した前記複数本の針金部材は、膨張した状態の前記バルーンが標的病変部を支持することを補助するように、標的病変部の近傍部位を支持可能に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波加温バルーンカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−95853(P2012−95853A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246535(P2010−246535)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(593184569)有限会社日本エレクテル (4)
【Fターム(参考)】