高周波加熱調理器及び高周波加熱調理器のドアの製造方法
【課題】 薄板ではなく板厚0.6mm以上の厚い板材を使用して、開口率の高い透視窓部を有するドアを備えた高周波加熱調理器及びそのドアの製造方法を提供する。
【解決手段】 本体1内に設けられた加熱室2の開口部3を開閉するドア4が、ドア枠板41と透視窓部42とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部42に形成される多数の小さい穴43をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部42の開口率を60%以上に向上させる。
【解決手段】 本体1内に設けられた加熱室2の開口部3を開閉するドア4が、ドア枠板41と透視窓部42とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部42に形成される多数の小さい穴43をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部42の開口率を60%以上に向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透視窓部の開口率を向上させたドアを有する高周波加熱調理器及びそのドアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波加熱調理器のドア構造に関しては被加熱物の調理状況がドアの透視窓を通してよく見えるようにするために、ドア内板の透視窓部を、パンチング径φ1mm以下、板厚0.2mm以下、開口率50%以上のエッチングメタルで構成し、ドア内板の加熱室側に接着剤で耐熱強化ガラス板を貼り付けるとともに、スポット溶接などでドア内板と外板とを一体接合したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2952933号公報(請求項4、第3−4頁、第1図、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術には以下のような課題がある。
(1)板厚0.2mm以下の薄板を使用しているため、透視窓部が変形しやすく、シワ等が付きやすい。また、穴部が破れて切れてしまいやすいので取扱がしにくい。
(2)エッチングで穴を開けているため、板厚を0.2mm以下の薄板を使用しなければならず、後工程でドア本体と接合する時のスポット溶接、カシメ接合で薄板に穴が開いたり切れてしまい不完全な接合が発生しやすい。
(3)エッチング処理だけで穴を開けるには時間がかかる。また、表裏両面からエッチングを行う場合、裏表で穴のパターンを一致させなければならず、微細な穴パターンになればなるほど位置合わせが困難になる。
(4)一方、板厚0.6mmクラスの板金を使用して透視窓部をプレスによるパンチング穴抜きで加工できる実用レベルの開口率は50%程度が限界であり、薄板を使用しない限り透視窓部の高開口率化は困難である。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基本的に薄板を使用しないで、開口率の高い透視窓部を有するドアを備えた高周波加熱調理器及びそのドアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波加熱調理器は、本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたものである。
【0007】
また、本発明に係る高周波加熱調理器のドアの製造方法は、板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、この板材の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高周波加熱調理器においては、本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径したものであるので、透視窓部の開口率を60%以上と大幅に向上させることができる。しかも、ドア本体を構成するドア枠板と透視窓部とが一体成形された1ピース構造となっているので、ドアの強度が高く、かつ、透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングにより拡径するので、板厚が0.6mm以上の板材を使用しても高い開口率の透視窓部にすることができるとともに、板厚が厚いために透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、また穴部が切れたり破れたりすることもなく、コスト的にも安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1を示す高周波加熱調理器の概略断面図、図2は高周波加熱調理器のドア部の部分断面図、図3はドア部を裏側から見た概略斜視図、図4はドア部の表側からの概略斜視図である。また、図5は透視窓部の開口率の定義を説明するための説明図である。
【0011】
本実施の形態におけるドアの構成については後で詳しく説明するとして、まず最初に、図1に一例を示す高周波加熱調理器の全体構成について概要を説明する。
【0012】
この高周波加熱調理器は、図1に示すように、箱体形状の本体1内に前面側が開口された加熱室2を有し、加熱室2の開口部3を開閉するドア4がヒンジ部(図示せず)を介して開閉自在に本体1に取り付けられている。ドア4はこの例では縦開きのものを示しているが、横開きのものでもよく、ドア4の開閉方向は特に限定されない。なお、5はドア4を開閉するためのドアハンドル、6は各種の調理メニューキーやスタートボタン等が配置された操作部である。
【0013】
加熱室2の底面部には、高周波が透過可能なセラミック等の誘電体からなる載置板7がシリコン等の耐熱性接着剤により固着されている。載置板7上には同じく高周波透過性のセラミック等の誘電体からなる載置皿8が出し入れ自在に載置されている。被加熱物30はこの載置皿8に載せて高周波加熱およびヒータ加熱を行うことができる。また、加熱室2の側面には突条部からなる棚受け部(図示せず)が1段もしくは複数段設けられており、これらの棚受け部に載置皿8を支持させることにより、オーブン、グリル加熱などが可能になっている。
【0014】
本体1の後部には高周波を発生させる高周波発生手段として、例えばマグネトロン9が設けられている。マグネトロン9から発生した高周波は導波管10を通じて加熱室2の底部から同室内に放射されるようになっている。また、加熱室2の底部に設けられた載置板7の下にはアンテナ設置室11が設けられており、この設置室11内には導波管10を通じて伝播される高周波を拡散して加熱室2に放射するためのアンテナ12が設けられている。アンテナ12は導波管10に取り付けられたモータ13の回転軸14に取り付けられて回転駆動されるようになっている。
【0015】
また、加熱室2の天井部および底部の載置板7下のアンテナ設置室11には加熱手段として、上ヒータ15と下ヒータ16が配置されている。これらの上ヒータ15および下ヒータ16により上記の高周波加熱とヒータ加熱の同時加熱が可能となっている。
また、加熱室2の後部には同室内の加熱空気を攪拌するための送風ファン17が設置されている。なお、18aは吸気口、18bは吹出口、19はファン設置室、20はファンモータである。送風ファン17を回転させることにより、加熱室2内の加熱空気を吸気口18aから吸い込み、上下の吹出口18bから吹き出して攪拌するので、特にグリル調理の場合などでは上下から均一にかつ迅速に加熱することができる。
【0016】
次に、上記のドア4の構成について図2〜図5を参照して説明する。
ドア4は、ドア本体を構成するドア枠板41と透視窓部42とが一体成形された板厚0.6mm以上の厚い板材からなる1ピース構造により構成されている。ここにいう1ピース構造とは、プレス加工等の一体成形によりドア枠板41と透視窓部42が単一部材で構成されているものである。ドア4の透視窓部42には多数の小さい穴43が規則正しく配列されており、これらの穴43はパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより穴径が拡大されている。これによって、透視窓部42の開口率を60%以上に向上させることができる。
【0017】
また、開口率とは、図5に示すように、穴43の中心を正三角形ABCの頂点に配置したとき、△ABCの面積に対して、△ABC内に含まれる穴43の開口部(斜線部)の開口面積の比率である。
穴43のピッチをp(mm)、穴径をD(mm)とすると、開口率は次式により求めることができる。
開口率=πD2/(2√3p2)×100(%)
【0018】
また、ドア枠板41および透視窓部42のエッチング後の板厚は0.4mm以上0.8mm以下の範囲が適している。板厚が0.4mm未満であると、透視窓部42に変形やシワ等が生じやすくなり、また穴43が切れたり破れたりして不良品が発生しやすくなるからである。一方、板厚が0.8mmを超えると、重くなりすぎてドアの開閉や取扱に不便であり、またパンチング穴抜き後のエッチングの時間が長くかかりすぎて生産性やコスト面で不利になるからである。
【0019】
ドア枠板41の外周部には、図3、図4に示すように、高周波電波洩れ防止のためのチョーク溝44がプレス加工で成形されており、さらにチョーク溝44には図2に示すように、開口をカバーするための耐熱樹脂製のチョークカバー45が被着されている。
また、透視窓部42の裏側、すなわち加熱室2の開口部3に対面する側には凹部46が形成され、この凹部46内に耐熱ガラス板等の耐熱性透明板47がその外周縁をシリコン接着剤等の耐熱性接着剤48で接着固定されている。そして、ドア枠板41の表側には外側スクリーンを構成する樹脂製のドアカバー(意匠カバー)49がネジ等により取り付けられている。
【0020】
以上のように、この実施の形態のドア4によれば、透視窓部42の穴43をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径することで、開口率を60%以上に向上させることができるので、加熱室2内の被加熱物30の調理状況が非常によく見えやすいものとなっている。また、ドア枠板41と透視窓部42とは板厚0.6mm以上の厚い板材を使用して一体成形された1ピース構造となっているので、ドアの強度を十分に高く保つことができるとともに、製造上の歩留まりが向上するので安価に提供することができる。
【0021】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2を示す高周波加熱調理器の概略断面図、図7は高周波加熱調理器のドア部の部分断面図、図8はドア部の裏側からの概略斜視図である。
この実施の形態では、ドア4を構成するドア枠板41Aと透視窓部42Aとがスポット溶接やカシメ等により一体的に接合された2ピース構造となっているものである。ドア枠板41Aと透視窓部42Aは板厚0.6mm以上の厚い板材を使用している。また、透視窓部42Aに形成される穴43はパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径されている。その他の構成は実施の形態1と同じであるので同一部品には同一符号を付して説明は省略する。
【0022】
この実施の形態のドア4によれば、透視窓部42Aの開口率は実施の形態1と同様に60%以上に向上させることができるので、被加熱物30の調理状況が非常によく見えやすいものとなる。ドアの強度も実施の形態1と同様に高い強度を保つことができる。
【0023】
次に、ドア4の製造方法について図9〜図12を参照して説明する。
【0024】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3を示すドアの概略の製造工程図であり、実施の形態1に示した1ピース構造のドア本体の製造方法を示すものである。
(1)まず、図9(a)に示すように、板厚0.8mmの素材から1ピース構造分の大きさの板材50を切り取り、この板材50の透視窓部42の範囲(斜線部の長方形部分)に多数の小さい穴を規則正しくプレスによりパンチング穴抜き加工する(図9(b))。
(2)次に、板材50全体をエッチング槽に所定時間浸漬し、エッチング加工を行う(図9(c))。これにより、パンチング穴は穴径が拡大し、板厚は若干薄くなる。
(3)その後、板材50に塗装またはメッキ等の表面処理により防錆処理を施す(図9(d))。なお、板材50がステンレス等のように耐食性を有する場合はこの防錆処理は省略することができる。
(4)以上の加工を行った板材50を絞り加工およびチョーク溝用の折り曲げ加工等のプレス加工を行ってドア枠板41と透視窓部42を一体成形する(図9(e))。その後、ドア枠板41全体に耐熱塗装を施す。
【0025】
透視窓部の開口率について、この製造方法によるドアの実施例と従来のパンチング穴抜きのみによる従来例とを比較すると、表1の通りであった。なお、開口率は前述の式により求めた。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の結果からもわかるように、この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の厚い板材を使用してドア枠板と透視窓部とが1ピース構造で一 体成形で作られているため、透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、ドアの強度を高く 保つことができ、しかも透視窓部の穴をパンチング穴抜き後エッチングにより拡径する ものであるため、板厚が厚くても開口率60%以上の透視窓部をもったドアを能率よく 作ることができる。
2.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合する時 に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合するタ イプより余分な工程がないため、低コスト化することができる。
4.エッチング処理をしているため板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向上 し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0028】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4を示すドアの別の概略製造工程図であり、同じく1ピース構造のドア本体の製造方法を示すものである。
(1)図10(a)から(b)までの工程は、上述した図9(a)から(b)までの工程と同じである。すなわち、板厚0.6mmの素材から1ピース構造分の大きさの板材50を切り取り(図10(a))、透視窓部42の範囲に多数の小さい穴を規則正しくパンチング穴抜き加工する(図10(b))。
(2)透視窓部42以外(パンチング穴部以外)の板材部分(斜線部)を片面、もしくは表裏ともマスキング(51はマスキング部)して透視窓部42の範囲をエッチング加工することにより穴径を拡大する(図10(c))。
(3)マスキングを除去した後、板材50の防錆処理(塗装またはメッキ等の表面処理による錆び防止処理)を行う(図10(d))。なお、板材50がステンレス等のように耐食性を有する場合は防錆処理は省略してもよい。
(4)以上の加工を行った板材50をプレス加工することによりドア枠板41と透視窓部42を一体成形する(図10(e))。その後、ドア枠板41全体に耐熱塗装を施す。
【0029】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の厚い板材を使用してドア枠板と透視窓部とを1ピース構成で一 体成形で作られているため、透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、ドアの強度を高く 保つことができ、しかも透視窓部の穴を パンチング穴抜き後エッチングにより拡径す るものであるため、板厚が厚くても開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを能率 よく作ることができる。
2.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合する時 に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合するタ イプより余分な工程がないため、低コスト化することができる。
4.エッチング処理をパンチング穴部だけ選択的にエッチングしているため、板全面がエ ッチングにより薄板にならないのでドア全体の強度低下が小さい。
5.余分なところをエッチングしないので、エッチング液の寿命が長くなり、エッチング 処理枚数を増加することができる。
6.エッチング処理部は粗されているため、耐熱塗装等の密着性が向上し、塗装の摩耗、 剥がれを防止することができる。
【0030】
実施の形態5.
図11は本発明の実施の形態5を示すドアの概略の製造工程図であり、実施の形態2に示した2ピース構造のドア本体のうち透視窓部42の製造方法を示すものである。
ドア枠板41Aは、図6〜図8に示したように、別途、第1の板材50(板厚0.6mm以上)を用いてプレス加工で作られている。但し、本実施の形態で示す透視窓部42Aの部分が打ち抜き開口されている。このドア枠板41Aの開口部に、以下に示すように加工された透視窓部42Aをスポット溶接等で接合して2ピース構造のドア本体を作るものである。
【0031】
本実施の形態における透視窓部42Aの製造方法は、基本的に図9(a)から(d)までの工程と同じである。すなわち、透視窓部42Aの大きさに切り取られた板厚0.6mmの第2の板材52を使用し(図11(a))、この板材52にパンチング穴抜き加工を行い(図11(b))、その後、この板材52の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大し(図11(c))、さらに防錆処理を施す(図11(d))。そして、このように加工された透視窓部42Aを、上記のように別途第1の板材50から作られたドア枠板41Aの開口部にスポット溶接(53はスポット溶接部)やカシメ等により一体的に接合することにより、ドア本体を作るものである(図11(e))。その後、この2ピース構造のドア本体に耐熱塗装を施す。
【0032】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の板材を使用して透視窓部だけを別ピースで作るものであるので 、1ピース構造のようにプレス絞り加工時にパンチング穴部が引っ張られて無理な力が かかり、穴部が切れてしまうような不具合が生じない。したがって、歩留まりがより向 上する。
2.透視窓部がドア枠板と同じ板厚で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合す る時に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.透視窓部はパンチング穴抜き後エッチングにより穴径が拡大されているので、開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを作ることができる。
4.板厚0.6mm以上の板材を使用しているので、2ピース構造でもドアの強度が高い 。
5.エッチング処理をしているため、板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向 上し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0033】
実施の形態6.
図12は本発明の実施の形態6を示すドアの別の概略製造工程図であり、同じく2ピース構造のドア本体のうち透視窓部42Aの製造方法を示すものである。
この場合においても同様に、ドア枠板41Aは、別途、第1の板材50(板厚0.6mm以上)を用いてプレス加工で作られている。但し、本実施の形態で示す透視窓部42Aの部分が打ち抜き開口されている。このドア枠板41Aの開口部に、以下に示すように加工された透視窓部42Aをスポット溶接等で接合して2ピース構造のドア本体を作るものである。
【0034】
本実施の形態における透視窓部42Aの製造方法は、基本的に図10(a)から(d)までの工程と同じである。すなわち、透視窓部42Aの大きさに切り取られた板厚0.6mmの第2の板材52を使用し(図12(a))、この板材52にパンチング穴抜き加工を行い(図12(b))、その後、パンチング穴部以外(透視窓部42以外)の板材部分をマスキング(54はマスキング部)してエッチング加工することにより穴径を拡大し(図12(c))、さらにマスキングを除去後、防錆処理を施す(図12(d))。そして、このように加工された透視窓部42を、上記のように別途第1の板材50から作られたドア枠板41の開口部にスポット溶接(53はスポット溶接部)やカシメ等により一体的に接合することにより、ドア本体を作るものである(図12(e))。その後、この2ピース構造のドア本体に耐熱塗装を施す。
【0035】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の板材を使用して透視窓部だけを別ピースで作るものであるので 、1ピース構造のようにプレス絞り加工時にパンチング穴部が引っ張られて無理な力が かかり、穴部が切れてしまうような不具合が生じない。したがって、歩留まりがより向 上する。
2.透視窓部がドア枠板と同じ板厚で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合す る時に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.余分なところをエッチングしないので、エッチング液の寿命が長くなり、エッチング 処理枚数を増加することができる。
4.透視窓部はパンチング穴抜き後エッチングにより穴径が拡大されているので、開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを作ることができる。
5.板厚0.6mm以上の板材を使用しているので、2ピース構造でもドアの強度が高い 。
6.エッチング処理をしているため、板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向 上し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0036】
本発明の高周波加熱調理器は、図1、図6に示すものに限定されるものではない。例えば、高周波の放射位置は加熱室の底部からに限られるものではなく、天面あるいは側面からでもよいものである。また、放射アンテナの代わりにスタラーを用いるものでもよい。
また、本発明のドアの製造方法においては、最初から所定の大きさに切り取られた板材ではなく、帯板を使用することもできる。すなわち、帯板に透視窓部を所定間隔で連続的にパンチング穴抜きを行い、エッチング槽を通過させた後、透視窓部毎に切断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1を示す高周波加熱調理器の概略断面図。
【図2】高周波加熱調理器のドア部の部分断面図。
【図3】ドア部の裏側からの概略斜視図。
【図4】ドア部の表側からの概略斜視図。
【図5】透視窓部の開口率の定義を説明するための説明図。
【図6】本発明の実施の形態2を示す高周波加熱調理器の概略断面図。
【図7】高周波加熱調理器のドア部の部分断面図。
【図8】ドア部の裏側からの概略斜視図。
【図9】本発明の実施の形態3を示すドアの概略の製造工程図。
【図10】本発明の実施の形態4を示すドアの概略の製造工程図。
【図11】本発明の実施の形態5を示すドアの概略の製造工程図。
【図12】本発明の実施の形態6を示すドアの概略の製造工程図。
【符号の説明】
【0038】
1 本体、2 加熱室、3 開口部、4 ドア、5 ドアハンドル、6 操作部、7 載置板、8 載置皿、9 マグネトロン、10 導波管、11 アンテナ設置室、12 アンテナ、13 モータ、14 回転軸、15 上ヒータ、16 下ヒータ、17 送風ファン、18a 吸気口、18b 吹出口、19 ファン設置室、20 ファンモータ、30 被加熱物、41、41A ドア枠板、42、42A 透視窓部、43 穴、44 チョーク溝、45 チョークカバー、46 凹部、47 耐熱性透明板、48 耐熱性接着剤、49 ドアカバー、50 板材(第1の板材)、51 マスキング部、52 第2の板材、54 マスキング部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透視窓部の開口率を向上させたドアを有する高周波加熱調理器及びそのドアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波加熱調理器のドア構造に関しては被加熱物の調理状況がドアの透視窓を通してよく見えるようにするために、ドア内板の透視窓部を、パンチング径φ1mm以下、板厚0.2mm以下、開口率50%以上のエッチングメタルで構成し、ドア内板の加熱室側に接着剤で耐熱強化ガラス板を貼り付けるとともに、スポット溶接などでドア内板と外板とを一体接合したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2952933号公報(請求項4、第3−4頁、第1図、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術には以下のような課題がある。
(1)板厚0.2mm以下の薄板を使用しているため、透視窓部が変形しやすく、シワ等が付きやすい。また、穴部が破れて切れてしまいやすいので取扱がしにくい。
(2)エッチングで穴を開けているため、板厚を0.2mm以下の薄板を使用しなければならず、後工程でドア本体と接合する時のスポット溶接、カシメ接合で薄板に穴が開いたり切れてしまい不完全な接合が発生しやすい。
(3)エッチング処理だけで穴を開けるには時間がかかる。また、表裏両面からエッチングを行う場合、裏表で穴のパターンを一致させなければならず、微細な穴パターンになればなるほど位置合わせが困難になる。
(4)一方、板厚0.6mmクラスの板金を使用して透視窓部をプレスによるパンチング穴抜きで加工できる実用レベルの開口率は50%程度が限界であり、薄板を使用しない限り透視窓部の高開口率化は困難である。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基本的に薄板を使用しないで、開口率の高い透視窓部を有するドアを備えた高周波加熱調理器及びそのドアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波加熱調理器は、本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたものである。
【0007】
また、本発明に係る高周波加熱調理器のドアの製造方法は、板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、この板材の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高周波加熱調理器においては、本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径したものであるので、透視窓部の開口率を60%以上と大幅に向上させることができる。しかも、ドア本体を構成するドア枠板と透視窓部とが一体成形された1ピース構造となっているので、ドアの強度が高く、かつ、透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングにより拡径するので、板厚が0.6mm以上の板材を使用しても高い開口率の透視窓部にすることができるとともに、板厚が厚いために透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、また穴部が切れたり破れたりすることもなく、コスト的にも安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1を示す高周波加熱調理器の概略断面図、図2は高周波加熱調理器のドア部の部分断面図、図3はドア部を裏側から見た概略斜視図、図4はドア部の表側からの概略斜視図である。また、図5は透視窓部の開口率の定義を説明するための説明図である。
【0011】
本実施の形態におけるドアの構成については後で詳しく説明するとして、まず最初に、図1に一例を示す高周波加熱調理器の全体構成について概要を説明する。
【0012】
この高周波加熱調理器は、図1に示すように、箱体形状の本体1内に前面側が開口された加熱室2を有し、加熱室2の開口部3を開閉するドア4がヒンジ部(図示せず)を介して開閉自在に本体1に取り付けられている。ドア4はこの例では縦開きのものを示しているが、横開きのものでもよく、ドア4の開閉方向は特に限定されない。なお、5はドア4を開閉するためのドアハンドル、6は各種の調理メニューキーやスタートボタン等が配置された操作部である。
【0013】
加熱室2の底面部には、高周波が透過可能なセラミック等の誘電体からなる載置板7がシリコン等の耐熱性接着剤により固着されている。載置板7上には同じく高周波透過性のセラミック等の誘電体からなる載置皿8が出し入れ自在に載置されている。被加熱物30はこの載置皿8に載せて高周波加熱およびヒータ加熱を行うことができる。また、加熱室2の側面には突条部からなる棚受け部(図示せず)が1段もしくは複数段設けられており、これらの棚受け部に載置皿8を支持させることにより、オーブン、グリル加熱などが可能になっている。
【0014】
本体1の後部には高周波を発生させる高周波発生手段として、例えばマグネトロン9が設けられている。マグネトロン9から発生した高周波は導波管10を通じて加熱室2の底部から同室内に放射されるようになっている。また、加熱室2の底部に設けられた載置板7の下にはアンテナ設置室11が設けられており、この設置室11内には導波管10を通じて伝播される高周波を拡散して加熱室2に放射するためのアンテナ12が設けられている。アンテナ12は導波管10に取り付けられたモータ13の回転軸14に取り付けられて回転駆動されるようになっている。
【0015】
また、加熱室2の天井部および底部の載置板7下のアンテナ設置室11には加熱手段として、上ヒータ15と下ヒータ16が配置されている。これらの上ヒータ15および下ヒータ16により上記の高周波加熱とヒータ加熱の同時加熱が可能となっている。
また、加熱室2の後部には同室内の加熱空気を攪拌するための送風ファン17が設置されている。なお、18aは吸気口、18bは吹出口、19はファン設置室、20はファンモータである。送風ファン17を回転させることにより、加熱室2内の加熱空気を吸気口18aから吸い込み、上下の吹出口18bから吹き出して攪拌するので、特にグリル調理の場合などでは上下から均一にかつ迅速に加熱することができる。
【0016】
次に、上記のドア4の構成について図2〜図5を参照して説明する。
ドア4は、ドア本体を構成するドア枠板41と透視窓部42とが一体成形された板厚0.6mm以上の厚い板材からなる1ピース構造により構成されている。ここにいう1ピース構造とは、プレス加工等の一体成形によりドア枠板41と透視窓部42が単一部材で構成されているものである。ドア4の透視窓部42には多数の小さい穴43が規則正しく配列されており、これらの穴43はパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより穴径が拡大されている。これによって、透視窓部42の開口率を60%以上に向上させることができる。
【0017】
また、開口率とは、図5に示すように、穴43の中心を正三角形ABCの頂点に配置したとき、△ABCの面積に対して、△ABC内に含まれる穴43の開口部(斜線部)の開口面積の比率である。
穴43のピッチをp(mm)、穴径をD(mm)とすると、開口率は次式により求めることができる。
開口率=πD2/(2√3p2)×100(%)
【0018】
また、ドア枠板41および透視窓部42のエッチング後の板厚は0.4mm以上0.8mm以下の範囲が適している。板厚が0.4mm未満であると、透視窓部42に変形やシワ等が生じやすくなり、また穴43が切れたり破れたりして不良品が発生しやすくなるからである。一方、板厚が0.8mmを超えると、重くなりすぎてドアの開閉や取扱に不便であり、またパンチング穴抜き後のエッチングの時間が長くかかりすぎて生産性やコスト面で不利になるからである。
【0019】
ドア枠板41の外周部には、図3、図4に示すように、高周波電波洩れ防止のためのチョーク溝44がプレス加工で成形されており、さらにチョーク溝44には図2に示すように、開口をカバーするための耐熱樹脂製のチョークカバー45が被着されている。
また、透視窓部42の裏側、すなわち加熱室2の開口部3に対面する側には凹部46が形成され、この凹部46内に耐熱ガラス板等の耐熱性透明板47がその外周縁をシリコン接着剤等の耐熱性接着剤48で接着固定されている。そして、ドア枠板41の表側には外側スクリーンを構成する樹脂製のドアカバー(意匠カバー)49がネジ等により取り付けられている。
【0020】
以上のように、この実施の形態のドア4によれば、透視窓部42の穴43をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径することで、開口率を60%以上に向上させることができるので、加熱室2内の被加熱物30の調理状況が非常によく見えやすいものとなっている。また、ドア枠板41と透視窓部42とは板厚0.6mm以上の厚い板材を使用して一体成形された1ピース構造となっているので、ドアの強度を十分に高く保つことができるとともに、製造上の歩留まりが向上するので安価に提供することができる。
【0021】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2を示す高周波加熱調理器の概略断面図、図7は高周波加熱調理器のドア部の部分断面図、図8はドア部の裏側からの概略斜視図である。
この実施の形態では、ドア4を構成するドア枠板41Aと透視窓部42Aとがスポット溶接やカシメ等により一体的に接合された2ピース構造となっているものである。ドア枠板41Aと透視窓部42Aは板厚0.6mm以上の厚い板材を使用している。また、透視窓部42Aに形成される穴43はパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径されている。その他の構成は実施の形態1と同じであるので同一部品には同一符号を付して説明は省略する。
【0022】
この実施の形態のドア4によれば、透視窓部42Aの開口率は実施の形態1と同様に60%以上に向上させることができるので、被加熱物30の調理状況が非常によく見えやすいものとなる。ドアの強度も実施の形態1と同様に高い強度を保つことができる。
【0023】
次に、ドア4の製造方法について図9〜図12を参照して説明する。
【0024】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3を示すドアの概略の製造工程図であり、実施の形態1に示した1ピース構造のドア本体の製造方法を示すものである。
(1)まず、図9(a)に示すように、板厚0.8mmの素材から1ピース構造分の大きさの板材50を切り取り、この板材50の透視窓部42の範囲(斜線部の長方形部分)に多数の小さい穴を規則正しくプレスによりパンチング穴抜き加工する(図9(b))。
(2)次に、板材50全体をエッチング槽に所定時間浸漬し、エッチング加工を行う(図9(c))。これにより、パンチング穴は穴径が拡大し、板厚は若干薄くなる。
(3)その後、板材50に塗装またはメッキ等の表面処理により防錆処理を施す(図9(d))。なお、板材50がステンレス等のように耐食性を有する場合はこの防錆処理は省略することができる。
(4)以上の加工を行った板材50を絞り加工およびチョーク溝用の折り曲げ加工等のプレス加工を行ってドア枠板41と透視窓部42を一体成形する(図9(e))。その後、ドア枠板41全体に耐熱塗装を施す。
【0025】
透視窓部の開口率について、この製造方法によるドアの実施例と従来のパンチング穴抜きのみによる従来例とを比較すると、表1の通りであった。なお、開口率は前述の式により求めた。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の結果からもわかるように、この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の厚い板材を使用してドア枠板と透視窓部とが1ピース構造で一 体成形で作られているため、透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、ドアの強度を高く 保つことができ、しかも透視窓部の穴をパンチング穴抜き後エッチングにより拡径する ものであるため、板厚が厚くても開口率60%以上の透視窓部をもったドアを能率よく 作ることができる。
2.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合する時 に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合するタ イプより余分な工程がないため、低コスト化することができる。
4.エッチング処理をしているため板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向上 し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0028】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4を示すドアの別の概略製造工程図であり、同じく1ピース構造のドア本体の製造方法を示すものである。
(1)図10(a)から(b)までの工程は、上述した図9(a)から(b)までの工程と同じである。すなわち、板厚0.6mmの素材から1ピース構造分の大きさの板材50を切り取り(図10(a))、透視窓部42の範囲に多数の小さい穴を規則正しくパンチング穴抜き加工する(図10(b))。
(2)透視窓部42以外(パンチング穴部以外)の板材部分(斜線部)を片面、もしくは表裏ともマスキング(51はマスキング部)して透視窓部42の範囲をエッチング加工することにより穴径を拡大する(図10(c))。
(3)マスキングを除去した後、板材50の防錆処理(塗装またはメッキ等の表面処理による錆び防止処理)を行う(図10(d))。なお、板材50がステンレス等のように耐食性を有する場合は防錆処理は省略してもよい。
(4)以上の加工を行った板材50をプレス加工することによりドア枠板41と透視窓部42を一体成形する(図10(e))。その後、ドア枠板41全体に耐熱塗装を施す。
【0029】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の厚い板材を使用してドア枠板と透視窓部とを1ピース構成で一 体成形で作られているため、透視窓部の変形やシワ等の発生がなく、ドアの強度を高く 保つことができ、しかも透視窓部の穴を パンチング穴抜き後エッチングにより拡径す るものであるため、板厚が厚くても開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを能率 よく作ることができる。
2.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合する時 に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.ドア枠板と透視窓部が一体で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合するタ イプより余分な工程がないため、低コスト化することができる。
4.エッチング処理をパンチング穴部だけ選択的にエッチングしているため、板全面がエ ッチングにより薄板にならないのでドア全体の強度低下が小さい。
5.余分なところをエッチングしないので、エッチング液の寿命が長くなり、エッチング 処理枚数を増加することができる。
6.エッチング処理部は粗されているため、耐熱塗装等の密着性が向上し、塗装の摩耗、 剥がれを防止することができる。
【0030】
実施の形態5.
図11は本発明の実施の形態5を示すドアの概略の製造工程図であり、実施の形態2に示した2ピース構造のドア本体のうち透視窓部42の製造方法を示すものである。
ドア枠板41Aは、図6〜図8に示したように、別途、第1の板材50(板厚0.6mm以上)を用いてプレス加工で作られている。但し、本実施の形態で示す透視窓部42Aの部分が打ち抜き開口されている。このドア枠板41Aの開口部に、以下に示すように加工された透視窓部42Aをスポット溶接等で接合して2ピース構造のドア本体を作るものである。
【0031】
本実施の形態における透視窓部42Aの製造方法は、基本的に図9(a)から(d)までの工程と同じである。すなわち、透視窓部42Aの大きさに切り取られた板厚0.6mmの第2の板材52を使用し(図11(a))、この板材52にパンチング穴抜き加工を行い(図11(b))、その後、この板材52の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大し(図11(c))、さらに防錆処理を施す(図11(d))。そして、このように加工された透視窓部42Aを、上記のように別途第1の板材50から作られたドア枠板41Aの開口部にスポット溶接(53はスポット溶接部)やカシメ等により一体的に接合することにより、ドア本体を作るものである(図11(e))。その後、この2ピース構造のドア本体に耐熱塗装を施す。
【0032】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の板材を使用して透視窓部だけを別ピースで作るものであるので 、1ピース構造のようにプレス絞り加工時にパンチング穴部が引っ張られて無理な力が かかり、穴部が切れてしまうような不具合が生じない。したがって、歩留まりがより向 上する。
2.透視窓部がドア枠板と同じ板厚で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合す る時に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.透視窓部はパンチング穴抜き後エッチングにより穴径が拡大されているので、開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを作ることができる。
4.板厚0.6mm以上の板材を使用しているので、2ピース構造でもドアの強度が高い 。
5.エッチング処理をしているため、板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向 上し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0033】
実施の形態6.
図12は本発明の実施の形態6を示すドアの別の概略製造工程図であり、同じく2ピース構造のドア本体のうち透視窓部42Aの製造方法を示すものである。
この場合においても同様に、ドア枠板41Aは、別途、第1の板材50(板厚0.6mm以上)を用いてプレス加工で作られている。但し、本実施の形態で示す透視窓部42Aの部分が打ち抜き開口されている。このドア枠板41Aの開口部に、以下に示すように加工された透視窓部42Aをスポット溶接等で接合して2ピース構造のドア本体を作るものである。
【0034】
本実施の形態における透視窓部42Aの製造方法は、基本的に図10(a)から(d)までの工程と同じである。すなわち、透視窓部42Aの大きさに切り取られた板厚0.6mmの第2の板材52を使用し(図12(a))、この板材52にパンチング穴抜き加工を行い(図12(b))、その後、パンチング穴部以外(透視窓部42以外)の板材部分をマスキング(54はマスキング部)してエッチング加工することにより穴径を拡大し(図12(c))、さらにマスキングを除去後、防錆処理を施す(図12(d))。そして、このように加工された透視窓部42を、上記のように別途第1の板材50から作られたドア枠板41の開口部にスポット溶接(53はスポット溶接部)やカシメ等により一体的に接合することにより、ドア本体を作るものである(図12(e))。その後、この2ピース構造のドア本体に耐熱塗装を施す。
【0035】
この製造方法によれば次のような効果がある。
1.板厚0.6mm以上の板材を使用して透視窓部だけを別ピースで作るものであるので 、1ピース構造のようにプレス絞り加工時にパンチング穴部が引っ張られて無理な力が かかり、穴部が切れてしまうような不具合が生じない。したがって、歩留まりがより向 上する。
2.透視窓部がドア枠板と同じ板厚で構成されているので、別ピースの透視窓部を接合す る時に生じる接合部の切れや穴開きによる接合不良を低減することができる。
3.余分なところをエッチングしないので、エッチング液の寿命が長くなり、エッチング 処理枚数を増加することができる。
4.透視窓部はパンチング穴抜き後エッチングにより穴径が拡大されているので、開口率 60%以上の透視窓部をもったドアを作ることができる。
5.板厚0.6mm以上の板材を使用しているので、2ピース構造でもドアの強度が高い 。
6.エッチング処理をしているため、板材表面が粗されており、耐熱塗装等の密着性が向 上し、塗装の摩耗、剥がれを防止することができる。
【0036】
本発明の高周波加熱調理器は、図1、図6に示すものに限定されるものではない。例えば、高周波の放射位置は加熱室の底部からに限られるものではなく、天面あるいは側面からでもよいものである。また、放射アンテナの代わりにスタラーを用いるものでもよい。
また、本発明のドアの製造方法においては、最初から所定の大きさに切り取られた板材ではなく、帯板を使用することもできる。すなわち、帯板に透視窓部を所定間隔で連続的にパンチング穴抜きを行い、エッチング槽を通過させた後、透視窓部毎に切断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1を示す高周波加熱調理器の概略断面図。
【図2】高周波加熱調理器のドア部の部分断面図。
【図3】ドア部の裏側からの概略斜視図。
【図4】ドア部の表側からの概略斜視図。
【図5】透視窓部の開口率の定義を説明するための説明図。
【図6】本発明の実施の形態2を示す高周波加熱調理器の概略断面図。
【図7】高周波加熱調理器のドア部の部分断面図。
【図8】ドア部の裏側からの概略斜視図。
【図9】本発明の実施の形態3を示すドアの概略の製造工程図。
【図10】本発明の実施の形態4を示すドアの概略の製造工程図。
【図11】本発明の実施の形態5を示すドアの概略の製造工程図。
【図12】本発明の実施の形態6を示すドアの概略の製造工程図。
【符号の説明】
【0038】
1 本体、2 加熱室、3 開口部、4 ドア、5 ドアハンドル、6 操作部、7 載置板、8 載置皿、9 マグネトロン、10 導波管、11 アンテナ設置室、12 アンテナ、13 モータ、14 回転軸、15 上ヒータ、16 下ヒータ、17 送風ファン、18a 吸気口、18b 吹出口、19 ファン設置室、20 ファンモータ、30 被加熱物、41、41A ドア枠板、42、42A 透視窓部、43 穴、44 チョーク溝、45 チョークカバー、46 凹部、47 耐熱性透明板、48 耐熱性接着剤、49 ドアカバー、50 板材(第1の板材)、51 マスキング部、52 第2の板材、54 マスキング部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたことを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項2】
本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体的に接合した2ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたことを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項3】
透視窓部の開口率が60%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高周波加熱調理器。
【請求項4】
ドア枠板および透視窓部のエッチング後の板厚は0.4mm以上0.8mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波加熱調理器。
【請求項5】
板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
この板材の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項6】
板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
透視窓部以外の板材部分をマスキングしてエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項7】
透視窓部を構成する第2の板材に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
この第2の板材をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
別途、第1の板材から成形加工されたドア枠板の開口部に前記により加工された透視窓部の第2の板材を接合する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項8】
透視窓部を構成する第2の板材に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
透視窓部以外の板材部分をマスキングしてエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
別途、第1の板材から成形加工されたドア枠板の開口部に前記により加工された透視窓部の第2の板材を接合する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項9】
透視窓部の開口率を60%以上にすることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項10】
板厚が0.6mm以上0.8mm以下の板材を用いることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項1】
本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体成形した1ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたことを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項2】
本体内に設けられた加熱室の開口部を開閉するドアが、ドア枠板と透視窓部とを一体的に接合した2ピース構造からなり、この透視窓部に形成される多数の小さい穴をパンチング穴抜き後エッチングを行うことにより拡径して透視窓部の開口率を向上させたことを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項3】
透視窓部の開口率が60%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高周波加熱調理器。
【請求項4】
ドア枠板および透視窓部のエッチング後の板厚は0.4mm以上0.8mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波加熱調理器。
【請求項5】
板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
この板材の全体をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項6】
板材の透視窓部の範囲に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
透視窓部以外の板材部分をマスキングしてエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
この板材をプレス加工することによりドア枠板と透視窓部を一体成形する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項7】
透視窓部を構成する第2の板材に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
この第2の板材をエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
別途、第1の板材から成形加工されたドア枠板の開口部に前記により加工された透視窓部の第2の板材を接合する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項8】
透視窓部を構成する第2の板材に多数の小さい穴をパンチング穴抜き加工する工程と、
透視窓部以外の板材部分をマスキングしてエッチング加工することにより穴径を拡大する工程と、
別途、第1の板材から成形加工されたドア枠板の開口部に前記により加工された透視窓部の第2の板材を接合する工程と、
を有することを特徴とする高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項9】
透視窓部の開口率を60%以上にすることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【請求項10】
板厚が0.6mm以上0.8mm以下の板材を用いることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の高周波加熱調理器のドアの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−342985(P2006−342985A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166527(P2005−166527)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
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