説明

高周波回路

【課題】平衡型増幅器を用いて構成され、挿入損失の増大を抑え、回路の大型化を防ぎながらアンテナダイバシティが利用可能な電気的特性に優れた高周波回路を提供する。
【解決手段】第1ポートと第6ポートとの間に配置した第1スイッチSC1と、第2ポートと第6ポートとの間に配置した第2スイッチSC2と、第1ポートと第3ポートとの間に配置した第3スイッチSC3と、第2ポートと第4ポートとの間に配置した第4スイッチSC4と、第5ポートと第6ポートとの間に配置した平衡型増幅器とを備え、第1スイッチSC1と第2スイッチSC2とにより、第5ポートと第1ポート又は第2ポートとの間の接続を切り換え、第3スイッチSC3により、第3ポートと第1ポート又はグランドとの接続を切り換え、第4スイッチSC4により、第4ポートと第2ポート又はグランドとの接続を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の単位増幅器を並列動作させる平衡型増幅器を用いた高周波回路に関し、特には高出力電力で送信ダイバーシチが可能な高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信サービスを提供する上で、通信設備の設置や整備のためのコストを削減することは常に課題としてある。その一つの解決手法として、固定局と移動局との通信距離を長くして、一つの固定局が担うエリアを広く構成して基地局数を削減することが提案されている。固定局は例えば基地局であり、移動局は携帯電話等の無線通信装置である。
【0003】
通信距離を長くする為には各局の送信出力電力を高めることが求められるが、単純に出力を高めると対応可能な周波数帯域を狭めてしまうことや、トランジスタの段数を増加させることが必要であり、小電力で動作し、小型の部品で構成される携帯電話等においては、単純に送信出力電力を高めることは容易では無い。この為、平衡型増幅器を用いて高周波信号の出力電力を高めることが行なわれて来た。
【0004】
図3は平衡型増幅器の等価回路である。この平衡型増幅器は、ハイブリッド回路20,21の間に一対の単位増幅器15,16が接続されて構成されており、送信ポートP1(IN)に入力した高周波信号は、第1ハイブリッド回路20を経て90度の位相差を有する高周波信号に2分配されて、それぞれ第1増幅器15と第2増幅器16に入力する。第1及び第2増幅器で増幅された高周波信号は、第2ハイブリッド回路21に入力して同相の高周波信号に合成されて出力ポートP2(OUT)より出力される。出力電力は第1増幅器15及び第2増幅器16から出力される信号のほぼ2倍となる。
【0005】
第1及び第2ハイブリッド回路20、21には終端抵抗がR1、R2が接続される。
第1ハイブリッド回路20に接続された終端抵抗R1によって第1及び第2増幅器15、16の入力側からの反射波を吸収する。なお理想的には終端抵抗R1が接続されるポートには電圧は現れない。また、第2ハイブリッド回路21に接続された終端抵抗R2は、出力ポートP2(OUT)へ入力する反射波を吸収し、第1及び第2増幅器15,16の位相や出力電力のばらつきによって生じる合成損失を吸収する。理想的には終端抵抗R2が接続されるポートにもまた電圧は現れない。
【0006】
前記ハイブリッド回路としてウイルキンソン型ハイブリッド合成分配回路が知られるが、用いられる抵抗は耐圧が求められるので、小型の抵抗器を利用することが出来ない問題がある。そこでハイブリッド回路としては、ハイブリッド回路としてブランチライン型ハイブリッド合成分配器や90度ハイブリッドカップラを用いる場合が多い。
【0007】
この様な平衡型増幅器を用いた高周波波回路として、特許文献1に図6に示したアンテナスイッチ回路が開示されている。このアンテナスイッチ回路は、入力ポートが送信器125と接続された平衡型増幅器10と、平衡型増幅器10の出力ポートに接続されたSPDTスイッチ回路127と、SPDTスイッチ回路127と接続されたアンテナANTと、受信器126に接続された低雑音増幅器128を備えている。SPDTスイッチ回路127によって、一つのアンテナANTと送信器125との間、アンテナANTと受信器126との間を切り換える。
【0008】
また特許文献1には図7に示す高周波波回路も開示されている。この回路は図6で示した回路と比較し、更に平衡型増幅器10の入力ポートと接続するSPDTスイッチ回路129と、平衡型増幅器10の終端抵抗が接続される出力ポートの一方と接続するSPDTスイッチ回路130とを備え、各スイッチ回路129、130の一つのポートには終端抵抗132、133が接続されている。
【0009】
この回路では出力端子の他方がスイッチ回路を介さずにアンテナと接続される。送信時においては、送信器125と平衡型増幅器10との間に配置されたSPDTスイッチ回路129によってアンテナANTと送信器125とが接続される。平衡型増幅器10の出力ポートに接続されたSPDTスイッチ回路130によって終端抵抗133を介して接地され、高周波信号は送信器125からアンテナANTを経て放射される。
一方、アンテナANTから入射する高周波信号は、平衡型増幅器10、SPDTスイッチ回路130、低雑音増幅器128を経て受信器126に至る。SPDTスイッチ回路129は送信器125が終端抵抗132を介して接地する様に制御され、SPDTスイッチ回路130は平衡型増幅器10と低雑音増幅器128が接続する様に制御される。高周波信号は平衡型増幅器10の第2ハイブリッド回路に入力し単位増幅器の出力側に現れるが、単位増幅器が非動作状態に制御されることで反射されて、第2ハイブリッド回路のSPDTスイッチ回路130側の出力ポートに現れる。
【0010】
ここで例示した高周波回路は、一つのアンテナに送信器と受信器が接続される基本的な構成であるが、最近の高周波回路においては、フェージング等の外乱の影響を考慮してアンテナダイバシティを利用することが求められている。
次に高周波回路におけるアンテナダイバシティの構成例を説明する。特許文献2には図8に示す高周波回路が開示されている。この高周波回路170は、増幅器184の出力側に3つのSPDTスイッチ回路180、181、182が接続され、2つのアンテナANT1、ANT2と、第1受信側Rx1、第2受信側Rx2、送信側Txとの間の接続を切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2010−511353号
【特許文献2】国際公開第97/13320号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
送信出力電力を高め、かつアンテナダイバシティが可能な高周波回路を得ようとすれば、単純には特許文献2の高周波回路において、増幅器を特許文献1に記載された平衡型増幅器を用いれば良い。
【0013】
図9にSPDTスイッチ回路の基本的な構成を示す。第1ポートP1と第2ポートP2 との間にはFETからなるスイッチング素子190と、第1ポートP1と第3ポートP3 との間にはFETからなるスイッチング素子191とを備える。各スイッチング素子のゲート電極に制御ポートVから制御電圧が印加されて、各ポート間の電気的な接続状態を各スイッチング素子のON状態/OFF状態にて制御する。他の構成としては、更に第2ポートP2、第3ポートP3を他のスイッチング素子で接地する場合もある。
【0014】
このようなSPDTスイッチ回路を用いてアンテナダイバシティ回路を構成すると、送信信号の経路には、3つのSPDTスイッチ回路180、181、182の複数のスイッチング素子が設けられることとなる。
平衡型増幅器を用いた高周波回路の場合、低電圧で動作し、送信出力電力が高くても伝送が可能であるように、スイッチング素子を直列に複数接続して段数を増加させ、またマルチゲート化して耐電力にすぐれたものとすることが行なわれるが、スイッチング素子の占める面積が大きくなりSPDTスイッチ回路も大きくなってしまう。3つのSPDTスイッチ回路を用いるとすれば、SPDTスイッチ回路を構成するのに必要な空間も単順には3倍となり、信号経路に配置されるスイッチング素子の増加は、挿入損失の増加を招くといった問題もある。
【0015】
そこで本発明では、平衡型増幅器を用いて構成され、挿入損失の増大を抑え、回路の大型化を防ぎながらアンテナダイバシティが利用可能な電気的特性に優れた高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第1ポートと第6ポートとの間に配置された第1スイッチと、第2ポートと前記第6ポートとの間に配置された第2スイッチと、前記第1ポートと第3ポートとの間に配置された第3スイッチと、前記第2ポートと第4ポートとの間に配置された第4スイッチと、第5ポートと前記第6ポートとの間に配置された平衡型増幅器とを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチとにより、第5ポートと第1ポート又は第2ポートとの間の接続を切り換え、前記第3スイッチにより、第3ポートと第1ポート又はグランドとの接続を切り換え、前記第4スイッチにより、第4ポートと第2ポート又はグランドとの接続を切り換えることを特徴とする高周波回路である。
【0017】
本発明においては、前記第1ポートが第1アンテナと接続され、前記第2ポートが第2アンテナと接続され、前記第3ポートが第1受信回路と接続され、前記第4ポートが第2受信回路と接続され、前記第5ポートが送信回路と接続される。
【0018】
前記平衡型増幅器は2つの入力ポートと2つの出力ポートを備え、一つの入力ポートへ信号を入力し、一つの出力ポートへ増幅後の信号が出力可能であり、他の入力ポートと出力ポートは抵抗で終端される。
【0019】
本発明においては、前記平衡型増幅器の出力ポート側と、第1アンテナ又は第2アンテナとの間に、SPSTスイッチ回路が接続される構成とする。この為、平衡型増幅器から各アンテナとの送信信号に設けられるスイッチング素子を少なく構成出来る、
【0020】
前記平衡型増幅器の入力ポートは高周波半導体回路(RFIC)の送信回路と接続され、前記アンテナはRFICの受信回路と接続されるのが好ましい。
また高周波回路を複数に設けて、それぞれの平衡型増幅器の出力ポート側にアンテナを接続してデータ送受信の帯域を広げる無線通信技術であるMIMO(Multi−Input Multi−Output)を実現可能な構成としても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の高周波回路によれば、スイッチ回路を簡略化することが出来、挿入損失の増大を抑え、高周波回路の大型化を防ぎながらアンテナダイバシティが利用可能な電気的特性に優れた平衡型増幅器を用いて構成された高周波回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例による高周波回路の等価回路を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による高周波回路に用いるSPDTスイッチ回路を説明する為の図である。
【図3】本発明の一実施例による高周波回路に用いる平衡型増幅器を説明する為の回路ブロック図である。
【図4】(a)本発明の一実施例による高周波回路に用いる平衡型増幅器のハイブリッド回路の一例を示す等価回路図である。(b)本発明の一実施例による高周波回路に用いる平衡型増幅器のハイブリッド回路の他の例を示す等価回路図である。
【図5】本発明の高周波回路を用いて構成された無線通信装置の高周波回路部の回路ブロック図である。
【図6】従来の高周波回路の構成例を示す回路ブロックを示す図である。
【図7】従来の高周波回路の他の構成例を示す回路ブロックを示す図である。
【図8】従来の高周波回路の他の構成例を示す回路ブロックを示す図である。
【図9】SPDTスイッチ回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図3を基に本発明の高周波回路を説明する。図1は平衡型増幅器を用いた高周波回路の回路ブロック図である。平衡型増幅器の構成は既に説明したが、ハイブリッド回路20、21の間に一対の単位増幅器15、16が接続されて構成されている。ハイブリッド回路20、21は、それぞれ2端子対回路であって、ハイブリッド回路20の一方側は入力ポートP1、終端抵抗R1と接続し、他方側は第1増幅器15の入力側、第2増幅器16の入力側と接続する。ハイブリッド回路21の一方側は出力ポートP2、終端抵抗R2と接続し、他方側は第1増幅器15の出力側、第2増幅器16の出力側と接続する。
【0024】
本発明の高周波回路は、第1ポートPo1と第6ポートPo6との間に配置された第1スイッチSC1と、第2ポートPo2と前記第6ポートPo6との間に配置された第2スイッチSC2と、前記第1ポートPo1と第3ポートPo3との間に配置された第3スイッチSC3と、前記第2ポートPo2と第4ポートPo4との間に配置された第4スイッチSC4と、第5ポートPo5と前記第6ポートPo6との間に配置された平衡型増幅器10とを備える。
前記第1スイッチSC1と前記第2スイッチSC2とにより、第5ポートPo5と第1ポートPo1又は第2ポートPo2との間の接続を切り換え、前記第3スイッチSC3により、第3ポートPo3と第1ポートPo1又はグランドGNDとの接続を切り換え、前記第4スイッチSC4により、第4ポートPo4と第2ポートPo2又はグランドGNDとの接続を切り換える。
【0025】
第1〜第4スイッチSC1、SC2、SC3、SC4はFETからなるスイッチング素子で構成することが出来る。図2の(a)に第1ポートPo1と接続する第1スイッチSC1、第3スイッチSC3をスイッチ回路SWAとして示し、(b)に第2ポートPo2と接続する第2スイッチSC2、第4スイッチSC4をスイッチ回路SWBとして示す。
送信出力電力を高めた平衡型増幅器を用いるが、送信出力電力が高くても伝送が可能であるように、スイッチング素子を直列に複数接続し段数を増加させ、またマルチゲート化して耐電力を高めた構成を適宜採用し得る。このような耐電力構造を採用しても従来の高周波回路と比べて、信号経路に配置されるスイッチ回路が減じられているので、相対的に小型でかつ電気的特性に優れた高周波回路とすることが出来る。
【0026】
なお、固定局と移動局が近くにあって大きな送信出力電力が必要で場合には、一方の増幅器を非動作状態としても良い。この場合、第1、第2ハイブリッド回路によって分配損失が発生するものの、増幅器による電力消費を抑えることができる。
【0027】
図4(a)(b)に本発明に用いるハイブリッド回路の構成例を示す。図4(a)で示したハイブリッド回路は4つのポートPb1〜Pb4を備えた90度ハイブリッドカップラであり、1/4波長に相当する長さに構成された2つの結合線路Lc1、Lc2を対向配置して構成される。結合線路Lc1、Lc2は所定の特性インピーダンス(例えば50Ω)の分布定数線路として形成される。また各結合線路Lc1、Lc2の両端にキャパシタンス素子を接続してローパスフィルタの構成とする場合や分布定数線路に代えてインダクタンス素子で構成する場合もある。ここで1/4波長に相当する長さとは、ポート間の実長さが1/4波長である場合のほかに、波長短縮されて等価的に1/4波長である場合も含み、ハイブリッドカップラとして機能する長さを言う。
【0028】
第1ハイブリッド回路20として90度ハイブリッドカップラを用いる場合、そのポートPb2を入力ポートP1と接続すると、ポートPb1は第2増幅器16の入力側と接続され、ポートPb3が終端抵抗R1と接続され、ポートPb4が第1増幅器15の入力側と接続される。ポートPb2に入力した信号は2分配され、ポートPb1とポートPb4に現れる信号は位相遅れのため90度の位相差となる。
【0029】
第2ハイブリッド回路2として90度ハイブリッドカップラを用いる場合、そのポートPb2を第1増幅器15の出力側と接続すると、ポートPb1は出力ポートP2と接続され、ポートPb3が第2増幅器16の出力側と接続され、ポートPb4が終端抵抗R2と接続される。第1増幅器15、第2増幅器16により増幅された出力信号は90度の位相差のままポートPb2とポートPb3に入力する。ポートPb3−Pb4間での位相遅れのため出力ポートP2で同相となり合成されて約2倍に増幅された高周波信号が出力される。
【0030】
図4(b)に本発明に用いるハイブリッド回路の他の構成例を示す。ここで示したハイブリッド回路は4つのポートPb1〜Pb4を備えたブランチライン型ハイブリッド合成分配器である。1/4波長に相当する長さに構成された4つの分布定数線路Lh1〜Lh4とで構成される。前記分布定数線路Lh3、Lh4の特性インピーダンスがaΩであるとすると、分布定数線路Lh1、Lh2の特性インピーダンスはbΩ(bは2の平方根でaを除した値)となる。またインダクタンス素子とキャパシタンス素子の集中定数素子で構成しても良い。
【0031】
ブランチライン型ハイブリッド合成分配器を第1ハイブリッド回路20とする場合は、ポートPb1を入力ポートP1と接続すると、ポートPb2は第1増幅器15の入力側と接続され、ポートPb3が終端抵抗R1と接続され、ポートPb4が第2増幅器16の入力側と接続される。第2ハイブリッド回路21とする場合は、ポートPb1を第1増幅器15の出力側に接続すると、ポートPb2は終端抵抗R2と接続され、ポートPb3が第2増幅器16の出力側に接続され、ポートPb4が出力ポートP2と接続される。
【0032】
図5は本発明の高周波回路を含む無線通信装置のフロントエンド回路部を示す。
高周波回路は、第5ポートPo5より平衡型増幅器10の入力ポート側にRFICからの送信信号が入力し、第3ポートPo3、第4ポートPo4より受信信号がRFICへ向けて出力する。第3ポートPo3、第4ポートPo4からRFICに至る受信信号の経路には帯域通過フィルタ140、141、147、148と、帯域通過フィルタ140、147に挟まれて低雑音増幅器145と、帯域通過フィルタ141、148に挟まれて低雑音増幅器146と、帯域通過フィルタ147と接続して不平衡信号である受信信号を平衡信号に変換するバラン149と、帯域通過フィルタ148と接続して不平衡信号である受信信号を平衡信号に変換するバラン150とを備える。
【0033】
本発明の高周波回路において、各スイッチのスイッチング素子は各制御ポートVに与えられる制御電圧によって表1に示す様に制御される。ここでは、一つの信号経路がいずれかのアンテナと接続する場合であり、他の経路は切断された場合を示している。またスイッチ回路SWAにおいて、スイッチング素子SW1−1とSW3−2の制御ポートVを共通化することが出来る。同様に、スイッチ回路SWBにおいて、スイッチング素子SW2−1とSW4−2の制御ポートVを共通化することも出来る。
【0034】
【表1】

【0035】
ここでは、第1ポートPo1と第5ポートPo5が接続される条件(Tx1モード)、第2ポートPo2と第5ポートPo5が接続される条件2(Tx2モード)である場合に第1増幅器15、第2増幅器16は動作状態であり、第1ポートPo1と第3ポートPo3が接続される条件3(Rx1モード)、第2ポートPo2と第4ポートPo4が接続される条件4(Rx2モード)では非動作状態である。なお、異なるアンテナを使って送受信を同時に行なう場合は、条件1と条件3や条件2と条件4が同時に成立するように、増幅器の動作状態や各スイッチ素子の動作状態が制御されて表1で示した動作と異なる場合がある。また、送信受信の動作に直接影響しないスイッチング素子のON/OFF状態は適宜設定され得る。
【0036】
第1、第2増幅器15、16を領域で動作させると非線形動作となり、基本周波数成分の他に、偶数次高調波成分(2n倍波;nは1以上の自然数)、奇数次高調波成分(3n倍波)といった高調波成分が生じてしまう。偶数次高調波成分に対して第2ハイブリッド回路21は所定のインピーダンス負荷とはならず反射して第1、第2増幅器15、16へ入力し、基本波と混合されて、基本波と同じ周波数で移相のずれた周波数成分となる。これによって出力ポートから出力される高周波信号にリップルが生じる場合がある。また、高周波回路10に入力される高周波信号にも高調波成分が含まれ第1、第2増幅器15、16で増幅されてしまう場合もある。
【0037】
本発明の高調波回路においては、第1、第2増幅器15、16の出力側のそれぞれに高調波減衰手段を設けることで高調波を減衰させてリップルや損失を低減するのが好ましい。高調波減衰手段はフィルタで構成するのが望ましく、ローパスフィルタやノッチフィルタを用いることが出来る。ローパスフィルタによれば偶数次高調波成分、奇数次高調波成分の両方を減衰させることが出来る。偶数次高調波成分のみを選択的に減衰させる場合は、スタブで構成しても良い。高調波減衰手段を設ける場合には、合成損失を低減する観点から各経路で同じ特性(移相や損失)のものを用いる。
【符号の説明】
【0038】
10 平衡型増幅器
15 第1増幅器
16 第2増幅器
20 第1ハイブリッド回路
21 第2ハイブリッド回路
R1、R2 終端抵抗
IN 入力ポート
OUT 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第6ポートとの間に配置された第1スイッチと、第2ポートと前記第6ポートとの間に配置された第2スイッチと、前記第1ポートと第3ポートとの間に配置された第3スイッチと、前記第2ポートと第4ポートとの間に配置された第4スイッチと、第5ポートと前記第6ポートとの間に配置された平衡型増幅器とを備え、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとにより、第5ポートと第1ポート又は第2ポートとの間の接続を切り換え、
前記第3スイッチにより、前記第3ポートと前記第1ポート又はグランドとの接続を切り換え、
前記第4スイッチにより、前記第4ポートと前記第2ポート又はグランドとの接続を切り換えることを特徴とする高周波回路。
【請求項2】
前記第3スイッチは、前記第1ポートと第3ポートとの間に接続されるスイッチング素子と、前記第3ポートとグランドとの間に接続されるスイッチング素子を有し、
前記第4スイッチは、前記第2ポートと第4ポートとの間に接続されるスイッチング素子と、前記第4ポートとグランドとの間に接続されるスイッチング素子を有することを特徴とする請求項1に記載の高周波回路。
【請求項3】
前記第1ポートが第1アンテナと接続され、前記第2ポートが第2アンテナと接続され、前記第3ポートが第1受信回路と接続され、前記第4ポートが第2受信回路と接続され、前記第5ポートが送信回路と接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波回路。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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