説明

高品質生物医学装置の照明設計

本発明は、マイクロアレイリーダー、マイクロプレートスキャナー、マイクロ流体分析器、センサー、シーケンサー、定量PCR(Q−PCR)、そして、今日の商業的、学術的および臨床的なバイオテクノロジー研究を駆り立てる、その他多数の生物学的分析ツールを含む、様々な応用に動力(パワー)を供給するための複数の光源に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明のために発光ダイオードを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀の生物医学的な診断や治療を見直す動向には、低コストの携帯型分析器の設計があげられる。光源は、今日の生命科学機器に最も広く用いられる強力なツールであるので、高い光度で、低コストの光源機関(light engine)は、最新の生物分析機器、医療機器および小型分析器の設計や普及に不可欠である。新しい光技術の開発は、ポイントオブケア(point-of-care)分析の実現において、重大な技術的ハードルに相当する。
【0003】
本発明の実施形態は、特定の色のLEDの出力を変換して、当該特定の色だけでなく付加的な色の出力をも含むより広帯域の発光波長を発生させるための方法および装置を対象とする。以下で述べられるであろう、詳細な実施形態は、発光した波長の全体的な範囲を拡大するときに、逆方向への光を最小化する。
【0004】
生命科学向けの照明は、広範で一般的なカテゴリーである。光源の仕様は、変更されるだけでなく、それらは、等しく重要な光伝送要件(optical delivery requirements)でもある。光プローブの先端上、または、流れるストリーム(flowing stream)中の単細胞内をセンシングするためのスペクトルおよび空間照明要件(spectral and spatial lighting requirements)は、何オーダーかの差で出力パワーが、解析チップ(analysis chip)上、または、微量検定板(micro titer plate)の容器内の多種検体検出機構(multi-analyte detection scheme)の要件と異なる。色数、スペクトル純度、スペクトルおよびパワーの安定性、耐久性、および、切り替え要件は、それぞれ固有である。マイクロアレイ内の定量的な蛍光(quantitative fluorescence)のための、何十万ものスポットを明るくすることは、投影光学系(projection optics)が一番であるかもしれないが、一方で、顕微鏡は、それぞれのスコープ本体および対物レンズの設計に特有である光学系列(optical trains)内の顕微鏡対物レンズの背面開口部のオーバーフィル(overfill)のために、光伝送に対する厳しい仕様を設定する。
【0005】
光源製造業者は、すべての応用にすべてのものを供給することはできないが、それは、まさに、光源機関が考案されることに対する要求の広さを表す。そのためには、生産物は、単なる光源ではなくむしろ光源機関:光源と、すべての補助的コンポーネント、すなわち、純粋で強力な光を試料に供給する、または、機械的に可能な限り試料に近づいて供給するのに必要である、すべての補助的コンポーネントである。そのような設計は、広範囲のバイオテクノロジー向けの応用のニーズを満たすために、柔軟で複合的な解決策を具体化する生産物を結果として生じる。光源技術に応じた、光源機関の性能の定量的比較は、表1に要約される。
【0006】
採用された光源技術に応じた、光源機関の性能の定量的比較
【表1】

【0007】
歴史のあるアーク灯は、白色光を供給することにおいて、柔軟な光源であることに留意されたい。出力は、所望の波長や典型的な蛍光ベースの手段を選び、発光帯を区別するために、非常に多くの光学素子を用いて、管理される。しかしながら、アーク灯の影響の大きい熱管理要件に加えて、それらの悪名高い不安定性や耐久性の欠如は、アーク灯を携帯型分析器に対する理想に満たないものにする。さらに、それらを駆動するための大きな電力需要は、コンパクト設計内のバッテリー動作に対する障害を提起する。
【0008】
レーザーは、訓練を受けた利用者および有効な安全対策を要する。固体出力(solid state outputs)は、コスト効率が良いものの、より短い波長出力は、典型的にコストがかかり、かなりの保守や補助的なコンポーネントを必要とする。マルチライン出力に対するカラーバランスおよびドリフトは、レーザーに基づく定量分析にとって重大な問題である。さらに、蛍光発光の応用の大部分は、コヒーレント光を必要とせず、スペックルパターン(speckle patterns)によって複雑化し、そのような狭帯域の出力を必要としていない。これらの特徴のそれぞれを克服することは、光源管理を必要とし、大部分のバイオ分析ツール(bio-analytical tool)向けのレーザーの実現に対するコストを増大させる。
【0009】
最後に、LEDsは、この数十年間のうちにかなり成熟した。LEDsは、現在、比較的に広範囲の波長において利用可能である。しかしながら、それらの出力は、フィルタリングを必要とするように、かなり広範である。さらに、可視スペクトルにおける出力は、500−600未満の緑色において、著しく減少する。また、LEDは、光の強さに依存する発光波長、広帯域発光スペクトル(およそ30nm以上のスペクトルの半値幅)、不十分なスペクトル安定性、発光の幅広い角度幅に対してトレードオフを生じる。さらに、LEDを製造するために使用されるプロセスは、それらのスペクトル安定性をしっかりと制御することができない。良好なスペクトル安定性を必要とする応用において、LEDを使用することを望む誰もが、特定の応用向けのLEDを自ら慎重に選ぶために、供給業者と直接取引しなければならない。最終的に、LEDは、幅の広い角度幅(光の強さの50%が70度で発光)で、光を発生させる。光学(optics)は、発光帯域を狭くすることができ、光出力を焦点に合わせることができるものの、結果として生じる電力の損失と熱出力の増加は、さらに、LED光源機関の実現可能性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最も重要なことに、これらの光技術は、生物学的分析の応用向けに、容易に改良することができない。関連している光源機関の市場は、単に、根本的な性能制限を克服するのに必要というだけで、多額な投資をする正当な理由とならない。結果として、分析機器の性能と価格は、明らかな解決策が無いことで、光源により制約が加えられる。さらに、ランプやレーザーの多数の製造業者は、統合された光源機関ではなく、光源のみを供給する。ILCテクノロジー社、ルミレッズ(Lumileds)社、スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)社、シルバニア(Sylvania)社およびクールLED(CoolLED)社などのような企業は、音響光学的可同調フィルター(AOTFs)、励起フィルター(ホイール、または、キューブホルダー付き)、シャッターおよびコントローラなどのような、ある種の力学系、および、または、電気光学系を必要とする。
【0011】
どの照明の解決策もすべての機器のアーキテクチャを、最も良く満足するものではないものの、光導体(light pipe)機関は、すべての個々の波長に対するすべての性能係数にもとづいて、表1に列挙された伝統的な技術を満足する、または、その性能を上回るように、最高の固体技術(solid state technology)を組み合わせる。この性能へのキーは、光導体アーキテクチャである。ダイオードレーザーからの赤色のような、単一出力は競合し得る。しかしながら、一群の出力は、本件明細書に開示された光導体によって、最善に作ることができない。本発明の実施形態では、光導体機関は、用途に応じて、500mW/色を越えて10W/cm2に至るまで高められる狭帯域の光を発光することができる。本発明の実施形態では、10nmのように狭い帯域幅が利用可能である。そのような出力および全体的な発光の強さは、印象的であるものの、バイオ分析向けの任意の照明サブシステムの価値を計るための最も重要な性能係数は、試料に供給される高品質な照明の強さである。これは、機器の設計、試料容量、非常に明確な特定用途によって定められる係数である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
医療機器や携帯型診断器具の場合において、光導体の本発明は、光の生成(発光)のために、賢明な選択肢を提供する。光導体機関は、光学サブシステム(optical subsystem)である。それは、集光および伝送光学系を備えた出力要件を最も満足することに合わせた固体技術に基づく、それぞれの個々の出力のためのランプモジュールからなる。光導体機関の性能は、表2に強調される。光導体機関によってもたらされる高性能な照明は、照明コンポーネント全体を置き換えるように設計された単一の小型ユニットで実現される。光源、励起フィルター、多色切り替え機能(multicolor switching capabilities)、および、高速律動(fast pulsing)は、外部の光学系または力学系を要しないように、1つのボックスの中に含まれる。
【0013】
持ち運び可能な蛍光測定機器や生物医学的機器に対するニーズを満足するように設計された、本発明の実施形態の光導体機関の数値指標
【表2】

【0014】
安全で、効果的で、商業的に実現可能な生命科学ツールや生物医学的デバイスの生産に何よりも最適で、費用のかからない照明のソリューション(解決策)は、固体光源機関(solid state light engine)を用いて達成することができる。本発明の実施形態では、この光源機関は、強力で、純粋で、安定した、高価でない、紫外−可視−近赤外線(UV-Vis-NIR)にわたる光源を提供することができる。光源機関は、光管理コンポーネントの全体構成を、単一で、簡素なユニットに直接的に置き換えられるように設計される。パワー、スペクトル幅および純度、安定性および信頼性データは、今日の生物学的分析のニーズに対するこれらの光源機関の優れている点を実証することでしょう。性能およびコスト分析は、生物医学的応用分野向けの光源としての適合性、新規な計測ツールの開発/評価ための実装、および、全体の優れた信頼性に関して、ランプ、レーザーおよびLEDsに基づいた伝統的な光学サブシステムと比較することができる。そのような光源を用いることで、携帯型や手持ち式の分析器および高度に集積された光源を備える使い捨て機器に対する要求を果たすことができる。
【0015】
ランプ
本発明の様々な実施形態では、ランプは、所望の試料における感光性の目標から蛍光を励起する、光の波長を放つ。本発明の様々な実施形態では、ランプは、筒状、棒状、または、可変あるいは一定直径のファイバー状にすることができる。本発明の様々な実施形態では、構成要素である光導体は、ガラス、プラスチック、単一または複数の無機結晶、あるいは、密閉液体(confined liquid)で作られる。本発明の様々な実施形態では、導体は、希土類元素(rare earth)、遷移金属、または、ドナーアクセプタ対を含む有機あるいは無機化合物などのような狭帯域発光体を含有するか、それとも、そのような狭帯域発光体を含む1つの層または複数の層で覆われる。本発明の様々な実施形態では、ランプは、LED、レーザー、蛍光灯、アーク灯、白熱灯、または、その他の光源から、紫外線(UV)、赤外線(IR)、または、可視光線によって励起されたとき、限られた発光を放つ。本発明の実施形態では、ランプは、自然発光(spontaneous emission)の過程によって動作し、効率的な誘導放出(レーザー動作)に使用可能なものよりも、より多くの使用可能な波長の選択肢を結果として生じる。
【0016】
リレー光学系(Relay Optics)
本発明の実施形態では、リレー光学系は、光導体、光ファイバー、レンズおよびフィルターからなり、光をランプから1つ以上の毛細管や光導体、光ファイバー、レンズおよびフィルターに光学的に移送し、それらは、励起光を毛細管に連結するため、毛細管から外への発光を結合するため、および、励起と発光の物理的な識別を高めるためのアダプターと連動して、任意の蛍光発光を集光して、適切な検出器、または、一連の検出器に移送する。本発明の実施形態では、ファイバーを含むリレー光学系は、ランプからの光が、励起効率を高めるために、複数回、1つ以上のキャピラリーを通過することができるように、ループ状に構成するか、または、キャビティ(cavity)として構成することができる。
【0017】
本発明の実施形態では、一色以上の光をそれぞれ放つ複数のランプは、それらの構成要素であり、並列または直列に連結された光導体を備えることができ、同時にまたは順々に複数色を生成するように動作する。本発明の実施形態では、1つ以上のランプは、単一チャネル、並列多重チャネル、多次元における多重チャネル、分析チャネルに沿った多数の箇所、および/または、流れるストリーム(flow stream)に連結したレザバー(reservoir)を照らすことができる。
【0018】
本発明の実施形態では、ランプは、測定過程の間、絶え間なく明るく照らすことができ、または、時間ベースの検出方法を可能にするために、高速でオンとオフをパルス出力させることができる。本発明の実施形態では、ランプは、熱出力を排除するために、測定と測定との間で、スイッチをオフにすることができる。これは、連続的に動作していなければ不安定となるアーク灯やレーザーのような別の選択肢と対照的である。
【0019】
照明および集光系(Illumination and Collection System)
本発明の実施形態では、キャピラリー(毛細管)/蛍光発光装置のための柔軟な照明および集光系は、さまざまな数の試料を許容して、同時に分析させる。‘同時に’とは、本件出願では、近い時間に発生するものとして定義される。2本の光導体は、同時に、2つの毛細管を明るく照らすことができ、それら毛細管のうち1つの毛細管中の分子からの蛍光発光は、吸収(absorption)、燐光(phosphoresce)および/または、それら毛細管のうち1つの毛細管中の分子からの蛍光発光の遅れを生じる蛍光発光に関する物理的または化学的な作用によって、遅らせることができる。それにもかかわらず、励起は、‘同時検出(simultaneous detection)’を結果として生じると考えられる。本発明の実施形態では、照明および集光系は、複数の毛細管の均一な照明向けに調整することができる。本発明の実施形態では、照明系は、一連の毛細管において、チャネルの配列を明るく照らすことができる。本発明の実施形態では、チャネルの配列は、毛細管にエッジングし、成形し、エンボス加工することができる。本発明の実施形態では、流体導管(fluidic conduit)に直接的に連結された一式のウェル(well)は、反応種(reacting species)の地図あるいは画像を生成するために、多くの箇所(site)において取り調べられるように、当該流体導管の長さに沿って階段状にすることができる。
【0020】
本発明の実施形態では、照明および集光系は、要求どおりの複数の色を発光することができる。本発明の実施形態では、照明および集光系は、発熱を抑えるために、要求通りに、オンとオフを脈動させることができる。本発明の実施形態では、照明および集光系は、時間ベース蛍光検出(time-based fluorescence detection)を可能にするために、オンとオフを脈動させることができる。
【0021】
本発明の実施形態では、照明系は、流体の導管またはレザバー内の均一系反応(homogeneous reactions)に放射線を照射することができる。本発明の実施形態では、照明系は、流体の導管またはレザバーの表面上の不均一系反応(heterogeneous reactions)に放射線を照射することができる。本発明の実施形態では、照明系は、多孔質反応支持体(porous reaction support)の表面上、または、多孔質反応支持体の孔の中の均一または不均一系反応に放射線を照射することができる。
【0022】
本発明のその他の対象や利点は、添付図面を考慮して読めば、様々な実施形態の以下の記載から、当業者に対して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の様々な実施形態は、次の図に基づいて詳細に記載することができる。
【図1】図1は、ランプモジュールと伝送光学系(delivery optics)からなる光源機関サブシステムの概要を示す。
【図2】図2は、典型的なハロゲン化金属ランプと75Wのキセノン電球に対する光源機関の出力を示す。
【図3】図3は、帯域間の高速切り替えのために、10ns未満の立ち上がりおよび立ち下がり時間を有する光導体機関を示す。
【図4】図4は、24時間使用時の光源機関の安定性を示す。
【図5】図5は、8色の光源機関の構成を示し、当該光源機関は、光導体と、5つのその他の固体光源とを含み、単一同軸(single coaxial)の8色ビームを生成するためのダイクロイックミラーを備える。それぞれ個々の光源は、効果的に組み合わせるために平行にされ、色の組み合わせ後、ビームを、本発明の実施形態に従って、照射するために、機器またはシステムへの移送のための光導波路(light guide)に再び焦点が合わされる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の実施形態の光導体機関100を示す。光導体技術によって駆動される個々のランプモジュールは、励起光源102と、典型的に1つ以上のLEDsと、光導体104とからなる。1つの実施形態では、励起光源102および光導体104は、円筒導波管106に収納することができる。励起光源102は、光導体104における発光(luminescence)を駆動する。該光導体104は、グラスまたはポリマーファイバーから成る。1つの実施形態では、光導体104は、ミラー108を含む。グラスファイバーは、希土類金属がドープ(添加、dope)されるか、遷移金属で励起させるかである。ポリマーファイバーは、染料(dye)がドープされる。ファイバーは、高速な応答と減衰期間を有し、伝送光学系の設計を通して、高効率を達成する。ファイバーの設計と選択は、出力照明のピーク波長を決定する。選択肢は、紫外−可視−近赤外線(UV-Vis-NIR)スペクトルに及ぶために存在する。発光の帯域幅は狭く、さらに、伝送光学系に統合された帯域通過フィルター110の使用で定めることができる。1つの実施形態では、伝送光学系は、連結器112に連結された帯域通過フィルター110を含むことができる。当該連結器112は、光伝送管(optical delivery pipe)114に付けられる。当該光伝送管114は、機器(例えば、微量検定板)116に通じる。出力の強さは、管の励起光源の設計を介して決定される。
【0025】
光導体の形状は、出力の角度や空間の範囲を導いて形づけるためのまたとない機会を提供する。高出力電源と組み合わせると、伝送光学系は、光源を様々な機器や分析器に結合するように容易に合わせることができる。センサー、光学プローブ、顕微鏡対物レンズまたは透過液体光導波路(through liquid light guide)、2次元オリゴマーやマイクロ流体チップ(micro fluidic chip)、および、微量検定板は、光導体機関が容易にサポートすることができる全ての照明分野(illumination fields)である。さらに、高出力の電源は、チップ、マイクロアレイまたは微量検定板内の広範囲の照明を可能にし、これまでのところ、スキャニング方式の動作のみが想定され得る機器における高速なスループットをサポートする。
【0026】
光導体励起の好ましい方式は、1つ以上のLEDsの利用である。このアプローチは、LED照明の恩恵:低コスト、耐久性、および、適切な励起波長、光導体を駆動するための高出力パワーを、うまく活用する。そうすることで、LEDの欠点が処理される。スペクトル安定性の欠如やLEDの高角出力特性(high angular output characteristic)は、光導体の発光に影響を与えない。その代わりに、光導体の革新は、エテンデュ(エタンデュ、etendue)保存の法則の回避を可能にする。全ての光源は、この法則に従わなければならない。当該法則は、面積と立体角との積を決して超えない光源からの光の拡散を要求する。エテンデュは、所与のどの光学系においても減少することがない。
【0027】
固体光源出力を調節する能力は、多重化蛍光分析(multiplexed fluorescent assay)ためのまたとない機会を提供する。最新の光源機関の設計は、高速発光(およそ10ns)を伴う固体材料(solid state materials)を採用する。光導体とLEDは、ほぼ同等の変調能力を備え、それゆえに、異なる出力波長に合わせられた複数の光導体を、与えられた分析の範囲内で、複数の蛍光タグを選択的に検出するために採用することができる。加えて、パルス変調および位相変調技術は、蛍光寿命検出(fluorescence lifetime detection)を可能にし、改善された信号対雑音比をもたらす。固体ユニット(solid state units)のそれぞれは、それがオフのときに、低いバックグラウンド信号と高いコントラスト比が実現可能となるように、正確にオフになる。
【0028】
表3は、本光導体機関の発明品の実施形態と性能特性(performance feature)を示す。LEDに改善が施され、半導体レーザーのコストが低下し続けるので、光導体機関に利用可能であるオプションのツールボックスは、発展し続けるであろう。所望の光源機関は、最終的に、光導体、LEDおよびレーザーの組み合せを備えることができる。これらの照明技術のいずれかを伝送光学系に統合する知識や能力は、それぞれ特定の応用の要件をサポートし、技術的および商業的な価値を提供する。
【0029】
光導体エンジン機能セット
【表3】

【0030】
8色光源機関サブシステム
図5は、8色光源機関の配置図を示す。本発明の実施形態では、8色光源機関500は発光性ロッド(luminescent rod)502と、その他5つの固体光源504とを含み、出力510に導かれる、単一同軸の8色ビーム508(例えば、紫外線395、青色440、シアン色(Cyan)485、濃い青緑色(Teal)515、緑色550または575、オレンジ色630、赤色650nm)を生成するためのダイクロイックミラー506を備える。この実施形態では、手動または電気機械フィルター512は、550または575nmの光を発生させるYAGの緑黄フィルタリング(green yellow filtering)を可能にする。付加的な色を使用することができる。例えば、550nmに集中させたカラーバンドは、560nmに集中させたカラーバンドに置き換えることができる。それぞれ個々の光源は、効率的に組み合わされるように平行にされ、色の組み合わせの後、ビームは、本発明の1つの実施形態によると、照射させるために、機器またはシステムに移送するための光導波路に焦点を再び定められる。
【0031】
光源機関サブシステムは、エンドユーザーが高品質の照明を当然だと思うことができるという期待をもって、数多くの生物学的分析ツールを結びつけるように設計されている。表4は、4つの生物学的分析の応用を要約し、光導体を含む光源機関が、より多くの伝統的な照明サブシステムを置き換えることができ、性能面およびコスト面での優位性を提供し得ることを示す。例えば、透過光顕微鏡におけるケーラー照明は、最適な標本照明(specimen illumination)を提供するために、光は、焦点が合わされて、顕微鏡の全体の光路を下方に平行にすることを要する。かなり大きな平面にわたる一様な光の強さは、重要な要件である。実体顕微鏡(stereomicroscopy)向けには、照明は、横から標本に向けられた対物光ファイバー光(objective and fiber optic lights)におけるリングライトを用いて達成される。両方の場合において、光源機関は、光ファイバーケーブルに、有効に接続する必要がある。
【0032】
4つの主要な生物学的分析用途における、光導体機関 対 伝統的な照明サブシステムの性能および費用分析
【表4】

【0033】
携帯型診断ツールに対して、伝送系は、小さな容積全体にわたって均等照明を提供しなければならない。これらの要件は、キャピラリー電気泳動(capillary electrophoresis)で与えられる要件と同等か、それらよりも制限的ではない。キャピラリー電気泳動は、およそ外径350pm(350 pm outer diameter)かつ内径50pro(50 pro inner diameter)の特徴的な大きさを伴う、キャピラリーチューブ(capillary tube)の側面上に焦点が合わされた強烈な(10mW)光を必要とする。この目標を達成するために、伝送系は、(すでに、光ファイバーに接続された)ランプモジュールから光を集光して、平行にするためのボールレンズと、狭帯域の照明を提供するための帯域通過フィルターと、キャピラリー(毛細管)の穴の中心に光を集中させるための非球面レンズとを含む。このアプローチは、80ピンスポットサイズと、キャピラリーチューブに供給される所望の10mWの電力をもたらした。
【0034】
マイクロ流体免疫学的検定(microfluidic immunoassay)向けの伝送系の設計は、光学顕微鏡に要する均等照明とキャピラリー電気泳動に要する小さい体積の照明の両方を必要とする。蛍光タグ付きのバイオマーカーの検出のためのマイクロ流体配列(microfluidic array)における活性部位に均等照明を伝送することができる光源機関は、免疫化学的な応用分野ならびにゲノムの応用分野向けに設計されている。ルミネッセンス光導体の有利な点は、携帯型診断ツールに最適化された照明検出プラットフォーム(illumination-detection platforms)向けに、市販で簡単に利用可能な光源機関ソリューションを提供している。
【0035】
スペクトルバンドおよび出力パワー(Spectral Bands and Output Power)
本発明の様々な実施形態において、光導体エンジンは、他のランプへの可視スペクトル全体にわたる出力パワーと比較すると、十分に動作している(図2参照)。そのような比較は、一般に採用したランプの出力が、時間変動し、使用により劣化するというような免責条項(disclaimers)を要する。光導体機関は、より顕著な安定性と再現性(reproducible)があるように、全て固体状態(solid state)である。図2は、バイオフォトニクス(biophotonics)において十分に訓練された個別のユーザーによって、それぞれのランプに対する製造業者指定の寿命の期間内で得られ、これらの出力は、一般的なハロゲン化金属電球、75Wキセノン電球および光導体機関の典型的な性能を表す。
【0036】
そのような出力の比較は、さらに、ハロゲン化金属電球のとがった山(急増部分)と、光導体光源機関の出力帯域との不釣合いな組み合わせによって複雑化する。しかしながら、そのような不釣合いがなければ、可視スペクトルにわたる光源機関の出力は、バイオテクノロジー向けに最も一般に用いられる、いくつかの発光体の励起エネルギーに匹敵する、スペクトルウィンドウにおけるハロゲン化金属電球の出力に対して、十分に比較される見込みがある。アルゴンイオンレーザーのシアン線(cyan line)と最もよく連携し、アレクサ染料(Alexa dyes)、緑色蛍光タンパク質およびフルオレセインを励起するために良く用いられるウィンドウにおいて、390nmあたりで、DAPIやヘキスト(Hoescht)は励起される。赤色において、どのランプも、Cy5のようなものに対して、かなりのパワーを提供する。また、光源機関は、バイオテクノロジーに最もよく用いられる励起波長のパレットにわたるキセノンランプにも勝る。シアンランプは、特に、可視スペクトルの紫、シアン、青および赤の領域において、うまく働かない。もちろん、より強力なキセノンランプは、かなりの保守コストでも、強化された性能を提供するためにしばしば採用される。
【0037】
本発明の別の実施形態では、図2に見られるように、緑色と、こはく色の帯域の出力は、実質的に倍になっており、フォトン基礎(photon basis)ごとのフォトンにおける、アーク灯対光源機関に対する曲線の下にある領域は、同じになる。もちろん、ピークの形状と、利点(高さ、半値全幅(FWHM)など)の図とは異なる。しかしながら、出力パワーにおける問題の解決は、546nmバンドのアーク灯を考慮しても、光導体機関の代替品を用いる結果としてもたらされることはない。
【0038】
また、光導体機関は、電力が不足する用途のために、短いデューティーサイクルモードで採用され得る。可能ならば、10%デューティーサイクルで100ms未満のパルス幅は、実際に、動作のより長いデューティーサイクルモードあるいは連続モードより、1.5から2.0倍に帯域ごとの出力パワーを改善する。複数のレーザーと音響光学的可同調フィルター(AOTFs)を採用し、安全性、コスト効率および照明ソリューションの採用し易さをも要する用途は、そのような光源機関の性能から利益を得るかもしれない。例えば、多色検出のための蛍光顕微鏡検査法は、このオプションをうまく利用する。電気泳動装置、ガラスマイクロチップにおいて、縦列型反復配列(short tandem repeat, STR)分析に対するAOTFベース多色蛍光検出からの光励起のために、光源機関の代替品のような、多数のその他の生物額的分析プラットフォームがある。
【0039】
高速スイッチング(Fast Switching)
固体の性質(solid state nature)や、独立して動作可能なランプモジュールの設計のために、採用された典型的な材料の高速な減衰時間(およそ10ns)に連動して、光源機関に基づく光導体は、高速分析に対するサポートに関して、任意の広域スペクトル光源(broad spectrum source)よりも性能が優れている。ランプをベースにした光源は、それら光源を1から50ミリ秒の支配期間に委ねる機械的支持を用いるフィルターおよび/またはシャッターに連結される。LEDをベースにしたランプでさえも、たいていの定量的蛍光をベースにした分析に対してフィルタリングを必要とする。光導体をベースにした光源機関は、すべてフィルタリングをその高度に統合された設計に組み込む。したがって、スイッチング時間は、現在、光源を制御する電子機器の基板によって制限される。20マイクロ秒未満の立ち上がり時間と2マイクロ秒未満の立ち下り時間は典型的である(図3参照)。さらに、それぞれの色は、独立に切り換えることができ、TTL、RS232およびUSBによるトリガリングと、RS232、USBまたは手動による強度制御と互換性がある。これは、複数タグの同時励起が、これまで、マルチパス励起フィルターと広帯域光源を用いて行われた実験をサポートする。光導体機関を用いて、個々のレポーターの効果的な瞬間励起(instantaneous excitation)は、光源機関それ自身以外の外部ハードウェア機器を用いずに、様々な励起帯域に対する生物学的事象(biologic event)の迅速な連続照射を達成するために、マイクロ秒のフレーム内で操作することができる。
【0040】
安定性(Stability)
光導体をベースにした光源機関は、固体技術に基づくので、それらは、短期間の実験および長期間の使用の両方において、極めて安定性がある。図4は、当該安定性を表す。光源機関は、直流方式で動作する24V電源によって動作し、よって、60Hzのノイズは生じない。すべての色が同様に動作する。24時間の連続的な動作において、出力は、1%のオーダーでゆらぐ。1ミリ秒のオーダーにおける短期間の安定性は、およそ、0.5%である。0.1ミリ秒間の短期間安定性は、10倍減少させ、0.05%のゆらぎとなる。
【0041】
本発明の様々な実施形態の前述の記載は、例示と説明の目的で与えられているものである。それは、網羅的なものではなく、本発明を、開示された厳密な形式に制限することを意図するものではない。多くの変更や変形は、当業者にとっては明らかであろう。実施形態は、本発明の原理とその実際の適用を最もよく説明するために、選択され、記載されたものであり、それによって、当業者は本発明を理解することができ、様々な実施形態と様々な変更は、考えられる特定用途に対して最適である。本発明の範囲は、特許請求の範囲やそれらと同等のものによって定義されることを意図する。本発明のその他の特徴、側面および対象は、図面や請求項の見直すことから得ることができる。本発明のその他の実施形態は、本発明の精神と範囲内に含まれ、開発することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析する方法において、
(a)1色以上の色を有する励起光のビームを生成するために、1以上の発光ダイオードからの励起光とともに、1以上の光輝性の光導体からの励起光を供給するステップと、
(b)前記励起光のビームを前記試料に向けるステップと、
(c)前記試料からの蛍光発光を1以上の蛍光検出器に向けるステップと
を含む、試料を分析する方法。
【請求項2】
前記供給するステップは、単一同軸ビームを含む励起光のビームを生成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給するステップは、励起光の5以上の選択された波長を含む励起光のビームを生成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記励起光のビームに対する波長間を高速に切り替えるステップであって、切り替え時間は下限1nsから上限20nsの間である、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記励起光の安定性を変更するステップであって、前記安定性は、下限0.01AUから上限0.1AUの間である、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記供給するステップは、8つの選択された波長を含む励起光のビームを生成することを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1以上の蛍光タグを有する試料を分析できるようにするための固体光源機関において、
少なくとも1つの光導体と、
少なくとも1つの固体光源と、
1以上のダイクロイックミラーと
を含み、
前記少なくとも1つの固体光源は、前記光導体の中において発光を生じさせ、
前記少なくとも1つの光導体、前記少なくとも1つの励起光源、および1以上のダイクロイックミラーは、複数の色を有する励起光のビームを生じさせるために用いられ、前記励起光のビームは、前記試料内の1以上の蛍光タグを選択的に検出できるようにする、固体光源機関。
【請求項8】
前記1以上の励起光源は、発光ダイオード(LEDs)であることを特徴とする請求項7に記載の固定光源機関。
【請求項9】
5つの固体光源機関は、励起光の8色ビームを生成するために前記1以上のダイクロイックミラーとともに用いられることを特徴する請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項10】
前記励起光の8色ビームは、単一同軸ビームであることを特徴する請求項9に記載の固体光源機関。
【請求項11】
複数の光導体と複数の励起光源は、同等の変調能力を有し、それによって、前記複数の光導体は、異なる出力波長に合わされ、前記試料内の複数の蛍光タグを選択的に検出できるようにすることを特徴とする請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項12】
前記少なくとも1つの固体光源のそれぞれは、効率的に組み合わされるように、平行にすることを特徴とする請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項13】
前記少なくとも1つの固体光源の1つ以上からの光をフィルターにかけるための1以上のフィルタースライダーをさらに含む請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光導体は、希土類金属がドープされたグラスファイバー、遷移金属で励起させたグラスファイバー、および、染料がドープされたポリマーファイバーのうち1つを含む請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項15】
前記光源機関は、自然発光の過程によって動作することを特徴とする請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項16】
前記光源機関は、1以上の光ファイバーを有するリレー光学系を含む請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項17】
前記リレー光学系は、励起効率を向上させるために、光が1以上のキャピラリーを複数回通過することができるように、ループ状に構成されることを特徴とする請求項16に記載の固体光源機関。
【請求項18】
複数の光導体を含み、前記複数の光導体は、並列に結合されることを特徴とする請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項19】
複数の光導体を含み、前記複数の光導体は、直列に結合されることを特徴とする請求項7に記載の固体光源機関。
【請求項20】
1以上の蛍光タグを有する試料を分析できるようにするシステムにおいて、
光導体機関であって、少なくとも1つの光導体と、少なくとも1つの固体光源と、少なくとも1つ以上のダイクロイックミラーとを含み、前記少なくとも1つの固体光源は、前記光導体の中において発光を生じさせ、前記少なくとも1つの光導体、前記少なくとも1つの励起光源、および前記少なくとも1つ以上のダイクロイックミラーは、複数の色を有する励起光のビームを生成するために用いられ、前記励起光のビームは、前記試料内の前記1以上の蛍光タグを選択的に検出できるようにする、光導体機関と、
前記励起光のビームをフィルターにかける、前記光導体機関に取り付けられた少なくとも1つのフィルターと、
前記光導体機関から前記試料に、前記励起光を導けるようにする光学伝送管と
を含むシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515928(P2012−515928A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548145(P2011−548145)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021843
【国際公開番号】WO2010/085673
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511178843)ルーメンコア インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】