説明

高圧放電ランプ及び照明装置

【課題】紫外線及び一部青色光を必要としない生物等の損傷防止、紙や布類等の劣化防止、飛来昆虫の誘引低減を図る。
【解決手段】外管バルブ12の中央部における紫外線カット被膜の膜厚を基準とした場合に、バルブトップ側約30度からバルブ封止部側約30度までにおける領域Iの膜厚が基準近傍の第1の膜厚であり、バルブトップ側約30度から約60度における領域IIの膜厚が第1の膜厚の最大値以上の第2の膜厚であり、バルブ封止部側約30度から約60度における領域IIIの膜厚が各部の膜厚中で最も薄い第3の膜厚である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害なまたは飛来昆虫を誘引する原因となり、また照射後の変退色を促進する紫外線をカットする紫外線カット被膜を備えた高圧放電ランプ、及びこの高圧放電ランプを用いて構成した照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧放電ランプにおいても、紫外線をカットするフィルタなどを設けたものが知られている。係る構成のランプにより、紫外線及び一部青色光を必要としない生物等の損傷防止、紙や布類等の劣化防止、飛来昆虫の誘引低減を図ることができる。
【0003】
上記のような高圧放電ランプの一例として、特許文献1に記載のものを挙げることができる。この特許文献1の高圧放電ランプにおいては、ランプの高温化に鑑み、透光性ガラスの表面に耐久性及びコスト面において優れた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主成分とする紫外線吸収被膜を形成した構成を備えている。
【0004】
また、特許文献2には、紫外線カット特性の改善を図るべく、酸化亜鉛(ZnO)にIn、Bi、Feをドープし、ドープ金属濃度が表面から中心へ向かって変化してゆくように構成した紫外線カットフィルタおよび管球が開示されている。
【特許文献1】特開2001−143657号公報
【特許文献2】特開2006−298749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の高圧放電ランプにあっては、無機酸化物である酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主成分とした紫外線カットフィルタを備えるものであるため、耐熱性、耐久性は優れているが、カット波長が約380nm以下であり、紫外線カット特性が不十分であるという問題がある。
【0006】
他方、特許文献2に記載の紫外線カットフィルタ及び管球によれば、紫外線カット特性が向上するものの、バルブ温度が150゜C前後から最大400〜500゜Cの高温となる金属蒸気放電灯に適用した場合には、紫外線領域近傍の透過率の低下が生じ、金属蒸気放電灯とそれを用いた照明器具に応用した場合には、光色に変化が生じ好ましくないものであった。
【0007】
本発明は上記のような従来の高圧放電ランプにおける問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、紫外線及び一部青色光を必要としない生物等の損傷防止、紙や布類等の劣化防止、飛来昆虫の誘引低減を図るために必要十分な紫外線カット特性を得ることができると共に、高温となる場合にも光色に変化が生じない高圧放電ランプ及びそれを用いた照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高圧放電ランプは、透光性ガラス基材バルブ表面にインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主体とする紫外線カット材料を塗布することにより形成された紫外線カット被膜であって、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚を1とした場合に、バルブ内の中心とバルブ表面中央とを結ぶ0度の線を基準として、バルブトップ側約30度からバルブ封止部側約30度までにおける基準近傍の第1の膜厚が1±0.1であり、バルブトップ側約30度から約60度における第2の膜厚が第1の膜厚の最大値以上の1.1 〜1.25であり、バルブ封止部側約30度から約60度における第3の膜厚が各部の膜厚中で最も薄い0.8 〜0.9である紫外線カット被膜と;紫外線カット被膜により表面が覆われた発光管と;を具備することを特徴とする。
【0009】
酸化亜鉛(ZnO)微粒子にインジウム(In)をドープすることにより半導体微粒子が生成され、この半導体の存在により、従来380nm以下であったカット波長が長波長側へシフトする。このカット波長を大幅に長波長側へシフトさせると、紫外線により生物等の損傷防止、紙や布類等の劣化防止、飛来昆虫の誘引低減を図る効果の向上が見られるものの、青色光の一部がカットされることになり、光色に変化を生じさせ、透過率低下などの不具合が発生する。
【0010】
カット波長のコントロールは、ドープ金属の濃度を調整することにより可能である。インジウムの亜鉛に対するドープ量は質量比率で2.5〜7.5%である。
【0011】
バルブ温度が150゜C前後から最大400〜500゜Cの高温となる金属蒸気放電灯では、紫外線カット被膜にはインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子が90質量%以上含有されており、この紫外線カット被膜のカーボン残量を0.5質量%以下とするのが好ましい。この紫外線カット被膜は、膜耐熱温度を400゜C以上にすることが可能である。無機バインダー成分としてSiO2、ZrOなど金属酸化物の含有量が、20質量%以下であることが望ましい。
【0012】
また、紫外線カット被膜の膜厚は、透光性ガラス基材バルブ表面全面にわたって均等ではなく、バルブ内の中心とバルブ表面中央とを結ぶ0度の線を基準として、バルブの中央部付近よりバルブトップ側30度から60度を厚くする一方、バルブの中央部付近よりバルブ封止部側30度から60度を薄くする。これにより、同一材料費によりトータルコート量を同一とした場合、膜厚が透光性ガラス基材バルブ表面全面にわたって均等である紫外線カット被膜を有する高圧放電ランプに比べて、紫外線カット特性が向上する。ここに、膜厚の変化は連続的であっても段階的であっても良い。ランプ自体の配光分布を考慮すると共に、ランプが照明器具本体内に設けられて点灯することを考慮すると、主としてバルブ封止部側から射出される光は紫外線カット膜を通過して、照明器具方向へ進み照明器具の反射面などで反射され、再度バルブ表面の紫外線カット膜に当たって、ここで紫外線吸収が再度生じ、紫外線成分が低減された光となって照明器具本体の前面側へ放射されるものが多いと推定される。
【0013】
一方、バルブトップ側から射出された光は、紫外線カット被膜を通過してそのまま照明器具本体の前面側へ放射されるものが多いと推定される。従って、光が一度だけ紫外線カット被膜を通過すると思われるバルブトップ側において紫外線カット被膜の膜厚を厚くし、光が複数回紫外線カット被膜を通過すると思われるバルブ封止部側において紫外線カット被膜の膜厚を薄くすることにより、同一材料量を用いて効率的な紫外線カット特性を得ることができ、紫外線カット被膜の材料の有効利用を図ることができる。
【0014】
バルブ温度が150゜C前後から最大400〜500゜Cの高温となる金属蒸気放電灯では、紫外線カット被膜の光特性として、50%カット波長が約400〜500nmであり、且つ500nm以上の全透過率が85%以上である。このため、紫外線により損傷生物などの損傷防止を図ることができ、また紙や布等の劣化防止、低誘虫作用等を向上させることができ、また光色変化がない紫外線カット被膜を備える高圧放電ランプを提供することができる。カット波長が、これよりも短波長側となると、ほぼ従来の酸化亜鉛(ZnO)と同程度の効果しか得られず、また、長波長側となると、光色が黄色味がかった色に変化するので好ましくない。
【0015】
高圧放電ランプは、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、水銀ランプ等の金属蒸気放電ランプを意味する。
【0016】
紫外線カット被膜は、所定のランプ特定を備えていれば、その構成に特に制約はないが、所望の光をカットしつつカットする波長以外の光を良好に通過させる膜厚である必要がある。
【0017】
上記のような各部における膜厚により、紫外線カット被膜の光特性として、50%カット波長が約400〜500nmであり、且つ500nm以上の全透過率が85%以上を実現できた。
【0018】
請求項2に記載の高圧放電ランプでは、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚は、0.5〜2μmであり、インジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子の平均粒径が100〜200nmであることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の照明器具は、器具本体と;請求項1または2に記載の高圧放電ランプと;を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る高圧放電ランプは、バルブ内の中心とバルブ表面中央とを結ぶ0度の線を基準として、バルブの中央部付近よりバルブトップ側約30度から約60度を厚くされている一方、バルブの中央部付近よりバルブ封止部側約30度から約60度を薄くされているので、同一材料量を用いて効率的な紫外線カット特性を得ることができ、紫外線カット被膜の材料の有効利用を図ることができる。しかも、本発明に係る高圧放電ランプは、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚を1とした場合に、第1の膜厚が1±0.1であり、第2の膜厚が1.1 〜1.25であり、第3の膜厚が0.8 〜0.9であるので、光透過率が高く、従来の酸化亜鉛(ZnO)による紫外線カット被膜よりも長波長側までカットすることができ、誘虫性低減効果の高い高圧放電ランプを提供できる。
【0021】
本発明の請求項2に係る高圧放電ランプは、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚は、0.5〜2μmであり、インジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子の平均粒径が100〜200nmであるため、従来より更に光透過率が高く、誘虫性低減効果の高い高圧放電ランプを得ることができる。
【0022】
本発明の請求項3に係る照明器具によれば、用いるランプが既に述べた高圧放電ランプであるから光透過率が高く、従来の酸化亜鉛(ZnO)による紫外線カット被膜よりも長波長側までカットすることができ、高い誘虫性低減効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下添付図面を参照して、本発明に係る高圧放電ランプの実施例を説明する。各図において、同一構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
図1に、本発明の実施の形態に係る高圧放電ランプの概略正面図を示す。ここに示した高圧放電ランプは、250W級のメタルハライドランプ10であって、メタルハライドランプ10は、発光管11を備え、発光管11の周囲には透明な外管バルブ12が設けられ、発光管11を保護している。外管バルブ12には、発光管11と導通する給電手段であるE型口金13が取り付けられている。
【0025】
外管バルブ12の外表面には、紫外線カット被膜14が塗膜されている。紫外線カット被膜14は、50%カット波長が約400〜500nmであり、且つ500nm以上の全透過率が85%以上という光特性を有している。これによりメタルハライドランプ10の外管バルブ12からは、ほとんど可視光だけが放射される。
【0026】
紫外線カット被膜14は、インジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主体とするものである。このインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子は、略球形状であって、平均粒径は100〜200nmである。
【0027】
紫外線カット被膜14にあっては、外管バルブ12の中央部における紫外線カット被膜の膜厚を基準とした場合に、バルブトップ側約30度からバルブ封止部側約30度までにおける領域Iの膜厚が基準近傍の第1の膜厚であり、バルブトップ側約30度から約60度における領域IIの膜厚が第1の膜厚の最大値以上の第2の膜厚であり、バルブ封止部側約30度から約60度における領域IIIの膜厚が各部の膜厚中で最も薄い第3の膜厚である。上記の角度は、外管バルブ12内の中心とバルブ表面中央とを結ぶ0度の線を基準とした角度を示している。
【0028】
具体例として、外管バルブ12の中央部における紫外線カット被膜14の膜厚を1とした場合に、領域Iにおける第1の膜厚が1±0.1であり、領域IIにおける第2の膜厚が1.1 〜1.25であり、領域IIIにおける第3の膜厚が0.8 〜0.9である。ここに、膜厚の変化は連続的であっても段階的であっても良い。
【0029】
次に、紫外線カット被膜14の製造方法について説明する。まず、紫外線カット材料としてのインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を、例えば水溶液中の酢酸亜鉛と塩化インジウムを加水分解した後に乾燥して、熱処理して製造する。この紫外線カット材料のインジウムドープ量は、Znに対して2.5〜7.5質量%である。この紫外線カット材料であるインジウムドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を、エタノール+水の溶媒に分散させ、シリカバインダ−等を添加して10〜20質量%の範囲内において所望の濃度である分散液を調整する。この分散液を外管バルブ12の外表面に塗布し、前述の領域I〜IIIにおいて既述の膜厚の塗膜を得る。この塗膜を大気雰囲気において300〜700°Cにて所定時間熱処理して紫外線カット被膜14を形成する。
【0030】
上記領域I〜IIIにおいて、分散液を外管バルブ12の外表面に塗布し、既述の膜厚の塗膜を得る際には、例えば、図2に示されるように、外管バルブ12を、容器30内に所定満たされた分散液Pに漬け込み、徐々に上方(矢印方向)へ引き上げる。この引上げの場合に、引上げ速度を制御して所望の膜厚を得る。引上げ速度を速めるに従って外管バルブ12が分散液Pに漬っている境界点Bにおいて膜厚が厚くなり、引上げ速度を緩めるに従って外管バルブ12が分散液Pに漬っている境界点Bにおいて膜厚が薄くなる。即ち、境界点Bにおいて外管バルブ12の外表面に付着する分散液Pの付着残量を、引上げ速度を調整することにより、上記領域I〜IIIにおいて、前述の通りの膜厚を得るようにする。この場合に、領域Iの膜厚は0.5〜2.0μmの範囲、例えば1.0μmの膜厚とする。
【0031】
上記の通りに領域I〜IIIにおいて、紫外線カット被膜14の膜厚を変化させる根拠を説明する。紫外線カット被膜無しの外管バルブ12を有する高圧放電ランプにおける各領域I〜IIIにおけるUVA量UVANONと、均一膜厚を有する紫外線カット被膜有りの外管バルブ12を有する高圧放電ランプにおける各領域I〜IIIにおけるUVA量UVACUTとを測定し、UVACUT/(UVANON)をグラフとすると図3のようになる。なお、外管バルブ12の中央部におけるUVACUT/(UVANON)を1とし図3を描いてある。
【0032】
この図3から明らかな通り、バルブトップ側においてUVANONが相対的に大きいために、相対値が1.0以下に低下しており、バルブ封止部側においてUVANONが相対的に小さいために、相対値が1.0以上に上昇していると推察できる。
【0033】
そこで、外管バルブ12の中央部における紫外線カット被膜14の膜厚を1とした場合に、図4に示すように紫外線カット被膜14の膜厚を変化させる。領域Iにおけるバルブトップ側約30度からバルブ封止部側約30度までは、概ね「1」とする。即ち、領域Iにおける第1の膜厚が1±0.1である。バルブトップ側約60度では1.2である。バルブトップ側約30度の値とバルブトップ側6約0度の値とを結ぶ線分が示す値になるように紫外線カット被膜14の膜厚を変化させる。即ち、領域IIにおける第2の膜厚が1.1 〜1.25である。バルブ封止部側約60度では0.85である。バルブ封止部側約30度の値とバルブ封止部側約60度の値とを結ぶ線分が示す値になるように紫外線カット被膜14の膜厚を変化させる。即ち、領域IIIにおける第3の膜厚が0.8 〜0.9である。
【0034】
以上の通り、紫外線カット被膜14の膜厚が制御されているので、同一材料量を用いて効率的な紫外線カット特性を得ることができ、紫外線カット被膜の材料の有効利用を図ることができる。そして、光色が黄色味がかった色に変化することもなく、紫外線及び一部青色光を必要としない生物等の損傷防止や紙、布等の劣化防止、低誘虫用として好適な赤外線カット特性を有したメタルハライドランプ10を提供することができる。
【0035】
なお、紫外線カット被膜14は、メタルハライドランプ10の外管バルブ12の外表面に塗布する場合に限定されず、外管バルブ12の内外表面のいずれか一方の面に形成することができる。
【0036】
紫外線カット被膜の光特性として、50%カット波長が約400〜500nmであり、且つ500nm以上の全透過率が85%以上である。このため、紫外線により損傷生物などの損傷防止を図ることができ、また紙や布等の劣化防止、低誘虫作用等を向上させることができ、また光色変化がない紫外線カット被膜を備える高圧放電ランプを提供することができる。カット波長が、これよりも短波長側となると、ほぼ従来の酸化亜鉛(ZnO)と同程度の効果しか得られず、また、長波長側となると、光色が黄色味がかった色に変化するので好ましくない。
【0037】
、紫外線カット被膜にはインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子が90質量%以上含有されており、この紫外線カット被膜のカーボン残量を0.5質量%以下とすることにより、バルブ温度が150゜C前後から最大400〜500゜Cの高温となる金属蒸気放電灯においても有効である。カーボン残量が0.5質量%を超えると、ランプを継続点灯した場合に透過率低下を招来し易いので注意を要する。
【0038】
また、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚は、0.5〜2μmであり、インジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子の平均粒径が100〜200nmであるため、従来より更に光透過率が高く、誘虫性低減効果の高い高圧放電ランプを得ることができる。
【0039】
図5は、第1の実施形態に係るメタルハライドランプの分光放射特性(Relative Intensity vs wave length)を示すグラフであり、特に350nmから500nm付近を示したものである。このグラフにおいて、(A)はインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主体とする紫外線カット被膜を有するものであり、(C)は上記特許文献1に記載された酸化亜鉛(ZnO)の紫外線カット被膜を有するものであり、(D)は紫外線カット被膜を有しないものである。(A)はインジウム(In)ドープ酸化亜鉛(ZnO)微粒子のIn/Zn(モル比)が約5/95の材料を示している。また、(E)は昆虫の比視感度(Relative Luminousity factor vs wave length)曲線を示し、(F)は製紙の相対破損度曲線を示す。
【0040】
図5を参照すると、(A)の紫外線カット被膜を有するメタルハライドランプでは、波長405〜425nmの領域の青色光を有効にカットしていることが分かる。(C)の紫外線カット被膜を有するメタルハライドランプは、波長405nm未満の紫外線をカットしているが、波長405nm以上の紫外線をほとんどカットせず、(D)のものと特性に大きな差は見られない。しかも、(A)の紫外線カット被膜を有するメタルハライドランプは、(E)により示す昆虫の比視感度曲線のピーク(350nm付近)において紫外線をカットし、(F)により示す製紙の相対破損度曲線の破損度が大きい領域(450nm以下)において紫外線をカットすることが分かり、誘虫性低減効果が高く、且つ紙や布等の劣化防止を図ることが可能な高圧放電ランプである。
【0041】
図6は、本発明の第2の実施形態の照明器具を示す概略断面図である。この照明器具は、高圧放電ランプ10が照明器具40に収容されている。本実施例の照明器具40は、下面に開口部43を有し、概ね放物面である内壁を備える反射体41を備えている。反射体41の最上部は筒状とされており、ここにソケット42が設けられている。
【0042】
間たるハライドランプ10は、その口金をソケット42に螺合することにより照明器具40に取り付けられる。このような照明器具によれば、光色変化などがなく、紫外線及び一部青色光を必要としない生物等の破損防止を図ることができ、紙や布などの劣化防止も可能であり、誘虫性低減効果が高い照明器具として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る高圧放電ランプを示す概略正面図。
【図2】発明の実施例に係る高圧放電ランプの作製工程を示す概略正面図。
【図3】紫外線カット被膜がない高圧放電ランプのUVA量により、紫外線カット被膜を有する高圧放電ランプのUVA量を除した値のランプ部位による変移を示す図。
【図4】発明の実施例に係る高圧放電ランプが備える紫外線カット被膜の膜厚についてランプ部位による変移を示す図。
【図5】第1の実施形態に係るメタルハライドランプの分光放射特性を示すグラフであり、特に350nmから500nm付近を示した図。
【図6】本発明の第2の実施形態の照明器具を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
10 メタルハライドランプ
11 発光管
12 外管バルブ
13 口金
14 紫外線カット被膜
30 容器
40 照明器具
41 反射体
42 ソケット
43 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性ガラス基材バルブ表面にインジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子を主体とする紫外線カット材料を塗布することにより形成された紫外線カット被膜であって、バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚を1とした場合に、バルブ内の中心とバルブ表面中央とを結ぶ0度の線を基準として、バルブトップ側約30度からバルブ封止部側約30度までにおける基準近傍の第1の膜厚が1±0.1であり、バルブトップ側約30度から約60度における第2の膜厚が第1の膜厚の最大値以上の1.1 〜1.25であり、バルブ封止部側約30度から約60度における第3の膜厚が各部の膜厚中で最も薄い0.8 〜0.9である紫外線カット被膜と;
紫外線カット被膜により表面が覆われた発光管と;
を具備することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
バルブ中央部における紫外線カット被膜の膜厚は、0.5〜2μmであり、インジウム(In)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)微粒子の平均粒径が100〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
器具本体と;
請求項1または2に記載の高圧放電ランプと;を具備したことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−300082(P2008−300082A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142405(P2007−142405)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】