高圧放電ランプ
【課題】封止部内に電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、封止部の長尺化することなく、保持用筒体の長さを大きくとれ、封止部内での傾き量を小さくして、電極の偏芯を小さくしたランプ構造を提案することである。
【解決手段】前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とする。
【解決手段】前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレイ装置やデジタルライトプロッセッサー(DLP:登録商標)などの投射型プロジェクター装置などのバックライトに用いられる高圧放電ランプに関し、特に、封止部内に電極軸を支持する保持用筒体を有する高圧放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター装置のバックライトとして使用される高圧放電ランプにおいては、スクリーンに対して均一にしかも十分な演色性をもって画像を照明することが要求され、このためその光源としては、水銀を多量に封入し、点灯時には100気圧以上の高い水銀蒸気圧を実現するランプが求められている。
【0003】
この種の高圧放電ランプにおけるシール構造としては、電極軸の根元が封止部に埋設された金属箔と接合する、いわゆる箔シール構造が採用されている。また、かかる箔シール構造においては、電極軸を保持するための石英ガラス製の保持用筒体を採用することが行われている。
そして、その封止工程においては、筒状の石英ガラスからなる封止管材料内に、電極、保持用筒体、金属箔、外部リード棒を一体化したマウントを挿入し、封止管用ガラス管をその管軸を中心として回転をさせながら、封止管の外周を加熱、溶融して封止する、いわゆるシュリンクシール方式が採用されている。
このような構造をもつ高圧放電ランプが特許文献1(特開2009−146590号公報)に示されている。
【0004】
図11にこの構造が示されており、高圧放電ランプAは、石英ガラスからなる発光部2とその両端の封止部3、3からなる発光管1を備え、発光部2内の放電空間Sには一対の電極4、4が対向配置されている。
図12を参照して、封止部3の放電空間S側の端部には石英ガラスからなる保持用筒体6が埋設され、該封止部3に溶着されていて、前記電極4の電極軸5は該保持用筒体6の貫通孔7を貫通して後方に延び、その後方端部で封止部3内に埋設された金属箔8に溶接などにより接合されている。
なお、上記文献では、ここでは図示しないが、この保持用筒体6の貫通孔7の断面形状を、平坦面または内方に凸となるよう形成して3箇所以上で電極軸5を保持することにより、保持用筒体6と、電極軸5との過度の固着を防止し、電極曲がりの発生を防止できることが記載されている。
【0005】
ところで、上記従来技術のように、封止部内に保持用筒体を設けて電極軸を支持する構造によって、電極軸の傾きやそれに基づく電極の偏芯を一定程度抑制する効果は期待できる。
しかしながら、近時における電極間距離の短縮化やランプへの高入力化の傾向から、電極の偏芯に対する要求は厳しくなってきており、一層の偏芯防止への対応が求められてきている。
【0006】
かかる観点から上記従来技術を考察すると、封止部3内に埋設された保持用筒体6では、電極4の電極軸5がこれを貫通し、当該電極軸5の後端部が保持用筒体6の後方にまで延在して、金属箔8と接合されている構造であるので、保持用筒体6の長さはどうしても該金属箔8によって限定されてしまう。つまり、前記保持用筒体6を長くしようとしても金属箔8までの長さとすることしかできなかった。
図13に、封止工程に際して、保持用筒体6を封止部3内に挿入することから、その両者の間には一定の間隙があり、保持用筒体6は封止部3内でその間隙によってどうしても傾くことが避けられない。そして、その傾き量は保持用筒体6の長さによって左右されることになる。
即ち、図13(A)に示すように、保持用筒体6の長さが短いと、その傾き量X1は大きくなり、図13(B)に示す保持用筒体6が長い場合の傾き量X2より大きなものとなる。そのため、これに保持される電極軸の傾き量が大きくなり、それだけ電極の偏芯量が大きなものとなる。
【0007】
これを改善するためには、保持用筒体6の長さを長くすればよいが、そうすると封止部3が長くなり、発光管1全体が長尺なものとなってしまい、ランプが大型化するという問題があって、上記構成においては、いたずらに保持用筒体6を長くすることはできないという制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−146590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、発光管の封止部内に電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、発光管全体を長尺化することなく、保持用筒体の長さを長くして、これによって支持される電極軸の傾き量を減少し、電極の偏芯量を小さなものとすることができるランプ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプは、放電空間内に対向配置された一対の電極の電極軸が封止部内の金属箔に接合され、前記封止部内には前記電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、該幅広本体部が前記スリットに挿入されており、前記小幅部で電極軸に接合されていることを特徴とする。
更には、前記小幅部と電極軸の接合部が保持用筒体内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の高圧放電ランプによれば、保持用筒体に後端面から軸方向のスリットを形成し、金属箔を当該スリットに挿入するようにしたことにより、保持用筒体を金属箔の領域にまで延在することができるので、封止部の長尺化することなく保持用筒体の長さを長くすることができ、これによって支持される電極の偏芯量を小さなものに抑制することができるという効果を奏するものである。
また、前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、幅広本体部が前記スリットに挿入されており、小幅部で電極軸に接合されていることによって、金属箔と電極軸の溶接接合を保持用筒体の外部で行えるので、作業が容易になるとともに、種々の溶接手段を選択でき、その上、当該溶接部を保持用筒体内に収容することによって該溶接部に不所望の力が作用することがなく、電極軸と金属箔との剥離が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の高圧放電ランプにおける封止部の断面図。
【図2】本発明の保持用筒体の斜視図。
【図3】本発明の第1実施例の要部の分解図で、(A)は保持用筒体の断面図、 (B)は金属箔と電極の平面図。
【図4】図3の側面図であり、(A)は保持用筒体の側断面図、(B)は 金属箔と電極の側面図、(C)は(A)のA−A断面図。
【図5】図3、図4の第1実施例の組み立て断面図。
【図6】本発明の第2実施例の要部の分解図で、(A)は保持用筒体の断面図、 (B)は金属箔と電極の平面図。
【図7】図6の側面図であり、(A)は保持用筒体の側断面図、(B)は 金属箔と電極の側面図、(C)は(A)のB−B断面図。
【図8】図6、図7の第2実施例の組み立て断面図。
【図9】図3、図4の第1実施例の組み立て工程図。
【図10】図6、図7の第2実施例の組み立て工程図。
【図11】従来の高圧放電ランプの全体断面図。
【図12】図11の要部拡大断面図。
【図13】保持用筒体の長さによる傾き量の差を説明した説明図。
【0014】
図1は本発明の高圧放電ランプにおける封止部を示し、図において、封止部3内に埋設された保持用筒体10には貫通孔11が設けられ、電極4の電極軸5が該貫通孔11に挿通されている。
そして、該保持用筒体10は前記電極軸5の後端5aを越えて後方に延在し、金属箔8を包含している。
図2に示されるように、前記保持用筒体10には、その後端面10aから軸方向に沿って平面状のスリット12が形成されており、前記金属箔8の前方部分はこのスリット12内に挿入されている。
なお、本明細書において、前方、前端(面)は電極側、即ち放電空間側を意味し、後方、後端(面)は反電極側、即ち、反放電空間側を意味する。
【0015】
上記構造を図3〜図5を用いて更に詳述する。
図3(A)は保持用筒体10の断面図で、保持用筒体10には貫通孔11が形成されており、その後端面10aから軸方向の前方に向けて平面状のスリット12が形成されている。同図(B)には、電極軸5と平箔状の金属箔8が示されている。
この実施例の場合、特に図4(C)に示されるように、スリット12は貫通孔11の中心軸とは若干偏芯している。
【0016】
図5は、上記のように形成された保持用筒体10と金属箔8及び電極軸5の組み立て断面図である。図において、電極軸5は保持用筒体10の貫通孔11に挿通されて、該貫通孔11よりも後方にまで延在している。
一方、金属箔8は保持用筒体10の後端からスリット12内に挿入されていて、その前方端部において前記電極軸5と重ね合わされ、溶接接合されている。
なお、この実施例では、電極軸5と金属箔8との溶接接合は保持用筒体10の内部で行われるが、後述するように、レーザ溶接を採用することによって容易に接合できる。
【0017】
図6〜図8に異なる実施例が示されている。
この実施例では、図6に示されるように、金属箔8は幅広の本体部8aと先端の小幅部8bとからなり、該本体部8aおよび小幅部8bの長手方向の全体にわたって凹溝が形成されていて、幅広本体部8aの横断面は、ほぼΩ状となっている。
図7(A)および(C)に示されるように、この実施例の場合には、保持用筒体10に形成されるスリット12は、貫通孔11の軸線とほぼ一致する位置にある。
図6(B)および図7(B)に示されるように、電極軸5は金属箔8の小幅部8bにおいて溶接接合されている。
【0018】
図8にこの実施例の組み立て構造が示されていて、金属箔8の幅広本体部8aが保持用筒体10のスリット12内に挿入されていて、図6(B)および図7(B)に示すように、先端小幅部8bにおいて電極軸5と溶接接合されている。
【0019】
次に、上記各実施例の組み立て作業工程を図9および図10によって説明する。
図9に示す第1の実施例の組み立て作業においては、先ず金属箔8を保持用筒体10のスリット12に挿入する(A)。次いで、電極4および電極軸5を保持用筒体10の貫通孔11に挿入して、金属箔8と重ね合わせる(B)。そして、保持用筒体10内の重ね合わせ部分を保持用筒体10の外部からレーザ溶接する(C)。
【0020】
次に、第2実施例の組み立て作業工程を図10によって説明する。
図10において、幅広本体部8aと小幅部8bとからなる金属箔8を、小幅部8b側から保持用筒体10のスリット12(同図には不図示)に挿入する(A)。
この時、(B)に示すように、小幅部8bの先端は保持用筒体10から突出する。この突出した小幅部8bに電極4の電極軸5を重ね合わせる。
次いで、電極軸5と金属箔8の小幅部8bとを溶接する(C)。このとき、溶接部は保持用筒体10の外側に出ているので、この部分の溶接手段としては、前記したレーザ溶接以外に、抵抗溶接等の適宜の溶接手段を採用できる。
そして、保持用筒体10をスライドさせて前記電極軸5と小幅部8bの溶接部分を保持用筒体10内に収容する(D)。
こうすることによって、図1に示すように、溶接接合部13が保持用筒体10内に収容されるので、特に封止作業時などに不所望の力が溶接部に作用することがなく、金属箔8と電極軸6とが剥離してしまうようなことがない。
【0021】
以上説明したように、本発明においては、封止部内に埋設された保持用筒体にスリットを形成して、金属箔を該スリット内に挿入するようにしたので、保持用筒体を電極軸の後方にまで延在させることができ、封止部を長尺化することなく保持用筒体の長さを十分に長くとれ、その結果、封止部内での保持用筒体の傾き量を小さなものとして、電極の偏芯を抑制することができるという効果を奏するものである。
また、金属箔の小幅部で電極軸と溶接接合したので、溶接作業時には溶接部を保持用筒体外に位置することができて、溶接作業が容易になるとともに、その溶接手段の選択肢が広くなり、更に、該溶接部を保持用筒体内に収容することにより、溶接部に不所望の力が作用しないので、金属箔と電極軸との剥離を防止できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 発光管
2 発光部
3 封止部
4 電極
5 電極軸
6 (従来例の)保持用筒体
8 金属箔
8a 幅広本体部
8b 小幅部
10 (本発明の)保持用筒体
11 貫通孔
12 スリット
13 溶接接合部
S 放電空間
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレイ装置やデジタルライトプロッセッサー(DLP:登録商標)などの投射型プロジェクター装置などのバックライトに用いられる高圧放電ランプに関し、特に、封止部内に電極軸を支持する保持用筒体を有する高圧放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター装置のバックライトとして使用される高圧放電ランプにおいては、スクリーンに対して均一にしかも十分な演色性をもって画像を照明することが要求され、このためその光源としては、水銀を多量に封入し、点灯時には100気圧以上の高い水銀蒸気圧を実現するランプが求められている。
【0003】
この種の高圧放電ランプにおけるシール構造としては、電極軸の根元が封止部に埋設された金属箔と接合する、いわゆる箔シール構造が採用されている。また、かかる箔シール構造においては、電極軸を保持するための石英ガラス製の保持用筒体を採用することが行われている。
そして、その封止工程においては、筒状の石英ガラスからなる封止管材料内に、電極、保持用筒体、金属箔、外部リード棒を一体化したマウントを挿入し、封止管用ガラス管をその管軸を中心として回転をさせながら、封止管の外周を加熱、溶融して封止する、いわゆるシュリンクシール方式が採用されている。
このような構造をもつ高圧放電ランプが特許文献1(特開2009−146590号公報)に示されている。
【0004】
図11にこの構造が示されており、高圧放電ランプAは、石英ガラスからなる発光部2とその両端の封止部3、3からなる発光管1を備え、発光部2内の放電空間Sには一対の電極4、4が対向配置されている。
図12を参照して、封止部3の放電空間S側の端部には石英ガラスからなる保持用筒体6が埋設され、該封止部3に溶着されていて、前記電極4の電極軸5は該保持用筒体6の貫通孔7を貫通して後方に延び、その後方端部で封止部3内に埋設された金属箔8に溶接などにより接合されている。
なお、上記文献では、ここでは図示しないが、この保持用筒体6の貫通孔7の断面形状を、平坦面または内方に凸となるよう形成して3箇所以上で電極軸5を保持することにより、保持用筒体6と、電極軸5との過度の固着を防止し、電極曲がりの発生を防止できることが記載されている。
【0005】
ところで、上記従来技術のように、封止部内に保持用筒体を設けて電極軸を支持する構造によって、電極軸の傾きやそれに基づく電極の偏芯を一定程度抑制する効果は期待できる。
しかしながら、近時における電極間距離の短縮化やランプへの高入力化の傾向から、電極の偏芯に対する要求は厳しくなってきており、一層の偏芯防止への対応が求められてきている。
【0006】
かかる観点から上記従来技術を考察すると、封止部3内に埋設された保持用筒体6では、電極4の電極軸5がこれを貫通し、当該電極軸5の後端部が保持用筒体6の後方にまで延在して、金属箔8と接合されている構造であるので、保持用筒体6の長さはどうしても該金属箔8によって限定されてしまう。つまり、前記保持用筒体6を長くしようとしても金属箔8までの長さとすることしかできなかった。
図13に、封止工程に際して、保持用筒体6を封止部3内に挿入することから、その両者の間には一定の間隙があり、保持用筒体6は封止部3内でその間隙によってどうしても傾くことが避けられない。そして、その傾き量は保持用筒体6の長さによって左右されることになる。
即ち、図13(A)に示すように、保持用筒体6の長さが短いと、その傾き量X1は大きくなり、図13(B)に示す保持用筒体6が長い場合の傾き量X2より大きなものとなる。そのため、これに保持される電極軸の傾き量が大きくなり、それだけ電極の偏芯量が大きなものとなる。
【0007】
これを改善するためには、保持用筒体6の長さを長くすればよいが、そうすると封止部3が長くなり、発光管1全体が長尺なものとなってしまい、ランプが大型化するという問題があって、上記構成においては、いたずらに保持用筒体6を長くすることはできないという制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−146590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、発光管の封止部内に電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、発光管全体を長尺化することなく、保持用筒体の長さを長くして、これによって支持される電極軸の傾き量を減少し、電極の偏芯量を小さなものとすることができるランプ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプは、放電空間内に対向配置された一対の電極の電極軸が封止部内の金属箔に接合され、前記封止部内には前記電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、該幅広本体部が前記スリットに挿入されており、前記小幅部で電極軸に接合されていることを特徴とする。
更には、前記小幅部と電極軸の接合部が保持用筒体内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の高圧放電ランプによれば、保持用筒体に後端面から軸方向のスリットを形成し、金属箔を当該スリットに挿入するようにしたことにより、保持用筒体を金属箔の領域にまで延在することができるので、封止部の長尺化することなく保持用筒体の長さを長くすることができ、これによって支持される電極の偏芯量を小さなものに抑制することができるという効果を奏するものである。
また、前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、幅広本体部が前記スリットに挿入されており、小幅部で電極軸に接合されていることによって、金属箔と電極軸の溶接接合を保持用筒体の外部で行えるので、作業が容易になるとともに、種々の溶接手段を選択でき、その上、当該溶接部を保持用筒体内に収容することによって該溶接部に不所望の力が作用することがなく、電極軸と金属箔との剥離が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の高圧放電ランプにおける封止部の断面図。
【図2】本発明の保持用筒体の斜視図。
【図3】本発明の第1実施例の要部の分解図で、(A)は保持用筒体の断面図、 (B)は金属箔と電極の平面図。
【図4】図3の側面図であり、(A)は保持用筒体の側断面図、(B)は 金属箔と電極の側面図、(C)は(A)のA−A断面図。
【図5】図3、図4の第1実施例の組み立て断面図。
【図6】本発明の第2実施例の要部の分解図で、(A)は保持用筒体の断面図、 (B)は金属箔と電極の平面図。
【図7】図6の側面図であり、(A)は保持用筒体の側断面図、(B)は 金属箔と電極の側面図、(C)は(A)のB−B断面図。
【図8】図6、図7の第2実施例の組み立て断面図。
【図9】図3、図4の第1実施例の組み立て工程図。
【図10】図6、図7の第2実施例の組み立て工程図。
【図11】従来の高圧放電ランプの全体断面図。
【図12】図11の要部拡大断面図。
【図13】保持用筒体の長さによる傾き量の差を説明した説明図。
【0014】
図1は本発明の高圧放電ランプにおける封止部を示し、図において、封止部3内に埋設された保持用筒体10には貫通孔11が設けられ、電極4の電極軸5が該貫通孔11に挿通されている。
そして、該保持用筒体10は前記電極軸5の後端5aを越えて後方に延在し、金属箔8を包含している。
図2に示されるように、前記保持用筒体10には、その後端面10aから軸方向に沿って平面状のスリット12が形成されており、前記金属箔8の前方部分はこのスリット12内に挿入されている。
なお、本明細書において、前方、前端(面)は電極側、即ち放電空間側を意味し、後方、後端(面)は反電極側、即ち、反放電空間側を意味する。
【0015】
上記構造を図3〜図5を用いて更に詳述する。
図3(A)は保持用筒体10の断面図で、保持用筒体10には貫通孔11が形成されており、その後端面10aから軸方向の前方に向けて平面状のスリット12が形成されている。同図(B)には、電極軸5と平箔状の金属箔8が示されている。
この実施例の場合、特に図4(C)に示されるように、スリット12は貫通孔11の中心軸とは若干偏芯している。
【0016】
図5は、上記のように形成された保持用筒体10と金属箔8及び電極軸5の組み立て断面図である。図において、電極軸5は保持用筒体10の貫通孔11に挿通されて、該貫通孔11よりも後方にまで延在している。
一方、金属箔8は保持用筒体10の後端からスリット12内に挿入されていて、その前方端部において前記電極軸5と重ね合わされ、溶接接合されている。
なお、この実施例では、電極軸5と金属箔8との溶接接合は保持用筒体10の内部で行われるが、後述するように、レーザ溶接を採用することによって容易に接合できる。
【0017】
図6〜図8に異なる実施例が示されている。
この実施例では、図6に示されるように、金属箔8は幅広の本体部8aと先端の小幅部8bとからなり、該本体部8aおよび小幅部8bの長手方向の全体にわたって凹溝が形成されていて、幅広本体部8aの横断面は、ほぼΩ状となっている。
図7(A)および(C)に示されるように、この実施例の場合には、保持用筒体10に形成されるスリット12は、貫通孔11の軸線とほぼ一致する位置にある。
図6(B)および図7(B)に示されるように、電極軸5は金属箔8の小幅部8bにおいて溶接接合されている。
【0018】
図8にこの実施例の組み立て構造が示されていて、金属箔8の幅広本体部8aが保持用筒体10のスリット12内に挿入されていて、図6(B)および図7(B)に示すように、先端小幅部8bにおいて電極軸5と溶接接合されている。
【0019】
次に、上記各実施例の組み立て作業工程を図9および図10によって説明する。
図9に示す第1の実施例の組み立て作業においては、先ず金属箔8を保持用筒体10のスリット12に挿入する(A)。次いで、電極4および電極軸5を保持用筒体10の貫通孔11に挿入して、金属箔8と重ね合わせる(B)。そして、保持用筒体10内の重ね合わせ部分を保持用筒体10の外部からレーザ溶接する(C)。
【0020】
次に、第2実施例の組み立て作業工程を図10によって説明する。
図10において、幅広本体部8aと小幅部8bとからなる金属箔8を、小幅部8b側から保持用筒体10のスリット12(同図には不図示)に挿入する(A)。
この時、(B)に示すように、小幅部8bの先端は保持用筒体10から突出する。この突出した小幅部8bに電極4の電極軸5を重ね合わせる。
次いで、電極軸5と金属箔8の小幅部8bとを溶接する(C)。このとき、溶接部は保持用筒体10の外側に出ているので、この部分の溶接手段としては、前記したレーザ溶接以外に、抵抗溶接等の適宜の溶接手段を採用できる。
そして、保持用筒体10をスライドさせて前記電極軸5と小幅部8bの溶接部分を保持用筒体10内に収容する(D)。
こうすることによって、図1に示すように、溶接接合部13が保持用筒体10内に収容されるので、特に封止作業時などに不所望の力が溶接部に作用することがなく、金属箔8と電極軸6とが剥離してしまうようなことがない。
【0021】
以上説明したように、本発明においては、封止部内に埋設された保持用筒体にスリットを形成して、金属箔を該スリット内に挿入するようにしたので、保持用筒体を電極軸の後方にまで延在させることができ、封止部を長尺化することなく保持用筒体の長さを十分に長くとれ、その結果、封止部内での保持用筒体の傾き量を小さなものとして、電極の偏芯を抑制することができるという効果を奏するものである。
また、金属箔の小幅部で電極軸と溶接接合したので、溶接作業時には溶接部を保持用筒体外に位置することができて、溶接作業が容易になるとともに、その溶接手段の選択肢が広くなり、更に、該溶接部を保持用筒体内に収容することにより、溶接部に不所望の力が作用しないので、金属箔と電極軸との剥離を防止できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 発光管
2 発光部
3 封止部
4 電極
5 電極軸
6 (従来例の)保持用筒体
8 金属箔
8a 幅広本体部
8b 小幅部
10 (本発明の)保持用筒体
11 貫通孔
12 スリット
13 溶接接合部
S 放電空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間内に対向配置された一対の電極の電極軸が封止部内の金属箔に接合され、前記封止部内には前記電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、
前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、該幅広本体部が前記スリットに挿入されており、前記小幅部で電極軸に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記小幅部と電極軸の接合部が保持用筒体内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の高圧放電ランプ。
【請求項1】
放電空間内に対向配置された一対の電極の電極軸が封止部内の金属箔に接合され、前記封止部内には前記電極軸が挿通される石英ガラス製保持用筒体が埋設されてなる高圧放電ランプにおいて、
前記保持用筒体は、挿通された電極軸の後端よりも後方にまで延在しており、その後端面から軸方向に沿って平面状のスリットが形成されるとともに、該スリット内に金属箔が挿入されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記金属箔が幅広本体部とその先端の小幅部とからなり、該幅広本体部が前記スリットに挿入されており、前記小幅部で電極軸に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記小幅部と電極軸の接合部が保持用筒体内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の高圧放電ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−171089(P2011−171089A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33087(P2010−33087)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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