高圧放電灯点灯装置及び照明器具
【課題】 定常動作の開始直後の立ち消えが発生しにくい高圧放電灯点灯装置及び照明器具を提供する。
【解決手段】 高圧放電灯の始動に当り、点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力される始動動作P1が行われた後、判定動作P2で高圧放電灯の両端電圧Vlaが所定の始動判定電圧と比較される。判定動作P2で高圧放電灯の両端電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合、再度の始動動作P1が行われた後、高圧放電灯の点灯を維持する定常動作が開始される。定常動作P3の前の始動動作P1中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【解決手段】 高圧放電灯の始動に当り、点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力される始動動作P1が行われた後、判定動作P2で高圧放電灯の両端電圧Vlaが所定の始動判定電圧と比較される。判定動作P2で高圧放電灯の両端電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合、再度の始動動作P1が行われた後、高圧放電灯の点灯を維持する定常動作が開始される。定常動作P3の前の始動動作P1中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属蒸気中のアーク放電による発光を利用する高圧放電灯を点灯させる高圧放電灯点灯装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の高圧放電灯点灯装置として、例えば図12に示すようなものがある。
【0004】
この高圧放電灯点灯装置は、直流電源Eから入力された直流電力を適宜変換して高圧放電灯DLに出力する電力変換回路1と、高圧放電灯DLの両端電圧(以下、「ランプ電圧」と呼ぶ。)Vlaの実効値を検出するランプ電圧検出回路2と、ランプ電圧検出部2によって検出されたランプ電圧Vlaの実効値に応じて電力変換回路1を制御する制御回路3とを備える。
【0005】
詳しく説明すると、直流電源Eとしては、電池を用いることができるほか、外部の商用電源等の交流電源(図示せず)から入力された交流電力を所定電圧の直流電力に変換する周知の直流電源回路を用いてもよい。
【0006】
電力変換回路1は、それぞれ2個ずつのスイッチング素子Q1〜Q4からなる2個の直列回路が直流電源Eの出力端間に互いに並列に接続されたフルブリッジ回路と、上記の直列回路のうち一方のスイッチング素子Q3,Q4の接続点に一端が接続されるとともに他端が高圧放電灯DLの一端(すなわち一方の電極)に接続されたインダクタL1と、高圧放電灯DLの他端(すなわち他方の電極)に一端が接続されるとともに上記の直列回路のうち他方のスイッチング素子Q1,Q2の接続点に他端が接続された巻線を有するオートトランスATと、オートトランスATと高圧放電灯DLとの直列回路に並列に接続された第1コンデンサC1と、オートトランスATにおけるタップ(すなわち直列巻線と分路巻線との間)に一端が接続されるとともに他端が直流電源Eの低電圧側の出力端に接続された第2コンデンサC2とを備える。上記の各スイッチング素子Q1〜Q4は、それぞれ、寄生ダイオードを有しており、寄生ダイオードの順方向を直流電源Eの電圧の向きの逆向きとして接続されている。上記のスイッチング素子Q1〜Q4としては例えば電界効果トランジスタを用いることができる。
【0007】
ランプ電圧検出部2は、例えば後述する判定動作P2中のようにランプ電圧Vlaの実効値を検出する期間にランプ電圧Vlaが直流電圧とされる場合には、分圧抵抗(図示せず)を用いて構成することができる。また、ランプ電圧検出部2は、必要に応じて、整流用のダイオード(図示せず)や、平滑用のコンデンサ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0008】
制御回路3は、例えばマイコンと呼ばれる集積回路からなり、電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオンオフ駆動することにより、電力変換回路1から高圧放電灯DLへの出力を制御する。上記のような制御回路3は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0009】
高圧放電灯DLの点灯を開始させる際には、制御回路3は、まず、図13に示すように、高圧放電灯DLの点灯の開始に必要な高電圧を高圧放電灯DLに出力させるように電力変換回路1を制御するという始動動作P1を所定の始動時間にわたって行う。始動動作P1は、インダクタL1に接続された高電圧側のスイッチング素子Q3をオフ状態に維持したままで、オートトランスATに接続された高電圧側のスイッチング素子Q1とインダクタL1に接続された低電圧側のスイッチング素子Q4との組と、オートトランスATに接続された低電圧側のスイッチング素子Q2とが交互にオンされるようにスイッチング素子Q1,Q2,Q4をオンオフ駆動するというものである。また、始動動作P1中には、上記のオンオフ駆動の周波数については、オートトランスATの分路巻線と第2コンデンサC2とが構成する共振回路の共振周波数の高周波数側から低周波数側に所定時間をかけて徐々に変化させられるという動作が所定回数(図では3回)繰り返される。上記の始動動作P1中に、上記の共振回路の共振による電圧がオートトランスATによって昇圧された高電圧が高圧放電灯DLに出力される。この高電圧によって高圧放電灯DLにおいて放電が開始され、高圧放電灯DLが点灯を開始(すなわち始動)する。
【0010】
また、制御回路3は、始動動作P1の終了後、高圧放電灯DLに直流電圧が出力されるように(つまりランプ電圧Vlaが直流電圧となるように)電力変換回路1を制御した状態で、ランプ電圧検出部2によって検出されたランプ電圧Vlaを所定の始動判定電圧と比較するという判定動作P2を行う。判定動作P2中の電力変換回路1の制御としては、具体的には、互いに対角に位置するスイッチング素子Q1〜Q4の組のうち一方の組の各スイッチング素子Q2,Q3をそれぞれオフ状態に維持し、他方の組のスイッチング素子Q1,Q4のうち一方のスイッチング素子Q1をオン状態に維持しつつ他方のスイッチング素子Q4を周期的にオンオフ駆動するというものである。
【0011】
ここで、判定動作P2中のランプ電圧Vlaは、高圧放電灯DLが点灯していない場合には直流電源Eの出力電圧程度となり、高圧放電灯DLが点灯している場合には高圧放電灯DLが消灯している場合よりも低くなる。また、始動判定電圧は、高圧放電灯DLが点灯していればランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満となり、高圧放電灯DLが点灯していなければランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上となるような電圧値とされている。
【0012】
そして、制御回路3は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合、すなわち高圧放電灯DLが点灯していると判定される場合には、高圧放電灯DLの点灯を維持するように電力変換回路1を制御する定常動作P3を開始する。定常動作P3は、判定動作P2と同様の動作を、オフ状態に維持するスイッチング素子Q1〜Q4の組を比較的に低い周波数(以下、「定常周波数」と呼ぶ。)で交互に変更しながら行うことで、定常周波数の矩形波交流電力を高圧放電灯DLに出力させるものである。
【0013】
また、制御回路は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上であった場合、すなわち高圧放電灯DLが点灯していないと判定される場合には、図14に示すように、所定時間にわたって電力変換回路1の全てのスイッチング素子Q1〜Q4をオフ状態に維持することで高圧放電灯DLへの電力の出力を停止させるという停止動作P0を行った後、始動時間にわたる始動動作P1から判定動作P2に至る一連の動作を再度行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2005−507554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、高圧放電灯DLとしてOSRAM社製のHCI−TC/E70W/NDLを用いた場合において、高圧放電灯DLに流れる電流(以下、「ランプ電流」と呼ぶ。)の時間変化(すなわちランプ電流波形)の測定結果を図15(a)(b)に示す。図15(a)は始動動作P1の継続時間が比較的に長く定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極(図示せず)の温度が充分に上がっている場合を示し、図15(b)は始動動作P1の継続時間が比較的に短く定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極の温度が充分に上がっていない場合を示す。
【0016】
定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極の温度が充分に上がっていない場合、定常動作P3の開始直後に高圧放電灯DLの立ち消えが発生しやすくなる。
【0017】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、定常動作の開始直後の立ち消えが発生しにくい高圧放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯の両端電圧の実効値を所定の始動判定電圧と比較するという判定動作を行うものであって、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満となった判定動作の後の始動動作中に仮に高圧放電灯が立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で、高圧放電灯の両端電圧を検出することを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、始動動作が高圧放電灯の点灯中に電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させるようなものである場合に比べ、高圧放電灯の立ち消えが抑えられる。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くすることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値がより低く高圧放電灯での放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作を開始させることができる。
【0027】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が充分に低く高圧放電灯での放電が充分に安定していると推定される場合には、速やかに定常動作を開始させることができる。
【0029】
請求項7の発明は、外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始することを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満となった最初の判定動作と定常動作との間に、少なくとも一回は再度の始動動作が挿入され、この再度の始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。また、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0031】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御することを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが全ての始動動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0033】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、高圧放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明によれば、制御回路は、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後の判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うので、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満となった判定動作の後の始動動作中に仮に高圧放電灯が立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【0035】
請求項3の発明によれば、制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させるので、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きが一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑られる。
【0036】
請求項4の発明によれば、始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであるので、始動動作が高圧放電灯の点灯中に電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させるようなものである場合に比べ、高圧放電灯の立ち消えが抑えられる。
【0037】
請求項5の発明によれば、制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くするので、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値がより低く高圧放電灯での放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作を開始させることができる。
【0038】
請求項6の発明によれば、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始するので、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が充分に低く高圧放電灯での放電が充分に安定していると推定される場合には、速やかに定常動作を開始させることができる。
【0039】
請求項7の発明によれば、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始するので、高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満となった最初の判定動作と定常動作との間に、少なくとも一回は再度の始動動作が挿入され、この再度の始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。また、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0040】
請求項8の発明によれば、始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御するので、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが全ての始動動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図2】同上において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図3】同上における準備時間tpとランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|との関係を示す説明図である。
【図4】同上の変更例におけるランプ電圧Vlaの時間変化を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態2において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施形態3の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図7】同上において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図8】同上の比較例の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図9】同上を用いた照明器具の一例を示す斜視図である。
【図10】同上を用いた照明器具の別の例を示す斜視図である。
【図11】同上を用いた照明器具の更に別の例を示す斜視図である。
【図12】高圧放電灯点灯装置の一例を示す回路ブロック図である。
【図13】判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合の、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図14】判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上であった場合の、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である
【図15】(a)(b)はそれぞれランプ電流波形の測定結果を示す説明図であり、(a)は始動動作P1の継続時間が比較的に長く定常動作P3の開始時に高圧放電灯の各電極の温度が充分に上がっている場合を示し、(b)は始動動作P1の継続時間が比較的に短く定常動作P3の開始時に高圧放電灯の各電極の温度が充分に上がっていない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
以下の各実施形態の基本構成は、それぞれ、図12〜図14で説明した従来例と共通であるので、共通する部分については図示並びに説明を省略する。
【0044】
(実施形態1)
本実施形態では、制御回路3は、図2に示すように、動作を開始(S1)すると、所定の始動時間にわたり始動動作P1(S2)を継続した後に、高圧放電灯DLに直流電圧が出力されるように電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4を制御して判定動作P2を開始し(S3)、判定動作P2においてはランプ電圧検出回路2によって検出されたランプ電圧Vla(厳密には、実効値であり、ランプ電圧Vlaが直流電圧であれば絶対値|Vla|であるが、本実施形態では、判定動作P2におけるランプ電圧Vlaの極性は一定であるので、単に「ランプ電圧Vla」と記載する。)を始動判定電圧V1と比較して(S4)、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1以上であれば(S4でN)、図14で説明した動作と同様に、電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオフ状態に維持する休止動作P0を行った(S5)後に、ステップS2の始動動作P1に戻る。
【0045】
以上の動作は従来例と共通であるが、本実施形態は以下の部分において従来例と異なる。すなわち、制御回路3は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1未満であった場合(S4でY)に、即座に定常動作P3を開始するのではなく、図1に示すように、再度の始動動作P1を、前記判定動作P2におけるランプ電圧Vlaに応じた準備時間tpだけ行い(S6)、その後に、定常動作P3を開始する(S7)。上記の準備時間tpは、図3に示すように、上記のランプ電圧Vlaが低いほど短くされる。
【0046】
上記構成によれば、判定動作P2の後の始動動作P1中に仮に高圧放電灯DLが立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作P1中に高圧放電灯DLの各電極の温度を上昇させることができるから、従来例のように判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯DLの立ち消えが発生しにくい。
【0047】
また、ランプ電圧Vlaが低いほど、定常動作P3の前の始動動作P1の継続時間が短くされるので、ランプ電圧Vlaがより低く高圧放電灯DLでの放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作P3を開始させることができる。
【0048】
なお、始動動作P1と判定動作P2とが複数回行われる場合に、判定動作P2毎にランプ電圧Vlaの向き(極性)を反転させてもよい。ランプ電圧Vlaの向きの反転は、例えば、電力変換回路1の互いに対角に位置する一方の組のスイッチング素子Q1,Q4に対する制御と、他方の組のスイッチング素子Q2,Q3に対する制御とを、入れ替えた動作とすることで達成することができる。この構成を採用すれば、高圧放電灯DLの電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生を抑えることができる。
【0049】
さらに、始動動作P1の内容は従来例と同じものに限られず、図4に示すように、ランプ電圧Vlaが定常動作P3中の周波数よりも高い周波数の交流電圧となるような動作としてもよい。図4の例では、始動動作P1の間に高圧放電灯DLの点灯開始に伴ってランプ電圧Vlaの振幅が減少している。図1と図4とのいずれの場合であっても、始動動作P1は、少なくとも高圧放電灯DLが点灯している間にはランプ電圧Vlaの周波数を変化させないものであることが、高圧放電灯DLの立ち消えを防ぐためには望ましい。また、始動動作P1は、点灯した高圧放電灯DLに対して高圧放電灯DLの定格電力の25%以上の電力が出力されるようなものとすることが、始動動作P1中の高圧放電灯DLの立ち消えを防ぐためには望ましい。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるので、共通する部分については説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、制御回路3は、判定動作P2において、図5に示すように、ランプ電圧Vlaを、始動判定電圧V1だけでなく、始動判定電圧V1よりも低い所定の安定判定電圧V2(<V1)とも比較する(S8)。そして、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1以上であれば従来例と同様に休止動作P0を行った(S5)後に再度の始動動作P1と判定動作P2とを行う。また、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1未満であって且つ安定判定電圧V2以上であれば(S4でY且つS8でN)、実施形態1と同様に再度の始動動作P1を行い(S6)、その後に定常動作P3を開始する(S7)。さらに、ランプ電圧Vlaが安定判定電圧V2未満であれば(S8でY)、高圧放電灯DLの電極の温度が充分に上がっていて高圧放電灯DLでの放電が安定していると判定して、始動動作P1を挟まずに即座に定常動作P3を開始する(S7)。
【0052】
上記構成によれば、判定動作P2の時点で高圧放電灯DLの電極の温度が充分に上がっていて高圧放電灯DLでの放電が安定している場合に、実施形態1よりも速やかに定常動作P3を開始することができる。
【0053】
(実施形態3)
本実施形態の基本構成は実施形態2と共通であるので、共通する部分については説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、図6及び図7に示すように、始動動作P1において高圧放電灯DLが点灯した後に高圧放電灯DLに出力されることになる直流電圧の極性(向き)と、判定動作P2中に高圧放電灯DLに出力される直流電圧の極性とが、始動動作P1毎、判定動作P2毎に反転される(S9)。このような極性の反転は、例えば、電力変換回路1の互いに対角に位置する一方の組のスイッチング素子Q1,Q4に対する制御と、他方の組のスイッチング素子Q2,Q3に対する制御とを、入れ替えた動作とすることで達成することができる。図6の例では、オートトランスAT側のスイッチング素子Q1,Q2同士で制御を入れ替えるとともに、インダクタL1側のスイッチング素子Q3,Q4同士で制御を入れ替えることで、上記のような極性の反転を実現している。上記のような極性の反転により、判定動作P2中の上記直流電圧の極性が一定とされる場合や、図8に示すように始動動作P1中の上記直流電圧の極性が一定とされる場合に比べ、高圧放電灯DLの電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生を抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態では、制御回路3は、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2以上であれば、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1未満であったとしても定常動作P3を開始しない。すなわち、判定動作P2においてランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1未満か否かの違いは、次の始動動作P1が行われる(S2)前に休止動作P0が行われる(S5)か否かにのみ影響する。
【0056】
また、制御回路3は、判定動作P2において、始動動作P1を挟んだ前回の判定動作P2でランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となっていたか否かの判定も行い(S10)、前回と今回との両方で(つまり2回連続で)ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となった場合(S4とS8とS10との全てでY)のみ、定常動作を開始する(S7)。
【0057】
また、上記以外の場合(S4とS8とS10とのいずれかでN)には上記のように極性を反転(S9)させた上で再度の始動動作P1を開始する(S2)。特に、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1以上であれば(S4でN)、上記再度の始動動作P1の前に休止動作P0が挿入される(S5)。
【0058】
上記構成によれば、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となった最初の判定動作P2(図6での1回目の判定動作P2)と定常動作P3との間に、少なくとも一回は再度の始動動作P1が挿入され、この再度の始動動作P1中に高圧放電灯DLの各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯DLの立ち消えが発生しにくい。
【0059】
上記の各種の高圧放電灯点灯装置は、例えば図9〜図11に示すような照明器具5に用いることができる。図9〜図11の照明器具5は、それぞれ、電力変換回路1とランプ電圧検出回路2と制御回路3とを収納及び保持した器具本体51と、高圧放電灯DLを保持した灯体52とを備える。また、図9の照明器具5と図10の照明器具5とは、それぞれ、電力変換回路1と高圧放電灯DLとを電気的に接続する給電線53を備える。上記のような各種の照明器具5は周知技術で実現可能であるので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0060】
1 電力変換回路
3 制御回路
5 照明器具
51 器具本体
DL 高圧放電灯
P1 始動動作
P2 判定動作
P3 定常動作
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属蒸気中のアーク放電による発光を利用する高圧放電灯を点灯させる高圧放電灯点灯装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の高圧放電灯点灯装置として、例えば図12に示すようなものがある。
【0004】
この高圧放電灯点灯装置は、直流電源Eから入力された直流電力を適宜変換して高圧放電灯DLに出力する電力変換回路1と、高圧放電灯DLの両端電圧(以下、「ランプ電圧」と呼ぶ。)Vlaの実効値を検出するランプ電圧検出回路2と、ランプ電圧検出部2によって検出されたランプ電圧Vlaの実効値に応じて電力変換回路1を制御する制御回路3とを備える。
【0005】
詳しく説明すると、直流電源Eとしては、電池を用いることができるほか、外部の商用電源等の交流電源(図示せず)から入力された交流電力を所定電圧の直流電力に変換する周知の直流電源回路を用いてもよい。
【0006】
電力変換回路1は、それぞれ2個ずつのスイッチング素子Q1〜Q4からなる2個の直列回路が直流電源Eの出力端間に互いに並列に接続されたフルブリッジ回路と、上記の直列回路のうち一方のスイッチング素子Q3,Q4の接続点に一端が接続されるとともに他端が高圧放電灯DLの一端(すなわち一方の電極)に接続されたインダクタL1と、高圧放電灯DLの他端(すなわち他方の電極)に一端が接続されるとともに上記の直列回路のうち他方のスイッチング素子Q1,Q2の接続点に他端が接続された巻線を有するオートトランスATと、オートトランスATと高圧放電灯DLとの直列回路に並列に接続された第1コンデンサC1と、オートトランスATにおけるタップ(すなわち直列巻線と分路巻線との間)に一端が接続されるとともに他端が直流電源Eの低電圧側の出力端に接続された第2コンデンサC2とを備える。上記の各スイッチング素子Q1〜Q4は、それぞれ、寄生ダイオードを有しており、寄生ダイオードの順方向を直流電源Eの電圧の向きの逆向きとして接続されている。上記のスイッチング素子Q1〜Q4としては例えば電界効果トランジスタを用いることができる。
【0007】
ランプ電圧検出部2は、例えば後述する判定動作P2中のようにランプ電圧Vlaの実効値を検出する期間にランプ電圧Vlaが直流電圧とされる場合には、分圧抵抗(図示せず)を用いて構成することができる。また、ランプ電圧検出部2は、必要に応じて、整流用のダイオード(図示せず)や、平滑用のコンデンサ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0008】
制御回路3は、例えばマイコンと呼ばれる集積回路からなり、電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオンオフ駆動することにより、電力変換回路1から高圧放電灯DLへの出力を制御する。上記のような制御回路3は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0009】
高圧放電灯DLの点灯を開始させる際には、制御回路3は、まず、図13に示すように、高圧放電灯DLの点灯の開始に必要な高電圧を高圧放電灯DLに出力させるように電力変換回路1を制御するという始動動作P1を所定の始動時間にわたって行う。始動動作P1は、インダクタL1に接続された高電圧側のスイッチング素子Q3をオフ状態に維持したままで、オートトランスATに接続された高電圧側のスイッチング素子Q1とインダクタL1に接続された低電圧側のスイッチング素子Q4との組と、オートトランスATに接続された低電圧側のスイッチング素子Q2とが交互にオンされるようにスイッチング素子Q1,Q2,Q4をオンオフ駆動するというものである。また、始動動作P1中には、上記のオンオフ駆動の周波数については、オートトランスATの分路巻線と第2コンデンサC2とが構成する共振回路の共振周波数の高周波数側から低周波数側に所定時間をかけて徐々に変化させられるという動作が所定回数(図では3回)繰り返される。上記の始動動作P1中に、上記の共振回路の共振による電圧がオートトランスATによって昇圧された高電圧が高圧放電灯DLに出力される。この高電圧によって高圧放電灯DLにおいて放電が開始され、高圧放電灯DLが点灯を開始(すなわち始動)する。
【0010】
また、制御回路3は、始動動作P1の終了後、高圧放電灯DLに直流電圧が出力されるように(つまりランプ電圧Vlaが直流電圧となるように)電力変換回路1を制御した状態で、ランプ電圧検出部2によって検出されたランプ電圧Vlaを所定の始動判定電圧と比較するという判定動作P2を行う。判定動作P2中の電力変換回路1の制御としては、具体的には、互いに対角に位置するスイッチング素子Q1〜Q4の組のうち一方の組の各スイッチング素子Q2,Q3をそれぞれオフ状態に維持し、他方の組のスイッチング素子Q1,Q4のうち一方のスイッチング素子Q1をオン状態に維持しつつ他方のスイッチング素子Q4を周期的にオンオフ駆動するというものである。
【0011】
ここで、判定動作P2中のランプ電圧Vlaは、高圧放電灯DLが点灯していない場合には直流電源Eの出力電圧程度となり、高圧放電灯DLが点灯している場合には高圧放電灯DLが消灯している場合よりも低くなる。また、始動判定電圧は、高圧放電灯DLが点灯していればランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満となり、高圧放電灯DLが点灯していなければランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上となるような電圧値とされている。
【0012】
そして、制御回路3は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合、すなわち高圧放電灯DLが点灯していると判定される場合には、高圧放電灯DLの点灯を維持するように電力変換回路1を制御する定常動作P3を開始する。定常動作P3は、判定動作P2と同様の動作を、オフ状態に維持するスイッチング素子Q1〜Q4の組を比較的に低い周波数(以下、「定常周波数」と呼ぶ。)で交互に変更しながら行うことで、定常周波数の矩形波交流電力を高圧放電灯DLに出力させるものである。
【0013】
また、制御回路は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上であった場合、すなわち高圧放電灯DLが点灯していないと判定される場合には、図14に示すように、所定時間にわたって電力変換回路1の全てのスイッチング素子Q1〜Q4をオフ状態に維持することで高圧放電灯DLへの電力の出力を停止させるという停止動作P0を行った後、始動時間にわたる始動動作P1から判定動作P2に至る一連の動作を再度行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2005−507554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、高圧放電灯DLとしてOSRAM社製のHCI−TC/E70W/NDLを用いた場合において、高圧放電灯DLに流れる電流(以下、「ランプ電流」と呼ぶ。)の時間変化(すなわちランプ電流波形)の測定結果を図15(a)(b)に示す。図15(a)は始動動作P1の継続時間が比較的に長く定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極(図示せず)の温度が充分に上がっている場合を示し、図15(b)は始動動作P1の継続時間が比較的に短く定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極の温度が充分に上がっていない場合を示す。
【0016】
定常動作P3の開始時に高圧放電灯DLの各電極の温度が充分に上がっていない場合、定常動作P3の開始直後に高圧放電灯DLの立ち消えが発生しやすくなる。
【0017】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、定常動作の開始直後の立ち消えが発生しにくい高圧放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯の両端電圧の実効値を所定の始動判定電圧と比較するという判定動作を行うものであって、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満となった判定動作の後の始動動作中に仮に高圧放電灯が立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で、高圧放電灯の両端電圧を検出することを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、始動動作が高圧放電灯の点灯中に電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させるようなものである場合に比べ、高圧放電灯の立ち消えが抑えられる。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くすることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値がより低く高圧放電灯での放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作を開始させることができる。
【0027】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が充分に低く高圧放電灯での放電が充分に安定していると推定される場合には、速やかに定常動作を開始させることができる。
【0029】
請求項7の発明は、外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始することを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満となった最初の判定動作と定常動作との間に、少なくとも一回は再度の始動動作が挿入され、この再度の始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。また、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0031】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御することを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが全ての始動動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0033】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、高圧放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明によれば、制御回路は、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後の判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うので、高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満となった判定動作の後の始動動作中に仮に高圧放電灯が立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。
【0035】
請求項3の発明によれば、制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させるので、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きが一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑られる。
【0036】
請求項4の発明によれば、始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであるので、始動動作が高圧放電灯の点灯中に電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させるようなものである場合に比べ、高圧放電灯の立ち消えが抑えられる。
【0037】
請求項5の発明によれば、制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くするので、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値がより低く高圧放電灯での放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作を開始させることができる。
【0038】
請求項6の発明によれば、制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始するので、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が充分に低く高圧放電灯での放電が充分に安定していると推定される場合には、速やかに定常動作を開始させることができる。
【0039】
請求項7の発明によれば、制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始するので、高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満となった最初の判定動作と定常動作との間に、少なくとも一回は再度の始動動作が挿入され、この再度の始動動作中に高圧放電灯の各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作の後に即座に定常動作が開始される場合に比べ、定常動作の開始直後の高圧放電灯の立ち消えが発生しにくい。また、高圧放電灯への出力電圧の向きが全ての判定動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【0040】
請求項8の発明によれば、始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御するので、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが全ての始動動作で一定とされる場合に比べ、高圧放電灯の電極間の温度差が抑えられるから、立ち消えの原因となる半波放電の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図2】同上において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図3】同上における準備時間tpとランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|との関係を示す説明図である。
【図4】同上の変更例におけるランプ電圧Vlaの時間変化を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態2において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施形態3の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図7】同上において定常動作が開始されるまでの制御回路の動作を示す流れ図である。
【図8】同上の比較例の動作を示し、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図9】同上を用いた照明器具の一例を示す斜視図である。
【図10】同上を用いた照明器具の別の例を示す斜視図である。
【図11】同上を用いた照明器具の更に別の例を示す斜視図である。
【図12】高圧放電灯点灯装置の一例を示す回路ブロック図である。
【図13】判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧未満であった場合の、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である。
【図14】判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧以上であった場合の、電力変換回路の各スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ状態とランプ電圧Vlaとの時間変化を示す説明図である
【図15】(a)(b)はそれぞれランプ電流波形の測定結果を示す説明図であり、(a)は始動動作P1の継続時間が比較的に長く定常動作P3の開始時に高圧放電灯の各電極の温度が充分に上がっている場合を示し、(b)は始動動作P1の継続時間が比較的に短く定常動作P3の開始時に高圧放電灯の各電極の温度が充分に上がっていない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
以下の各実施形態の基本構成は、それぞれ、図12〜図14で説明した従来例と共通であるので、共通する部分については図示並びに説明を省略する。
【0044】
(実施形態1)
本実施形態では、制御回路3は、図2に示すように、動作を開始(S1)すると、所定の始動時間にわたり始動動作P1(S2)を継続した後に、高圧放電灯DLに直流電圧が出力されるように電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4を制御して判定動作P2を開始し(S3)、判定動作P2においてはランプ電圧検出回路2によって検出されたランプ電圧Vla(厳密には、実効値であり、ランプ電圧Vlaが直流電圧であれば絶対値|Vla|であるが、本実施形態では、判定動作P2におけるランプ電圧Vlaの極性は一定であるので、単に「ランプ電圧Vla」と記載する。)を始動判定電圧V1と比較して(S4)、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1以上であれば(S4でN)、図14で説明した動作と同様に、電力変換回路1の各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオフ状態に維持する休止動作P0を行った(S5)後に、ステップS2の始動動作P1に戻る。
【0045】
以上の動作は従来例と共通であるが、本実施形態は以下の部分において従来例と異なる。すなわち、制御回路3は、判定動作P2においてランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1未満であった場合(S4でY)に、即座に定常動作P3を開始するのではなく、図1に示すように、再度の始動動作P1を、前記判定動作P2におけるランプ電圧Vlaに応じた準備時間tpだけ行い(S6)、その後に、定常動作P3を開始する(S7)。上記の準備時間tpは、図3に示すように、上記のランプ電圧Vlaが低いほど短くされる。
【0046】
上記構成によれば、判定動作P2の後の始動動作P1中に仮に高圧放電灯DLが立ち消えても再点灯させることができ、この始動動作P1中に高圧放電灯DLの各電極の温度を上昇させることができるから、従来例のように判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯DLの立ち消えが発生しにくい。
【0047】
また、ランプ電圧Vlaが低いほど、定常動作P3の前の始動動作P1の継続時間が短くされるので、ランプ電圧Vlaがより低く高圧放電灯DLでの放電がより安定していると推定される場合には、より速やかに定常動作P3を開始させることができる。
【0048】
なお、始動動作P1と判定動作P2とが複数回行われる場合に、判定動作P2毎にランプ電圧Vlaの向き(極性)を反転させてもよい。ランプ電圧Vlaの向きの反転は、例えば、電力変換回路1の互いに対角に位置する一方の組のスイッチング素子Q1,Q4に対する制御と、他方の組のスイッチング素子Q2,Q3に対する制御とを、入れ替えた動作とすることで達成することができる。この構成を採用すれば、高圧放電灯DLの電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生を抑えることができる。
【0049】
さらに、始動動作P1の内容は従来例と同じものに限られず、図4に示すように、ランプ電圧Vlaが定常動作P3中の周波数よりも高い周波数の交流電圧となるような動作としてもよい。図4の例では、始動動作P1の間に高圧放電灯DLの点灯開始に伴ってランプ電圧Vlaの振幅が減少している。図1と図4とのいずれの場合であっても、始動動作P1は、少なくとも高圧放電灯DLが点灯している間にはランプ電圧Vlaの周波数を変化させないものであることが、高圧放電灯DLの立ち消えを防ぐためには望ましい。また、始動動作P1は、点灯した高圧放電灯DLに対して高圧放電灯DLの定格電力の25%以上の電力が出力されるようなものとすることが、始動動作P1中の高圧放電灯DLの立ち消えを防ぐためには望ましい。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるので、共通する部分については説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、制御回路3は、判定動作P2において、図5に示すように、ランプ電圧Vlaを、始動判定電圧V1だけでなく、始動判定電圧V1よりも低い所定の安定判定電圧V2(<V1)とも比較する(S8)。そして、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1以上であれば従来例と同様に休止動作P0を行った(S5)後に再度の始動動作P1と判定動作P2とを行う。また、ランプ電圧Vlaが始動判定電圧V1未満であって且つ安定判定電圧V2以上であれば(S4でY且つS8でN)、実施形態1と同様に再度の始動動作P1を行い(S6)、その後に定常動作P3を開始する(S7)。さらに、ランプ電圧Vlaが安定判定電圧V2未満であれば(S8でY)、高圧放電灯DLの電極の温度が充分に上がっていて高圧放電灯DLでの放電が安定していると判定して、始動動作P1を挟まずに即座に定常動作P3を開始する(S7)。
【0052】
上記構成によれば、判定動作P2の時点で高圧放電灯DLの電極の温度が充分に上がっていて高圧放電灯DLでの放電が安定している場合に、実施形態1よりも速やかに定常動作P3を開始することができる。
【0053】
(実施形態3)
本実施形態の基本構成は実施形態2と共通であるので、共通する部分については説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、図6及び図7に示すように、始動動作P1において高圧放電灯DLが点灯した後に高圧放電灯DLに出力されることになる直流電圧の極性(向き)と、判定動作P2中に高圧放電灯DLに出力される直流電圧の極性とが、始動動作P1毎、判定動作P2毎に反転される(S9)。このような極性の反転は、例えば、電力変換回路1の互いに対角に位置する一方の組のスイッチング素子Q1,Q4に対する制御と、他方の組のスイッチング素子Q2,Q3に対する制御とを、入れ替えた動作とすることで達成することができる。図6の例では、オートトランスAT側のスイッチング素子Q1,Q2同士で制御を入れ替えるとともに、インダクタL1側のスイッチング素子Q3,Q4同士で制御を入れ替えることで、上記のような極性の反転を実現している。上記のような極性の反転により、判定動作P2中の上記直流電圧の極性が一定とされる場合や、図8に示すように始動動作P1中の上記直流電圧の極性が一定とされる場合に比べ、高圧放電灯DLの電極間の温度差を抑え、立ち消えの原因となる半波放電の発生を抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態では、制御回路3は、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2以上であれば、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1未満であったとしても定常動作P3を開始しない。すなわち、判定動作P2においてランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1未満か否かの違いは、次の始動動作P1が行われる(S2)前に休止動作P0が行われる(S5)か否かにのみ影響する。
【0056】
また、制御回路3は、判定動作P2において、始動動作P1を挟んだ前回の判定動作P2でランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となっていたか否かの判定も行い(S10)、前回と今回との両方で(つまり2回連続で)ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となった場合(S4とS8とS10との全てでY)のみ、定常動作を開始する(S7)。
【0057】
また、上記以外の場合(S4とS8とS10とのいずれかでN)には上記のように極性を反転(S9)させた上で再度の始動動作P1を開始する(S2)。特に、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が始動判定電圧V1以上であれば(S4でN)、上記再度の始動動作P1の前に休止動作P0が挿入される(S5)。
【0058】
上記構成によれば、ランプ電圧Vlaの絶対値|Vla|が安定判定電圧V2未満となった最初の判定動作P2(図6での1回目の判定動作P2)と定常動作P3との間に、少なくとも一回は再度の始動動作P1が挿入され、この再度の始動動作P1中に高圧放電灯DLの各電極の温度を上昇させることができるから、上記最初の判定動作P2の後に即座に定常動作P3が開始される場合に比べ、定常動作P3の開始直後の高圧放電灯DLの立ち消えが発生しにくい。
【0059】
上記の各種の高圧放電灯点灯装置は、例えば図9〜図11に示すような照明器具5に用いることができる。図9〜図11の照明器具5は、それぞれ、電力変換回路1とランプ電圧検出回路2と制御回路3とを収納及び保持した器具本体51と、高圧放電灯DLを保持した灯体52とを備える。また、図9の照明器具5と図10の照明器具5とは、それぞれ、電力変換回路1と高圧放電灯DLとを電気的に接続する給電線53を備える。上記のような各種の照明器具5は周知技術で実現可能であるので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0060】
1 電力変換回路
3 制御回路
5 照明器具
51 器具本体
DL 高圧放電灯
P1 始動動作
P2 判定動作
P3 定常動作
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、
電力変換回路を制御する制御回路とを備え、
制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯の両端電圧の実効値を所定の始動判定電圧と比較するという判定動作を行うものであって、
判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、
判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
制御回路は、判定動作において、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で、高圧放電灯の両端電圧を検出することを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させることを特徴とする請求項2記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項7】
外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、
電力変換回路を制御する制御回路とを備え、
制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、
判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、
最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、
最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項8】
始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、
制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御することを特徴とする請求項7記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、高圧放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項1】
外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、
電力変換回路を制御する制御回路とを備え、
制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯の両端電圧の実効値を所定の始動判定電圧と比較するという判定動作を行うものであって、
判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、
判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始する前に、再度の始動動作を行うことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
制御回路は、判定動作において、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で、高圧放電灯の両端電圧を検出することを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
制御回路は、判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させることを特徴とする請求項2記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
始動動作は、少なくとも高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧の周波数を変化させないものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
制御回路は、判定動作において高圧放電灯の両端電圧の実効値が始動判定電圧未満であった場合に、判定動作における高圧放電灯の両端電圧の実効値が低いほど、定常動作を開始する前に行う始動動作の継続時間を短くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
制御回路は、判定動作において、高圧放電灯の両端電圧の実効値を、始動判定電圧よりも低い所定の安定判定電圧とも比較し、高圧放電灯の両端電圧の実効値が安定判定電圧未満であった場合、再度の始動動作を行わずに即座に定常動作を開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項7】
外部から入力された電力を適宜変換して高圧放電灯に出力する電力変換回路と、
電力変換回路を制御する制御回路とを備え、
制御回路は、高圧放電灯の点灯を開始させる際、少なくとも高圧放電灯が点灯していない期間には高圧放電灯の点灯開始に必要な高電圧が高圧放電灯に出力されるように電力変換回路を制御する始動動作を所定の始動時間にわたり継続した後、高圧放電灯に直流電圧が出力されるように電力変換回路を制御した状態で高圧放電灯の両端電圧の絶対値を所定の安定判定電圧と比較するという判定動作を行い、
判定動作中の高圧放電灯への出力電圧の向きを、判定動作毎に反転させ、
最新の判定動作と直前の判定動作との少なくとも一方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧以上であった場合、始動時間にわたる始動動作と判定動作とを再度行い、
最新の判定動作と直前の判定動作との両方において高圧放電灯の両端電圧の絶対値が安定判定電圧未満であった場合、高圧放電灯の点灯を維持するように電力変換回路を制御する定常動作を開始することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項8】
始動動作は、高圧放電灯の点灯中には電力変換回路から高圧放電灯への出力電圧を直流電圧とするものであって、
制御回路は、点灯中の高圧放電灯に出力される直流電圧の向きが始動動作毎に反転するように電力変換回路を制御することを特徴とする請求項7記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、高圧放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−134503(P2011−134503A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291315(P2009−291315)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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