説明

高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置及びこの装置を用いた高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定方法

【課題】高圧水素ガスの雰囲気の下で機械特性を測定する場合において、水素ガスの漏れを確実に検出する。
【解決手段】高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置は、恒温槽1と高圧容器2とを備えて構成され、高圧容器2の内部には、90MPa程度の高圧水素ガスが充填されている。恒温槽1の内部には、高圧容器2、攪拌ファン3、媒体循環ヒータ4、窒素ガス導入管路5及び窒素ガス排出管路6が設けられ、窒素ガス排出管路6には水素ガス検出センサ7が設けられている。さらに、機械特性測定装置には、水素ガス検出器7により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、警報を発する警報発信機構28や、水素ガス検出器7により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、高圧容器2内部の水素ガスを屋外に放出する安全機構が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素ガス雰囲気下における金属材料等の機械的な特性を測定・評価するために引張試験、疲労試験等を行なう試験装置に関するものであって、特には、この試験装置の安全確保に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、水素ガスは還元性が強く、金属中に容易に拡散したり水素化合物を形成したりする。このため、金属材料の種々の用途への利用が検討されるときには、水素ガス環境下における材料特性、特に、水素が金属の結合に影響を与えて金属材料を脆化(水素脆化)させたり、水素が金属材料の強度特性を変化させたりすることに留意しなければならない。そのため、水素脆化等が懸念される材料に対しては、水素ガス等の雰囲気ガスを導入して高温又は高圧の環境下で、金属材料の引張強度、圧縮強度、曲げ強度、引張り疲労強度などの機械的特性を測定する必要がある。
【0003】
また、水素ガスは可燃性で空気と混合されると容易に発火若しくは爆発することから、その利用に際しては安全上の配慮が必要とされている。ゆえに、特に高圧の水素ガス雰囲気を形成するような試験装置については、種々の安全上の対策が講じられるのが通例である。
ところで、近年、地球温暖化が問題となり、その原因とされる二酸化炭素の排出を極力減らす技術についての研究開発が進められている。たとえば、自動車の駆動にも従来のガソリン又は軽油等の炭化水素系の燃料ではなく、水素を燃焼させる水素エンジンを搭載した水素自動車及び水素をエネルギ源とする燃料電池を用いた電気自動車が実用化されようとしている。このような水素自動車又は電気自動車の場合、1回の充電により走行できる距離が実用上十分に長いことが必要とされている。このため、自動車に搭載される水素源として最も実用化に近い方法として、圧縮水素ボンベを積載する方法に期待が寄せられている。
【0004】
数年前までは、この圧縮水素ボンベの圧力は35MPa程度であり1回の燃料充填での走行距離が300km以下であった。この走行距離を実用的な500kmに改善することが検討されて、圧縮水素ボンベの圧力が70MPa程度になるまでに至っている。
このような高圧の水素ガス雰囲気下で用いられる機器類の材料については、上述した水素脆化等の問題が危惧されるものの、これまでにこのような高圧水素ガス雰囲気での種々の材料の機械的な特性について十分なデータがなく、材料規格すら制定されていない状況にある。機械的特性を評価するにも、当然ながらそのような高圧水素ガス雰囲気を形成しうる試験装置が必要であるが、安全の観点から十分なものは入手が困難なのが実情である。
【0005】
一方で、高圧(上述の70MPa程度)のアルゴンや窒素を圧力媒体に使用する熱間静水圧プレス装置(HIP装置)が工業的に知られている。高圧ガスを安全に閉じ込める装置の構造としての実績も多いことから、このHIP装置の高圧容器を、高圧水素ガス雰囲気下での試験装置に流用することもが可能である。
しかしながら、HIP装置の高圧容器に水素ガスを封入した場合、アルゴン又は窒素の封入と異なり、高圧容器の蓋と胴部との間のシーリング部を介した水素ガス漏れは非常に危険であり、爆発又は火災等の事故に繋がる虞が大である。
【0006】
このことから、HIP装置等に用いられる高圧容器からの水素ガスの漏れに対する安全上の配慮が必要となるが、従来からその対策は採られていない。採られていたとしても、高圧容器が設置された部屋の内部に水素ガス漏れセンサを配置して、水素ガスの漏れを検出するという方法が採用されていたに過ぎない。しかしながら、高圧容器から漏れた水素ガスが部屋に充満する前に、漏れを検出することが好ましいにも関わらず、良い方法は提案されていない。
なお、水素ガス等の爆発性の高い又は反応性の高い雰囲気ガスを導入して高温で材料の引張り試験その他の試験を行なうことができる技術としては、以下のものが公知である。
【0007】
特許文献1は、高圧ガスを導入した高圧容器内に試験部材を配置して、試験部材に荷重を付加して試験部材の変形量を測定する機械特性試験装置を開示する。この試験装置は、少なくとも一端に開口部を有する筒状の本体部と、開口部を開閉自在に閉塞する蓋部とにより構成される。高圧容器内に高圧ガスを導入した際に蓋部にかかる軸力は、高圧容器に外方から係脱自在とされたプレスフレームにより担持される。蓋部に固定された試験部材に対して蓋部を貫通するロッドを通じて荷重を付加するアクチュエータ部により、試験部材の変形量が測定される。さらに、プレスフレームを離脱させて蓋部を開放することにより、試験部材を装着自在及び取出自在としている。
【0008】
特許文献2は、ガス導入口とガス排出口を有するチャンバの内部に、表面が電気絶縁されたヒータが配設された材料試験機用加熱炉を開示する。この加熱炉は、チャンバの壁に材料試験機の軸を挿入する軸挿入口を形成するとともに、軸を気密的にシールする伸縮可能な軸シール部材が軸挿入口に取付けられている。
【特許文献1】特開2004−340920号公報
【特許文献2】特開2005−3517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1には、水素ガスを含む高圧ガス雰囲気での機械特性試験装置の容器構造について記載されているが、高圧容器からの水素ガス漏れに対する対策が開示されてはいない。
特許文献2に開示された技術は、ベローズにて試験機とのシールを行なっているが、雰囲気ガス圧が高い場合には、ベローズの耐圧が低いため適用できず、雰囲気ガスの漏れの可能性を排除できない。加えて、高圧容器からの水素ガス漏れに対する対策が開示されてはいない。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、試験部材が水素ガスを充填した高圧容器の内部に載置されて、窒素ガスを導入した恒温槽にその高圧容器を配置して行なわれる機械特性試験装置において、高圧容器からの水素ガス漏れに対する対策、すなわち、水素ガス漏れを検知して知らせる装置を備えたものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置は、高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽と、前記窒素ガスを前記恒温槽に供給する供給機構と、前記窒素ガスを前記恒温槽から排出する排出機構と、前記排出機構に設けられた水素ガス検出器と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置は、高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽と、前記恒温槽の内外で窒素ガスを循環させる循環機構と、前記循環機構に設けられた水素ガス検出器と、を有することを特徴とする。
上述の機械特性測定装置によると、万が一にも水素ガスが高圧容器から漏れたとしても、窒素ガス中への漏れであるので、安全性優れている。
【0013】
さらに、窒素ガスを循環させる場合には水素ガス検出器を循環機構に設け、窒素ガスを循環させないで排出する場合には水素ガス検出器を排出機構に設けている。このため、水素が窒素ガスに漏れると直ちに検出することができ、対策を講じることができる。
なお、前記水素ガス検出器は、前記高圧容器よりも前記窒素ガスの流れの下流側に設けられているとよい。
さらに、前記水素ガス検出器により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、警報を発する警報発信機構を有するとよい。
【0014】
さらに、前記水素ガス検出器により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、前記高圧容器内部の水素ガスを屋外に放出する安全機構を有するとよい。
また、本発明に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定方法は、高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽とを備えた機械特性測定装置を用いて、試験部材の機械特性を測定するに際し、前記恒温槽内の窒素ガスにおける水素ガス濃度が予め定められた値以上であることを検出する検出工程と、前記検出工程の結果を基に、その検出結果を報知する及び/又は前記試験部材の機械特性の測定を中止する異常対応工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置、又は機械特性測定方法によれば、高圧の水素ガス環境下における金属材料等の機械特性を安全に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100は、恒温槽1とこの恒温槽内に配備される高圧容器2とを備えて構成される。
高圧容器2は、内部に高圧の水素ガスを収容可能な試験室40を備える円筒体(胴部)41を備えている。この円筒体41は下方に開放状となっている開口42を有していて、コップを伏せた形状となっている。円筒体の開口42には、下蓋43が嵌り込むようになっており、下蓋43の上面には、高圧水素ガス雰囲気下において、引張試験や圧縮試験などの材料力学的な試験を行うための試験治具8が設けられている。試験治具8の下部には、試験部材44に引張力や圧縮力を加えるプルロッド11が設けられ、このプルロッド11は、油圧ユニット26から油圧管路27を通して供給される油圧により駆動される。
【0017】
高圧容器2の周囲には熱媒体ジャケット9が設けられている。この熱媒体ジャケット9により、円筒体41の外周にジャケット管路29が形成される。このジャケット管路29は、ジャケット媒体供給管路24及びジャケット媒体戻り管路25により、熱交換器等の温度調整ユニット23に接続されている。
恒温槽1の内部には、高圧容器2、攪拌ファン3、媒体循環ヒータ4、窒素ガス導入管路5(供給機構)が設けられている。
恒温槽1の上方には窒素ガス排出管路6(排出機構)が設けられ、窒素ガス排出管路6には水素ガス検出センサ7が設けられている。
【0018】
高圧容器2の下方には、水素ガス導入管路10が設けられている。高圧容器2の下方には、試験治具8に変位を与えるプルロッド11が取り付けられており、このプルロッド11は、恒温槽1の外側に貫通している。
高圧容器2の下方に接続された水素ガス導入管路10は、外部に設置された水素ボンベ14に接続されている。この水素ガス導入管路10には、水素ボンベ14側から、コンプレッサ15、開閉バルブ17が設けられている。また、高圧容器2の上方には、屋外(大気中)まで伸びた水素ガス排出管路18が設けられている。この水素ガス排出管路18には、開閉バルブ19が設けられている。
【0019】
コンプレッサ15は、モータ16により駆動される。開閉バルブ17が開いている状態かつ開閉バルブ19が閉じている状態で、コンプレッサ15がモータ16により駆動されると、水素ボンベ14からコンプレッサ15に供給された水素ガスが圧縮されて(加圧されて)、水素ガス導入管路10を通って高圧容器2の内部に導入される。
開閉バルブ17が閉じている状態で開閉バルブ19が開くと、高圧容器2内の水素ガスが、水素ガス排出管路18を通って屋外(大気中)に排出される。
窒素ガス導入管路5は、開閉バルブ13を介して窒素ボンベ12に接続されている。なお、この窒素ボンベ12内の窒素は、液体であっても気体であっても構わない。開閉バルブ13を開くと、窒素ボンベ中の窒素が窒素ガス導入管路5を通って恒温槽1の内部に導入され、攪拌ファン3により攪拌されて、恒温槽1内に窒素が充填される。
【0020】
本実施形態においては、恒温槽1に充填される窒素ガスは循環されるのではなく、窒素ガス排出管路6を通って屋外に排出される。この窒素ガス排出管路6に水素ガスを検出する水素ガス検出センサ7が設けられている。
高圧容器2から水素ガスが漏れた場合、恒温槽1内部に充填された窒素ガス中への漏れであり安全性に優れている。窒素ガス導入管路5から窒素ガスを常に供給しているため、窒素ガス排出管路6から一定量の窒素ガスが排出されている。この窒素ガス排出管路6に水素ガス検出センサ7(水素ガス検出器)が取り付けられており、この水素ガス検出センサ7により、水素ガスの漏れを検出する。この水素ガス検出センサ7からの信号を受信して警報を発生させる警報器28(警報発信機構)が設けられている。
【0021】
さらには、水素ガス検出センサ7により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、開閉バルブ19を強制的に開放して高圧容器2内部の水素ガスを屋外(大気中)に放出したり、機械特性測定装置100の運転を停止したりする安全機構(図示せず)が設けられている。
空気中の水素の可燃範囲は4%〜75%であることに基づいて、水素ガス漏れ警報値として2つの値が予め設定される。安全率を考慮して、たとえば、警報発生及び運転停止用の設定値として400ppm(0.04%)が設定される。さらに、開閉バルブ19を開いて水素ガス排出管路18を通して高圧容器2内の水素ガスを屋外に排出する設定値として1000ppm(0.1%)が設定される。なお、これらの設定値は一例であって本発明がこれらの設定値に限定されるものではない。
【0022】
媒体循環ヒータ4は、媒体供給管路21及び媒体戻り管路22により、熱交換器等の温度調整ユニット20に接続されている。
恒温槽1内を加熱する場合には、媒体循環ヒータ4と熱交換器等の温度調整ユニット20との間で加熱した媒体を循環させるとともに、窒素ガス導入管路5から窒素ガスを供給し、攪拌ファン3により恒温槽1内の窒素ガスを攪拌する。なお、媒体供給管路21及び媒体戻り管路22は逆でも構わない。
恒温槽1内を冷却する場合には、媒体循環ヒータ4と温度調整ユニット20との間で冷却した媒体を循環させる。これに代えて又はこれに加えて、窒素ガス導入管路5から液体窒素を供給するとともに攪拌ファン3にて攪拌するようにしても構わない。
【0023】
一方、高圧容器2内の温度を上昇させる加熱時間を短縮するためには、高圧容器2の外周の熱媒体ジャケット9と温度調整ユニット23との間で熱媒体を循環させるとよい。なお、温度調整ユニット23を温度調整ユニット20と兼用しても構わない。高圧容器2内の温度を降下させる冷却時間を短縮するために、熱媒体ジャケット9と温度調整ユニット23との間で冷却媒体を循環させることも可能である。
以上のような構造を備えた高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100の使用態様について説明する。なお、高圧容器2内の試験治具11への試験部材44にセッティングは終了しているものとする。
【0024】
開閉バルブ17を開いて開閉バルブ19を閉じて、モータ16によりコンプレッサ15を駆動させて、水素ボンベ14から高圧容器2の内部に水素ガスを供給する。このとき、高圧容器2内の圧力が90MPa程度になるように、水素ガス導入管路10を通して水素ガスが水素ボンベ14から高圧容器2に供給される。
高圧容器2内の水素ガスの圧力が所定の圧力になると(所定の圧力に到達する前であっても構わない)、開閉バルブ13を開いて、窒素ガス導入管路5を通して窒素ガスを恒温槽1内に導入する。このとき、媒体循環ヒータ4と温度調整ユニット20との間で熱媒体又は冷却媒体を循環させ、かつ、攪拌ファン3を作動させて、恒温槽1内の温度を調整する。さらに、熱媒体ジャケット9のジャケット管路29と温度調整ユニット23との間で熱媒体又は冷却媒体を循環させて、高圧容器2内の温度を調整する。
【0025】
高圧容器2内の圧力及び温度がそれぞれ定められた値になると、油圧ユニット26を操作して油圧管路27を通して供給された油圧によりプルロッド11を作動させて、試験部材44に与えられた引張り荷重に対する試験部材44の変位を測定する。
高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100の使用時における異常態様について説明する。なお、高圧容器2内への水素ガスの供給が開始されているものとする。
水素ガスが高圧容器2から漏れると、恒温槽1内の窒素ガス中の水素濃度が上昇する。恒温槽1には窒素ガス導入管路5から窒素ガスを常に供給しているため、窒素ガス排出管路6から水素ガスを含む窒素ガスが排出されることになる。
【0026】
この場合、水素ガス検出センサ7が400ppmの水素ガス濃度を検出するまでは、試験部材44の引張試験が継続される。水素ガス検出センサ7が400ppmの水素濃度を検出する(検出工程)と、警報器28により警報が発生される(異常対応工程)。
加えて、安全機構により、開閉バルブ19を強制的に開放して高圧容器2内部の水素ガスを屋外(大気中)に放出したり、開閉バルブ17を閉じたりコンプレッサ15を停止されたりして、この機械特性測定装置100の運転が停止される。詳しくは、水素ガス検出センサ7が1000ppmの水素濃度を検出すると、開閉バルブ19が開かれて水素ガス排出管路18を通して高圧容器2内の水素ガスが屋外に排出される(異常対応工程)。
【0027】
なお、このような水素ガス漏れが発生した場合であっても、恒温槽1内部に充填された窒素ガス中への水素ガスの漏れであり空気中への漏れではないため、爆発等の危険性が少なく安全性に優れている。
以上のようにして、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100によると、高圧の水素ガス環境下における金属材料等の機械特性を安全に測定することができる。
[第2実施形態]
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100について説明する。図3は、第1実施形態を示す図2に対応する図である。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100は、水素ガス検出センサ7、水素ガス検出センサ7と同等の機能を備えた水素ガス検出センサ30及び水素ガス検出センサ31の少なくとも1つを備える。
本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100においては、窒素ガスが循環系ではなく排出系で構成され、かつ、水素ガス検出センサ7,30,31が高圧容器2よりも窒素ガスの下流側に設けられている。加えて、窒素ボンベ12から窒素ガス導入管路5を通して窒素ガスを恒温槽1に常に供給しているため、窒素ガス排出管路6から一定量の窒素ガスが排出され、恒温槽1では、上流から下流へ(図3で左から右へ)向かう窒素ガスの流れが存在する。
【0029】
そのため、高圧容器2から水素ガスが恒温層1内に漏れたとしても、窒素ガスの高圧容器2よりも下流部において水素ガスの漏れを確実に検出できる。すなわち、高圧容器2よりも上流側においては、高圧容器2から漏れた水素ガスを検出できないか、検出することが困難である。
以上のようにして、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100によると、確実に水素ガスの漏れを検出でき、高圧の水素環境下における金属材料等の機械特性を安全に測定することができる。
[第3実施形態]
図4を参照して、本発明の第3実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100について説明する。図4は、第1実施形態や第2実施形態を示す図2,図3に対応する図である。
【0030】
図4に示すように、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100は、上述した第1実施形態及び第2実施形態の恒温槽とは異なる構造を備えた恒温槽1を備える。
この恒温槽1は、窒素ガスを循環させる窒素ガス循環管路32を備える。なお、この窒素ガス循環管路32には、図示しない循環機構(たとえばファン、モータ、窒素タンク)を備える。
さらに、恒温槽1には、水素ガス検出センサ7、水素ガス検出センサ30、水素ガス検出センサ31、これらの水素ガス検出センサと同等の機能を備えた水素ガス検出センサ33、水素ガス検出センサ34の少なくとも1つを備えるものとなっている。
【0031】
本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100においては、窒素ガスが排出系ではなく循環系で構成されている。ゆえに、水素ガス検出センサは高圧容器2との相対的な位置に関係なく恒温槽1内の任意の位置に設けられている。言い替えるならば、高圧容器2の窒素ガス流れの下流側に限定されない。
窒素ガス循環管路32を通して窒素ガスを恒温槽1に循環させているため、窒素ガス循環管路32には一定量の窒素ガスが循環されている。このような状態で高圧容器2から水素ガスが恒温層1内に漏れると、恒温槽1の内部及び窒素ガス循環管路32のいずれの位置においても水素ガスの漏れを検出できる。すなわち、窒素ガスが流れている任意の位置において、高圧容器2から漏れた水素ガスを検出できる。
【0032】
以上のようにして、本実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置100によると、水素ガス検出センサの取付位置が限定されることなく確実に水素ガスの漏れを検出でき、高圧の水素環境下における金属材料等の機械特性を安全に測定することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置の全体構成図である。
【図2】図1の恒温槽近傍の図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置の恒温槽近傍の図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置の恒温槽近傍の図である。
【符号の説明】
【0034】
1 恒温槽
2 高圧容器
3 攪拌ファン
4 媒体循環ヒータ
5 窒素ガス導入管路
6 窒素ガス排出管路
7 水素ガス検出センサ
8 試験治具
9 熱媒体ジャケット
10 水素ガス導入管路
11 プルロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、
内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽と、
前記窒素ガスを前記恒温槽に供給する供給機構と、
前記窒素ガスを前記恒温槽から排出する排出機構と、
前記排出機構に設けられた水素ガス検出器と、を有することを特徴とする高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置。
【請求項2】
高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、
内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽と、
前記恒温槽の内外で窒素ガスを循環させる循環機構と、
前記循環機構に設けられた水素ガス検出器と、を有することを特徴とする高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置。
【請求項3】
前記水素ガス検出器は、前記高圧容器よりも前記窒素ガスの流れの下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置。
【請求項4】
前記水素ガス検出器により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、警報を発する警報発信機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置。
【請求項5】
前記水素ガス検出器により検出された水素ガス量が予め定められた値以上であると、前記高圧容器内部の水素ガスを屋外に放出する安全機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定装置。
【請求項6】
高圧水素ガス雰囲気下において機械的特性が測定される試験部材が内部に配置された高圧容器と、内部に窒素ガスが充満されると共に前記高圧容器が配置され、且つ前記窒素ガスの温度制御が可能となっている恒温槽とを備えた機械特性測定装置を用いて、試験部材の機械特性を測定するに際し、
前記恒温槽内の窒素ガスにおける水素ガス濃度が予め定められた値以上であることを検出する検出工程と、
前記検出工程の結果を基に、その検出結果を報知する及び/又は前記試験部材の機械特性の測定を中止する異常対応工程と、
を有することを特徴とする高圧水素ガス雰囲気下での機械特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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