説明

高圧水電解システム及びその運転方法

【課題】高圧水に溶存する水素を無駄に廃棄することがなく、経済的且つ効率的な水電解処理を安定して行うことを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、水を電気分解して酸素と高圧水素とを発生させる水電解装置12と、前記水電解装置12から前記高圧水素を排出する第1水素配管50に配設される第1気液分離器52と、前記第1気液分離器52から前記高圧水素を導出する第1高圧水素導出配管54と、前記第1気液分離器52から水を排出する第1排水配管56と、前記第1水素配管50から分岐する第2水素配管58に配設される第2気液分離器60と、前記第2気液分離器60から前記第1高圧水素導出配管54に前記高圧水素を導出する第2高圧水素導出配管62と、前記第2気液分離器60から水を排出する第2排水配管64と、制御弁装置78とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置を備える水電解システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池電気自動車に搭載される燃料電池では、発電反応に使用される燃料ガスとして、水素が用いられている。この水素は、水電解装置等の水素製造装置により製造されている。水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設して単位セルが構成されている。
【0003】
そこで、複数の単位セルが積層されたセルユニットには、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってセルユニットから排出される。
【0004】
上記の水電解装置では、水分を含んだ水素が製造されており、乾燥状態、例えば、5ppm以下の水素(以下、ドライ水素ともいう)を得るために、前記水素から水分を除去する必要がある。
【0005】
その際、カソード側に酸素よりも高圧(例えば、1MPa以上)の水素が得られる高圧水電解装置では、高圧水素から水分を除去するための気液分離器が大型化するという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている気液分離器が知られている。この気液分離器は、図9に示すように、水素導管1が接続されている耐圧容器2と、前記耐圧容器2内の水位を検出する水位センサ3と、前記耐圧容器2の天井部に接続された水素取出手段4としての水素取出導管4aと、前記耐圧容器2の底部に接続された排水手段5としての排水導管5aとを備えている。
【0007】
水素取出導管4aには、第1背圧弁6が備えられるとともに、前記第1背圧弁6の下流側に電磁弁7が備えられている。排水導管5aには、第2背圧弁8が備えられている。
【0008】
第1背圧弁6は、例えば、35MPaで開弁するように設定されており、第2背圧弁8は、前記第1背圧弁6よりも高圧で、例えば、36MPaで開弁するように設定されている。電磁弁7は、水位センサ3の検出信号を受けて作動し、前記水位センサ3が検出する水位が所定の低水位になったときに開弁し、所定の高水位になったときに閉弁している。
【0009】
そして、電磁弁7が閉弁されると、水素取出導管4aからの高圧水素ガスの取出しが強制的に停止されるため、耐圧容器2内の圧力が第1背圧弁6の設定圧力である35MPaを超えて高くなってくる。この結果、第2背圧弁8は、耐圧容器2内の圧力がその設定圧力である36MPaに達する度に開弁し、液体の水が前記第2背圧弁8を介して排水導管5aから断続的に排出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−347779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の水電解システムでは、第2背圧弁8が開弁し、液体の水が前記第2背圧弁8を通過して排水導管5aから排出される際、前記水の圧力が一気に減圧されている。このため、第2背圧弁8にかかる負荷が大きくなり易く、前記第2背圧弁8の耐久性が低下するおそれがある。
【0012】
しかも、高圧水素状態で排水が行われると、この排水中には多くの水素が溶存しており、溶存水素が無駄に廃棄されてしまう。従って、水素の製造効率が低下してしまい、経済的ではないという問題がある。
【0013】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、高圧水に溶存する水素を無駄に廃棄することがなく、経済的且つ効率的な水電解処理を安定して行うことが可能な水電解システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する第1水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第1気液分離器と、前記第1気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出する第1高圧水素導出配管と、前記第1気液分離器から水を排出する第1排水配管と、前記第1水素配管から分岐する第2水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第2気液分離器と、前記第2気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出するとともに、前記第1高圧水素導出配管に合流する第2高圧水素導出配管と、前記第2気液分離器から水を排出する第2排水配管と、制御弁装置とを備える高圧水電解システム及びその運転方法に関するものである。
【0015】
この高圧水電解システムでは、制御弁装置は、水電解装置、第1水素配管、第1気液分離器及び第1高圧水素導出配管を連通させる第1水素ラインと、前記第1気液分離器と第2気液分離器とを連通させる脱圧ラインと、前記水電解装置、前記第1水素配管、第2水素配管、前記第2気液分離器、第2高圧水素導出配管及び前記第1高圧水素導出配管を連通させる第2水素ラインとに切り換え自在に構成されている。
【0016】
また、この運転方法は、水電解装置、第1水素配管、第1気液分離器及び第1高圧水素導出配管を連通させることにより、前記第1気液分離器で気液分離処理を行って前記第1高圧水素導出配管に高圧水素を排出する第1気液分離工程と、前記第1気液分離器内の水量が規定量を超えたと判断された際、前記第1気液分離器と第2気液分離器とを連通させることにより、前記第1気液分離器内の高圧水素を前記第2気液分離器内に導入する第1脱気工程と、前記第1気液分離器内の圧力と前記第2気液分離器内の圧力とが均等になったと判断された際、前記第1気液分離器内の水を第1排水配管に排出する一方、前記第1水素配管、第2水素配管、前記第2気液分離器、第2高圧水素導出配管及び前記第1高圧水素導出配管を連通させることにより、前記第2気液分離器で気液分離処理を行って前記第2高圧水素導出配管から前記第1高圧水素導出配管に前記高圧水素を排出する第2気液分離工程と、前記第2気液分離器内の水量が規定量を超えたと判断された際、前記第2気液分離器と前記第1気液分離とを連通させることにより、前記第2気液分離器内の高圧水素を前記第1気液分離器に導入する第2脱気工程と、前記第2気液分離器内の圧力と前記第1気液分離器内の圧力とが均等になったと判断された際、前記第2気液分離器内の水を第2排水配管に排出する一方、前記第1気液分離工程を行う工程とを有している。
【0017】
さらに、この運転方法では、第1排水配管への排水処理が完了する前に、第2気液分離器内の水量が規定量を超えた際には、システム停止処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、第1気液分離器内の水を排出する際、先ず、前記第1気液分離器と第2気液分離器とを連通させることにより、前記第1気液分離器内の高圧水素を前記第2気液分離器に導入している。このため、第1気液分離器内の高圧水に溶存していた水素は、気化して第2気液分離器に導入される。従って、排水中の溶存水素を有効に回収することができ、経済的である。
【0019】
しかも、第1気液分離器内が脱圧された後、この第1気液分離器から第1排水配管への排水が開始される。これにより、第1排水配管に配設される弁等の設備の耐久性が良好に向上する。このため、経済的且つ効率的な水電解処理が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】本発明の運転方法を説明するフローチャートである。
【図3】前記水電解システムの第1気液分離工程の説明図である。
【図4】前記水電解システムの第1脱気工程の説明図である。
【図5】前記水電解システムの排水及び第2気液分離工程の説明図である。
【図6】前記水電解システムの第2気液分離工程の説明図である。
【図7】前記水電解システムの第2脱気工程の説明図である。
【図8】前記水電解システムの排水及び第1気液分離工程の説明図である。
【図9】特許文献1に開示されている気液分離器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって、酸素及び高圧水素(常圧である酸素圧力よりも高圧、例えば、1MPa〜70MPaの水素)を製造する差圧式水電解装置(高圧水素製造装置)12を備える。
【0022】
水電解装置12は、複数の単位セル14を積層したセルユニットを備える。単位セル14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート20a、20b間は、一体的に締め付け保持される。
【0023】
ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部22a、22bが外方に突出して設けられる。端子部22a、22bは、電解電源24に電気的に接続される。
【0024】
単位セル14は、円盤状の電解質膜・電極構造体26と、この電解質膜・電極構造体26を挟持するアノード側セパレータ28及びカソード側セパレータ30とを備える。アノード側セパレータ28及びカソード側セパレータ30は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0025】
電解質膜・電極構造体26は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜32と、前記固体高分子電解質膜32の両面に設けられるアノード側給電体34及びカソード側給電体36とを備える。
【0026】
固体高分子電解質膜32の両面には、アノード電極触媒層34a及びカソード電極触媒層36aが形成される。アノード電極触媒層34aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層36aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0027】
単位セル14の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔38と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔40と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔42とが設けられる。
【0028】
アノード側セパレータ28の電解質膜・電極構造体26に対向する面には、水供給連通孔38及び排出連通孔40に連通する第1流路44が設けられる。この第1流路44は、アノード側給電体34の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第1流路44には、反応により生成された酸素及び未反応の水が流通する。
【0029】
カソード側セパレータ30の電解質膜・電極構造体26に向かう面には、水素連通孔42に連通する第2流路46が形成される。この第2流路46は、カソード側給電体36の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第2流路46には、反応により生成された高圧水素が流通する。
【0030】
水素連通孔42には、水電解装置12から高圧水素を排出するための第1水素配管50の一端が接続されるとともに、前記第1水素配管50の他端は、第1気液分離器52に接続される。
【0031】
第1気液分離器52は、水電解装置12から排出される高圧水素に含まれる水分を除去する。第1気液分離器52には、水から分離された高圧水素を水素タンク(図示せず)等に供給するために導出する第1高圧水素導出配管54と、分離された前記水を排出するための第1排水配管56とが接続される。
【0032】
第1水素配管50の途上から第2水素配管58が分岐されるとともに、前記第2水素配管58は、第2気液分離器60に接続される。
【0033】
第2気液分離器60は、水電解装置12から排出された高圧水素に含まれる水分を分離する機能を有し、前記水が分離された高圧水素を導出する第2高圧水素導出配管62の一端が接続される。第2高圧水素導出配管62の他端は、第1高圧水素導出配管54の途上に合流する。第2気液分離器60には、貯留されている水を排出するための第2排水配管64が接続される。
【0034】
第1気液分離器52及び第2気液分離器60は、それぞれ水を貯留するためのタンク部66、68を備える。タンク部66、68には、前記タンク部66、68内の水位WS1、WS2が上限高さHを超えているか否かを検出する一方、下限高さL以下であるか否かを検出する水位検出センサ70a、70bと、前記タンク部66、68内の圧力を検出する圧力検出センサ72a、72bとが設けられる。
【0035】
タンク部66は、水位検出センサ70aにより検出される上限高さHよりも上方に、第1水素配管50及び第1高圧水素導出配管54との接続位置が設定される。一方、タンク部68は、水位検出センサ70bにより検出される上限高さHよりも上方に、第2水素配管58及び第2高圧水素導出配管62との接続位置が設定される。
【0036】
第1高圧水素導出配管54には、第2水素配管58の分岐部位よりも上流に第1背圧弁74が配置されるとともに、第2高圧水素導出配管62の合流部位よりも下流に第2背圧弁76及び逆止弁77が配置される。第1背圧弁74の第1設定圧力は、第2背圧弁76の第2設定圧力よりも高圧に設定される。
【0037】
水電解システム10は、制御弁装置78と、前記制御弁装置78を含むシステム全体の制御を行うコントローラ80とを備える。
【0038】
制御弁装置78は、第1気液分離器52の入口及び出口に配置される開閉弁82a、82bと、第1排水配管56に配置される開閉弁82cと、第2気液分離器60の入口及び出口に配置される開閉弁84a、84bと、第2排水配管64に配置される開閉弁84cとを備える。開閉弁82a〜82c及び開閉弁84a〜84cは、例えば、ソレドエイドバルブが使用される。
【0039】
開閉弁82aは、第1水素配管50に、第2水素配管58の分岐部位と第1気液分離器52a入口との間に配置され、開閉弁82bは、第1高圧水素導出配管54に、第2高圧水素導出配管62の合流部位と前記第1気液分離器52の出口との間に配置される。
【0040】
開閉弁84aは、第2水素配管58に配置されるとともに、開閉弁84bは、第2高圧水素導出配管62に配置される。この第2高圧水素導出配管62には、オリフィスやニードル弁等の絞り86が設けられる。
【0041】
制御弁装置78は、後述するように、水電解装置12、第1水素配管50、第1気液分離器52及び第1高圧水素導出配管54を連通させる第1水素ラインL1と、前記第1気液分離器52と第2気液分離器60とを連通させる脱圧ラインL2と、前記水電解装置12、前記第1水素配管50、前記第2水素配管58、前記第2気液分離器60、第2高圧水素導出配管62及び前記第1高圧水素導出配管54を連通させる第2水素ラインL3とに、切り換え自在である。
【0042】
このように構成される水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、水電解システム10には、図示しない水循環装置を介して純水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部22a、22b間には、電気的に接続されている電解電源24を介して電圧が付与される。
【0044】
このため、各単位セル14では、水供給連通孔38からアノード側セパレータ28の第1流路44に水が供給され、この水がアノード側給電体34内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層34aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜32を透過してカソード電極触媒層36a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0045】
これにより、カソード側セパレータ30とカソード側給電体36との間に形成される第2流路46に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔38よりも高圧に維持されており、水素連通孔42を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
【0046】
次いで、本実施形態に係る運転方法について、図2に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0047】
先ず、水電解装置12から排出される高圧水素は、第1気液分離器52に導入されて第1気液分離工程が行われる。具体的には、図3に示すように、制御弁装置78では、開閉弁82a、82bが開放されるとともに、開閉弁82c、84a〜84cが閉塞される。すなわち、第1水素ラインL1に設定される。
【0048】
水電解装置12内で生成される水素の圧力が、第1設定圧力を超えると、第1背圧弁74が開放される。このため、高圧水素は、第1水素配管50を通って第1気液分離器52に送られる。第1気液分離器52では、高圧水素に含まれる水蒸気(水分)が、この高圧水素から分離されてタンク部66に貯留される。一方、高圧水素は、第1高圧水素導出配管54に排出され、第2背圧弁76の第2設定圧力を超えると、図示しない水素タンク等に供給可能になる。
【0049】
水電解装置12による水電解処理が継続されると、タンク部66内の水位WS1が上昇する。そして、タンク部66に設けられている水位検出センサ70aを介して、前記タンク部66の水位WS1が検出される。この水位SW1が上限設定高さHを超えたと判断されると(ステップS1中、YES)、ステップS2に進んで、開閉弁84bが開放される。
【0050】
このため、図4に示すように、制御弁装置78は、脱圧ラインL2に切り換えられて、第1脱気工程に移行する。この第1脱気工程では、第1気液分離器52と第2気液分離器60とが連通するとともに、前記第2気液分離器60内の圧力は、前記第1気液分離器52内の圧力に比べて相当に低圧である。従って、第1気液分離器52内の高圧水素は、第1高圧水素導出配管54から第2高圧水素導出配管62を通って、第2気液分離器60内に導入される。その際、第2高圧水素導出配管62に配置されている絞り86の作用下に、高圧水素が第2気液分離器60内に急激に導入されることがない。
【0051】
第1気液分離器52内の圧力PT1が減少する一方、第2気液分離器60内の圧力PT2が上昇する。圧力PT1=圧力PT2であると判断された際(ステップS3中、YES)、ステップS4及びステップS5に進む。
【0052】
より具体的には、開閉弁84aが開放され、且つ、開閉弁82a、82bが閉塞された後(ステップS5)、開閉弁82cが開放される(ステップS4)。このため、図5に示すように、第1気液分離器52は、入口及び出口の開閉弁82a、82bが閉塞される一方、第1排水配管56の開閉弁82cが開放されており、タンク部66内の水は、前記第1排水配管56を介して排水される。
【0053】
タンク部66内の水位WS1が、下限設定高さL以下となった際(ステップS6中、YES)、ステップS7に進んで、開閉弁82cが閉塞される。これにより、第1気液分離器52の排水処理が完了される。
【0054】
一方、開閉弁82a、82bが閉塞されるとともに、開閉弁84aが開放されることにより、図6に示すように、制御弁装置78は、第2水素ラインL3に切り換えられる。従って、水電解装置12から排出される高圧水素は、第1水素配管50、第2水素配管58を介して第2気液分離器60に送られる。
【0055】
第2気液分離器60では、水電解装置12から排出される高圧水素に含まれる水分を除去し、タンク部68に水を貯留するため、前記タンク部68内の水位WS2が上昇する。そして、タンク部68内のWS2が、上限設定高さHを超えていると判断されると(ステップS8中、YES)、ステップS9に進んで、開閉弁82bが開放される。
【0056】
このため、図7に示すように、第2気液分離器60と第1気液分離器52とが連通し、前記第2気液分離器60内の高圧水素は、第2高圧水素導出配管62及び第1高圧水素導出配管54を通って、前記第1気液分離器52に導入される。ステップS10に進んで、第2気液分離器60内の圧力PT2が、第1気液分離器52内の圧力PT1と等しい値となった際(ステップS10中、YES)、ステップS11及びステップS12に進む。
【0057】
ステップS11では、開閉弁84cが開放されるとともに、ステップS12では、開閉弁82aが開放され、且つ、開閉弁84a、84bが閉塞される。このため、図8に示すように、第2気液分離器60は、入口及び出口に配置されている開閉弁84a、84bが閉塞される一方、第2排水配管64が開放される。従って、この第2気液分離器60のタンク部68に貯留されている水は、第2排水配管64に排水される。
【0058】
次いで、タンク部68内の水位WS2が、下限設定高さL以下となった際(ステップS13中、YES)、ステップS14に進んで、開閉弁84cが閉塞される。これにより、第2気液分離器60における排水処理が完了する。
【0059】
一方、第1気液分離器52は、入口及び出口の開閉弁82a、82bが開放されており、水電解装置12から排出される高圧水素は、この第1気液分離器52に導入される。従って、第1気液分離器52による第1気液分離工程が再開され、システム停止まで(ステップS15中、YES)、上記の工程が繰り返される。
【0060】
この場合、本実施形態では、先ず、図3に示すように、水電解装置12から排出される高圧水素の気液分離処理が、第1気液分離器52により行われている。そして、第1気液分離器52のタンク部66内の水量が、規定上限量(上限設定高さH)に達した際、開閉弁84bが開放されて前記第1気液分離器52と第2気液分離器60とを連通させている(図4中、脱圧ラインL2参照)。
【0061】
このため、第1気液分離器52内の高圧水素は、低圧側である第2気液分離器60内に導入され、前記第1気液分離器52内に第1脱気工程が施されている。従って、第1気液分離器52の内圧が低下し、タンク部66内の高圧水に溶存していた水素は、気化(発泡)して第2気液分離器60のタンク部68内に水素ガスとして導入される。これにより、タンク部66内に貯留されている排水中の溶存水素を有効に回収することができ、経済的であるという効果が得られる。
【0062】
しかも、第1気液分離器52内が脱圧(脱気)された後、この第1気液分離器52から第1排水配管56への排水処理が開始されている(図5参照)。従って、第1排水配管56に配置されている開閉弁82cは、入口側と出口側との圧力差が有効に減少されるため、前記開閉弁82cの耐久性が良好に向上する。これにより、経済的且つ効率的な水電解処理が安定して行われるとうい利点がある。
【0063】
一方、第2気液分離器60では、上記の第1気液分離器52と同様の効果が得られる。
【0064】
さらに、水電解システム10では、第1気液分離器52と第2気液分離器60とを交互に運転させることにより、水電解処理が一層効率的且つ経済的に遂行されるという効果が得られる。
【0065】
また、本実施形態では、ステップS6において、第1気液分離器52による排水処理が完了する前に(ステップS6中、NOの状態)、ステップS8において、第2気液分離器60内の水量が規定上限値を超えていると判断されると(ステップS8中、YES)、システム停止処理が行われる。処理し得る水量を超えており、第1及び第2気液分離器52、60を確実に保護する必要があるからである。
【符号の説明】
【0066】
10…水電解システム 12…水電解装置
14…単位セル 26…電解質膜・電極構造体
28…アノード側セパレータ 30…カソード側セパレータ
32…固体高分子電解質膜 34…アノード側給電体
36…カソード側給電体 42…水素連通孔
44、46…流路 50、58…水素配管
52、52a、60…気液分離器 54、62…高圧水素導出配管
56、64…排水配管 66、68…タンク部
70a、70b…水位検出センサ 72a、72b…圧力検出センサ
74、76…背圧弁 78…制御弁装置
80…コントローラ
82a、82b、82c、84a、84b、84c…開閉弁
86…絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する第1水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第1気液分離器と、
前記第1気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出する第1高圧水素導出配管と、
前記第1気液分離器から水を排出する第1排水配管と、
前記第1水素配管から分岐する第2水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第2気液分離器と、
前記第2気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出するとともに、前記第1高圧水素導出配管に合流する第2高圧水素導出配管と、
前記第2気液分離器から水を排出する第2排水配管と、
制御弁装置と、
を備え、
前記制御弁装置は、前記水電解装置、前記第1水素配管、前記第1気液分離器及び前記第1高圧水素導出配管を連通させる第1水素ラインと、
前記第1気液分離器と前記第2気液分離器とを連通させる脱圧ラインと、
前記水電解装置、前記第1水素配管、前記第2水素配管、前記第2気液分離器、前記第2高圧水素導出配管及び前記第1高圧水素導出配管を連通させる第2水素ラインと、
に切り換え自在に構成されることを特徴とする高圧水電解システム。
【請求項2】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する第1水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第1気液分離器と、
前記第1気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出する第1高圧水素導出配管と、
前記第1気液分離器から水を排出する第1排水配管と、
前記第1水素配管から分岐する第2水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する第2気液分離器と、
前記第2気液分離器から水が分離された前記高圧水素を導出するとともに、前記第1高圧水素導出配管に合流する第2高圧水素導出配管と、
前記第2気液分離器から水を排出する第2排水配管と、
制御弁装置と、
を備える高圧水電解システムの運転方法であって、
前記水電解装置、前記第1水素配管、前記第1気液分離器及び前記第1高圧水素導出配管を連通させることにより、前記第1気液分離器で気液分離処理を行って前記第1高圧水素導出配管に前記高圧水素を排出する第1気液分離工程と、
前記第1気液分離器内の水量が規定量を超えたと判断された際、前記第1気液分離器と前記第2気液分離器とを連通させることにより、前記第1気液分離器内の高圧水素を前記第2気液分離器内に導入する第1脱気工程と、
前記第1気液分離器内の圧力と前記第2気液分離器内の圧力とが均等になったと判断された際、前記第1気液分離器内の水を前記第1排水配管に排出する一方、前記第1水素配管、前記第2水素配管、前記第2気液分離器、前記第2高圧水素導出配管及び前記第1高圧水素導出配管を連通させることにより、前記第2気液分離器で気液分離処理を行って前記第2高圧水素導出配管から前記第1高圧水素導出配管に前記高圧水素を排出する第2気液分離工程と、
前記第2気液分離器内の水量が規定量を超えたと判断された際、前記第2気液分離器と前記第1気液分離とを連通させることにより、前記第2気液分離器内の高圧水素を前記第1気液分離器に導入する第2脱気工程と、
前記第2気液分離器内の圧力と前記第1気液分離器内の圧力とが均等になったと判断された際、前記第2気液分離器内の水を前記第2排水配管に排出する一方、前記第1気液分離工程を行う工程と、
を有することを特徴とする高圧水電解システムの運転方法。
【請求項3】
請求項2記載の運転方法において、前記第1排水配管への排水処理が完了する前に、前記第2気液分離器内の水量が規定量を超えた際には、システム停止処理を行うことを特徴とする高圧水電解システムの運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−184475(P2012−184475A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48445(P2011−48445)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】