説明

高圧給水加熱器の漏洩検査方法

【課題】既存の設備を利用した高圧給水加熱器の漏洩検査方法であって、複雑なプログラム等も必要とせず、極微量の漏洩をも発見することができる高圧給水加熱器の漏洩検査方法を提供すること。
【解決手段】発電プラントにおいて行われる、高圧給水加熱器10、11からの復水の漏洩を検出する高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法であって、発電プラントの冷却運転時、又は運転休止時に、蒸発管弁22を閉弁し、バイパス経路弁23を開弁してバイパス経路21と復水・給水管20と復水、及び給水を循環させ、熱交換用細管から漏洩する給水を検出することにより、高圧給水加熱器10、11からの給水の漏洩を検出する、高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備の熱交換器における細管漏洩の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備、及び原子力発電設備(以下、発電プラントという)においては、化石燃料の燃焼により、又は核反応により、熱を発生させて給水を過熱し、蒸気を発生させてその圧力によって、タービンを回転させる。発電プラントにおいては、化石燃料の燃焼により、又は核反応により発生する熱を、より効率的にタービンによる仕事に変換するため、多段階にわたる熱交換を行っている。
【0003】
図1を参照して発電プラントの一例である火力発電設備、及びこれが備える熱交換器について説明すると、火力発電設備においては、ボイラ1の熱交換器(蒸発管の一例である節炭器(図示せず)、ボイラ水壁(図示せず)、一次過熱器2、及び二次過熱器3)で発生した蒸気は、高圧・中圧タービン4で仕事をして一部を高圧給水加熱器10、11へ供給した後、ボイラ1の熱交換器(再熱器5)で再び熱せられて、低圧タービン6に送られる。低圧タービンに送られた蒸気は、低圧タービン6で仕事をして、一部が低圧給水加熱器14、15に供給された後、復水器7へと流れる。復水器7へ流入した蒸気は、循環水ポンプから供給される海水と熱交換して復水となり復水ポンプ8から低圧給水加熱器14、15に、ついで高圧給水加熱器10、11に送水される。
【0004】
低圧給水加熱器14、15では、復水ポンプ8から送水された復水と低圧タービンからの抽気蒸気との間で熱交換し、復水は加熱されて脱気器18へ送られる。復水により冷却された抽気蒸気はドレンとなり低圧給水加熱器14、15の加熱室(図示せず)に溜まる。このドレンはドレン排水管から復水器7へ送水される。ここで、低圧給水加熱器14、15内におけるドレンの水位は調節弁16、17により一定に制御されている。
【0005】
高圧給水加熱器10、11では、給水ポンプ9から送水された給水と高圧・中圧タービン4からの抽気蒸気との間で熱交換し、給水は加熱されボイラ1に送られる。高圧給水加熱器10、11内におけるドレンの水位は低圧給水加熱器14、15と同様に、調節弁12、13により一定に制御されている。
【0006】
ここで、高圧給水加熱器10、11の熱交換用細管に亀裂等が入った場合、復水・給水管20内の高圧の給水が漏れ出して、加熱室に流入し、加熱室におけるドレンの水位が一時的に上昇する。ドレンの水位は調節弁12、13により一定に制御されているため、ドレンの水位の上昇とともに調節弁がその開度を増加し、ドレンの水位は元の水位へと下降する。
【0007】
熱交換用細管の亀裂が拡大し、給水の漏洩量が増加した場合、加熱室に流入する給水の流量が増加するため、調節弁12、13の開度はより増加し、更に給水の流入量がドレンの排出量を超える場合には、加熱室におけるドレンの水位が上昇することになる。
【0008】
このような事態に陥った場合、調節弁12、13の開度、加熱室におけるドレンの水位の上昇、及び高圧給水加熱器10、11における漏洩音等から給水の漏洩を検出することが可能である。しかしながら、給水の漏洩量が微量である場合等には、調節弁12、13の開度の変化も少なく、ドレンの水位も上昇せず、高圧給水加熱器10、11における漏洩音もわずかであるため、調節弁12、13の開度、ドレンの水位、高圧給水加熱器10、11における漏洩音等からは、給水の漏洩を検出することはできない。
【0009】
このため、熱交換器用細管の破損の早期発見ができず、破損部位の拡大を招き、重大事故につながる危険性があった。
【0010】
このような問題を解決するための発明として、特許文献1には、発電プラントに設備された熱交換器(給水加熱器、過熱器、再熱器等)の熱交換用細管からの水・蒸気漏洩を検出するものにおいて、プロセスデータの入力部と、最小に変動しているプロセスデータをファイリングする「入力データ平均化処理部」と、プラントが正常運転しているときの負荷に対応したプロセスデータの実測値を基準値として入力した「データファイル」と、データファイルの基準値からの設定値を算出する「設定値算出部」と、「判定部」とを備えて構成し、各配管系統(補給水系統、復水系統、給水系統、ボイラ水蒸気系統)に設置した複数の検出器により検出したプロセスデータ(主蒸気流量、給水流量、復水流量、加熱器ドレン流量、補給水流量)と、その時の負荷に対応した設定値との比較により細管漏洩の発生を検出する熱交換器の細管漏洩検出方法が開示されている。
【0011】
この熱交換器の細管漏洩検出方法によれば、熱交換器の細管漏洩が発生した場合、漏洩の箇所について限定でき、早期に発見できるため、細管破損の拡大を防ぐことができるとされている。
【特許文献1】特開平11−022909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を実施するためには、多数の検出器を設置する必要があり、多額の投資が必要となる。更に、これらの検出器より検出される検出データを処理するために、複雑な演算を行うプログラムが必要となる。更に、例えば高圧給水加熱器における熱交換用細管の破損が軽微である場合には、抽気蒸気から生じるドレンの流量の変動により、破損の発見が困難になる場合もある。
【0013】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、既存の設備を利用した高圧給水加熱器の漏洩検査方法であって、複雑なプログラム等も必要とせず、極微量の漏洩をも発見することができる高圧給水加熱器の漏洩検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、発電プラントにおいて、発電プラントの冷却運転時、又は運転休止時にバイパス経路と復水・給水管とに復水、及び給水を循環させ、高圧給水加熱器の熱交換用細管から漏洩する給水を検出することにより、高圧給水加熱器からの給水の漏洩を検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0016】
(1) ボイラ又は原子炉で発生する熱を利用して給水を過熱し、蒸気を発生させる蒸発管と、海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器と、前記蒸発管で過熱された高圧の蒸気の圧力を利用して回転する高圧・中圧タービンと、前記復水器から前記蒸発管へ復水、及び給水を流通させるための、復水・給水管と、前記復水・給水管上に備えられ、前記高圧・中圧タービンから抽気された抽気蒸気と給水との間での熱交換を行う高圧給水加熱器と、前記高圧給水加熱器において、給水を流通させるための熱交換用細管と、前記蒸発管から分岐して、前記蒸発管中の給水又は蒸気を復水器へと環流するバイパス経路と、前記バイパス経路上に備えられるバイパス経路弁と、前記蒸発管上、バイパス経路への分岐点よりも下流に備えられる蒸発管弁と、を備える発電プラントにおいて行われる、前記高圧給水加熱器からの復水の漏洩を検出する高圧給水加熱器の漏洩検査方法であって、前記発電プラントの冷却運転時、又は運転休止時に、前記蒸発管弁を閉弁し、前記バイパス経路弁を開弁して前記バイパス経路と前記復水・給水管と復水、及び給水を循環させ、前記熱交換用細管から漏洩する給水を検出することにより、前記高圧給水加熱器からの給水の漏洩を検出する、高圧給水加熱器の漏洩検査方法。
【0017】
(1)に記載の発明は、発電プラントの定期点検等に先立って行われる発電プラントの冷却運転時、又は発電プラントの運転休止時に行われる高圧給水加熱器の漏洩検査方法である。発電プラントの冷却運転時、又は運転休止時には、中圧・高圧タービンから高圧給水加熱器への抽気蒸気の供給がなく、高圧給水加熱器におけるドレンが発生しないため、バイパス経路と復水・給水管を循環している給水が、高圧給水加熱器の熱交換用細管から漏洩している場合には、漏洩している給水を検出することにより、容易に高圧給水加熱器の漏洩を検出することができる。これにより、極微量の給水の漏洩であっても確実に検出することができる。
【0018】
また、発電プラントの冷却運転時には、通常、ボイラ、又は原子炉を冷却するため、蒸発管、バイパス経路、及び復水・給水管には、復水、及び給水が循環している。このため、(1)に記載の発明によれば、発電プラントの冷却運転時の復水、及び給水の循環を利用して、高圧給水加熱器の漏洩検査方法を行うことができる。
【0019】
なお、ここで、「バイパス経路」とは、蒸発管に達した給水又は蒸気を、蒸気タービンを経由せずに復水器に還流させるための経路を指し、火力発電設備における起動バイパス経路、及び原子力発電設備におけるタービンバイパス系に相当する。また、「復水・給水管」とは、通常運転時、復水器で生じた復水を、蒸発管に供給するための経路であり、復水・給水管上には低圧給水加熱器、脱気器、及び高圧給水加熱器等が備えられている。更に、「復水」とは、蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を復水器により液化して得られる水であって、復水器から脱気器に循環するものをいう。「給水」とは、ボイラ、又は原子炉に供給される水であって、脱気器から蒸発管に流通させるものをいう。
【0020】
(2) 前記高圧給水加熱器は、抽気蒸気が流入して給水を加熱するための加熱室と、抽気蒸気を冷却して得られるドレンを、前記加熱室から前記復水・給水管に排水するためのドレン排水管と、前記ドレン排水管上に設けられた調節弁と、を備えるものであって、前記高圧給水加熱器の漏洩検査方法は、前記調節弁を閉弁して前記加熱室の水位の上昇を確認することにより、前記高圧給水加熱器の漏洩を検出する、(1)に記載の高圧給水加熱器の漏洩検査方法。
【0021】
高圧給水加熱器は、抽気蒸気が流入して給水を加熱するための加熱室を備え、抽気蒸気が冷却されて発生するドレンは、この加熱室に貯水される。上記高圧給水加熱器の漏洩検査においては、抽気蒸気が供給されないため、調節弁を閉弁した場合における加熱室におけるドレンの水位の上昇は、給水の漏洩のみに帰すことができる。このため、(2)に記載の発明によれば、加熱室の水位の上昇を確認することにより、確実に高圧給水加熱器における給水の漏洩を検出することができる。
【0022】
(3) 復水、及び給水を、2時間以上7時間以下の時間に亘り、通常圧力に対して90%以上100%以下の水圧で前記バイパス経路と、前記復水・給水管を循環させる、(1)又は(2)に記載の高圧給水加熱器の漏洩検査方法。
【0023】
漏洩している給水を検出する際には、給水の漏洩量が多いときのほうが、検出が容易となる。(3)に記載の発明によれば、通常圧力に対して90%以上の水圧で、ボイラ水及び復水をバイパス経路と復水・給水管とに循環させるため、給水の漏洩量が増加し、高圧給水加熱器からの給水の漏洩を容易に検出することができる。更に、通常圧力に対して100%以下の水圧で、復水、及び給水をバイパス経路と復水・給水管とに循環させるため、設備に負担を与えることがなく、破損部位の拡大を招くこともない。
【0024】
なお、本発明において、「通常圧力」とは、24.1Mpaであり、「通常圧力に対して90%以上100%以下」の水圧とは、21.69Mpa以上24.1Mpa以下の圧力を指す。
【0025】
また、バイパス経路と復水・給水管とに復水、及び給水を循環させる時間が、2時間以上であるので、水圧が低圧の場合でも復水の漏洩量の絶対量を増加させることができ、漏洩した復水の検出が容易となる。また、7時間以下であるので、発電プラントの定期検査による運転休止時間を長引かせることがなく、運転休止による経済的な損失を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発電プラントの運転休止時に高圧給水加熱器の漏洩を検査するため、抽気蒸気を冷却した際に生成するドレンの生成量の変動により、給水の漏洩の検出が困難になることがなく、高圧給水加熱器の漏洩を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
<火力発電設備>
まず、本発明の高圧給水加熱器の漏洩検査方法を説明するに先立って、当該検査方法が実施される発電プラントの一例である、火力発電設備について説明する。
【0029】
[火力発電設備の構成]
図1に火力発電設備における復水・給水系統の概略図を示す。本実施形態にかかる火力発電設備は、化石燃料を燃焼させ、燃焼熱を発生させるボイラ1と、ボイラ1内の熱交換器内部を循環する給水を過熱して蒸気を発生させるための一次過熱器2(蒸発管の一例)と、一次過熱器2により発生した蒸気を更に過熱する二次過熱器3(蒸発管の一例)と、一次過熱器2と二次過熱器3との間の蒸気の流通を制御する蒸発管弁22と、海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器7と、一次過熱器2から復水器7へ給水を流通させるため迂回経路であるバイパス経路21と、バイパス経路21上に備えられるバイパス経路弁23と、二次過熱器3で過熱された高圧の蒸気の圧力を利用して回転する高圧・中圧タービン4と、復水器7から低圧給水加熱器14、15、脱気器18、及び高圧給水加熱器10、11等を経由して、一次過熱器2へ復水を流通させるための、復水・給水管20と、復水・給水管20上に備えられ、高圧・中圧タービン4から抽気された抽気蒸気と給水との間での熱交換を行う高圧給水加熱器10、11と、高圧給水加熱器10、11において、復水を流通させるための熱交換用細管(図示せず)と、を備える。
【0030】
また、高圧給水加熱器10、11は、抽気蒸気を冷却して得られるドレンを貯水するための加熱室(図示せず)と、加熱室から復水・給水管20にドレンを排水するためのドレン排水管25と、ドレン排水管25上に設けられた調節弁12、13と、を備える。
【0031】
更に、本実施形態にかかる火力発電設備には、他にも、ボイラ1に備えられた熱交換器であり、蒸発管の一例である節炭器(図示せず)、ボイラ水壁(図示せず)、及び再熱器5、再熱器5において過熱された低圧の蒸気の圧力を利用して回転する低圧タービン6、低圧タービン6から抽気された抽気蒸気と復水との間での熱交換を行う低圧給水加熱器14、15、復水中の空気を除去する脱気器18、復水、及び給水を復水・給水管20に送り出すための復水ポンプ8、及び給水ポンプ9、並びに、バイパス経路21上、バイパス経路弁23から復水器7側に設けられ、加圧下で過熱された給水の一部を通常圧力下で蒸発させ、更に汽水分離するためのフラッシュタンク24を備える。
【0032】
[火力発電設備の動作]
ここで、本実施形態にかかる火力発電設備の動作について説明すると、ボイラ1において、石油、石炭等の化石燃料が燃焼して燃焼熱を発生すると、給水は給水ポンプ9により、復水・給水管からボイラ1内に備えられる熱交換器へと送られる。即ち、給水は、節炭器(図示せず)、ボイラ水壁(図示せず)、一次過熱器2、二次過熱器3へと順次送られ、燃焼熱によって加熱(過熱)される。一次過熱器2に達した給水は、化石燃料の燃焼熱により沸騰して蒸気となり、これが二次過熱器3に送られ、更に過熱される。過熱された蒸気は、まず高圧・中圧タービン4に送られ、これを高速で回転させる。高圧・中圧タービン4で仕事を終えた蒸気は、一旦、ボイラ1内の再熱器5に戻され、そこで再び過熱されて、低圧タービン6へと送られ、低圧タービン6を高速で回転させる。低圧タービン6で仕事を終えた蒸気は、復水器7に送られて海水により冷却され、復水となる。この復水は、復水ポンプ8により、再度復水・給水管20に送り出され、ボイラ1内の熱交換器に達する。
【0033】
このように、化石燃料の燃焼により発生した燃焼熱は、給水へと伝導されて給水を高圧の蒸気とし、この蒸気の圧力によってタービンを回転させるものの、給水に伝導された全ての熱エネルギーが仕事に変換されるわけではなく、多くは廃熱として、海水へ放出される。
【0034】
高圧給水加熱器10、11、低圧給水加熱器14、15等の給水加熱器は、仕事を終えた蒸気に蓄えられた熱エネルギーの一部を給水、及び復水に伝導し、効率的に発電を行おうとするための設備である。即ち、高圧給水加熱器10、11、及び低圧給水加熱器14、15は復水・給水管20上に備えられ、それぞれ高圧・中圧タービン4、及び低圧タービン6から抽気された蒸気と、給水、及び復水との間で熱交換を行う。
【0035】
高圧・中圧タービン4で仕事を終えた蒸気は、再熱器5に送られるが、一部の蒸気は、高圧給水加熱器10、11に送られる。高圧給水加熱器10、11は、給水を流通するための熱交換用細管(図示せず)及び、蒸気が流入して給水を加熱するための加熱室が備えられており、高圧給水加熱器10、11に送られた蒸気と給水との間で熱交換が行われる。これにより給水は加熱され、蒸気は冷却されるが、蒸気が冷却された結果生じるドレンは、加熱室に溜まり、一定量がドレン排水管25から復水・給水管へと排出される。ドレン排水管25には調節弁12、13が備えられており、調節弁12、13の開度が調整されることにより加熱室におけるドレンの水位は一定に保たれる。
【0036】
<高圧給水加熱器の漏洩検査方法>
本実施形態の高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法は、上述したような火力発電設備の冷却運転時、及び運転休止時において実施されるものである。即ち、火力発電設備の冷却運転時、及び運転休止時に、蒸発管弁22を閉弁して一次過熱器2から二次過熱器3への給水の流入を遮断し、バイパス経路弁23を開弁して、バイパス経路21と復水・給水管20とに復水、及び給水を循環させ、熱交換用細管から漏洩する給水を検出することにより、高圧給水加熱器10、11からの給水の漏洩を検出する。
【0037】
[蒸発管弁の閉弁]
蒸発管弁22を閉弁しているので、一次過熱器2に到達した給水が、二次過熱器3、高圧・中圧タービン4、及び低圧タービン6へと流入しない。二次過熱器3、高圧・中圧タービン4、及び低圧タービン6は、設計上、蒸気のみを流通させる構造となっているので、蒸発管弁22を閉弁して、給水を遮断することによって、これらの設備への給水の流入による設備の損傷を未然に防ぐことができる。
【0038】
[バイパス経路への給水の流通]
バイパス経路弁23は、通常運転時には閉弁されているため、給水がバイパス経路21に流入しない。しかしながら、火力発電設備の運転休止時に、復水、及び給水を復水・給水管20中を循環させる場合には、上述のとおり、二次過熱器3、高圧・中圧タービン4、及び低圧タービン6への給水の流入を防止する必要があるため、バイパス経路弁23を開弁して、バイパス経路21に給水を流通させる。
【0039】
また、火力発電設備の冷却運転時には、バイパス経路21と復水・給水管に復水、及び給水が循環しており、この状態を利用して本発明の高圧給水加熱器の漏洩検査方法を実施することも可能である。この場合、加圧条件下で過熱された給水の一部は、フラッシュタンク24において蒸発し、汽水分離により分離された給水のみが復水器7へと到達する。
【0040】
バイパス経路21、及び復水・給水管20に復水、及び給水を循環させる際には、復水ポンプ8、及び給水ポンプ9により復水、及び給水を循環させる。給水ポンプ9により給水を循環させる際の水圧は、4.9Mpa以上24.1Mpa以下が好ましい。4.9Mpa以上の水圧で、給水をバイパス経路21と復水・給水管20とに循環させるため、高圧給水加熱器10、11における給水の漏洩量が増加し、高圧給水加熱器10、11からの給水の漏洩を容易に検出することができる。更に、24.1Mpa以下の水圧で、給水をバイパス経路21と復水・給水管20とに循環させるため、設備に負担を与えることがなく、破損部位の拡大を招くこともない。更に、本実施形態においては、給水ポンプ9により給水を循環させる際の水圧が、通常圧力である24.1Mpaに対して、90%以上100%以下の水圧となることが好ましい。
【0041】
給水は、2時間以上7時間以下循環させることが好ましい。2時間以上であるので、水圧が低圧の場合でも給水の漏洩量の絶対量を増加させることができ、漏洩した給水の検出が容易となる。また、7時間以下であるので、火力発電設備の定期検査による運転休止時間を長引かせることがなく、運転休止による経済的な損失を防止することができる。
【0042】
[熱交換用細管からの給水の漏洩の検出]
高圧給水加熱器10、11の熱交換用細管に破損がある場合には、上述のように復水、及び給水を、所定の圧力でバイパス経路21及び復水・給水管20に循環させることにより、当該破損部から給水が漏洩する。熱交換用細管から漏洩する給水を検出する手段としては、特に限定されないが、例えば、加熱室のドレンの水位の上昇を確認することにより給水の漏洩を検出する手段を挙げることができる。
【0043】
(加熱室のドレンの水位の上昇を確認することにより給水の漏洩を検出する手段)
熱交換用細管からの給水の漏洩を検出するにあたっては、加熱室のドレンの水位の上昇を確認することにより、給水の漏洩を検出することができる。給水の漏洩の検出にあたっては、ドレン排水管25上に備えられる調節弁12、13を閉弁して、加熱室からのドレン及び給水の流出を完全に遮断する。次に、検査開始時のドレンの水位を記録しておき、所定時間に亘りバイパス経路21及び復水・給水管20に復水、及び給水を循環させた後、ドレンの水位の上昇を確認する。火力発電設備の運転休止時には、高圧・中圧タービン4から高圧給水加熱器10、11へと蒸気が供給されておらず、ドレンの水位の上昇は、給水の漏洩のみに帰すことができることから、ドレンの水位の上昇を検知することにより、微量の給水の漏洩であっても、容易に検出することができる。
【0044】
また、給水の漏洩が極微量である場合には、復水、及び給水をバイパス経路21及び復水・給水管20を循環させる際の、上述した水圧、及び循環時間を適宜調整すればよい。これにより、極微量の給水の漏洩であっても、漏洩する給水の絶対量が増加するため、給水の漏洩を容易に検出することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、火力発電設備を例にとって高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法を説明したが、本実施形態にかかる高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法は、原子力発電設備においても実施することができるものである。例えば沸騰水型原子炉を有する原子力発電設備においては、冷却材が核反応の際に発生する熱によって沸騰し、原子炉において蒸気を発生する。この蒸気は高圧・中圧タービンを回転させ、高圧・中圧タービンを回転させた蒸気は、更に、主蒸気との熱交換により再熱され、或いは、湿分分離器を経て湿分を除かれて、低圧タービンに送られる。ここで、高圧・中圧タービンを回転させた蒸気は、復水・給水管上に備えられる高圧給水加熱器において給水との間で熱交換を行うが、本実施形態にかかる高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法は、このような原子力発電設備に備えられる高圧給水加熱器においても実施することができるものであり、本実施形態の高圧給水加熱器10、11の漏洩検査方法を原子力発電設備で行うために必要な修正を加えた高圧給水加熱器の漏洩検査方法は、本発明の範囲内に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の火力発電設備を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ボイラ
2 一次過熱器
3 二次過熱器
4 高圧・中圧タービン
5 再熱器
6 低圧タービン
7 復水器
8 復水ポンプ
9 給水ポンプ
10 高圧給水加熱器
11 高圧給水加熱器
12 調節弁
13 調節弁
14 低圧給水加熱器
15 低圧給水加熱器
16 調節弁
17 調節弁
18 脱気器
20 復水・給水管
21 バイパス経路
22 蒸発管弁
23 バイパス経路弁
24 フラッシュタンク
25 ドレン排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ又は原子炉で発生する熱を利用して給水を過熱し、蒸気を発生させる蒸発管と、
海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器と、
前記蒸発管で過熱された高圧の蒸気の圧力を利用して回転する高圧・中圧タービンと、
前記復水器から前記蒸発管へ復水、及び給水を流通させるための、復水・給水管と、
前記復水・給水管上に備えられ、前記高圧・中圧タービンから抽気された抽気蒸気と給水との間での熱交換を行う高圧給水加熱器と、
前記高圧給水加熱器において、給水を流通させるための熱交換用細管と、
前記蒸発管から分岐して、前記蒸発管中の給水又は蒸気を復水器へと環流するバイパス経路と、
前記バイパス経路上に備えられるバイパス経路弁と、
前記蒸発管上、バイパス経路への分岐点よりも下流に備えられる蒸発管弁と、を備える発電プラントにおいて行われる、前記高圧給水加熱器からの復水の漏洩を検出する高圧給水加熱器の漏洩検査方法であって、
前記発電プラントの冷却運転時、又は運転休止時に、前記蒸発管弁を閉弁し、
前記バイパス経路弁を開弁して前記バイパス経路と前記復水・給水管と復水、及び給水を循環させ、
前記熱交換用細管から漏洩する給水を検出することにより、前記高圧給水加熱器からの給水の漏洩を検出する、高圧給水加熱器の漏洩検査方法。
【請求項2】
前記高圧給水加熱器は、
抽気蒸気が流入して給水を加熱するための加熱室と、
抽気蒸気を冷却して得られるドレンを、前記加熱室から前記復水・給水管に排水するためのドレン排水管と、
前記ドレン排水管上に設けられた調節弁と、を備えるものであって、
前記高圧給水加熱器の漏洩検査方法は、
前記調節弁を閉弁して前記加熱室の水位の上昇を確認することにより、前記高圧給水加熱器の漏洩を検出する、請求項1に記載の高圧給水加熱器の漏洩検査方法。
【請求項3】
復水、及び給水を、2時間以上7時間以下の時間に亘り、通常圧力に対して90%以上100%以下の水圧で前記バイパス経路と、前記復水・給水管を循環させる、請求項1又は2に記載の高圧給水加熱器の漏洩検査方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−156552(P2009−156552A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338164(P2007−338164)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】