説明

高圧蒸気滅菌器

【課題】チャンバー内へ空気を供給する空気供給流路を開閉する電磁弁の弁部分に水が付着することがないようにすると共に、被滅菌物の所期の滅菌が達成できる高圧蒸気滅菌器を提供する。
【解決手段】チャンバー4内に注水する注水流路13の注水口がチャンバー内の下部に開口し、チャンバー内に外気を供給する空気供給流路11は、チャンバーの外側で注水流路よりも上方に配置した電磁弁14を介してチャンバーの上部を貫通し、ヒータ室5Aに空気供給流路の空気出口11Bが開口した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として病院等に設置して医療用器具等の被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌するための高圧蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧蒸気滅菌器の一つとして、滅菌器本体内に設けた前面開口のチャンバー4と、このチャンバー4の前面開口を密閉する蓋7を備え、チャンバー4内の底部には滅菌ヒータ5を配置し、チャンバー4内に注水した水を滅菌ヒータ5で蒸発させ、チャンバー4内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程を行ない、滅菌工程の終了によってチャンバー4内の排水と排気の排水排気工程を行ない、次いで滅菌ヒータ5と乾燥ヒータ26に通電すると共に外気をチャンバー4内へ供給して、被滅菌物3やチャンバー4内を乾燥させる乾燥工程を行なうものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−5231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の高圧蒸気滅菌器は、この特許文献1の図1に示されるように、チャンバー4内の底部には、滅菌ヒータ5をヒータカバー6で覆ってヒータ室が形成されている。そして、滅菌工程を行なうためにチャンバー4内へ水を供給する注排水流路13と、被滅菌物3やチャンバー4内を乾燥させる乾燥工程を行なうためのチャンバー4内へ空気(外気)を供給する空気供給流路11が、共通の供給管9で構成されており、この供給管9がチャンバー4の下方から前記ヒータ室に連通開口している。
【0005】
このため、チャンバー4内へ供給される水の一部が、チャンバー4の下方へ延びる供給管9から空気供給流路11へ入り、空気供給流路11を開閉する電磁弁14の弁部分に付着する虞がある。もし、この電磁弁14の弁部分に水が付着した場合は、その水に含まれるスケール(不純物)が弁部分に付着し、この付着したスケール(不純物)によって、電磁弁14の弁部分が完全に閉じない状態が発生することが懸念される。その場合、電磁弁14の弁部分が完全に閉じない状態となり、滅菌工程中にチャンバー4内の蒸気が漏れることが懸念され、この蒸気漏れが発生した場合は、被滅菌物の所期の滅菌が達成できない状態となり、好ましくない。
【0006】
また、この電磁弁14の弁部分に付着したスケール(不純物)が、前記乾燥工程においてチャンバー4内へ供給される空気の障害となり、チャンバー4内へ供給される空気量が減少し、チャンバー4内での所期の乾燥性能が低下することが懸念される。
【0007】
また、この特許文献1の高圧蒸気滅菌器は、乾燥工程においてチャンバー4内へ供給される外気は、供給管9によってヒータ室の下方からヒータ室へ供給されるため、滅菌ヒータ5で加熱した空気がチャンバー4内全体に回って、チャンバー4内全体を均一温度に加熱するまでの時間が必要であり、所期の被滅菌物の滅菌処理が終了するまでの一サイクルの時間をなるだけ短くすることも一つの課題であった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み、チャンバー内へ空気を供給する空気供給流路を開閉する電磁弁の弁部分に水が付着する虞がないようにすると共に、被滅菌物の所期の滅菌が達成できる技術を提供するものである。
また本発明は、空気供給流路からチャンバー内へ空気を供給する空気供給方向を特定することにより、被滅菌物やチャンバー内の乾燥性能の向上を図ることができる技術を提供するものである。
更に本発明は、所期の被滅菌物の滅菌処理が終了するまでの一サイクルの時間をなるだけ短くすることができるような加熱効果が得られる構成の技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の高圧蒸気滅菌器は、蓋によって開閉される開口を形成したチャンバーを備え、前記チャンバー内の底部には滅菌ヒータがヒータカバーで覆われた状態のヒータ室が形成され、前記チャンバー内に注水した水を前記滅菌ヒータで蒸発させ、前記チャンバー内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程と、前記滅菌ヒータに通電すると共に外気を前記チャンバー内へ供給して前記被滅菌物及び前記チャンバー内を乾燥させる乾燥工程を行なう高圧蒸気滅菌器において、前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記チャンバー内の下部に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側で前記注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの上部を貫通し、前記ヒータ室に前記空気供給流路の空気出口が開口したことを特徴とする。
【0010】
第2発明の高圧蒸気滅菌器は、蓋によって開閉される開口を形成したチャンバーを備え、前記チャンバー内の底部には滅菌ヒータがヒータカバーで覆われた状態のヒータ室が形成され、前記チャンバー内に注水した水を前記滅菌ヒータで蒸発させ、前記チャンバー内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程を行ない、前記滅菌工程の終了後に前記チャンバー内の排水と排気の排水排気工程を行ない、その後前記滅菌ヒータに通電すると共に外気を前記チャンバー内へ供給して、前記被滅菌物及び前記チャンバー内を乾燥させる乾燥工程を行なう高圧蒸気滅菌器において、前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記ヒータ室内に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側で前記注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの上部を貫通し前記ヒータ室の後部に空気出口が開口したことを特徴とする。
【0011】
第3発明の高圧蒸気滅菌器は、第1発明または第2発明において、前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記ヒータ室内に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの後部壁上部を貫通し前記チャンバーの後部壁の内側に沿って下方へ延在し、前記ヒータ室内の空気が後部から前方へ向かい前記チャンバー内の空気が前部から後部へ流れるように、前記ヒータ室の後部に前記空気供給流路の空気出口が開口したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明では、チャンバー内に注水する注水流路の注水口がチャンバー内の下部に開口し、チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、チャンバーの外側で注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介してチャンバーの後部壁を貫通し、ヒータ室の後部に空気供給流路の空気出口が開口することにより、チャンバー内に注水する水が、空気供給流路を開閉する電磁弁の弁部分に付着する虞がない。このため、空気供給流路を開閉する電磁弁の所期の閉止状態が得られ、被滅菌物の所期の滅菌が達成できるものとなる。
【0013】
第2発明は、チャンバー内に注水する注水流路の注水口がヒータ室内に開口し、チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、チャンバーの外側で注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介してチャンバーの上部を貫通しヒータ室に空気出口が開口したことにより、チャンバー内に注水する水が、空気供給流路を開閉する電磁弁の弁部分に付着する虞がない。このため、空気供給流路を開閉する電磁弁の所期の閉止状態が得られ、被滅菌物の所期の滅菌が達成できるものとなる。
【0014】
第3発明は、第1発明または第2発明において、空気供給流路の空気出口が、ヒータ室の後部から前方へ空気が流れるようにヒータ室の後部に開口したことにより、第1発明または第2発明と同様の効果を奏することができると共に、乾燥工程において、滅菌ヒータで加熱された空気が、チャンバー内の前部から後部へ向かう空気循環が得られるため、チャンバー内を乾燥工程に必要な所期の均一温度に上昇させる時間が短くなり、所期の被滅菌物の滅菌処理が終了するまでの一サイクルの時間短縮が図られ、且つ、被滅菌物やチャンバー内の乾燥が良好に行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の配管構成図である。
【図2】本発明に係る高圧蒸気滅菌器のチャンバー部分の縦断側面である。
【図3】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の工程動作図である。
【図4】本発明に係る高圧蒸気滅菌器と従来タイプとのチャンバー内温度と乾燥工程での立ち上がり時間の比較図である。
【図5】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の正面斜視図である。
【図6】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋を開いた正面斜視図である。
【図7】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の操作パネルの説明図である。
【図8】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器は、収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する横型チャンバー内において、滅菌モードの運転を開始し、チャンバー内に供給された加熱用水をチャンバー内底部に配置したヒータによって加熱蒸発させ、チャンバー内の被滅菌物を高温高圧蒸気下で滅菌した後、チャンバー内を排気乾燥するものであり、チャンバー内に注水する注水流路の注水口がチャンバー内の下部に開口し、チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、注水流路よりも上方にチャンバーの外側に配置した電磁弁を介してチャンバーの後部壁を貫通し、ヒータ部分へ空気出口が開口した構成であり、以下にその好ましい実施例を記載する。
【実施例1】
【0017】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器1は、主として病院等に設置して医療用器具等の被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌するためのものであり、その代表的なものとして、図5及び図6に示すように、前面開口2を形成した円筒状のチャンバー4を備え、この前面開口2を蓋7によって開閉自在に閉塞する横型形態である。以下、本発明に係る高圧蒸気滅菌器1実施例を図に基づき説明する。
【0018】
1は高圧蒸気滅菌器MKの本体の外ケースであり、内部に医療用器具等の被滅菌物3を収納して滅菌処理等を行う前面開口2を形成した円筒状のチャンバー4を収納配置している。
【0019】
5はチャンバー4内の底部に配設したシーズヒータ等にて構成した滅菌ヒータで、上方をヒータカバー6により被覆することにより、チャンバー4内の底部にヒータ室5Aを形成している。このヒータカバー6の上に被滅菌物3を載置し、且つヒータカバー6の前端部と前面開口2を開閉自在に閉塞する蓋7の内面との間に通風用の間隙8Aを設け、ヒータカバー6の後端部とチャンバー4の後部壁4Aとの間に通風用の間隙8Bを設けている。
【0020】
9は注水の供給管であり、チャンバー内の下部に開口するように、終端をチャンバー4内の底部に形成したヒータ室5Aに連通開口しており、供給管9の始端は、貯水タンク12の水中に開口した注排水流路13に接続し、注排水流路13の途中には注排水バルブである第2電磁弁15を接続していると共に、その始端部には貯水タンク12の水中に開口したコイル状の第1熱交換器16を設けている。
【0021】
チャンバー4内に外気を供給する空気供給流路11は、チャンバー4の外側で注排水流路13よりも上方に配置した給気バルブである第1電磁弁14を備え、この第1電磁弁14を介してチャンバー4の後部壁4Aを貫通し、ヒータ室5Aの後部に空気供給流路11の空気出口11Bが開口している。この構成のうちの好ましい形態を図1及び図2に示す。図1及び図2において、空気供給流路11は、チャンバー4の後部壁4Aの上部を貫通するように、取り付けナット11Cによってチャンバー4の後部壁4Aに固定され、取り付けナット11Cを介してチャンバー4の後部壁4Aの内側に沿って下方へ延在する延長部分11Aを備えており、延長部分11Aの先端の空気出口11Bの部分が、支持具28によってチャンバー4に支持されている。これによって、空気出口11Bから吐出する空気によって、ヒータ室5A内の空気の流れが後部から前方へ向かうように、ヒータ室5Aの後部に空気供給流路11の空気出口11Bが前方に向けて開口した状態である。
【0022】
空気供給流路11は、チャンバーの外側に配置した第1電磁弁14の空気の流れの上流側には、エアーフィルター10と乾燥用ポンプである空気圧縮機50とを備えており、空気圧縮機50が運転し、第1電磁弁14を適宜開いて空気供給流路11からチャンバー4内に外気を供給する。
【0023】
17は、一端をチャンバー4内の後部壁4Aの下部に連通開口し、他端を貯水タング12内の上方空間で開口した排気流路で、途中に排気バルブである第3電磁弁18と貯水タング12内の水中に没するコイル状の第2熱交換部19を接続しており、第2熱交換部19の一端が貯水タング12内の上方空間に開口している。
【0024】
また、チャンバー4の内部後部壁4Aの中央部には、チャンバー4内の温度を検出する温度センサー23を配設すると共に、排気流路17の第3電磁弁18よりチャンバー4寄りには圧力計32Bを接続しており、チャンバー4の外周面には、チャンバー4の壁を加熱するバンド状の乾燥ヒータ26を装着している。
【0025】
27は、外ケース1内の適所に配置した制御手段で、図示しないマイクロコンピュータを中心に構成し、チャンバー4内の温度を検出する温度センサー23の検出温度、チャンバー4内の水位検出の水位センサー20、並びに予め設定されたプログラムに従って、滅菌ヒータ5、第1電磁弁14、第2電磁弁15、第3電磁弁18、空気圧縮機50等への通電を制御し、また、図7に示す操作パネル30に配置した表示部32等の制御を行うものである。
【0026】
高圧蒸気滅菌器MKの前面部に配置した操作パネル30には、図7に示すように、高圧蒸気滅菌器MKの動作条件や動作モードを設定する設定部31と、動作条件や動作モードを表示する表示部32と、電源スイッチSW等を配置している。設定部31には、時刻設定部31A、予約設定部31B、滅菌温度設定部31C、滅菌時間設定部31D、乾燥時間設定部31E、スタートキー(またはスタートボタンと称し、スタートスイッチの操作部である)39、ストップキー40、温度や時間や時刻の設定値のアップダウン部31G、完了予定キー41等を配置している。表示部32は、温度や時刻等の表示部32Aと、圧力計32Bと、プロセス表示部32C、蓋7のロック状態表示部32D等を備えている。
【0027】
制御手段27は、図8に示すように、入出力ポートに操作パネル30が接続され、入力ポートに水位センサー20、温度センサー23、圧力センサー25が接続され、出力ポートに滅菌ヒータ5、乾燥ヒータ26、第1電磁弁14、第2電磁弁15、第3電磁弁18、ブザー33、空気圧縮機50等が接続されている。
【0028】
滅菌操作に際しては、先ず、電源スイッチSWをオン(ON)操作することにより、スタンバイ状態となる。図3に示すように、スタンバイ状態で給気バルブである第1電磁弁14が非通電で閉じており、注排水バルブである第2電磁弁15が非通電で閉じており、排気バルブである第3電磁弁18は非通電で開いている。この状態で、蓋7を開いて開口2よりチャンバー4内に被滅菌物3をセットし、蓋7を閉じる。蓋7はロック装置(図示せず)にて閉じた状態にロックされ、閉蓋検出スイッチ(図示せず)が作動して制御手段27の動作にて蓋7のロック状態表示部32EのLEDが点灯する。この状態で高圧蒸気滅菌器MKの運転を開始できる状態となる。
【0029】
このように高圧蒸気滅菌器MKの運転を開始できる状態において、操作パネル30の表示部32を確認しつつ設定部31によって所期の設定を行なう。このような操作によって、スタンバイ状態での準備が終わる。
【0030】
この準備が終わったスタンバイ状態で、スタートキー39のオン(ON)操作により、蓋7がインターロック機構によってロックされた状態となり、蓋7のロック状態表示部32Dが発光すると共に、滅菌モードが開始する。滅菌モードが開始することにより、図3に示すように、前処理工程であるチャンバー4内への注水工程が開始する。この注水工程では、排気バルブである第3電磁弁18は非通電で開いており、注排水バルブである第2電磁弁15に通電して弁を開き、チャンバー4内と貯水タンク12の水位差によって、貯水タンク12の水が自重にてチャンバー4内へ供給される。チャンバー4内の水位が水位センサー20によって検知される所定水位に達したとき、第2電磁弁15は非通電となって弁が閉じ、注水工程が終了し、加熱工程へ移行する。
【0031】
加熱工程では、滅菌ヒータ5に通電してチャンバー4内に注水した水を加熱して蒸気を発生させると共に、第3電磁弁18への通電及び非通電制御を行って、チャンバー4内の空気を排出流路17より外部に排出制御すると共に、温度センサー23にて検出するチャンバー4内の温度が滅菌に必要な所定温度(実施例では121℃)に到達すると、加熱工程を終了して、この所定温度を維持する様に、第3電磁弁18が非通電にて弁が閉じており、滅菌ヒータ5への通電を断続制御し、これにより被滅菌物3の滅菌処理を行う滅菌工程を行う。なお、実施例では、被滅菌物3の種類に応じて、滅菌に必要な所定温度を121℃と134℃に設定できるように構成している。
【0032】
滅菌工程では、予め設定した滅菌タイマーにより所定時間滅菌処理を行い、これが終了すると排気工程に移行する。排気工程では、初期に第3電磁弁18は通電にて弁が閉じており、第2電磁弁15へ通電して開き、この状態で、滅菌工程においてチャンバー4内が高圧になっていることにより、この圧力によってチャンバー4内の水が注排水流路13を通り、第1熱交換器16で冷却されつつ貯水タンク12内へ排水される。一方、図3に示すタイミングで乾燥ヒータ26へ適宜通電すると共に、排水時間が経過したとき、第2電磁弁15を非通電として弁を閉じると共に、第3電磁弁18を非通電として弁を開き、排気処理を行う。
【0033】
このような排水排気処理を行う排気工程が終了すると、第3電磁弁18は非通電を維持して弁を開いた状態でもって、空気圧縮機50が作動し、かつ第1電磁弁14に通電して弁を開き、空気供給流路11からチャンバー4内に外気を供給すると共に、排出流路17からチャンバー4内の空気を排出しつつ、所定時間チャンバー4内の乾燥処理を行う。このとき滅菌ヒータ5及び乾燥ヒータ26に断続的に通電され、空気供給流路11の空気出口11Bよりヒータ室5Aの後部に供給された空気は、滅菌ヒータ5の周囲を通って加熱されながらヒータ室5Aの前部に流れ、図2に点線矢印で示すようにヒータ室5Aの前部の空気出口8Aよりチャンバー4内へ流出し、チャンバー4内の前部から後方へ向かう流れとなって被滅菌物3の周囲を流れ、乾燥ヒータ26によるチャンバー4の加熱と共に、被滅菌物3やチャンバー4の内面を乾燥処理する乾燥工程を行なう。チャンバー4内の前部から後方へ流れた空気は、一部が排出流路17より外部に排出され、貯水タング12内の第2熱交換部19で冷却されつつ貯水タング12内の上部空間に排出される。一方、チャンバー4内の前部から後方へ流れた空気の他の部分は、チャンバー4の後部壁内面に沿って降下し、ヒータ室5Aの後部の空気入り口8Bよりヒータ室5Aへ流入し、空気供給流路11からチャンバー4内に供給される外気と共に滅菌ヒータ5の周囲を通って加熱されながらヒータ室5Aの前部に流れ、上記同様の空気の流れとなる。
【0034】
このような構成及び動作によって、図4に示すように、チャンバー4内の中心部の平均温度T℃が、上記特許文献1のような従来タイプでは129.00℃であるが、本発明タイプでは135.67℃となり、従来タイプに比してチャンバー4内の中心部の平均温度T℃が、本発明タイプでは5℃強高くなり、乾燥効果の向上となる。また滅菌工程終了にて排水排気工程を行った後、チャンバー4内の温度を乾燥工程に必要な温度に上昇させるまでの時間(立ち上がり時間)が、上記特許文献1のような従来タイプでは11分掛かっていたが、本発明タイプでは9.5分と短くなる。このように、チャンバー内を乾燥工程に必要な所期の均一温度に上昇させる時間が短くなり、所期の被滅菌物の滅菌処理を行う一サイクルの時間を短くすることができる効果が得られる。
【0035】
この乾燥工程による乾燥処理が終了すると、滅菌ヒータ5及び乾燥ヒータ26への通電を終了する。なお、その後も所定時間(実施例では10分)、第3電磁弁18は非通電を維持して弁を開いた状態とすると共に、第1電磁弁14と空気圧縮機50に通電して排気状態を維持している。なお、その後も第3電磁弁18は非通電を維持して弁を開いた状態とする。
【0036】
なお、加熱工程、滅菌工程、排気工程、乾燥工程等における温度や時間等はこれらに限定されるものではなく、チャンバー4の容積や被滅菌物の種類に応じて適宜設定するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器は、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲での変更形態は、本発明の範囲であり、上記実施例に示した構成に限定されず、上記同様の作用をすることができる高圧蒸気滅菌器の範囲において種々の形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0038】
1・・・・本体の外ケース
2・・・・前面開口
3・・・・被滅菌物
4・・・・チャンバー
5・・・・滅菌ヒータ
5A・・・ヒータ室
6・・・・ヒータカバー
7・・・・・蓋
8A、8B・・・通風用の隙間
10・・・エアーフィルター
11・・・空気供給流路
11A・・空気供給流路の延長部分
11B・・空気出口
12・・・貯水タンク
13・・・注排水流路
14・・・給気バルブ
15・・・注排水バルブ
17・・・排気流路
18・・・排気バルブ
20・・・排出通路
21・・・真空バルブ
22・・・真空ポンプ
26・・・乾燥ヒータ
27・・・制御手段
MK・・・高圧蒸気滅菌器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋によって開閉される開口を形成したチャンバーを備え、前記チャンバー内の底部には滅菌ヒータがヒータカバーで覆われた状態のヒータ室が形成され、前記チャンバー内に注水した水を前記滅菌ヒータで蒸発させ、前記チャンバー内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程と、前記滅菌ヒータに通電すると共に外気を前記チャンバー内へ供給して前記被滅菌物及び前記チャンバー内を乾燥させる乾燥工程を行なう高圧蒸気滅菌器において、前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記チャンバー内の下部に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側で前記注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの上部を貫通し、前記ヒータ室に前記空気供給流路の空気出口が開口したことを特徴とする高圧蒸気滅菌器。
【請求項2】
蓋によって開閉される開口を形成したチャンバーを備え、前記チャンバー内の底部には滅菌ヒータがヒータカバーで覆われた状態のヒータ室が形成され、前記チャンバー内に注水した水を前記滅菌ヒータで蒸発させ、前記チャンバー内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程を行ない、前記滅菌工程の終了後に前記チャンバー内の排水と排気の排水排気工程を行ない、その後前記滅菌ヒータに通電すると共に外気を前記チャンバー内へ供給して、前記被滅菌物及び前記チャンバー内を乾燥させる乾燥工程を行なう高圧蒸気滅菌器において、前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記ヒータ室内に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側で前記注水流路よりも上方に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの上部を貫通し前記ヒータ室の後部に空気出口が開口したことを特徴とする高圧蒸気滅菌器。
【請求項3】
前記チャンバー内に注水する注水流路の注水口が前記ヒータ室内に開口し、前記チャンバー内に外気を供給する空気供給流路は、前記チャンバーの外側に配置した電磁弁を介して前記チャンバーの後部壁上部を貫通し前記チャンバーの後部壁の内側に沿って下方へ延在し、前記ヒータ室内の空気が後部から前方へ向かい前記チャンバー内の空気が前部から後部へ流れるように、前記ヒータ室の後部に前記空気供給流路の空気出口が開口したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧蒸気滅菌器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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