高圧部分放電測定装置
【課題】高圧受電設備内の部分放電を測定する部分放電測定器を高圧受電設備の特性に合わせて校正できる高圧部分放電測定装置を提供することである。
【解決手段】高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器を接続し、校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を高周波電流検出器で測定し、高周波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を部分放電測定器で測定して表示出力し、部分放電測定器の表示出力が校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように表示出力校正器で部分放電測定器を校正し、校正した部分放電測定器で部分放電を測定し表示出力する。
【解決手段】高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器を接続し、校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を高周波電流検出器で測定し、高周波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を部分放電測定器で測定して表示出力し、部分放電測定器の表示出力が校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように表示出力校正器で部分放電測定器を校正し、校正した部分放電測定器で部分放電を測定し表示出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、高圧受電設備内の部分放電を測定する部分放電測定器の校正機能を有した高圧部分放電測定装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
送受配電設備である高圧受電設備は、絶縁体の経年劣化や塵埃が湿気を含むことで絶縁劣化を起こし、重大な絶縁破壊の前駆現象としての部分放電を起こすことが知られている。この部分放電により、高周波の電流変化及び可聴周波や超音波の音波が発生する。高周波電流変化は一部は高圧受電設備内の電線の電流に放出され一部は電波として放出される。
【０００３】
この高周波の電流変化、可聴周波や超音波の音波を捉え、これらが一定レベル以上になったときに、部分放電が発生したとして警報を出力することにより、高圧受電設備が重大な事故に到る前に対策を採ることが行われている。
高圧受電設備の引込みケーブルの両端、高圧母線の分岐部や高圧機器の前後などに高周波ＣＴを取付け、放電信号の波高値の減衰方向を測定器で検出することによって、高圧受電設備内の劣化機器の特定又は外来ノイズとの弁別を行い、需要家を停電にしないで電気機器の劣化を特定することができるようにしたものがある（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平１１−３５２１７７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、高圧受電設備の絶縁物の劣化の程度を把握するには、高圧受電設備に部分放電測定器を持ち込み、部分放電測定器にて部分放電により発生する電荷量を表示出力して確認しなければならない。
【０００６】
その際に、部分放電測定器が表示出力する電荷量は部分放電の程度を表す指標となるが、高圧受電設備内の電線の長さや太さなどによって値が異なってくるので、絶縁物の劣化の程度が同じであっても、高圧受電設備ごとに表示出力が異なってくる。そのため、部分放電測定器の校正が必要となる。
【０００７】
本発明の目的は、高圧受電設備内の部分放電を測定する部分放電測定器を高圧受電設備の特性に合わせて校正できる高圧部分放電測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１の発明に係わる高圧部分放電測定装置は、高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器と、前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による前記高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または前記高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を測定する高周波電流検出器と、前記高周波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器と、前記部分放電測定器の表示出力が前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように前記部分放電測定器を校正する表示出力校正器とを備えたことを特徴とする。
【０００９】
請求項２の発明に係わる高圧部分放電測定装置は、請求項１の発明において、前記部分放電測定器は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波信号検出部と、複数の前記高周波信号検出部を切り替えて前記部分放電測定器に出力する切替器と、前記切替器で切り替えられた前記高周波信号検出部の出力信号を入力し音声出力するスピーカとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、校正用放電発生器により、高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させ、部分放電測定器の表示出力が校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように部分放電測定器を校正するので、校正された部分放電測定器にて、実際の部分放電を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置が適用された高圧受電設備の一例の構成図。
【図２】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器の一例の構成図。
【図３】本発明の実施の形態における校正用放電発生器により実際に１０００ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こしそれを観測した高周波電流の波形図。
【図４】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器の他の一例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図１は本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置が適用された高圧受電設備の一例の構成図である。
【００１３】
図１において、柱状開閉器１１を介して送配電設備の配電線１２から引き込みケーブル１３にて高圧受電設備１４内に電力が供給される。高圧受電設備１４内では、引き込みケーブル１３に接続された電力受給用計器用変成器１５、断路器１６、遮断器１７を介して受電母線１８に電力が供給される。
【００１４】
断路器１６と遮断器１７との間から、高圧限流ヒューズ１９、計器用変圧器２０、ヒューズ２１を介して、電圧計切替スイッチ２２で３相各相の電圧を切り替えて計測する電圧計２３が接続されている。また、遮断器１７と受電母線１８との間には計器用変流器２４が設けられ、計器用変流器２４で検出された電流が過電流であるときは遮断器１７を開放する過電流継電器２５が設けられている。さらに、計器用変流器２４で検出された電流を電流計切替スイッチ２６で３相各相の電流を切り替えて計測する電流計２７が接続されている。
【００１５】
受電母線１８には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器２８を介して受電変圧器２９が接続され、受電変圧器２９の二次側に配電用遮断器３０を介して負荷３１にそれぞれ電力が供給される。また、受電母線１８には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器２８を介して直列リアクトル３２や進相コンデンサ３３が接続される。
【００１６】
このような高圧受電設備１４に対して、高圧部分放電測定装置３４を適用して、部分放電による高周波電流を測定する。高圧部分放電測定装置３４は、高圧受電設備１４内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器３５と、高圧受電設備１４の引き込みケーブル１３のシースアース線３６に流れる高周波電流を検出する高周波電流検出器３７と、高周波電流検出器３７で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器３８と、部分放電測定器３８の表示出力が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように部分放電測定器３８を校正する表示出力校正器３９とから構成されている。
【００１７】
部分放電による高周波電流を測定するにあたっては、まず、校正用放電発生器３５を高圧受電設備１４内の電線に接続し、高圧受電設備１４の引き込みケーブル１３のシースアース線３６に高周波電流を検出する高周波電流検出器３７を設置し、高周波電流検出器３７に部分放電測定器３８を接続する。この状態で、校正用放電発生器３５から校正用の擬似部分放電を発生させる。例えば、部分放電電荷量（１０００ＰＣ）の擬似部分放電を発生させる。そして、校正用の擬似部分放電による部分放電電荷量を部分放電測定器３８で測定し、表示出力校正器３９で部分放電測定器３８の表示出力が校正用の部分放電電荷量（例えば１０００ＰＣ）になるように校正する。
【００１８】
図２は部分放電測定器３８の一例の構成図である。高周波電流検出器３７で検出された高周波電流は、高圧部分放電測定装置３４の部分放電測定器３８に入力される。部分放電測定器３８は、高周波信号検出部４１と、直流増幅器４２と、メータ４３とから構成されている。高周波信号検出部４１は、入力した高周波信号を増幅し易い中間周波数に変換して高感度の増幅を行い部分放電による高周波信号の波形の包絡線信号を検波するものである。
【００１９】
すなわち、部分放電による高周波電流の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、高周波電流は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、本発明の実施の形態では、この高周波電流の波形の包絡線に着目し、高周波信号検出部４１にて、この高周波電流の波形の包絡線信号を検波して部分放電の発生を検出する。
【００２０】
高周波信号検出部４１は、入力した高周波信号を増幅する増幅器４４と、発振器４５からの高周波信号に混ぜ合わせて周波数を下げた高周波信号を得るミキサ４６と、ミキサ４６からの高周波信号を増幅する増幅器４７と、この高周波電流の波形の包絡線信号を取り出す検波回路４８とから構成されている。直流増幅器４２は、高周波信号検出部４１の出力を増幅するものであり、メータ４３は、直流増幅器４２からの出力信号を表示するものである。
【００２１】
そして、表示出力校正器３９により、メータ４３に表示値が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように、直流増幅器４２の増幅度あるいはメータ４３の指示針を調整してメータ４３の表示出力を校正する。
【００２２】
ここで、高周波電流検出器３７で引き込みケーブル１３のシースアース線３６に流れる高周波電流を検出するようにしたのは、引き込みケーブル１３のシースアース線３６には、引き込みケーブル１３の劣化による漏洩電流のほか、電線との静電容量を通して、高圧受電設備内の回路の部分放電に伴う微小な高周波電流も流れるためである。すなわち、部分放電が発生すると、引き込みケーブル１３のシースアース線３６に広い帯域を持つ微弱な高周波電流が流れるためである。そこで、このシースアース線３６から高周波電流検出器３７を通して高周波電流を捉え、高圧部分放電測定装置３４に入力する。なお、引き込みケーブル１３のシースアース線３６に代えて、高圧受電設備１４内に接地コンデンサを設置し、その接地コンデンサに分流する放電電流を測定するようにしても同様である。
【００２３】
高周波電流検出器３７で検出する高周波電流の周波数帯域は、部分放電によって放出されている１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの周波数を使用する。これは、１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの周波数の高周波電流は比較的外来電波の影響が少ないからである。
【００２４】
図３は、校正用放電発生器３５により、実際に１０００ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こし、それを観測した高周波電流の波形図である。図３から分かるように、１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの高周波電流が観測されたが、これらの周波数のうち値の大きい周波数を使用する。例えば、２０ＭＨｚあるいは３０ＭＨｚの周波数を使用する。これにより、外来ノイズの影響を受けない高周波電流により部分放電の発生を精度良く検出できることになる。
【００２５】
高周波信号検出部４１は、高周波電流検出器３７で検出された部分放電の高周波電流（２０ＭＨｚまたは３０ＭＨｚの周波数の高周波信号）を入力する。いま、部分放電の高周波電流として、３０ＭＨｚの周波数の高周波信号を入力したとする。まず、増幅器４４で増幅する。増幅器４４で増幅された高周波電流は、ミキサ４６で、発振器４５からの高周波信号（例えば、２５．８ＭＨｚ）に混ぜ合わせて周波数を下げた高周波信号（例えば、４．２ＭＨｚ）を得て、増幅器４７でさらに増幅する。
【００２６】
そして、検波回路４８で部分放電による高周波信号を取り出し、直流増幅器４２を介してメータ４３に出力する。このように、高周波信号検出部４１は、高周波電流検出器３７で検出された部分放電の高周波を増幅し易い中間周波数（例えば、４．２Ｍｚ）に変換して高感度の増幅を行い、部分放電による高周波電流の波形の包絡線信号を検波する。この部分放電による高周波電流の波形の包絡線信号は、直流増幅器４２で増幅されメータ４３に表示出力される。
【００２７】
表示出力校正器３９は、メータ４３に表示値が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように、直流増幅器４２の増幅度あるいはメータ４３の指示針を調整してメータ４３の表示出力を校正し、部分放電測定器３８を校正する。
【００２８】
次に、校正用放電発生器３５を取り外し、この校正した部分放電測定器３８にて、部分放電による高周波電流を検出する。これにより、精度の良い部分放電による高周波電流を検出できる。
【００２９】
次に、本発明の実施の形態の他の一例を説明する。図４は本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器３８の他の一例の構成図である。この第２の実施の形態は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃを設け、帯域の異なる複数の高周波電流により部分放電校正器３８を校正するようにしたものである。
【００３０】
図４では、３個の高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃを設けた場合を示している。高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃで検出された高周波電流は、それぞれ第１の高周波信号検出部４１ａ、第２の高周波信号検出部４１ｂ、第３の高周波信号検出部４１ｃに入力され、切替器４９により切り替えて、直流増幅器４２を介してメータ４３に出力するとともに、スピーカ５０にも出力する。ここで、スピーカ５０に出力するのは、ラジオ等の電波ノイズを識別するためである。
【００３１】
第２の実施の形態によれば、帯域の異なる複数の高周波電流に対して校正するので、校正の精度が向上し、より精度の良い部分放電による高周波電流を検出できる。
【符号の説明】
【００３２】
１１…柱状開閉器、１２…配電線、１３…引き込みケーブル、１４…高圧受電設備、１５…電力受給用計器用変成器、１６…断路器、１７…遮断器、１８…受電母線、１９…高圧限流ヒューズ、２０…計器用変圧器、２１…ヒューズ、２２…電圧計切替スイッチ、２３…電圧計、２４…計器用変流器、２５…過電流継電器、２６…電流計切替スイッチ、２７…電流計、２８…電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器、２９…受電変圧器、３０…配電用遮断器、３１…負荷、３２…直列リアクトル、３３…進相コンデンサ、３４…高圧部分放電測定装置、３５…校正用放電発生器、３６…シースアース線、３７…高周波電流検出器、３８…部分放電測定器、３９…表示出力校正器、４１…高周波信号検出部、４２…直流増幅器、４３…メータ、４４…増幅器、４５…発振器、４６…ミキサ、４７…増幅器、４８…検波回路、４９…切替器、５０…スピーカ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、高圧受電設備内の部分放電を測定する部分放電測定器の校正機能を有した高圧部分放電測定装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
送受配電設備である高圧受電設備は、絶縁体の経年劣化や塵埃が湿気を含むことで絶縁劣化を起こし、重大な絶縁破壊の前駆現象としての部分放電を起こすことが知られている。この部分放電により、高周波の電流変化及び可聴周波や超音波の音波が発生する。高周波電流変化は一部は高圧受電設備内の電線の電流に放出され一部は電波として放出される。
【０００３】
この高周波の電流変化、可聴周波や超音波の音波を捉え、これらが一定レベル以上になったときに、部分放電が発生したとして警報を出力することにより、高圧受電設備が重大な事故に到る前に対策を採ることが行われている。
高圧受電設備の引込みケーブルの両端、高圧母線の分岐部や高圧機器の前後などに高周波ＣＴを取付け、放電信号の波高値の減衰方向を測定器で検出することによって、高圧受電設備内の劣化機器の特定又は外来ノイズとの弁別を行い、需要家を停電にしないで電気機器の劣化を特定することができるようにしたものがある（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平１１−３５２１７７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、高圧受電設備の絶縁物の劣化の程度を把握するには、高圧受電設備に部分放電測定器を持ち込み、部分放電測定器にて部分放電により発生する電荷量を表示出力して確認しなければならない。
【０００６】
その際に、部分放電測定器が表示出力する電荷量は部分放電の程度を表す指標となるが、高圧受電設備内の電線の長さや太さなどによって値が異なってくるので、絶縁物の劣化の程度が同じであっても、高圧受電設備ごとに表示出力が異なってくる。そのため、部分放電測定器の校正が必要となる。
【０００７】
本発明の目的は、高圧受電設備内の部分放電を測定する部分放電測定器を高圧受電設備の特性に合わせて校正できる高圧部分放電測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１の発明に係わる高圧部分放電測定装置は、高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器と、前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による前記高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または前記高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を測定する高周波電流検出器と、前記高周波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器と、前記部分放電測定器の表示出力が前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように前記部分放電測定器を校正する表示出力校正器とを備えたことを特徴とする。
【０００９】
請求項２の発明に係わる高圧部分放電測定装置は、請求項１の発明において、前記部分放電測定器は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波信号検出部と、複数の前記高周波信号検出部を切り替えて前記部分放電測定器に出力する切替器と、前記切替器で切り替えられた前記高周波信号検出部の出力信号を入力し音声出力するスピーカとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、校正用放電発生器により、高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させ、部分放電測定器の表示出力が校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように部分放電測定器を校正するので、校正された部分放電測定器にて、実際の部分放電を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置が適用された高圧受電設備の一例の構成図。
【図２】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器の一例の構成図。
【図３】本発明の実施の形態における校正用放電発生器により実際に１０００ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こしそれを観測した高周波電流の波形図。
【図４】本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器の他の一例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図１は本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置が適用された高圧受電設備の一例の構成図である。
【００１３】
図１において、柱状開閉器１１を介して送配電設備の配電線１２から引き込みケーブル１３にて高圧受電設備１４内に電力が供給される。高圧受電設備１４内では、引き込みケーブル１３に接続された電力受給用計器用変成器１５、断路器１６、遮断器１７を介して受電母線１８に電力が供給される。
【００１４】
断路器１６と遮断器１７との間から、高圧限流ヒューズ１９、計器用変圧器２０、ヒューズ２１を介して、電圧計切替スイッチ２２で３相各相の電圧を切り替えて計測する電圧計２３が接続されている。また、遮断器１７と受電母線１８との間には計器用変流器２４が設けられ、計器用変流器２４で検出された電流が過電流であるときは遮断器１７を開放する過電流継電器２５が設けられている。さらに、計器用変流器２４で検出された電流を電流計切替スイッチ２６で３相各相の電流を切り替えて計測する電流計２７が接続されている。
【００１５】
受電母線１８には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器２８を介して受電変圧器２９が接続され、受電変圧器２９の二次側に配電用遮断器３０を介して負荷３１にそれぞれ電力が供給される。また、受電母線１８には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器２８を介して直列リアクトル３２や進相コンデンサ３３が接続される。
【００１６】
このような高圧受電設備１４に対して、高圧部分放電測定装置３４を適用して、部分放電による高周波電流を測定する。高圧部分放電測定装置３４は、高圧受電設備１４内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器３５と、高圧受電設備１４の引き込みケーブル１３のシースアース線３６に流れる高周波電流を検出する高周波電流検出器３７と、高周波電流検出器３７で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器３８と、部分放電測定器３８の表示出力が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように部分放電測定器３８を校正する表示出力校正器３９とから構成されている。
【００１７】
部分放電による高周波電流を測定するにあたっては、まず、校正用放電発生器３５を高圧受電設備１４内の電線に接続し、高圧受電設備１４の引き込みケーブル１３のシースアース線３６に高周波電流を検出する高周波電流検出器３７を設置し、高周波電流検出器３７に部分放電測定器３８を接続する。この状態で、校正用放電発生器３５から校正用の擬似部分放電を発生させる。例えば、部分放電電荷量（１０００ＰＣ）の擬似部分放電を発生させる。そして、校正用の擬似部分放電による部分放電電荷量を部分放電測定器３８で測定し、表示出力校正器３９で部分放電測定器３８の表示出力が校正用の部分放電電荷量（例えば１０００ＰＣ）になるように校正する。
【００１８】
図２は部分放電測定器３８の一例の構成図である。高周波電流検出器３７で検出された高周波電流は、高圧部分放電測定装置３４の部分放電測定器３８に入力される。部分放電測定器３８は、高周波信号検出部４１と、直流増幅器４２と、メータ４３とから構成されている。高周波信号検出部４１は、入力した高周波信号を増幅し易い中間周波数に変換して高感度の増幅を行い部分放電による高周波信号の波形の包絡線信号を検波するものである。
【００１９】
すなわち、部分放電による高周波電流の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、高周波電流は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、本発明の実施の形態では、この高周波電流の波形の包絡線に着目し、高周波信号検出部４１にて、この高周波電流の波形の包絡線信号を検波して部分放電の発生を検出する。
【００２０】
高周波信号検出部４１は、入力した高周波信号を増幅する増幅器４４と、発振器４５からの高周波信号に混ぜ合わせて周波数を下げた高周波信号を得るミキサ４６と、ミキサ４６からの高周波信号を増幅する増幅器４７と、この高周波電流の波形の包絡線信号を取り出す検波回路４８とから構成されている。直流増幅器４２は、高周波信号検出部４１の出力を増幅するものであり、メータ４３は、直流増幅器４２からの出力信号を表示するものである。
【００２１】
そして、表示出力校正器３９により、メータ４３に表示値が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように、直流増幅器４２の増幅度あるいはメータ４３の指示針を調整してメータ４３の表示出力を校正する。
【００２２】
ここで、高周波電流検出器３７で引き込みケーブル１３のシースアース線３６に流れる高周波電流を検出するようにしたのは、引き込みケーブル１３のシースアース線３６には、引き込みケーブル１３の劣化による漏洩電流のほか、電線との静電容量を通して、高圧受電設備内の回路の部分放電に伴う微小な高周波電流も流れるためである。すなわち、部分放電が発生すると、引き込みケーブル１３のシースアース線３６に広い帯域を持つ微弱な高周波電流が流れるためである。そこで、このシースアース線３６から高周波電流検出器３７を通して高周波電流を捉え、高圧部分放電測定装置３４に入力する。なお、引き込みケーブル１３のシースアース線３６に代えて、高圧受電設備１４内に接地コンデンサを設置し、その接地コンデンサに分流する放電電流を測定するようにしても同様である。
【００２３】
高周波電流検出器３７で検出する高周波電流の周波数帯域は、部分放電によって放出されている１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの周波数を使用する。これは、１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの周波数の高周波電流は比較的外来電波の影響が少ないからである。
【００２４】
図３は、校正用放電発生器３５により、実際に１０００ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こし、それを観測した高周波電流の波形図である。図３から分かるように、１０ＭＨｚ〜３０ＭＨｚの高周波電流が観測されたが、これらの周波数のうち値の大きい周波数を使用する。例えば、２０ＭＨｚあるいは３０ＭＨｚの周波数を使用する。これにより、外来ノイズの影響を受けない高周波電流により部分放電の発生を精度良く検出できることになる。
【００２５】
高周波信号検出部４１は、高周波電流検出器３７で検出された部分放電の高周波電流（２０ＭＨｚまたは３０ＭＨｚの周波数の高周波信号）を入力する。いま、部分放電の高周波電流として、３０ＭＨｚの周波数の高周波信号を入力したとする。まず、増幅器４４で増幅する。増幅器４４で増幅された高周波電流は、ミキサ４６で、発振器４５からの高周波信号（例えば、２５．８ＭＨｚ）に混ぜ合わせて周波数を下げた高周波信号（例えば、４．２ＭＨｚ）を得て、増幅器４７でさらに増幅する。
【００２６】
そして、検波回路４８で部分放電による高周波信号を取り出し、直流増幅器４２を介してメータ４３に出力する。このように、高周波信号検出部４１は、高周波電流検出器３７で検出された部分放電の高周波を増幅し易い中間周波数（例えば、４．２Ｍｚ）に変換して高感度の増幅を行い、部分放電による高周波電流の波形の包絡線信号を検波する。この部分放電による高周波電流の波形の包絡線信号は、直流増幅器４２で増幅されメータ４３に表示出力される。
【００２７】
表示出力校正器３９は、メータ４３に表示値が校正用放電発生器３５で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように、直流増幅器４２の増幅度あるいはメータ４３の指示針を調整してメータ４３の表示出力を校正し、部分放電測定器３８を校正する。
【００２８】
次に、校正用放電発生器３５を取り外し、この校正した部分放電測定器３８にて、部分放電による高周波電流を検出する。これにより、精度の良い部分放電による高周波電流を検出できる。
【００２９】
次に、本発明の実施の形態の他の一例を説明する。図４は本発明の実施の形態に係わる高圧部分放電測定装置の部分放電測定器３８の他の一例の構成図である。この第２の実施の形態は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃを設け、帯域の異なる複数の高周波電流により部分放電校正器３８を校正するようにしたものである。
【００３０】
図４では、３個の高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃを設けた場合を示している。高周波電流検出器３７ａ、３７ｂ、３７ｃで検出された高周波電流は、それぞれ第１の高周波信号検出部４１ａ、第２の高周波信号検出部４１ｂ、第３の高周波信号検出部４１ｃに入力され、切替器４９により切り替えて、直流増幅器４２を介してメータ４３に出力するとともに、スピーカ５０にも出力する。ここで、スピーカ５０に出力するのは、ラジオ等の電波ノイズを識別するためである。
【００３１】
第２の実施の形態によれば、帯域の異なる複数の高周波電流に対して校正するので、校正の精度が向上し、より精度の良い部分放電による高周波電流を検出できる。
【符号の説明】
【００３２】
１１…柱状開閉器、１２…配電線、１３…引き込みケーブル、１４…高圧受電設備、１５…電力受給用計器用変成器、１６…断路器、１７…遮断器、１８…受電母線、１９…高圧限流ヒューズ、２０…計器用変圧器、２１…ヒューズ、２２…電圧計切替スイッチ、２３…電圧計、２４…計器用変流器、２５…過電流継電器、２６…電流計切替スイッチ、２７…電流計、２８…電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器、２９…受電変圧器、３０…配電用遮断器、３１…負荷、３２…直列リアクトル、３３…進相コンデンサ、３４…高圧部分放電測定装置、３５…校正用放電発生器、３６…シースアース線、３７…高周波電流検出器、３８…部分放電測定器、３９…表示出力校正器、４１…高周波信号検出部、４２…直流増幅器、４３…メータ、４４…増幅器、４５…発振器、４６…ミキサ、４７…増幅器、４８…検波回路、４９…切替器、５０…スピーカ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器と、前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による前記高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または前記高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を測定する高周波電流検出器と、前記高調波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器と、前記部分放電測定器の表示出力が前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように前記部分放電測定器を校正する表示出力校正器とを備えたことを特徴とする高圧部分放電測定装置。
【請求項２】
前記部分放電測定器は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波信号検出部と、複数の前記高周波信号検出部を切り替えて前記部分放電測定器に出力する切替器と、前記切替器で切り替えられた前記高周波信号検出部の出力信号を入力し音声出力するスピーカとを備えたことを特徴とする請求項１記載の高圧部分放電測定装置。
【請求項１】
高圧受電設備内の電線に校正用の擬似部分放電を発生させる校正用放電発生器と、前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電による前記高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線または前記高圧受電設備内の接地コンデンサに分流する放電電流を測定する高周波電流検出器と、前記高調波電流検出器で検出された擬似部分放電の高周波電流に相当する電荷量を表示出力する部分放電測定器と、前記部分放電測定器の表示出力が前記校正用放電発生器で発生させた校正用の擬似部分放電の電荷量に相当する値となるように前記部分放電測定器を校正する表示出力校正器とを備えたことを特徴とする高圧部分放電測定装置。
【請求項２】
前記部分放電測定器は、帯域の異なる高周波電流を検出する複数の高周波信号検出部と、複数の前記高周波信号検出部を切り替えて前記部分放電測定器に出力する切替器と、前記切替器で切り替えられた前記高周波信号検出部の出力信号を入力し音声出力するスピーカとを備えたことを特徴とする請求項１記載の高圧部分放電測定装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−２３０４９８（Ｐ２０１０−２３０４９８Ａ）
【公開日】平成２２年１０月１４日（２０１０．１０．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−７８６２７（Ｐ２００９−７８６２７）
【出願日】平成２１年３月２７日（２００９．３．２７）
【出願人】（５９２２０８８０６）財団法人関東電気保安協会 (14)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１０月１４日（２０１０．１０．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月２７日（２００９．３．２７）
【出願人】（５９２２０８８０６）財団法人関東電気保安協会 (14)
【Ｆターム（参考）】
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