説明

高圧電源装置及び画像形成装置

【課題】画像形成装置の現像バイアス用等として、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳電圧を生成する場合に、当該重畳電圧がリーク電圧を超える事態を防止する。
【解決手段】高圧電源装置100は、交流電圧の波形形成に用いられるパルス信号を出力するパルス発振部811と、当該パルス信号に応じたレベルの交流電圧を生成するレベルシフト回路82、AC増幅回路83及びトランス回路84と、当該生成された交流電圧を増幅させるAC増幅回路83と、当該増幅された交流電圧に直流電圧を重畳させるDCバイアス発生回路90と、AC増幅回路83の基準電圧を、0(V)と予め定められた電圧値とに変更する基準電圧変更部833と、パルス発振部811によるパルス信号の出力開始時に、基準電圧変更部833に基準電圧を0(V)に変更させ、AC増幅回路83により増幅された交流電圧の波形が0(V)を下回らないものとするスイッチ制御部812とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧に直流電圧を重畳した電圧を生成する高圧電源装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式が採用される画像形成装置では、現像バイアス用或いは帯電バイアス用等に高圧電源装置が設けられている。この高圧電源装置としては、交流電圧に直流電圧を重畳した高圧を出力するものが用いられており、例えば、交流電圧を生成させるACトランスの二次側巻線の低圧側とグランド間に、直流電圧を生成させる直流電源を接続することで、ACトランスの二次側巻線の高圧出力側に、交流電圧と直流電圧が重畳された高圧を生成させるようになっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、交流高圧電源と直流高圧電源の出力電圧を重畳した重畳電圧の正のピーク電圧を検出する正ピーク検出回路と、当該重畳電圧の負のピーク電圧を検出する負ピーク検出回路とを備え、当該両検出回路からの検出結果を基に直流高圧電源の平均電圧と交流高圧電源の電圧振幅を調整することによって、現像装置に印加する現像バイアスとしての出力電圧を精度良く制御する高圧電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−126630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示されるような高圧電源装置では、交流電圧と直流電圧が重畳された重畳電圧は、直流電源で生成した電圧を挟んでACトランスの出力分だけ振幅を持つため、直流電圧と交流電圧との重畳開始時や交流電圧の変更時に電圧が不安定になる。このため、重畳された出力電圧の最大値(又は最小値)がリーク電圧値を上回り(下回り)、火花放電が発生する虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高圧電源装置が、例えば画像形成装置の現像バイアス用等として、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳電圧を生成する場合に、当該重畳電圧がリーク電圧を超える事態を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、交流電圧の波形形成に用いられるパルス信号を出力するパルス発振部と、
前記パルス発振部から出力されたパルス信号に応じて、予め定められたレベルの交流電圧を生成する交流電圧生成部と、
前記交流電圧生成部で生成された前記交流電圧を増幅させる交流電圧増幅部と、
前記交流電圧増幅部で増幅された前記交流電圧に直流電圧を重畳させる直流電圧重畳部と、
前記交流電圧増幅部の基準電圧を、少なくとも0(V)と、前記直流電圧重畳部によって直流電圧が重畳された重畳電圧を負荷に対して印加する時に用いる予め定められた電圧値とに変更可能な基準電圧変更部と、
前記パルス発振部による前記パルス信号の出力開始時において、前記基準電圧変更部に前記基準電圧を0(V)に変更させ、前記交流電圧増幅部により増幅された交流電圧の波形が0(V)を下回らないものとする制御部と
を備える高圧電源装置である。
【0008】
この発明では、制御部が、パルス発振部によるパルス信号の出力開始時において、基準電圧変更部に交流電圧増幅部の基準電圧を0(V)に変更させ、当該交流電圧増幅部により増幅された交流電圧の波形が0(V)を下回らないものとするので、すなわち、上記パルス信号の出力に基づいて行われる交流電圧増幅部による増幅の開始時における交流電圧の波形は、例えば本来0(V)以下で出力されるべき波形が0(V)に引き上げられて交流電圧増幅部から出力される。このため、交流電圧増幅部に入力される交流電圧の値が急激に変化した場合であっても、交流電圧増幅部から出力される交流電圧の波形は、その出力初期時には0(V)付近に寄ったものとなり、上記出力開始の前後で電圧平均値が急激に変化していないものとなる。これにより、当該交流電圧増幅部から出力される交流電圧に直流電圧重畳部が直流電圧を重畳しても、当該重畳された重畳電圧がリーク電圧を超えることが防止される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、記録媒体上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成部に備えられて画像形成行程における現像処理を行う現像部で用いる現像バイアスの出力用、又は、前記画像形成部に備えられて画像形成行程における帯電処理を行う帯電部で用いる帯電バイアスの出力用の少なくともいずれか一方として、請求項1に記載の高圧電源装置が備えられている画像形成装置である。
【0010】
この発明では、画像形成装置において、請求項1に記載の高圧電源装置により生成される重畳電圧を現像バイアス又は帯電バイアスの出力に用いるため、請求項1に記載の発明と同様の効果を得て、現像バイアス又は帯電バイアスの出力電圧がリーク電圧を超える事態を防止できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、記録媒体上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成部に備えられて画像形成行程における現像処理を行う現像部で用いる現像バイアスの出力用として、請求項1に記載の高圧電源装置が備えられ、
前記制御部は、前記画像形成部による画像形成が実行される場合であって、前記直流電圧重畳部による前記重畳電圧を前記現像部に現像バイアスとして印加する時に、前記基準電圧変更部に前記基準電圧を0(V)から前記予め定められた電圧値に変更させる画像形成装置である。
【0012】
この発明では、制御部は、画像形成部による画像形成が実行される場合であって、上記重畳電圧を現像部に現像バイアスとして印加する時に、基準電圧変更部に基準電圧を0(V)から上記予め定められた電圧値に変更させるので、現像部による現像処理時には、当該基準電圧に基づいた電圧増幅により生成される当該現像処理に適した波形からなる重畳電圧を、現像部に印加することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高圧電源装置が、例えば画像形成装置の現像バイアス用等として、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳電圧を出力する場合に、当該重畳電圧がリーク電圧を超える事態を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る高圧電源装置が適用された画像形成装置の一例としてのプリンターを示す説明図である。
【図2】現像装置の側断面図である。
【図3】本発明に係る高圧電源装置の概略構成図である。
【図4】(a)は、従来の高圧電源装置の制御回路におけるポイントP1〜P5における電圧レベルを示す波形の時系列変化を示す図、(b)は、本実施形態に係る高圧電源装置100の制御回路におけるポイントP1〜P5における電圧レベルを示す波形の時系列変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る高圧電源装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明に係る画像形成装置の一例としてのプリンター10は、印刷処理に供する用紙Sを貯留する用紙貯留部12と、この用紙貯留部12に貯留された用紙束S1から繰り出された1枚ずつの用紙Sに対して画像の転写処理を施す画像形成部13と、この画像形成部13で転写処理の施された用紙Sに対して定着処理を施す定着部14とが装置本体11に内装され、更に、定着部14で定着処理の施された用紙Sが排紙される排紙部15が装置本体11の頂部に設けられることによって構成されている。
【0016】
また、プリンター10には、印刷対象の画像データを入力操作する等の各種操作指示を入力するための図略の操作部や、外部のコンピューター等の外部装置との間でデータ通信するための図略のネットワークインターフェイス部が備えられている。
【0017】
用紙貯留部12には、用紙カセット121が装置本体11に対して挿脱自在に設けられている。用紙カセット121の上流端(図1の右方)には、用紙束S1から1枚ずつの用紙Sを繰り出させるピックアップローラー122が設けられている。このピックアップローラー122の駆動によって用紙カセット121から繰り出された用紙Sは、給紙搬送路123及びこの給紙搬送路123の下流端に設けられたレジストローラー対124を介して画像形成部13に給紙される。
【0018】
画像形成部13は、外部のコンピューター等から入力された画像情報に基づき用紙Sに転写処理を施すものであり、前後方向(図1の紙面と直交する方向)に延びるドラム軸回りに回転可能に設けられた感光体ドラム20の周面に沿うように、当該感光体ドラム20の直上位置から時計周り方向に帯電装置30、露光装置40、現像装置50、転写ローラー60、及びクリーニング装置70が設けられてなる。
【0019】
感光体ドラム20は、周面に静電潜像を形成させた後にこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものであり、周面にアモルファスシリコン層が積層されている。感光体ドラム20は、装置本体11の略中央部で前後方向(図1の紙面に直交する方向)に延びるドラム軸に同心で一体的に軸支され、図略の駆動手段の駆動によるドラム軸の時計周り方向への駆動回転によって当該ドラム軸と一体回転するように構成されている。
【0020】
帯電装置(特許請求の範囲における帯電部の一例)30は、ドラム軸の時計周り方向に回転している感光体ドラム20の周面に一様な電荷を形成させるものである。帯電装置30は、ワイヤーからのコロナ放電により感光体ドラム20の周面に電荷を付与するコロナ放電方式により帯電を行う。
【0021】
露光装置40は、外部のコンピューター等から入力された画像データに基づき強弱の付与されたレーザー光を、回転している感光体ドラム20の周面に照射し、これによるレーザー光が照射された部分の電荷の消去によって当該周面に静電潜像を形成させる。
【0022】
現像装置(特許請求の範囲における現像部の一例)50は、感光体ドラム20の周面に現像剤であるトナーを供給することによって周面の静電潜像が形成された部分にトナーを付着させ、これによって感光体ドラム20の周面にトナー像を形成させる。本実施形態においては、現像剤として、トナーのみからなる所謂1成分系のものが採用されている。尚、現像剤を当該トナーのみからなる1成分系のものに限定する趣旨ではなく、現像剤として、トナーとキャリアとからなる所謂2成分系のものを採用してもよい。
【0023】
転写ローラー60は、感光体ドラム20の直下位置に送り込まれた用紙Sに対して当該感光体ドラム20の周面に形成されているプラスに帯電したトナー像を用紙Sに転写させるものであり、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷を用紙Sに付与する。したがって、感光体ドラム20の直下位置を越えた用紙Sは、転写ローラー60と感光体ドラム20とによって押圧挟持されつつ、プラスに帯電した感光体ドラム20周面のトナー像がマイナスに帯電した用紙Sの表面に向けて引き剥がされ、これによって用紙Sに対し転写処理が施される。
【0024】
クリーニング装置70は、転写処理後の感光体ドラム20の周面に残留しているトナーを取り除いて清浄化する。このクリーニング装置70によって清浄化された感光体ドラム20の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電装置30へ向かう。
【0025】
定着部14は、画像形成部13によって転写処理の施された用紙Sのトナー像に加熱による定着処理を施すものであり、内部にハロゲンランプ等の通電発熱体が装着されたヒートローラー141と、このヒートローラー141の下部で周面が対向配置された加圧ローラー142とを備えて構成されている。
【0026】
そして、転写処理後の用紙Sは、ローラー心回りに時計周り方向に駆動回転しているヒートローラー141と、ローラー心回りに反時計周り方向に従動回転している加圧ローラー142との間のニップ部を通過することによって、ヒートローラー141からの熱を得て定着処理が施される。定着処理の施された用紙Sは、排紙搬送路143を通って排紙部15へ排出される。
【0027】
排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Sを受ける排紙トレイ151が形成されている。
【0028】
図2は、現像装置50の側断面図である。現像装置50は、筐体58内に、トナーカートリッジ59から補給されたトナーを攪拌しながら後方に向かって搬送する第1スパイラルフィーダ51と、この第1スパイラルフィーダ51から受け渡されたトナーを前方に向かって搬送する第2スパイラルフィーダ52と、この第2スパイラルフィーダ52によって搬送されつつあるトナーを受け取って感光体ドラム20の周面の潜像領域に供給する現像スリーブ53とが装着されることによって構成されている。
【0029】
筐体58は、図2における左右方向の略中央位置から左方が先上がりに傾斜して左端部が感光体ドラム20に対向した底板581と、上部でこの底板581に対向配置された天板582と、これら底板581及び天板582の前後の端部間に架設された前後方向一対の側板583と、これら一対の側板583間に架設されたトナー受けトレイ584とを備えている。
【0030】
天板582は、左方が1段高くなった階段状に形成され、右方の低位天板582aと、左方の高位天板582bと、これら低位天板582aの左端縁部と高位天板582bの右端縁部との間に架設された垂直天板582cとから構成されている。低位天板582aの前端部には、トナーカートリッジ59からのトナーを受け入れるためのトナー受入れ口(図略)が設けられている。また、高位天板582bの左端縁部と、底板581の左端縁部との間には、感光体ドラム20の周面に対向して筐体58内のトナーを感光体ドラム20の周面に供給するためのトナー供給口586が開口されている。
【0031】
トナー受けトレイ584は、第1スパイラルフィーダ51を収容する第1トレイ584aと、第2スパイラルフィーダ52を収容する第2トレイ584bと、下部で現像スリーブ53と対向配置された第3トレイ584cとを備えている。第1〜第3トレイ584a,584b,584cは、それぞれ第1及び第2スパイラルフィーダ51,52並びに現像スリーブ53に対応して正面視で円弧状に形成されている。また、第1トレイ584aの右端部には右側壁587が設けられ、この右側壁587が底板581及び低位天板582aの各右端部間に架設されることによって筐体58内の右面側が閉止されている。
【0032】
第1スパイラルフィーダ51は、第1トレイ584aの直上位置で一対の側板583間に貫通架設された第1フィーダ軸511と、この第1フィーダ軸511に同心で外嵌固定された第1スパイラルフィン512とを備えて構成されている。第1スパイラルフィン512は、左ねじ状態で螺旋状に形成され、第1フィーダ軸511が正面視で時計周り方向に回転することにより、第1トレイ584a上のトナーを後方に向かって搬送する。
【0033】
第2スパイラルフィーダ52は、第2トレイ584bの直上位置で一対の側板583間に貫通架設された第2フィーダ軸521と、この第2フィーダ軸521に同心で外嵌固定された第2スパイラルフィン522とを備えて構成されている。前記第2スパイラルフィン522は、右ねじ状態で螺旋状に形成され、第2フィーダ軸521が正面視で時計周り方向に回転することにより、第2トレイ584b上のトナーを前方に向かって搬送する。
【0034】
第1及び第2トレイ584a,584b間には仕切り壁585が設けられている。この仕切り壁585の前方位置には、前方流通口(図略)が開口されているとともに、同後方位置には後方流通口(図略)が開口されている。そして、トナーカートリッジ59からトナー受入れ口を介して筐体58内に導入されたトナーは、まず第1トレイ584a内において第1スパイラルフィーダ51の駆動回転で後方に向けて搬送され、後方流通口585bを通って第2トレイ584bへ搬入され、第2トレイ584b内において第2スパイラルフィーダ52の駆動回転で前方に向けて搬送され、以後、第1及び第2トレイ584a,584b間を循環しながら一部が現像スリーブ53へ供給される。
【0035】
現像スリーブ53は、一対の側板583間に貫通架設されたスリーブ軸534と、このスリーブ軸534に同心で相対回転可能に外嵌されたスリーブ本体532とを備えて構成されている。現像スリーブ53は、第3トレイ584cの上方位置においてスリーブ本体532の周面がトナー供給口586を介して感光体ドラム20の周面と対向するように設置位置が設定され、図略の駆動手段の駆動でスリーブ軸534回りに図2における反時計周り方向に回転し、これによって第3トレイ584c上に送り込まれたトナーを感光体ドラム20の周面に向かわせる。
【0036】
現像装置50では、第1スパイラルフィーダ51及び第2スパイラルフィーダ52の撹拌作用でトナーが撹拌され、トナーが正(+)に帯電される。現像スリーブ53には後述する高圧電源装置により、直流電圧に交流電圧が重畳されたバイアス電圧(現像バイアス)が印加される。感光体ドラム20上に形成された正(+)極性の静電潜像は、現像スリーブ53の磁力により保持されて搬送されてきた現像剤によって反転現像され、感光体ドラム20の表面上にはトナー像が形成される。
【0037】
図3は、本発明に係る高圧電源装置の概略構成を示す図である。高圧電源装置100は、AC(交流)バイアス発生回路80と、DC(直流)バイアス発生回路90と、を備えている。
【0038】
ACバイアス発生回路80は、交流電圧を発生させる回路である。ACバイアス発生回路80は、制御回路81と、レベルシフト回路82と、AC増幅回路83と、トランス回路84と、を備えている。
【0039】
制御回路81は、パルス発振部811と、スイッチ制御部812とを備えている。パルス発振部811は、交流電圧の波形形成に用いられるパルス信号を発振する。
【0040】
スイッチ制御部812は、パルス発振部811によるパルス信号の出力開始時に、後述する基準電圧変更部833にAC増幅回路83の基準電圧を0(V)に変更させ、AC増幅回路83により増幅された交流電圧の波形が0(V)を下回らないようにする。また、スイッチ制御部812は、画像形成部13により画像形成が実行される場合であって、後述するトランス回路84及びDCバイアス発生回路90により生成する重畳電圧を現像装置50に対して現像バイアスとして印加する時期が到来すると、この時点で、基準電圧変更部833に上記基準電圧を0(V)から予め定められた電圧値に変更させる。当該予め定められた値としての基準電圧としては、AC増幅回路83から出力される交流電圧の値を、上記重畳電圧が現像バイアスとして適用可能な値とする電圧値を用いる。図3に示すように、本実施形態においてAC増幅回路83は+24(V)駆動であるため、この場合、基準電圧値としての当該予め定められた電圧値は、例えば中間電圧となる+12(V)に設定される。なお、抵抗定数の変更により、この予め定められた電圧値は適宜変更が可能である。
【0041】
レベルシフト回路82は、反転回路821とスイッチング素子822とを備えている。反転回路821は、パルス発振部811から出力されたパルス信号を反転させ、当該反転されたパルス信号をスイッチング素子822に向けて出力する。
【0042】
スイッチング素子822は、入力されたパルス信号が示すオン/オフに応じてスイッチングのオン/オフを切り換える。スイッチング素子822は、入力されたパルス信号によりオンに切り替えられると、予め定められたLowレベルの電圧(例えば、0(V))を、コンデンサ831を介してパワーオペアンプ832に出力する。一方、スイッチング素子822は、オフに切り替えられると、予め定められたHighレベルの電圧(例えば、6(V))を、コンデンサ831を介してパワーオペアンプ832に出力する。尚、当該Lowレベル及びHighレベルが示す電圧レベルは、レベルシフト回路82に設けられた抵抗素子であって、電源電圧Vccに接続された抵抗素子による抵抗値の大きさによって予め調整されている。
【0043】
AC増幅回路83は、コンデンサ831とパワーオペアンプ832とを備えている。コンデンサ831は、レベルシフト回路82とパワーオペアンプ832の間に設けられており、ノイズ除去フィルタとして機能する。パワーオペアンプ832は、例えば反転増幅回路である。パワーオペアンプ832は、コンデンサ831を介してレベルシフト回路82から入力される上記Lowレベル電圧及びHighレベル電圧でなる交流電圧が−入力端子に入力され、一方、+入力端子には基準電圧が入力される。パワーオペアンプ832は、当該レベルシフト回路82から入力される交流電圧と基準電圧の差を増幅して反転した交流電圧を、コンデンサ842を介してトランス回路84に供給する。
【0044】
基準電圧変更部833は、スイッチ制御部812からの指示信号に応じて、AC増幅回路83の基準電圧を、(1)少なくとも0(V)と、(2)トランス回路84及びDCバイアス発生回路90により生成された重畳電圧を現像バイアスとして現像装置50に印加する時に用いる上記予め定められた電圧値と、に変更する。例えば、基準電圧変更部833は、トランジスタからなり、+入力端子に基準電圧を入力する基準電圧入力部834に対して並列に接続されている。当該トランジスタは、そのエミッタ側が接地され、コレクタ側がパワーオペアンプ832への基準電圧の入力ラインに接続されている。また、当該トランジスタのベースはスイッチ制御部812と接続している。当該スイッチ制御部812からのスイッチング信号に従って当該トランジスタがスイッチングのオン/オフを行う。スイッチ制御部812からのスイッチング信号により、基準電圧変更部833としての当該トランジスタがスイッチオンになると、パワーオペアンプ832には基準電圧変更部833側からの電圧が基準電圧として入力され、基準電圧変更部833は接地されているために、当該パワーオペアンプ832に入力される基準電圧が0(V)となる。また、基準電圧変更部833がスイッチオフになると、パワーオペアンプ832には、基準電圧入力部834から基準電圧(本実施形態では12(V)に設定されている)が入力される。
【0045】
トランス回路84は、トランス841とコンデンサ842とを備えている。尚、各回路81〜84には、その他、図中に示すプルアップ抵抗やダイオード等の回路素子が接続されている。
【0046】
コンデンサ842は、AC増幅回路83とトランス841の間に設けられている。トランス841は、コンデンサ842を介してAC増幅回路83から一次側巻線側に供給された交流電圧を変圧し、変圧した交流電圧をトランス841の二次側巻線側に発生させる。
【0047】
DCバイアス発生回路90は、直流電圧を発生させる回路であり、トランス841の二次側巻線の低圧側とグランド間に接続されている。これにより、DCバイアス発生回路90は、トランス841の二次側巻線の高圧出力側に交流電圧と直流電圧とが重畳された電圧を発生させる。このように重畳された電圧は、例えば現像装置50(現像スリーブ53)に印加される。
【0048】
レベルシフト回路82、AC増幅回路83及びトランス回路84は、特許請求の範囲における交流電圧生成部の一部となり、DCバイアス発生回路90は、特許請求の範囲における直流電圧重畳部の一例である。
【0049】
本構成における高圧電源装置100による電圧印加制御について、図4を用いて説明する。図4(a)は、従来の高圧電源装置の制御回路におけるポイントP1〜P5における電圧レベルを示す波形の時系列変化を示す図、(b)は、本実施形態に係る高圧電源装置100の制御回路におけるポイントP1〜P5における電圧レベルを示す波形の時系列変化を示す図である。
【0050】
また、図4(a)(b)の点線部に示す波形の時系列変化は、ポイントP3〜P5における各電圧のレベルの発振開始時刻t0からの平均値を示すものであり、実際には細かな起伏を持って変化するが、説明のため、図中においては細かな起伏を簡略化して表記している。
【0051】
以下では、具体例として、パルス発振部811に発振を開始させるパルス信号は、周期の90%の期間オンを示し、10%の期間オフを示す、デューティ比が90%であるものを用いて説明する。尚、パルス発振部811に発振を開始させるパルス信号のデューティ比をこれに限定する趣旨ではない。また、パルス発振部811に発振を開始させるパルス信号のデューティ比は、操作部やネットワークインターフェイス部等から入力される。
【0052】
高圧電源装置100による電圧印加制御の開始時、スイッチ制御部812は、基準電圧変更部833に対してスイッチオンを指示するスイッチ信号を出力する。当該スイッチ制御部812からのスイッチング信号により、基準電圧変更部833としての上述したトランジスタがスイッチオン状態になると、パワーオペアンプ832には、接地されている当該基準電圧変更部833側からの電圧が基準電圧として入力されて、当該パワーオペアンプ832に入力される基準電圧が0(V)となる。
【0053】
パルス発振部811は、デューティ比が90%のパルス信号を出力する場合、図4(b)のP1欄に示すように、パルス信号の未発振時にはオフを示すレベルの信号を出力し、発振開始時刻である時刻t0からは交流電圧印加のオンを開始するパルス信号を出力する。パルス発振部811から出力された当該パルス信号は、図4(b)のP2欄に示すように、反転回路821によってオンオフが反転されて出力される。
【0054】
反転回路821から出力された当該パルス信号は、スイッチング素子822に入力される。そして、スイッチング素子822がオフに切り替えられると、図4(b)のP3欄の実線部に示すように、予め定められたHighレベルの電圧である6(V)の電圧がコンデンサ831を介してパワーオペアンプ832の−入力端子側に入力し、一方、スイッチング素子822がオンに切り替えられると、予め定められたLowレベルである0(V)の電圧がコンデンサ831を介してパワーオペアンプ832の−入力端子側に入力する。
【0055】
このとき、パワーオペアンプ832からは、当該Lowレベル(0(V))及びHighレベル(6(V))の交流電圧が反転増幅されて出力されるが、パワーオペアンプ832の+入力端子側には、上述したように、基準電圧変更部833による接地で基準電圧0(V)が入力されているため、この場合のパワーオペアンプ832の出力は、ポイントP4において、図4(b)のP4欄に二点鎖線及び実線で示すように、基準電圧+12(V)である場合のパワーオペアンプ832の出力よりも、当該両基準電圧の電圧差となる12(V)だけパワーオペアンプ823の波形が全体的に引き下げられる。
【0056】
ここで、基準電圧0(V)である場合のパワーオペアンプ832の出力は、ポイントP4において、図4(b)のP4欄に破線及び実線で示すように、その波形が0(V)を下回ることがない。
【0057】
これにより、ポイントP4においては、発振開始時刻t0からの電圧平均値は、図4(b)のP4欄の点線部に示すように、0(V)から緩やかに増加する程度となる。
【0058】
そして、パワーオペアンプ832から出力された交流電圧はトランス841により変圧された後、DCバイアス発生回路90により直流電圧が重畳され、図4(b)のP5欄に示すように、約-1.2(kV)から約0.8(kV)の範囲の電圧としてポイントP5に入力される。また、ポイントP5における発振開始時刻t0からの電圧平均値は、図4(b)のP5欄の点線部に示すように、P4欄の点線部と同様に緩やかに増加する。
【0059】
そして、スイッチ制御部812は、プリンター10の操作部を操作者が操作して当該プリンター10に画像形成の実行指示が入力されることに基づいた判断等により、画像形成部13により画像形成が実行される場合であって、上記重畳電圧を現像装置50に対して現像バイアスとして印加する時期が到来したと判断すると、基準電圧変更部833に対してスイッチオフを指示するスイッチ信号を出力する。基準電圧変更部833がスイッチオフになると、パワーオペアンプ832には、基準電圧入力部834から上述した基準電圧(本実施形態では+12(V))が入力される。このため、当該スイッチ制御部812によるスイッチオフを指示するスイッチ信号の出力時以降は、図4(a)のP4欄に示す波形の交流電圧がパワーオペアンプ832から出力され、図4(a)のP5欄に示す波形からなる重畳電圧が現像バイアスとして印加される。
【0060】
なお、従来は、基準電圧変更部833を有していないAC増幅回路83による場合、高圧電源装置100による電圧印加制御の開始時において、図4(a)のP3欄の点線部に示すように、ポイントP3における発振開始時刻t0からの電圧平均値は、0(V)から当該デューティ比90%が示す比率を6(V)に乗じた約5.4(V)のレベルに向けて、予め定められたHighレベルの電圧値と予め定められたLowレベルの電圧値との平均値(3(V))よりも大きい、約5.4(V)のレベル分だけ急激に増加し、図4(a)のP4欄に示すように、当該急激に増加する電圧がパワーオペアンプ832で反転増幅され、この場合、上記発振開始時刻t0からの平均電圧レベルが更に変動幅を大きくして急激に減少することになる。このため、ポイントP4における電圧レベルの交流電圧に、トランス841を介してDCバイアス発生回路90により直流電圧が重畳されると、図4(a)のP5欄に示すように、当該重畳電圧及びその平均電圧値(図4(a)のP5欄の破線)は、当該電圧印加制御開始当初には大きく低減してリーク電圧を下回る虞がある。
【0061】
しかし、上記に示した本実施形態では、高圧電源装置100による電圧印加制御の開始時、スイッチ制御部812は、基準電圧変更部833に対してスイッチオンを指示するスイッチ信号を出力して、基準電圧変更部833をスイッチオン状態とし、パワーオペアンプ832には基準電圧変更部833側からの電圧が基準電圧0(V)として入力されるため、当該電圧印加制御の開始時点では、図4(b)のP4欄の実線部に示すように、パワーオペアンプ832により増幅されて出力される交流電圧の波形は0(V)を下回らないため、当該ポイントP4から出力される電圧がトランス841を介してDCバイアス発生回路90により直流電圧が重畳された場合に、図4(b)のP5欄に示すように、当該重畳された電圧及びその平均電圧値(図4(b)のP5欄の破線)が急激に減少してリーク電圧を下回る事態が生じない。
【0062】
また、上記の実施形態では、現像装置50の現像バイアスの出力用に、本発明に係る高圧電源装置100が適用される例を示したが、これに限らず、例えば、帯電装置30のワイヤーに印加する電圧(帯電バイアス)の出力用に、高圧電源装置100を適用してもよい。
【0063】
尚、上記実施形態において、本発明に係る画像形成装置の一例としてプリンターを例に説明したが、これに限定する趣旨ではなく、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像読取装置を備えたプリンター、コピー機、スキャナー、又はFAX等の画像形成装置であってもよい。
【0064】
また、本発明は、上述の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。前記図1乃至図4に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0065】
10 プリンター
100 高圧電源装置
13 画像形成部
30 帯電装置
50 現像装置
80 ACバイアス発生回路
81 制御回路
811 パルス発振部
812 スイッチ制御部
82 レベルシフト回路
821 反転回路
822 スイッチング素子
83 AC増幅回路
831 コンデンサ
832 パワーオペアンプ
833 基準電圧変更部
834 基準電圧入力部
84 トランス回路
841 トランス
90 DCバイアス発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の波形形成に用いられるパルス信号を出力するパルス発振部と、
前記パルス発振部から出力されたパルス信号に応じて、予め定められたレベルの交流電圧を生成する交流電圧生成部と、
前記交流電圧生成部で生成された前記交流電圧を増幅させる交流電圧増幅部と、
前記交流電圧増幅部で増幅された前記交流電圧に直流電圧を重畳させる直流電圧重畳部と、
前記交流電圧増幅部の基準電圧を、少なくとも0(V)と、前記直流電圧重畳部によって直流電圧が重畳された重畳電圧を負荷に対して印加する時に用いる予め定められた電圧値とに変更可能な基準電圧変更部と、
前記パルス発振部による前記パルス信号の出力開始時において、前記基準電圧変更部に前記基準電圧を0(V)に変更させ、前記交流電圧増幅部により増幅された交流電圧の波形が0(V)を下回らないものとする制御部と
を備える高圧電源装置。
【請求項2】
記録媒体上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成部に備えられて画像形成行程における現像処理を行う現像部で用いる現像バイアスの出力用、又は、前記画像形成部に備えられて画像形成行程における帯電処理を行う帯電部で用いる帯電バイアスの出力用の少なくともいずれか一方として、請求項1に記載の高圧電源装置が備えられている画像形成装置。
【請求項3】
記録媒体上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成部に備えられて画像形成行程における現像処理を行う現像部で用いる現像バイアスの出力用として、請求項1に記載の高圧電源装置が備えられ、
前記制御部は、前記画像形成部による画像形成が実行される場合であって、前記直流電圧重畳部による前記重畳電圧を前記現像部に現像バイアスとして印加する時に、前記基準電圧変更部に前記基準電圧を0(V)から前記予め定められた電圧値に変更させる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212058(P2012−212058A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78217(P2011−78217)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】