説明

高密度光学シンボルの2段階デコーディングのための装置とプロセス

ライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージから収集されたピクセルの輝度データのヒストグラムを計算し、個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するためにヒストグラムを閾値処理し、グレー・ピクセルをダーク・ピクセル、ライト・ピクセルまたは解決されていないグレー・ピクセルに再分類するために、グレー・ピクセルに対応するヒストグラムの一部のみを閾値処理し、解決されていないグレー・ピクセルの列を作り出した光学的読み取り可能シンボルの要素を判定するために、解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析することとを含むプロセス。このプロセスを実施するための装置およびシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、光学的読み取り可能シンボルで符号化されたデータのデコーディングに関し、限定されるわけではないが、特にバー・コードなどの高密度の光学的読み取り可能シンボルの2段階デコーディングのための装置とプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aは、きわめて簡略化された形態でマシン・ビジョン・システム100を示す。マシン・ビジョン・システム100は、バー・コード104などの光学的読み取り可能シンボルを読み取り、デコードするために使用される。典型的なバー・コードは、交互になった黒(ダーク)もしくは白(ライト)の要素または様々な幅のバーの並びから成り立っている。マシン・ビジョン・システム100の基本的な要素は、焦点調節要素102とイメージ・センサ106である。ビジョン・システム100のオペレーションで、バー・コード104などの光学的読み取り可能シンボルは、はじめに焦点調節要素102の視野に配置される。次に、焦点調節要素102はバー・コード104のイメージの焦点をイメージ・センサ106に合わせる。その後、センサ106によって捕獲されたバー・コードのデジタル・イメージ105は、バー・コード104で符号化された情報を判定するために、その他の構成要素(不図示)によって分析される。
【0003】
図1Bは、高密度のバー・コード、すなわち個々のダーク・バーとライト・バーの幅が小さくなり始めるバー・コードについて起こる現象を示す。バー・コードの個々のライト・バーとダーク・バーの幅が狭くなると、センサ106によって捕獲されたイメージの中の個々のライト要素とダーク要素の幅も同様に細くなる。最終的に、最も狭いライト・バーの幅XWと最も狭いダーク・バーの幅XBとは、センサ106の個々のピクセルの幅と同じ規模程度になり始める。黒バーと白バーのイメージが実質的にピクセルと一致するのであれば問題はない。例えば、黒バー109は実質的にセンサ上のピクセルと一直線に並ぶと、センサはそのピクセルを「ダーク」ピクセルとして正確に記録する。同様に、白バー111が実質的にピクセルと一直線に並ぶと、センサはそのピクセルを「ライト」ピクセルとして正確に記録する。しかしながら黒バー112が違って、ピクセルと一直線に並ばずに、その代わりに2つのピクセルの一部にまたがっていることがある。各ピクセルが黒半分と白半分になるように、黒バー112が2つにピクセルの各々に部分的にまたがっている状況では、センサは2つのピクセルを「グレー」領域114として記録する。複数のバーのピクセルの不整列は、バー108が1つのピクセルの一部を覆い、バー110が2つのピクセルの一部にまたがっていることから生じる3つのピクセルのグレー領域116などのより大きなグレー領域につながる可能性がある。また、高密度のバー・コードでは、不整列以外の現象もグレー・ピクセルに結びつく可能性がある。例えば、バー・コード104の印刷不良、バー・コード104への損傷等から生じる可能性があるが、イメージ105中の1つまたは複数のバーの幅が不均一である場合、1つまたは複数のグレー・ピクセルの列が生じるかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バー・コード104で符号化された情報を抽出するデコーダは2つのタスクを有する。第1に、センサ106によって捕獲されたイメージに基づいて、すなわちイメージ中のピクセルの輝度に基づいて、デコーダはオリジナルのバー・コード104上の黒バーと白バーのシーケンスを再構築しなければならない。オリジナルのバー・コードのシーケンスを正確に再構築すると、次いでデコーダは符号化された情報を抽出するためにそのシーケンスを分析する。しかしながら既存のデコーダは、通常ダークまたはライトのいずれかのイメージ・ピクセルのみを取り扱うようにプログラムされている。グレー・ピクセルの列の場合、既存のデコーダはグレー領域を作り出したバーのシーケンスを判定することができず、したがってシンボルを適切にデコードすることに失敗する。したがって、高密度のバー・コードを正確にデコードするための装置および方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、ライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージから収集されたピクセルの輝度データのヒストグラムを計算し、個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルとして分類するためにヒストグラムを閾値処理し、グレー・ピクセルをダーク・ピクセル、ライト・ピクセルまたは解決されていないグレー・ピクセルに再分類するために、グレー・ピクセルに対応するヒストグラムの一部のみを閾値処理し、解決されていないグレー・ピクセルの列を作り出した光学的読み取り可能シンボルの要素を判定するために、解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析することを含むプロセスの実施態様を開示する。また、このプロセスを実施するための装置とシステムの実施形態が開示され、特許請求される。
【0006】
本発明の非限定的および非網羅的な実施形態は、別途明記されない限り、様々な図を通して同じ参照符号が同じ箇所を指している以下の図面を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書では、バー・コードなどの高密度の光学的読み取り可能シンボルの2段階デコーディングのためのシステムと方法の実施形態が説明される。本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明では複数の特定の詳細が説明される。しかしながら関連技術の当業者であれば、本発明は特定の詳細のうちの1つまたは複数を伴わずに、または別の方法、構成要素、材料その他とともに実行できることが可能であることが理解されよう。他の例の中で、よく知られた構造、材料またはオペレーションは詳細に図示または説明されることはないが、それにもかかわらず本発明の範囲内に含まれる。
【0008】
本明細書を通して「1つの実施形態」または「ある実施形態」という言及は、実施形態とともに説明される特定の機能、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態の中に含まれるということを意味する。したがって、本明細書中に現れる「1つの実施形態で」または「ある実施形態で」という言い回しは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに特定の機能、構造または特徴は、任意の適切な方法で1つまたは複数の実施形態の中で組み合わせられてよい。
【0009】
図2は、バー・コードなどの高密度の光学的読み取り可能シンボルのデコーディングのための2段階プロセス200の実施形態を示す。このプロセスは、いくつかの予備的オペレーションを伴うボックス202で開始する。ボックス204では、高密度のバー・コードのイメージがセンサによって捕獲され、ボックス206では、バー・コードのイメージからのピクセル輝度データがセンサから収集される。ピクセルの輝度データを収集するためのプロセスの1つの実施形態は、図3A〜3Bとともに以下で説明される。
【0010】
一旦予備的オペレーションが完了すると、ボックス208で、デコーディングの第1段階が始まる。そこでは、ヒストグラムがイメージから収集されたピクセルの輝度データから計算される。ボックス210で、高低の閾値を設定するために、閾値処理プロシージャがヒストグラム・データに適用される。ボックス212で、各ピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルとして分類するために高低の閾値が使用される。一般に、低閾値を下回る輝度のピクセルはダーク・ピクセルとして分類され、高閾値を上回る輝度のピクセルはライト・ピクセルとして分類され、低閾値と高閾値との間の輝度のピクセルはグレー・ピクセルとして分類される。次にボックス214で、グレー・ピクセル領域として識別されたヒストグラムの一部のみに、すなわち低閾値と高閾値との間のヒストグラムの部分のみに、閾値処理の別のラウンドが適用される。この第2ラウンドの閾値処理は、何らかのさらなる閾値処理で、グレー・ピクセルがライトまたはダーク・ピクセルとして再分類できるかどうかを調べるために、グレー・ピクセルをより詳細に観察するように設計されている。ボックス216で、プロセスは第2閾値処理に基づいてグレー領域内のダーク・ピクセルとライト・ピクセルを識別する。ボックス218で、プロセスは残りのグレー・ピクセルがあるかどうかをチェックする。グレー・ピクセルが残っていなければ、すなわち第2閾値処理がすべてのグレー・ピクセルをライトまたはダークとしてうまく再分類していれば、そこでバー・コードの再構築は完成し、ボックス220でのデコード成功となる。分類が解決されていないグレー・ピクセルが残っていれば、プロセスはボックス222で始まる第2段階を継続する。このプロセスの第1段階のさらなる詳細は、図4A〜4Bとともに以下で述べられる。
【0011】
プロセスの第2段階は、発見的規則に基づいてグレー領域を作り出したバーのシーケンスを再構築することを試みる。1つの実施形態で、発見的規則はグレー領域のピクセルの幅などの要素、グレー領域を結びつけているバー・コード要素、知られている最小と最大のバー・サイズその他を考慮する。当然のことながら、別の実施形態は別の要素を含むこともある。ボックス222で、解決されていないグレー・ピクセルの任意の列が識別される。グレー・ピクセルの列は1つまたは複数の隣接するグレー・ピクセルを含み、例えば図1Bでは、2ピクセルのグレー領域114は2ピクセルの列であり、3ピクセルの領域116は3ピクセルの列である。
【0012】
ボックス222で識別された解決されていないグレー・ピクセルの各々の列に対して、ボックス224でプロセスはグレーの列を結びつけているバー・コード要素を識別する。ボックス226で、プロセスは結びついている要素と発見的規則の中の別の要素を使用して、グレー・ピクセルの列を作り出したオリジナルのバー・コードの中の要素のシーケンスを識別する。ボックス228で、プロセスは解決できないグレー・ピクセルの任意の列があるかどうかをチェックする。そのようなグレー・ピクセルがない場合、すなわちグレー・ピクセルのすべての列がうまく解決されている場合、次いでプロセスはボックス230に続き、デコード成功となる。解決できない任意のグレー・ピクセルの列が残っている場合、プロセスはデコード失敗のボックス232で終了する。このプロセスの第2段階の詳細は、図5A〜5Cとともに以下で述べられる。
【0013】
図3A〜3Bは、バー・コードのイメージからピクセルの輝度データを収集するためのプロセスの実施形態を示す。図3Aは、バー・コードのイメージ302の処理を示す。ピクセルの輝度データを得るために、イメージの前方端304で始まり後方端306の後で終わる、1つまたは複数のライン・スキャンがイメージ302を横切って実施される。ライン・スキャンが行われると、ラインに沿った各ピクセルの輝度が記録される。図示されている実施形態では、各々がイメージ302の異なる部分を横切る5つのスキャンが存在している。別の実施形態では、より多いか、またはより少ない数のスキャンが使用されてもよく、スキャンはバー・コードの異なる部分を横切らなくてもよい。図3Bは、図3Aに図示されている5つのスキャン・ラインのプロセスについて、結果として生じるデータがどのように見えるのかを表の形式で示す。表に示されているデータは、何らかの処理の後で生のピクセルの輝度データがどのように見えるのかをまとめたものである。さらなる分析のために、生のピクセルの輝度データは表に示されているL、DまたはGではなくて、実際に使用されるものでもよい。各スキャン・ラインについて、スキャンは異なるピクセルの長さのライト(L)領域、ダーク(D)領域、グレー(G)領域を識別する。したがって、第1スキャン・ラインは5ピクセルのライト領域を識別しており、その後3ピクセルのグレー領域、1ピクセルのダーク領域等が続く。複数のスキャン・ラインが存在する場合、さらなる分析のために使用される最終値は様々な方法で判定されることがある。例えば1つの実施形態では、所与のピクセルのために使用される最終の輝度値は、5つのスキャン・ライン上で最も頻繁に生じるものである。別の実施形態では、ピクセルのための最終輝度値は5つのスキャン・ラインの平均である。
【0014】
図4Aから4Cはすべて、2段階デコーディング・プロセスの第1段階を示す。例えば図3A〜3Bについて上で述べたように、ピクセルの輝度データが収集されると、そのピクセルの輝度データはヒストグラムを計算するために使用される。ピクセル輝度の各値について、ヒストグラムはその特定の輝度を有するピクセルの数、割合または比率を計算する。分析のために、このプロセスは必要なデータを計算することだけを必要とし、このプロセスには図中で示されているような画像ヒストグラムを作成することは必要ない。一旦ヒストグラム・データが計算されると、高い方の輝度閾値ILと低い方の輝度閾値IDを判定するために、閾値処理アルゴリズムがそのデータに適用される。1つの実施形態では、ボトムハット・アルゴリズム(bottom-hat algorithm)などのよく知られている光学的閾値処理アルゴリズムが使用されるが、別の実施形態では、その他の種類のアルゴリズムが同様に適用されてもよい。高い方の輝度閾値ILと低い方の輝度閾値IDが計算されると、そのピクセルは最初に分類される。IDよりも低い輝度のピクセルはダーク・ピクセルとして分類され、ILよりも高い輝度のピクセルはライト・ピクセルとして分類され、IDとILとの間の輝度のピクセルはグレー・ピクセルとして分類される。
【0015】
図4Bは、ピクセルの最初の分類の後に生じる閾値処理の第2ラウンドの実施形態を示す。この第2ラウンドの目的は、グレー・ピクセルがライトまたはダークとして再分類されることが可能であるかどうかを調べるために、グレー・ピクセルをより詳細に観察することである。1つの実施形態では、ボトムハット・アルゴリズムなどのよく知られている光学的閾値処理アルゴリズムが使用されるが、別の実施形態では、その他の種類のアルゴリズムが同様に適用される。さらに、この閾値処理の第2ラウンドは、第1ラウンドで使用されたものと同じ閾値処理アルゴリズムを使用しなくてもよい。この第2ラウンドでは、閾値処理アルゴリズムはグレー・ピクセルを表しているヒストグラムの一部のみに、すなわちIDとILとの間の輝度のピクセルのみに適用される。図示されている実施形態では、グレー・ピクセルの間での輝度の分布はほぼバイモダル(bi-modal)であり、第2の閾値処理は単一の閾値Gになる。閾値Gが確立されると、グレー・ピクセルのうちの実質的にすべてが再分類される。Gよりも低い輝度のグレー・ピクセルはダーク・ピクセルとして再分類され、一方でGを上回る輝度のグレー・ピクセルはライト・ピクセルとして再分類される。
【0016】
図4Cは、グレー・ピクセルに適用される閾値処理の第2ラウンドの別の実施形態を示す。この第2閾値処理の実施形態は、図4Bで適用される閾値処理の第2ラウンドに類似しているが、この実施形態ではグレー・ピクセルの輝度の分布はバイモダルではなく、この閾値処理が、すべてのグレー・ピクセルをライトまたはダーク・ピクセルに再分類することを可能にする閾値を確立することができないということを意味する。閾値が確立されない場合、グレー・ピクセルは解決されていないままであり、プロセスは、バー・コード・イメージの中のどの要素の組合せがグレー・ピクセルを作り出したのかを判定するために、発見的分析に進まなければならない。図4Bと図4Cに示されている分布は、閾値処理を通じてすべてのグレー・ピクセルを再分類できるか(図4B)、またはすべてのグレー・ピクセルを再分類できない(図4C)の両極端を表している。別の実施形態では、グレー・ピクセルの輝度の分布は、グレー・ピクセルの一部が再分類可能で、一部が再分類不可能であることもあり、その場合、解決されていないまま残っている任意のグレー・ピクセルに発見的分析が適用される。
【0017】
図5A〜5Cは、第1段階の分析の後で解決されないままで残っている任意のグレー・ピクセルの列を作成したバーのシーケンスを識別するために発見的プロセスが使用される分析の第2段階の実施形態を示す。グレー・ピクセルの列は1つまたは複数の隣接するグレー・ピクセルを含み、例えば図1Bでは2ピクセルのグレー領域114は2ピクセルの列であり、3ピクセルの領域116は3ピクセルの列である。図示されている実施形態では、発見的分析はグレー・ピクセルの列を結びつけているバー・コード要素、狭バー・コード要素のイメージについての最小と最大のピクセル幅、バー間の推移コントラストについての情報、黒バーが常に白バーと交互にならなければならない場合についての情報を考慮する。例えば、図示されている発見的分析はグレー・ピクセルの列を結びつけているバー・コード要素、狭バー・コード要素のイメージについての1ピクセルの最小幅と2ピクセルの最大幅、バー間の推移コントラストについての情報、黒バーが常に白バーと交互にならなければならない場合についての情報を考慮する。この図は1、2、3ピクセルの列のためのプロセスの実施形態を示しているが、この原理はより長い列に拡大される。
【0018】
図5Aは、1ピクセルのグレー列を解決するためのプロセスの実施形態を示す。グレー・ピクセルは前方要素(LE)と後方要素(TE)によって結びつけられている。ピクセルの上にある表は、LEとTEのための可能な組合せ、および対応するグレー・ピクセルの解決を示している。例えば表の一番上の列は、LEがライト(L)でTEがダーク(D)である場合を示している。この場合、1ピクセルのグレー領域を解決することは不可能であり、そのグレー・ピクセル領域はLEもしくはTE、またはそれらの両方の拡張であるとみなされるが、それがどれであるのかを判定することは不可能であるため、表中のXはピクセルが無視されることを示している。表の3番目の列は、LEがダーク(D)でTEもまたダーク(D)である場合を示している。この場合、1ピクセルのグレー列はライト・ピクセルと解決される。
【0019】
図5Bは、2ピクセルのグレー列を解決するためのプロセスの実施形態を示す。前述のように、2ピクセルのグレー列は前方要素(LE)と後方要素(TE)とによって結びつけられており、ピクセル列の上にある表はLEとTEのための異なる可能な組合せ、および対応するグレー・ピクセルの解決を示している。例えば、表の一番上の列はLEがライト(L)でTEがダーク(D)の場合を示している。この場合、この結果が交替、推移コントラスト、最小幅の要件を満たすことから、2ピクセルのグレー列はライト・ピクセルが後に続くダーク・ピクセルと解決される。表の3番目の列は、LEがライト(L)でTEもまたライト(L)である場合を示している。この場合、この結果がバーのための交替、推移コントラスト、最小と最大幅の要件を満たすことから、2ピクセルのグレー列は1つのダーク・バーと解決される。
【0020】
図5Cは、3ピクセルのグレー列を解決するためのプロセスの実施形態を示す。前述のように、3ピクセルのグレー列は前方要素(LE)と後方要素(TE)とによって結びつけられており、ピクセルの上にある表はLEとTEとの異なる可能な組合せ、および対応する3ピクセルのグレー列の解決を示している。表の一番上の列は、例えばLEがライト(L)でTEがダーク(D)である場合を示している。この場合、この結果が交替、推移コントラスト、ならびに最小および最大幅の要件を満たすことから、3ピクセルのグレー列はライト・バーが後に続くダーク・バーに解決されることが可能である。表の3番目の列は、LEがライト(L)でTEもまたライト(L)である場合を示している。この場合、これは交替、推移コントラスト、最小と最大幅の要件を満たす組合せであることから、3ピクセルのグレー列はダーク‐ライト‐ダーク(D−L−D)のバーのシーケンスと解決される。
【0021】
図6は、本発明のビジョン・システム600の実施形態を示す。ビジョン・システム600は、デコーダ608に結合されたカメラ602を含む。このデコーダは、不揮発性メモリ/ストレージ610と揮発性メモリ612とに結合されている。カメラ602はイメージ・センサ606と、バー・コード104のイメージの焦点をセンサ606に合わせるフォーカシング光学系604とを含む。1つの実施形態ではフォーカシング光学系は屈折型のものであるが、別の実施形態ではフォーカシング光学系は屈折型、回析型、反射型、またはこれらのあるいはそれらの部分的な組合せである。一旦光学系604がイメージの焦点をイメージ・センサ606に合わせると、センサは1次元または2次元のバー・コードのイメージを捕獲する。1つの実施形態ではイメージ・センサは結合荷電素子(CCD)アレイであるが、別の実施形態では異なる種類のイメージ・センサを使用してもよい。
【0022】
デコーダ608はイメージ・センサ606の出力に結合されており、センサから受信したイメージ情報を処理するためのプロセッサを含む。このデコーダは、その機能を実行しているデコーダに指令する命令を記憶する不揮発性メモリまたはストレージ610にも結合されている。1つの実施形態で、メモリまたはストレージ610は、例えば図2、3A〜3B、4A〜4C、5A〜5Cとともに上で説明されたプロセスを実施するようにデコーダに指令する命令を記憶している。このデコーダは揮発性メモリ612にも結合されているので、光学的シンボルをデコードする一方、データを記憶し、検索する。図示されている実施形態では、メモリ612とメモリ/ストレージ610とはデコーダから物理的に分離して示されているが、別の実施形態では、メモリ612とメモリ/ストレージ610のうちの1つ、またはそれらの両方は、デコーダと同じユニットに組み込まれてもよい。さらに、図示されている実施形態では、デコーダ608はイメージ・センサ606から物理的に分離したユニットであるが、別の実施形態では、イメージ・センサ606とデコーダ608とは同じデバイスに組み込まれてもよい。デコーダはまた、ハードウェアまたはソフトウェアの中に実装されることも可能である。
【0023】
ビジョン・システム600のオペレーションの1つの実施形態で、カメラ602はその光学系604を、バー・コード104のイメージをイメージ・センサ606に向けるために使用する。イメージ・センサ606は1次元または2次元のバー・コードのデジタル・イメージを捕獲し、そのデジタル・イメージがデコーダ608に送信される。デコーダ608はメモリ612とともに、メモリ/ストレージ610から取り出された命令を使用して、図2、3A〜3B、4A〜4C、5A〜5Cとともに上で説明されたプロセスを使用してバー・コードのイメージを処理する。
【0024】
要約の中で説明されるものを含む例示された本発明の実施形態の上述の説明は、網羅的であること、または本発明を開示されているものと寸分違わぬ形態に限定することを意図しているわけではない。本明細書では例示の目的で、本発明の特定の実施形態やその例が説明されているが、当業者であれば理解されるように、本発明の範囲の中で様々な同等の変更形態が可能である。上述の説明を考慮して、本発明に対してこれらの変更形態を作成可能である。
【0025】
添付の特許請求の範囲の中で使用される用語は、本明細書と特許請求の範囲の中で開示される特定の実施形態に本発明を限定するために解釈されるべきではない。むしろ本発明の範囲は、請求項の解釈の確立された原則にしたがって解釈されるべき冒頭の特許請求によって、完全に定められるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】A:簡略化されたビジョン・システムを示す概略図、B:イメージ・センサのピクセルとのバー・コードのイメージ要素の並び方を示す概略図である。
【図2】本発明による高密度のバー・コードをデコードするためのプロセスの実施形態のフローチャートである。
【図3】バー・コードなどの光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージからピクセルの輝度データを収集するためのプロセスの実施形態を示す図である。
【図4A】図3Aに示されているような、1つの実施形態における、収集されたピクセルの輝度データから計算されたヒストグラムの実施形態を示す図である。
【図4B】図3Aに示されているような、1つの実施形態における、収集されたピクセルの輝度データから計算されたヒストグラムの実施形態を示す図である。
【図4C】図3Aに示されているような、1つの実施形態における、収集されたピクセルの輝度データから計算されたヒストグラムの実施形態を示す図である。
【図5】解決されていないグレー・ピクセルの列の発見的なデコーディングを示す図である。
【図6】図2に示されているプロセスの実施形態を実施するための装置の実施形態のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる幅のライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージから収集されたピクセルの輝度データのヒストグラムを計算することと、
前記ヒストグラムを閾値処理することとを含み、前記ヒストグラムを閾値処理することが、
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために、前記ヒストグラムを閾値処理することと、
前記グレー・ピクセルをダーク・ピクセル、ライト・ピクセルまたは解決されていないグレー・ピクセルに再分類するために、グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理することと、
解決されていないグレー・ピクセルの列を作り出した前記光学的読み取り可能シンボルの要素を判定するために、解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析することととを含むプロセス。
【請求項2】
前記光学的読み取り可能シンボルの前記デジタル・イメージを横切る1つまたは複数のライン・スキャンから、ピクセルの輝度データを収集することをさらに含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
各ピクセルのために、前記1つまたは複数のライン・スキャンの間に収集された前記輝度を平均することをさらに含む請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために前記ヒストグラムを閾値処理することが、ボトムハット・アルゴリズムを前記ピクセルの輝度データに適用することを含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理することが、ボトムハット・アルゴリズムを前記グレー・ピクセルの輝度データに適用することを含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析することが、前記列の中のピクセルの数と前記列を結びつけている前記シンボルの要素に基づいて各列を分析することを含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記発見的分析が、ピクセルで測定された、前記光学的読み取り可能シンボルの前記要素の前記イメージの最小および最大の幅にさらに基づく請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記最小の狭要素の幅が、1ピクセルと2ピクセルとの間である請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
異なる幅のライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージから収集されたピクセルの輝度データのヒストグラムを計算し、
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために前記ヒストグラムを閾値処理し、
前記グレー・ピクセルをダーク・ピクセル、ライト・ピクセルまたは解決されていないグレー・ピクセルに再分類するために、グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理し、
解決されていないグレー・ピクセルの列を作り出した前記光学的読み取り可能シンボルの要素を判定するために、解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析する命令でプログラムされたプロセッサを含むデコーダを備えた装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記光学的読み取り可能シンボルの前記デジタル・イメージを横切る1つまたは複数のライン・スキャンからピクセルの輝度データを収集するための命令でさらにプログラムされている請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、各ピクセルに対して、前記1つまたは複数のライン・スキャンの間に収集された前記輝度を平均するための命令でさらにプログラムされている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために前記ヒストグラムを閾値処理するための命令が、ボトムハット・アルゴリズムを前記ピクセルの輝度データに適用するための命令を含む請求項9に記載の装置。
【請求項13】
グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理するための命令が、ボトムハット・アルゴリズムを前記グレー・ピクセルの輝度データに適用するための命令を含む請求項9に記載の装置。
【請求項14】
解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析するための命令が、前記列の中のピクセルの数と、前記列を結びつけている前記シンボルの要素とに基づいて、解決されていないグレー・ピクセルの各列を分析するための命令を含む請求項9に記載の装置。
【請求項15】
解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析するための前記命令が、ピクセルで測定された、前記光学的読み取り可能シンボルの狭要素の前記イメージの最小および最大の幅に基づいて、解決されていないグレー・ピクセルの各列を分析するための命令をさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記最小の狭要素の幅が、1ピクセルと2ピクセルとの間である請求項15に記載の装置。
【請求項17】
異なる幅のライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージを捕獲するためのカメラと、
前記カメラに結合されたデコーダと、
前記デコーダに結合されたストレージまたはメモリであって、前記デコーダによって実行される場合、前記デコーダに、
ライト要素とダーク要素とを含む光学的読み取り可能シンボルのデジタル・イメージから収集されたピクセルの輝度データのヒストグラムを計算させ、
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために前記ヒストグラムを閾値処理させ、
前記グレー・ピクセルをダーク・ピクセル、ライト・ピクセルまたは解決されていないグレー・ピクセルに再分類するために、グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理させ、
解決されていないグレー・ピクセルの列を作成した前記光学的読み取り可能シンボルの要素を判定するために、解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析させる命令を記憶したストレージまたはメモリと
を備えるシステム。
【請求項18】
前記命令が、前記光学的読み取り可能シンボルの前記デジタル・イメージを横切る1つまたは複数のライン・スキャンからピクセルの輝度データを収集するための命令をさらに含む請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記命令が、各ピクセルのために、前記1つまたは複数のライン・スキャンの間に収集された前記輝度を平均するための命令をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
個々のピクセルをライト・ピクセル、ダーク・ピクセルまたはグレー・ピクセルに分類するために前記ヒストグラムを閾値処理するための前記命令が、ボトムハット・アルゴリズムを前記ピクセルの輝度データに適用するための命令を含む請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
グレー・ピクセルに対応する前記ヒストグラムの一部のみを閾値処理するための前記命令が、ボトムハット・アルゴリズムを前記グレー・ピクセルの輝度データに適用するための命令を含む請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析するための前記命令が、前記列の中のピクセルの数と前記列を結びつけている前記シンボルの要素に基づいて、解決されていないグレー・ピクセルの各列を分析するための命令を含む請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
解決されていないグレー・ピクセルの各列を発見的に分析するための前記命令が、ピクセルで測定された、前記光学的読み取り可能シンボルの前記要素の前記イメージの最小および最大の幅に基づいて、解決されていないグレー・ピクセルの各列を分析するための命令をさらに含む請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記最小の狭要素の幅が、だいたい1ピクセルと2ピクセルとの間である請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−535058(P2008−535058A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503048(P2008−503048)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/009640
【国際公開番号】WO2006/102031
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502435683)マイクロスキャン・システムズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】