説明

高導電性ペースト組成物及びその製造方法

【課題】高導電性ペースト組成物及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】発熱体の電気エネルギーを熱エネルギーに変化させる発熱部分(導電性カーボンペースト)の問題点(負の温度抵抗係数及び高い抵抗値)を補完可能な炭素ナノチューブ(MWNTまたはSWNT)を使った製品において、炭素ナノチューブが有した銅またはアルミニウムより5〜10倍高い熱発散効果、高い電界放出効果、黒体複写などの負の温度抵抗係数に対する影響を最小化できる高導電性ペースト組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)を含む高導電性ペースト組成物及びその製造方法、これを含む抵抗体膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な導電性ペーストは、導電性物質(導電性カーボン、黒鉛)、有機バインダー及び希釈剤などで構成されている。導電性ペーストは、シルクスクリーン、グラビア方式などによって一定のパターンで被着剤(PETフィルム、セラミック基板)に印刷され、希釈剤の蒸発温度以上に乾燥して被膜を形成する。
【0003】
このように形成されたパターンは、パターンの両末端に電気を印加して発熱させる。発熱体抵抗値の調整は、導電性ペーストの抵抗値、すなわち、導電性物質とバインダーとの混合比によって決定され、導電性物質の被膜の厚さ及び幅、長さなどを調整して調節することができる。
【0004】
しかし、導電性物質の被膜を厚くするほど機械的特性が低下して被膜を厚くするのに限界がある。
【0005】
また、導電性物質の含量を増加させて導電性を向上させることができるが、導電性物質の大きな吸油量と分散の難しさのために、導電性物質の含有量に対する制限と含有量に比べて高導電性を具現しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面処理された炭素ナノチューブが添加されることによって低い抵抗及び安定した温度抵抗係数を有する高導電性ペースト組成物及びその製造方法、これを含む抵抗体膜及び前記抵抗体膜を含む電子部品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の課題は、前述した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)を、全体組成物100重量部に対して1ないし10重量部で含むことを特徴とする高導電性ペースト組成物を提供する。
【0009】
本発明は、a)炭素ナノチューブ(CNT)に−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を導入して、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブを形成する段階であって、a1)炭素ナノチューブを酸処理する段階及びa2)前記酸処理された炭素ナノチューブに多価アルコールを添加してエステル反応させる段階を含む段階と、b)前記a)段階で製造された前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブと有機バインダーとを混合する段階と、を含むことを特徴とする高導電性ペースト組成物の製造方法を提供する。
【0010】
本発明による高導電性ペースト組成物を含む抵抗体膜を提供する。
【0011】
本発明による抵抗体膜を含む電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抵抗体の大きさによる面抵抗値及び温度抵抗係数の変化が少なく、低い面抵抗値及び温度抵抗係数を有する高導電性ペースト組成物が提供され、これは多様な発熱体の抵抗体として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】炭素ナノチューブに−COORの官能基を導入する過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による高導電性ペースト組成物は、−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)を、全体組成物100重量部に対して1ないし10重量部で含むことを特徴とする。ここで、前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)は、炭素ナノチューブを表面処理して製造されたものである。
【0015】
炭素ナノチューブ自体も一般的に使われる導電性カーボンに比べて優れた導電性物質であるが、炭素ナノチューブを表面処理して使えば、炭素ナノチューブの特性であるファンデルワールス力によってバインダーに分散されるに当って、さらに優れた導電性を具現することができる。ここに、表面処理された炭素ナノチューブを添加すれば、表面処理されていない炭素ナノチューブを添加した導電性ペーストに比べて、さらに優れた導電性ペーストの具現が可能になる。また、一般的な導電性カーボンに比べて、小さな温度抵抗係数を有しており、安定した温度抵抗係数を有する高導電性発熱体用のペースト組成物を提供することができる。
【0016】
ここで、表面処理される炭素ナノチューブの種類は、特別に限定されるものではないが、100ないし600m/g範囲の比表面積を有する炭素ナノチューブを使うことができる。
【0017】
例えば、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)、単一壁炭素ナノチューブ(SWNNT)、及び薄壁炭素ナノチューブのうちから選択された少なくとも一つの炭素ナノチューブを使うことができる。望ましくは、前記炭素ナノチューブは熱伝導度と電気伝導度とに優れて最も活用度が高く、酸化温度が比較的高くて相対的に発熱体の素材として適した多重壁炭素ナノチューブ及び単一壁炭素ナノチューブのうちから選択された少なくとも一つの炭素ナノチューブを使うことができる。
【0018】
表面処理された炭素ナノチューブについて具体的に説明すれば、炭素ナノチューブを酸処理した後、エステル化反応によって−COORの官能基が炭素ナノチューブに導入されることによって、炭素ナノチューブのファンデルワールス力を弱化させて、分散がさらに容易になることで、炭素ナノチューブの特性である電気的ネットワーク現象によって高導電性を具現することができる。
【0019】
前述したように、前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)は、炭素ナノチューブを表面処理して製造されたものであって、炭素ナノチューブを表面処理してからは、炭素ナノチューブに前記−COORの官能基が導入される。
【0020】
具体的には、前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブは、炭素ナノチューブの酸処理後、多価アルコール(polyol)を使ったエステル化反応を通じて炭素ナノチューブに前記官能基を導入させる。ここで、−COORの官能基でRの例として、反復単位10以上のメチルメタクリレート(methyl methacrylate)またはエチレンテレフタレート(ethylene terephtalate)になり得る。
【0021】
ここで、前記多価アルコールは、グリコールまたはグリセロールであり得る。具体的な例として、メチルメタクリレートジオール及びエステルテレフタレートジオールが挙げられる。ここで、多価アルコール(POLYOL)とは、分子内にアルコール性ヒドロキシ基−OHを2つ以上有するアルコールを意味する。
【0022】
以下、酸処理及び多価アルコールを添加したエステル反応について具体的に説明する(図1参照)。
【0023】
炭素ナノチューブを酸処理すれば、炭素ナノチューブの表面に−OH基またはカルボキシル基(−COOH)が導入される。
【0024】
ここで、酸処理過程は、例えば、カルボキシル基を官能基に導入する過程は、次の通りである。HSOとHNOとを3:1の体積比で混合された溶液にMWNT(炭素ナノチューブの一例)を添加して、140℃で30分間還流させた後、脱イオン水を用いて溶液のpHが7〜8に近い値を表わすまで、洗浄と濾過との過程を反復した後に乾燥すれば、酸処理されたMWNTが得られる。この過程を通じて炭素ナノチューブの表面に−COOH基が生成される。
【0025】
次いで、このようにMWNT表面に生成された−COOHに多価アルコール系の物質を使ったエステル化反応を通じて−COORの官能基に導入される。もし、その以外にMWNT表面に生成された−OH基にも官能基を導入させようとすれば、脂肪酸をCNT表面に生成された−OH基とエステル化反応を用いて官能基を導入することができる。
【0026】
ここで、MWNT表面に−COOH基が導入された時、多価アルコール系の物質を使ったエステル化反応について具体的に説明すれば、次の通りである。表面に−COOH基が導入されたMWNTを5倍の体積の液状の多価アルコールに添加した後、HSOを添加した後、60℃温度で2時間還流させた後、5%の炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)を添加してCOが発生するまで回す。その後、反応物を遠心分離して沈殿物を除去し、少量の無水硫酸ナトリウム(anhydrous sodiumsulfate)を添加して水分を完全に除去する。
【0027】
前述したように、処理の後、図1に示されたように、炭素ナノチューブの表面には、−COORの官能基が導入される。官能基は、炭素ナノチューブが構成する炭素構造に付いている。
【0028】
要約すれば、炭素ナノチューブの酸処理後、炭素ナノチューブの表面に−COOH基が付いた所は、多価アルコールがエステル化反応によって官能基化されることによって、−COORの官能基が導入される。また、炭素ナノチューブの酸処理後、炭素ナノチューブの表面に−OH基が付いた席に脂肪酸をエステル化反応によって官能基化されることによって、−COORの官能基が導入される。
【0029】
前記官能基を有する炭素ナノチューブは、前記高導電性ペースト組成物で重さ対比体積比が非常に大きいために、少量で組成物に存在しても組成物の粘度維持が可能である。
【0030】
本発明による高導電性ペースト組成物は、炭素ナノチューブを単独で含むこともできるが、炭素ナノチューブと黒鉛とをともに含むこともできる。
【0031】
炭素ナノチューブと黒鉛とをともに使えば、炭素ナノチューブを単独で使う場合より活性と作業性とがさらに上昇する。
【0032】
この場合、一例として、高導電性ペースト組成物は、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ1ないし10重量部及び黒鉛10ないし20重量部を含みうる。
【0033】
10ないし20重量部で黒鉛を添加すれば、黒鉛は高導電性ペースト組成物が低い抵抗値を有するようになる。また、表面処理されて官能基が付いた炭素ナノチューブは抵抗値を調節しながら分散が容易になるので、同じ添加量を高めることができて低い抵抗値を具現することができる。
【0034】
前記高導電性ペースト組成物は、全体組成物100重量部に対して70ないし89重量部の有機バインダーをさらに含みうる。
【0035】
ここに、本発明による高導電性ペースト組成物は、一例として、多価アルコールが官能基に導入された炭素ナノチューブ1ないし10重量部、黒鉛10ないし20重量部及び有機バインダー70ないし89重量部を含みうる。
【0036】
前記有機バインダーは、ペースト組成物内の各構成成分の分散を容易にし、高導電性ペースト組成物のシルク印刷時に印刷塗膜の均一性を確保するための適切な粘度を提供することができる。
【0037】
前記有機バインダーとしては、特別に限定されるものではないが、例えば、アクリレート、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体とアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの樹脂成分が使われる。望ましくは、有機バインダーとしては、アクリル樹脂を使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明による高導電性ペースト組成物には、粘度を調節するために、シクロヘキサノン(Cyclohexanone)、アノンまたは酢酸ブチル、そして、ブチルセルソルブアセテートなどの溶媒を添加することができる。
【0039】
ここに、本発明による高導電性ペースト組成物は、一例として、前記−COORの官能基に導入された炭素ナノチューブ1ないし10重量部、黒鉛10ないし20重量部、有機バインダー70ないし89重量部を含み、これらの混合物が全体組成物100重量部に対して90重量部であれば、溶媒10重量部を添加して製造することができ、40重量部であれば、溶媒60重量部を添加して製造することができる。
【0040】
本発明による高導電性ペースト組成物において、高導電性とは、一般的に30Ω/sq以下を意味するが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明による高導電性ペースト組成物を被着体にシルクスクリーン印刷法またはグラビア印刷法で印刷して抵抗体膜を形成することができる。
【0042】
また、このように形成された抵抗体膜は、抵抗の調節が自由で多様な電子部品に適用可能である。例えば、フィルム発熱体、鏡発熱体など発熱製品の発熱体として使われる。
【0043】
本発明による高導電性ペースト組成物の製造方法は、a)炭素ナノチューブ(CNT)に−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を導入して、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブを形成する段階であって、a1)炭素ナノチューブを酸処理する段階及びa2)前記酸処理された炭素ナノチューブに多価アルコールを添加してエステル反応させる段階を含む段階と、b)前記a)段階で製造された前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブと有機バインダーとを混合する段階と、を含む。前述した実施状態の内容がいずれも適用可能であるということは言うまでもない。
【0044】
前記a1)段階で酸処理は、HSOとHNOとを3:1の体積比で混合された溶液に炭素ナノチューブを添加して処理することができる。
【0045】
前記a2)段階では、前記a1)段階の酸処理によってカルボキシル基(−COOH)が導入された炭素ナノチューブを、液状の前記多価アルコールに添加してエステル反応させることによって、前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブを製造することができる。
【0046】
前記多価アルコールは、グリコールまたはグリセロールであり得る。具体的な例として、メチルメタクリレートジオール及びエステルテレフタレートジオールが挙げられる。
【0047】
前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブは、MWNT(multi wall nanotube)とSWNT(single wall nanotube)とのうち選択された少なくとも一つの炭素ナノチューブであり得る。
【0048】
前記b)段階では、全体組成物100重量部に対して前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ1〜10重量部及び前記有機バインダー90〜99重量部を混合することができる。
【0049】
前記b)段階では、黒鉛がさらに添加され、前記b)段階では、全体組成物100重量部に対して前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ1〜10重量部、前記有機バインダー70〜89重量部及び前記黒鉛10〜20重量部を混合することができる。
【0050】
前記b)段階での混合物が、全体組成物100重量部に対して40〜90重量部である場合、溶媒を10〜60重量部を添加することができる。
【0051】
以下、実施例を通じて本発明についてさらに詳しく説明する。
【0052】
しかし、本発明が実施例に限定されるものではなく、当業者によって、本発明の特許請求の範囲に記載の範疇内で適切に変更可能である。
【実施例】
【0053】
〔実施例1〕
−COOR(ここで、Rは、メチルメタクリレート(methyl methacrylate))の官能基を有する多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)5重量部、黒鉛20重量部、有機バインダーでアクリル樹脂75重量部に希釈剤として溶媒であるシクロヘキサノン10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合して高導電性ペースト組成物を製造した。ここで、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)、黒鉛、有機バインダー及びシクロヘキサノンを含む全体組成物100重量部を基準にした時、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)、黒鉛及び有機バインダーの混合物が90重量部であり、100重量部になるようにシクロヘキサノン10重量部を加えて製造した。
【0054】
PETフィルムに高導電性ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0055】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0056】
〔実施例2〕
−COOR(ここで、Rは、メチルメタクリレート)の官能基を有する多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)10重量部、黒鉛20重量部、有機バインダーでアクリル樹脂70重量部に希釈剤として溶媒であるシクロヘキサノン10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合して高導電性ペースト組成物を製造した。ここで、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)、黒鉛、有機バインダー及びシクロヘキサノンを含む全体組成物100重量部を基準にした時、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)、黒鉛及び有機バインダーの混合物が90重量部であり、100重量部になるようにシクロヘキサノン10重量部を加えて製造した。
【0057】
PETフィルムに高導電性ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0058】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0059】
〔比較例1〕
官能基が導入されていない一般炭素ナノチューブ(MWNT)5重量部、黒鉛20重量部、有機バインダーでアクリル樹脂65重量部に希釈剤10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合してペースト組成物を製造した。
【0060】
PETフィルムに前記ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0061】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0062】
〔比較例2〕
官能基が導入されていない一般炭素ナノチューブ(MWNT)10重量部、黒鉛20重量部、有機バインダーでアクリル樹脂60重量部に希釈剤10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合してペースト組成物を製造した。
【0063】
PETフィルムに前記ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0064】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0065】
〔比較例3〕
導電性カーボンブラック5重量部、黒鉛20重量部、アクリル有機バインダー65重量部に希釈剤10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合してペースト組成物を製造した。
【0066】
PETフィルムに前記ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0067】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0068】
〔比較例4〕
導電性カーボンブラック10重量部、黒鉛20重量部、アクリル有機バインダー60重量部に希釈剤10重量部を加えて粘度調整した後、3段ロールで分散混合してペースト組成物を製造した。
【0069】
PETフィルムに前記ペースト組成物をスクリーン印刷法で印刷して塗膜を形成した後、これを135℃で10分間乾燥した。この際、前記塗膜の厚さは、約12μmであった。このような抵抗体膜上に電極層を形成し、その上にラミネーティングフィルムを貼り合わせて発熱体を収得した。
【0070】
前記発熱体の電極層の両端に220Vの交流を印加して、HIOKI 3280−10デジタルマルチメーターを用いて最大飽和温度領域で電流を測定して、初期抵抗値と発熱時の抵抗値とをそれぞれ算出した。その結果を下記表1に表わした。
【0071】
【表1】

表1から分るように、炭素ナノチューブであるMWNTと導電性カーボンブラックを、導電性物質は異なるが、同じ5重量部で同量を添加した実施例1、比較例1及び比較例3を比べて見れば、添加量が同じ場合、導電性カーボンブラックより炭素ナノチューブ(MWNT)を添加した場合が低い抵抗値を具現し、官能基が導入されたMWNTを添加した場合が、官能基が導入されていないMWNTを添加した場合より低い抵抗値を具現するということが分かる。
【0072】
また、実施例2、比較例2及び比較例4でも同じ現象を表わし、導電性カーボンブラックよりMWNTの方が、発熱時の抵抗変化率が少ないということが分かる。
【0073】
以上、本発明の実施例による官能基が導入された炭素ナノチューブを含む高導電性ペースト組成物が、同じ含量対比さらに低い抵抗値を具現するということを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)を含む高導電性ペースト組成物及びその製造方法、これを含む抵抗体膜及び電子部品関連の分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を有する炭素ナノチューブ(CNT)を、全体組成物100重量部に対して1ないし10重量部で含むことを特徴とする高導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブは、
炭素ナノチューブの酸処理後、多価アルコール(polyol)を使ったエステル化反応を通じて炭素ナノチューブに前記官能基を導入させたことを特徴とする請求項1に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールは、
メチルメタクリレートジオールまたはエステルテレフタレートジオールであることを特徴とする請求項2に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブは、
MWNT(multi wall nanotube)とSWNT(single wall nanotube)とのうち選択された少なくとも一つの炭素ナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記高導電性ペースト組成物は、
全体組成物100重量部に対して10ないし20重量部の黒鉛をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記高導電性ペースト組成物は、
全体組成物100重量部に対して70ないし89重量部の有機バインダーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうち何れか一項に記載の高導電性ペースト組成物を含むことを特徴とする抵抗体膜。
【請求項8】
請求項7に記載の抵抗体膜を含むことを特徴とする電子部品。
【請求項9】
a)炭素ナノチューブ(CNT)に−COOR(Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール、炭素数2〜20のアルケニル、または炭素数2〜20のアルキニル)の官能基を導入して、−COORの官能基を有する炭素ナノチューブを形成する段階であって、a1)炭素ナノチューブを酸処理する段階及びa2)前記酸処理された炭素ナノチューブに多価アルコールを添加してエステル反応させる段階を含む段階と、
b)前記a)段階で製造された前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブと有機バインダーとを混合する段階と、
を含むことを特徴とする高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項10】
前記a1)段階で酸処理は、HSOとHNOとを3:1の体積比で混合された溶液に炭素ナノチューブを添加して処理したことを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項11】
前記a2)段階では、前記a1)段階の酸処理によってカルボキシル基(−COOH)が導入された炭素ナノチューブを液状の前記多価アルコールに添加してエステル反応させることによって、前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブを製造したことを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項12】
前記多価アルコールは、
メチルメタクリレートジオールまたはエステルテレフタレートジオールであることを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項13】
前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブは、
MWNTとSWNTとのうち選択された少なくとも一つの炭素ナノチューブであることを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項14】
前記b)段階では、全体組成物100重量部に対して前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ1〜10重量部及び前記有機バインダー90〜99重量部を混合することを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項15】
前記b)段階では、黒鉛がさらに添加され、
前記b)段階では、全体組成物100重量部に対して前記−COORの官能基を有する炭素ナノチューブ1〜10重量部、前記有機バインダー70〜89重量部及び前記黒鉛10〜20重量部を混合することを特徴とする請求項9に記載の高導電性ペースト組成物。
【請求項16】
前記b)段階での混合物が全体組成物を100重量部に対して40〜90重量部である場合、溶媒を10〜60重量部を添加することを特徴とする請求項14または15に記載の高導電性ペースト組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−92863(P2010−92863A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235584(P2009−235584)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(509282653)エクサイーエヌシー.コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】EXAENC.CORP.
【住所又は居所原語表記】134−8,Eungwon−ri,Mokcheon−eup,Cheonan−si,Chungcheongnam−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】