説明

高屈折率かつ耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂および光学成形体

【課題】高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい芳香族ポリカーボネート樹脂および光学成形体の提供。
【解決手段】主たる繰り返し単位が繰り返し単位(A)とビスフェニル系のカーボネート単位(B)からなり、それらのモル比が(A/B)が20/80以上99/1以下のポリカーボネート樹脂で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20以上1.50以下の範囲であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。およびこのポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい芳香族ポリカーボネート樹脂および光学成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに近年その透明性を生かして光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
【0003】
一般に光学レンズにおいて、光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くしてレンズ系を小型軽量化したりすることが可能になる。
【0004】
光学レンズ用途に実用化されている光学用透明樹脂の中で高屈折率なものとしては、PC−A(n=1.586、ν=30)、ポリスチレン(n=1.578、ν=34)等がある(nとνはD線(598nm)で測定した屈折率とアッベ数を示す)。とりわけ、PC−Aは高屈折率で、なおかつ優れた耐熱性および優れた機械特性を有するため光学レンズ用途に幅広く検討されてきた。しかしながら、光学レンズの用途拡大により更なる屈折率の向上が求められている。一方、複屈折が高いため光学歪みが生じやすいという問題があった。そのため、高屈折率と低複屈折を兼備する光学レンズ向け樹脂の開発が幅広く行われてきた。
【0005】
例えば、シリコーン結合を有する樹脂組成物からなるレンズ成形体が知られている(特許文献1)。該特許文献に開示されるレンズ成形体は、屈折率が1.68と高く、低複屈折であるが、該樹脂組成物は熱硬化性樹脂であるためレンズ成形体の生産性が低いという問題がある。
【0006】
また、9,9−ビス(4−ヒロドキシフェニル)フルオレンから誘導される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂が知られている(特許文献2、3)。しかしながら、これらの特許文献で示されているポリカーボネート樹脂は屈折率が1.636と高く、低複屈折であるが、ガラス転移温度が高いため射出成形等が困難であるという問題がある。
【0007】
一方、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンから誘導される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂が知られている(特許文献4)。しかし、これらのポリカーボネート樹脂はガラス転移温度が高く耐熱性に優れるという記載はあるが、屈折率、複屈折については記載されていない。また、実際に4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンのポリカーボネート樹脂を重合したところ、流動性が極めて低く、射出成形が困難であるという問題がある。
【0008】
このように、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい芳香族ポリカーボネート樹脂および光学成形体は未だ提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−89660号公報
【特許文献2】特開平6−25398号公報
【特許文献3】特開2001−253960号公報
【特許文献4】特開平6−228035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい芳香族ポリカーボネート樹脂および光学成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、フルオレン構造を有する特定のフルオビスフェノール化合物と芳香族ジオールとをカーボネート前駆物質と特定の割合で反応させることで、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい芳香族ポリカーボネート樹脂および光学成形体が得られることを究明し本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の通りである。
1.主たる繰り返し単位が、下記式
【化1】

[式中、R1、Rは夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。]
で表される繰り返し単位(A)と下記式
【化2】

[式中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含まない炭化水素基又はハロゲン原子であり、pおよびqは同一または異なる1〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】

であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
で表わされる繰り返し単位(B)であり、それら繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が20/80以上99/1以下の範囲で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20以上1.50以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【0013】
2.繰り返し単位(A)が下記式
【化4】

[式中、R1、Rは夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素数6〜12アリール基を表す。]
で表される繰り返し単位(A1)である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
3.繰り返し単位(A1)が下記式
【化5】

で表される繰り返し単位(A2)である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
4.上記1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。
5.上記1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。
6.屈折率が1.600以上1.660以下の範囲であり、且つガラス転移温度が110℃〜220℃である上記1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂は、フルオレン構造を有する特定のフルオビスフェノール化合物と芳香族ジオールとをカーボネート前駆物質と特定の割合で反応させることで、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらい特性を有することが可能となった。
【0015】
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることで、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも低複屈折で光学歪みが起こりづらい特性を有する光学成形体を提供することが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が、単位(A)と繰り返し単位(B)とから構成される。
【0017】
(繰り返し単位(A))
本発明にかかる繰り返し単位(A)は、前記式(A)に示したように、フルオレン構造を有するフルオビスフェノール化合物から誘導されるものである。前記式(A)中、R1、Rは夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。主たる繰り返し単位(A)が前記式(A1)が高屈折率でありさらに入手容易なため好ましい。具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェニル)フェニル〕フルオレン等から誘導される繰り返し単位が例示される。特に、前記式(A2)に示した9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンから誘導される繰り返し単位は、構造単位中の芳香族の割合が高く、主鎖と垂直方向に芳香環が位置することで高屈折率、低複屈折となることが推定されるため好ましい。
【0018】
(繰り返し単位(B))
本発明にかかる繰り返し単位(B)は前記式(B)に示したように、芳香族ジオールから誘導されるものである。前記式(B)中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含まない炭化水素基又はハロゲン原子であり、pおよびqは同一または異なる1〜4の整数を示す。前記式(W)中、RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。具体的には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−n−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−neo−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−n−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が例示される。なかでも、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールM、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドは、高屈折率、流動性に優れているため好ましく、なかでも特にビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドは、高屈折率であるため好ましい。これらは2種類以上併用して用いても良い。
【0019】
(組成)
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とからなり、それらのモル比(A/B)は、20/80以上99/1以下である。好ましくは、主たる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)は、30/70以上98/2である。特に好ましくは、主たる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)は、30/70以上90/10以下である。繰り返し単位(A)の組成が多いと高屈折率、低複屈折となる傾向があり好ましく、繰り返し単位(B)の組成が多いと流動性に優れるという傾向があり好ましい。モル比(A/B)は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。なお、本発明における主たる繰り返し単位とは、繰り返し単位(A)及び(B)の合計が全繰り返し単位を基準として90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%である。
【0020】
(比粘度:ηSP
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、0.20以上1.50以下の範囲である。0.20以上であると強度等があがり、1.50以下では成形加工特性に優れる。好ましくは、0.23以上1.20以下の範囲であり、特に0.25以上1.00以下の範囲は流動性、機械物性の点から好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してよい。
【0021】
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0022】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
【0023】
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃以上220℃以下の範囲であり、より好ましくは120℃以上210℃以下の範囲である。Tgが、下限以上では耐熱安定性に優れ、位相差フィルムとして使用する場合、耐熱テスト時の位相差変化が少なく良好である。Tgが上限以下では、流動性が高く成形性が良好である。さらに、射出成形も可能となる。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0024】
(屈折率)
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、25℃、波長589nmにおける屈折率が好ましくは1.600以上1.660以下の範囲であり、より好ましくは1.620以上1.660以下の範囲、さらに好ましくは1.630以上1.660以下の範囲である。屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くしてレンズ系を小型軽量化したりすることが可能になり好ましい。
【0025】
(複屈折)
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、Tg+10℃でフィルムを一軸方向に2倍延伸した際の配向による複屈折が−6×10−3以上6×10−3以下であることが好ましく、より好ましくは、−5×10−3以上5×10−3以下であり、特に好ましくは、−4×10−3以上4×10−3以下である。配向による複屈折の絶対値が低いと光学歪みが起こりづらく好ましい。
【0026】
(製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0027】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。本発明のポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
【0028】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0029】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
【0030】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
【0031】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0032】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0033】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的に、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0034】
含窒素化合物としては、具体的に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が例示される。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が例示される。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0035】
金属化合物としては、亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
【0036】
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
【0037】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0038】
またスルホン酸のエステルとして、具体的に、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が例示される。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が特に好ましい。
【0039】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
【0040】
また、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。例えば、光学レンズとして用いる際には、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
【0041】
<光学成形体>
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、成形性および耐熱性に優れているので射出成形が必要となる光学レンズに特に有利に使用することができる。もちろん本発明のポリカーボネート樹脂は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらいため、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0042】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0043】
<光学レンズ>
本発明におけるポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。さらに、もちろん本発明の光学レンズは、高屈折率であり、耐熱性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。
光学レンズの成形方法としては、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。
【実施例】
【0044】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂および評価方法は以下のとおりである。
【0045】
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0046】
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0047】
3.ガラス転移温度測定
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0048】
4.屈折率(n
厚さ100μmのキャストフィルムを作成してATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて測定した。
【0049】
5.複屈折
厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式(1)より配向による複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/厚み (1)
【0050】
6.光学歪み
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形し、得られたレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は、◎:殆ど光漏れがない、○:僅かに光漏れが認められる、△:光漏れがある、×:光漏れが顕著であるとした。
【0051】
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3―フェニルフェニル)フルオレン(以下BPPFと略す)8429部、ビスフェノールA(以下BPAと略す)78部およびハイドロサルファイト15部を溶解した後、塩化メチレン14530部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール181.2部および48%水酸化ナトリウム水溶液705部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、白色のポリマーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、Tgを測定した。結果を表1に記載した。
【0052】
<光学フィルムの製造>
次に、得られたポリカーボネート樹脂をメチレンクロライドに溶解させ、固形分濃度19重量%のドープを作製した。このドープ溶液をガラス板上に流涎し、剥離後、乾燥して、厚み100μmのキャストフィルムを作製し、屈折率を評価した。また、得られたキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、複屈折を評価した。結果を表1に記載した。
【0053】
<光学レンズの製造>
次に、シリンダ温度370℃、金型温度190℃の条件にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形し、得られたレンズを用いて光学歪みを評価した。結果を表1に記載した。
【0054】
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPF、BPAの量をBPPF7741部、BPA391部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を350℃、金型温度を170℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0055】
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPF、BPAの量をBPPF1720部、BPA3126部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を310℃、金型温度を130℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0056】
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPAの代わりにビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(以下TDPと略す)を用い、BPPF、TDPの量をBPPF3440部、TDP2529部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を320℃、金型温度140℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0057】
[実施例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPAの代わりにTDPを用い、BPPF、TDPの量をBPPF5161部、TDP1686部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を330℃、金型温度を150℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0058】
[実施例6]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPF517.4部、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド(以下HMPSと略する)658.8部、ジフェニルカーボネート749.7部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.8×10−2部と水酸化ナトリウム1.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。表また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を280℃、金型温度を100℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0059】
[実施例7]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPF、HMPSの量をBPPF862.3部、HMPS470.6部を用いた他は、実施例6と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を310℃、金型温度を130℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0060】
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPF126g(0.25モル)、濃度10%の水酸化カリウム水溶液550ml、塩化メチレン400ml、末端停止剤(分子量調節剤)としてp−tert−ブチルフェノール0.15g及び触媒として10%トリエチルアミン水溶液3mlを邪魔板付き反応器内に導入し、反応液の温度を10℃付近に保持しながら、ホスゲンガスを340ml/minの割合で30分間吹き込み、激しく攪拌しつつ重縮合反応を行った。反応終了後、有機層に塩化メチレン1リットルを加えて希釈し、水、希塩酸、水の順に洗浄した後、メタノール中に投入してポリカーボネート樹脂を得た。該パウダーの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。得られたポリカーボネート樹脂は粘度が高く射出成形はできなかった。
【0061】
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPPFの量を33.6gに変更し、BPA70gを加えた他は、比較例1と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を330℃、金型温度を150℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。得られたポリカーボネート樹脂は屈折率が低く、光学歪みが大きかった。
【0062】
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えた反応器にイオン交換水9809部、48%水酸化ナトリウム水溶液2271部を加え、BPA1775部及びナトリウムハイドロサルファイト3.5部を溶解し、塩化メチレン7925部を加えた後、攪拌しながら16〜20℃にてホスゲン1000部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール52.6部と48%水酸化ナトリウム水溶液327部を加え、さらにトリエチルアミン1.57部を添加して20〜27℃で40分間攪拌して反応を終了した。生成物を含む塩化メチレン層を希塩酸、純水にて洗浄後、塩化メチレンを蒸発させポリカーボネート樹脂を得た。該パウダーの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、シリンダ温度を280℃、金型温度を100℃に変更した他は実施例1と同様に光学レンズを作成し光学歪みを評価した。結果を表1に示した。
【0063】
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPAの量を1016部に変更し、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略する)4787部を加えた他は、比較例3と全く同様の操作を行い、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し屈折率と複屈折を評価した。得られたポリカーボネート樹脂は粘度が高く射出成形はできなかった。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1中のBPPFは9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3―フェニルフェニル)フルオレン誘導体、BPAはビスフェノールA誘導体、TDPはビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド誘導体、HMPSはビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド誘導体、BCFは9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン誘導体を示し、繰り返し単位のジオール成分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位が、下記式
【化1】

[式中、R1、Rは夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。]
で表される繰り返し単位(A)と下記式
【化2】

[式中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含まない炭化水素基又はハロゲン原子であり、pおよびqは同一または異なる1〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】

であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
で表わされる繰り返し単位(B)であり、それら繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が20/80以上99/1以下の範囲で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20以上1.50以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【請求項2】
繰り返し単位(A)が下記式
【化4】

[式中、R1、Rは夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素数6〜12アリール基を表す。]
で表される繰り返し単位(A1)である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
繰り返し単位(A1)が下記式
【化5】

で表される繰り返し単位(A2)である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
請求項1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。
【請求項5】
請求項1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。
【請求項6】
屈折率が1.600以上1.660以下の範囲であり、且つガラス転移温度が110℃〜220℃である請求項1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。

【公開番号】特開2011−246583(P2011−246583A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120446(P2010−120446)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】