説明

高屈折率を有するポリマー組成物

高屈折率を有するポリマーの眼科用製品のための使用およびその製造方法が記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高屈折率を有するポリマー組成物の眼科での使用と、該ポリマーの製造方法とに関係する。
【0002】
本発明によれば、高屈折率を有するポリマー組成物が提供され、それは眼の移植への使用に特に適する。特に、眼内レンズ(IOL)、角膜移植、人工角膜移植(keratoprostheses)などが眼の移植として考えられる。それは、曇りまたは損傷を被ったレンズで苦しんでいる患者に視力を復活させるために外科的に眼に挿入され、および眼の自然のレンズを置換する。もしそれが、例えば事故で破損したなら、または、そしてこれは一般的なケースであるが、もしレンズが白内障のために曇らされるなら、自然のレンズは取り換えられなければならない。
【0003】
眼内レンズは、硬いか、または柔らかいポリマーから作ることができる。硬いポリマーは機械的に安定しており、および加工し易いという利点を有する。しかしながら、それは使うことが難しい。眼内レンズは一般に、外科的な切り口が作られた後、眼の中に入れられる。それ故に、切り口が可能な限り小さく保たれるように、レンズは柔軟性のあることが望ましい。もしレンズのために用いられるポリマーが非常に弾力的でレンズが折り曲げることができるなら、またはもし材料が非常に柔軟で巻かれることができるなら、切り口は更により小さくすることができる。眼への損傷が最小にされ、および治癒がより速くなるために、それは有利であり、かつ望ましい。
【0004】
ソフトレンズはうまく挿入され得るが、しかし形状に関してしばしば安定性に欠ける。加えるに眼内レンズは、一方では一緒に曲げられるか、または巻かれることができるような、しかし他方挿入された後は、その元の形を回復し、および同じくその形を維持するような弾力的特性を有しなければならない。眼内レンズのための材料は、過度にソフトでなくてよく、および同じく記憶効果を有しなくてもよい。従って眼内レンズに適したポリマーは、相互に矛盾した特性の組み合わせを統合しなくてはならない。
【0005】
眼に挿入されるポリマーのための更なる本質的な要件は、十分に高い屈折率である。屈折率が周囲の媒体のそれより大きく違うほど、前もって決定された幾何学的パターンの光学レンズの作用は、相応してより大きくなる。従って、レンズは、それが作られる材料の屈折率がより高ければ、それに相応してより薄くなることができる。既知の材料は一般に、1.45〜1.56の範囲の屈折率を有するから、それらの材料から作られる眼内レンズは比較的厚くならざるを得ない。しかしながら、レンズが厚いとそれだけ、挿入することがいっそう難しくなる。1.60以上の屈折率(体積との関係で測られた)を有する透明なポリマーが、それ故に望ましい。
【0006】
眼の移植の製造に適したポリマーの更なる要件は透明性である。適切なポリマーは高度の光透明性を有しなくてはならず、その関係で、ある特定の波長範囲が場合により適当な成分の添加によってフィルター除外することができる。
【0007】
ガラス転移温度もまた、心に留めておくべきパラメータである。レンズが体温において加工可能であるように、ガラス転移温度はどんな事象においても37℃より低くなければならない。15℃より低い領域のガラス転移温度が適当であると考えられ、および10℃より低い温度が望ましいと考えられる。
【0008】
アクリレートとメタクリレートとは既に長い間、その優れた適合性(compatibility)のために、眼内レンズと眼の移植との製造のために用いられてきた。しかしながら、通常採用されているモノマーのホモポリマーが、不適切な強度特性を有し、およびその屈折率が一般に余りにも低いことが指摘される。そこで、それらの特性を共重合によって改良する試みが為されて来た。その点で、非常に多くの異なったアプローチがある。
【0009】
屈折力を増やすために、フェニルを有するアクリレートおよびメタクリレートを用い得ることが提案された。疎水性および親水性成分の組み合わせも又、材料に有利な特性を与えるために用いられてきた。このように、例えばヨーロッパ特許第0898972号が、柔らかい眼内レンズのための材料を開示しており、それは親水性モノマーを、芳香族(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、および架橋性モノマーと重合させることによって得られる。親水性モノマーは例えば(メタ)アクリルアミドであることができ、および芳香族(メタ)アクリレートは例えばフェニルオキシエチルアクリレートであることができる。材料の柔軟性は アルキル(メタ)アクリレートによって改善されるはずである。
【0010】
アリール基を持つアクリレートも又、欧州特許第0667966号で提案されており、そこではアリール基を持つ成分がアリール基なしの1つ又は2つの更なる成分と組み合わされる。欧州特許第0774 983号も又、アリール基含有アクリルモノマーと、第二の親水性の、特にヒドロキシ基含有アクリレートまたはメタアクリレートとで構成されるコポリマーを記述している。高屈折率ポリマーを製造するために、欧州特許第0485197号が少なくとも2つのモノマー 、すなわち、アリールアクリレートとアクリルメタアクリレートとを共重合することを提案している。3番目のモノマーがポリマーを架橋する役目をする。
【0011】
欧州特許第1077952号が、特殊なベンゾトリアジンモノマーをアクリルアミドと共に、特性を改善するために使っているポリマー組成物を開示している。
【0012】
当該技術分野で言及されたすべてのポリマーに共通の点は、屈折率と機械的特性の最適の組み合わせを達成するために、それらが少なくとも3つのモノマーで構成されているということである。
【0013】
既知の材料のいずれも、良好な機械特性と高屈折率との組み合わせに関して満足なものはない。
【0014】
従って本発明の課題は、優秀な機械的特性を高屈折率、好ましくは1.56以上と結合するポリマー組成物を提供することであった。更なる課題は、一方ではそれが折り曲げられ、および巻かれることができるほど柔軟であり、ならびに他方では、それが眼の中で機械的に安定しているような強さを有するポリマー材料を提供することであった。本発明の更なる課題は、生物学的に適応性があり、および容易に製造することができる材料を提供することであった。
【0015】
本発明によれば、
少なくとも1つの以下の式の主モノマーa):
【化1】

ここで、XはOまたはNRであることができ、
YはそれぞれO,SまたはNRであることができ、
Rは直鎖、分岐、または環状の、炭素数1〜6の炭化水素残基であり、
は水素またはメチル残基であり、
は水素、C〜Cのアルキル基残基またはYArであることができ、
は水素、直鎖、分岐、または環状の炭素数1〜6の炭化水素残基、またはアリール基であり、
Ar、ArおよびArはそれぞれ互いに独立に、Yに結合によって、または(−CH)nによって結合しているアリール基であって、ここでnは0、1、2、または3であることができ、およびアリール基は、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、モノまたはジ置換アミノ基から選ばれる1〜4個の置換基によって置換されていてよく、該置換基は前記で定義された炭化水素残基Rから選ばれることができる、主モノマーと、
b)架橋性モノマーと、
c)必要により更に、屈折率、表面特性、ガラス転移温度、強度特性、UV吸収、および/または着色性のような特性を調整するためのモノマーと、
を重合することによって構成されるポリマー組成物が用いられ、
ここで主モノマーa)は少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に好ましくは60重量%の量で含有される。
【0016】
モノマーa)として用いられる化合物は、好ましくは、Arがそれぞれ、アルキルおよびアルコキシ残基から選ばれる0、1、または2個の置換基を有するフェニル基を表すような化合物である。
【0017】
次の化合物は特に好ましくモノマーとして使われる:
【化2】

【0018】
驚くべきことには、本発明による材料がこれまでに組合せとしては入手可能でなかった有益な特性を組み合わせているため、眼の中での使用に特に良好に適している、ということが見出された。本発明による材料は光学的要求を満たす非常に薄い横断面の眼の移植を製造することを可能にする非常に高い屈折率を有する。更に本発明によるポリマーは、非常に注意深い様態で挿入することができるような優れた機械的特性を有する眼内レンズの製造に用いることができる。該ポリマーはまた、コンタクトレンズ、人工角膜移植、角膜リング、またはインレイ(inlays)のような他の眼科用デバイスにも適している。それぞれ最適の特性は、モノマーの組み合わせによって設定することができる。
【0019】
本発明によるポリマー材料は前述のモノマーa)、b)および必要によりc)から構成される。架橋性モノマー−モノマーb)−は、形状に関して適切な安定性を達成するために常に用いられなくてはならない。ポリマーは成分a)を主モノマーとする成分から実質的に構成されており、モノマー全重量の少なくとも20重量%、好ましくは40重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%がモノマーa)から形成されている。一般に、特殊な特性を提供する更なるモノマーのより小さい割合が、バランスを構成する。
【0020】
「ホモポリマー」と呼ばれる好ましい実施態様において、ポリマー材料は実質的にモノマーa)を含んで成り、上記のとおり、モノマーb)はまた、架橋する目的で用いられる。
【0021】
用語「ホモポリマー」は、モノマーa)がモノマーの実質的割合を占めるような、即ち、85%より多く、特に好ましくは90%より多くを占めるようなポリマーを意味するようにここでは用いられる。
【0022】
更なる好ましい実施態様において、ポリマーは、モノマー成分a)と、架橋剤b)と、必要により更なるモノマーc)と、同じように共重合によって特殊な特性を達成するための更なる割合のモノマーd)とから構成される。共重合に用いられる追加的モノマーd)はモノマーa)の一部を置換し、ならびにモノマーa)およびb)として用いられる化合物と相溶性を持たなければならない。1つの実施態様では、追加的に添加したモノマーd)はアリール残基上の少なくとも一部が、ハロゲン、特にフッ素、ヨー素または臭素原子で置換されている以外は、式Iに示した構造を有するモノマーである。
【0023】
材料の残りが、架橋剤と、UV光吸収性化合物、青色光吸収性化合物、染料、所定の特性を変える成分、などから成る群から選択される必要により1つまたはより多くの追加的成分とによって構成される。
【0024】
しかしながら、通常眼の移植用材料に採用される他のモノマー、その関連での例は専門の文献に見出すことができるが、そのようなモノマーを共重合することもまた可能である。
【0025】
従って本発明は、折り曲げられるIOL材料として適当であり、および実施例では2つのモノマーだけ、即ちモノマーa)と架橋剤b)とが実質的に使われるように重合されたポリマー材料を使用する。このことは、物理的/化学的不均一性のような困難性を減らしまたは排除する。
【0026】
本発明によれば、ポリマー組成物は、1つの実施態様として、実質的にモノマーa)だけで構成され、およびモノマーb)で架橋されているホモポリマーであることができる。しかしながら、架橋性モノマーの他に、本発明によれば、ポリマー組成は更なるモノマーからも構成することができる。どの場合でも架橋性モノマーは必要であり、それはモノマーa)および必要により更なるモノマーと共重合される。
【0027】
本発明によれば、用語「コポリマー」は、本発明に従って2つの異なったモノマーと少なくとも1つの架橋剤とから、または本発明に従う少なくとも1つモノマーと、架橋剤と、少なくとも更に1つのモノマーとから重合される材料を表すために用いる。
【0028】
本発明によれば使用されるポリマーは、統計的ポリマーおよびブロックポリマーの双方であって、本発明によるモノマーのブロックおよび他のモノマーのブロックが有利な特性を与えることができる。
【0029】
少なくとも2つの結合性の官能基を有する化合物が架橋性モノマーとして使用される。適当な官能基の例は、ビニル基、アクリレート基、メタアクリレート基、ヒドロキシ基、およびチオール基である。適当な 架橋性化合物はジビニルベンゼン、ジチオレゾルシン、ビスフェノールA−メタアクリレートである。本発明に従えば、架橋性モノマーとして、それ自体知られている化合物、とりわけ1つ以上の末端エチレン性不飽和化合物を使うことが可能である。適当な架橋剤はこの分野の当業者に知られており、および通常採用されるモノマーを同じく本発明によるポリマーのために使うことができる。周知の架橋剤の例は、例えば次の2官能性化合物である:エチレングリコールジメタアクリレート;ジエチレングリコールジメタアクリレート;アリルメタアクリレート、プロパン−1、3−ジオールジメタアクリレート;プロパン−2、3−ジオールジメタアクリレート;ヘキサン−1、6−ジオールジメタアクリレート;ブタン−1、4−ジオールジメタアクリレート;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)nC(=O)C(CH)=CH、ここでn=1〜50、およびCH=C(CH)C(=O)O−(CH)tO−C(=O)C(CH)=CH、ここでt=3〜20、および対応するアクリレート。望ましくは、架橋性化合物の重合度は、数平均分子量が約400、約600、または最も好ましくは、約1000であるように選択される。
【0030】
しかしながら、もし次式IIの化合物が架橋剤として使われるなら、特に良い特性が達成される:
【化3】


これは、2つの末端のそれぞれに各末端不飽和基を有し、YはOまたはSを表すことができ、Arは芳香族、特にC〜Cのアルキル残基、C〜Cのアルコキシ残基およびハロゲンから選択される0または1〜4つの置換基で置換されることができるフェニル残基であって、nは1〜4までの、好ましくは1または2の整数であることができ、RおよびRは結合または(CH残基であって、mは1、2、または3である。
【0031】
特に好ましくは次の化合物が架橋剤として使われる:
【化4】

【0032】
本発明に従ってモノマーa)を使用するときは、1.55よりはるかに高い屈折率を有するポリマーが得られることが見出された。屈折率は1.6以上であることができる。特に好ましい実施態様では、Yが硫黄を表すモノマーが使われる。それらのモノマーは1.6超の屈折率を持つポリマーを産み出す。
【0033】
一般には、ただ1種類の架橋性モノマーが、本発明によってポリマーのために使われる。しかしながら、種々の架橋剤の組み合わせを使うことも可能である。例えば、式IIの種々のモノマーの混合物を使うことも、または式IIのモノマーと1つまたはより多くの通常の架橋剤との混合物を使うことも可能である。
【0034】
一般的には、架橋性成分の全体量は少なくとも0.1重量%であり、および残余成分の性質および濃度、ならびに望ましい物理的特性に依存して、それは最高20重量%までの範囲にあることができる。架橋性成分の濃度の好ましい範囲は0.1〜15重量%である。もし架橋剤の量が過度に少ないと、ポリマーの弾性特性は悪い影響を受けることがある。もし他方、架橋性成分の割合が20重量%を超えると、ポリマーは意図された使用目的にとって余りにも脆いことがある。
【0035】
アクリレートとメタアクリレートとから作られた疎水性ポリマーは粘つくことがある。粘着性は眼の移植用途としては不利であって、特にIOLとしては不利である。と言うのは、移植が巻かれるかまたは折り曲げられるとき、表面がお互いにくっつき、そのため切り離すことが容易ではないからである。本発明に従ってポリマー成分の表面特性に影響を与えるために、モノマーa)に類似するが、しかし置換基として少なくとも1つのフッ素原子またはフッ素含有基を有する更なるモノマーd)を追加することが可能である。フッ素置換基は、アリール残基または可能性としてアルキル成分に結合させることができる。好ましい実施態様では、使用されるフッ素化モノマーは、構造的には主モノマーと同一であるが、置換基としてハロゲンまたはフッ素原子を有するようなモノマーである。そのような組合せは、モノマーがお互いに相溶性があって、均一な材料に導くから有利である。もしハロゲン化モノマーが使われるなら、その割合は全モノマーの量に関して10重量%を超えるべきではない。3〜8重量%の範囲が好ましい。
【0036】
もしべとつきの問題が起こるなら、好ましい実施態様では、主モノマーa)の一部かまたは共重合性モノマーd)の一部、もしくはモノマーa)とモノマーd)との一部がフッ素化された形態で共重合することができる。
【0037】
式Iに従うモノマーの一部がヨウ素化または臭素化された構造にあるモノマーを使うことは更に有用であり得る。ヨウ素化および臭素化された化合物はそれから重合された材料の屈折率を増加させ、それ故に有利である。
【0038】
ハロゲン化されたモノマー、好ましくは、もし存在するならフッ素化されたモノマーの割合は、全ポリマー組成物の重量に関して0.05〜10重量%の範囲にある。好ましくは、ハロゲン化されたモノマーは0.1〜3重量%の割合で含まれる。もしハロゲン化されたモノマー の割合が過度に高いなら、屈折率は過度に影響を受ける。他方、過度に少ない量では、表面特性に対する影響は知覚し得るにはあまりにも低い。使われる主モノマーに依存して、ハロゲン化されたモノマーの性質と量は、本分野の当業者が少数の型通りの実験で最適化することができる。
【0039】
本発明に従って、ポリマー材料のために更なる原料として、開始剤、染料などのような、当該種類のポリマー組成物のために知られている成分を挙げることは可能である。一般に全ての添加物は、化合物が沁み出すことがないように、ポリマーの中に重合されるのであって、個別には添加されない。
【0040】
重合は通常、重合される材料に添加される開始剤によって開始される。熱によって活性化可能な化合物および同じく光によって活性化可能な化合物の両方を、本発明による組成物のために使うことができる。眼の分野で使われるポリマーは一般にUV吸収剤を含むから、UV開始剤を使うことは望ましくない。そのために、当業者にはそれ自体知られている青色開始剤、もしくは赤外線または熱で活性化可能な化合物が好ましくは使われる。
【0041】
好ましい熱開始剤は、例えば、しばしば眼内レンズの重合に使われるt-ブチル(パーオキシ−2−エチル)ヘキサノエートおよびジ(ターシャリ−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのようなパーオキシ残基を有する化合物である。適当な光開始剤は、アゾ化合物、例えばMABI、ベンゾイルホスフィンオキシドのようなホスフィンオキシド化合物、特に2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、のような通常採用されるものである。開始剤は、それ自体では知られている量、例えば典型的な実施態様では、5重量%以下の量で添加される。
【0042】
UV吸収剤が、眼を紫外線照射による障害から守るために、眼の中に用いられるポリマーにしばしば添加される。ベンゼントリアゾール化合物がしばしばその目的で選択される。既知の反応性UV吸収剤は、例えば2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゼントリアゾールである。UV吸収剤は典型的には、0.1〜5重量%の量で存在している。
【0043】
前述の、必要により追加の成分の性質および量は、完成した眼科的移植の所望の特性によって決定される。好ましくは、原料とその割合は本発明のポリマーが、本発明の材料を眼での使用に特に適するようにする所望の光学的および機械的特性を有するように選択される。
【0044】
レンズ材料は好ましくは乾燥状態で少なくとも1.60の屈折率を有する。もし硫黄を含有するモノマーのより高い割合が、本発明に従う材料を与えるために重合されるなら、特に好ましい1.60超の値を達成することが同様に可能である。
【0045】
所定の光学直径(optical diameter)に対して、屈折率が1.50より小さい材料から作られた光学素子は、より高い屈折率を有する材料から作られた同一の屈折力の光学素子より、必然的により厚くなる。光学部品がより薄くできるなら、それだけ、移植が眼に導入される切り口が相応してより小さくなるであろう。
【0046】
本発明に従って使われるポリマーは、モノマーa)およびb)の使用によって有利な機械的特性を有する。特にポリマーは、それから作られた眼の移植が折り曲げられまたは巻かれたときに、通常壊れたり、破れたり、または割れたりしない様なものである。
【0047】
発明に従えば、上述したポリマー組成物は眼科の分野で使われる。驚くべきことに、上述されたポリマーは、低度のまたはゼロの毒性、適切な柔軟性のような適切な機械的特性、および高い屈折率のような眼科的用途に必要な特性を一体化する。従ってこのポリマー組成物は、眼科分野で多くの場合、どのような種類の眼科用デバイスにも使うことができる。移植としての用途、特に角膜移植またはIOL、およびコンタクトレンズ、 人工角膜移植、角膜リングおよび角膜インレイなどが特に適している。
【0048】
本発明の材料から構築される眼内レンズはそれ自体既知の方法で作ることができ、その構造は、相対的に小さな切り口を通って装着できる小さな断面積を与えるように、それらが巻かれるかまたは折り曲げられるかに懸かっている。眼内レンズは例えば単一片(one-piece)または多片(multi-piece)構造であることができ、ならびに光学要素および支持(haptic)要素を持つことができる。光学部はレンズの役をする部分である。支持部は光学部に固定されていて、光学部を眼におけるその正しい位置に保持する。光学部と支持部は、同じポリマーから構成することができ、または異なった材料を含有することができる。多片品と呼ばれるIOLの場合は、光学部と支持部が別個に作られて、その後、支持部が光学部に固定される。単一片レンズの場合は、光学部と支持部とはポリマーから形成される。光学部と支持部との成形および加工は、当該分野の当業者によく知られた方法で達成される。
【0049】
疎水性および同じく親水性ポリマー組成物両方が、本発明によるモノマーから製造することができる。もし 疎水性ポリマーが欲しいなら、モノマーa)をホモポリマーとして処理することができ、または更なる疎水コモノマーと一緒に処理することができる。もし親水性ポリマー材料が欲しいなら、本発明に従うモノマーa)を、例えば水酸基を持ったアクリレートまたはメタクリレートであることができる親水性モノマーと共重合する。
【0050】
ポリマーの加工特性のために重要な更なるパラメータがガラス転移温度である。ガラス転移温度は材料の柔軟性に影響を与える。もしガラス転移温度が非常に高いなら、その材料は体温および室温において脆いものであり、もしガラス転移温度が非常に低いなら、材料はほとんど通常の温度で加工することができない。従って、眼の移植としての使用のために、15℃以下、好ましくは10℃以下のTgを有するポリマーが望ましく、そのケースの場合には、加工され易くて、それにも拘らず体温においてまだそれらの柔軟な特性を維持するポリマーが得られるからである。上記に特定されたモノマーから作られたポリマーで最適のガラス転移温度を設定するために、好ましくはモノマーを添加し、それは所望の範囲の中にガラス転移温度を設定する。その目的に適したモノマーは、当該分野に習熟した当業者に知られており、使用されるべき適切なモノマーとその量は、少数の型通りの実験で確定することができる。
【0051】
本発明による眼の移植は、ポリマーそれ自体では知られているように、ナノ顔料を加えることによって、まだ更に向上することができる。眼の移植材料に光学部品を取り入れることは、ドイツ特許第10129787号によって知られている。使われる光学部品は、周囲の材料の屈折率よりも高い屈折率を有し、および実質的に構成材料中で何ら光の散乱が生じない粒径の、実質的に透明なフィラーである。光学的に明るい又は透明なフィラーは、増加した屈折率に繋がる高い電子密度を有する。その高い電子密度は、溶解することが難しい酸化物、高度に電荷を帯びたカチオン、例えば重金属、特に、鉛とビスマス化合物によって、達成することができる。それらの重金属化合物は結晶の形態で、特にナノ結晶として析出した形態で、例えばシリケート、ゲルマネート、アルミネート、またはチタネートとして存在する。重金属は結晶マトリックス中に固定して組み込まれていて、眼の生物学的媒体中では溶出しない。フィラーはそれ故に、それが細かな分散粒子の形状で、特にナノ粒子として分散している透明成分材料または移植材料の生物学的適合性に逆行するようには働かない。好ましく使われるフィラーはルチルである。そのフィラーは生物学的適合性がある。それは不活性であり、溶解し難く、熱的に安定であって、それ故に加熱殺菌可能である。それはまた、比較的多量に入手可能である。そのフィラーはナノ結晶の形態で析出させることができ、およびそのため、成分材料中で実際上何ら光散乱が誘発されない様な粒子の大きさで技術的に製造することができる。
【0052】
ルチルをフィラーとして、n=1.5の屈折率のアクリレート中に体積で20重量%使うとき、アクリレートの屈折率はフィラーによって1.78に増やすことができる。そのようにして眼の移植と周囲の水性体液間の実効的な屈折率差を2〜3.5倍に増やすことが可能である。それは例えば減少した厚さの、および改善された折り曲げ性を有する眼内レンズを製造することを可能にする。
【0053】
望ましい実施態様では、それ故に、20重量%まで、好ましくは5〜15重量%のナノ粒子を、上述のように、IOLを与えるように加工されるポリマー中に添加することができる。
【0054】
本発明の更なる要旨は、本発明に従ったポリマー組成物の製造方法である。アクリレートおよびメタアクリレートポリマー自体の製造方法は知られている。特に、バルク重合と乳化重合、好ましくは乳化重合が眼の移植の製造として考慮される。
【0055】
好ましい実施態様では、モノマーを、開始剤Iを使ってプレポリマーに変換し、および可能な限りそれらの残存モノマー含量からフリーにする。プレポリマーをその後、開始剤IIの存在下で、必要によりはある特定の性能に影響を与えるモノマーを追加して最終ポリマーに転換する。開始剤IおよびIIは、使用されるモノマーの性質およびポリマーの所望の特性に依存して、同一でありまたは異なることがある。好ましくは、開始剤IとIIとは同一である。その種の方法は、非常に低い残存モノマー含量に導き、それは計画された使用のために有利である。
【0056】
第1ステージでプレポリマーが製造され、およびそれからプレポリマーがモノマー性架橋剤で更に重合される2段階法の使用によって、更に均一な材料が得られる。材料の均一性は眼の移植としての使用のために重要なパラメータである。ポリマー中の均一でない領域は光学的欠陥に導き、それは眼の移植にとっては受容できない。
【0057】
本発明によれば、良好な機械的特性を高い屈折率と組み合わせたポリマー組成物が提供される。それらのポリマーは、通常の方法を使って、簡単な様式で製造することができる。
【0058】
本発明によれば、ポリマー組成物は角膜移植および眼内レンズとしての使用のために特に適している。これまでに角膜移植またはIOLと定義したように、本発明の要旨はそれ故に、同じくポリマー組成物の使用である。
【0059】
本発明は次の例によって更に記述されるが、しかしながら決して限定するものと解釈されるものではない。
【0060】
得られた生成物はH−および13C−NMRスペクトロスコピーで分析した。INNOVA500スペクトロメータ(バリアン社)を使い、および測定は次の測定周波数で室温(21℃)において、そのスペクトロメータ上で実行した: H−NMR:499.84MHz、13C−NMR:125.69MHz。CDClおよびCDODを溶剤として使った。
【実施例1】
【0061】
「下式化合物の合成」
【化5】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0062】
「反応式」
【化6】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0063】
「試薬」
メタクリロイルクロライド
【化7】

メチルマグネシウムクロライド
【0064】
「実験の部」
(2−メタクリル酸−2−フェニルスルファニル−1−フェニルスルファニルメチル−エチルエステル)
1、3−ビスフェニルスルファニル−プロパン−2−オールをメチルマグネシウムクロライドおよびメタクリル酸クロライドと等モル量で(各々0.03618モル)反応させた。
【0065】
1、3−ビスフェニルスルファニル−プロパン−2−オール(MW=276.42):(10g=0.03618モル)を、予めNa/K上で蒸留したTHF中に溶解した。その溶液に0.03618モルのメチルマグネシウムクロライド(アクロス製、THF中に22重量%)(MW=74.79)=(2.71g(22重量%の溶液12.32gに対応する))を添加した。その溶液を次に滴下ロートから以下の溶液に徐々に滴下した:THF約100ml中のメタクリロイルクロライド(97%(GC))0.03618モル(MW=104.53)=(3.78g(すなわち、97.0%純度品を3.89g))。反応溶液は目立って昇温せず、冷却が必要ではなかった;溶液は透明で、少し黄色がかったままであった。窒素雰囲気下、室温で撹拌した。反応はDC法によってモニターした。混合物をその後45〜50℃で約2時間、加熱した。撹拌はN雰囲気下、室温で一晩継続した。反応溶液のろ過を、予めTHFで糊状に形成されたアルミニウム酸化物[アルコス、活性化品、塩基性]と海砂とで覆われたG3ガラスフリット(frit)で行った。THFをその後ロータリーエバポレーターで除去し、生成物はその後更にカラムクロマトグラフィで精製した。
【実施例2】
【0066】
「下式化合物の合成」
【化8】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0067】
「反応式」
【化9】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0068】
「化学物質」
メタクリロイルクロライド(上記定義に同じ)
【0069】
「実験的の部」
1、3−ビスフェニルスルファニル−プロパン−2−オールをメタクリロイルクロライドと反応させた。次の試薬を、コンデンサーとN導入部を備え、予め加温した250mlの三ツ口丸底フラスコに入れた:0.03モルのメタクリロイルクロライド(3.88g、97%)、溶剤として、予め蒸留し、禁止剤フリーにしたTHFを60ml。8.29gの1、3−ビスフェニルスルファニル−プロパン−2オール(0.030モル)および2.94gのトリエチルアミン(0.030モル)(99重量%)を滴下ロートに入れた。溶液を滴下ロートから徐々に三ツ口フラスコの中に滴下した。反応が発熱反応でなかったから、冷却が必要ではなかった。(NEt)HClの白い析出物が形成された。室温で1.5時間、撹拌を続けて、その後、約2.8gの生成した析出物、(NEt)HClをロ別し、次にTHFをロータリーエバポレーターで除去した。その操作で黄色の粘着性液体を得た。粗収量は14gであった。得られた生成物を精製するために、得られた液体(14g)を約50mlのCHClに溶解し、次に5%のNaHCO−溶液で振盪抽出した。エマルジョンが生成したが、それはNaClを添加して破壊した。その後、NaSO上で乾燥し、次に濃縮をロータリーエバポレーター上で、そして次にハイブリッドのオイルポンプで実施した。得られた結果は、黄色の粘着性の液体が約9gの収量で得られ、それは0.0267モル、すなわち理論の89%であった。生成物をその後同様にクロマトグラフィで精製した。
1920(分子量344.49)に対するCDCl中でのH−NMR;
H−NMR:CDCl中、499.84MHz;
7.36〜7.34ppm(4H、m、H3)、7.27〜7.24ppm(4H、m、H2)、7.19〜7.17ppm(2H、m、H1)、5.90ppm(1H、m、H9)、5.48ppm(1H、m、H9’)、5.12ppm(1H、m、H6)、3.29ppm(4H、m、H5)、1.80ppm(3H、m、H8)。
13C−NMR:CDCl中、125.69MHz;
166.66ppm(C7)、136.22ppm(C4)、135.73ppm(C8)、129.89ppm(C3)、129.28ppm(C2)、126.70ppm(C1)、126.09ppm(C9)、72.17ppm(C6)、36.53ppm(C5)、18.16ppm(C10)。
【実施例3】
【0070】
「下式化合物の合成」
【化10】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0071】
「反応式」
【化11】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0072】
「試薬」
アクリロイルクロライド
【化12】

【0073】
「実験の部」
先に加温しておいたコンデンサーおよびN導入器付きの三ツ口フラスコを使って、上記で定義した0.03モルのアクリロイルクロライド(2.828g、96重量%)、および50〜100mlの禁止剤フリーのTHF(先に蒸留した)をフラスコに入れた。8.29gの1、3−ビスフェニルスルファニルプロパン−2−オール=0.030モル、および0.030モルのトリエチルアミン「99%」(4.1ml)を滴下ロートに入れた。その溶液を滴下ロートから徐々に滴下した。反応が発熱反応ではないので、冷却は必要ではない。(NEt)HClの白い析出物が形成された。撹拌を室温で更に1.5時間継続し、次に析出物をロ別し、およびTHFをロータリーエバポレーターで除去した。得られた結果は約9.5gの収量で黄色の粘着性の液体であった。精製目的で生成物を50mlの禁止剤フリーのTHFに溶かし、および残っている可能性のある禁止剤を取り除くためにアロックスフリット(Alox frit)でろ過した。THFをロータリーエバポレーターで除去し、および残余のTHFをそれから、ハイブリッドポンプ(1.5〜1.5ミリバール)で除去した。得られた結果は、黄色の粘着性の液体であって、収量は6.8gであり、それは0.02067モル、または理論の68.9%に対応した。
1920(分子量344.49)に対するCDCl中でのH−NMR;
7.33〜7.37ppm(4H、m、H3)、7.24〜7.29ppm(4H、m、H2)、7.16〜7.21ppm(2H,m、H1)、6.225ppm(1H、dd、J(7’、6)=17.1Hz,J(7’、7)=1.22Hz,H7’(trans))、5.93ppm(1H、dd、J(6,7)=10.5Hz,J(6,7’)=17.3Hz,H6)、5.755ppm(1H、dd、J(7,6)=10.4Hz,J(7,7’)=1.22Hz,H7(cis))、5.13〜5.15ppm(1H、m、H5)、3.27ppm(4H、m、H4)。
【実施例4】
【0074】
「下式化合物の合成」
【化13】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0075】
「反応式」
【化14】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0076】
「試薬」
チオフェノール(>98%)
【化15】

1、3−ジクロロプロパン−2−オール(99%)
【化16】

水酸化ナトリウム、99.998%のペレット
【0077】
「実験の部」
次のものを、コンデンサー、滴下ロートおよびN導入器を備えた50mlの三ツ口フラスコにN雰囲気下に最初に加えた:100mlのメタノール中の0.05モルの1、3−ジクロロプロパン−2−オール(99%)(6.449g)。次のものを滴下ロートに導入した:蒸留水50ml中に0.1モルのNaOHと共に溶解した0.1モルのチオフェノール(98%)(11.018g);その混合物を徐々に1、3−ジクロロプロパン−2−オールの溶液中に滴下した。混合物の2/3を加えた後、結果としてややピンクを帯びた白色の析出物が生じ、反応液は温度が上昇した。更に50mlのメタノールを加え、および還流下(70℃)、1晩加熱を継続した。反応経過は、CHClを運転媒体としチオフェノールを対照として、DC法によって追跡した。翌日、反応溶液は透明で、少し灰色がかっていて、油摘と混ざっていた。反応時間は70℃で約20時間であった。
【0078】
溶液を最初にロータリーエバポレーターで濃縮し、次にCHClで振盪抽出し(約100mlで3回)、およびNaSO上で乾燥した。次に濃縮を、まずロータリーエバポレーター上で、次にハイブリッドオイルポンプで実施した(p=1.8〜1.6ミリバール、T=30℃)。
【0079】
「特性解析」:
1、3−ビスフェニルスルファニル−プロパン−2−オール:黄色油状液体で13.63g(0.0481モル);0.05モルの1、3−ジクロロプロパン−2−オールに対する理論収率98.6%;
H−NMR:7.32〜7.35ppm(4H、m、H3)、7.24〜7.29ppm(4H、m、H2)、7.17〜7.21ppm(2H、m、H1)、3.78〜3.82ppm(1H、m、J(5、6)=3.7Hz,H6)、3.18〜3.22ppm(2H、dd、J(4、4’)=13.9Hz、J(4、5)=4.9Hz、H5)、3.01〜3.05ppm(2H、dd、J(4’、4)=13.7Hz、J(4’、5)=7.3Hz、H5’)、2.71ppm(1H、d、J(6、5)=3.4Hz、−OH)
13C−NMR:CDOD中で、125.69MHz:
137.51ppm(C4)、130.50ppm(C3)、130.02ppm(C2)、127.17ppm(C1)、70.08ppm(C6)、40.45ppm(C5)。
【実施例5】
【0080】
「下記式の化合物の合成」
【化17】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0081】
「反応式」
【化18】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0082】
「試薬」
チオフェノール(実施例4に同じ)
2、3−ジクロロプロパン−1−オール(97.0%(GC))
【化19】

水酸化ナトリウム、ペレット99.998%
【0083】
「実験の部」
コンデンサー、滴下ロートおよびN導入器を備えた500mlの三ツ口フラスコを用い、N雰囲気下、100mlのメタノール中に溶解された0.05モルの2、3−ジクロロプロパン−1−オール(97%(GC)(6.449g))を導入した。50mlの蒸留水に溶解したチオフェノール0.1モル(98%)(11.018g)、および50mlの蒸留水に溶解したNaOH0.1モル(4.0g)を滴下ロートに加えた。その溶液を1、3ジクロロプロパン−2−オールの溶液中に徐々に滴下した。結果は少々ピンクの着色であって、および反応溶液は温度が上昇した。反応経過は、CHClを運転媒体としチオフェノールを対照として、DC法によって追跡した。更に50mlのメタノールを加え、および還流下(70℃)、1晩加熱を継続した。翌日には、反応溶液は透明で、少し灰色がかっていて、油摘と混ざっていた。反応時間は70℃でおよそ20時間であった。
【0084】
溶液を最初にロータリーエバポレーターで濃縮し、次にCHClで振盪抽出し(約100mlで3回)、およびNaSO上で乾燥した。次に濃縮を、まずロータリーエバポレーター上で、次にハイブリッドオイルポンプで実施した。
【0085】
得られた結果は、黄色がかった油状液体が12.85(0.0465モル)であった。それは2、3−ジクロロプロパン−1−オール0.5モルに関して、理論の93%の収率に対応した。
【0086】
「特性解析」:
生成物をCD−OD中でH−NMRプラス13C−NMRで解析した。目的化合物が約80%で、20%のプロパン−2−オール誘導体を含有する異性体混合物であった。
【0087】
屈折率はη=1.6255/T=25.3°Cと決定された。
【実施例6】
【0088】
「下式化合物の合成」
【化20】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0089】
「反応式」
【化21】

(上記のMol.gew.は分子量を意味する)
【0090】
「試薬」
ベンゼン−1、3−ジチオール、99%
4−ビニルベンジルクロライド、工業純度90%(GC)
【0091】
「実験の部」
コンデンサー、滴下ロートおよびN導入器を備えた250mlの三ツ口フラスコを用い、0.01モルのジチオールベンゼン(99%)(1.437g)および約30mlの水中に溶解したNaOH(約0.8g)をフラスコ中に導入した。
【0092】
結果は無色の結晶性析出物であった。混合物を40℃に加熱し、および80mlのメタノールを加えた。結果は乳状溶液であった。次に、0.02モル(3.0524g)の4−ビニルベンジルクロライド(>90%)を、エマルジョンが形成される状態で添加した。残余の4−ビニルベンジルクロライドを溶解するために、更に60mlのメタノールを加えた。混合物を70℃に加温し、次に1晩、還流状態に保った(約65℃)。23時間の反応後に反応溶液をろ過し、およびエーテルで抽出した(各回80mlで3回)。エーテル層を合わせて、その後、最初に80mlの1n NaOHで、次に蒸留水で振盪抽出し、次にナトリウム硫酸塩上で乾燥し、およびロータリーエバポレーターで濃縮した(35℃、p=700〜750ミリバール)。
【0093】
黄色がかった油状液体が1.82g得られた。メタノールを加えて、66℃まで加熱した。その場合、ほとんど全てが溶解し、および黄色の色は消失した。加熱ろ過をその後行い、およびフリットを少し暖めた。その場合、無色の針状結晶が直ちに沈殿した。吸引ろ過をG3フリットで行い、および続いて乾燥をハイブリッドオイルポンプで行った(最初のp=120ミリバール、次に0.12ミリバール)。収量は0.76g(0.00203モル)で、理論の20.3%に対応した。
H−NMR:CDCl中、499.84MHz;
7.33ppm(4H、d、J=8.1Hz、H4)、7.22ppm(4H、d、J(5、4)=8.1Hz、H5)、7.815〜7.20ppm(1H、m、H11)、7.01〜7.16ppm(3H、m、2H9、1H10)、6.68ppm(2H、q、J(2,1’)=11.0Hz,J(2,1)=17.6Hz,H2)、5.73ppm(2H、dd、J(1、1’)=1.0Hz、J(1、2)=17.6Hz、H1)、5.22ppm(2H、dd、J(1’、2)=11.0Hz、J(1’、1)=1.0Hz,H1’)、4.05ppm(4H、s、H7)、
13C−NMR:CDCl中で125.69MHz;
C3 137.42ppm、C6 137.25ppm、C8 136.87ppm、C2 136.58ppm、C11 130.23ppm、C10 129.33ppm、C5 129.26ppm、C9 127.59ppm、C4 126.53ppm、C1 113.93ppm、C7 38.56ppm。
【実施例7】
【0094】
実施例1のモノマー1.0gをイルガキュア(Irgarcure)2022の0.2%と混合し、および厚さ0.9ミリのスペーサーによって離隔されシラン処理された2枚のオブジェクトキャリアー(object carriers)の間に充填した。光重合を、銘柄「スーパーアクチニック(Super Actinic)」のUVランプ(ランプ TL−D15W/03、λmax=420nm、照射距離18cm)でN雰囲気下、2時間行った。ポリマーの架橋はエチレングリコールジメタクリレートの3%添加によって達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物の使用であって、少なくとも1つの下式の主モノマーa):
【化1】

ここで、XはOまたはNRであることができ、
YはそれぞれO,SまたはNRであることができ、
Rは直鎖、分岐、または環状の、炭素数1〜6の炭化水素残基であり、
は水素またはメチル残基であり、
は水素、C〜Cのアルキル基残基またはYArであることができ、
は水素、直鎖、分岐、または環状の炭素数1〜6の炭化水素残基、またはアリール基であり、
Ar、ArおよびArはそれぞれ互いに独立に、Yに結合によって、または(−CH)nによって結合しているアリール基であって、ここでnは0、1、2、または3であることができ、およびアリール基は、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、モノまたはジ置換アミノ基から選ばれる1〜4個の置換基によって置換されていてよく、該置換基は前記で定義された炭化水素残基Rから選ばれることができる、主モノマーと、
b)架橋性モノマーと、
c)必要により更に、屈折率、表面特性、ガラス転移温度、強度特性、UV吸収、および/または着色性のような特性を調整するためのモノマーと、
を重合することによって得られるポリマー組成物の眼科的デバイスのための使用。
【請求項2】
モノマーa)においてYがSを表す、請求項1に記載のポリマー組成物の使用。
【請求項3】
次の化合物の1つをモノマーa)として用いる請求項1または請求項2に記載のポリマー組成物の使用:
【化2】

、またはその混合物。
【請求項4】
POEMAまたはHEMAをモノマーc)として用いる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項5】
次式IIの化合物を架橋性モノマーとして用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリマー組成物:
式II
【化3】

これは、2つの末端のそれぞれに各末端不飽和基を有して成り、YはOまたはSを表すことができ、Arは芳香族、特にC〜Cのアルキル残基、C〜Cのアルコキシ残基およびハロゲンから選択される0または1〜4個の置換基で置換されていてよいフェニル残基であって、nは1〜4までの、好ましくは1または2の整数であることができ、RおよびRは結合または(CH残基であって、mは1、2、または3である。
【請求項6】
以下の化合物の1つが架橋性モノマーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の使用:
【化4】

【請求項7】
モノマーa)は少なくとも30重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の使用。
【請求項8】
ポリマーが1.60以上の屈折率を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
眼の移植、特に角膜移植としての請求項1〜8の1つに記載のポリマー組成物の使用。
【請求項10】
組成物がコンタクトレンズ、角膜移植、角膜リング、もしくはインレイまたはIOLのために使用されることを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載の使用。
【請求項11】
モノマーa)と必要によりモノマーb)とから開始剤Iの存在下にプレポリマーを製造し、該プレポリマーに架橋性モノマーc)と必要により更なるモノマーと開始剤IIとを添加し、ならびにその混合物を重合することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1つに定義されるポリマー組成物の製造方法。
【請求項12】
工程1および工程2で用いられる開始剤が同じものであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
開始剤が光によって活性化可能な開始剤であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517508(P2009−517508A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542675(P2008−542675)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011557
【国際公開番号】WO2007/062864
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508161816)コロニス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】CORONIS GMBH
【Fターム(参考)】