高嵩密度を有する焼結性半成コークス粉末
高嵩密度及び高流動性を有する半成コークス粉末を製造する連続的方法において:
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化及び安定化すること;及び
均質な分散液を噴霧乾燥すること。
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化及び安定化すること;及び
均質な分散液を噴霧乾燥すること。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《技術分野》
本発明は、高嵩密度を有する焼結性半成コークス粉末(Halbkokspulver)と、急速且つ連続的な前記焼結性半成コークス粉末の製造方法と、カーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造のための前記焼結性半成コークス粉末の使用と、請求の範囲に記載の方法における中間生成物であるスリップとに関する。
【0002】
《背景技術》
20μm未満の粒度を有するカーボンセラミック及びグラファイトセラミックは、一般に、固体(コークス)及び結合剤を有する2成分系から製造される。特性プロファイルを改良するために、通常、結合剤のコーキング残留物(Verkokungsrueckstand)を増加させる添加剤を使用する。2成分材料には、使用するコークスが炭化の間の成形後で膨張するのに対して、強化結合剤の骨組みが縮むという主な欠点がある。両成分の縮みは、コークスの前処理温度を超えるまで発生しない。この根本的な問題により、構造における微小ひび割れの形成と、この技術を使用して完成したセラミックにおいて達成することのできる強度とが説明される。
【0003】
例えば、CARBOSINT(商標)の焼結性半成コークスによる新たな手法が用いられている。前記焼結性半成コークスの製造は、EP0552422B1に開示されている。半成コークスは炭素材料であって、可溶性ピッチと不可溶性生コークス(unschmelzbarer Gruenkoks)との間の中間物である。前記半成コークスは、場合により250℃未満の酸化との組合せで、ピッチの溶融開始温度〜500℃の間の温度で不完全に炭化させることによって得ることができる。最適にマッチした半成コークスは、セラミック製造における充填コークス及び結合剤としての役割を同時に果たす。粘着性の表面のおかげで、この種の半成コークス粉末は、追加の添加剤を使用せずにダイプレス又は等圧プレスにより加工することができる。焼結性半成コークスは長い間利用可能であったが、それらの有利な特性プロファイルにもかかわらず、以下に説明される理由から、これらの1成分材料はこれまで市場に幅広く普及することがなかった。
【0004】
圧縮のためのコークスの粘着性の利点は、そのような材料を簡単に取り扱うことができないということを同時に意味する。なぜなら、ダイの充填の間で、又は、自動プレスへの供給システムで、前記コークスが塊を形成し付着する傾向があるからである。従って、均一なダイ充填は、はるかに難しいものであり、そして、かなりのコストを必要とする。
【0005】
前記コークスのその他の不利点は、約0.4g/cm3という嵩密度の低さである。一般に、細粒炭素系の成形品(Bauteil auf Basis von Feinkornkohlenstoff)は、成形後に1.2〜1.3g/cm3の幾何学的密度を有しており、このことは、ダイプレスにおいて、少なくも約3倍だけ圧縮される必要があることを意味するものである。密度の倍増は、設備により制御することができる。マルチレベルの軸プレスの場合であっても、高い圧縮係数のために、製造することのできる成形品の複雑性及び設計の自由度が制限される。
【0006】
等圧プレスによる成形品の製造では、コークスの高い粘着性によって、フレキシブルダイの均質な充填がより困難になる。しかしながら、充填時の不均質性に由来する成形品の密度勾配は、次の加工で修正することができない。
【0007】
これらの不利点は、最終形状に近い成形工程を必要とする、見込まれる多くの適用性を妨げるものである。一般的に、機械的後処理は多くの費用を必要とする。このことは、技術的な炭素生成物の製品特性に関する焼結性半成コークスの完全利用の可能性を阻害するものである。
【0008】
これらの不利点を克服し、そして、最終形状に近いカーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の焼結性半成コークス粉末を製造するために、US4985184では、各々の場合に、固形物(Feststoff)の質量に対する0.01〜5重量%の結合剤と0.01〜3重量%の量の非イオン性湿潤剤とを有する炭素粉末を懸濁し、そして、噴霧乾燥により造粒することが提案されている。結合剤としてはメチルセルロース又はヒドロキシセルロースが、そして、湿潤剤としてはアルキルフェノールエチレンオキシドが提案されている。この方法の不利点は、懸濁液の固形分が33%と低いことによって、噴霧造粒の間に水蒸発率を高くすることが余儀なくされ、それによって、加工費が高くなることである。追加加工におけるその他の妨害要因は、添加剤の量が最大8重量%と多いことである。
【0009】
《発明の要約》
従って、本発明は、コークスをプレス加工方法で問題なく処理することを可能にする著しく高い嵩密度及び流動性を有する焼結性半成コークス粉末を提供する目的に基づくものであって、前記焼結性半成コークス粉末によって、セラミック形成体の製造における通常の計量技術を使用することができる。
【0010】
前記目的は、以下の工程:
結合剤少なくとも1つ及び液化剤(Verfluessiger)少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満(好ましくは2分間未満)の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化すること;及び
均質な懸濁液を噴霧乾燥すること;
を含む、連続的に実施されることのできる方法によって達成される。
【0011】
本発明は、以下の工程:
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、少なくとも−50mVに調節するものとする;及び
微粉砕機中に3分間未満(好ましくは2分間未満)の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化すること;
により得ることのできる分散液(スリップ)に更に関するものである。
【0012】
本発明は、噴霧乾燥により得ることのできる、顆粒の形態にある固体材料にも更に関連するものである。
【0013】
噴霧乾燥では、分散液の噴霧された液滴を素早く乾燥させることの結果として、一次粒子〜それよりもかなり大きな自由流動二次粒子への凝集が起こる。噴霧乾燥後に得られる固体粒子は、DIN53468に基づいて測定される安息角18°〜23°、好ましくは18.5°〜22.5°を有する。造粒化されていない材料は、安息角41°を有する。噴霧造粒された生成物の粒度分布d50値は、レーザー回折スペクトロメーター Mastersizer 2000(Malvern)により決定され、そして、60〜100μmである。このことは、噴霧乾燥後に、炭素粒子の50重量%が60〜100μmの直径を有するということを意味する。これは、二次粒子径である。
【0014】
最後に、本発明は、カーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の噴霧乾燥した炭素粒子の使用に関するものである。
【0015】
微粉砕機中での短い滞留時間と噴霧造粒とを有する連続湿式分散の組合せ方法により、EP0552422B1による焼結性半成コークス粉末、例えば、CARBOSINT(商標)の取扱適性が改良される。ほとんど完璧な円形であって、欠陥のない顆粒が得られる(図2)。噴霧造粒が事前の湿式分散なしで実施される場合、添加剤の使用にもかかわらず、噴霧乾燥用の保存容器中での固体材料のかなりの堆積及び噴霧ノズルの目詰まりがある。本発明により得られる試験標本の曲げ強度も、65MPaのUS4985184のものよりもはるかに高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】懸濁液のpHに対する半成コークス粒子のゼータ電位の従属関係を示す図である。
【図2】本発明により処理された半成コークスの走査電子顕微鏡写真である。
【図3】CARBOSINT(商標)の走査電子顕微鏡写真である。
【図4】固形分の関数としての本発明の生成品の嵩密度/押詰め密度を示す図である。
【図5】スリップの固形分55.8%w/wで噴霧塔を通過する供給速度の関数としての嵩密度/押詰め密度を示す図である。
【図6】スリップの固形分の関数としての成形体の密度を示す図である。
【図7】スリップの固形分の関数としての焼結成形体の密度を示す図である。
【図8】任意のスリップ組成及び噴霧性能に対する、噴霧乾燥での供給速度の関数としての密度を示す図である。
【図9】噴霧乾燥での供給速度の関数としての、最大1100℃までの温度で燃焼される成形体の密度を示す図である。
【0017】
焼結性炭素粉末(半成コークス)は、本発明による方法のための出発材料を含む。前記半成コークス粉末の製造はEP0552422B1に記載されており、その開示は本発明の目的に関するものである。この種の炭素粉末は、ビチューメン材料(例えば、コールタール又は芳香族鉱油に由来するタール又はピッチ)を最大5ミリバールの圧力及び少なくとも400℃の最終温度で蒸留すること、蒸留残渣を所望の粒度まで乾式粉砕すること、及び、個々の粒子の核がこれ以上溶解しない程度まで、粉砕した蒸留残渣を、粉末のケーギング(Pulverbackung)が開始する温度より低い温度で酸化させること、により製造することができる。
焼結性半成コークス粉末を、水中に分散させる(スリップ)。分散液中の半成コークス粉末の割合は(分散液の質量に対する)55〜59重量%に調節されることが好ましい。分散液中の固体の割合のレベルは、噴霧乾燥による追加加工性に左右される。固形物の濃度が高すぎる場合には、安定的な噴霧乾燥を実行することができない。しかしながら、一般的に、この割合は、得られる分散液を噴霧乾燥によって更に処理することができるレベルに設定される。
【0018】
分散液用の添加剤としては、液化剤及び結合剤を使用することができる。使用される液化剤は、アルカリを含まない及びアルカリ土類を含まない界面活性物質であり、例えば、市販の物質Dolapix(商標)CA、Dolapix(商標)ET85、Trusan(商標)450、470、480、及び490、並びに、リグニンスルホネート及びホルムアルデヒドとともに製造されるナフタレンスルホン酸(NSF)のポリマーである。分子量分布が再現可能であるので、合成的に製造されたNSFは、可変的な組成を有する天然生成物よりも特に好ましい。液化剤の割合は、固形物の質量に対する0.5〜5重量%であることができる。
【0019】
適当な結合剤は、500〜20000g/mol、好ましくは2000〜6000g/molの分子量を有するポリエチレングリコール類、及び、ポリビニルアルコール類を含む。適当なポリビニルアルコールは、例えばPVA4−88である。結合剤の割合は、固形物の質量に対する0.5〜2.5重量%、好ましくは1〜2重量%である。
【0020】
スリップの所望の安定性を維持するために、ゼータ電位を−45mV未満、好ましくは約−50mVへ調節する。スリップのpHを、少なくとも7、好ましくは8〜12へ調節する。
【0021】
スリップの所望の安定性を保証するために、次の工程では、スリップ分散液を通気流にて連続的に行なわれるボールミル中で湿式粉砕することができる。このことは、水相で個々の粒子を同時に湿らせることによる粒子の解凝集をもたらす。分散液を超音波で処理することにより解凝集を支持することもできる。驚くべきことに、ボールミルでの滞留時間を非常に短くしておくことができる。このことによって、粒度分布における任意の大きな変化を防止する。微粉砕機は、最初に、高いエネルギー導入量を有する分散剤として機能する。
【0022】
分散/粉砕工程の次に実施される噴霧乾燥は、溶液、懸濁液、及びペーストを乾燥させる連続的な方法である。ノズル(液体圧力又は圧縮空気もしくは不活性ガスにより作動する)又は回転するスプレーディスク(4000−50000rev/分)を使用することにより、乾燥させられるべき材料を熱風流(装置に左右される最高300℃までの温度)中で液滴へ噴霧し、それが噴霧塔を通過して落下しながら乾燥して、球形状の細粒を形成する。デザイン又は目的とする用途によって、熱風は、噴霧された噴流に対して平行するか、又は、逆行することができる。得られる乾燥生成物は、一般的に、サイクロンセパレーターにより気流から分離され、そして、そこから放出されることがある。噴霧乾燥/粉砕により得られる粒子は流動性であり、そして、60〜100μmのサイズ分布d50を有する。
【0023】
本発明による噴霧された顆粒の嵩密度は、0.5〜0.6g/cm3であり;押詰め密度(Stampfdichte)は、約0.6g/cm3である。
【0024】
以下の実施例により、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0025】
実施例1−焼結性半成コークス粉末の製造
軟化点50℃(Mettler)、DIN51921によるキノリン不溶物(QI)の含有量13.2重量%、及び、DIN51906によるトルエン不溶物(TI)の含有量32.7重量%を有するコールタールピッチを、攪拌型エバポエーター中で圧力1ミリバールに最大460℃で蒸留する。蒸留残渣は、350℃の流動点(Tottoli)を有し、そして、QIを57.4重量%、TIを91.9重量%、及び揮発性成分を10.9重量%含有する。これを振動ミル中で平均粒度30μmまで乾式粉砕する。粉末は、約280℃でケークとなりはじめる。予期される発熱反応の場合であっても粉末のケーギングを除外することを確実にするために、180℃の酸化温度を選択する。
粉砕された残渣の一部を空気の存在下に180℃で酸化させ、この場合、1時間の間隔をあけてその都度サンプルをとる。サンプルを30MPaでプレスして試験標本を形成する。この試験標本を、温度勾配1K/分を有する室窯中で、不活性ガス下に1000℃まで加熱する。
10時間の酸化時間の後では、標本の任意の膨張がもはや起こらない。従って、粉末が個々の粒子のコア中で溶解しない状態をつくるために、所要の酸化時間は10時間である。従って、残りの粉砕残渣は、180℃で10時間空気中に酸化させられる。酸化粉末は、初期軟化点250℃、酸素含有量2.9重量%、及び、光学異方性15容量%を有する。
前記酸化粉末は、QIを70.9重量%、TIを94.5重量%、及び揮発性成分0.1重量%を含有する。
【0026】
実施例2−炭素分散液(スリップ)の製造
18個の試験サンプルの組成を表4に示す。
スリップの製造のために、3000gのCARBOSINT(商標)、2375gの脱イオン水、液化剤として60gのNSF、及び60gの結合剤(PEG4000)を攪拌型反応器へ入れる。8〜9μmの粒度分布d50を有する固形物をゆっくりと添加して、最大限に均一な混合を達成する。1時間の分散時間の後で、pHを25%アンモニア溶液でpH10まで調節し、そして、更に24時間にわたって均質化する。その後、Dyno_Mill(商標)KDL Pilot type(Willy A. Bachofen (WAB) AG)のビーズミル中で微細分散(均質化)する。粉砕ビーズは、セリウム安定化した酸化ジルコニウムからなり、そして、1.2〜1.7mmの直径を有する。微粉砕機は、最大85%の充填度まで粉砕ビーズにより充填される。攪拌ディスクの周速は10m/秒である。移送式ポンプ(Verdraengerpumpe)によって微粉砕機へ供給されるべき体積流量は、700mL/分である。ビーズミル中での滞留時間は、50〜80秒である。ビーズミルを通過した後、懸濁液を噴霧塔へ供給し、乾燥温度まで加熱する。
【0027】
実施例3−噴霧乾燥
実施例2で得られるスリップを、並流で実施されるLTC型の噴霧塔(Nubilosa)で噴霧乾燥する。この噴霧塔は、最大乾燥空気温度350℃で、水分蒸発率が最大7.5kg/時間のパイロットプラント噴霧塔である。電気エアヒーターは、火力12kWを有する。塔の円筒部分は長さが4mであり、直径は800mmである。噴霧塔の先端部で、乾燥されるべき水性分散液は、直径1.5〜2mmを有する外部から混合する2流体ノズル(aussen mischende Zweistoffduese)を介して、乾燥室へ供給される。噴霧には、3バールの圧縮空気過剰圧力で、約3nm3/時間の圧縮空気消費量が必要とされる。乾燥塔の底部には、乾燥空気流から微粉を分離するジェットフィルター及びサイクロンがある。生成物は、装置の最も低い地点に閉じ込められる。乾燥ガス温度180〜275℃での懸濁液処理量2〜8L/時間で実施された。
18回の試験運転での噴霧造粒の状態を表5に示す。
【0028】
実施例4−嵩密度及び押詰め密度の試験
DIN51705により嵩密度を決定し、そして、DIN51916により押詰め密度を決定した。達成可能な嵩密度及び押詰め密度は、固形分が増えるとともに増加し(図4)、そして、噴霧塔を通過する供給量が増えるとともに最大値を通過する(図5)。測定される嵩密度は、0.5〜0.6g/cm3である。DIN51916による押詰め密度では、最大値0.61g/cm3が達成される。
試験(図4及び5に結果が示されている)により、固形分が増えるとともに、又は、噴霧塔を通過する供給量が増えるとともに成形体の密度が減少することが示される。
高嵩密度が必要となるプレスにおける加工性の場合と同様に、成分の特性を最適化する必要もある。従って、固形分を(各々の場合にスリップの質量に対する)58重量%を超えない且つ56重量%を下回らないように設定することが有利であることがある。
【0029】
実施例5−成形体の密度
プレス中での粉末(噴霧顆粒)の追加加工において、粉末を成形体へプレスし、そして、燃焼した。プレス又は燃焼した成形体での決定的な特徴は、プレス又は燃焼後に達成される密度、及び、燃焼後の曲げ強度である。従って、圧縮又は燃焼した成形体の密度を、固形分及び供給量に関して決定した。結果をグラフにより図6、7、8、及び9に示す。
曲げ強度は、DIN51902に基づいて決定された。前記曲げ強度は、試験標本を1100バールのプレス圧力を用いて圧縮した後で、最大200MPaであった。噴霧造粒なしでは、180MPaの曲げ強度のみが得られる。
得られた測定値のまとめを表3に示す。
【0030】
実施例6−連続式分散とバッチ式分散との比較
滞留時間1分未満のビーズミル中での連続式分散及びその後の噴霧乾燥を有する組合せの方法の利点は、ドラムミル中での2時間のバッチ式分散及びその後の噴霧造粒と比較すると、得られる生成物の材料値が更に良好であるということである。より高い嵩密度及び押詰め密度は、顆粒の追加加工が改善されるという効果を有する。なぜなら、嵩密度の低い粉末よりも、ダイへの充填がより良好であるからである。このことは、炭化後の成形体の曲げ強度(この値も増加している)からも分かる。測定結果を、以下の表4に示す。更に、連続運転は、空間/時間の収率がより高いので、より経済的である。更に、連続運転はより容易にオートメーション化することができる。
【表1】
【0031】
実施例7−使用される液化剤の比較
生成物の特性に対する液化剤NSF及びリグニンスルホネートの効果を試験した。液化剤としてNSFを使用することによって、リグニンスルホネートの使用と比べて、噴霧顆粒で得られる特性値と、それらから得られる成形体の特性値とを更に改良することができる。結果を表2に示す。
【表2】
【0032】
実施例8−結合剤
本発明により得られる生成物に対する結合剤の影響を試験した。結合剤を添加せずに噴霧造粒することにより、結合剤を添加したものと同程度の生成物の材料値を達成することができる。結果を表3に示す。
【表3】
【0033】
実施例9−安息角
安息角は、DIN53468に基づいて決定された。決定のために、サンプル材料60gをじょうご(dtop=140mm及びdbottom=10mm、高さ=140mm)から注入し、そして、形成された円錐を測定した(ここで、Dは直径を表す)。
噴霧造粒化材料では、18.9〜22.1°の安息角が見出され、そして、CARBOSINT(商標)開始材料では約41°の安息角が見出される。
【0034】
実施例10−粒度分布
粒度をレーザー回折分光分析により測定し、そして、粒度分布d50値を決定した。結果を以下に示す。
CARBOSINT(商標)開始材料:d50=7−8μm
CARBOSINT(商標)顆粒: d50=60−100μm
【発明の詳細な説明】
【0001】
《技術分野》
本発明は、高嵩密度を有する焼結性半成コークス粉末(Halbkokspulver)と、急速且つ連続的な前記焼結性半成コークス粉末の製造方法と、カーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造のための前記焼結性半成コークス粉末の使用と、請求の範囲に記載の方法における中間生成物であるスリップとに関する。
【0002】
《背景技術》
20μm未満の粒度を有するカーボンセラミック及びグラファイトセラミックは、一般に、固体(コークス)及び結合剤を有する2成分系から製造される。特性プロファイルを改良するために、通常、結合剤のコーキング残留物(Verkokungsrueckstand)を増加させる添加剤を使用する。2成分材料には、使用するコークスが炭化の間の成形後で膨張するのに対して、強化結合剤の骨組みが縮むという主な欠点がある。両成分の縮みは、コークスの前処理温度を超えるまで発生しない。この根本的な問題により、構造における微小ひび割れの形成と、この技術を使用して完成したセラミックにおいて達成することのできる強度とが説明される。
【0003】
例えば、CARBOSINT(商標)の焼結性半成コークスによる新たな手法が用いられている。前記焼結性半成コークスの製造は、EP0552422B1に開示されている。半成コークスは炭素材料であって、可溶性ピッチと不可溶性生コークス(unschmelzbarer Gruenkoks)との間の中間物である。前記半成コークスは、場合により250℃未満の酸化との組合せで、ピッチの溶融開始温度〜500℃の間の温度で不完全に炭化させることによって得ることができる。最適にマッチした半成コークスは、セラミック製造における充填コークス及び結合剤としての役割を同時に果たす。粘着性の表面のおかげで、この種の半成コークス粉末は、追加の添加剤を使用せずにダイプレス又は等圧プレスにより加工することができる。焼結性半成コークスは長い間利用可能であったが、それらの有利な特性プロファイルにもかかわらず、以下に説明される理由から、これらの1成分材料はこれまで市場に幅広く普及することがなかった。
【0004】
圧縮のためのコークスの粘着性の利点は、そのような材料を簡単に取り扱うことができないということを同時に意味する。なぜなら、ダイの充填の間で、又は、自動プレスへの供給システムで、前記コークスが塊を形成し付着する傾向があるからである。従って、均一なダイ充填は、はるかに難しいものであり、そして、かなりのコストを必要とする。
【0005】
前記コークスのその他の不利点は、約0.4g/cm3という嵩密度の低さである。一般に、細粒炭素系の成形品(Bauteil auf Basis von Feinkornkohlenstoff)は、成形後に1.2〜1.3g/cm3の幾何学的密度を有しており、このことは、ダイプレスにおいて、少なくも約3倍だけ圧縮される必要があることを意味するものである。密度の倍増は、設備により制御することができる。マルチレベルの軸プレスの場合であっても、高い圧縮係数のために、製造することのできる成形品の複雑性及び設計の自由度が制限される。
【0006】
等圧プレスによる成形品の製造では、コークスの高い粘着性によって、フレキシブルダイの均質な充填がより困難になる。しかしながら、充填時の不均質性に由来する成形品の密度勾配は、次の加工で修正することができない。
【0007】
これらの不利点は、最終形状に近い成形工程を必要とする、見込まれる多くの適用性を妨げるものである。一般的に、機械的後処理は多くの費用を必要とする。このことは、技術的な炭素生成物の製品特性に関する焼結性半成コークスの完全利用の可能性を阻害するものである。
【0008】
これらの不利点を克服し、そして、最終形状に近いカーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の焼結性半成コークス粉末を製造するために、US4985184では、各々の場合に、固形物(Feststoff)の質量に対する0.01〜5重量%の結合剤と0.01〜3重量%の量の非イオン性湿潤剤とを有する炭素粉末を懸濁し、そして、噴霧乾燥により造粒することが提案されている。結合剤としてはメチルセルロース又はヒドロキシセルロースが、そして、湿潤剤としてはアルキルフェノールエチレンオキシドが提案されている。この方法の不利点は、懸濁液の固形分が33%と低いことによって、噴霧造粒の間に水蒸発率を高くすることが余儀なくされ、それによって、加工費が高くなることである。追加加工におけるその他の妨害要因は、添加剤の量が最大8重量%と多いことである。
【0009】
《発明の要約》
従って、本発明は、コークスをプレス加工方法で問題なく処理することを可能にする著しく高い嵩密度及び流動性を有する焼結性半成コークス粉末を提供する目的に基づくものであって、前記焼結性半成コークス粉末によって、セラミック形成体の製造における通常の計量技術を使用することができる。
【0010】
前記目的は、以下の工程:
結合剤少なくとも1つ及び液化剤(Verfluessiger)少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満(好ましくは2分間未満)の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化すること;及び
均質な懸濁液を噴霧乾燥すること;
を含む、連続的に実施されることのできる方法によって達成される。
【0011】
本発明は、以下の工程:
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を、前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を、少なくとも−50mVに調節するものとする;及び
微粉砕機中に3分間未満(好ましくは2分間未満)の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化すること;
により得ることのできる分散液(スリップ)に更に関するものである。
【0012】
本発明は、噴霧乾燥により得ることのできる、顆粒の形態にある固体材料にも更に関連するものである。
【0013】
噴霧乾燥では、分散液の噴霧された液滴を素早く乾燥させることの結果として、一次粒子〜それよりもかなり大きな自由流動二次粒子への凝集が起こる。噴霧乾燥後に得られる固体粒子は、DIN53468に基づいて測定される安息角18°〜23°、好ましくは18.5°〜22.5°を有する。造粒化されていない材料は、安息角41°を有する。噴霧造粒された生成物の粒度分布d50値は、レーザー回折スペクトロメーター Mastersizer 2000(Malvern)により決定され、そして、60〜100μmである。このことは、噴霧乾燥後に、炭素粒子の50重量%が60〜100μmの直径を有するということを意味する。これは、二次粒子径である。
【0014】
最後に、本発明は、カーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の噴霧乾燥した炭素粒子の使用に関するものである。
【0015】
微粉砕機中での短い滞留時間と噴霧造粒とを有する連続湿式分散の組合せ方法により、EP0552422B1による焼結性半成コークス粉末、例えば、CARBOSINT(商標)の取扱適性が改良される。ほとんど完璧な円形であって、欠陥のない顆粒が得られる(図2)。噴霧造粒が事前の湿式分散なしで実施される場合、添加剤の使用にもかかわらず、噴霧乾燥用の保存容器中での固体材料のかなりの堆積及び噴霧ノズルの目詰まりがある。本発明により得られる試験標本の曲げ強度も、65MPaのUS4985184のものよりもはるかに高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】懸濁液のpHに対する半成コークス粒子のゼータ電位の従属関係を示す図である。
【図2】本発明により処理された半成コークスの走査電子顕微鏡写真である。
【図3】CARBOSINT(商標)の走査電子顕微鏡写真である。
【図4】固形分の関数としての本発明の生成品の嵩密度/押詰め密度を示す図である。
【図5】スリップの固形分55.8%w/wで噴霧塔を通過する供給速度の関数としての嵩密度/押詰め密度を示す図である。
【図6】スリップの固形分の関数としての成形体の密度を示す図である。
【図7】スリップの固形分の関数としての焼結成形体の密度を示す図である。
【図8】任意のスリップ組成及び噴霧性能に対する、噴霧乾燥での供給速度の関数としての密度を示す図である。
【図9】噴霧乾燥での供給速度の関数としての、最大1100℃までの温度で燃焼される成形体の密度を示す図である。
【0017】
焼結性炭素粉末(半成コークス)は、本発明による方法のための出発材料を含む。前記半成コークス粉末の製造はEP0552422B1に記載されており、その開示は本発明の目的に関するものである。この種の炭素粉末は、ビチューメン材料(例えば、コールタール又は芳香族鉱油に由来するタール又はピッチ)を最大5ミリバールの圧力及び少なくとも400℃の最終温度で蒸留すること、蒸留残渣を所望の粒度まで乾式粉砕すること、及び、個々の粒子の核がこれ以上溶解しない程度まで、粉砕した蒸留残渣を、粉末のケーギング(Pulverbackung)が開始する温度より低い温度で酸化させること、により製造することができる。
焼結性半成コークス粉末を、水中に分散させる(スリップ)。分散液中の半成コークス粉末の割合は(分散液の質量に対する)55〜59重量%に調節されることが好ましい。分散液中の固体の割合のレベルは、噴霧乾燥による追加加工性に左右される。固形物の濃度が高すぎる場合には、安定的な噴霧乾燥を実行することができない。しかしながら、一般的に、この割合は、得られる分散液を噴霧乾燥によって更に処理することができるレベルに設定される。
【0018】
分散液用の添加剤としては、液化剤及び結合剤を使用することができる。使用される液化剤は、アルカリを含まない及びアルカリ土類を含まない界面活性物質であり、例えば、市販の物質Dolapix(商標)CA、Dolapix(商標)ET85、Trusan(商標)450、470、480、及び490、並びに、リグニンスルホネート及びホルムアルデヒドとともに製造されるナフタレンスルホン酸(NSF)のポリマーである。分子量分布が再現可能であるので、合成的に製造されたNSFは、可変的な組成を有する天然生成物よりも特に好ましい。液化剤の割合は、固形物の質量に対する0.5〜5重量%であることができる。
【0019】
適当な結合剤は、500〜20000g/mol、好ましくは2000〜6000g/molの分子量を有するポリエチレングリコール類、及び、ポリビニルアルコール類を含む。適当なポリビニルアルコールは、例えばPVA4−88である。結合剤の割合は、固形物の質量に対する0.5〜2.5重量%、好ましくは1〜2重量%である。
【0020】
スリップの所望の安定性を維持するために、ゼータ電位を−45mV未満、好ましくは約−50mVへ調節する。スリップのpHを、少なくとも7、好ましくは8〜12へ調節する。
【0021】
スリップの所望の安定性を保証するために、次の工程では、スリップ分散液を通気流にて連続的に行なわれるボールミル中で湿式粉砕することができる。このことは、水相で個々の粒子を同時に湿らせることによる粒子の解凝集をもたらす。分散液を超音波で処理することにより解凝集を支持することもできる。驚くべきことに、ボールミルでの滞留時間を非常に短くしておくことができる。このことによって、粒度分布における任意の大きな変化を防止する。微粉砕機は、最初に、高いエネルギー導入量を有する分散剤として機能する。
【0022】
分散/粉砕工程の次に実施される噴霧乾燥は、溶液、懸濁液、及びペーストを乾燥させる連続的な方法である。ノズル(液体圧力又は圧縮空気もしくは不活性ガスにより作動する)又は回転するスプレーディスク(4000−50000rev/分)を使用することにより、乾燥させられるべき材料を熱風流(装置に左右される最高300℃までの温度)中で液滴へ噴霧し、それが噴霧塔を通過して落下しながら乾燥して、球形状の細粒を形成する。デザイン又は目的とする用途によって、熱風は、噴霧された噴流に対して平行するか、又は、逆行することができる。得られる乾燥生成物は、一般的に、サイクロンセパレーターにより気流から分離され、そして、そこから放出されることがある。噴霧乾燥/粉砕により得られる粒子は流動性であり、そして、60〜100μmのサイズ分布d50を有する。
【0023】
本発明による噴霧された顆粒の嵩密度は、0.5〜0.6g/cm3であり;押詰め密度(Stampfdichte)は、約0.6g/cm3である。
【0024】
以下の実施例により、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0025】
実施例1−焼結性半成コークス粉末の製造
軟化点50℃(Mettler)、DIN51921によるキノリン不溶物(QI)の含有量13.2重量%、及び、DIN51906によるトルエン不溶物(TI)の含有量32.7重量%を有するコールタールピッチを、攪拌型エバポエーター中で圧力1ミリバールに最大460℃で蒸留する。蒸留残渣は、350℃の流動点(Tottoli)を有し、そして、QIを57.4重量%、TIを91.9重量%、及び揮発性成分を10.9重量%含有する。これを振動ミル中で平均粒度30μmまで乾式粉砕する。粉末は、約280℃でケークとなりはじめる。予期される発熱反応の場合であっても粉末のケーギングを除外することを確実にするために、180℃の酸化温度を選択する。
粉砕された残渣の一部を空気の存在下に180℃で酸化させ、この場合、1時間の間隔をあけてその都度サンプルをとる。サンプルを30MPaでプレスして試験標本を形成する。この試験標本を、温度勾配1K/分を有する室窯中で、不活性ガス下に1000℃まで加熱する。
10時間の酸化時間の後では、標本の任意の膨張がもはや起こらない。従って、粉末が個々の粒子のコア中で溶解しない状態をつくるために、所要の酸化時間は10時間である。従って、残りの粉砕残渣は、180℃で10時間空気中に酸化させられる。酸化粉末は、初期軟化点250℃、酸素含有量2.9重量%、及び、光学異方性15容量%を有する。
前記酸化粉末は、QIを70.9重量%、TIを94.5重量%、及び揮発性成分0.1重量%を含有する。
【0026】
実施例2−炭素分散液(スリップ)の製造
18個の試験サンプルの組成を表4に示す。
スリップの製造のために、3000gのCARBOSINT(商標)、2375gの脱イオン水、液化剤として60gのNSF、及び60gの結合剤(PEG4000)を攪拌型反応器へ入れる。8〜9μmの粒度分布d50を有する固形物をゆっくりと添加して、最大限に均一な混合を達成する。1時間の分散時間の後で、pHを25%アンモニア溶液でpH10まで調節し、そして、更に24時間にわたって均質化する。その後、Dyno_Mill(商標)KDL Pilot type(Willy A. Bachofen (WAB) AG)のビーズミル中で微細分散(均質化)する。粉砕ビーズは、セリウム安定化した酸化ジルコニウムからなり、そして、1.2〜1.7mmの直径を有する。微粉砕機は、最大85%の充填度まで粉砕ビーズにより充填される。攪拌ディスクの周速は10m/秒である。移送式ポンプ(Verdraengerpumpe)によって微粉砕機へ供給されるべき体積流量は、700mL/分である。ビーズミル中での滞留時間は、50〜80秒である。ビーズミルを通過した後、懸濁液を噴霧塔へ供給し、乾燥温度まで加熱する。
【0027】
実施例3−噴霧乾燥
実施例2で得られるスリップを、並流で実施されるLTC型の噴霧塔(Nubilosa)で噴霧乾燥する。この噴霧塔は、最大乾燥空気温度350℃で、水分蒸発率が最大7.5kg/時間のパイロットプラント噴霧塔である。電気エアヒーターは、火力12kWを有する。塔の円筒部分は長さが4mであり、直径は800mmである。噴霧塔の先端部で、乾燥されるべき水性分散液は、直径1.5〜2mmを有する外部から混合する2流体ノズル(aussen mischende Zweistoffduese)を介して、乾燥室へ供給される。噴霧には、3バールの圧縮空気過剰圧力で、約3nm3/時間の圧縮空気消費量が必要とされる。乾燥塔の底部には、乾燥空気流から微粉を分離するジェットフィルター及びサイクロンがある。生成物は、装置の最も低い地点に閉じ込められる。乾燥ガス温度180〜275℃での懸濁液処理量2〜8L/時間で実施された。
18回の試験運転での噴霧造粒の状態を表5に示す。
【0028】
実施例4−嵩密度及び押詰め密度の試験
DIN51705により嵩密度を決定し、そして、DIN51916により押詰め密度を決定した。達成可能な嵩密度及び押詰め密度は、固形分が増えるとともに増加し(図4)、そして、噴霧塔を通過する供給量が増えるとともに最大値を通過する(図5)。測定される嵩密度は、0.5〜0.6g/cm3である。DIN51916による押詰め密度では、最大値0.61g/cm3が達成される。
試験(図4及び5に結果が示されている)により、固形分が増えるとともに、又は、噴霧塔を通過する供給量が増えるとともに成形体の密度が減少することが示される。
高嵩密度が必要となるプレスにおける加工性の場合と同様に、成分の特性を最適化する必要もある。従って、固形分を(各々の場合にスリップの質量に対する)58重量%を超えない且つ56重量%を下回らないように設定することが有利であることがある。
【0029】
実施例5−成形体の密度
プレス中での粉末(噴霧顆粒)の追加加工において、粉末を成形体へプレスし、そして、燃焼した。プレス又は燃焼した成形体での決定的な特徴は、プレス又は燃焼後に達成される密度、及び、燃焼後の曲げ強度である。従って、圧縮又は燃焼した成形体の密度を、固形分及び供給量に関して決定した。結果をグラフにより図6、7、8、及び9に示す。
曲げ強度は、DIN51902に基づいて決定された。前記曲げ強度は、試験標本を1100バールのプレス圧力を用いて圧縮した後で、最大200MPaであった。噴霧造粒なしでは、180MPaの曲げ強度のみが得られる。
得られた測定値のまとめを表3に示す。
【0030】
実施例6−連続式分散とバッチ式分散との比較
滞留時間1分未満のビーズミル中での連続式分散及びその後の噴霧乾燥を有する組合せの方法の利点は、ドラムミル中での2時間のバッチ式分散及びその後の噴霧造粒と比較すると、得られる生成物の材料値が更に良好であるということである。より高い嵩密度及び押詰め密度は、顆粒の追加加工が改善されるという効果を有する。なぜなら、嵩密度の低い粉末よりも、ダイへの充填がより良好であるからである。このことは、炭化後の成形体の曲げ強度(この値も増加している)からも分かる。測定結果を、以下の表4に示す。更に、連続運転は、空間/時間の収率がより高いので、より経済的である。更に、連続運転はより容易にオートメーション化することができる。
【表1】
【0031】
実施例7−使用される液化剤の比較
生成物の特性に対する液化剤NSF及びリグニンスルホネートの効果を試験した。液化剤としてNSFを使用することによって、リグニンスルホネートの使用と比べて、噴霧顆粒で得られる特性値と、それらから得られる成形体の特性値とを更に改良することができる。結果を表2に示す。
【表2】
【0032】
実施例8−結合剤
本発明により得られる生成物に対する結合剤の影響を試験した。結合剤を添加せずに噴霧造粒することにより、結合剤を添加したものと同程度の生成物の材料値を達成することができる。結果を表3に示す。
【表3】
【0033】
実施例9−安息角
安息角は、DIN53468に基づいて決定された。決定のために、サンプル材料60gをじょうご(dtop=140mm及びdbottom=10mm、高さ=140mm)から注入し、そして、形成された円錐を測定した(ここで、Dは直径を表す)。
噴霧造粒化材料では、18.9〜22.1°の安息角が見出され、そして、CARBOSINT(商標)開始材料では約41°の安息角が見出される。
【0034】
実施例10−粒度分布
粒度をレーザー回折分光分析により測定し、そして、粒度分布d50値を決定した。結果を以下に示す。
CARBOSINT(商標)開始材料:d50=7−8μm
CARBOSINT(商標)顆粒: d50=60−100μm
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高嵩密度及び高流動性を有する半成コークス粉末を製造する連続的方法であって、
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化及び安定化すること;及び
均質な分散液を噴霧乾燥すること;
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒドを使用することにより製造されるナフタレンスルホン酸のポリマーを液化剤として使用し、そして、PEG2000〜12000を結合剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
湿式粉砕をボールミル中で連続的に実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
分散液のpHを、少なくとも7に調節することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
半成コークス粉末少なくとも50重量%と、結合剤0.5〜2重量%と、液化剤0.5〜5重量%とを含む水性分散液であって、ここで、結合剤の重量%及び液化剤の重量%が前記分散液の固形物の質量に対するものである、前記水性分散液。
【請求項6】
DIN51705による嵩密度少なくとも0.52g/cm3及びDIN51916による押詰め密度少なくとも0.59g/cm3を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により得られる、半成コークス顆粒。
【請求項7】
粒度d50が60〜100μmであることを特徴とする、請求項6に記載の半成コークス顆粒。
【請求項8】
圧縮による追加加工後及び1100℃までの温度での炭化後で、密度少なくとも1.65g/cm3及び曲げ強度少なくとも160MPaを有するカーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の、請求項1〜4のいずれか一項あるいは請求項6又は7により得られる半成コークス粉末の使用。
【請求項1】
高嵩密度及び高流動性を有する半成コークス粉末を製造する連続的方法であって、
結合剤少なくとも1つ及び液化剤少なくとも1つに加えて、焼結性炭素粉末(半成コークス)を水へ分散させること、ここで、分散液中の炭素の割合を前記分散液の質量に対する少なくとも50重量%に調節し、そして、前記分散液のゼータ電位を−50mV未満に調節するものとする;
微粉砕機中に3分間未満の滞留時間で連続的に湿式粉砕することにより、前記分散液を均質化及び安定化すること;及び
均質な分散液を噴霧乾燥すること;
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒドを使用することにより製造されるナフタレンスルホン酸のポリマーを液化剤として使用し、そして、PEG2000〜12000を結合剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
湿式粉砕をボールミル中で連続的に実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
分散液のpHを、少なくとも7に調節することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
半成コークス粉末少なくとも50重量%と、結合剤0.5〜2重量%と、液化剤0.5〜5重量%とを含む水性分散液であって、ここで、結合剤の重量%及び液化剤の重量%が前記分散液の固形物の質量に対するものである、前記水性分散液。
【請求項6】
DIN51705による嵩密度少なくとも0.52g/cm3及びDIN51916による押詰め密度少なくとも0.59g/cm3を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により得られる、半成コークス顆粒。
【請求項7】
粒度d50が60〜100μmであることを特徴とする、請求項6に記載の半成コークス顆粒。
【請求項8】
圧縮による追加加工後及び1100℃までの温度での炭化後で、密度少なくとも1.65g/cm3及び曲げ強度少なくとも160MPaを有するカーボンセラミック及びグラファイトセラミックの製造用の、請求項1〜4のいずれか一項あるいは請求項6又は7により得られる半成コークス粉末の使用。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2012−510417(P2012−510417A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537947(P2011−537947)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065538
【国際公開番号】WO2010/060865
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511129432)リュツゲルス ジャーマニー ゲー エム ベー ハー (1)
【氏名又は名称原語表記】RUETGERS Germany GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065538
【国際公開番号】WO2010/060865
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511129432)リュツゲルス ジャーマニー ゲー エム ベー ハー (1)
【氏名又は名称原語表記】RUETGERS Germany GmbH
【Fターム(参考)】
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