説明

高平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物

【課題】液晶表示素子及び有機EL表示素子等に使用される電極やカラーフィルタの平坦化膜に好適である、高透明性、高平坦化性を達成する熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)成分:炭素原子数が3乃至16であって末端に不飽和結合を有する側鎖を持ち、数平均分子量が2,000乃至30,000であるアクリル重合体、
(B)成分:ビスマレイミド化合物、
(C)溶剤を含有する平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物、並びに該組成物を用いて得られる硬化膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦化に優れる平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物及びそれから得られる硬化膜に関する。より詳しくは、段差被覆時の平坦性が高い平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物及びその硬化膜、並びに該硬化膜を用いた各種材料に関するものである。この平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は特に液晶ディスプレイやELディスプレイにおける層間絶縁膜、カラーフィルタ等のオーバーコート剤に好適である。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子、有機EL(electroluminescent)素子、固体撮像素子などの光デバイスでは、素子表面が製造工程中に溶剤や熱にさらされるのを防ぐために保護膜が設けられる。この保護膜は保護する基板との密着性が高く耐溶剤性が高いだけでなく、透明性、耐熱性等の性能も良好であることが要求される。
【0003】
一方、このような保護膜は、カラー液晶表示装置や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの保護膜として使用する場合には、一般にその下地基板のカラーフィルタあるいはブラックマトリックス樹脂を平坦化する性能、すなわち平坦化膜としての性能を有することが要求される。特にSTN方式やTFT方式のカラー液晶表示素子を製造する際には、カラーフィルタ基板と対向基板との張り合わせ精度を非常に厳密に行う必要があり、基板間のセルギャップを均一にすることが必要不可欠である。加えてカラーフィルタを透過する光の透過率を維持するため、その保護膜であるこれら平坦化膜には高い透明性が必要となる。
【0004】
また、液晶表示素子や有機EL素子の電極の保護膜として使用する場合には、近年、電極の段差が大きくなっていることもあり、少しでも高い平坦化性能を有する材料が求められている。
【0005】
一般に斯様な用途には透明性の高いアクリル樹脂が用いられている。この種のアクリル樹脂は熱硬化あるいは光硬化することで耐熱性及び耐溶剤性を付与することができる性質を有している。
一般的な熱硬化の方法としてはヒドロキシ基を有するアクリル樹脂にメチロール系の架橋剤と酸触媒を添加する方法、並びにカルボキシル基を含有するアクリル樹脂にエポキシ系の架橋剤を添加する方法がよく知られている。また、エポキシ基とカルボキシル基をアクリル樹脂中に導入することで熱硬化させる方法(特許文献1参照)、並びに熱ラジカル開始剤と一分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物を用いる方法(特許文献2参照)も従来提案されている。
また、一般的な光硬化の方法としてはアクリル樹脂に一分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物と光ラジカル開始剤を添加する方法、ヒドロキシ基を含有するアクリル樹脂にメチロール系の架橋剤と光酸発生剤を添加する方法が知られている。
しかしながら、従来の熱硬化性又は光硬化性のアクリル樹脂から形成された硬化膜の平坦化率は十分に高いものとは言えなかった。
【特許文献1】特開2000−103937号公報
【特許文献2】特開2000−119472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、液晶表示素子及び有機EL表示素子等に使用される電極及びカラーフィルタの平坦化膜に好適である、高透明性、
高平坦化性を達成する熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、本発明を見出すに至った。
すなわち、第1観点として、下記(A)成分、(B)成分及び(C)溶剤を含有する平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
(A)成分:炭素原子数が3乃至16であって末端に不飽和結合を有する側鎖を持ち、数平均分子量が2,000乃至30,000であるアクリル重合体、
(B)成分:ビスマレイミド化合物、
(C)溶剤。
第2観点として、上記(A)成分において、末端に不飽和結合を有する側鎖が脂肪族の側鎖である、第1観点に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
第3観点として、(A)成分が、末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する側鎖を持つアクリル重合体である、第1観点又は第2観点に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
第4観点として、(B)成分が、芳香族ビスマレイミド化合物である、第1観点乃至第3観点のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
第5観点として、(A)成分の100質量部に基づいて、10乃至200質量部の(B)成分を含有する、第1観点乃至第4観点のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
第6観点として、第1観点乃至第5観点のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
第7観点として、第6観点に記載の硬化膜を有する表示素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は、透明性が高い上に平坦化に優れ、よって高い透明性及び高い平坦性を有する硬化膜を提供できる。そのため、本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜は、液晶表示素子、有機EL表示素子等に使用される電極又はカラーフィルタの保護膜又は平坦化膜として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は、下記(A)成分のアクリル重合体、(B)成分のビスマレイミド化合物及び(C)溶剤を含有し、且つ、所望により(D)成分の界面活性剤を含有する組成物である。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、アクリル重合体の構造中に、炭素原子数が3乃至16であって末端に不飽和結合を有する側鎖(以下、特定側鎖と称す。)を持ち、且つポリスチレン換算数平均分子量(以下、数平均分子量と称す。)が2,000乃至30,000であるアクリル重合体である。
本発明において、アクリル重合体とはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを用いて単独重合もしくは共重合して得られた重合体を指す。
(A)成分のアクリル重合体は、斯かる構造を有するアクリル重合体であればよく、アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0011】
然しながら、(A)成分のアクリル重合体は、数平均分子量が30,000を超えて過
大なものであると、段差に対する平坦化性能が低下する一方、数平均分子量が2,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性が低下する場合がある。従って、数平均分子量が2,000乃至30,000の範囲内にあるものである。
またより好ましくは、上記特定側鎖に含まれる不飽和二重結合1mol当量当り、(A)成分のアクリル重合体200乃至1,300g当量であることが望ましい。
【0012】
上述のように、(A)成分の特定側鎖は、炭素原子数が3乃至16であって、末端に不飽和結合を有するものであれば特に限定されない。中でも式(1)のように表される特定側鎖が好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中、R1は、炭素原子数が1乃至14であり、脂肪族基、環式構造を含む脂肪
族基及び芳香族基からなる群から選ばれる有機基又はそれらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。そして、R1には、エステル結合、エーテル結合
、アミド結合、ウレタン結合等の結合を含んでいても良い。
【0015】
1の具体例を挙げると、下記式(A−1)乃至式(A−10)等が挙げられる。
【0016】
【化2】

【0017】
前記式(1)で表される特定側鎖の中でも、特に、脂肪族の側鎖である特定側鎖が好ましい。
より好ましくは、前記式(1)で表される特定側鎖の中でも、特に、末端がアクリロイル基又はメタクリロイル基である特定側鎖が好ましい。
またさらに好ましくは、前記式(1)で表される特定側鎖に含まれる不飽和二重結合は、(A)成分のアクリル重合体200乃至1,300g当量に対して1mol当量含まれることが望ましい。
【0018】
上記のような特定側鎖を有するアクリル重合体を得る方法は、特に限定されないが、例えば、あらかじめラジカル重合等の重合方法によって、特定官能基を有するアクリル重合体を生成し、その特定官能基と、末端に不飽和結合を有する化合物(以下、特定化合物と称す。)とを反応させることによって特定側鎖を生成して、(A)成分であるアクリル重合体とすることができる。
【0019】
ここで、前記特定官能基とは、カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、フェノール性ヒドロキシ基、イソシアネート基等からなる群から選ばれる一種又は複数種の官能基を意味する。
また、前記特定化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、イソシアナートエチルメタクリレート、イソシアナートエチルアクリレート、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0020】
このようにして得られるアクリル重合体の中で、好ましい特定側鎖を有するアクリル重合体は、式(1)で表される側鎖を有するアクリル重合体であり、即ち、式(2)で表される構造を有するアクリル重合体である。
【0021】
【化3】

【0022】
(式(2)中、R1は前述の式(1)にて定義したように炭素原子数が1乃至14であり
、脂肪族基、環式構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる有機基又はそれらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。そして、R1
は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合等の結合を含んでいても良い。R2は水素原子又はメチル基を表す。)
【0023】
上記特定側鎖を生成させる反応において、好ましい前記特定官能基と前記特定化合物の組み合わせは、カルボキシル基とエポキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、フェノール性ヒドロキシ基とエポキシ基、カルボキシル基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、ヒドロキシ基と酸クロリド等の組み合わせである。より好ましくは、カルボキシル基とグリシジルメタクリレート、及びヒドロキシ基とイソシアネートエチルメタクリレートである。
【0024】
上記の特定官能基を有するアクリル重合体は、特定化合物と反応するための官能基(特定官能基)を有するモノマー、すなわち、カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、フェノール性ヒドロキシ基又はイソシアネート基等を有するモノマーからなる群から選ばれるモノマーを必須の構成成分として重合して得られる共重合体であって、その数平均分子量が2,000乃至25,000のものである。その際、特定官能基を有するモノマーは、単独でも良いし、重合中に反応しない組み合わせであれば複数種を併用しても良い。
以下に、特定官能基を有するアクリル重合体を得るために必要な、特定官能基を有するモノマーの具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,7−オクタジエンモノエポキサイド、等が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2−(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0028】
活性水素を有するアミノ基を有するモノマーとしては、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0030】
さらに、イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネート、m−テトラメチルキシレンイソシアネート、等が挙げられる。
【0031】
また、本発明においては、特定官能基を有するアクリル重合体を得る際に、特定官能基を有するモノマーと共重合可能な、非反応性官能基を有するモノマーを併用することができる。
非反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマ
ンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0033】
前記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0036】
前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いる特定官能基を有するアクリル重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、特定官能基を有するモノマー、それ以外の共重合可能な非反応性官能基を有するモノマー及び所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより、得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有するアクリル重合体を構成するモノマー及び特定官能基を有するアクリル重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(C)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
このようにして得られる特定官能基を有するアクリル重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0038】
次いで、得られた特定官能基を有するアクリル重合体に特定化合物を反応させて、(A)成分であるアクリル重合体(以下、特定共重合体と称す。)を得ることができる。その際、通常は、特定官能基を有するアクリル重合体の溶液を用いる。
具体的には、例えば、カルボキシル基を有するアクリル重合体の溶液に、グリシジルメタクリレートをベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の触媒存在下、80℃乃至150℃の温度で反応させることにより、特定共重合体を得ることができる。その際、用いられる溶剤は、特定共重合体を構成するモノマー及び特定共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(C)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
このようにして得られる特定共重合体は、通常、この特定共重合体が溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0039】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹
拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
本発明においては、上記特定共重合体の粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する(C)溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
また、本発明においては、(A)成分のアクリル重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0040】
<(B)成分>
本発明の(B)成分であるビスマレイミド化合物は下記の一般式(3)で示される。
【0041】
【化4】

【0042】
式中、R3は、脂肪族基、環式構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれ
る有機基又はそれらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。そして、R3には、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合等の結合を
含んでいても良い。
【0043】
このようなビスマレイミド化合物の具体例としては、例えば、N,N’−3,3−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3−ジエチル−5,5−ジメチル)−4,4−ジフェニル−メタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3−ジフェニルスルホンビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−p−ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルエタンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−(メチレンジ−ジテトラヒドロフェニル)ビスマレイミド、N,N’−(3−エチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3、3−ジメチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3、3−ジエチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3、3−ジクロロ)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−イソホロンビスマレイミド、N,N’−トリジンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−ナフタレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−5−メトキシ−1,3−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−プロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1−ビス(3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1−ビス(3−ク
ロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1−ビス(3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、3,3−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ペンタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、N,N’−エチレンジマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレンビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−p−キシレンビスマレイミド、N,N’−1,3−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、等が挙げられる。
【0044】
これらのビスマレイミド化合物は特に上記のものに限定されるものではない。そして、これらは、単独又は2種以上の成分を併用することが可能である。
【0045】
これらのビスマレイミドのうち2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3−ジエチル−5,5−ジメチル)−4,4−ジフェニル−メタンビスマレイミド等の芳香族ビスマレイミドが高い耐熱性の点から好ましい。
【0046】
また、これらのビスマレイミドのうちにおいては、分子量1000以下のものが、より高い平坦化性を得るので好ましい。
【0047】
本発明において(B)成分のビスマレイミド化合物の使用割合は、(A)成分のアクリル重合体100質量部に対して10乃至200質量部であることが好ましく、より好ましくは20乃至150質量部であり、特に好ましくは50乃至130質量部である。この割合が過小である場合には、平坦化性が低下し、過大である場合には硬化膜の透過率が低下したり塗膜が荒れたりすることがある。
【0048】
<(C)溶剤>
本発明に用いる(C)溶剤は、(A)成分及び(B)成分を溶解し、且つ所望により添加される後述の(D)成分などを溶解するものであり、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0049】
斯様な(C)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、一種単独で、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0050】
<(D)成分>
(D)成分は、界面活性剤である。本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物にあっては、その塗布性を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に界面活性剤を含有することができる。
【0051】
(D)成分の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられ、特にフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。この種の界面活性剤としては、例えば、住友スリーエム(株)製、大日本インキ化学工業(株)製或いは旭硝子(株)製等の市販品を用いることができる。これら市販品は、容易に入手することができるので、好都合である。その具体的な例としては、エフトップEF301、EF303、EF352((株)ジェムコ製)、メガファックR−30、R−08、BL−20、F171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC−4432、FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
これら(D)成分の界面活性剤は、一種単独で、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0052】
界面活性剤が使用される場合、その含有量は、平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物中に通常1質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下である。(D)成分の含有量が1質量%を超える量に設定されても、上記塗布性の改良効果は鈍くなり、経済的でなくなる。
【0053】
<その他添加剤>
更に、本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、又は多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を含有することができる。
【0054】
<平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物>
本発明の平坦化膜形成用樹脂組成物は、(A)成分のアクリル重合体、(B)成分のビスマレイミド化合物及び(C)溶剤を含有し、それぞれ所望により、(D)成分の界面活性剤及びその他添加剤のうち一種以上を更に含有することができる組成物である。
【0055】
中でも、本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分の100質量部に基づいて、10乃至200質量部の(B)成分を含有し、それらが(C)溶剤に溶解した平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
[2]:上記[1]の組成物において、更に(D)成分を1質量%以下含有する平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
【0056】
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、例えば1乃至80質量%であり、また例えば5乃至60質量%であり、又は10乃至50質量%である。ここで、固形分とは、平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の全成分から(C)溶剤を除いたものを指す。
【0057】
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、その調製法としては、例えば、(A)成分を(C)溶剤に溶解し、この溶液に(B)成分、及
び所望により(D)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、あるいはこの調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0058】
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の調製にあたっては、(C)溶剤中における重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができ、この場合、この(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分、(D)成分などを入れて均一な溶液とする際に、濃度調整を目的としてさらに(C)溶剤を追加投入してもよい。このとき、特定共重合体の形成過程で用いられる(C)溶剤と、平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の調製時に濃度調整のために用いられる(C)溶剤とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0059】
而して、調製された平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物の溶液は、孔径が0.2μm程
度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0060】
<塗膜及び硬化膜>
本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を半導体で用いられる基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属例えばアルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理することにより、平坦化に優れる平坦化膜形成用熱硬化性樹脂膜が形成される。
【0061】
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃乃至140℃、0.5乃至10分間である。
【0062】
また、上記平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物から形成される平坦化膜形成用熱硬化性樹脂膜の膜厚は、例えば0.1乃至30μmであり、また例えば0.2乃至10μmであり、更に例えば0.2乃至5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0063】
ポストベークとしては、一般に、温度140℃乃至250℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5乃至30分間、オーブン中の場合には30乃至90分間処理するという方法が採られる。
【0064】
以上のように、本発明の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物により、十分に基板の段差を平坦化でき、平坦化に優れ、高透明性を有する平坦化膜を形成することができる。
【0065】
そのため、例えば、本発明による平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料として好適であり、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0067】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
BTEAC:ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
NMP:N−メチルピロリドン
DPHA:日本化薬(株)製 KAYARAD DPHA(商品名)
BMI1:N,N’−(3,3−ジエチル−5,5−ジメチル)−4,4−ジフェニル−メタンビスマレイミド
BMI2:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン
BMI3:N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド
R30:大日本インキ化学工業(株)製 メガファック R−30(商品名)
【0068】
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られる特定共重合体及び共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803L及びKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
【0069】
<合成例1>
共重合体を構成するモノマー成分として、MAA(40.0g)、MMA(40.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(2g)を使用し、これらを溶剤PGMEA(120g)中において重合反応させることにより、Mn6,300、Mw10,600である共重合体溶液(共重合体濃度:40質量%)を得た(P1)。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
【0070】
<合成例2>
上記共重合体(P1)200gにGMA(26.0g)、BTEAC(1.1g)、PGMEA(39g)を加えて反応させることにより(A)成分の溶液であるMn7,200、Mw13,200の(A)成分(特定共重合体)の溶液(特定共重合体濃度:40質量%)を得た(P2)。なお、反応温度を90乃至120℃に調整した。
【0071】
<実施例1乃至6及び比較例1乃至5>
次の表1に示す組成に従い、(A)成分の溶液に、(B)成分、及び(C)溶剤、更に(D)成分を所定の割合で混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とすることにより、各実施例及び各比較例の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の各組成物について、それぞれ、塗膜の評価、平坦化性の評価、NMP耐性の評価、並びに高温焼成後の光透過率(透明性)の評価を行った。
【0074】
[塗膜の評価]
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハに塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。塗膜ができない場合やタックが入る場合を×、正常な塗膜が形成される場合を○とした。結果を表2に示す。
【0075】
[平坦化性の評価]
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、それぞれ高さ0.5μm、ライン幅50μm、ライン間スペース120μmの段差基板(ガラス製)上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、膜厚2.1μmの硬化膜を形成した。
段差基板ライン上の塗膜とスペース上の塗膜の膜厚差を測定した(図1参照)。平坦化率(DOP)=100×{1−(塗膜の膜厚差(μm))/(段差基板の高さ(0.5μm)}の式を用いて平坦化率を求めた。結果を表2に示す。
【0076】
ライン幅(10μm、30μm、50μm)及びライン間スペース(10〜100μm)を種々に変えた高さ0.5μmの段差基板を準備し、実施例2及び比較例2の平坦化膜形成熱硬化性樹脂組成物を用いて、上記[平坦化性の評価]の手順に倣って硬化膜を形成し、塗膜の膜厚差より平坦化率(DOP)を求めた。
得られた結果を図2(実施例2)及び図3(比較例2)に示す。
【0077】
[NMP耐性の評価]
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、それぞれシリコンウェハにスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で1
20秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分間ホットプレート上においてポストベークを行い、膜厚2.2μmの硬化膜を形成した。この硬化膜をにNMP中に60秒間浸漬させた後、100℃にて60秒間乾燥し膜厚を測定した。NMP浸漬後の膜厚変化がないものを○、浸漬後に膜厚の減少が見られたものを×とした。結果を表2に示す。
【0078】
[高温焼成後の光透過率(透明性)の評価]
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、それぞれ石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この膜を温度230℃で30分間ホットプレート上においてポストベークを行い、硬化膜を形成した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADSU UV−2550型番)を用いて400nmの波長の透過率を測定した。結果を表2に示す。
なお、高温焼成後の光透過率において、平坦化膜としての要求性能は90%以上である。
【0079】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果は下記表2の通りとなった。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例1乃至3は、塗膜形成性が良好で、得られた塗膜60%以上の高い平坦化率を有し、NMPに対し耐性が見られた。さらに、高温焼成後も平坦化膜として要求される90%以上の光透過率(透明性)を達成した。
一方、比較例1はプリベーク時、塗膜にタックが入り、硬化膜のNMP耐性も低かった。比較例2はNMP耐性が見られたものの平坦化性が低かった。比較例3は均一な塗膜を得ることができず、特性の評価に至らなかった。
【0082】
また、ライン幅及びライン間スペースを種々に変えて平坦化率を測定した結果(図2及び図3)をみると、実施例2においてはライン幅およびライン間スペースの変化に殆ど依存することなく高い平坦化率(90%前後)を維持したものの、比較例2においてはライン間スペースの増大とともに平坦化率が減少する傾向を示し、特にライン幅が増大するにつれ、平坦化率の減少傾向は顕著に現れるとする結果を示した。
【0083】
以上のように、本発明の平坦化に優れる平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物によると、
従来品の優れた性能(光透過性)を維持した上で、平坦化性において実用面で際立った改良となる結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明による平坦化に優れる平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料として好適であり、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は段差基板に平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を塗布した際に形成された硬化膜を示すモデル図である。
【図2】図2は実施例2の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、種々の段差基板に塗布した際の平坦化率(DOP)の変化を示すグラフである。
【図3】図3は比較例2の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物を、種々の段差基板に塗布した際の平坦化率(DOP)の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)溶剤を含有する平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
(A)成分:炭素原子数が3乃至16であって末端に不飽和結合を有する側鎖を持ち、数平均分子量が2,000乃至30,000であるアクリル重合体、
(B)成分:ビスマレイミド化合物、
(C)溶剤。
【請求項2】
上記(A)成分において、末端に不飽和結合を有する側鎖が脂肪族の側鎖である、請求項1に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する側鎖を持つアクリル重合体である、請求項1又は請求項2に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、芳香族ビスマレイミド化合物である、請求項1乃至請求項3のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分の100質量部に基づいて、10乃至200質量部の(B)成分を含有する、請求項1乃至請求項4のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一項に記載の平坦化膜形成用熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を有する表示素子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−120876(P2008−120876A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304114(P2006−304114)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】