説明

高度廃水処理方法

【課題】 活性汚泥法では栄養塩であるリン・窒素を十分に除去できない。このためこれらのリン・窒素を含んだ二次処理水が公共用水域に放流されているため、湖沼のみならず閉鎖性海域においても富栄養化の問題が発生している。活性汚泥法で処理した後の二次処理水からリン・窒素を、短時間で効率良く除去することができる二次処理水の高度廃水処理方法を提供する。
【解決手段】 活性汚泥法で処理した二次処理水に有機物を添加した後、先ずポーラスコンクリートブロックと接触処理させ、次にリン吸着材と接触処理することによって極めて高い効率でリンと窒素を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥法を用いて汚水を処理した後の二次処理水に尚残留しているリンや窒素を効率的に除去する二処理水の高度廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的には下水は最初沈殿池で沈殿し易い物質を沈殿させ、その沈殿汚泥を取り除いた下水は反応タンクに送られる。この反応タンク内では活性汚泥法により好気性微生物が有機物を分解しフロックを形成する。そして、次に最終沈殿池でフロック(活性汚泥)を沈殿によって取り除き、きれいな水(上澄水)を消毒設備に送り塩素と接触させて消毒をおこなっている。この消毒した水(二次処理水)を公共用水域に放流している。
【0003】
ところが、この活性汚泥法では栄養塩であるリンや窒素を十分に除去できない。これらのリンや窒素を含んだ二次処理水が公共用水域に放流され、湖沼のみならず閉鎖性海域においても富栄養化の問題が発生している。
【表1】







【0004】
水域の富栄養化は、元来、流域からの窒素、リン等の栄養塩類の供給により閉鎖的な湖沼の水が徐々に肥沃化される現象を指すものであった。近年、人口、産業の集中等により、湖沼に加えて東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖性海域においても窒素、リン等の栄養塩類の流入が増加した。これにより藻類等が増殖繁茂し、その水質が累進的に悪化する赤潮等の現象がみられるところがあり、水質保全上問題となっている。
このため、湖沼においては透明度の低下や水色の変化による美観の劣化のほか、その水を原水とした水道におけるろ過障害や異臭味問題等種々の障害が生じている。また、海域においては赤潮や青潮による漁業被害等が問題となっている。
【0005】
この問題を解決するため、行政は、湖沼については、昭和57年に窒素及び燐に係る環境基準を設定し、また、窒素及び燐に係る排水基準は昭和60年に設定している。更に、湖沼水質保全特別措置法に基づき窒素・燐に係る汚濁負荷量規制を実施している。
海域については、昭和55年から「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき栄養塩類の削減指導を、東京湾、伊勢湾においても、昭和57年から富栄養化防止対策を始めている。平成13年の第5次水質総量規制をうけて、総量削減計画ではCODの一層の削減を図るとともに、富栄養化の原因物質である窒素及びリンの総合的な削減を推進するため工場・事業場に対しては通常の排水規制に加え、汚濁負荷量(排水濃度×排水量)についての総量規制基準が適用されている。
【0006】
一方、リンや窒素を除去する廃水処理技術としては、種々の方法が開発されている。
リンでは、例えば生物化学的処理方法(例えば、活性汚泥法や生物膜法等)、凝集剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照)、電気分解による方法(例えば、特許文献2参照)、リン酸マグネシウムアンモニウム・6水塩(MAP)を用いる方法(例えば、特許文献3参照)、多孔質ろ材を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、湿式酸化処理方法(例えば、特許文献5参照)等が例示される。
また、窒素では、生物化学的処理方法(例えば、活性汚泥法や生物膜法等)、電気分解による方法(例えば、特許文献2参照)、多孔質ろ材を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、触媒湿式酸化処理方法(例えば、特許文献6参照)等が例示される。
【0007】
【特許文献1】特開2001−38382号公報
【特許文献2】特開2000−334465号公報
【特許文献3】特開平11−10194号公報
【特許文献4】特開平7−96290号公報
【特許文献5】特開平5−317869号公報
【特許文献6】特開平7−47372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの方法は煩雑であり、また高コストである。
本発明は、活性汚泥法を用いて汚水(下水や生活排水を含む)を処理した後の二次処理水に尚残留しているリンや窒素を、従来よりも簡単な材料で、しかも簡易な方法で、且つ、極めて低コストで効率的に除去することができる二次処理水の高度廃水処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポーラスコンクリートブロックとリン吸着材を用いて、8時間のような短期間に二次処理水中の全リン・全窒素濃度を下げる方法を提供するものである。尚、現行の高度処理法の滞留時間は12〜16時間であり、一般的な活性汚泥法の滞留時間は4〜8時間である。したがって、本発明者らが提案する本方法は従来一般的な活性汚泥法と併用しても処理時間に制約が加わるものではない。
【0010】
本発明者らは、安価に製造できるポーラスコンクリートブロックの連続空隙を有する多孔性に着目し、該連続空隙内表面やポーラスコンクリートブロックの表面にバイオフィルムを形成させて二次処理水の生物的脱窒・脱リンを行い、更に該生物的脱窒・脱リン処理の後に、リン吸着材によって尚残留する無機性リン酸イオンを吸着・除去することによって、二次処理水中の全リン・全窒素濃度を著しく低下させることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
上記課題を解決するための、本発明の二次処理水の高度廃水処理方法は、下水や生活廃水等の汚水を活性汚泥法によって処理した後の二次処理水を対象とし、該二次処理水を先ずポーラスコンクリートブロックと接触させてポーラスコンクリートブロック上の生物膜によって処理し、次にリン吸着材で処理することを特徴とするものである。
【0012】
すなわち、本発明は、活性汚泥法で処理した後の二次処理水を、先ずポーラスコンクリートブロックで処理し、次にリン吸着材で処理することを特徴とする高度廃水処理方法である(請求項1)。
そして、ポーラスコンクリートブロックの連続空隙率が15〜35%であることを特徴とする請求項1記載の高度廃水処理方法である(請求項2)。
さらに、リン吸着材が火山灰と硫酸第一鉄とからなることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の高度廃水処理方法である(請求項3)。
また、二次処理水をポーラスコンクリートブロックで処理する際に、九十九折の流路にポーラスコンクリートブロックを設置することを特徴とする請求項1、請求項2、及び請求項3記載の高度廃水処理方法である(請求項4)。
【0013】
二次処理水中に溶存している窒素の形態としては、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素がある。また、リンの形態としては、無機性リン酸イオンと有機リンとがある。
本発明の二処理水の高度廃水処理方法では、二次処理水を先ずポーラスコンクリートブロックと接触させてポーラスコンクリートブロック上の生物膜によって二次処理水中の有機リン、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素を同化することによって水中から除去し、さらに嫌気層によって脱窒により窒素を除去する。また、ポーラスコンクリートブロックはカルシウムを多く含むため無機リンがカルシウムと不溶性の塩を形成し、無機リンも除くことができる。
更に、ポーラスコンクリートブロックで除ききれなかった無機リンをリン吸着材と接触させることによって吸着・除去できる。
【0014】
本発明に用いられるポーラスコンクリートブロックは、特にその形状・性質を限定されるものではないが、二次処理水と接触する面積(比表面積)が多い程好ましい。形状としては、直方体、立方体、球形、非球形等の何れの形状でも良い。連続空隙率は、15〜35%が好ましい。15%以下だとゴミ等により連続空隙が閉塞する可能性が高くなり、また、比表面積が小さくなり二次処理水との接触効率が低下する。逆に35%以上だと強度的に問題を生じる。ポーラスコンクリートブロックの圧縮強度は最低限ハンドリング強度が確保されていれば問題なく、約10N/mm2以上あれば問題はない。
【0015】
また、ポーラスコンクリートブロックの材料としては通常のポーラスコンクリートブロックを製造する材料であれば良く、ポルトランドセメント、混合セメント、及びエコセメント等の水硬性材料、砕石、再生骨材、及び軽量骨材等の粗骨材、砂及び再生骨材等の細骨材、混和剤等が例示される。また、フライアッシュ、スラグ、シリカ質粉末等を混入しても良い。
【0016】
本発明に用いられるリン吸着材は、火山灰と硫酸第一鉄とを混合・焼成したものである。該混合・焼成品は脆い性質を有しているため、使用時にはネット、不織布、金網等の通水性袋、通水性容器等に入れて使用するのが好ましい。形態としては塊状、粒状、粗粉、または微粉状でも良い。また、水硬性材料や樹脂等でブロック状に成形しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の二次処理水の高度廃水処理方法について説明する。
本発明の二処理水の高度廃水処理方法は、二次処理水を先ずポーラスコンクリート上の生物膜によって処理を行うものである。本処理過程では、二次処理水中に溶解している有機性窒素やアンモニア性窒素を生物膜上の硝化菌によって硝酸性窒素に変え、二次処理水中に最初から含まれる硝酸性窒素と共に更に脱窒菌によって窒素ガスに変えた後、大気中へ放出させるものである。
また、ポーラスコンクリート上の生物膜によって、BOD(生物学的酸素要求量)を低下させることが可能であり、二次処理水中の有機物を無機性酸化物と二酸化炭素に容易に変換することが可能となる。
【0018】
本発明に用いられるリン吸着材は、無機リンとのみ化学的に結合することができる。本発明の二処理水の高度廃水処理方法では、活性汚泥法によって処理した二次処理水を対象水としているため、該二次処理水中には有機リンが極めてすくないものと考えられる。即ち、有機リンは活性汚泥法によって微生物によって既に微生物中に取り込まれているためである。しかも有機リンを取り込んだ該微生物はフロック(活性汚泥)として最終沈殿池で沈殿・除去されてしまうため、微生物の死滅等により二次処理水中に再び放出されることもない。仮に二次処理水中に有機リンが残留していたとしても、該有機リンは、本発明の二処理水の高度廃水処理方法の前半の処理(ポーラスコンクリートブロックによる生物的脱リン処理)によって除去されている。
【0019】
本発明による二処理水の高度廃水処理方法では、ポーラスコンクリート上の微生物による脱窒能を活性化するため酢酸ナトリウム水溶液等の有機物を添加する必要がある。
【0020】
本発明による二処理水の高度廃水処理方法に用いるポーラスコンクリートブロックは、有機物その他の汚泥等でポーラスコンクリートブロックの連続空隙が閉塞したり、ポーラスコンクリートブロックの表面に大量に付着した場合は、該ポーラスコンクリートを取り出し、水洗い等の簡単な操作によって有機物その他の汚泥等を簡単に除去できるので、何度も再利用でき経済的である。
【0021】
以上のことより、本発明による二処理水の高度廃水処理方法は、下水処理場または下水処理装置等で活性汚泥法によって処理された二次処理水を対象とする。下水処理装置としては、単独浄化槽、合併浄化槽、集落下水処理装置等が例示される。
この二次処理水を対象とする場合、本発明による二処理水の高度廃水処理方法は、極めて効率的で安価である。また、メンテナンスも容易である。
【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1
実験に供した人工二次処理水について説明する。
人工二次処理水の調製:
全有機炭素(TOC)1ppm、全リン(TP)2.0ppm、全窒素(TN)20.0ppmになるように、200リットルの水道水に、ペプトン2.3g、Na2HPO41.82g、NaNO312.2gを添加・溶解し人工二次処理水を調製した。
【0024】
次にポーラスコンクリートブロックについて説明する。
ポーラスコンクリートブロックの製造:
ポーラスコンクリートブロックの組成:
(kg/m3
水 38.0
早強ポルトランドセメント 145.0
骨材〔5号砕石〕 1426.0
細骨材〔珪砂7号〕 174.0
混和材〔太平洋セメント(株)製「ポアミックス」(商品名)〕 29.0
【0025】
型枠(100×100×100mm)内に、上記配合のコンクリートを詰め、Vicon(櫻井建材産業(株)製、VIPAO−156)で成型、4時間65℃で養生した後、脱枠してポーラスコンクリートブロックを得た。
このポーラスコンクリートブロックの連続空隙率は約28%、圧縮強度は約12N/mm2であった。
【0026】
次にリン吸着材について説明する。
リン吸着材の製造:
火山灰(関東ローム)と硫酸第一鉄とを重量比10:1で混合し、450〜550℃で1時間焼成した。該焼成物をポリプロピレン製網目状袋に詰めて使用した。
【0027】
水質浄化:
上述のように調製した二次処理水を200リットル容量のコンテナ(第一槽)に貯え、該コンテナにホースで連結した50リットル容量のコンテナ(第ニ槽)内に上述のように製造したポーラスコンクリートブロック28個を九十九折の流路に設置した。
ここで、コンテナ(第二槽)内を九十九折の流路にし、該流路にポーラスコンクリートブロックを設置するのは、限られた処理空間内でポーラスコンクリートブロックとの接触回数を多くするためである。
さらに、ポーラスコンクリートブロックの設置したコンテナを上述のように製造したリン吸着材を40kg入れた50リットル容量のコンテナ(第三層)にホースで連結した。この時のポーラスコンクリートブロックおよびリン吸着材を入れた各コンテナの実質の空容積は約18リットルであった。
二次処理水は、第一槽側面上部から第二槽底部へ流入し、更に第二槽側面上部から第三層底部へ導かれ、そして第三槽側面上部から8時間後に排出されるように装置を組んだ。
また、第一槽と第二層とを連結する部分のみ送水装置を組込み、108リットル/日で送水・処理した。また、第二槽には、有機物(炭素量)濃度が第二槽内の最終濃度が25.0ppmになるように酢酸ナトリウム水溶液を添加した。この酢酸の添加は、生物膜上の微生物の脱窒能を活性化するために添加するものである。
【0028】
二次処理水および第三槽から排出された処理水のリン酸イオン、窒素、及び有機物(炭素量)の測定結果を示す。
【表2】

【0029】
表1に示したように、本発明による二処理水の高度廃水処理方法によれば、全リン酸イオンで除去率92.5%、全窒素で除去率93.5%、有機物(炭素量)で除去率92.4%である。
【0030】
この結果からも明らかなように、本発明によれば、例えば、東京都の下水処理場の放流水の全リン濃度の平均値1.2ppm(平成14年度実績)を0.1ppm以下に、全窒素16.6ppm(平成14年度実績)を1.1ppm以下にと、現状の十分の一以下にすることができる。
【0031】
以上説明したように本発明に係わる二処理水の高度廃水処理方法によれば、活性汚泥法では十分に除去できずに、二次処理水に尚残留しているリンや窒素を極めて効率良く除去することができ、且つ処理に要する時間も従来の活性汚泥法に係わる時間と同程度で処理できる効果がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥法で処理した後の二次処理水を、先ずポーラスコンクロートブロックで処理し、次にリン吸着材で処理することを特徴とする高度廃水処理方法。
【請求項2】
ポーラスコンクリートブロックの連続空隙率が15〜35%であることを特徴とする請求項1記載の高度廃水処理方法。
【請求項3】
リン吸着材が火山灰と硫酸第一鉄とからなることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の高度廃水処理方法。
【請求項4】
二次処理水をポーラスコンクリートブロックで処理する際に、九十九折の流路にポーラスコンクリートブロックを設置することを特徴とする請求項1、請求項2、及び請求項3記載の高度廃水処理方法。


【公開番号】特開2006−110518(P2006−110518A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303020(P2004−303020)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(503116338)
【出願人】(391013427)株式会社豊栄 (2)
【Fターム(参考)】