高強力複合材料および関連するプロセス
高強度および他の特性を示す複合材料が開示される。これの複合材料は、1以上のマトリックス材料内に分散した1以上のナノ材料を含む。これらのナノ材料は、例えばカーボンナノチューブおよび/またはナノファイバーのような種々の形をとることができる。マトリックス材料は、ガラス溶融シリカまたは金属が可能である。また、ナノチューブおよび/またはナノファイバーを、複合材料の製造中に流動するマトリックス材料中に容易に分散させ、均一に配列させる種々のプロセスおよび手順が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年6月9日に出願された米国仮出願No.60/812,389に基づく優先権を主張しているもので、ここでは参照のために導入される。
【0002】
本発明は、高強度性および他の有利な特性を示すナノ材料またはナノ構造物を用いた複合材料に関する。本発明はまたこのような複合材料を製造する種々のプロセスに関する。本発明は、ナノチューブおよびナノファイバーのようなナノ構造物を利用した複合材料に関連する特定の応用を見出し、特にこれらを参照して説明される。しかしながら、本発明は他の同様な応用に関して同様に適用可能であることが理解される。例えば、本発明は、ナノチューブおよびナノファイバー以外の、またはこれに加えて、他のナノ構造物を用いた複合材料およびプロセスに同様に関連する。
【背景技術】
【0003】
ナノ材料の発見、特にカーボンから形成されるナノ材料は、多くの研究者にとって大きな関心を有するものであった。これらの関心は種々のプロセスや応用を発展させ、それらの材料の独特の性質が明らかにされてきた。多くの潜在的な応用分野の中で、恐らく最も興味深いものは、ナノチューブまたは他のナノ構造物およびデバイスを用いる工業的複合材料の発達である。これらの材料を用いる現代の製品の例としては、例えば、スペースエレベーター、室温における超伝導性ワイヤおよびデバイス、並びに近破壊不能の装甲物があげられる。
【0004】
不幸なことに、複合材料、特にナノチューブまたは他のナノ構造物を用いてナノ複合マトリックスを形成することによって材料の性質を改善する方法、特にガラス、セラミックまたは金属に基づく材料には種々の困難があり、欠点を生ずるものであった。これらの欠点は、主としてファンデワールス力によりマトリックス材料内でナノチューブが分散し難いことを含み、またマトリックス中でナノチューブの配列および配向が困難であること、複合マトリックス内でナノチューブのサイズが短いこと、および工業スケールのプロセスではランダムに配向したナノチューブを扱うことが困難であることを含む。
【0005】
ナノ材料およびそれらの応用における現在の関心に先立って、複合材料を形成することによって材料の物理的性質を改善する種々の方法が発明されてきた。ガラスやセラミックの強度を増加させるためのこのようなアプローチは、ガラスまたはセラミック材料中に比較的大型の繊維または繊維束を導入することである。典型的には、このような繊維は炭素またはシリコンカーバイドからなるものである。この技術は、例えば1985年にRoeder et al.に対して付与されたドイツ特許DE3516920に記載されている。しかしながら、この技術は、ナノ材料に対するものではなく、マクロサイズの材料およびそれらの応用を目標にしたものである。従ってそのような方法で、ナノ材料を用い、導入されたナノ材料の顕著な性質を示す複合材料を得る方法が要望されていた。
【0006】
カーボンナノチューブを用いる複合材料に関して以前から研究が行われてきたが、特に非特許文献1において、Cha et al.は、銅粉内に均一に植えられたカーボンナノチューブの複合粉を加工するプロセスを述べている。このプロセスは“分子レベルの混合(molecular-level mixing)”と称され、得られた複合物は、極めて高い強度を有すると言われている。このプロセスは、従来知られた複合材料に比べて利点を有するものであるが、溶媒中でカーボンナノチューブを表面の機能化により懸濁させ、このカーボンナノチューブ懸濁液と銅イオンを混合し、次いで乾燥、焼成、および還元操作を行うことという、多くのプロセス操作を用いるものである。そのため、この方法は大規模な工業レベルで行うにはコストが掛かると思われる。さらに、この方法は金属マトリックス材料に限定されるようであり、ガラスやセラミックマトリックス材料に使用することができない。さらに、Cha et al.によって採用されたこれらの方法は、マトリックス材料中のナノチューブの貧弱な分散性、マトリックス中のナノチューブの貧弱な配列および配向性、複合材料中のサイズの欠陥に関連するナノチューブの短い長さ、および大規模なプロセスにおけるナノチューブのハンドリングに関連する困難性の問題を解決していない。
【0007】
また技術者は、工業プロセスのようにマクロスケールでより容易に用いることができる方法として、部材またはより大きな構造物中にナノ構造物を配合する方法を研究してきた。Zhang et al. は、非特許文献2において、多層壁のカーボンナノチューブの紡糸中に撚りを導入することを述べている。得られた多重トルク安定化ヤーンは高い引張強度、柔軟性および優れた靭性を有することが記載されている。高強度のヤーン製品が得られるとしても、この技術は、やはり工業レベルで実施するにはコストがかかり、必然的に単一材料の繊維のヤーンまたは集合物を形成することに限定されている。さらに、この技術はガラス、セラミックまたは金属マトリックスを用いる複合材料に関連するものではない。そしてこの方法は、材料マトリックス内でナノ構造物を配列、特に配向させる試みについての困難を克服することに関しては全く無言である。またこの方法は、極めて小さいナノチューブを処理する実用的な方法を示していない。
【0008】
Greywallは、特許文献1において、カーボンフィビリルおよびカーボンナノチューブのような小さいカーボン粒子を、ガラスのような流動可能な媒体中に分散させ、該粒子を互いに少なくとも部分的に配列させるようにガラスを延伸し、次いでガラス材料を取り除き、カーボン粒子、フィブリルおよび/またはナノチューブを、繊維またはストランドの形態に配合した集合物を得る、カーボンフィブリルおよびカーボンナノチューブのような小さなカーボン粒子を、繊維中に配合する方法を記載している。Greywallは、光学繊維を製造するための周知技術を用い、またガラス担体を取り除いてカーボン構造物のみからなる繊維を形成する化学または機械的な方法を用いている。Greywallの技術は、カーボン粒子、フィブリルおよび/またはナノチューブの単一繊維を製造するものである。Greywallは、カーボン粒子を媒体中に分散させる困難性については述べておらず、これは、媒体を除去する前に延伸操作を行い、粒子を配列および配向させるためである。ある点では満足することができても、粒子を配列させるために延伸操作を用いることは、全ての材料または全ての応用に関して必ずしも可能な訳ではない。さらにGreywallの方法は、単一材料の繊維を形成することを目指したものであり、他の材料内にナノ材料を導入し、導入されたナノ材料の顕著な性質の利益を得る複合材料を形成する方法に関するものではない。さらにGreywallの方法は、最終的に得られる材料の欠点を修正することに関しては無言である。従って、ガラス、セラミックまたは金属マトリックスを導入する改善された方法については課題が残されたままであり、また従来技術との問題点を克服し、導入されたナノ材料に関する物理的な性質をより十分に発揮する複合材料を形成することに関する要望は依然として残されたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国公開特許No.2005/0188727
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Extraordinary Strengthening Effect of Carbon Nanotubes in Metal-Matrix Nanocomposites Processed by Molecular-Level Mixing, Adv, Mater. 2005, 17, 1377-1381
【非特許文献2】Multifunctional Carbon Nanotube Yarns by Downsizing an Ancient Technology, Vol. 306, Science (November 19, 2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
マトリックス材料において、多くの方法論が提案され、ナノチューブおよび/またはナノファイバーの分散を改善することが現在試みられつつある。しかしながら、このような方法は、ある場合には周辺の一部を改善するに止まり、得られた材料内に余分の含有物や小孔の導入により弱いマトリックスを生じる結果となっている。従って、ナノチューブおよび/またはナノファイバーのようなナノ構造物に用いた複合材料を製造するための改善された方法が要望されている。特に、マトリックス材料中のナノチューブおよび/またはナノファイバーの分散性を改善する方法を研究することが望ましい。また同様にマトリックス材料内にナノ構造物を配列、配向させるための技術が望まれている。
【0012】
要するに、複合材料内にランダムに配向されたナノチューブおよび/またはより低い品質および低コストのナノファイバーを導入する現在の知られた方法は、得られた材料の性質および品質にある程度の改善を与える等方性のマトリックスを生じるのみである。得られた材料は、ナノチューブおよびナノファイバーの優れた方向性に基づく画期的な改善を示さないものであった。従って、優れた性質を示し、現在知られた材料やプロセスに関連する問題、例えば高度の欠陥や不十分な分散または配列不良のナノ構造物の問題を生じないような、ナノチューブおよび/またはナノファイバーを用いた複合材料の供給が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、アスペクト比が1.0を越える少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を含む高強度複合材料を製造するプロセスおよびマトリックス材料を供給することである。該プロセスはマトリックス材料を供給することを含み、該マトリックス材料が流動化するように該マトリックス材料を加熱することを含む。さらに該プロセスは、アスペクト比が1.0を越える少なくとも1つのタイプのナノ構造物を供給することを含む。また該プロセスは、該少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を該マトリックス材料と配合することを含む。さらに該プロセスは、該配合された量のナノ構造物とマトリックス材料を層流状態で流動化させ、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行な配向を起こすことを含む。さらに該プロセスは、該マトリックス内で平行な配向状態にある間に該複合材料を固化させ、高強力の複合材料を生成することを含む。
【0014】
他の態様において、本発明は、マトリックス材料中にナノ構造物を分散させ、配列させるプロセスを提供する。このプロセスは、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を選択することを含む。該プロセスは同様に流動化可能なマトリックス材料を供給することを含む。さらにこのプロセスは、流動化可能なマトリックス材料中に選択されたナノ構造物を配合することを含む。さらにこのプロセスは、この配合されたマトリックス材料と選択されたナノ構造物を一定時間、少なくとも多くのナノ構造物がマトリックス中で平行な配向を起こすのに十分な時間層流状態で流動させることを含む。
【0015】
さらに本発明の他の態様においては、高強度の複合材料が供給される。この材料は、マトリックス材料と、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量を含む。アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも多数が互いに平行に配向して配列される。
【0016】
さらに他の態様においては、本発明は、(i)第1のマトリックス材料と、(ii)該第1のマトリックス材料中に分散された、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量とを含む強化複合材料が提供される。この複合材料はまた第2のマトリックス材料を含む。該第1のマトリックス材料中の少なくとも多数のナノ構造物は、平行な配向で配列される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、流動体中のナノチューブまたはナノファイバーに作用する回転モーメントを示す力線図である。
【図2】図2は、層流状態で流動する材料の速度分布(プロフィール)を示す図である。
【図3】図3は、回転モーメントゼロの達成を示す力線図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい態様の複合材料中のカーボンナノファイバーおよび含有物のシアー(せん断)分散の説明図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい態様のプロセスの任意の操作において用いられるガラス繊維ブラッシングチップの詳細な赤外画像の図面である。
【図6】図6は、UV長波長(354nm)光で蛍光発色されたカーボンナノファイバーを含むフィラメントの写真図である。
【図7】図7は、本発明の好ましい態様の材料およびプロセスで用いられる多層カーボンナノファイバー/ナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい態様の複合物繊維中で良好に分散されたカーボンナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図9】図9は、新しい、好ましい態様の繊維の引張強度テストのグラフである。
【図10】図10は、カーボンナノファイバーを有する、または有しないEガラスフィラメントの破裂表面の顕微鏡写真図である。
【図11】図11は、好ましい態様のガラスファイバー中で良好に分散、配列されたカーボンナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図12】図12は、ガラスおよびチッ化ホウ素強化ガラスの破断靭性を示す図である。
【図13】図13は、図12で示されたガラスおよびチッ化ホウ素ナノチューブ強化ガラスのWeibull強度分布のグラフである。
【図14】図14は、ガラスファイバーの延伸および製造プロセスの好ましい態様を示す説明図である。
【図15】図15は、本発明による好ましい態様の複合材料を示す断面説明図である。
【図16】図16は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す断面説明図である。
【図17】図17は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図17A】図17Aは、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図18】図18は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図19】図19は、本発明に関連して用いることができる、ローラーおよびワイヤ延伸プロセスに用いられる組立体の説明図である。
【図20】図20は、本発明に関連して用いることができる材料の層流の説明図である。
【図21】図21は、本発明に関連して用いることができる押し出し組立体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明およびその好ましい態様は、ガラス、溶融シリカ、および金属マトリックス、およびその他の材料中に、ナノファイバーおよび/またはナノチューブ(NF/NT)のようなナノ構造物を導入または埋め込み、分散および配向させ、例外的に強いナノ構造物であるガラスファイバー、金属ワイヤ、シート、プレート、および高い物理的、熱的および電気的性質を有する構造物を製造することに関する。本発明のある態様においては、ナノファイバーおよび/またはナノチューブは、材料のマトリックス内に高度に配置された、または他の方法で均一に配向される。
【0019】
本発明は、広い観点においては、マトリックス材料中にナノ構造物の集合物を分散、解繊または必要に応じて分離、および/または選択的に配列させる独特の迅速な方法を提供する。この方法は、配合されたマトリックス材料とナノ材料を流動化状態に変換し、次いでこの配合物を流動化させる。流動はほとんどどのようなタイプのチャンネル、ダクト、または囲い内で起きる。ある応用においては、このような流動は、支持体のような単一表面上でのみ起こると考えられている。本発明でより詳細に説明されるように、配合されたマスの流動は、層流形式であることが好ましい。さらにこの流動の速度分布(プロフィール)は放物線状を示すか、または実質的にそのような形を取ることが好ましい。このタイプの流動は、速度差を生じ、次いでナノ構造物に回転または旋回モーメントを付与する。
【0020】
本発明およびその種々な好ましい態様を述べる前に、一般的にナノテクノロジーおよび本願で用いられる種々の用語について考慮することが有益である。
【0021】
ナノスケール化された材料は、マクロスケールでそれらの材料が示すものに比べて非常に異なる性質を突如示すことができる。例えば不透明な物質が透明になったり(銅)、不活性物質が触媒になったり(白金)、安定な物質が燃焼可能になったり(アルミニウム)、固体が室温で液体に変わったり(金)、また絶縁体が導体になったり(シリコン)する。特に金のような材料は、通常のスケールでは化学的に不活性であるが、ナノスケールでは強力な化学触媒として作用する。ナノテクノロジーについての魅力の多くは、ナノスケールで物質が示すこれらの独特の量子的および表面の現象から来るものである。
【0022】
ここで用いられる用語として、ナノ構造物は、分子と顕微鏡(顕微鏡サイズ)上の構造物の中間のサイズを有する構造物である。ナノ構造物を述べる場合、ナノスケールの次元数で区別すると都合が良い。ナノ組織表面のような一次元のナノ構造物は、ナノスケール上の一次元、すなわちそのような目的物の表面の厚さのみが0.1および100nmの間の厚さを有する。比較的長いナノチューブのような二次元のナノ構造物は、ナノスケール上で二次元を有する。すなわちナノチューブの直径は0.1と100nmの間である。しかしながらその長さはこれより長く、ナノスケールを超えている。最後の三次元ナノ構造物、球状のナノ粒子はナノスケール上で三次元を有する。すなわちその粒子はそれぞれの空間寸法で0.1と100nmである。三次元構造物の他の例は、比較的短いナノチューブ、すなわちチューブの長さおよび半径が0.1と100nmの間のものである。本発明は、全てのこれらのタイプのナノ構造物の使用を包含する。
【0023】
特にナノチューブは、ナノメータースケールのワイヤ状の構造物で、最も多くはカーボンから成るものである。一般に、これらの構造物は、解放または中空の内部を有する。
【0024】
カーボンナノチューブ(CNTs)はカーボンの同素体である。単一壁のカーボンナノチューブは、ナノメーターのオーダーの直径を有する、シームレスのシリンダー状に巻かれたグラファイト(グラフィームと呼ばれる)の一原子厚さのシートである。長さ対直径比は通常10,000を超えるナノ構造物となる。このようなシリンダー状のカーボン分子は、ナノテクノロジー、エレクトロニクス、光学およびその他の材料科学の分野で、広範囲の応用において、潜在的にこれらを有用にする新しい性質を有している。これらは、極めて高い強度と、独特の電気的性質を示し、また熱の効果的な伝導体である。無機ナノチューブも同様に合成されている。
【0025】
カーボンナノチューブはフラーレン(fullerene)構造族のメンバーであり、同様にバッキーボールを含む。バッキーボールは形が球状であるが、ナノチューブは円柱状であり、少なくともその一端は、バッキーボール構造物の半球でキャップされている。それらの名称は、ナノチューブの直径が数nmのオーダーであることから、それらのサイズからくるものであるが、それらの長さは数mmまで可能である。2つの主なタイプのナノチューブがあり、1つは単一壁のナノチューブ(SWNTs)、他は多層壁ナノチューブ(MWNTs)である。
【0026】
ナノチューブの結合の性質は、量子化学、特に軌道交雑形成によって説明される。ナノチューブの化学的結合は、グラファイトのそれらと同じくsp2結合からなる。この結合構造は、ダイヤモンドで見出されるsp3配合よりも強力で、独特の強度を有する分子を与える。ナノチューブは、ファンデワールス力によって互いに保持された「ロープ(ropes)」中に自己配列される。高圧下では、ナノチューブは互いに合流し、sp2結合を若干sp3結合と交換し、高圧ナノチューブ結合を通して強力な無制限の長さを生じる大きな可能性を与える。
【0027】
ここで用いられるナノファイバーという用語は、極めて長く配列されたナノチューブの列である。最も大きい単一壁のナノチューブ(SWNT)は、1ナノメーターに近い直径を有し、チューブの長さはその何千倍かの長さが可能である。センチメーターのオーダーの長さを有する単一壁のナノチューブが製造されたことがある。SWNTの構造は、グラファイト、すなわちグラフィーム(grapheme)の1原子厚さの層をシームレスのシリンダー状にラップすることによって概念化することができる。
【0028】
単一壁のナノチューブは、多層壁のカーボンナノチューブ(MWNT)の異形体では得られない重要な電気的性質を示すので、非常に重要なカーボンナノチューブ類である。単一壁のナノチューブは、現在、近代エレクトロニクスのベースとなっている、マイクロエレクトロメカニカルスケールを超えてエレクトロニクスを小型化するための、最も有力な候補である。これらのシステムの最も基礎的なビルディングブロックは電線であり、そしてSWNTsは優れた導体となる。
【0029】
多層壁ナノチューブ(MWNT)は、チューブの形状になるように重ね合わせて巻き込まれた多層グラファイトからなる。多層壁ナノチューブの構造物と呼ばれている2つのモデルがある。ロシア人形モデルでは、グラファイトのシートが同芯のシリンダー状に配列されている。パーチメントモデルでは、グラファイトの単一シートがそれ自体の周りに巻かれており、パーチメント(羊皮紙)の巻物または新聞紙を巻き上げたものに似ている。多層壁ナノチューブの内層の距離は、グラファイト中のグラフィーム層の間の距離約3.3Åに近い。二重壁カーボンナノチューブ(DWNT)の特別な性質は、それらの化学耐性を著しく改善する一方、SWNTに非常に近似した形態および性質を併せ持っていることが強調される。これは、カーボンナノチューブに新しい性質を加えるために、機能化が要求される場合(従ってナノチューブの表面において化学的機能をグラフトさせる場合)に特に重要である。SWNTの場合には、共軛機能化は、あるC=C二重結合を破壊し、ナノチューブ上の構造物中に“ホール”を残し、その機械的および電気的性質の両方を変更する。DWNTの場合には、外側壁のみが変更される。
【0030】
どのような材料であっても、欠陥の存在はその材料の性質に影響を与える。ナノチューブにおける欠陥は、原子空位の形態で起こる。ハイレベルのこのような欠陥は引張強度を85%にまで低下させることがある。カーボンナノチューブにおいて起こる欠陥の他のよく知られた形態は、ストーンウォール欠陥として知られており、結合の再配列によって五角形と六角形の対を生成する。カーボンナノチューブの非常に小さい構造のために、該チューブの引張強度は、連鎖に対するのと同様に、ナノチューブの最も弱いセグメントに依存し、そこでは単一リンクの欠陥が全体の連鎖の強度を減少させる。
【0031】
ナノチューブの電気的な性質は、同様に欠陥の存在によって影響を受ける。共通な結果としてナノチューブの欠陥領域を通して導電率がより低下する。アームチェアタイプのチューブ(導電可能な)におけるある欠陥の生成は、その欠陥の周りに半導体となる領域を生じる。さらに単一モノ原子空位は磁気的性質を誘起する。
【0032】
本発明は、(i)ナノチューブおよびナノファイバーのような1以上のナノ構造物、および、(ii)1以上のマトリックス材料を含む複合材料に関する。ナノ構造物の材料は、カ^ボンまたはカーボンベースのものであるが、例えば窒化ホウ素およびシリコンカーバイトのような他の材料を含むか、代わりに用いることができる。ここで述べる好ましい態様の複合材料において用いられる選択されたナノ構造物は、例えばナノチューブ(ツイストナノチューブおよびアームチェアまたはノーツイスト(no twist)ナノチューブを含む)、ナノファイバー、ナノチューブリング、ナノ粒子およびこれらの組み合わせのような、ほぼどのようなナノ構造物の形態を取ってもよい。種々の好ましい態様で用いられる好ましいナノ構造物は、1.0を越えるアスペクト比を有する。ここで用いられる「アスペクト比」という用語は、ナノ構造物の最も短い寸法に対するナノ構造物の最も長い寸法の比率をいう。理解されるように、ナノ粒子またはバッキーボールのような球状物のアスペクト比は1.0である。これに対して、ナノチューブまたはナノファイバーのような円柱(cylindrical)、ワイヤまたはストランド状物のアスペクト比は、該ナノ構造物の長さを該ナノ構造物のスパン、幅または直径で割った比率である。ナノチューブのアスペクト比は1.0を越え、10,000またはそれ以上のような高い場合もある。前述のように、センチメートルのオーダーの長さを有する単一壁のナノチューブが知られている。これらのナノチューブのアスペクト比は約1,000,000である。好ましいナノ構造物はカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、これらは単一またはそれぞれの組み合わせで用いられる。ナノ構造物は薄い層またはシートの形で用いることができる。例えば、あるシリカ材料はナノシートの形に形成することができる。このようなナノシート材料は、本発明で用いることができ、流動マトリックス材料中に分散、配列させることができる。ナノシートのアスペクト比は、該シートの厚さに対する該シートの長さまたは幅(一般に、これらの二つの次元の最も長いもの)の比である。
【0033】
ナノ構造物の広いアレイは市場で入手可能である。例えばApplied Sciences、Inc., of Cedarville, Ohioは、種々のカーボンナノチューブを供給しており、そしてその子会社であるPyrograf Products, Inc.はナノファイバーを供給している。適当なナノ構造物の他のコマーシャルソースとしては、特に限定されるものではないが、Swan Chemical, Inc. of Lyndhust, New Jersey, Nanolab of Newton, Massachusetts,および Ahwahnee Technology of San Jose, California がある。
【0034】
本発明における好ましい態様のプロセスおよびその結果として得られる複合材料に用いられるナノ構造物は、元素または化合物の広い配列から形成することができる。カーボンが好ましい候補材料であるが、他の元素または化合物を使用することができる。限定される例によれば、窒化ホウ素、シリコンカーバイトおよびこれらの組み合わせがある。
【0035】
好ましい実施態様の複合材料で用いられるマトリックス材料としては、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせ、並びにこれらの合金のような材料の広い配列から選択することができる。ガラスと金属はマトリックス材料として好ましく用いられる。ほとんどどのようなタイプのガラスも使用可能である。最も多く使用されるガラスとしては、ケイ酸塩(SiO2)ほう酸塩(B2O3)、ゲルマニウム塩(GeO2)またはこれらの混合物のような酸化物ベースのものである。溶融シリカは、技術者によってガラスと考えられているかもしれない。溶融シリカは純粋またはほとんど純粋なSiO2である。その構造のために、ガラス材料は典型的には特定の融点を示さないが、固体から溶融まである温度範囲で転移する。しかしながら、マトリックス材料としてガラスを用いる本発明の態様を述べる際には、融点という用語は、ガラス材料がその中に分散するナノ構造物を配向させるのに十分な流動を受ける最低温度を言うために用いられる。特に好ましいガラスは「Eガラス」である。Eガラスは、低アルカリホウケイ酸塩ガラスであり、良好な電気的、機械的性質と良好な化学耐性を有する。Eという定義は電気的のためである。Eガラスは、多くの供給者から商業的に入手可能である。マトリックス材料としては金属および/または合金の広い配列を用いることができ、このようなマトリックス材料としては、アルミニウム、アルミ合金、アンチモンおよびそれらの合金、クロムおよびそれらの合金、コバルトおよびそれらの合金、銅およびそれらの合金が挙げられ、銅合金としてはレッドブラスおよびイエローブラスを含む真鍮、ベリリウム銅およびカプロニッケル、金およびそれらの合金、鉄およびそれらの合金で、鋼、ステンレス鋼のようなもの、およびモネル(Monel、登録商標)、鉛およびそれらの合金、マグネシウムおよびそれらの合金、マンガンおよびそれらの合金で、ブロンズマンガンのようなもの、モリブデンおよびそれらの合金、ニッケルおよびそれらの合金で、ハステロイ(Hastelloy、登録商標)およびインコネル(Inconel、登録商標)のようなもの、パラジウムおよびそれらの合金、白金およびそれらの合金、銀およびそれらの合金、タンタルおよびそれらの合金、錫およびそれらの合金、チタンおよびそれらの合金、タングステンおよびそれらの合金、バナジウムおよびそれらの合金、亜鉛およびそれらの合金、およびジルコウニウムおよびそれらの合金が挙げられる。好ましい金属は、限定される訳ではないが、銅、アルミニウムおよびチタンである。
【0036】
一般に、どのようなマトリックス材料でも、ナノ材料の融点より低い温度で流動化、または液体状態に転移でき、そのナノ材料と相溶性があれば、使用することができる。多くのカーボン材料は、約3500℃のオーダーでの融点を有するので、その温度より低い融点を有する、ほぼどのようなマトリックス金属も適当な候補となり得る。従ってほとんど全ての金属またはそれらの合金は、融点が3500℃より低いので、マトリックス材料として使用可能である。
【0037】
好ましい実施態様の複合材料は、追加的な成分および元素を含むことができ、限定されるものではないが、フィラー、溶剤、エクテンダー、改質剤、粘度調整剤、硬度改質剤、光学剤、およびこれらの組み合わせを用いることができる。
【0038】
好ましい態様の複合材料は有効量のナノ構造物を含む。ここで用いられる有効量という用語は、ここでいう複合材料のマトリックス材料中に導入されたときに、結果として望ましい性質または特性を示す複合材料が得られる特定のナノ構造物の量を言う。一般的には、ナノ構造物の有効量は、該複合材料の約0.25ないし約20%であり、より好ましくは約2%から約10%である(ここで示される全ての百分率は別記されない限り該複合材料の重量百分率である)。ナノ構造物としてカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーを用いるときは、該複合材料中に該複合材料の全重量を基準として約0.1%から約25%、より好ましくは約1%から約15%、さらに好ましくは約2%から約10%の範囲のカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーの有効量が好ましい。
【0039】
本発明の好ましい態様の複合材料は、マトリックス材料中に互いに平行な配向状態で配列した、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を含む。好ましくは、ナノ構造物の少なくとも大多数、すなわち少なくとも50%が平行な配向状態で配向している。より好ましくは、ナノ構造物の少なくとも70%が平行に配向している。さらにより好ましくは少なくとも90%のナノ構造物が平行は配向状態で配向している。ある場合に、ナノ構造物の少なくとも95%がこの平行な配向で配向している。そして最も好ましくは、ナノ構造物の少なくとも99%が平行な配向状態で配向している。
【0040】
これまで述べたように、本発明は、またガラスまたは金属マトリックス中に分散したカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーのように、1またはそれ以上のナノ構造物の組み合わせに基づく、種々の好ましい態様の複合材料に関する。このような材料は、高性能のガラスおよび金属ナノ複合繊維、シートおよびナノ複合フライホイールリングの製造に用いることができると思われる。
【0041】
このような材料の代表的な例としては、限定されるものではないが、最小引張強度が20−25GPaおよび最小引張弾性率が200−250GPaを有する繊維形態の高性能複合ガラス/ナノチューブ材料が挙げられる。このような材料は、ホットローリングによって輪の方向に配向した、ナノファイバーおよび/またはナノチューブを有する高性能フライホイールリングに用いることができる。また種々のタイプのナノチューブおよび/またはナノファイバーを、銅、アルミニウムおよびチタンのような1またはそれ以上の金属を結合させることにより、高性能の熱的および電気的性質を有する、高性能のナノ複合ワイヤ、シートメタル、およびバルク材料とすることが考えられる。
【0042】
上述のように、本発明を用いた広範囲の複合材料製品が生成される。例えば、ここで述べた分散、配列されたナノ構造物で強化されたマトリックス材料の繊維またはストランドは、第2の材料中に導入され、該第2の材料に有益な性質を付与することができる。例えば、ここで述べたナノ材料で強化されたガラスファイバーを製造することができる。有効量の強化ガラス繊維が第2の材料中に導入され、該第2の材料に引張強度のような望ましい物理的性質を付与することができる。このような第2の材料の代表例としては、限定されるものではないが、高分子物質、ガラス、金属、セルロースベースの材料、およびこれらの組み合わせまたは複合物が挙げられる。他の代表例としては、繊維または織性複合材料中に導入される、ナノ構造物で強化されたガラス繊維の導入である。この技術では、ナノ構造物で強化された繊維がランダムに配向された繊維マット中に導入され、次いで公知の方法で処理することができる。上記の代わりに、ナノ構造物で強化された繊維を、配列された、比較的フラットな平面または層中に導入することができ、そして多層繊維集成体として用いることができる。これらの繊維は、またランダムに配向した繊維の薄いシートで用いることができる。
【0043】
さらにマトリックス材料中にナノ構造物強化繊維を導入し、複合材料の層を形成することが考えられる。これらの層は、次いで望ましいように積層されるが、また他の方法で結合することができる。
【0044】
ある応用では、このような複合材料の層を形成することが望ましく、このような複合材料においては、予め定められた割合のナノ構造物強化繊維が互いに配列されるか、および/または複合材料の層に関してある方向に配列される。このような積層および配列された層の集合物を形成することができる。この方法は、特定の方向に極めて高い強度を有する複合材料の製造が可能となる。
【0045】
このようにして、本発明は、その中に分散された第1のマトリックス材料と、ここで述べられたような有効量のナノ構造物を用いる複合材料を含むことが理解される。ナノ構造物と第1の材料の複合物は、次いで第2のマトリックス材料と結合させることができる。この第2のマトリックス材料は、ここで述べたようなナノ構造物、慣用的な強化材料または添加物を含んでもよく、またはそれ自体として用いてもよい。得られた複合材料は、互いに緊密に混合されるか、分離した領域に分散された種々の配置で第1のマトリックス材料(およびナノ構造物)と第2のマトリックス材料を形成してもよい。同様に次のようなマトリックス材料を用いることが考慮される。
【0046】
一般に、好ましいナノ複合材料の特性は、カーボンナノチューブの初期の結果および種々の公表され、または開発された性質に基づいて予測することができる。本発明の好ましい実施態様の複合材料において用いられる、好ましいナノ材料の種々の物理的性質が、下記の表1でいくつかの公知の材料と比較される。
【0047】
【表1】
【0048】
より詳細に説明すれば、ガラスマトリックス中に分散されたカーボンナノファイバーを含む複合材料から繊維が製造された。これらの繊維の集合物は、次いでトウに形成され、すなわち連続的な無撚のフィラメントの無撚の束に形成される。引張強度テストによれば、複合繊維中のカーボンナノファイバーの濃度が比較的低くても、例えば約0.25から約0.5%と低く、各フィラメント(198フィラメント)中で不均一なものであっても、このハイブリッド繊維の強度はいくつかのサンプルにおいて理論値の平均60%より高く、100%近くに達することがあった。該繊維の引張強度は、その熱的、電気的性質と共に、濃度および使用されるナノチューブ/ナノファイバーのタイプおよび/またはブレンドに依存して、かなり増加することが予測される。
【0049】
好ましい実施態様の材料は、ナノ複合マトリックスの熱押し出し金属クーポン(板状試験片)または中間製品を製造するために用いることができる。これらのクーポンはホットプレス操作を用いて製造することができる。一般に、該プロセスは、不活性条件下の混合またはミリングによって金属粉中にナノチューブのようなナノ構造物を分散させることを含む。混合物は、不活性条件下でホットプレスチャンバー内のグラファイトジグ内で溶融される。溶融後、該溶融物はジグの底部のホールを通して押し出され、これによって高圧下で必然的に出口ダイを形成する。該プロセスによって、ジグ底部のダイの寸法および形状に依存してワイヤおよび/またはフラットリボンクーポンを製造することができる。
【0050】
カーボンナノファイバーを含む複合金属繊維は、下記のように形成することができる。Pyrograf Products, Inc. of Applied Sciences Inc., of Cedarville, Ohioから入手可能な2つのタイプのカーボンナノファイバーが次のように処理される。
1.PR LH 24 CNFが1500℃で処理され、その機械的および電気的性質が最適化される。
2.PR HH 24 CNFが3000℃で処理され、その熱的性質が最適化される。
【0051】
複合物繊維が次いでここで述べるように形成される。複合物中のカーボンナノファイバーの濃度は約0.1から約14%の範囲が可能である。14%濃度のカーボンナノファイバーの容積は金属マトリックスの濃度をほとんど超えるようである。さらに複合材料中に、窒化ホウ素およびシリコンカーバイドから成るナノチューブのような他のタイプのナノチューブを用いることによって、得られるナノ組成物の性能を高めることができる。
【0052】
チッ化ホウ素ナノチューブを用いた複合材料の初めて公表された結果によれば、本発明者の一人はガラス組成物の強度および破断靭性の大幅な増加を報告している(N.P. Bansal and J.B. Hurst, “Boron Nitride Nanotubes-Reinforced Glass Composites,” NASA/TM-2005-213874参照、 prepared for the 30th International Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites, sponsored by the American Ceramic Society, Cocoa Beach, Florida, January 22-27, 2006参照)。この仕事は、当該技術において大幅な進歩を与えるものの、本発明のような問題については言及していない。
【0053】
本発明によれば、ナノ構造物を用いた複合材料の広い配列を製造することができる。図15−18は、本発明による、配向されたナノ構造物を用いる、そのような製品の若干の代表例を示したものである。本発明は、このような代表例に限定されるものではないことは言うまでもない。図15は、第1のマトリックス材料312内に分散された配列されたナノ構造部320を含む、複数の強化繊維またはストランド310を有する好ましい複合材料300の断面図である。繊維310は、典型的には1またはそれ以上の添加物またはその他の成分335を任意に含む第2のマトリックス材料330内に分散されている。該ナノ構造物320は、一般に互いに配列され、好ましくは、それぞれの繊維310の長さ方向の軸に一般に平行に配列されている。分散されたナノ構造物320を有する繊維310は、好ましくはここで述べたように生成される。該繊維310は、第2のマトリックス材料330内に配列されるか、またはその他の方法で選択的に配向することができ、または図15に示すようにランダムに配向することができる。
【0054】
図16は、本発明による他の好ましい複合材料400の断面図である。材料400は、2またはそれ以上の、一般的に分離した領域AおよびBを有する。領域Aは、第1マトリックス材料412内に分散、配列されたナノ構造物420を含む繊維またはストランド410を有する。該繊維410は、任意的な添加物または成分435と共に第2マトリックス材料430内に分散される。領域Aの態様は、繊維410または少なくとも一部の繊維410が領域A内に配列されるものである。領域Bは、第3マトリックス材料417内に分散、配列されたナノ構造物425を含む繊維またはストランド415を有する。繊維415は、任意的な添加物または成分445と共に第4のマトリックス材料440内に分散されている。領域B内では、繊維440の全部または一部がその層内に配列されている。第1、第2、第3および第4のマトリックス材料の全部またはいくつかは、同じかまたは異なっていてもよいことが理解される。図16に示された態様は、隣接する領域でナノ構造物の配向が垂直になっている配置を例示したものである。本発明は、異なる領域におけるナノ構造物のそれぞれの配向が互いに平行であるか、または複合材料400について特定の角度を有するような配置を有する。図16は、平面構造を示しているが、本発明は、異なる領域の凝集体のような構造も含むことが理解される。
【0055】
図17および17Aは、本発明による他の好ましい態様の複合製品500を示すものである。製品500は、繊維質であり、マトリックス材料525内に分散、配列されたナノ構造物530を含む複数の繊維またはストランド520を有する。製品500は、該製品500内に導入された1またはそれ以上の追加の繊維510を任意的に含む。製品500は、ランダムに配向された繊維を含むものとして描かれているが、本発明は、繊維、特に繊維520のように配列されたナノ構造物を含む複合製品が、織物繊維層のように配向または配列されたアレイ内に配置されることが理解される。
【0056】
図18は、他の好ましい複合材料600を示すもので、610および630のような複数の薄層を有する。1またはそれ以上の層は、配列されたナノ構造物を含む繊維または他の粒子を含む。例えば、層610は複数の繊維620を含む、各繊維は、それらの内部または構造内に導入されたナノ構造物の配列を有する。好ましくは、繊維620は層610内に配列されている。層630は、1以上のタイプの第2の繊維640を含み、該第2の繊維640は、繊維620と同じタイプか、または通常添加される繊維のように異なっていてもよい。繊維640は、層630内でランダムに配向されているが、本発明においては他の配向が考えられ、これらが含まれていてもよい。層610および630のそれぞれは、導入された繊維を保持するためにバインディング材料または他のマトリックス材料を含む。
【0057】
図15−18で示されて態様の全部は、配列されたナノ構造物を有する繊維を用いたものであるが、本発明は、配列されたナノ構造物を含むシート状の構造物、およびほぼどのような幾何学形状を有する構造物のような他の配置を含むことが理解される。
【0058】
本発明は、またこれまで述べた複合材料を形成する方法に関する。好ましい態様の方法の重要な態様は、マトリックス材料中にナノ構造物を最終的に分散、配列することを、該マトリックス材料、例えばガラスまたは金属が流動化または溶融状態にあるときに高温で行なうこと、およびナノ構造物間のファンデワールス力が極めて弱い状態にある間に行なうことである。もし該マトリックスが1以上の金属を含む場合には、マトリックスを流動化状態で供給することは、金属中の粒状構造物の存在を同様に排除することになる。この方法は、高アスペクト比のナノチューブがスラリまたは他の流動化可能なマトリックス内に導入され、その混合物が層流方式で流動化されるときに、該ナノチューブは流れの方向に沿ってそれ自体配列されるという事実を活用したものである。高い粘性、粘弾性および塑性流動における剪断力は大きく、容易にファンデワールス力を克服することができる。従ってナノチューブは凝集および他の欠点の生成を排除する。材料が流動可能または溶融状態にある間にこれらを処理する工程の組み合わせによって、マトリックスの表面上のみならず、マトリックスまたは粒状構造内に埋め込まれ、良好に分散、配列されたナノチューブを有する、極めて強力なナノ複合物(アロイ)が結果的に得られることは驚くべきことである。
【0059】
さらに詳しくは、ここで述べる好ましい態様のプロセスの重要な点は、配合されたナノ構造物とマトリックス材料の層流を引き起こすように、プロセスのパラメータを選択することである。この方法は、少なくとも一部の、典型的には多数または全てのナノ構造物を分散させ、そしてマトリックス材料内に平行な配向を生じさせる。好ましくは、この平行に配向されたナノ構造物は、同様に流れ方向と実質的に平行に配向される。
【0060】
層流は、ある場合には流線流として知られているが、これは、層間の乱れがないか、少ししかない、平行または一般的に平行な層で流体が流れるときに起こる。流体力学において、層流は、高い運動量の拡散、低い運動量の対流、および時間から独立した圧力および速度によって特徴づけられる流動形式である。一般に、層流は乱流に対するものである。当業者に理解されるように、層流は一般にレイノルズ数として知られる無次元のパラメータによって表わされる。層流は、特にレイノルズ数が約2300より以下であるときに層流状態であると一般的に考えられている流動システムである。一般に、レイノルズ数(Re)は、動圧(p*u2)と剪断応力(μ*u/L)の比である。
【数1】
ここで、Re=レイノルズ数(無次元)
p=流体密度
u=平均流体速度
μ=絶対動的流体粘度、および
L=特性長さ。
一般に、レイノルズ数が約4000を越えるときには、その流動システムは乱流と考えられている。約2300と約4000の間の領域においては、その流れは過渡的なものと考えられている。
【0061】
本発明によれば、流動可能なマトリックス材料およびその中に導入されたナノ構造物は、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行な配向を受けるのに十分な時間、層流で流動される。その時間は、該マトリックス材料およびナノ構造物の性質、流動特性、システムパラメータに依存して変化する。特定の時間範囲に限定することは望まれないが、1秒以下のオーダー、また他の応用では数分間までの時間が考えられる。
【0062】
本発明の好ましいプロセスでは、マトリックス材料が流動化状態に変換される。好ましくは、これは加熱によって行われる。ガラスまたは溶融シリカ材料では、該材料が加熱される最も低い温度は一般にそのガラスまたはシリカ材料の溶融または液相温度に対応するほとんどのガラスおよび/またはシリカでは、この温度は約1000℃から約1600℃であり、より好ましくは約1000℃から約1200℃である。マトリックス材料としての金属については、最も低い温度は一般に該金属の溶融温度に対応する。ほとんどの金属では、約600℃から約2000℃、より好ましくは約800℃から約1200℃である。
【0063】
熱マトリックス材料中にナノ構造物が適当に分散、配列された後、好ましくは該システムの層流が確立される結果、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行に配向した後、該マトリックス材料は固化され、該ナノ構造物の配向が保持される。固化は、該マトリックス材料を冷却することによって行なうことができる。水または高い熱容量を有する他の液体と接触させることが好ましい。
【0064】
カーボンナノチューブを含む多くの形態におけるカーボンは、大気または富酸素環境中で400℃を超える温度に晒されると劣化する。この結果により、多くの研究者は、典型的には1000℃に近い温度(Eガラスでは1200℃)で処理されるガラス溶融物のような熱マトリックス中にカーボンナノチューブを埋め込むことは不可能であると結論付けてきた。これを念頭に入れると、文献では、400℃を超える温度で処理されるマトリックス中にカーボンナノチューブ/カーボンナノファイバーを導入することを必然的に排除しようとしていることは驚くにはあたらない。
【0065】
この事柄に関する通常の見解に拘わらず、本発明者らは、ガラスのような、例えば1000℃ないし1600℃の高温中にナノチューブを導入または埋め込む研究を行なった。このような方法で、熱マトリックス中でカーボンナノチューブを保護することに成功することを発見したのは驚くべきことであった。より詳細に説明すると、カーボンナノファイバー(CNF)は、比較的高いプロセス温度、例えば典型的には約1200℃の温度で生き延びるのみならず、層流が確立されていれば、ガラスまたはメタルマトリックス内でそれら自身が容易に分散、配列可能であることが示された。さらに驚くべきことには、不活性条件下でガラスフリットとナノチューブの混合物を、その後熱プレスしても、ナノチューブに何ら検出可能なダメージを生じなかった。従って、複合材料の成分、例えばナノ材料、およびマトリックス材料は、加熱操作前、または加熱操作中に混合することができると考えられる。さらにナノチューブは1600℃に近い温度で1時間を超えて熱プレスしても生存していることがわかった。1600℃の温度は、ナノチューブの作業温度の上限というよりも、これらの研究で用いられた最高温度である。その上限は決定されないままである。
【0066】
これらの発見は、ガラス繊維延伸設備を用いて追加的な研究が行われ、後に確認されたものである。ここでさらに詳しく述べるサンプルは、1200℃の温度のガラス溶融物中に直接投入された。その結果、熱ガラス繊維延伸プロセス中で生存しているカーボンナノファイバーが、電子顕微鏡映像および長波長UV光によって励起された光学蛍光で確認された。
【0067】
図14は好ましい態様のガラス繊維延伸システム100のプロセス図である。このシステム100は、好ましくは流動可能または十分に加熱された状態にある複合材料源110を有する。流動化可能な材料は流動ライン120を通ってブッシングまたはダイ組立体130に移される。前に説明したように、この流れは、マトリックス材料中のナノチューブが分散、配列するような層流である。該ブッシングは、好ましくは流動化可能な材料が通過するダイまたは通路の集合体を含む。これらのダイまたは通路により、材料が形成され、比較的細い繊維またはストランドが形成される。得られた繊維140の集合体は、次に典型的にはこの材料の温度よりも低い水を放出するスプレー150を用いることにより、冷却固化される。該マトリックス材料は、熱交換により冷却、固化される。繊維集合体は、次にサイジング機160を通過し、該サイジング機により繊維に付着防止剤および/または特別なコーティング剤が被覆され、マトリックス材料に対するより良好な配合が可能になる。サイジング機の使用およびこのような操作の設備は任意的なものである。繊維180群の結束または形成を助けるために、ギャザリングシュー170を用いることができる。繊維180の集合体は次にトラバースユニット190に向けられ、該繊維180は矢印AA方向に往復運動が与えられ、ワインダー200によってスプールまたは他のコンテナの周りに巻かれる。
【0068】
ある応用においては、不活性雰囲気中で好ましい態様のプロセスまたは一部のプロセスを行なうことが好ましい。「不活性雰囲気」という用語は、非反応性ガスの環境、および特に酸素の実質的に無い雰囲気を言う。不活性雰囲気の例としては、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドンのような貴ガス、および/またはヘリウムおよびネオンのような元素状態で存在する不活性ガスを含むものである。不活性雰囲気の追加の例としては、炭素ガスおよび/または窒素のような一般的に非反応性ガスを含むものがある。好ましくは、不活性雰囲気は、1以上の窒素、アルゴンおよび二酸化炭素を含むものである。しかしながら、多くの応用においては、不活性雰囲気を必ずしも要しないことが理解される。なぜならば、一旦ナノ構造物がマトリックス材料中に導入されると、該マトリックス材料によってナノ構造物が実質的に大気からシールされるからである。
【0069】
本発明およびここで述べた種々の好ましい態様の利点は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーで実施するときに特に有用である。これらのナノ構造材料は、しばしば接着または共に「クランプ」され、多くの場合、互いに絡み合いまたはもつれあっている。カーボンナノチューブが互いに接着する傾向は、隣接する構造の間のファンデワールス力からくるものである。単にクランプおよび/または絡み合ったカーボンナノ構造物をマトリックス材料と結合しただけでは、ナノ構造物にそれらのクランプおよび/または絡み合った形態から外れない。しかしながら本発明によれば、ナノ構造物をマトリックス材料と配合し、得られた集合物を流動化させると、ナノ構造物が互いに分離し、分散する結果を生じる。前述のように、流動中にナノ構造物によって起こされる剪断力は、比較的弱いファンデワールス力に容易に打ち勝ち、ナノ構造物を保持し、またはそれらを絡み合わせるのに役立つ。
【0070】
好ましい態様の方法の成功は、マトリックスが流動化状態にある間に、該複合材料のマトリックス中にナノチューブおよび/またはナノファイバーを分散、配向させるのに用いられるいくつかの操作から生じるものと思われる。さらに、原料の準備および特別なプロセス条件のために用いられる方法は、高温におけるナノチューブの生存に対して、またマトリックス中のナノチューブおよび/またはナノ繊維の分散に対してさらに鍵となる側面を有する。
【0071】
次に、ここで述べる複合材料を形成する好ましい実施方法、前述の鍵となる側面のサマリーを次に述べる。次に述べるものは、主にナノチューブおよび/またはナノファイバーに関するものであるが、本発明は、アスペクト比が1.0を越えるどのようなナノ構造物でもよいことが理解される。また本発明は、カーボンナノ材料の使用に限定されるものではない。さらに適当なサイズおよび形状のナノ構造物に形成することができる、どのような材料でもよいことが理解される。
ナノチューブおよびナノファイバーの配列および分散
【0072】
流れの中で高いアスペクト比のナノチューブとナノファイバーを配列させるには、(i)流れが層流であること、および(ii)ナノチューブおよび/またはナノファイバーを異なる位置で速度差を発達させるために流れのプロフィールを横切って速度差が存在し、このようにしてナノチューブおよび/またはナノファイバーの長さに沿って回転モーメントを生成すること、によって達成される。ナノチューブまたはナノファイバーの回転モーメントは、それらの回転を引き起こし、それらのモーメントをゼロに減少させる配置になるように、それらの回転を引き起こす。そしてこれらの繊維は、図1−3のダイヤグラムに示すように流れ方向に配列される。特に図1は、マトリックス材料が層流方式で流れることによるナノチューブまたはナノファイバーに付与される剪断力と駆動力から起こる回転モーメントMを含む力関係図を示している。図2は、このような流れが層流の場合の流動材料の速度プロフィールを示している。すなわち流動断面を横切る、異なる位置の速度に対応する、一般的には放物線状のカーブを示している。流路またはプロフィール内部または中央領域内の流れは、流路またはプロフィールのエッジまたは端部領域に沿った流れよりも大きい速度を示している。図3は、ナノチューブまたはナノファイバーが流れの中で配列されると、ナノチューブまたはナノファイバーの回転モーメントがゼロになることが示される。この現象を見れば、好ましい態様の材料およびプロセスは、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を用いることにより、流れの方向におけるそれらの配列が容易になる。
【0073】
図4は、(i)含有物または空隙ボイドの減少、および(ii)層流流動マトリックス材料中で分散するカーボンナノファイバーの分散および配列の進行を示す説明図である。流動システムの初期の局面では、図4の下部に示すようにカーボンナノファイバーのランダム配向が明白である。流動システムが連続するに従って、カーボンナノファイバーは図に示すように部分的に配列し始める。比較的短い時間で、これらのカーボンナノファイバーは十分に配列する。同様に、図4に示すように、含有物または空隙ボイドの相対的なサイズもより小さくなる。これは本発明に関する他の驚くべき利益である。特定の理論に束縛されることは望まないが、層流を誘起し維持することは、特に乱流と比較して、システム内の含有物とボイドの数および苦味(severity)を除去または少なくとも減少させるものと思われる。
【0074】
理解されるように、分散されたマトリックス材料とナノ構造物の配合物の層流を引き起こすことにより、マトリックス材料内にナノ構造物の分散および配列を引き起こす。しかしながら、ある応用においては、さらにナノ構造物の配列を促進する第2の操作を行うことが望まれる場合がある。粘弾塑性流動の場合には、ガラス繊維の形成、ワイヤ延伸操作およびローリング操作、例えばシートメタルローリングにおける場合のように、流動物質の速度プロフィールの違いによる流動面間に相当の顕微鏡的な剪断力および滑りが存在する。これは、ガラス複合材繊維についてのテスト結果に示された。ナノチューブおよびナノファイバーが分散された溶融流動化ガラスマトリックス材料のスラリを一般に0.125インチの直径のチップから牽引し、直径7−10μm、1インチ未満の長さに延伸された。これは流体中に非常に大きい速度差と相当な剪断を生じ、そしてガラスファイバー中にナノチューブ/ナノファイバーを容易に分散、配列させた。
改善された分散のための第2の操作
【0075】
繊維が一旦延伸されると、小孔ボイド、含有物または凝集物は、繊維内に存在するかもしれない。しかしながら、これらは繊維の直径よりも大きくなく、そうでなくてもこれは繊維に破断を生じたり、または断絶させることはない。従って、直径が7−10μmの繊維の場合には、最も大きい含有物および/または凝集物でも、対応する繊維の直径よりも小さくなければならない。しかしながら、含有物の長さは限定されず、理論的には非常に長くてもよい。本発明においては、この問題は、繊維を適当な長さの分離した単位に切断し、これらを再混合し、得られた集合物を加熱して流動可能な材料を生成し、そして該材料を再紡糸するか、またはブレンド物をバーまたはインゴットに成形し、その後最終製品に加工することによって解決することができる。切断された繊維の適当な長さは、材料中に導入されるナノ構造物の長さよりも大きいことが好ましい。例えば、200ないし300ミクロンの長さのナノチューブを含む繊維が形成されるときには、この範囲よりも短い長さの繊維に切断することは望ましくない。そうでなければ、これらのナノチューブはそれ自体切断されてしまう。このプロセスは、特にガラス、溶融シリカおよびメタルパウダーに好ましい。
【0076】
あるプロセスの応用または製造の操作では、層流を用いる代わりに、原料を変形、例えば塑性変形させる場合がある。これらの応用の例としては、金属バーを冷圧延またはワイヤ延伸して薄いシートまたはワイヤに成形することが挙げられる。このような操作の製品中にナノ構造物を導入、配列しようとすると、金属マトリックス中のナノ構造物の十分な分散、配列を達成することが困難なことがある。この困難を克服するために、供給材料を(この場合は金属であるが)、溶融可能、または溶融状態に加熱し、次いで混合または他の方法でナノ構造物と配合する。得られたブレンド物は次に好ましくは層流で流動化され、メタルマトリックス中にナノ構造物が分散、配列される。得られた複合供給材料は、次に冷却され、ナノ構造物の配列された配向が保持される。得られた複合材料は、次に冷圧延またはワイヤ延伸のような変形操作の原料として用いることができる。この方法においては、ワイヤ延伸操作の製品は、配列したナノ構造物の有効量を含むものとして容易に供給することができる。同様に、薄い金属シートまたはフォイルのような冷圧延操作の製品も、配列されたナノ構造物の有効量を含むものとして製造することができる。
【0077】
図19は、本発明における配列されたナノチューブを含む材料のワイヤまたはシートを製造するためのローラーおよびワイヤ延伸プロセスの説明図である。複数のローラー710を有する組立体700は、マトリックス材料740内に分散された配向、配列されたナノ構造物730の集合体を含む供給材料720を受け入れる。供給材料720は、対向する対のローラー710を通過して矢印A方向に進行するに従い、該材料720は所望の形状または寸法に変形される。
【0078】
図20は、2つの平行、または実質的に平行なプレートまたは壁の間の層流で流動する結果として生じるナノ構造物の配向および配列を説明する図である。組立体800は、第1のプレート810と、該第1のプレートから離間され、一般に互いに平行な第2プレートを有する。マトリックス材料850内に分散されたナノ構造物840を含む流動可能な材料830は、プレートまたは壁810と820の間で、層流方式(速度プロフィールの放物線形状)で流動される。流路の幅および深さは、本願で述べたように、または技術者が所望により設定することができる。例えば、厚さ全体に分散され、シートの平面に関して一般的に配列されたナノ構造物を有する比較的大形の広幅シートや、さらにシートの軸に沿って配列されたナノ構造物を有する比較的大形の広幅シートは、図20に示すような流路を通してこのような材料を流動させることによって形成することができる。ここでDに対するWの比は比較的大きい。
【0079】
図21は、ダイを通して材料を押し出すための組立ダイ900の説明図である。特に、この組立ダイ900では、マトリックス材料906内にナノ構造物950を含む材料980がコンテナまたは受容ユニット910内に導入される。該受容ユニット910は、取り外すことができるピストン920と出口940を有する。該ユニット910は、出口940の上流で狭い領域または通路930を区画する。押し出しダイが出口940に用いられてもよいことが理解される。ピストン920が矢印B方向に移動するにつれて、材料980は通路930を通して流れ、出口940から流れ出る。ここで説明するように、通路930内の流動条件は、その領域における流動が層流になるように選択されることが好ましい。その流れの速度プロフィールが放物線970になるように確立されることが好ましい。
原料の準備
【0080】
ナノチューブおよび/またはナノファイバーを乾燥ガラスフリットと混合し、該混合物を、窒素またはアルゴンを用いた不活性条件下で長時間粉砕し、該混合物内にナノチューブおよび/またはナノファイバーを分散させる。不活性雰囲気でそれらを覆うことは、それらの酸化を防止するのに役立つ。カーボンナノチューブ/ナノファイバーの中間環境から酸素を除去することは、高温で処理する間のそれらの劣化を防止するのに臨界的である。
ガラスファイバー延伸プロセス
【0081】
特にある場合または応用においては、マトリッリクス材料内のナノ構造物の配列をさらに促進するためにガラス延伸操作を用いることが好ましい。好ましいガラス延伸設備によれば、好ましくは直径7−10μmの連続した長さのガラスファイバーを製造することができる。このガラスはその融点まで加熱される。FまたはEガラス融点は約1200℃である。このプロセスで投入される材料は、その末端の用途によって異なる処方を有する固体Eガラスマーブル(またはフリット)である。溶融したガラスは、図5に示すように、それぞれ直径1.8mmの200個の末口を有する白金ブッシュのような複数のダイ中に重力により供給される。それぞれの繊維は、各末口から牽引され、直径1.8mmからそれらの繊維の最終的な平均直径に繊維化される。これは例えば7−10μmである。
テスト結果
【0082】
ガラスマイクロファイバーのようなマトリックス材料を、カーボンナノチューブ/カーボンナノファイバーのようなナノ構造物で強化する方法が提案され、実施することができる。それらの主な結果が示される。
【0083】
実施された研究においては、ガラスフィラメント中のカーボンナノファイバーの最終的な正確な濃度はわからず、調整されなかったが、推定された濃度によれば、本発明による優れた効果が認められた。40%カーボンナノファイバーを含むEガラス/カーボンナノファイバー試験片20gが静止した(undisturbed)Eガラス40ポンドを有するガラス延伸塔の溶融炉の中心に落下された。試験片と純Eガラスの比重の違いと、攪拌がないことにより、カーボンナノファイバーは溶融炉中では静止したガラスと均一に混合しなかった。
【0084】
高アスペクト比のナノ構造物が分散されたカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーとマトリックス材料としてのEガラスを含む溶融材料が得られ、これは、図5を参照して述べたように、ガラスファイバーブッシュ先口装置を用いて層流方式で流動され、流動マスは、さらに牽引、延伸操作を受け、これによりガラス複合材料の繊維が形成される。
【0085】
延伸されたフィラメントは、30−40μmのオーダーの直径を有する連続フィラメントであった。これらのフィラメントの径は、これらの繊維がより小さな径に牽引、巻き回されなかったので、正常の直径よりも大きかった。ベストケースのシナリオでは、ガラスフィラメント中のカーボンナノファイバーの濃度は、かなり低く、約0.25%から約0.5%のオーダーであると推定された。これは、これらのフィラメントの色の変化が肉眼で見られなかったという事実から確認された。しかしながら、図6に示されるように、長波長紫外光(354nm)に暴露された時には、金色領域内でカーボンナノファイバーを含むフィラメントの領域が蛍光発色した。同図はまた、貧弱な混合プロセスのために、それぞれのフィラメントの間のカーボンナノファイバーの予想された不均一な分布が確認されたことを示す。
【0086】
バルクカーボンナノチューブ材料で行われた光学テストによれば、可視スペクトル(赤外帯は調べられなかった)において蛍光発色が見られなかった。この挙動、すなわちガラスフィラメント中に分散された時に、そのバルクおよび強い蛍光において蛍光発色が見られないということは、分散したナノ状態では強い蛍光発色を有し、バルク状態では何も有しないバルクおよびナノシリコンの挙動を一致している。
【0087】
これらの研究で用いられるカーボンナノファイバーは、図7に示すように多層壁のカーボンナノファイバーである。図7は、3.0KV、13.2mn×20.0Kで撮られた多層壁カーボンナノファイバーの走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真図である。ここで用いられた多層壁カーボンナノファイバーは、Pyrograf Products, Inc., a subsidiary of Applied Sciences, Inc. of Cedarville, Ohio から得られたものである。表2は、加熱処理後のこれらの性質の公称値を示したものである。
【0088】
【表2】
【0089】
ハイブリッド繊維の主たる分析によれば、カーボンナノファイバーは、図8に示すように、Eガラスフィラメントの軸に沿って良好に分散、配列されていた。なお、図8は、3.0KV、13.4mm×9.00Kで撮られたSEM顕微鏡写真である。
【0090】
それぞれ約200フィラメントを含むガラス複合繊維の20トウの個体群について伸長テストが行われた。その結果、カーボンナノファイバーを含む繊維の引張強度は格段に増加することが示された。図9から明らかなように、カーボンナノチューブの濃度が増加するに従って複合繊維の破断荷重が増加した。伸長テストの結果は図9に示されたが、繊維の強度はほぼ60%、そして場合によっては2倍に増加することが認められた。
【0091】
ハイブリット繊維の破断表面は通常のEガラス繊維によって示されるものと相当異なっていた。図10は、図の左に示される破断片は、繊維中にカーボンナノファイバーが存在することにより、右のように相当変形していることがわかる。図10は、3.0KV、14.7mn×1.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(左)、および3.0KV、6.8mn×6.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(右)である。
【0092】
破断表面をよく検査すると、カーボンナノファイバーが非常によく分散され、図11に示すように、繊維軸の長さに沿ってよく配列されていることがわかる。図11は、3.0KV、13.4mn×8.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(左)、および3.0KV、13.4mn×18.0Kで撮られたSEN顕微鏡写真(右)である。
追加の態様
【0093】
窒化ホウ素ナノチューブを用いる複合材料に関して本発明の一人によって既に報告された仕事によって分かるように、ガラスマトリックス中に窒化ホウ素ナノチューブを4%導入することによって、ガラス燃料電池シール材料の強度が著しく改良されることが示された。図12および13に示されるように、ナノチューブの添加によってマトリックスの破断靭性(タフネス)は40%改善された。また強度がほぼ2倍になることが結果として示されている。これらの研究における窒化ホウ素ナノチューブの長さは、200−300μmのオーダーである。特に図12は、これらの研究で用いられた商業的に入手可能なガラスG18の破断靭性のグラフである。また窒化ホウ素ナノチューブ(BN NT)で強化されたガラスG18の結果も示される。破断靭性は、Klc[MPam0.5]として表わされる。図13は、これらの材料のWeibull強度分布を示す詳細図である。Weibull強度分布はlnln[1/(1-F)]である。Mは、Weibullモジュラス、およびsθは特性長さである。これらの結果は、窒化ホウ素ナノ構造物を用いた複合ガラス、セラミックおよび/または金属材料においても、本発明に従って有意義な物理的性質を得ることができることを示すものである。
【0094】
ここで引用されるすべての参考特許、特許出願および文献は、それらの全部がここに導入されているものである。
【0095】
本発明は、好ましい実施態様に対して述べられているが、これらの改良および変形は前述の説明を読み、理解すれば他にも適用できることが明らかである。このような改良や変形のすべてを含むように、実施態様として述べたものは意図しており、また本願で特許請求している範囲内またはその均等の範囲内において、それらが含まれる限りにおいて、そのように意図している。
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年6月9日に出願された米国仮出願No.60/812,389に基づく優先権を主張しているもので、ここでは参照のために導入される。
【0002】
本発明は、高強度性および他の有利な特性を示すナノ材料またはナノ構造物を用いた複合材料に関する。本発明はまたこのような複合材料を製造する種々のプロセスに関する。本発明は、ナノチューブおよびナノファイバーのようなナノ構造物を利用した複合材料に関連する特定の応用を見出し、特にこれらを参照して説明される。しかしながら、本発明は他の同様な応用に関して同様に適用可能であることが理解される。例えば、本発明は、ナノチューブおよびナノファイバー以外の、またはこれに加えて、他のナノ構造物を用いた複合材料およびプロセスに同様に関連する。
【背景技術】
【0003】
ナノ材料の発見、特にカーボンから形成されるナノ材料は、多くの研究者にとって大きな関心を有するものであった。これらの関心は種々のプロセスや応用を発展させ、それらの材料の独特の性質が明らかにされてきた。多くの潜在的な応用分野の中で、恐らく最も興味深いものは、ナノチューブまたは他のナノ構造物およびデバイスを用いる工業的複合材料の発達である。これらの材料を用いる現代の製品の例としては、例えば、スペースエレベーター、室温における超伝導性ワイヤおよびデバイス、並びに近破壊不能の装甲物があげられる。
【0004】
不幸なことに、複合材料、特にナノチューブまたは他のナノ構造物を用いてナノ複合マトリックスを形成することによって材料の性質を改善する方法、特にガラス、セラミックまたは金属に基づく材料には種々の困難があり、欠点を生ずるものであった。これらの欠点は、主としてファンデワールス力によりマトリックス材料内でナノチューブが分散し難いことを含み、またマトリックス中でナノチューブの配列および配向が困難であること、複合マトリックス内でナノチューブのサイズが短いこと、および工業スケールのプロセスではランダムに配向したナノチューブを扱うことが困難であることを含む。
【0005】
ナノ材料およびそれらの応用における現在の関心に先立って、複合材料を形成することによって材料の物理的性質を改善する種々の方法が発明されてきた。ガラスやセラミックの強度を増加させるためのこのようなアプローチは、ガラスまたはセラミック材料中に比較的大型の繊維または繊維束を導入することである。典型的には、このような繊維は炭素またはシリコンカーバイドからなるものである。この技術は、例えば1985年にRoeder et al.に対して付与されたドイツ特許DE3516920に記載されている。しかしながら、この技術は、ナノ材料に対するものではなく、マクロサイズの材料およびそれらの応用を目標にしたものである。従ってそのような方法で、ナノ材料を用い、導入されたナノ材料の顕著な性質を示す複合材料を得る方法が要望されていた。
【0006】
カーボンナノチューブを用いる複合材料に関して以前から研究が行われてきたが、特に非特許文献1において、Cha et al.は、銅粉内に均一に植えられたカーボンナノチューブの複合粉を加工するプロセスを述べている。このプロセスは“分子レベルの混合(molecular-level mixing)”と称され、得られた複合物は、極めて高い強度を有すると言われている。このプロセスは、従来知られた複合材料に比べて利点を有するものであるが、溶媒中でカーボンナノチューブを表面の機能化により懸濁させ、このカーボンナノチューブ懸濁液と銅イオンを混合し、次いで乾燥、焼成、および還元操作を行うことという、多くのプロセス操作を用いるものである。そのため、この方法は大規模な工業レベルで行うにはコストが掛かると思われる。さらに、この方法は金属マトリックス材料に限定されるようであり、ガラスやセラミックマトリックス材料に使用することができない。さらに、Cha et al.によって採用されたこれらの方法は、マトリックス材料中のナノチューブの貧弱な分散性、マトリックス中のナノチューブの貧弱な配列および配向性、複合材料中のサイズの欠陥に関連するナノチューブの短い長さ、および大規模なプロセスにおけるナノチューブのハンドリングに関連する困難性の問題を解決していない。
【0007】
また技術者は、工業プロセスのようにマクロスケールでより容易に用いることができる方法として、部材またはより大きな構造物中にナノ構造物を配合する方法を研究してきた。Zhang et al. は、非特許文献2において、多層壁のカーボンナノチューブの紡糸中に撚りを導入することを述べている。得られた多重トルク安定化ヤーンは高い引張強度、柔軟性および優れた靭性を有することが記載されている。高強度のヤーン製品が得られるとしても、この技術は、やはり工業レベルで実施するにはコストがかかり、必然的に単一材料の繊維のヤーンまたは集合物を形成することに限定されている。さらに、この技術はガラス、セラミックまたは金属マトリックスを用いる複合材料に関連するものではない。そしてこの方法は、材料マトリックス内でナノ構造物を配列、特に配向させる試みについての困難を克服することに関しては全く無言である。またこの方法は、極めて小さいナノチューブを処理する実用的な方法を示していない。
【0008】
Greywallは、特許文献1において、カーボンフィビリルおよびカーボンナノチューブのような小さいカーボン粒子を、ガラスのような流動可能な媒体中に分散させ、該粒子を互いに少なくとも部分的に配列させるようにガラスを延伸し、次いでガラス材料を取り除き、カーボン粒子、フィブリルおよび/またはナノチューブを、繊維またはストランドの形態に配合した集合物を得る、カーボンフィブリルおよびカーボンナノチューブのような小さなカーボン粒子を、繊維中に配合する方法を記載している。Greywallは、光学繊維を製造するための周知技術を用い、またガラス担体を取り除いてカーボン構造物のみからなる繊維を形成する化学または機械的な方法を用いている。Greywallの技術は、カーボン粒子、フィブリルおよび/またはナノチューブの単一繊維を製造するものである。Greywallは、カーボン粒子を媒体中に分散させる困難性については述べておらず、これは、媒体を除去する前に延伸操作を行い、粒子を配列および配向させるためである。ある点では満足することができても、粒子を配列させるために延伸操作を用いることは、全ての材料または全ての応用に関して必ずしも可能な訳ではない。さらにGreywallの方法は、単一材料の繊維を形成することを目指したものであり、他の材料内にナノ材料を導入し、導入されたナノ材料の顕著な性質の利益を得る複合材料を形成する方法に関するものではない。さらにGreywallの方法は、最終的に得られる材料の欠点を修正することに関しては無言である。従って、ガラス、セラミックまたは金属マトリックスを導入する改善された方法については課題が残されたままであり、また従来技術との問題点を克服し、導入されたナノ材料に関する物理的な性質をより十分に発揮する複合材料を形成することに関する要望は依然として残されたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国公開特許No.2005/0188727
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Extraordinary Strengthening Effect of Carbon Nanotubes in Metal-Matrix Nanocomposites Processed by Molecular-Level Mixing, Adv, Mater. 2005, 17, 1377-1381
【非特許文献2】Multifunctional Carbon Nanotube Yarns by Downsizing an Ancient Technology, Vol. 306, Science (November 19, 2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
マトリックス材料において、多くの方法論が提案され、ナノチューブおよび/またはナノファイバーの分散を改善することが現在試みられつつある。しかしながら、このような方法は、ある場合には周辺の一部を改善するに止まり、得られた材料内に余分の含有物や小孔の導入により弱いマトリックスを生じる結果となっている。従って、ナノチューブおよび/またはナノファイバーのようなナノ構造物に用いた複合材料を製造するための改善された方法が要望されている。特に、マトリックス材料中のナノチューブおよび/またはナノファイバーの分散性を改善する方法を研究することが望ましい。また同様にマトリックス材料内にナノ構造物を配列、配向させるための技術が望まれている。
【0012】
要するに、複合材料内にランダムに配向されたナノチューブおよび/またはより低い品質および低コストのナノファイバーを導入する現在の知られた方法は、得られた材料の性質および品質にある程度の改善を与える等方性のマトリックスを生じるのみである。得られた材料は、ナノチューブおよびナノファイバーの優れた方向性に基づく画期的な改善を示さないものであった。従って、優れた性質を示し、現在知られた材料やプロセスに関連する問題、例えば高度の欠陥や不十分な分散または配列不良のナノ構造物の問題を生じないような、ナノチューブおよび/またはナノファイバーを用いた複合材料の供給が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、アスペクト比が1.0を越える少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を含む高強度複合材料を製造するプロセスおよびマトリックス材料を供給することである。該プロセスはマトリックス材料を供給することを含み、該マトリックス材料が流動化するように該マトリックス材料を加熱することを含む。さらに該プロセスは、アスペクト比が1.0を越える少なくとも1つのタイプのナノ構造物を供給することを含む。また該プロセスは、該少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を該マトリックス材料と配合することを含む。さらに該プロセスは、該配合された量のナノ構造物とマトリックス材料を層流状態で流動化させ、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行な配向を起こすことを含む。さらに該プロセスは、該マトリックス内で平行な配向状態にある間に該複合材料を固化させ、高強力の複合材料を生成することを含む。
【0014】
他の態様において、本発明は、マトリックス材料中にナノ構造物を分散させ、配列させるプロセスを提供する。このプロセスは、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を選択することを含む。該プロセスは同様に流動化可能なマトリックス材料を供給することを含む。さらにこのプロセスは、流動化可能なマトリックス材料中に選択されたナノ構造物を配合することを含む。さらにこのプロセスは、この配合されたマトリックス材料と選択されたナノ構造物を一定時間、少なくとも多くのナノ構造物がマトリックス中で平行な配向を起こすのに十分な時間層流状態で流動させることを含む。
【0015】
さらに本発明の他の態様においては、高強度の複合材料が供給される。この材料は、マトリックス材料と、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量を含む。アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも多数が互いに平行に配向して配列される。
【0016】
さらに他の態様においては、本発明は、(i)第1のマトリックス材料と、(ii)該第1のマトリックス材料中に分散された、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量とを含む強化複合材料が提供される。この複合材料はまた第2のマトリックス材料を含む。該第1のマトリックス材料中の少なくとも多数のナノ構造物は、平行な配向で配列される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、流動体中のナノチューブまたはナノファイバーに作用する回転モーメントを示す力線図である。
【図2】図2は、層流状態で流動する材料の速度分布(プロフィール)を示す図である。
【図3】図3は、回転モーメントゼロの達成を示す力線図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい態様の複合材料中のカーボンナノファイバーおよび含有物のシアー(せん断)分散の説明図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい態様のプロセスの任意の操作において用いられるガラス繊維ブラッシングチップの詳細な赤外画像の図面である。
【図6】図6は、UV長波長(354nm)光で蛍光発色されたカーボンナノファイバーを含むフィラメントの写真図である。
【図7】図7は、本発明の好ましい態様の材料およびプロセスで用いられる多層カーボンナノファイバー/ナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい態様の複合物繊維中で良好に分散されたカーボンナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図9】図9は、新しい、好ましい態様の繊維の引張強度テストのグラフである。
【図10】図10は、カーボンナノファイバーを有する、または有しないEガラスフィラメントの破裂表面の顕微鏡写真図である。
【図11】図11は、好ましい態様のガラスファイバー中で良好に分散、配列されたカーボンナノチューブの顕微鏡写真図である。
【図12】図12は、ガラスおよびチッ化ホウ素強化ガラスの破断靭性を示す図である。
【図13】図13は、図12で示されたガラスおよびチッ化ホウ素ナノチューブ強化ガラスのWeibull強度分布のグラフである。
【図14】図14は、ガラスファイバーの延伸および製造プロセスの好ましい態様を示す説明図である。
【図15】図15は、本発明による好ましい態様の複合材料を示す断面説明図である。
【図16】図16は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す断面説明図である。
【図17】図17は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図17A】図17Aは、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図18】図18は、本発明による他の好ましい態様の複合材料を示す説明図である。
【図19】図19は、本発明に関連して用いることができる、ローラーおよびワイヤ延伸プロセスに用いられる組立体の説明図である。
【図20】図20は、本発明に関連して用いることができる材料の層流の説明図である。
【図21】図21は、本発明に関連して用いることができる押し出し組立体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明およびその好ましい態様は、ガラス、溶融シリカ、および金属マトリックス、およびその他の材料中に、ナノファイバーおよび/またはナノチューブ(NF/NT)のようなナノ構造物を導入または埋め込み、分散および配向させ、例外的に強いナノ構造物であるガラスファイバー、金属ワイヤ、シート、プレート、および高い物理的、熱的および電気的性質を有する構造物を製造することに関する。本発明のある態様においては、ナノファイバーおよび/またはナノチューブは、材料のマトリックス内に高度に配置された、または他の方法で均一に配向される。
【0019】
本発明は、広い観点においては、マトリックス材料中にナノ構造物の集合物を分散、解繊または必要に応じて分離、および/または選択的に配列させる独特の迅速な方法を提供する。この方法は、配合されたマトリックス材料とナノ材料を流動化状態に変換し、次いでこの配合物を流動化させる。流動はほとんどどのようなタイプのチャンネル、ダクト、または囲い内で起きる。ある応用においては、このような流動は、支持体のような単一表面上でのみ起こると考えられている。本発明でより詳細に説明されるように、配合されたマスの流動は、層流形式であることが好ましい。さらにこの流動の速度分布(プロフィール)は放物線状を示すか、または実質的にそのような形を取ることが好ましい。このタイプの流動は、速度差を生じ、次いでナノ構造物に回転または旋回モーメントを付与する。
【0020】
本発明およびその種々な好ましい態様を述べる前に、一般的にナノテクノロジーおよび本願で用いられる種々の用語について考慮することが有益である。
【0021】
ナノスケール化された材料は、マクロスケールでそれらの材料が示すものに比べて非常に異なる性質を突如示すことができる。例えば不透明な物質が透明になったり(銅)、不活性物質が触媒になったり(白金)、安定な物質が燃焼可能になったり(アルミニウム)、固体が室温で液体に変わったり(金)、また絶縁体が導体になったり(シリコン)する。特に金のような材料は、通常のスケールでは化学的に不活性であるが、ナノスケールでは強力な化学触媒として作用する。ナノテクノロジーについての魅力の多くは、ナノスケールで物質が示すこれらの独特の量子的および表面の現象から来るものである。
【0022】
ここで用いられる用語として、ナノ構造物は、分子と顕微鏡(顕微鏡サイズ)上の構造物の中間のサイズを有する構造物である。ナノ構造物を述べる場合、ナノスケールの次元数で区別すると都合が良い。ナノ組織表面のような一次元のナノ構造物は、ナノスケール上の一次元、すなわちそのような目的物の表面の厚さのみが0.1および100nmの間の厚さを有する。比較的長いナノチューブのような二次元のナノ構造物は、ナノスケール上で二次元を有する。すなわちナノチューブの直径は0.1と100nmの間である。しかしながらその長さはこれより長く、ナノスケールを超えている。最後の三次元ナノ構造物、球状のナノ粒子はナノスケール上で三次元を有する。すなわちその粒子はそれぞれの空間寸法で0.1と100nmである。三次元構造物の他の例は、比較的短いナノチューブ、すなわちチューブの長さおよび半径が0.1と100nmの間のものである。本発明は、全てのこれらのタイプのナノ構造物の使用を包含する。
【0023】
特にナノチューブは、ナノメータースケールのワイヤ状の構造物で、最も多くはカーボンから成るものである。一般に、これらの構造物は、解放または中空の内部を有する。
【0024】
カーボンナノチューブ(CNTs)はカーボンの同素体である。単一壁のカーボンナノチューブは、ナノメーターのオーダーの直径を有する、シームレスのシリンダー状に巻かれたグラファイト(グラフィームと呼ばれる)の一原子厚さのシートである。長さ対直径比は通常10,000を超えるナノ構造物となる。このようなシリンダー状のカーボン分子は、ナノテクノロジー、エレクトロニクス、光学およびその他の材料科学の分野で、広範囲の応用において、潜在的にこれらを有用にする新しい性質を有している。これらは、極めて高い強度と、独特の電気的性質を示し、また熱の効果的な伝導体である。無機ナノチューブも同様に合成されている。
【0025】
カーボンナノチューブはフラーレン(fullerene)構造族のメンバーであり、同様にバッキーボールを含む。バッキーボールは形が球状であるが、ナノチューブは円柱状であり、少なくともその一端は、バッキーボール構造物の半球でキャップされている。それらの名称は、ナノチューブの直径が数nmのオーダーであることから、それらのサイズからくるものであるが、それらの長さは数mmまで可能である。2つの主なタイプのナノチューブがあり、1つは単一壁のナノチューブ(SWNTs)、他は多層壁ナノチューブ(MWNTs)である。
【0026】
ナノチューブの結合の性質は、量子化学、特に軌道交雑形成によって説明される。ナノチューブの化学的結合は、グラファイトのそれらと同じくsp2結合からなる。この結合構造は、ダイヤモンドで見出されるsp3配合よりも強力で、独特の強度を有する分子を与える。ナノチューブは、ファンデワールス力によって互いに保持された「ロープ(ropes)」中に自己配列される。高圧下では、ナノチューブは互いに合流し、sp2結合を若干sp3結合と交換し、高圧ナノチューブ結合を通して強力な無制限の長さを生じる大きな可能性を与える。
【0027】
ここで用いられるナノファイバーという用語は、極めて長く配列されたナノチューブの列である。最も大きい単一壁のナノチューブ(SWNT)は、1ナノメーターに近い直径を有し、チューブの長さはその何千倍かの長さが可能である。センチメーターのオーダーの長さを有する単一壁のナノチューブが製造されたことがある。SWNTの構造は、グラファイト、すなわちグラフィーム(grapheme)の1原子厚さの層をシームレスのシリンダー状にラップすることによって概念化することができる。
【0028】
単一壁のナノチューブは、多層壁のカーボンナノチューブ(MWNT)の異形体では得られない重要な電気的性質を示すので、非常に重要なカーボンナノチューブ類である。単一壁のナノチューブは、現在、近代エレクトロニクスのベースとなっている、マイクロエレクトロメカニカルスケールを超えてエレクトロニクスを小型化するための、最も有力な候補である。これらのシステムの最も基礎的なビルディングブロックは電線であり、そしてSWNTsは優れた導体となる。
【0029】
多層壁ナノチューブ(MWNT)は、チューブの形状になるように重ね合わせて巻き込まれた多層グラファイトからなる。多層壁ナノチューブの構造物と呼ばれている2つのモデルがある。ロシア人形モデルでは、グラファイトのシートが同芯のシリンダー状に配列されている。パーチメントモデルでは、グラファイトの単一シートがそれ自体の周りに巻かれており、パーチメント(羊皮紙)の巻物または新聞紙を巻き上げたものに似ている。多層壁ナノチューブの内層の距離は、グラファイト中のグラフィーム層の間の距離約3.3Åに近い。二重壁カーボンナノチューブ(DWNT)の特別な性質は、それらの化学耐性を著しく改善する一方、SWNTに非常に近似した形態および性質を併せ持っていることが強調される。これは、カーボンナノチューブに新しい性質を加えるために、機能化が要求される場合(従ってナノチューブの表面において化学的機能をグラフトさせる場合)に特に重要である。SWNTの場合には、共軛機能化は、あるC=C二重結合を破壊し、ナノチューブ上の構造物中に“ホール”を残し、その機械的および電気的性質の両方を変更する。DWNTの場合には、外側壁のみが変更される。
【0030】
どのような材料であっても、欠陥の存在はその材料の性質に影響を与える。ナノチューブにおける欠陥は、原子空位の形態で起こる。ハイレベルのこのような欠陥は引張強度を85%にまで低下させることがある。カーボンナノチューブにおいて起こる欠陥の他のよく知られた形態は、ストーンウォール欠陥として知られており、結合の再配列によって五角形と六角形の対を生成する。カーボンナノチューブの非常に小さい構造のために、該チューブの引張強度は、連鎖に対するのと同様に、ナノチューブの最も弱いセグメントに依存し、そこでは単一リンクの欠陥が全体の連鎖の強度を減少させる。
【0031】
ナノチューブの電気的な性質は、同様に欠陥の存在によって影響を受ける。共通な結果としてナノチューブの欠陥領域を通して導電率がより低下する。アームチェアタイプのチューブ(導電可能な)におけるある欠陥の生成は、その欠陥の周りに半導体となる領域を生じる。さらに単一モノ原子空位は磁気的性質を誘起する。
【0032】
本発明は、(i)ナノチューブおよびナノファイバーのような1以上のナノ構造物、および、(ii)1以上のマトリックス材料を含む複合材料に関する。ナノ構造物の材料は、カ^ボンまたはカーボンベースのものであるが、例えば窒化ホウ素およびシリコンカーバイトのような他の材料を含むか、代わりに用いることができる。ここで述べる好ましい態様の複合材料において用いられる選択されたナノ構造物は、例えばナノチューブ(ツイストナノチューブおよびアームチェアまたはノーツイスト(no twist)ナノチューブを含む)、ナノファイバー、ナノチューブリング、ナノ粒子およびこれらの組み合わせのような、ほぼどのようなナノ構造物の形態を取ってもよい。種々の好ましい態様で用いられる好ましいナノ構造物は、1.0を越えるアスペクト比を有する。ここで用いられる「アスペクト比」という用語は、ナノ構造物の最も短い寸法に対するナノ構造物の最も長い寸法の比率をいう。理解されるように、ナノ粒子またはバッキーボールのような球状物のアスペクト比は1.0である。これに対して、ナノチューブまたはナノファイバーのような円柱(cylindrical)、ワイヤまたはストランド状物のアスペクト比は、該ナノ構造物の長さを該ナノ構造物のスパン、幅または直径で割った比率である。ナノチューブのアスペクト比は1.0を越え、10,000またはそれ以上のような高い場合もある。前述のように、センチメートルのオーダーの長さを有する単一壁のナノチューブが知られている。これらのナノチューブのアスペクト比は約1,000,000である。好ましいナノ構造物はカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、これらは単一またはそれぞれの組み合わせで用いられる。ナノ構造物は薄い層またはシートの形で用いることができる。例えば、あるシリカ材料はナノシートの形に形成することができる。このようなナノシート材料は、本発明で用いることができ、流動マトリックス材料中に分散、配列させることができる。ナノシートのアスペクト比は、該シートの厚さに対する該シートの長さまたは幅(一般に、これらの二つの次元の最も長いもの)の比である。
【0033】
ナノ構造物の広いアレイは市場で入手可能である。例えばApplied Sciences、Inc., of Cedarville, Ohioは、種々のカーボンナノチューブを供給しており、そしてその子会社であるPyrograf Products, Inc.はナノファイバーを供給している。適当なナノ構造物の他のコマーシャルソースとしては、特に限定されるものではないが、Swan Chemical, Inc. of Lyndhust, New Jersey, Nanolab of Newton, Massachusetts,および Ahwahnee Technology of San Jose, California がある。
【0034】
本発明における好ましい態様のプロセスおよびその結果として得られる複合材料に用いられるナノ構造物は、元素または化合物の広い配列から形成することができる。カーボンが好ましい候補材料であるが、他の元素または化合物を使用することができる。限定される例によれば、窒化ホウ素、シリコンカーバイトおよびこれらの組み合わせがある。
【0035】
好ましい実施態様の複合材料で用いられるマトリックス材料としては、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせ、並びにこれらの合金のような材料の広い配列から選択することができる。ガラスと金属はマトリックス材料として好ましく用いられる。ほとんどどのようなタイプのガラスも使用可能である。最も多く使用されるガラスとしては、ケイ酸塩(SiO2)ほう酸塩(B2O3)、ゲルマニウム塩(GeO2)またはこれらの混合物のような酸化物ベースのものである。溶融シリカは、技術者によってガラスと考えられているかもしれない。溶融シリカは純粋またはほとんど純粋なSiO2である。その構造のために、ガラス材料は典型的には特定の融点を示さないが、固体から溶融まである温度範囲で転移する。しかしながら、マトリックス材料としてガラスを用いる本発明の態様を述べる際には、融点という用語は、ガラス材料がその中に分散するナノ構造物を配向させるのに十分な流動を受ける最低温度を言うために用いられる。特に好ましいガラスは「Eガラス」である。Eガラスは、低アルカリホウケイ酸塩ガラスであり、良好な電気的、機械的性質と良好な化学耐性を有する。Eという定義は電気的のためである。Eガラスは、多くの供給者から商業的に入手可能である。マトリックス材料としては金属および/または合金の広い配列を用いることができ、このようなマトリックス材料としては、アルミニウム、アルミ合金、アンチモンおよびそれらの合金、クロムおよびそれらの合金、コバルトおよびそれらの合金、銅およびそれらの合金が挙げられ、銅合金としてはレッドブラスおよびイエローブラスを含む真鍮、ベリリウム銅およびカプロニッケル、金およびそれらの合金、鉄およびそれらの合金で、鋼、ステンレス鋼のようなもの、およびモネル(Monel、登録商標)、鉛およびそれらの合金、マグネシウムおよびそれらの合金、マンガンおよびそれらの合金で、ブロンズマンガンのようなもの、モリブデンおよびそれらの合金、ニッケルおよびそれらの合金で、ハステロイ(Hastelloy、登録商標)およびインコネル(Inconel、登録商標)のようなもの、パラジウムおよびそれらの合金、白金およびそれらの合金、銀およびそれらの合金、タンタルおよびそれらの合金、錫およびそれらの合金、チタンおよびそれらの合金、タングステンおよびそれらの合金、バナジウムおよびそれらの合金、亜鉛およびそれらの合金、およびジルコウニウムおよびそれらの合金が挙げられる。好ましい金属は、限定される訳ではないが、銅、アルミニウムおよびチタンである。
【0036】
一般に、どのようなマトリックス材料でも、ナノ材料の融点より低い温度で流動化、または液体状態に転移でき、そのナノ材料と相溶性があれば、使用することができる。多くのカーボン材料は、約3500℃のオーダーでの融点を有するので、その温度より低い融点を有する、ほぼどのようなマトリックス金属も適当な候補となり得る。従ってほとんど全ての金属またはそれらの合金は、融点が3500℃より低いので、マトリックス材料として使用可能である。
【0037】
好ましい実施態様の複合材料は、追加的な成分および元素を含むことができ、限定されるものではないが、フィラー、溶剤、エクテンダー、改質剤、粘度調整剤、硬度改質剤、光学剤、およびこれらの組み合わせを用いることができる。
【0038】
好ましい態様の複合材料は有効量のナノ構造物を含む。ここで用いられる有効量という用語は、ここでいう複合材料のマトリックス材料中に導入されたときに、結果として望ましい性質または特性を示す複合材料が得られる特定のナノ構造物の量を言う。一般的には、ナノ構造物の有効量は、該複合材料の約0.25ないし約20%であり、より好ましくは約2%から約10%である(ここで示される全ての百分率は別記されない限り該複合材料の重量百分率である)。ナノ構造物としてカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーを用いるときは、該複合材料中に該複合材料の全重量を基準として約0.1%から約25%、より好ましくは約1%から約15%、さらに好ましくは約2%から約10%の範囲のカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーの有効量が好ましい。
【0039】
本発明の好ましい態様の複合材料は、マトリックス材料中に互いに平行な配向状態で配列した、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を含む。好ましくは、ナノ構造物の少なくとも大多数、すなわち少なくとも50%が平行な配向状態で配向している。より好ましくは、ナノ構造物の少なくとも70%が平行に配向している。さらにより好ましくは少なくとも90%のナノ構造物が平行は配向状態で配向している。ある場合に、ナノ構造物の少なくとも95%がこの平行な配向で配向している。そして最も好ましくは、ナノ構造物の少なくとも99%が平行な配向状態で配向している。
【0040】
これまで述べたように、本発明は、またガラスまたは金属マトリックス中に分散したカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーのように、1またはそれ以上のナノ構造物の組み合わせに基づく、種々の好ましい態様の複合材料に関する。このような材料は、高性能のガラスおよび金属ナノ複合繊維、シートおよびナノ複合フライホイールリングの製造に用いることができると思われる。
【0041】
このような材料の代表的な例としては、限定されるものではないが、最小引張強度が20−25GPaおよび最小引張弾性率が200−250GPaを有する繊維形態の高性能複合ガラス/ナノチューブ材料が挙げられる。このような材料は、ホットローリングによって輪の方向に配向した、ナノファイバーおよび/またはナノチューブを有する高性能フライホイールリングに用いることができる。また種々のタイプのナノチューブおよび/またはナノファイバーを、銅、アルミニウムおよびチタンのような1またはそれ以上の金属を結合させることにより、高性能の熱的および電気的性質を有する、高性能のナノ複合ワイヤ、シートメタル、およびバルク材料とすることが考えられる。
【0042】
上述のように、本発明を用いた広範囲の複合材料製品が生成される。例えば、ここで述べた分散、配列されたナノ構造物で強化されたマトリックス材料の繊維またはストランドは、第2の材料中に導入され、該第2の材料に有益な性質を付与することができる。例えば、ここで述べたナノ材料で強化されたガラスファイバーを製造することができる。有効量の強化ガラス繊維が第2の材料中に導入され、該第2の材料に引張強度のような望ましい物理的性質を付与することができる。このような第2の材料の代表例としては、限定されるものではないが、高分子物質、ガラス、金属、セルロースベースの材料、およびこれらの組み合わせまたは複合物が挙げられる。他の代表例としては、繊維または織性複合材料中に導入される、ナノ構造物で強化されたガラス繊維の導入である。この技術では、ナノ構造物で強化された繊維がランダムに配向された繊維マット中に導入され、次いで公知の方法で処理することができる。上記の代わりに、ナノ構造物で強化された繊維を、配列された、比較的フラットな平面または層中に導入することができ、そして多層繊維集成体として用いることができる。これらの繊維は、またランダムに配向した繊維の薄いシートで用いることができる。
【0043】
さらにマトリックス材料中にナノ構造物強化繊維を導入し、複合材料の層を形成することが考えられる。これらの層は、次いで望ましいように積層されるが、また他の方法で結合することができる。
【0044】
ある応用では、このような複合材料の層を形成することが望ましく、このような複合材料においては、予め定められた割合のナノ構造物強化繊維が互いに配列されるか、および/または複合材料の層に関してある方向に配列される。このような積層および配列された層の集合物を形成することができる。この方法は、特定の方向に極めて高い強度を有する複合材料の製造が可能となる。
【0045】
このようにして、本発明は、その中に分散された第1のマトリックス材料と、ここで述べられたような有効量のナノ構造物を用いる複合材料を含むことが理解される。ナノ構造物と第1の材料の複合物は、次いで第2のマトリックス材料と結合させることができる。この第2のマトリックス材料は、ここで述べたようなナノ構造物、慣用的な強化材料または添加物を含んでもよく、またはそれ自体として用いてもよい。得られた複合材料は、互いに緊密に混合されるか、分離した領域に分散された種々の配置で第1のマトリックス材料(およびナノ構造物)と第2のマトリックス材料を形成してもよい。同様に次のようなマトリックス材料を用いることが考慮される。
【0046】
一般に、好ましいナノ複合材料の特性は、カーボンナノチューブの初期の結果および種々の公表され、または開発された性質に基づいて予測することができる。本発明の好ましい実施態様の複合材料において用いられる、好ましいナノ材料の種々の物理的性質が、下記の表1でいくつかの公知の材料と比較される。
【0047】
【表1】
【0048】
より詳細に説明すれば、ガラスマトリックス中に分散されたカーボンナノファイバーを含む複合材料から繊維が製造された。これらの繊維の集合物は、次いでトウに形成され、すなわち連続的な無撚のフィラメントの無撚の束に形成される。引張強度テストによれば、複合繊維中のカーボンナノファイバーの濃度が比較的低くても、例えば約0.25から約0.5%と低く、各フィラメント(198フィラメント)中で不均一なものであっても、このハイブリッド繊維の強度はいくつかのサンプルにおいて理論値の平均60%より高く、100%近くに達することがあった。該繊維の引張強度は、その熱的、電気的性質と共に、濃度および使用されるナノチューブ/ナノファイバーのタイプおよび/またはブレンドに依存して、かなり増加することが予測される。
【0049】
好ましい実施態様の材料は、ナノ複合マトリックスの熱押し出し金属クーポン(板状試験片)または中間製品を製造するために用いることができる。これらのクーポンはホットプレス操作を用いて製造することができる。一般に、該プロセスは、不活性条件下の混合またはミリングによって金属粉中にナノチューブのようなナノ構造物を分散させることを含む。混合物は、不活性条件下でホットプレスチャンバー内のグラファイトジグ内で溶融される。溶融後、該溶融物はジグの底部のホールを通して押し出され、これによって高圧下で必然的に出口ダイを形成する。該プロセスによって、ジグ底部のダイの寸法および形状に依存してワイヤおよび/またはフラットリボンクーポンを製造することができる。
【0050】
カーボンナノファイバーを含む複合金属繊維は、下記のように形成することができる。Pyrograf Products, Inc. of Applied Sciences Inc., of Cedarville, Ohioから入手可能な2つのタイプのカーボンナノファイバーが次のように処理される。
1.PR LH 24 CNFが1500℃で処理され、その機械的および電気的性質が最適化される。
2.PR HH 24 CNFが3000℃で処理され、その熱的性質が最適化される。
【0051】
複合物繊維が次いでここで述べるように形成される。複合物中のカーボンナノファイバーの濃度は約0.1から約14%の範囲が可能である。14%濃度のカーボンナノファイバーの容積は金属マトリックスの濃度をほとんど超えるようである。さらに複合材料中に、窒化ホウ素およびシリコンカーバイドから成るナノチューブのような他のタイプのナノチューブを用いることによって、得られるナノ組成物の性能を高めることができる。
【0052】
チッ化ホウ素ナノチューブを用いた複合材料の初めて公表された結果によれば、本発明者の一人はガラス組成物の強度および破断靭性の大幅な増加を報告している(N.P. Bansal and J.B. Hurst, “Boron Nitride Nanotubes-Reinforced Glass Composites,” NASA/TM-2005-213874参照、 prepared for the 30th International Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites, sponsored by the American Ceramic Society, Cocoa Beach, Florida, January 22-27, 2006参照)。この仕事は、当該技術において大幅な進歩を与えるものの、本発明のような問題については言及していない。
【0053】
本発明によれば、ナノ構造物を用いた複合材料の広い配列を製造することができる。図15−18は、本発明による、配向されたナノ構造物を用いる、そのような製品の若干の代表例を示したものである。本発明は、このような代表例に限定されるものではないことは言うまでもない。図15は、第1のマトリックス材料312内に分散された配列されたナノ構造部320を含む、複数の強化繊維またはストランド310を有する好ましい複合材料300の断面図である。繊維310は、典型的には1またはそれ以上の添加物またはその他の成分335を任意に含む第2のマトリックス材料330内に分散されている。該ナノ構造物320は、一般に互いに配列され、好ましくは、それぞれの繊維310の長さ方向の軸に一般に平行に配列されている。分散されたナノ構造物320を有する繊維310は、好ましくはここで述べたように生成される。該繊維310は、第2のマトリックス材料330内に配列されるか、またはその他の方法で選択的に配向することができ、または図15に示すようにランダムに配向することができる。
【0054】
図16は、本発明による他の好ましい複合材料400の断面図である。材料400は、2またはそれ以上の、一般的に分離した領域AおよびBを有する。領域Aは、第1マトリックス材料412内に分散、配列されたナノ構造物420を含む繊維またはストランド410を有する。該繊維410は、任意的な添加物または成分435と共に第2マトリックス材料430内に分散される。領域Aの態様は、繊維410または少なくとも一部の繊維410が領域A内に配列されるものである。領域Bは、第3マトリックス材料417内に分散、配列されたナノ構造物425を含む繊維またはストランド415を有する。繊維415は、任意的な添加物または成分445と共に第4のマトリックス材料440内に分散されている。領域B内では、繊維440の全部または一部がその層内に配列されている。第1、第2、第3および第4のマトリックス材料の全部またはいくつかは、同じかまたは異なっていてもよいことが理解される。図16に示された態様は、隣接する領域でナノ構造物の配向が垂直になっている配置を例示したものである。本発明は、異なる領域におけるナノ構造物のそれぞれの配向が互いに平行であるか、または複合材料400について特定の角度を有するような配置を有する。図16は、平面構造を示しているが、本発明は、異なる領域の凝集体のような構造も含むことが理解される。
【0055】
図17および17Aは、本発明による他の好ましい態様の複合製品500を示すものである。製品500は、繊維質であり、マトリックス材料525内に分散、配列されたナノ構造物530を含む複数の繊維またはストランド520を有する。製品500は、該製品500内に導入された1またはそれ以上の追加の繊維510を任意的に含む。製品500は、ランダムに配向された繊維を含むものとして描かれているが、本発明は、繊維、特に繊維520のように配列されたナノ構造物を含む複合製品が、織物繊維層のように配向または配列されたアレイ内に配置されることが理解される。
【0056】
図18は、他の好ましい複合材料600を示すもので、610および630のような複数の薄層を有する。1またはそれ以上の層は、配列されたナノ構造物を含む繊維または他の粒子を含む。例えば、層610は複数の繊維620を含む、各繊維は、それらの内部または構造内に導入されたナノ構造物の配列を有する。好ましくは、繊維620は層610内に配列されている。層630は、1以上のタイプの第2の繊維640を含み、該第2の繊維640は、繊維620と同じタイプか、または通常添加される繊維のように異なっていてもよい。繊維640は、層630内でランダムに配向されているが、本発明においては他の配向が考えられ、これらが含まれていてもよい。層610および630のそれぞれは、導入された繊維を保持するためにバインディング材料または他のマトリックス材料を含む。
【0057】
図15−18で示されて態様の全部は、配列されたナノ構造物を有する繊維を用いたものであるが、本発明は、配列されたナノ構造物を含むシート状の構造物、およびほぼどのような幾何学形状を有する構造物のような他の配置を含むことが理解される。
【0058】
本発明は、またこれまで述べた複合材料を形成する方法に関する。好ましい態様の方法の重要な態様は、マトリックス材料中にナノ構造物を最終的に分散、配列することを、該マトリックス材料、例えばガラスまたは金属が流動化または溶融状態にあるときに高温で行なうこと、およびナノ構造物間のファンデワールス力が極めて弱い状態にある間に行なうことである。もし該マトリックスが1以上の金属を含む場合には、マトリックスを流動化状態で供給することは、金属中の粒状構造物の存在を同様に排除することになる。この方法は、高アスペクト比のナノチューブがスラリまたは他の流動化可能なマトリックス内に導入され、その混合物が層流方式で流動化されるときに、該ナノチューブは流れの方向に沿ってそれ自体配列されるという事実を活用したものである。高い粘性、粘弾性および塑性流動における剪断力は大きく、容易にファンデワールス力を克服することができる。従ってナノチューブは凝集および他の欠点の生成を排除する。材料が流動可能または溶融状態にある間にこれらを処理する工程の組み合わせによって、マトリックスの表面上のみならず、マトリックスまたは粒状構造内に埋め込まれ、良好に分散、配列されたナノチューブを有する、極めて強力なナノ複合物(アロイ)が結果的に得られることは驚くべきことである。
【0059】
さらに詳しくは、ここで述べる好ましい態様のプロセスの重要な点は、配合されたナノ構造物とマトリックス材料の層流を引き起こすように、プロセスのパラメータを選択することである。この方法は、少なくとも一部の、典型的には多数または全てのナノ構造物を分散させ、そしてマトリックス材料内に平行な配向を生じさせる。好ましくは、この平行に配向されたナノ構造物は、同様に流れ方向と実質的に平行に配向される。
【0060】
層流は、ある場合には流線流として知られているが、これは、層間の乱れがないか、少ししかない、平行または一般的に平行な層で流体が流れるときに起こる。流体力学において、層流は、高い運動量の拡散、低い運動量の対流、および時間から独立した圧力および速度によって特徴づけられる流動形式である。一般に、層流は乱流に対するものである。当業者に理解されるように、層流は一般にレイノルズ数として知られる無次元のパラメータによって表わされる。層流は、特にレイノルズ数が約2300より以下であるときに層流状態であると一般的に考えられている流動システムである。一般に、レイノルズ数(Re)は、動圧(p*u2)と剪断応力(μ*u/L)の比である。
【数1】
ここで、Re=レイノルズ数(無次元)
p=流体密度
u=平均流体速度
μ=絶対動的流体粘度、および
L=特性長さ。
一般に、レイノルズ数が約4000を越えるときには、その流動システムは乱流と考えられている。約2300と約4000の間の領域においては、その流れは過渡的なものと考えられている。
【0061】
本発明によれば、流動可能なマトリックス材料およびその中に導入されたナノ構造物は、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行な配向を受けるのに十分な時間、層流で流動される。その時間は、該マトリックス材料およびナノ構造物の性質、流動特性、システムパラメータに依存して変化する。特定の時間範囲に限定することは望まれないが、1秒以下のオーダー、また他の応用では数分間までの時間が考えられる。
【0062】
本発明の好ましいプロセスでは、マトリックス材料が流動化状態に変換される。好ましくは、これは加熱によって行われる。ガラスまたは溶融シリカ材料では、該材料が加熱される最も低い温度は一般にそのガラスまたはシリカ材料の溶融または液相温度に対応するほとんどのガラスおよび/またはシリカでは、この温度は約1000℃から約1600℃であり、より好ましくは約1000℃から約1200℃である。マトリックス材料としての金属については、最も低い温度は一般に該金属の溶融温度に対応する。ほとんどの金属では、約600℃から約2000℃、より好ましくは約800℃から約1200℃である。
【0063】
熱マトリックス材料中にナノ構造物が適当に分散、配列された後、好ましくは該システムの層流が確立される結果、少なくとも多数のナノ構造物が該マトリックス材料内で平行に配向した後、該マトリックス材料は固化され、該ナノ構造物の配向が保持される。固化は、該マトリックス材料を冷却することによって行なうことができる。水または高い熱容量を有する他の液体と接触させることが好ましい。
【0064】
カーボンナノチューブを含む多くの形態におけるカーボンは、大気または富酸素環境中で400℃を超える温度に晒されると劣化する。この結果により、多くの研究者は、典型的には1000℃に近い温度(Eガラスでは1200℃)で処理されるガラス溶融物のような熱マトリックス中にカーボンナノチューブを埋め込むことは不可能であると結論付けてきた。これを念頭に入れると、文献では、400℃を超える温度で処理されるマトリックス中にカーボンナノチューブ/カーボンナノファイバーを導入することを必然的に排除しようとしていることは驚くにはあたらない。
【0065】
この事柄に関する通常の見解に拘わらず、本発明者らは、ガラスのような、例えば1000℃ないし1600℃の高温中にナノチューブを導入または埋め込む研究を行なった。このような方法で、熱マトリックス中でカーボンナノチューブを保護することに成功することを発見したのは驚くべきことであった。より詳細に説明すると、カーボンナノファイバー(CNF)は、比較的高いプロセス温度、例えば典型的には約1200℃の温度で生き延びるのみならず、層流が確立されていれば、ガラスまたはメタルマトリックス内でそれら自身が容易に分散、配列可能であることが示された。さらに驚くべきことには、不活性条件下でガラスフリットとナノチューブの混合物を、その後熱プレスしても、ナノチューブに何ら検出可能なダメージを生じなかった。従って、複合材料の成分、例えばナノ材料、およびマトリックス材料は、加熱操作前、または加熱操作中に混合することができると考えられる。さらにナノチューブは1600℃に近い温度で1時間を超えて熱プレスしても生存していることがわかった。1600℃の温度は、ナノチューブの作業温度の上限というよりも、これらの研究で用いられた最高温度である。その上限は決定されないままである。
【0066】
これらの発見は、ガラス繊維延伸設備を用いて追加的な研究が行われ、後に確認されたものである。ここでさらに詳しく述べるサンプルは、1200℃の温度のガラス溶融物中に直接投入された。その結果、熱ガラス繊維延伸プロセス中で生存しているカーボンナノファイバーが、電子顕微鏡映像および長波長UV光によって励起された光学蛍光で確認された。
【0067】
図14は好ましい態様のガラス繊維延伸システム100のプロセス図である。このシステム100は、好ましくは流動可能または十分に加熱された状態にある複合材料源110を有する。流動化可能な材料は流動ライン120を通ってブッシングまたはダイ組立体130に移される。前に説明したように、この流れは、マトリックス材料中のナノチューブが分散、配列するような層流である。該ブッシングは、好ましくは流動化可能な材料が通過するダイまたは通路の集合体を含む。これらのダイまたは通路により、材料が形成され、比較的細い繊維またはストランドが形成される。得られた繊維140の集合体は、次に典型的にはこの材料の温度よりも低い水を放出するスプレー150を用いることにより、冷却固化される。該マトリックス材料は、熱交換により冷却、固化される。繊維集合体は、次にサイジング機160を通過し、該サイジング機により繊維に付着防止剤および/または特別なコーティング剤が被覆され、マトリックス材料に対するより良好な配合が可能になる。サイジング機の使用およびこのような操作の設備は任意的なものである。繊維180群の結束または形成を助けるために、ギャザリングシュー170を用いることができる。繊維180の集合体は次にトラバースユニット190に向けられ、該繊維180は矢印AA方向に往復運動が与えられ、ワインダー200によってスプールまたは他のコンテナの周りに巻かれる。
【0068】
ある応用においては、不活性雰囲気中で好ましい態様のプロセスまたは一部のプロセスを行なうことが好ましい。「不活性雰囲気」という用語は、非反応性ガスの環境、および特に酸素の実質的に無い雰囲気を言う。不活性雰囲気の例としては、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドンのような貴ガス、および/またはヘリウムおよびネオンのような元素状態で存在する不活性ガスを含むものである。不活性雰囲気の追加の例としては、炭素ガスおよび/または窒素のような一般的に非反応性ガスを含むものがある。好ましくは、不活性雰囲気は、1以上の窒素、アルゴンおよび二酸化炭素を含むものである。しかしながら、多くの応用においては、不活性雰囲気を必ずしも要しないことが理解される。なぜならば、一旦ナノ構造物がマトリックス材料中に導入されると、該マトリックス材料によってナノ構造物が実質的に大気からシールされるからである。
【0069】
本発明およびここで述べた種々の好ましい態様の利点は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーで実施するときに特に有用である。これらのナノ構造材料は、しばしば接着または共に「クランプ」され、多くの場合、互いに絡み合いまたはもつれあっている。カーボンナノチューブが互いに接着する傾向は、隣接する構造の間のファンデワールス力からくるものである。単にクランプおよび/または絡み合ったカーボンナノ構造物をマトリックス材料と結合しただけでは、ナノ構造物にそれらのクランプおよび/または絡み合った形態から外れない。しかしながら本発明によれば、ナノ構造物をマトリックス材料と配合し、得られた集合物を流動化させると、ナノ構造物が互いに分離し、分散する結果を生じる。前述のように、流動中にナノ構造物によって起こされる剪断力は、比較的弱いファンデワールス力に容易に打ち勝ち、ナノ構造物を保持し、またはそれらを絡み合わせるのに役立つ。
【0070】
好ましい態様の方法の成功は、マトリックスが流動化状態にある間に、該複合材料のマトリックス中にナノチューブおよび/またはナノファイバーを分散、配向させるのに用いられるいくつかの操作から生じるものと思われる。さらに、原料の準備および特別なプロセス条件のために用いられる方法は、高温におけるナノチューブの生存に対して、またマトリックス中のナノチューブおよび/またはナノ繊維の分散に対してさらに鍵となる側面を有する。
【0071】
次に、ここで述べる複合材料を形成する好ましい実施方法、前述の鍵となる側面のサマリーを次に述べる。次に述べるものは、主にナノチューブおよび/またはナノファイバーに関するものであるが、本発明は、アスペクト比が1.0を越えるどのようなナノ構造物でもよいことが理解される。また本発明は、カーボンナノ材料の使用に限定されるものではない。さらに適当なサイズおよび形状のナノ構造物に形成することができる、どのような材料でもよいことが理解される。
ナノチューブおよびナノファイバーの配列および分散
【0072】
流れの中で高いアスペクト比のナノチューブとナノファイバーを配列させるには、(i)流れが層流であること、および(ii)ナノチューブおよび/またはナノファイバーを異なる位置で速度差を発達させるために流れのプロフィールを横切って速度差が存在し、このようにしてナノチューブおよび/またはナノファイバーの長さに沿って回転モーメントを生成すること、によって達成される。ナノチューブまたはナノファイバーの回転モーメントは、それらの回転を引き起こし、それらのモーメントをゼロに減少させる配置になるように、それらの回転を引き起こす。そしてこれらの繊維は、図1−3のダイヤグラムに示すように流れ方向に配列される。特に図1は、マトリックス材料が層流方式で流れることによるナノチューブまたはナノファイバーに付与される剪断力と駆動力から起こる回転モーメントMを含む力関係図を示している。図2は、このような流れが層流の場合の流動材料の速度プロフィールを示している。すなわち流動断面を横切る、異なる位置の速度に対応する、一般的には放物線状のカーブを示している。流路またはプロフィール内部または中央領域内の流れは、流路またはプロフィールのエッジまたは端部領域に沿った流れよりも大きい速度を示している。図3は、ナノチューブまたはナノファイバーが流れの中で配列されると、ナノチューブまたはナノファイバーの回転モーメントがゼロになることが示される。この現象を見れば、好ましい態様の材料およびプロセスは、アスペクト比が1.0を越えるナノ構造物を用いることにより、流れの方向におけるそれらの配列が容易になる。
【0073】
図4は、(i)含有物または空隙ボイドの減少、および(ii)層流流動マトリックス材料中で分散するカーボンナノファイバーの分散および配列の進行を示す説明図である。流動システムの初期の局面では、図4の下部に示すようにカーボンナノファイバーのランダム配向が明白である。流動システムが連続するに従って、カーボンナノファイバーは図に示すように部分的に配列し始める。比較的短い時間で、これらのカーボンナノファイバーは十分に配列する。同様に、図4に示すように、含有物または空隙ボイドの相対的なサイズもより小さくなる。これは本発明に関する他の驚くべき利益である。特定の理論に束縛されることは望まないが、層流を誘起し維持することは、特に乱流と比較して、システム内の含有物とボイドの数および苦味(severity)を除去または少なくとも減少させるものと思われる。
【0074】
理解されるように、分散されたマトリックス材料とナノ構造物の配合物の層流を引き起こすことにより、マトリックス材料内にナノ構造物の分散および配列を引き起こす。しかしながら、ある応用においては、さらにナノ構造物の配列を促進する第2の操作を行うことが望まれる場合がある。粘弾塑性流動の場合には、ガラス繊維の形成、ワイヤ延伸操作およびローリング操作、例えばシートメタルローリングにおける場合のように、流動物質の速度プロフィールの違いによる流動面間に相当の顕微鏡的な剪断力および滑りが存在する。これは、ガラス複合材繊維についてのテスト結果に示された。ナノチューブおよびナノファイバーが分散された溶融流動化ガラスマトリックス材料のスラリを一般に0.125インチの直径のチップから牽引し、直径7−10μm、1インチ未満の長さに延伸された。これは流体中に非常に大きい速度差と相当な剪断を生じ、そしてガラスファイバー中にナノチューブ/ナノファイバーを容易に分散、配列させた。
改善された分散のための第2の操作
【0075】
繊維が一旦延伸されると、小孔ボイド、含有物または凝集物は、繊維内に存在するかもしれない。しかしながら、これらは繊維の直径よりも大きくなく、そうでなくてもこれは繊維に破断を生じたり、または断絶させることはない。従って、直径が7−10μmの繊維の場合には、最も大きい含有物および/または凝集物でも、対応する繊維の直径よりも小さくなければならない。しかしながら、含有物の長さは限定されず、理論的には非常に長くてもよい。本発明においては、この問題は、繊維を適当な長さの分離した単位に切断し、これらを再混合し、得られた集合物を加熱して流動可能な材料を生成し、そして該材料を再紡糸するか、またはブレンド物をバーまたはインゴットに成形し、その後最終製品に加工することによって解決することができる。切断された繊維の適当な長さは、材料中に導入されるナノ構造物の長さよりも大きいことが好ましい。例えば、200ないし300ミクロンの長さのナノチューブを含む繊維が形成されるときには、この範囲よりも短い長さの繊維に切断することは望ましくない。そうでなければ、これらのナノチューブはそれ自体切断されてしまう。このプロセスは、特にガラス、溶融シリカおよびメタルパウダーに好ましい。
【0076】
あるプロセスの応用または製造の操作では、層流を用いる代わりに、原料を変形、例えば塑性変形させる場合がある。これらの応用の例としては、金属バーを冷圧延またはワイヤ延伸して薄いシートまたはワイヤに成形することが挙げられる。このような操作の製品中にナノ構造物を導入、配列しようとすると、金属マトリックス中のナノ構造物の十分な分散、配列を達成することが困難なことがある。この困難を克服するために、供給材料を(この場合は金属であるが)、溶融可能、または溶融状態に加熱し、次いで混合または他の方法でナノ構造物と配合する。得られたブレンド物は次に好ましくは層流で流動化され、メタルマトリックス中にナノ構造物が分散、配列される。得られた複合供給材料は、次に冷却され、ナノ構造物の配列された配向が保持される。得られた複合材料は、次に冷圧延またはワイヤ延伸のような変形操作の原料として用いることができる。この方法においては、ワイヤ延伸操作の製品は、配列したナノ構造物の有効量を含むものとして容易に供給することができる。同様に、薄い金属シートまたはフォイルのような冷圧延操作の製品も、配列されたナノ構造物の有効量を含むものとして製造することができる。
【0077】
図19は、本発明における配列されたナノチューブを含む材料のワイヤまたはシートを製造するためのローラーおよびワイヤ延伸プロセスの説明図である。複数のローラー710を有する組立体700は、マトリックス材料740内に分散された配向、配列されたナノ構造物730の集合体を含む供給材料720を受け入れる。供給材料720は、対向する対のローラー710を通過して矢印A方向に進行するに従い、該材料720は所望の形状または寸法に変形される。
【0078】
図20は、2つの平行、または実質的に平行なプレートまたは壁の間の層流で流動する結果として生じるナノ構造物の配向および配列を説明する図である。組立体800は、第1のプレート810と、該第1のプレートから離間され、一般に互いに平行な第2プレートを有する。マトリックス材料850内に分散されたナノ構造物840を含む流動可能な材料830は、プレートまたは壁810と820の間で、層流方式(速度プロフィールの放物線形状)で流動される。流路の幅および深さは、本願で述べたように、または技術者が所望により設定することができる。例えば、厚さ全体に分散され、シートの平面に関して一般的に配列されたナノ構造物を有する比較的大形の広幅シートや、さらにシートの軸に沿って配列されたナノ構造物を有する比較的大形の広幅シートは、図20に示すような流路を通してこのような材料を流動させることによって形成することができる。ここでDに対するWの比は比較的大きい。
【0079】
図21は、ダイを通して材料を押し出すための組立ダイ900の説明図である。特に、この組立ダイ900では、マトリックス材料906内にナノ構造物950を含む材料980がコンテナまたは受容ユニット910内に導入される。該受容ユニット910は、取り外すことができるピストン920と出口940を有する。該ユニット910は、出口940の上流で狭い領域または通路930を区画する。押し出しダイが出口940に用いられてもよいことが理解される。ピストン920が矢印B方向に移動するにつれて、材料980は通路930を通して流れ、出口940から流れ出る。ここで説明するように、通路930内の流動条件は、その領域における流動が層流になるように選択されることが好ましい。その流れの速度プロフィールが放物線970になるように確立されることが好ましい。
原料の準備
【0080】
ナノチューブおよび/またはナノファイバーを乾燥ガラスフリットと混合し、該混合物を、窒素またはアルゴンを用いた不活性条件下で長時間粉砕し、該混合物内にナノチューブおよび/またはナノファイバーを分散させる。不活性雰囲気でそれらを覆うことは、それらの酸化を防止するのに役立つ。カーボンナノチューブ/ナノファイバーの中間環境から酸素を除去することは、高温で処理する間のそれらの劣化を防止するのに臨界的である。
ガラスファイバー延伸プロセス
【0081】
特にある場合または応用においては、マトリッリクス材料内のナノ構造物の配列をさらに促進するためにガラス延伸操作を用いることが好ましい。好ましいガラス延伸設備によれば、好ましくは直径7−10μmの連続した長さのガラスファイバーを製造することができる。このガラスはその融点まで加熱される。FまたはEガラス融点は約1200℃である。このプロセスで投入される材料は、その末端の用途によって異なる処方を有する固体Eガラスマーブル(またはフリット)である。溶融したガラスは、図5に示すように、それぞれ直径1.8mmの200個の末口を有する白金ブッシュのような複数のダイ中に重力により供給される。それぞれの繊維は、各末口から牽引され、直径1.8mmからそれらの繊維の最終的な平均直径に繊維化される。これは例えば7−10μmである。
テスト結果
【0082】
ガラスマイクロファイバーのようなマトリックス材料を、カーボンナノチューブ/カーボンナノファイバーのようなナノ構造物で強化する方法が提案され、実施することができる。それらの主な結果が示される。
【0083】
実施された研究においては、ガラスフィラメント中のカーボンナノファイバーの最終的な正確な濃度はわからず、調整されなかったが、推定された濃度によれば、本発明による優れた効果が認められた。40%カーボンナノファイバーを含むEガラス/カーボンナノファイバー試験片20gが静止した(undisturbed)Eガラス40ポンドを有するガラス延伸塔の溶融炉の中心に落下された。試験片と純Eガラスの比重の違いと、攪拌がないことにより、カーボンナノファイバーは溶融炉中では静止したガラスと均一に混合しなかった。
【0084】
高アスペクト比のナノ構造物が分散されたカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーとマトリックス材料としてのEガラスを含む溶融材料が得られ、これは、図5を参照して述べたように、ガラスファイバーブッシュ先口装置を用いて層流方式で流動され、流動マスは、さらに牽引、延伸操作を受け、これによりガラス複合材料の繊維が形成される。
【0085】
延伸されたフィラメントは、30−40μmのオーダーの直径を有する連続フィラメントであった。これらのフィラメントの径は、これらの繊維がより小さな径に牽引、巻き回されなかったので、正常の直径よりも大きかった。ベストケースのシナリオでは、ガラスフィラメント中のカーボンナノファイバーの濃度は、かなり低く、約0.25%から約0.5%のオーダーであると推定された。これは、これらのフィラメントの色の変化が肉眼で見られなかったという事実から確認された。しかしながら、図6に示されるように、長波長紫外光(354nm)に暴露された時には、金色領域内でカーボンナノファイバーを含むフィラメントの領域が蛍光発色した。同図はまた、貧弱な混合プロセスのために、それぞれのフィラメントの間のカーボンナノファイバーの予想された不均一な分布が確認されたことを示す。
【0086】
バルクカーボンナノチューブ材料で行われた光学テストによれば、可視スペクトル(赤外帯は調べられなかった)において蛍光発色が見られなかった。この挙動、すなわちガラスフィラメント中に分散された時に、そのバルクおよび強い蛍光において蛍光発色が見られないということは、分散したナノ状態では強い蛍光発色を有し、バルク状態では何も有しないバルクおよびナノシリコンの挙動を一致している。
【0087】
これらの研究で用いられるカーボンナノファイバーは、図7に示すように多層壁のカーボンナノファイバーである。図7は、3.0KV、13.2mn×20.0Kで撮られた多層壁カーボンナノファイバーの走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真図である。ここで用いられた多層壁カーボンナノファイバーは、Pyrograf Products, Inc., a subsidiary of Applied Sciences, Inc. of Cedarville, Ohio から得られたものである。表2は、加熱処理後のこれらの性質の公称値を示したものである。
【0088】
【表2】
【0089】
ハイブリッド繊維の主たる分析によれば、カーボンナノファイバーは、図8に示すように、Eガラスフィラメントの軸に沿って良好に分散、配列されていた。なお、図8は、3.0KV、13.4mm×9.00Kで撮られたSEM顕微鏡写真である。
【0090】
それぞれ約200フィラメントを含むガラス複合繊維の20トウの個体群について伸長テストが行われた。その結果、カーボンナノファイバーを含む繊維の引張強度は格段に増加することが示された。図9から明らかなように、カーボンナノチューブの濃度が増加するに従って複合繊維の破断荷重が増加した。伸長テストの結果は図9に示されたが、繊維の強度はほぼ60%、そして場合によっては2倍に増加することが認められた。
【0091】
ハイブリット繊維の破断表面は通常のEガラス繊維によって示されるものと相当異なっていた。図10は、図の左に示される破断片は、繊維中にカーボンナノファイバーが存在することにより、右のように相当変形していることがわかる。図10は、3.0KV、14.7mn×1.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(左)、および3.0KV、6.8mn×6.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(右)である。
【0092】
破断表面をよく検査すると、カーボンナノファイバーが非常によく分散され、図11に示すように、繊維軸の長さに沿ってよく配列されていることがわかる。図11は、3.0KV、13.4mn×8.00Kで撮られたSEN顕微鏡写真(左)、および3.0KV、13.4mn×18.0Kで撮られたSEN顕微鏡写真(右)である。
追加の態様
【0093】
窒化ホウ素ナノチューブを用いる複合材料に関して本発明の一人によって既に報告された仕事によって分かるように、ガラスマトリックス中に窒化ホウ素ナノチューブを4%導入することによって、ガラス燃料電池シール材料の強度が著しく改良されることが示された。図12および13に示されるように、ナノチューブの添加によってマトリックスの破断靭性(タフネス)は40%改善された。また強度がほぼ2倍になることが結果として示されている。これらの研究における窒化ホウ素ナノチューブの長さは、200−300μmのオーダーである。特に図12は、これらの研究で用いられた商業的に入手可能なガラスG18の破断靭性のグラフである。また窒化ホウ素ナノチューブ(BN NT)で強化されたガラスG18の結果も示される。破断靭性は、Klc[MPam0.5]として表わされる。図13は、これらの材料のWeibull強度分布を示す詳細図である。Weibull強度分布はlnln[1/(1-F)]である。Mは、Weibullモジュラス、およびsθは特性長さである。これらの結果は、窒化ホウ素ナノ構造物を用いた複合ガラス、セラミックおよび/または金属材料においても、本発明に従って有意義な物理的性質を得ることができることを示すものである。
【0094】
ここで引用されるすべての参考特許、特許出願および文献は、それらの全部がここに導入されているものである。
【0095】
本発明は、好ましい実施態様に対して述べられているが、これらの改良および変形は前述の説明を読み、理解すれば他にも適用できることが明らかである。このような改良や変形のすべてを含むように、実施態様として述べたものは意図しており、また本願で特許請求している範囲内またはその均等の範囲内において、それらが含まれる限りにおいて、そのように意図している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1.0を越えるアスペクト比を有する、少なくともひとつのタイプのナノ構造物の有効量と、(ii)マトリックス材料とを含む高強度複合材料の製造プロセスであって、
マトリックス材料を供給すること、
該マトリックス材料が流動化するように、該マトリックス材料を加熱すること、
1.0を越えるアスペクト比を有する、少なくともひとつのタイプのナノ構造物の有効量と、該マトリックス材料とを配合すること、
該配合した量のナノ構造物とマトリックス材料とを層流で流動化させ、該マトリックス材料内で少なくとも多数のナノ構造物を平行に配向させること、
マトリックス材料内でナノ構造物が平行に配向している間に該複合材料を固化させ、高強度複合材料を生成すること、
を含む高強度複合材料の製造プロセス。
【請求項2】
流動化の操作は、少なくとも多くの平行に配向されたナノ構造物を流動方向に実質的に平行に配向させる請求項1のプロセス。
【請求項3】
層流で流動化後、ナノ構造物とマトリックス材料との配合物を延伸操作に供し、該マトリックス材料内でナノ構造物をさらに平行に配向させ、該複合材料の繊維を生成することをさらに含む請求項1のプロセス。
【請求項4】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1のプロセス。
【請求項5】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1のプロセス。
【請求項6】
マトリックス材料は、ガラスおよび溶融シリカの1つであり、加熱操作はマトリックス材料を約1000℃から約1600℃の温度に加熱することである請求項1のプロセス。
【請求項7】
マトリックス材料は金属であり、加熱操作は該マトリックス材料を約600℃から約2000℃の温度に加熱することである請求項6のプロセス。
【請求項8】
プロセスの少なくとも一部は不活性雰囲気中で行われる請求項1のプロセス。
【請求項9】
雰囲気は、(i)窒素、(ii)アルゴン、および(iii)二酸化炭素からなる群から選ばれる少なくとも1つの不活性ガスを含む請求項8のプロセス。
【請求項10】
複合材料の繊維は、配合されるナノ構造物の長さよりも長い、分離したユニットの集合物に切断される請求項1のプロセス。
【請求項11】
切断されたユニットは再び混合され、流動化状態に再加熱され、延伸操作に供される請求項10のプロセス。
【請求項12】
複合材料は、配合されるナノ構造物の長さよりも長い繊維成分の集合物に切断される請求項3のプロセス。
【請求項13】
切断された繊維成分は再混合され、流動化状態に再加熱され、延伸操作に供される請求項12のプロセス。
【請求項14】
配合操作は、マトリックス材料が固体状態にあるときに行われる請求項1のプロセス。
【請求項15】
固体マトリックス材料はガラスフリットである請求項14のプロセス。
【請求項16】
固体マトリックス材料は金属粉である請求項14のプロセス。
【請求項17】
固体マトリックス材料は溶融シリカ粉である請求項14のプロセス。
【請求項18】
配合操作は、マトリックス材料が流動化状態にあるときに行われる請求項1のプロセス。
【請求項19】
請求項1のプロセスによって製造された高強度複合材料。
【請求項20】
請求項3のプロセスによって製造された複合材料の繊維。
【請求項21】
マトリックス材料中にナノ構造物を分散、配列させるプロセスであって、アスペクト比が1.0を越える選択されたナノ構造物を流動化可能なマトリックス材料中に配合し、該配合されたマトリックス材料と選択されたナノ構造物を少なくとも多数のナノ構造物がマトリックス材料中で平行な配向を起こすのに十分な時間層流状態で流動させることを含む前記プロセス。
【請求項22】
流動化操作は、少なくとも多数の平行に配向したナノ構造物が、流動方向に実質的に平行に配向させている請求項1のプロセス。
【請求項23】
配合したマトリックス材料と選択されたナノ構造物を延伸操作に供し、マトリックス材料内でナノ構造物の平行な配向をさらに引き起こし、繊維を生成することをさらに含む請求項21のプロセス。
【請求項24】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項21のプロセス。
【請求項25】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項21のプロセス。
【請求項26】
少なくとも多数のナノ構造物がマトリックス材料中で平行に配向された後、マトリックス材料を硬化させ、該ナノ構造物の配向を保持することをさらに含む請求項21のプロセス。
【請求項27】
マトリックス材料と、1.0を越えるアスペクト比を有するナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量を含む複合材料であって、該1.0を越えるアスペクト比を有するナノ構造物の少なくとも多数が互いに平行な配向で配列されている複合材料。
【請求項28】
ナノ構造物の少なくとも75%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項29】
ナノ構造物の少なくとも90%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項30】
ナノ構造物の少なくとも95%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項31】
ナノ構造物の少なくとも99%が平行な配向で配列されている請求項27の材料。
【請求項32】
マトリックス材料は、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項27の複合材料。
【請求項33】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項27の複合材料。
【請求項34】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項27の複合材料。
【請求項35】
ナノ構造物の有効量が約0.25%から約20%である請求項27の複合材料。
【請求項36】
ナノ構造物の有効量が約2%から約10%である請求項27の複合材料。
【請求項37】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約0.1%から約25%である請求項27の複合材料。
【請求項38】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約1%から約15%である請求項27の複合材料。
【請求項39】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約2%から約10%である請求項27の複合材料。
【請求項40】
(i)第1のマトリックス材料、および(ii)該第1のマトリックス材料中に分散され、1.0を越えるアスペクト比を有する少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を含む強化複合材料であって、該ナノ構造物の少なくとも多数が該第1のマトリックス材料内で互いに平行な配向で配列されている強化複合材料と、第2の複合材料とを含む複合材料。
【請求項41】
強化複合材料は第2のマトリックス材料内に分散されている請求項40の複合材料。
【請求項42】
強化複合材料は繊維またはストランドの形態である請求項40の複合材料。
【請求項43】
第2のマトリックス材料は繊維またはストランドの形態である請求項40の複合材料。
【請求項44】
第2のマトリックス材料は繊維またはストランドの形態である請求項42の複合材料。
【請求項45】
強化複合材料および第2のマトリックス材料は互いに緊密に混合されている請求項44の複合材料。
【請求項46】
強化複合材料と第2のマトリックス材料は、該複合材料の分離された領域に配置されている請求項44の複合材料。
【請求項47】
第1のマトリックス材料は、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせから選ばれる請求項40の複合材料。
【請求項48】
第2のマトリックス材料は、ポリマー物質、ガラス、金属、セルロースベースの材料およびこれらの組み合わせから選ばれる請求項47の複合材料。
【請求項1】
(i)1.0を越えるアスペクト比を有する、少なくともひとつのタイプのナノ構造物の有効量と、(ii)マトリックス材料とを含む高強度複合材料の製造プロセスであって、
マトリックス材料を供給すること、
該マトリックス材料が流動化するように、該マトリックス材料を加熱すること、
1.0を越えるアスペクト比を有する、少なくともひとつのタイプのナノ構造物の有効量と、該マトリックス材料とを配合すること、
該配合した量のナノ構造物とマトリックス材料とを層流で流動化させ、該マトリックス材料内で少なくとも多数のナノ構造物を平行に配向させること、
マトリックス材料内でナノ構造物が平行に配向している間に該複合材料を固化させ、高強度複合材料を生成すること、
を含む高強度複合材料の製造プロセス。
【請求項2】
流動化の操作は、少なくとも多くの平行に配向されたナノ構造物を流動方向に実質的に平行に配向させる請求項1のプロセス。
【請求項3】
層流で流動化後、ナノ構造物とマトリックス材料との配合物を延伸操作に供し、該マトリックス材料内でナノ構造物をさらに平行に配向させ、該複合材料の繊維を生成することをさらに含む請求項1のプロセス。
【請求項4】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1のプロセス。
【請求項5】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1のプロセス。
【請求項6】
マトリックス材料は、ガラスおよび溶融シリカの1つであり、加熱操作はマトリックス材料を約1000℃から約1600℃の温度に加熱することである請求項1のプロセス。
【請求項7】
マトリックス材料は金属であり、加熱操作は該マトリックス材料を約600℃から約2000℃の温度に加熱することである請求項6のプロセス。
【請求項8】
プロセスの少なくとも一部は不活性雰囲気中で行われる請求項1のプロセス。
【請求項9】
雰囲気は、(i)窒素、(ii)アルゴン、および(iii)二酸化炭素からなる群から選ばれる少なくとも1つの不活性ガスを含む請求項8のプロセス。
【請求項10】
複合材料の繊維は、配合されるナノ構造物の長さよりも長い、分離したユニットの集合物に切断される請求項1のプロセス。
【請求項11】
切断されたユニットは再び混合され、流動化状態に再加熱され、延伸操作に供される請求項10のプロセス。
【請求項12】
複合材料は、配合されるナノ構造物の長さよりも長い繊維成分の集合物に切断される請求項3のプロセス。
【請求項13】
切断された繊維成分は再混合され、流動化状態に再加熱され、延伸操作に供される請求項12のプロセス。
【請求項14】
配合操作は、マトリックス材料が固体状態にあるときに行われる請求項1のプロセス。
【請求項15】
固体マトリックス材料はガラスフリットである請求項14のプロセス。
【請求項16】
固体マトリックス材料は金属粉である請求項14のプロセス。
【請求項17】
固体マトリックス材料は溶融シリカ粉である請求項14のプロセス。
【請求項18】
配合操作は、マトリックス材料が流動化状態にあるときに行われる請求項1のプロセス。
【請求項19】
請求項1のプロセスによって製造された高強度複合材料。
【請求項20】
請求項3のプロセスによって製造された複合材料の繊維。
【請求項21】
マトリックス材料中にナノ構造物を分散、配列させるプロセスであって、アスペクト比が1.0を越える選択されたナノ構造物を流動化可能なマトリックス材料中に配合し、該配合されたマトリックス材料と選択されたナノ構造物を少なくとも多数のナノ構造物がマトリックス材料中で平行な配向を起こすのに十分な時間層流状態で流動させることを含む前記プロセス。
【請求項22】
流動化操作は、少なくとも多数の平行に配向したナノ構造物が、流動方向に実質的に平行に配向させている請求項1のプロセス。
【請求項23】
配合したマトリックス材料と選択されたナノ構造物を延伸操作に供し、マトリックス材料内でナノ構造物の平行な配向をさらに引き起こし、繊維を生成することをさらに含む請求項21のプロセス。
【請求項24】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項21のプロセス。
【請求項25】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項21のプロセス。
【請求項26】
少なくとも多数のナノ構造物がマトリックス材料中で平行に配向された後、マトリックス材料を硬化させ、該ナノ構造物の配向を保持することをさらに含む請求項21のプロセス。
【請求項27】
マトリックス材料と、1.0を越えるアスペクト比を有するナノ構造物の少なくとも1つのタイプの有効量を含む複合材料であって、該1.0を越えるアスペクト比を有するナノ構造物の少なくとも多数が互いに平行な配向で配列されている複合材料。
【請求項28】
ナノ構造物の少なくとも75%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項29】
ナノ構造物の少なくとも90%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項30】
ナノ構造物の少なくとも95%が平行な配向で配列されている請求項27の複合材料。
【請求項31】
ナノ構造物の少なくとも99%が平行な配向で配列されている請求項27の材料。
【請求項32】
マトリックス材料は、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項27の複合材料。
【請求項33】
ナノ構造物は、(i)単一壁のナノチューブ、(ii)多層壁のナノチューブ、(iii)ナノファイバー、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項27の複合材料。
【請求項34】
マトリックス材料は、(i)ガラス、(ii)溶融シリカ、(iii)金属、および(iv)これらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項27の複合材料。
【請求項35】
ナノ構造物の有効量が約0.25%から約20%である請求項27の複合材料。
【請求項36】
ナノ構造物の有効量が約2%から約10%である請求項27の複合材料。
【請求項37】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約0.1%から約25%である請求項27の複合材料。
【請求項38】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約1%から約15%である請求項27の複合材料。
【請求項39】
ナノ構造物がカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーであり、該カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの有効量が約2%から約10%である請求項27の複合材料。
【請求項40】
(i)第1のマトリックス材料、および(ii)該第1のマトリックス材料中に分散され、1.0を越えるアスペクト比を有する少なくとも1つのタイプのナノ構造物の有効量を含む強化複合材料であって、該ナノ構造物の少なくとも多数が該第1のマトリックス材料内で互いに平行な配向で配列されている強化複合材料と、第2の複合材料とを含む複合材料。
【請求項41】
強化複合材料は第2のマトリックス材料内に分散されている請求項40の複合材料。
【請求項42】
強化複合材料は繊維またはストランドの形態である請求項40の複合材料。
【請求項43】
第2のマトリックス材料は繊維またはストランドの形態である請求項40の複合材料。
【請求項44】
第2のマトリックス材料は繊維またはストランドの形態である請求項42の複合材料。
【請求項45】
強化複合材料および第2のマトリックス材料は互いに緊密に混合されている請求項44の複合材料。
【請求項46】
強化複合材料と第2のマトリックス材料は、該複合材料の分離された領域に配置されている請求項44の複合材料。
【請求項47】
第1のマトリックス材料は、ガラス、溶融シリカ、金属およびこれらの組み合わせから選ばれる請求項40の複合材料。
【請求項48】
第2のマトリックス材料は、ポリマー物質、ガラス、金属、セルロースベースの材料およびこれらの組み合わせから選ばれる請求項47の複合材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−541188(P2009−541188A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514373(P2009−514373)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013406
【国際公開番号】WO2008/060336
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(504338210)クリーブランド ステート ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013406
【国際公開番号】WO2008/060336
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(504338210)クリーブランド ステート ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
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