説明

高強度超高分子量ポリエチレンテープ物品

高強度超高分子量多繊維糸から高強度ポリエチレンテープ物品を生産する方法、およびその方法により作られるテープ物品、布地、積層品、および耐衝撃性材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高強度超高分子量多繊維糸から高強度ポリエチレンテープ物品を生産する方法、およびその方法により作られるテープ物品、布地、積層品、および耐衝撃性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性および耐貫通性材料はスポーツ用具、安全服などの用途、および最重要には護身具に使用される。護身用の甲冑の構造は古い技術であるが廃れた技術ではない。金属甲冑は紀元前1500年までにはエジプト人にすでに広く知られ、17世紀の終わりごろまで使用された。現代では、アラミド、超高分子量ポリエチレン(UHMW PE)、およびポリベンザロールなどの新しく強い繊維の発見により、護身用甲冑は再び実用化されるようになった。
【0003】
ヘルメット、パネル、およびチョッキなどの耐衝撃性、防弾性、および耐貫通性物品に使用される種々の繊維強化構造が知られている。これらの物品は発射体や刃物からの衝撃に対して様々な耐貫通性を示し、様々な単位重量当たりの有効性を有する。防弾性能の尺度は単位目標物領域密度当たりの発射体から除去されるエネルギーである。これはSEAと略記される比エネルギー吸収として知られ、Kg/m当たりジュールまたはJ・m/Kgの単位を有する。
【0004】
繊維質構造のSEAは一般に構成繊維の強度、引張弾性率、切断エネルギーとともに増加することが知られている。しかし、繊維強化材の形状などのその他の要素も作用する可能性がある。米国特許第4,623,574号は超高分子量ポリエチレンからなるリボン形状の強化材を用いた構造の複合材料と同じ材料の多繊維糸を用いたものとの防弾有効性を比較している。この繊維はリボンよりも30グラム/デニール(g/dと略記)対23.6g/dで高靭性(tenacity)であった。
【0005】
それにもかかわらず、このリボンで構成した複合材料のSEAは前記糸で構成した複合材料のSEAよりも幾分か高い。米国特許第4,623,574号は防弾性の複合材料を生成するにはエラストマーで被覆した細片またはリボンが被覆繊維糸よりも効果的である可能性を教示している。
【0006】
扁平な断面を有する超高分子量ポリエチレン物品の「ゲル紡糸」として一般に知られる方法による調製は米国特許第4,413,110号に記載されている。米国特許第4,413,110号の方法で調製されたリボンは米国特許第4,623,574号に記載されている。それは幅が0.64cm、デニールが1240、靭性が23.9g/d(2.04GPaの伸長強度に相当)であった。
【0007】
超高分子量ポリエチレンテープ物品のその他の調製方法は米国特許第4,996,011号、第5,002,714号、第5,091,133号、第5,106,555号、第5,200,129号、第5,578,373号、第5,628,946号、第6,017,834号、第6,328,923B1号、第6,458,727B1号、第7,279,441B2号、第6,951,685B1号、第7,470,459B1号、米国特許公開第2008/0251960A1号および第2008/0318016A1号、および WO2009/056286A1に記載されている。
【0008】
これらの特許の一群では、複数のポリエチレン繊維に高温で接触圧力をかけ、繊維の一部を選択的に融解して繊維を束ねた後、束ねた繊維を圧縮する。米国特許第5,628,946号では、この方法によって超高分子量ポリエチレンSPECTRA(登録商標)糸は縦方向弾性率の69%が失われた。
【0009】
これらの特許の別の一群では、ポリエチレン粉末を高温で圧縮して粒子を結合して連続体のシートにした後、さらに圧縮して伸長した。米国特許第5,091,133号は引張強度が3.4GPaであるこの後者の方法で作られた繊維を記載している。そのように生産されたポリエチレンテープはTENSYLON(登録商標)の物品名で市販されている。TENSYLON(登録商標)のホームページで報告されている最大靭性は19.5g/d(1.67GPaの引張強度)である。
【0010】
ポリエチレンテープの調製および/または超高分子量ポリエチレン超高分子量ポリエチレン繊維の扁平化について記載の研究刊行物を下記する。
R.J. Van et al., "The Hot Compaction of SPECTRA Gel-Spun Polyethylene Fibre"(SPECTRAゲル紡糸のポリエチレン繊維の高温圧縮)、J. Matl. Sci., 32, 4821-4831 (1997)
A. Kaito et al., "Hot Rolling and Quench Rolling of Ultrahigh Molecular Weight Polyethylene"(超高分子量ポリエチレンの熱間圧延と急冷圧延)、J. Appl. Poly Sci., 29, 1207-1220 (1983); "Preparation of High Modulus Polyethylene Sheet by the Roller-Drawing Method"(圧延伸長法による高弾性率ポリエチレンシートの調製)、J. Appl. Poly Sci., 30, 1241-1255 (1985); "Roller Drawing of Ultrahigh Molecular Weight Polyethylene"(超高分子量ポリエチレンの圧延伸長)、J. Appl. Poly. Sci, 30, 4591-4608 (1985)
これらの刊行物の中で報告された最も高い破壊強度は約0.65GPaであり、約7.6g/dの靭性に相当する。上記に引用のVanらの刊行物では超高分子量ポリエチレンの縦方向弾性率は27〜74%減少した。
【0011】
上に引用した特許および刊行物のそれぞれは最新技術の向上を表している。しかしながら、本発明の具体的方法を記載したものはなく、また本発明によって満たされる必要性のすべてを充足するものはない。砲弾に対する優れた耐貫通性を提供する材料の必要性が今なお継続している。上記のように繊維質構造のSEAは構成繊維の強度、引張弾性率、切断エネルギーとともに一般に増加することが知られる。先行技術のテープ物品よりもはるかに大きな強度を有する高度に配向した超高分子量ポリエチレンの多繊維糸が市販されている。そのような高強度糸をテープ物品に実質的に強度を保持したまま転換することは有用である。また前記テープ物品を含む織物、不織布、および防弾性および耐貫通性の物品を提供することも有用である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的に関し、ポリエチレンテープ物品は幅よりも大きな長さ、約0.5mm未満の厚さを有し、約10:1よりも大きな平均断面縦横比を有するポリエチレン物品であると定義される。
【0013】
一実施態様では、本発明は不定長のポリエチレンテープ物品の生産方法であり、
a)少なくとも1種のポリエチレン多繊維糸を選択し、前記糸は少なくとも0.96のc軸配向関数、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度、ASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に約15g/d〜約100g/dの靭性を有し、
b)前記糸に縦方向引張力をかけ、前記糸を少なくとも一つの横方向圧縮工程で約25℃〜約137℃の温度で扁平化、統合、圧縮して少なくとも約10:1の平均断面縦横比を有するテープ物品を形成し、各前記圧縮工程は発端と終端を有し、各前記圧縮工程の発端における各前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端における前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しく、少なくとも約0.25重量キログラム(2.45ニュートン)であり、
c)前記テープ物品を約130℃〜約160℃の範囲の温度で、約0.001/分〜約1/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
d)必要に応じて、工程b)を約100℃〜約160℃の温度で1回以上繰り返し、
e)必要に応じて、工程c)を1回以上繰り返し、
f)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を緩和し、
g)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を増加し、
h)前記テープ物品に張力をかけた状態で約70℃未満の温度に冷却する、
ことを含む。
【0014】
第二の態様では、本発明は不定長のポリエチレンテープ物品の生産方法であり、
a)少なくとも1種のポリエチレン多繊維糸を選択し、前記糸は少なくとも0.96のc軸配向関数、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度、ASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に約15g/d〜約100g/dの靭性を有し、
b)前記糸を、張力をかけた状態で約100℃〜約160℃の温度で単一または複数の加熱帯を通過させ、
c)前記加熱された糸を約0.01/分〜約5/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
d)前記糸に縦方向引張力をかけ、前記糸を少なくとも一つの横方向圧縮工程で約100℃〜約160℃の温度で扁平化、統合、圧縮して少なくとも約10:1の平均断面縦横比を有するテープ物品を形成し、各前記圧縮工程は発端と終端を有し、各前記圧縮工程の発端における各前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端における前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しく、少なくとも約0.25重量キログラム(2.45ニュートン)であり、
e)前記テープ物品を約130℃〜約160℃の温度で、約0.001/分〜約1/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
f)必要に応じて、工程d)を1回以上繰り返し、
g)必要に応じて、工程e)を1回以上繰り返し、
h)必要に応じて、工程c)〜g)の間で縦方向引張力を緩和し、
i)必要に応じて、工程c)〜g)の間で縦方向引張力を増加し、
j)前記テープ物品を約70℃未満の温度に冷却する、
ことを含む。
【0015】
第三の態様では、本発明は不定長で少なくとも10:1の平均断面縦横比を有するポリエチレンテープ物品であり、前記ポリエチレンはASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜約40dl/gの固有粘度を有し、前記テープ物品はASTM D882に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に少なくとも約3.6GPaの引張強度を有する。
【0016】
第四の態様では、本発明は本発明のテープ物品を含む布地で、前記布地は織物、編み物、および立体織物からなる群から選択される。
第五の態様では、本発明は本発明のテープ物品の複数の単向性層を含む積層体であり、隣接する層のテープ方向は互いに約15〜約90度回転している。
【0017】
第六の態様では、本発明は本発明の布地、本発明の積層体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の部材を含む耐衝撃性、耐貫通性の複合材料である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するための第一の装置を示す。
【図2】図2は、本発明の方法を実施するための第二の装置を示す。
【図3】図3は、本発明の方法を実施するための第三の装置を示す。
【図4】図4は、本発明の方法を実施するための第四の装置を示す。
【図5】図5は、本発明の方法を実施するための第五の装置を示す。
【図6】図6は、本発明の方法を実施するための第六の装置を示す。
【図7】図7は、本発明の方法を実施するための第七の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図では明確化のため糸の一端のみを示す。本発明の方法により数本の糸の端部を同時に並行処理して数本の並行するテープ物品または単一の幅広テープ物品を生産することができると理解されよう。
【0020】
高強度の超高分子量ポリエチレン糸をその強度を実質的に維持してテープ物品へ転換する方法を提供する。本発明の方法は圧縮工程で実質的に等しい縦方向引張力を与える。本発明の方法は従来法が圧縮工程で等しい引張応力(g/d)を維持してその結果不均衡な引張力を伴うことに比べて優れていると考えられる。
【0021】
本発明の目的には、ポリエチレンテープ物品は幅よりも大きな長さ、約0.5mm未満の厚さを有し、約10:1よりも大きな平均断面縦横比を有するポリエチレン物品であると定義される。本発明のテープ物品は好ましくは約100cm未満、より好ましくは約50cm未満、さらに好ましくは約25cm未満、最も好ましくは約15.2cm未満の幅を有する。
【0022】
本発明のテープ物品は好ましくは約0.25mm未満の厚さ、より好ましくは約0.1mm未満の厚さ、最も好ましくは約0.05mm未満の厚さを有する。厚さは断面の最も厚い領域で測定される。
【0023】
平均断面縦横比はテープ物品の長さ方向に平均した断面最大寸法対最小寸法比である。好ましくは本発明のテープ物品は好ましくは少なくとも約20:1、より好ましくは少なくとも約50:1、さらに好ましくは少なくとも約100:1、なおさらに好ましくは少なくとも約250:1、最も好ましく少なくとも約400:1の平均断面縦横比を有する。
【0024】
本発明のテープ物品の断面は長方形、楕円、多角形、不整形、またはどんな形状でも幅、厚さ、および縦横比の要件を具備すればよい。好ましくは本発明のテープ物品は基本的に長方形の断面を有する。
【0025】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸はいずれかの都合のよい方法で調製することができる。好ましくは選択される超高分子量ポリエチレン糸は「ゲル紡糸」によって調製される。ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン糸は、SPECTRA(登録商標)の物品名でHoneywell Internationalから、DYNEEMA(登録商標)の物品名でDSM N. V.および東洋紡(株)から、及び、Shanghai Pegaus Materials社、Hangzhou High Strength Fiber Material社、およびその他から市販されている。
【0026】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸はASTM D1601-99により135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜約40dl/g、好ましくは約10dl/g〜約40dl/g、より好ましくは約12dl/g〜約40dl/g、および最も好ましくは約14dl/g〜35dl/gの固有粘度を有する。
【0027】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸は高度に配向している。本発明の状況における高度に配向した超高分子量ポリエチレン糸は少なくとも約0.96、好ましくは少なくとも約0.97、より好ましくは少なくとも約0.98、および最も好ましくは少なくとも約0.99のc軸配向関数を有していると規定される。このc軸配向関数は繊維方向と分子鎖の整列の程度を記述するものでR.S. Steinが報告している方程式から計算される(J. Poly Sci., 31, 327 (1958))。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、θはポリエチレン結晶のc軸(分子鎖の方向)と繊維方向の間の角度であり、カレット(caret)はその間の平均数量を示す。
【0030】
このc結晶軸と繊維方向の間の角度の平均余弦は周知のX線回折法により測定される。分子鎖の方向が繊維の軸に対して完全に整列しているポリエチレンの繊維はf=1である。
【0031】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸は約15g/d〜約100g/d、好ましくは約25g/d〜約100g/d、より好ましくは約30g/d〜約100g/d、さらに好ましくは約35g/d〜約100g/d、なおさらに好ましくは約40g/d〜約100g/d、および最も好ましくは約45g/d〜約100g/dの靭性を有する。
【0032】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸は無撚糸でも撚糸でもよい。この糸は好ましくは1インチの長さ当たり約10回未満の撚りをかけられる。原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸は矛盾がない範囲で本明細書に参照により組み込まれる米国特許第4,819,458号に記載の方法によりヒートセットすることができる。
【0033】
本発明の方法の原料として選択される超高分子量ポリエチレン糸は非連結繊維から構成してもよく、またはこの繊維は溶融または結合形成により少なくとも部分的に連結してもよい。超高分子量ポリエチレン糸の溶融は様々な方法でなし得る。都合のよい手段としては熱と張力の使用、または矛盾がない範囲で本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,540,990号、第5,749,214号、および第6,148,597号に記載のように熱と張力にさらす前に溶媒または可塑剤を利用することが挙げられる。結合形成はKRATON(登録商標)D1107のような接着特性を有する材料により前記繊維を少なくとも部分的に被覆してなすことができる。
【0034】
第一の態様では、本発明は不定長のポリエチレンテープ物品の生産方法であり、
a)少なくとも1種のポリエチレン多繊維糸を選択し、前記糸は少なくとも0.96のc軸配向関数、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度、ASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に約15g/d〜約100g/dの靭性を有し、
b)前記糸に縦方向引張力をかけ、前記糸を少なくとも一つの横方向圧縮工程で約25℃〜約137℃の温度で扁平化、統合、圧縮して少なくとも約10:1の平均断面縦横比を有するテープ物品を形成し、各前記圧縮工程は発端と終端を有し、各前記圧縮工程の発端における各前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端における前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しく、少なくとも約0.25重量キログラム(2.45N)であり、
c)前記テープ物品を約130℃〜約160℃の範囲の温度で、約0.001/分〜約1/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
d)必要に応じて、工程b)を約100℃〜約160℃の温度で1回以上繰り返し、
e)必要に応じて、工程c)を1回以上繰り返し、
f)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を緩和し、
g)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を増加し、
h)前記テープ物品に張力をかけた状態で約70℃未満の温度に冷却する、
ことを含む。好ましくは工程b)〜h)は連続的に実施される。
【0035】
第二の態様では、本発明は不定長のポリエチレンテープ物品の連続的生産方法であり、
a)少なくとも1種のポリエチレン多繊維糸を選択し、前記糸は少なくとも0.96のc軸配向関数、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度、ASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に約15g/d〜約100g/dの靭性を有し、
b)前記糸を、張力をかけた状態で約100℃〜約160℃の温度で一つ以上の加熱帯を通過させ、
c)前記加熱された糸を約0.01/分〜約5/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
d)前記糸に縦方向引張力をかけ、前記糸を少なくとも一つの横方向圧縮工程で約100℃〜約160℃の温度で扁平化、統合、圧縮して少なくとも約10:1の平均断面縦横比を有するテープ物品を形成し、各前記圧縮工程は発端と終端を有し、各前記圧縮工程の発端における各前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端における前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しく、少なくとも約0.25重量キログラム(2.45ニュートン)であり、
e)前記テープ物品を約130℃〜約160℃の温度で、約0.001/分〜約1/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
f)必要に応じて、工程d)を1回以上繰り返し、
g)必要に応じて、工程e)を1回以上繰り返し、
h)必要に応じて、工程c)〜g)の間で縦方向引張力を緩和し、
i)必要に応じて、工程c)〜g)の間で縦方向引張力を増加し、
j)前記テープ物品に張力をかけた状態で約70℃未満の温度に冷却する、
ことを含む。好ましくは工程b)〜j)は連続的に実施される。
【0036】
第一の態様の連続的な方法は図1、2、および7に概略が示される。第二の態様の連続的な方法は図3〜6に概略が示される。具体的態様を示す図は工程装置の番号と配置が異なるが同じ工程を示す。
【0037】
各図1〜7では、選択された多繊維超高分子量ポリエチレン糸(各10〜16)はパッケージまたはビーム(不図示)から解撚され幾つかの上下の拘束ロール(20)を通過する。拘束ロールは約25℃〜約137℃の温度を有する。
【0038】
図1〜2および7では、拘束ロール(各80、81、および86)を離れる糸は直接に張力をかけられて一つ以上の手段(各30、33、および39)を通過して糸の圧縮、統合、扁平化を行いテープ物品の形成をする。テープ物品はその後少なくとも一度加熱され伸長される。
【0039】
図3〜6では、拘束ロール(各82〜85)を離れる糸は加熱され伸長された後圧縮のための手段に到達する。糸の加熱は赤外放射、加熱面との接触、または加熱流体との接触など、いかなる手段でもよい。好ましくは、糸は複数の温度域を有する強制対流空気炉(図1〜7における50〜59、および510)内で加熱され伸長される。糸は約100℃〜約160℃の温度、約0.01/分〜約5/分の伸長速度で少なくとも一度伸長される。伸長速度は材料が伸長域を離れる速度(V)と伸長域に入る速度(V)の差を伸長域の長さ(L)で割ったものと定義され、すなわち下式である。
【0040】
伸長速度=((V2−V1)/L)/分
好ましくは、糸は約1.01:1〜約20:1の伸長比に約135℃〜約155℃の温度で伸長される。好ましくは、伸長比は糸を破断しない最大限である。
【0041】
上記態様の両方とも、各糸またはテープ物品は圧縮のための各手段(30〜40)で圧縮の発端と終端の両方とも縦方向引張力がかけられている。縦方向引張力は連続的に駆動される手段の速度を制御することで制御される。
【0042】
各圧縮工程の発端で各糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端で糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しい。本発明の状況においては、「実質的に等しい」という用語は圧縮工程で、引張力の高低比が少なくとも0.75:1、好ましくは少なくとも0.80:1、より好ましくは少なくとも0.85:1、さらにより好ましくは少なくとも0.90:1、および最も好ましくは少なくとも0.95:1であることを意味する。このように圧縮工程の発端と終端で縦方向引張力が等しいことは本発明の方法の基本的な特徴である。圧縮工程で引張力が等しいことは圧縮の中間での引張りがないことを保証する。
【0043】
本発明の方法は、従来法が圧縮手段で等しい引張応力(g/d)を維持してその結果デニールの減少とともに不均衡な引張力を伴うことに比べて優れていると考えられる。本発明の方法は圧縮のための手段で糸やテープ物品の破断またはずれを伴うことなく圧縮工程でのより高い圧力およびより高い温度を可能にする。このことがより高い生産速度と優れた強度の達成を可能にすると考えられる。
【0044】
前記縦方向引張力は圧縮工程の入口と出口における糸またはテープ物品について少なくとも0.25重量キログラム(Kgfと略記され、2.45ニュートンに等しい、ニュートンはNと略記)である。好ましくは、引張力は圧縮工程の発端と終端で少なくとも0.5Kgf(4.9N)、より好ましくは少なくとも1Kgf(9.8N)、さらにより好ましくは少なくとも2Kgf(19.6.2N)、および最も好ましくは少なくとも4Kgf(39.2N)である。最も好ましくは、縦方向引張力は圧縮手段で糸またはテープ物品が破断せず、ずれを生じない最大限である。
【0045】
本発明の範囲を制限するものではないが、明確化のため、図1〜7に示す圧縮手段(30〜40)は反対方向に回転する対向ロール(挟みロール)であり、一つの装置の各挟みロールは好ましくは同じ表面速度を有し、糸またはテープ物品を押圧する。その他の適切でよく知られた圧縮手段には複数の圧縮を提供する単一装置内で3個以上のロールから構成される積み重ね型挟みロール、糸またはテープ物品に対して反対側から押圧する移動ベルトの対、高張力の下で糸またはテープ物品を180°旋回させるロールなどが挙げられる。挟みロールおよび移動ベルトによってかけられる圧力は油圧シリンダーで動作してもよく、またはロールの間隔を入ってくる材料の厚さよりも小さい寸法に調整して得てもよい。さらに他の圧縮手段が可能であり、検討される。
【0046】
圧縮手段は振動させてもよい。テープ物品が長さと幅があるが厚さが無視できる疑似2次元の物体であることを考慮して、振動はテープ物品の面に垂直な方向、テープ物品の面の方向、または両方の面から傾いた方向に向けることができる。振動は低周波数、または可聴または超音波周波数でよい。振動は付加的な圧力またはせん断のパルスを付加して圧密化を助けるのに有効である。圧縮物品の厚さまたは幅に周期的な振動を与えると複合体適用における結合に役立つ。
【0047】
各態様における圧縮工程でかける圧力は約20〜約10,000ポンド/平方インチ(psi)(約0.14〜約69MPa)、好ましくは約50〜約5,000psi(約0.34〜約34MPa)、より好ましくは約50〜約2,500psi(約0.69〜約17MPa)である。圧力は好ましくは圧縮の連続的な段階で増加させる。圧縮手段は約25℃〜約160℃、好ましくは約50℃〜約155℃、およびより好ましくは約100℃〜約150℃の温度にある。
【0048】
少なくとも一つの圧縮手段、例えば図1における(30)を通過した後、今や成形されたテープ物品(100)を少なくとも一度加熱して伸長する。テープ物品の加熱は赤外放射、加熱面との接触、または加熱流体との接触など、いかなる手段でもよい。好ましくは、テープ物品は図中に破線で境界が示される複数の温度域を有する強制対流空気炉(50および51)内で加熱され伸長される。図には示されない加熱機および送風機が炉内の空気を加熱し循環させる。
【0049】
テープ物品の伸長は約100℃〜約160℃、好ましくは約135℃〜約150℃の温度で行う。テープ物品は約0.001/分〜約1/分の伸長速度で伸長される。好ましくは、テープ物品は約0.001/分〜約0.1/分の伸長速度で伸長される。好ましくは、テープ物品は約1.01:1〜20:1の伸長比で伸長される。
【0050】
伸長力は、糸を、図2、3、4、および6に示すように十分な数の駆動ロール(60)の上下を通過させる方法、図1および7に示すように圧縮手段(31、32、および40)による方法、図5および7に示すように圧縮手段(36、37、および40)と駆動ロール(60および61)の両方による方法、または駆動ゴデットと遊動ロールの対(不図示)のまわりに複数回テープ物品を巻く方法などのいかなる従来手段によってもかけることができる。伸長力をかける駆動ロールは炉の内部でも外側でもよい。
【0051】
縦方向引張力は連続操作を通して同じである必要はない。随意に、糸またはテープ物品はより低い縦方向引張力に緩和させてもよく、または張力隔離手段により連続的な圧縮または伸長の間に約5%未満収縮させてもよい。さもなければ、張力隔離手段により連続的な圧縮または伸長の間に張力を増大させてもよい。図7では、ロール(61)が張力隔離手段として作用する。テープ物品(114)にかかる張力はテープ物品(113)にかかる張力よりも大きいか、または小さいが、これは挟みロール(39)と(40)の速度、および二つの炉における温度による。いずれの場合にも、拘束ロール(20)および駆動ロール(60)の速度は圧縮手段(39および40)で張力が一定になるように調整される。
【0052】
テープ物品は巻取り機に移送される前に張力をかけて冷却される。テープ物品の長さは熱収縮のためわずかに減少するが、張力は冷却の間は十分に高くして熱収縮を超えた収縮を防がなければならない。好ましくは、テープ物品はロール(60)に接して冷却され、ロールは自然対流、強制換気により冷却され、または内部水冷で冷却される。最終的な伸長物品(70〜76)は張力をかけて約70℃未満の温度に冷却され、張力をかけてパッケージとしてまたはビームに巻上げられる(巻上げ機は不図示)。
【0053】
上記のように、圧縮および伸長手段の数と配置は図で示されるように具体的態様内で異なってよい。
第一の態様を示す図1は圧縮・伸長・圧縮・伸長・圧縮の配列順を表す。
【0054】
第一の態様を示す図2は圧縮・圧縮・伸長の配列順を表す。
図3〜6は本発明の第二の態様を示す。図3は伸長・圧縮・伸長の配列順を表す。
図4は伸長・3回連続の圧縮・伸長の配列順を示す。
【0055】
図5は6帯域の炉(57)における伸長・圧縮・伸長・圧縮・伸長の配列順を表す。
図6は4帯域の炉(58)における伸長・2回の連続的圧縮・伸長の配列順を表す。
図7は第一の態様を示し、引張力・圧縮を増加させた場合の圧縮・伸長・伸長の配列順を表す。
【0056】
本発明の第一のまたは第二の態様の一つと調和するその他の多くの工程配列順が可能であり、検討される。
好ましくは本発明の方法は少なくとも約2.2GPa、より好ましくは少なくとも約2.6GPa、さらにより好ましくは少なくとも約3.0GPa、および最も好ましくは少なくとも約3.6GPaの引張強度を有する。
【0057】
好ましくは本発明の方法は原料となる糸の強度の少なくとも75%の引張強度を有するテープ物品を生成する。より好ましくは本発明の方法は原料となる糸よりも高い引張強度を有するテープ物品を生成する。
【0058】
本発明の第三の態様は不定長で少なくとも10:1の平均断面縦横比を有するポリエチレンテープ物品であり、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度を有し、ASTM D882に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に少なくとも約3.6GPaの引張強度を有する。
【0059】
第四の態様では、本発明は本発明のテープ物品を含む布地であり、前記布地は織物、編み物、および立体織物からなる群から選択される。好ましくは本発明の布地は少なくとも50重量%の本発明のテープ物品を含む。
【0060】
第五の態様では、本発明は本発明のテープ物品の複数の単向性層を含む積層体であり、隣接する層のテープ方向は互いに約15〜約90度回転している。
第六の態様では、本発明は本発明の布地、本発明の積層体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の部材を含む耐衝撃性、耐貫通性の複合材料である。好ましくは本発明の複合材料は砲弾および刃物その他の鋭利・先鋭な器具に対して耐貫通性を有する。
【0061】
下記の実施例は本発明のより完全な理解のために提示される。本発明の原理を説明するために提示の具体的技法、条件、材料、比率、および報告データは例示であり、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0062】
測定方法
固有粘度
固有粘度の測定はASTM D1501-99に従い135℃のデカリン溶液中で行った。
糸の靭性
糸の靭性はASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した。
【0063】
テープの引張強度
テープの引張強度はASTM D882-09に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した。
【0064】
配向関数
c軸配向関数(f)はCorreale, S. T. & Murthy, Journal of Applied Polymer Science, VoL 101, 447-454 (2006)に記載の広角X線回折法をポリエチレンに応用して測定した。
【0065】
実施例
実施例1〜2は簡易化システムの試験であった。
実施例1(比較例)
12dl/gの固有粘度、0.99のc軸配向関数、および28g/dの初期靭性を有する1200デニールの多繊維超高分子量ポリエチレン糸を7回/インチ(2.76回/cm)撚った。この撚糸の靭性は15.5g/dであった。この撚糸を引張り、溶融し、その後22℃の温度、約8,000psi(約55MPa)の圧力で圧盤の間で静的に圧縮した。テープ物品は2.0GPaの引張強度を有したが、これは23.4g/dの靭性に相当する。テープ物品は元の不撚糸の強度の83.6%を維持した。
【0066】
実施例2(比較例)
14dl/gの固有粘度、0.99のc軸配向関数、および28g/dの靭性を有する4800デニールの多繊維超高分子量ポリエチレン糸を約0.025回/インチ(約0.01回/cm)撚った。この糸を155.5℃の温度の強制空気対流炉内で1.07/分の伸長速度で2.5:1の比で伸長した。これにより糸の繊維は少なくとも部分的に融合した。この伸長して溶融した糸の靭性は20g/dであった。
【0067】
約0.065cmの直径を有するこの伸長して溶融した糸を152℃の温度の鋼板に沿って、その後はその下方加熱板と上方非加熱鋼板の間の固定隙間を通して連続的に引っ張った。この上方板は下方板に対してある角度で傾き、その下方端が糸と接触線を形成した。糸にかかる張力は隙間に入る際に225gで、隙間から出る際に400gであった。
【0068】
この糸は張力をかけて隙間を通ることで連続的に扁平化、統合、および圧縮されテープを形成した。このテープは圧縮隙間を通過後加熱板に接触したままであり、幾分かの伸長が起きた可能性がある。
【0069】
このように生成されるテープ物品は0.005インチ(0.0127cm)の厚さ、0.10インチ(0.254cm)の幅、および20:1の縦横比の側部寸法を有した。このテープは1.62GPaの引張強度を有したが、これは19g/dの靭性、元の糸の強度の68%に相当する。
【0070】
実施例3
下記の実施例は本発明の第一の態様を実施するために本発明者らが企図する最良の形態を説明する。
【0071】
約0.01回/cm撚った1200デニールのゲル紡糸多繊維超高分子量ポリエチレン糸であって、14dl/gの固有粘度、0.99のc軸配向関数、および47g/dの靭性を有するものを選択する。
【0072】
図1に示されるように、糸(10)は糸巻架(不図示)にかかっているパッケージから巻き戻され、拘束ロール(20)を通過する。このロールは130℃の温度にある。拘束ロール(80)を離れる糸は第一の対の圧縮挟みロール(30)中へ5メートル/分の速度で直接通される。この挟みロールは2.5Kgf(24.5N)の縦方向引張力を糸にかける。この挟みロールは135℃の温度にある。糸は約500psi(約3.4KPa)の圧力で挟みロールの中で扁平化、統合、圧縮され、テープ物品(100)を形成する。第一の挟みロール(30)を離れるテープ物品は第二の対の挟みロール(31)によって2.5Kgf(24.5N)の縦方向引張力をかけられる。
【0073】
テープ物品は(100)は強制空気対流炉(50)の二つの帯域に入り横断し、挟みロール(30)と(31)の間を通過する。炉内温度は帯域1が149℃、帯域2が150℃である。このテープ物品(100)は炉(50)内で0.11/分の伸長速度で伸長される。伸長されたテープ物品は挟みロール(31)で2回目の圧縮をされ第二の炉(51)内を通過する。第二の挟みロール温度は147℃である。
【0074】
2回圧縮され、1回伸長されたテープ物品(101)は第三の対の挟みロール(32)によってかけられる2.5Kgf(29.4N)の縦方向引張力を受けて第二の炉(51)の第一および第二帯域内を0.096/分の伸長速度で伸長される。炉(51)内の帯域温度はそれぞれ151℃および152℃である。
【0075】
このテープ物品はその後第三の挟みロール(32)内で150℃の挟みロール温度、約500psi(約3.4KPa)の圧力で3回目の圧縮をされる。テープ物品内の縦方向引張力は第三の組の挟みロールの入口と出口で2.5Kgf(29.4N)で基本的に一定である。第三の組の挟みロール(32)の出口におけるテープ物品内の縦方向引張力は外部ロール(60)によってかけられる。
【0076】
テープは張力をかけて外部ロール(60)で50℃の温度にまで冷却される。最終的なテープ物品(70)は張力をかけて7.5メートル/分の速度で巻き上げられる。
生成される新規なテープ物品は0.00697cmの厚さ、0.135cmの幅、および20:1の平均断面縦横比の基本的に長方形の断面を有する。このテープ物品は3.6GPaの引張強度を有し、これは42g/dの靭性に相当する。このテープ物品は原料糸の強度の89%を維持する。
【0077】
実施例4
下記の実施例は本発明の第二の態様を実施するために本発明者らが企図する最良の形態を説明する。
【0078】
0.01回/cm撚った4800デニールのゲル紡糸多繊維超高分子量ポリエチレン糸であって、15dl/gの固有粘度、0.98のc軸配向関数、および45g/dの靭性を有するものを選択する。
【0079】
図3に示されるように、糸(12)は糸巻架(不図示)にかかっているパッケージから巻き戻され、連続的に拘束ロール(20)を通過する。このロールは135℃の温度にある。拘束ロール(82)を離れる糸は8Kgf(78.4N)の縦方向引張力をかけられて二つの帯域の炉(53)内へ5メートル/分の速度で通される。縦方向張力は挟みロール(34)の速度によって制御される。第一と第二の炉帯域温度はそれぞれ149℃と150℃である。この糸は炉(53)内で0.09/分の伸長速度で伸長された後挟みロールに入る。伸長された糸は挟みロール(34)内で152℃の温度で圧縮されテープを形成する。このテープ物品は第二の炉(54)内を通過して8Kgf(78.4N)の縦方向引張力で伸長される。この縦方向引張力は外部ロール(60)の速度で制御される。このテープ物品は152℃の温度で0.086/分の伸長速度で伸長される。
【0080】
このテープ物品に張力をかけ、外部ロール(60)で50℃の温度に冷却される。最終的なテープ物品(72)は張力をかけて7メートル/分の速度で巻き上げられる。
生成される新規なテープ物品は0.00627cmの厚さ、0.627cmの幅、および100:1の平均断面縦横比の基本的に長方形の断面を有する。このテープ物品は3.6GPaの引張強度を有し、これは42g/dの靭性に相当する。このテープ物品は原料糸の強度の93%を維持する。
【0081】
実施例5
実施例3に記載の本発明のテープ物品は7.2/cmの縦糸・横糸数を有する平織布地に織られる。
【0082】
実施例6
実施例4に記載の本発明のテープ物品は1.5/cmの縦糸・横糸数を有する平織布地に織られる。
【0083】
実施例7
実施例3または実施例4に記載の本発明のテープ物品は多数のパッケージに巻き上げられ、そのパッケージは糸巻架に置かれる。テープ物品の複数の端部は糸巻架から巻戻され、側面を接して並行させ、0.00035cmの厚さの高密度ポリエチレン(HDPE)膜からなる担体網上に置かれる。この担体網とテープ物品を加熱した挟みロールを通過させて圧力をかけ、テープ物品を担体網に付着させる。担体網と付着した並行するテープ物品は二つのロールに巻き上げられる。
【0084】
この二つのロールは、テープ物品を含む網が熱と圧力で直交積層を形成して統合される米国特許第5,173,138号に記載の直交積層形成装置内に供給される。4層の積層体がこれにより形成され、これらの層は積層体を形成する順にHDPE・テープ物品・テープ物品・HDPEであり、隣り合う層のテープの方向は互いに直交する。本発明のこの積層体は巻き上げられる。
【0085】
実施例8
実施例5または実施例6に記載の本発明の布地は多層化して緩く結合させて1.5Kg/mの面密度を有する本発明の集合体を形成する。本発明の集合体は米国軍用規格662Fによる測定で9´19mmのFMJパラベラム弾に対して少なくとも約500Jm/Kgの比エネルギー吸収を有することが期待される。
【0086】
実施例9
実施例7に記載の本発明の積層体は多層化して統合させ1.5Kg/mの面密度を有する本発明の耐衝撃性・耐貫通性の複合材料物品を形成する。本発明の集合体物品は米国軍用規格662Fによる測定で9´19mmのFMJパラベラム弾に対して少なくとも約500Jm/Kgの比エネルギー吸収を有することが期待される。
【0087】
かなり詳細に本発明を記述したが、そのような詳細に厳密にこだわる必要はなく、当業者にはさらなる変化および修正が想起され、それらは添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にすべて入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテープ物品の生産方法であって、
a)少なくとも1種のポリエチレン多繊維糸を選択し、前記糸は少なくとも0.96のc軸配向関数、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜約40dl/gの固有粘度、ASTM D2256-02に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に約15g/d〜約100g/dの靭性を有し、
b)前記糸に縦方向引張力をかけ、前記糸を少なくとも一つの横方向圧縮工程で約25℃〜約137℃の温度で扁平化、統合、圧縮して少なくとも約10:1の平均断面縦横比を有するテープ物品を形成し、各前記圧縮工程は発端と終端を有し、各前記圧縮工程の発端における各前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさは同じ圧縮工程の終端における前記糸またはテープ物品にかける縦方向引張力の大きさに実質的に等しく、少なくとも約0.25重量キログラム(2.45ニュートン)であり、
c)前記テープ物品を約130℃〜約160℃の範囲の温度で、約0.001/分〜約1/分の伸長速度で少なくとも一度伸長し、
d)必要に応じて、工程b)を約100℃〜約160℃の温度で1回以上繰り返し、
e)必要に応じて、工程c)を1回以上繰り返し、
f)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を緩和し、
g)必要に応じて、工程b)〜e)の間で縦方向引張力を増加し、
h)前記テープ物品に張力をかけた状態で約70℃未満の温度に冷却する、
ことを含む方法。
【請求項2】
工程b)〜h)が連続的に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択される多繊維糸が、1インチ(2.54cm)の長さ当たり約10回未満の撚りをかけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択される多繊維糸が、溶融および結合形成からなる群から選択される方法の手段により連結した、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テープ物品の強度が、ASTM D882-09に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に原料となる前記多繊維糸の少なくとも75%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ASTM D882-09に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に、前記テープ物品は少なくとも約2.2GPaの引張強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
圧縮のための手段をテープ物品の面に垂直な方向、テープ物品の面の方向、または両方の面から傾いた方向に振動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも10:1の平均断面縦横比を有し、ASTM D1601-99に従い135℃のデカリン中で測定した場合に約7dl/g〜40dl/gの固有粘度を有し、ASTM D882-09に従い10インチ(25.4cm)ゲージ長で100%/分の伸長速度で測定した場合に少なくとも約3.6GPaの引張強度を有するポリエチレンテープ物品。
【請求項9】
請求項8に記載のテープ物品の複数の単向性層を含み、隣接する層のテープ方向は互いに約15〜約90度回転している積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の布地からなる群から選択される少なくとも1種の部材を含む耐衝撃性、耐貫通性の集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−501653(P2013−501653A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524729(P2012−524729)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043634
【国際公開番号】WO2011/019512
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】