高所作業車の懸吊装置
【課題】車台,デッキとシザースリンク等から成る昇降機構を固定すると共に,懸吊手段と,前記固定手段ないしシザースリンク機構の伸張を規制する手段の構成及び動作を一体かつ,同期可能なものとして,簡単な作業で,安全に高所作業車を懸吊する。
【解決手段】シザースリンク機構によってデッキを昇降させる高所作業車において,前記デッキの下方位置に配置される最上段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する支軸に回動自在に,掛止部を設け,かつ,前記懸吊具の回動軌跡において,前記掛止部が,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも掛止部を突出する位置において,前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたものである。
【解決手段】シザースリンク機構によってデッキを昇降させる高所作業車において,前記デッキの下方位置に配置される最上段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する支軸に回動自在に,掛止部を設け,かつ,前記懸吊具の回動軌跡において,前記掛止部が,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも掛止部を突出する位置において,前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高所作業に用いられる高所作業車の懸吊装置,より詳しくは,車台上にシザースリンク又は,パンタグラフ状リンク機構からなる昇降手段を介して昇降するデッキを有する高所作業車の前記シザースリンク機構の伸張を規制し固定すると同時に,高所作業車をクレーンのフック等で懸吊することを可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,例えば建築現場における天井施工,天井(天井裏を含む)及び壁面高所における照明取付工事あるいは塗装工事等のような高所作業では,足場を組立てて行っていたが,最近では作業の省力化と安全性を図るために,走行可能な車台上に昇降可能なデッキを設けてなる高所作業車が多用されている。
【0003】
かような高所作業車を建築現場へ搬入,搬出する際には,一般にトラックに積込んで運搬し,トラックへの積込み,積降ろしは,自走式のものでも,通常はクレーン等で吊り上げて行っている。
【0004】
特許文献1記載の手段は,車台上に複数段の左右一組のリンクからなる昇降機構を介して昇降可能に設けられたデッキを有する自走式高所作業車において,最上段のリンクの枢着軸の左右両端に支持部を延設し,これら支持部に基端部を回動自在かつ軸方向移動自在に支持され,先端部に係合孔を有する左右一対の固定金具を設け,一方,車台の左右両側に支持部の軸芯の垂下線上に配置され,固定金具の係合孔に係脱自在の固定ピンを設け,デッキが最下降位置で固定金具の係合孔を固定ピンに係合させて昇降機構の伸長を規制する固定具を構成し,他方,最上段のリンクの連結部材に,機体(高所作業車全体)重心の垂直線上で,かつデッキの下方位置に配置された懸吊具を固設し,該懸吊具の上方位置のデッキの床面の一部に開口部を形成し,該開口部に開閉自在の蓋体を設けたものである。
【0005】
又,一般的には,この種の高所作業車に,吊り金具を車台の角部4箇所に設け,作業車を吊り上げるときには,前記吊り金具にワイヤーロープを掛け渡しその中央部をクレーン等のフックに掛止して吊り上げている。
【特許文献1】実用新案登録第2537247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の手段によれば,前記リンクと車台とを固定する固定金具の操作と,前記蓋体を開放して,懸吊具をセットするという作業を伴い,煩雑であり,又,懸吊具の操作にかまけてリンクの固定操作を失念したり,固定金具の脱落の可能性が否定できないこと,又,限られた大きさの前記蓋体下方に位置する前記懸吊具にクレーンのフックを係合するため,前記懸吊具が視認しづらく,作業が手間取るという問題があった。
【0007】
又,前記従来の懸吊手段では,吊り上げ作業の際にワイヤーロープ等を必要とし,これを4ヶ所の吊り金具に掛け渡してその略中央部をクレーン等のフックに掛止し,作業車が略水平状態になるように吊り上げなければならないため,作業が煩雑で手間がかかり,単独作業者の操作は困難であった。
【0008】
さらに,ワイヤーロープを掛け渡すときに,作業車の塗装等の損傷を防止するために前記ワイヤーロープが作業車に当る個所(例えばデッキとデッキ上の手摺等)にウエス等を挟み込み,該部がへこむことや擦傷を防ぐようにしなければならず,より一層作業が煩雑になっていた。
【0009】
又,機体10を吊り上げたときに,ワイヤーロープのフックに対する掛止部がずれて作業車が傾き,作業車の姿勢が不安定になり搬出作業に危険を伴うこととなる。
【0010】
本発明の目的は,車台,デッキとシザースリンク等から成る昇降機構を固定すると共に,懸吊手段と,前記固定手段ないしシザースリンク機構の伸張を規制する手段の構成及び動作を一体かつ,同期可能なものとして,簡単な作業で,高所作業車を懸吊することができる懸吊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため,本発明懸吊装置は,車台とデッキとの間に複数のX字状リンクを配したシザースリンク機構を設け,該シザースリンク機構によって前記デッキを昇降させる高所作業車において,
前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンク16d,17dとの間の同一平面上に配置された支軸40に懸吊具30を回動自在に設け,
前記懸吊具30の回動軌跡において,
前記懸吊具30の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面15a,15b上に少なくとも前記懸吊具30の掛止部31が突出したときに,前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
又,前記支軸40は,前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンクを同一平面上で連結するいずれかの枢着軸20bとすることができる。
【0013】
さらに,前記伸張規制手段は,前記懸吊具30に係合部34を形成すると共に,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸40の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸20aに固定具35を設け,前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部が突出したとき,前記係合部34が前記固定具35に係合し,前記シザースリンク機構の伸張を規制するよう構成することができる。さらに,前記伸張規制手段を前記デッキの最下降位置で作動させることができる。
【0014】
又,前記固定具を前記車台に設けることができる。
【0015】
さらに,前記シザースリンク機構が,油圧シリンダの伸縮動作によって作動し,前記デッキを昇降する構成において,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段50と,前記油圧シリンダ19への作動油を流通又は遮断する作動油遮断手段60とを設け,
前記懸吊具30の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部31を突出したことを検出する掛止部位置検出手段50の検出信号で,前記油圧シリンダ19への作動油を遮断するよう前記作動油遮断手段を作動させ,前記シザースリンク機構の伸張を規制することができる。
【0016】
さらに,前記支軸40は,前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸(20a,20b)に嵌装した軸管(29a,29b,291b,292b)であって,前記固定具35は,前記懸吊具30を回動自在に設けた支軸の下方に位置する前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管に設けることができる。
【0017】
なお,本発明に包含される実施形態として,前記デッキの下方位置に配置される最上段の左右のX字状リンク16d,17dを同一平面上で連結する,例えば,左右のX字状リンクの交点を連結する支軸を成す枢着軸20bに懸吊具30を回動自在に設け,該懸吊具30は,一端例えば,上端に掛止部31と,他端,例えば下端に係合部34を形成し,かつ,前記懸吊具30の垂直位置において,前記掛止部31は,前記懸吊具30の上方位置のデッキ床面15a,15bに形成した開口部32から前記デッキ床面15a,15b上に突出する回動軌跡を有し,前記係合部34は,前記懸吊具の垂直位置及び前記デッキを下降した状態,例えば最下降位置において,前記最上段より下方に位置する何れか1段,例えば,最下段の左右のX字状リンク16a,17aを同一平面上で連結する,例えば,左右のX字状リンクの交点を連結する支軸を成す枢着軸20aに嵌装する軸管29に形成した固定具35に係合自在の回動軌跡を有し,これら前記懸吊具等から成るシザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を特徴とする高所作業車の懸吊装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,車台,デッキとシザースリンク等から成る昇降機構を固定すると共に,懸吊手段と,固定手段ないしシザースリンク機構の伸張を規制する手段の構成及び動作を一体かつ,同期可能なものとして,簡単な操作による作業で,懸吊準備と,機体固定とを同時に行って,高所作業車を安定して,安全に懸吊することができる。
【0019】
又,特許文献1においては,シザースリンクの固定金具をリンクの外側に設けていることから,高所作業車の懸吊時に固定金具を設備などに接触させて,固定金具が外れる危険性があるが,本発明においては,懸吊時に伸張規制手段を他に接触させる可能性がなく,より安全な懸吊作業を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明の実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)において,高所作業車の機体10は,バッテリー等で自走可能なホイール式の走行機構12を有する車台13上にシザースリンクないし,パンタグラフ型リンク機構からなる昇降機構14を介して昇降するデッキ15を設けて構成されている。
【0022】
又,前記デッキ15上には防護柵45が設けられ,デッキ15の床面は,張り出しデッキ又は延長デッキを採用する図示の実施形態にあっては,第1床面15a及び第2床面15bの二重に構成されている。
【0023】
図3に示すように,昇降機構14は,デッキ15の幅方向側面に対応する機体10の左右両側(本明細書において「左右」という)で,それぞれ前記デッキ15の幅方向側面の内外側に同一長さのアウターアーム及びインナーアームとしてX字状に交点を枢着された複数のX字状リンクから成る左右1対のX字状リンク16,17を複数段,ここでは,X字状リンクを1段として,4段(16a〜16d,17a〜17d)に枢着連結したもので,左右の各X字状リンク16,17を下段のX字状リンクの端縁と,上段のX字状リンクの端縁との連結部において,それぞれ下段の内側に位置するインナーアーム161と上段の外側に位置するアウターアーム162を,又,下段の外側に位置するアウターアーム162と上段の内側に位置するインナーアーム161を連結するように,左右のX字状リンク16,17を各ロッド21を介して回動自在に連結している。
【0024】
そして,詳細は図示省略するが,最下段のX字状リンク16a,17aのインナーアーム161の下端部が車台13の前端部に枢着され,最下段のアウターアーム162下端部が車台13の後部で機体10長手方向へ摺動自在に支持され,さらに,最上段のX字状リンク16d,17dのインナーアーム161上端部がデッキ15の後部にデッキ長手方向へ摺動可能に支持され,アウターアーム162の上端部は,デッキ15の前端部に枢着されている。
【0025】
又,最上段及び最下段の左右のX字状リンク16d,17d及び16a,17aの交点は,両X字状リンクを構成する各アウターアーム及びインナーアームと共に枢着軸20b,20aで連結されている。なお,中間段の左右のX字状リンク16b,16cの交点は,左右それぞれ別々にインナーアームとアウターアームとが枢着軸で連結されている。
【0026】
又,昇降機構14は上下複数段に枢着して連結された左右一対の各X字状リンク16a〜d,17a〜dを垂直方向に移動させる油圧シリンダ19を備える。
【0027】
油圧シリンダ19は,最下段のX字状リンク16a,17aの左右のインナーアーム161,161にそれぞれ設けられたシリンダ取付用ブラケット26,26間に架設された枢軸にシリンダ19aが枢着され,その2段上方に位置するX字状リンク16c,17cの左右のインナーアーム161,161にそれぞれ設けられたシリンダ取付用ブラケット28,28間に架設された枢軸にピストンロッド19bが枢着されている。
【0028】
そして,前記油圧シリンダ19によって昇降機構14が作動し,デッキ15が水平状態を保って昇降する。
【0029】
以下,本発明に係る前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段について,説明する。
【0030】
図4(A)〜図4(C)に示すように,前記昇降機構14の最上段の左右のX字状リンク16d,17dの交点を連結する枢着軸20bには,機体10の重心Gの略垂直線上もしくはこれから均等に左右に延長した位置に懸吊具30が配置され,回動自在に取付けられる。該懸吊具30は,その上端にクレーン等のフックに掛止する孔部もしくは,フック状の掛止体を有する掛止部31が形成されており,この掛止部31はデッキ15の床面15aの下方に位置している。そして,前記懸吊具30の下端は,懸吊具30と一体に前記枢着軸20b上を回動する,ここでは,フック状の係合部34,34が形成されている。図示の実施形態における懸吊具30では,前記枢着軸20bに対して回動自在にこの枢着軸に外嵌した支軸40たる軸管29bを設け,前記軸管29bの軸心に対して直交方向に設けた掛止部31を設けて該軸管に固着形成し,前記軸管29bの軸心に対して前記掛止部31と点対称の位置に,フック状板片から成る2の係合部34,34を設け,この係合部34,34を支軸40を成す軸管29bの両軸端方向に等位置において,固着形成している。
【0031】
前記軸管29bには,平時,前記懸吊具30の掛止部31及び係合部34が最上段のX字状リンク16dのアウターアーム162に沿って固定されるよう,枢着軸20bと連結する図示せざるストッパーが設けられている。
【0032】
なお,図2(B)に示すように,前記懸吊具30及び固定具35は,前述実施形態に於ける,それぞれ,最上段及び最下段の左右のX字状リンク16d,17d,16a,17aの交点に限らず,X字状リンク16d,17d,16a,17aの交点に配置される支軸40を成す枢着軸と,懸吊具30が回動する枢着軸とを別々に構成し,懸吊具30が回動する支軸40を成す枢着軸をX字状リンクの交点に対して図中左方向へ移動させて,両X字状リンク16d,17d,16a,17aを同一平面上で連結し,機体10の重心Gの略垂直線上に懸吊具30を配置させてもよい。
【0033】
又,デッキ15の第1床面15a及びこれに対して摺動し,デッキを拡張する第2床面15bには,前記2の床面が重畳位置で,前記懸吊具30をのぞませる開口部32が形成され,この開口部32には,必要に応じ,蓋体33が開閉自在に設けられている。なお,上記開口部32が懸吊具30の掛止部31が回動して床上に突出させることができるスリット状のものとすることもできる。
【0034】
そして,最下段のX字状リンク16a,17aの交点を,各アウターアーム及びインナーアームと共に連結する枢着軸20a上には,左右のインナーアームを連結し,前記枢着軸20aを外嵌する軸管29aを設け,前記デッキ15の最下降位置で,前記X字状リンクを固定して,懸吊時にX字状リンクが伸張して開かないようにするための固定具35が配置される。
【0035】
なお,前記固定具35は最下段のX字状リンク16a,17aの左右のインナーアームを連結する軸管29aに設けることに限らず,油圧シリンダ19と干渉しない範囲で,最下段のX字状リンク16a,17aと最上段のX字状リンク16d,17dとの間の中間段のX字状リンク16b,17b,又は16c,17cの左右のインナーアームを連結する軸管29aを設け,この軸管29aに固定具35を設けてもよい。
【0036】
図4(A)〜(C)に示す実施形態では,支軸40を成す前記軸管29b上に,略垂直に,前記係合部34,34の回動軌跡において,2の固定具35である係合杆36,36を立設し,この係合杆に前記係合部34,34が,前記懸吊具の回動軌跡において,嵌合,係合離脱自在と成す係合孔37,37を穿設形成したものである。
【0037】
固定具35は,前記懸吊具30の係合部34,34が係合すればよく,特に形状,構造等に限定を要しないが,図5(A),(B)に示す本発明の固定具35の他の実施形態においては,前記係合部34,34及びこれに対応して係合杆36,36の構成を変更したものである。
【0038】
図5(A)において,前記係合部34,34の下端をフック状とせずに,懸吊具30を,両端に係合ピン38,38を形成した係合杆とし,支軸40を成す前記軸管29b上に,垂直に2の係合杆36,36を立設し,この係合杆36,36に前記係合ピン38,38の回動軌跡において,該ピン38,38に係合可能な係合凹部39,39を設けたものである。
【0039】
支軸40を成す前記軸管29bに必要な剛性があれば,これを固定具35の係合杆36として前記軸管29bに対して係合するようにしてもよい(図5(B))。
【0040】
又,前記懸吊具30の掛止具31は,他の構成を図4に示すものと同様で,掛止具として,2の掛止孔31,31を設けた構成としてもよく,これにより,機体10の懸吊時,機体が安定して安全性を向上することができる(図5(C))。
【0041】
又,デッキ15の床面15a,15bの蓋体33a,33bは閉じられており,床面15a,15bと略同一平面を形成している。
【0042】
機体10をクレーン等で吊り上げる場合には,図1に示すように昇降機構14を縮めてデッキ15を最下降位置に位置させ,ついで,デッキ15の床面15a,15bの蓋体33a,33bを開放し,懸吊具30の支軸40を成す軸管29bと枢着軸20bと連結する図示せざるストッパーを外して懸吊具30を回動し,掛止部31を開口部32から床面上に突出させる。
【0043】
この懸吊具30の回動と同時に,係合部34が回動し,X字状リンク16a,17a間に架設した支軸40を成す軸管29b上の係合杆36の係合孔37,37に係合部34のフック状先端が前記係合孔内に嵌合して係合する(図4)。図5(A)に示す実施形態では,係合ピン38,38が固定具35の係合片36,36に形成した係合凹部39,39に係合する。又,同図(B)に示す実施形態では,懸吊具30のフック状係合部34が,固定具を成す前記軸管29bに係合する。
【0044】
そして,懸吊具30の掛止部31にクレーン等のフックを掛止して吊り上げると,前記懸吊具30の係合部34と,固定具35の係合孔37,37又は係合凹部39,39に対する係合ピン38,38は,懸吊具30の懸吊により,その係合を一層強固なものとされ,前記シザースリンク機構の伸張を規制し,又,懸吊具30は,機体10の重心の略垂直線上に配置されているため,機体10を略重心位置で,懸吊し,機体10は略水平状態で吊り上げられる。
【0045】
図6(A),(B)に示す実施形態では,固定具35は,車台13に設けられている。
【0046】
この固定具35は,車台13上に1組のブラケット52,52を左右それぞれ一対に立設し,それぞれのブラケット間を架橋するようにピン53が架設されている。懸吊具30の係合部34は車台13に設けた前記固定具35に係合する。
【0047】
本実施形態では,ブラケット52,52を車台13に溶接して固定しているが,ボルトやリベットなどで固着することもできる。
【0048】
又,支軸40を成す軸管29bを軸管291bと軸管とその両側に配置される軸管292b,292bに分割とし,懸吊具30の掛止部31を中央の軸管291bに固着し,懸吊具30の係合部34を中央の軸管291bに対して左右に配置した軸管292b,292bに固着する。
【0049】
さらに,図7(B)及び図10に示すように,軸管291bと軸管292bとが当接し組み合わされる軸端部に凸部42と凹部43をそれぞれ形成し,掛止部31の操作により係合部34が動作するように構成している。
【0050】
本実施形態では,軸管291bの両軸端に凸部42(,42)を形成し,軸管292b,292bの軸管291側の軸端に前記凸部幅よりも大きい幅の凹部(切り欠き)43,43を形成し,掛止部31の回動操作に遅れて凹凸部42,42,43,43が係合し,それにより係合部34が回動する。
【0051】
又,図11に示すように,軸管291b上には操作ボタン44の先端から突出し,軸管291bの外周壁に穿設した孔部から,枢着軸20b(支軸40)に設けた孔部に挿脱自在となるピン46を有するロック機構59を備え,掛止部31,従って,軸管291b上のロック機構59が共に回動して,同図に示す位置に掛止部31が達すると,ロック機構59のピン46が枢着軸20b(支軸40)に設けた孔部に挿入嵌合すると,掛止部31及び軸管291aの回動を阻止し,係合部34が固定具35から離脱することを防止し,安定して安全に掛止部による高所作業車の懸吊作業を確保することができる構成とすることができる。
【0052】
上記実施形態特有の作用としては,支軸40ないし軸管29bを分割したことで,懸吊具30の掛止部31の回動角度よりも係合部34の回動角度を小さくでき,係合部34が長くなっても他の部品と干渉することを防止できた。
【0053】
図7(A)に示す実施形態において,前述の実施形態では,最上段の左右X字状リンク間を連結する支軸40を成す枢着軸20bに外嵌して軸管29bを設けているのに対して,デッキ15の第1床面15aの裏側に左右一組の支軸を支持するブラケット41,41を固定し,このブラケットに軸着した支軸40に軸管291bと軸管292b,292bを回動自在に外嵌して設け,懸吊具30の掛止部31を中央の軸管291bに固着し,懸吊具30の係合部34を中央の軸管291bに対して左右に配置した軸管292b,292bに固着している。軸管291b及び292b,292bの軸端部の構造は図6に示す実施形態と同じである。
【0054】
本実施形態は固定具35を車台13に設けているが,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸に固定具を設けても良い。
【0055】
さらに,図8に示す実施形態では,支軸40を成す軸管29bは一体である。
【0056】
前記支軸ないし軸管に固定した懸吊具30の係合部34と,車台13等に設けた固定具35を省略可能な実施形態である。言うまでもなく,本実施形態において,図1〜図7における懸吊具30の係合部34と,車台13等に設けた固定具35を有する構成を共に採用してフェイルセイフとして適応することが可能である。
【0057】
前記デッキ15の第1床面15aの裏面のブラケット51に懸吊してリミットスイッチ50を設ける。このリミットスイッチ50は,懸吊具30を回動しデッキの床面15bの開口部32から,懸吊具30の上端が前記開口部上に突出した位置にあるとき,リミットスイッチ50の接点が掛止部31の端面と接触し信号を送るよう配置される。リミットスイッチ50の配置位置は,上記に限定されず懸吊具30がデッキ15bの床面から突出したことを検出できる位置であれよい。又,リミットスイッチ50に代えて懸吊具30の回動角度を検出する回転角度センサーとしてもよい。
【0058】
図9において,作動油タンク66から,モータ65に駆動される油圧ポンプ64を介して,リリーフバルブ63を分岐する回路を経て上昇用電磁弁62,そして下降用電磁弁61から油圧シリンダ19に至る油圧回路に伸張規制電磁弁60を設ける。
【0059】
この伸張規制用電磁弁60は高所作業車の図示せざるメインスイッチがOFFのとき,及びリミットスイッチ50の接点が掛止部31に接触しているときに図示の回路状態となっている。メインスイッチがONとなり,リミットスイッチ50の接点がOFFのときにのみ伸張規制電磁弁60が切り替わり,油圧シリンダ19が伸張可能状態となる。
【0060】
高所作業車を懸吊するときには通常メインスイッチがOFFとなっている。これにより,伸張規制電磁弁60は図の位置に切り替わっており,懸吊により油圧シリンダ19が伸張側に引っ張られたとしても伸張規制電磁弁60のチェックバルブで作動油タンク66内の作動油が吸い込まれることを規制して,油圧シリンダ19及びシザースリンクが伸張することを阻止する。
【0061】
メインスイッチがONとなっていたとしても,懸吊具30の掛止部31がデッキ上に突出すると,リミットスイッチ50がONで,伸張規制電磁弁60が図の位置に切り替わる。これにより,メインスイッチがOFFとなっている場合と同様に油圧シリンダ19及びシザースリンクが伸張することを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る懸吊装置を備えた高所作業車を示し,同図(A)は,正面図,同図(B)は,平面図,同図(C)は,側面図,
【図2】同図(A)及び(C)は,それぞれ同実施形態における,図1(A),図1(C)の一部切欠断面図,同図(B)は,同図(A)の懸吊装置の他の実施形態を示す,
【図3】同実施形態におけるX字状リンクを伸張した状態の正面図,
【図4】同実施形態における懸吊具及び固定具を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,側面図,(B)は,正面図,(C)は,懸吊具34の拡大図,
【図5】懸吊具及び固定具の他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,係合ピンによる実施形態を示し,(B)は,フックによる枢着軸への係合を示し,同図(C)は,懸吊具の他の実施形態を示す部分拡大図,
【図6】懸吊具及び固定具のさらに他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,車台に固定具を設けた実施形態を示し,(B)は部分拡大図,
【図7】懸吊具及び固定具のさらに他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,支軸を枢着軸とは別個に設けた実施形態を示し,(B)は,支軸の分割構成の実施形態を示す部分拡大図,
【図8】懸吊具の係合部及び固定具を省略可能な他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A),(B)はそれぞれ部分拡大図,
【図9】図8に用いる油圧配管系の回路図,
【図10】図7(B)における支軸の分割構成の実施形態を示す部分拡大断面図,
【図11】懸吊具のロック機構を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
10…高所作業車(機体)
12…走行機構
13…車台
14…昇降機構
15…デッキ
15a,15b…第1,第2床面
16,17…左右のX字状リンク
161…左のX字状リンクを成すインナーアーム
162…左のX字状リンクを成すアウターアーム
171…右のX字状リンクを成すインナーアーム
172…右のX字状リンクを成すアウターアーム
19…油圧シリンダ
20a,20b…枢着軸
21…ロッド
26…連結部材
28…連結部材
27…シリンダ
29a,29b,291b,292b,292b…軸管
30…懸吊具
31…掛止部
32…開口部
33a,33b…蓋体
34…係合部
35…固定具
36,36…係合杆
37,37…係合孔
38,38…係合ピン
39,39…係合凹部
40…支軸(軸管29b;291b,292b;,枢着軸20b)
41…ブラケット
42…凸部
43…凹部
44…操作ボタン
45…防護柵
46…ピン
50…掛止部位置検出手段(リミットスイッチ)
51,52…ブラケット
53…ピン
59…ロック機構
60…伸張規制電磁弁
61…下降用電磁弁
62…上昇用電磁弁
63…リリーフバルブ
64…油圧ポンプ
65…モータ
66…作動油タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は,高所作業に用いられる高所作業車の懸吊装置,より詳しくは,車台上にシザースリンク又は,パンタグラフ状リンク機構からなる昇降手段を介して昇降するデッキを有する高所作業車の前記シザースリンク機構の伸張を規制し固定すると同時に,高所作業車をクレーンのフック等で懸吊することを可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,例えば建築現場における天井施工,天井(天井裏を含む)及び壁面高所における照明取付工事あるいは塗装工事等のような高所作業では,足場を組立てて行っていたが,最近では作業の省力化と安全性を図るために,走行可能な車台上に昇降可能なデッキを設けてなる高所作業車が多用されている。
【0003】
かような高所作業車を建築現場へ搬入,搬出する際には,一般にトラックに積込んで運搬し,トラックへの積込み,積降ろしは,自走式のものでも,通常はクレーン等で吊り上げて行っている。
【0004】
特許文献1記載の手段は,車台上に複数段の左右一組のリンクからなる昇降機構を介して昇降可能に設けられたデッキを有する自走式高所作業車において,最上段のリンクの枢着軸の左右両端に支持部を延設し,これら支持部に基端部を回動自在かつ軸方向移動自在に支持され,先端部に係合孔を有する左右一対の固定金具を設け,一方,車台の左右両側に支持部の軸芯の垂下線上に配置され,固定金具の係合孔に係脱自在の固定ピンを設け,デッキが最下降位置で固定金具の係合孔を固定ピンに係合させて昇降機構の伸長を規制する固定具を構成し,他方,最上段のリンクの連結部材に,機体(高所作業車全体)重心の垂直線上で,かつデッキの下方位置に配置された懸吊具を固設し,該懸吊具の上方位置のデッキの床面の一部に開口部を形成し,該開口部に開閉自在の蓋体を設けたものである。
【0005】
又,一般的には,この種の高所作業車に,吊り金具を車台の角部4箇所に設け,作業車を吊り上げるときには,前記吊り金具にワイヤーロープを掛け渡しその中央部をクレーン等のフックに掛止して吊り上げている。
【特許文献1】実用新案登録第2537247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の手段によれば,前記リンクと車台とを固定する固定金具の操作と,前記蓋体を開放して,懸吊具をセットするという作業を伴い,煩雑であり,又,懸吊具の操作にかまけてリンクの固定操作を失念したり,固定金具の脱落の可能性が否定できないこと,又,限られた大きさの前記蓋体下方に位置する前記懸吊具にクレーンのフックを係合するため,前記懸吊具が視認しづらく,作業が手間取るという問題があった。
【0007】
又,前記従来の懸吊手段では,吊り上げ作業の際にワイヤーロープ等を必要とし,これを4ヶ所の吊り金具に掛け渡してその略中央部をクレーン等のフックに掛止し,作業車が略水平状態になるように吊り上げなければならないため,作業が煩雑で手間がかかり,単独作業者の操作は困難であった。
【0008】
さらに,ワイヤーロープを掛け渡すときに,作業車の塗装等の損傷を防止するために前記ワイヤーロープが作業車に当る個所(例えばデッキとデッキ上の手摺等)にウエス等を挟み込み,該部がへこむことや擦傷を防ぐようにしなければならず,より一層作業が煩雑になっていた。
【0009】
又,機体10を吊り上げたときに,ワイヤーロープのフックに対する掛止部がずれて作業車が傾き,作業車の姿勢が不安定になり搬出作業に危険を伴うこととなる。
【0010】
本発明の目的は,車台,デッキとシザースリンク等から成る昇降機構を固定すると共に,懸吊手段と,前記固定手段ないしシザースリンク機構の伸張を規制する手段の構成及び動作を一体かつ,同期可能なものとして,簡単な作業で,高所作業車を懸吊することができる懸吊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため,本発明懸吊装置は,車台とデッキとの間に複数のX字状リンクを配したシザースリンク機構を設け,該シザースリンク機構によって前記デッキを昇降させる高所作業車において,
前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンク16d,17dとの間の同一平面上に配置された支軸40に懸吊具30を回動自在に設け,
前記懸吊具30の回動軌跡において,
前記懸吊具30の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面15a,15b上に少なくとも前記懸吊具30の掛止部31が突出したときに,前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
又,前記支軸40は,前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンクを同一平面上で連結するいずれかの枢着軸20bとすることができる。
【0013】
さらに,前記伸張規制手段は,前記懸吊具30に係合部34を形成すると共に,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸40の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸20aに固定具35を設け,前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部が突出したとき,前記係合部34が前記固定具35に係合し,前記シザースリンク機構の伸張を規制するよう構成することができる。さらに,前記伸張規制手段を前記デッキの最下降位置で作動させることができる。
【0014】
又,前記固定具を前記車台に設けることができる。
【0015】
さらに,前記シザースリンク機構が,油圧シリンダの伸縮動作によって作動し,前記デッキを昇降する構成において,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段50と,前記油圧シリンダ19への作動油を流通又は遮断する作動油遮断手段60とを設け,
前記懸吊具30の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部32から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部31を突出したことを検出する掛止部位置検出手段50の検出信号で,前記油圧シリンダ19への作動油を遮断するよう前記作動油遮断手段を作動させ,前記シザースリンク機構の伸張を規制することができる。
【0016】
さらに,前記支軸40は,前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸(20a,20b)に嵌装した軸管(29a,29b,291b,292b)であって,前記固定具35は,前記懸吊具30を回動自在に設けた支軸の下方に位置する前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管に設けることができる。
【0017】
なお,本発明に包含される実施形態として,前記デッキの下方位置に配置される最上段の左右のX字状リンク16d,17dを同一平面上で連結する,例えば,左右のX字状リンクの交点を連結する支軸を成す枢着軸20bに懸吊具30を回動自在に設け,該懸吊具30は,一端例えば,上端に掛止部31と,他端,例えば下端に係合部34を形成し,かつ,前記懸吊具30の垂直位置において,前記掛止部31は,前記懸吊具30の上方位置のデッキ床面15a,15bに形成した開口部32から前記デッキ床面15a,15b上に突出する回動軌跡を有し,前記係合部34は,前記懸吊具の垂直位置及び前記デッキを下降した状態,例えば最下降位置において,前記最上段より下方に位置する何れか1段,例えば,最下段の左右のX字状リンク16a,17aを同一平面上で連結する,例えば,左右のX字状リンクの交点を連結する支軸を成す枢着軸20aに嵌装する軸管29に形成した固定具35に係合自在の回動軌跡を有し,これら前記懸吊具等から成るシザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を特徴とする高所作業車の懸吊装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,車台,デッキとシザースリンク等から成る昇降機構を固定すると共に,懸吊手段と,固定手段ないしシザースリンク機構の伸張を規制する手段の構成及び動作を一体かつ,同期可能なものとして,簡単な操作による作業で,懸吊準備と,機体固定とを同時に行って,高所作業車を安定して,安全に懸吊することができる。
【0019】
又,特許文献1においては,シザースリンクの固定金具をリンクの外側に設けていることから,高所作業車の懸吊時に固定金具を設備などに接触させて,固定金具が外れる危険性があるが,本発明においては,懸吊時に伸張規制手段を他に接触させる可能性がなく,より安全な懸吊作業を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明の実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)において,高所作業車の機体10は,バッテリー等で自走可能なホイール式の走行機構12を有する車台13上にシザースリンクないし,パンタグラフ型リンク機構からなる昇降機構14を介して昇降するデッキ15を設けて構成されている。
【0022】
又,前記デッキ15上には防護柵45が設けられ,デッキ15の床面は,張り出しデッキ又は延長デッキを採用する図示の実施形態にあっては,第1床面15a及び第2床面15bの二重に構成されている。
【0023】
図3に示すように,昇降機構14は,デッキ15の幅方向側面に対応する機体10の左右両側(本明細書において「左右」という)で,それぞれ前記デッキ15の幅方向側面の内外側に同一長さのアウターアーム及びインナーアームとしてX字状に交点を枢着された複数のX字状リンクから成る左右1対のX字状リンク16,17を複数段,ここでは,X字状リンクを1段として,4段(16a〜16d,17a〜17d)に枢着連結したもので,左右の各X字状リンク16,17を下段のX字状リンクの端縁と,上段のX字状リンクの端縁との連結部において,それぞれ下段の内側に位置するインナーアーム161と上段の外側に位置するアウターアーム162を,又,下段の外側に位置するアウターアーム162と上段の内側に位置するインナーアーム161を連結するように,左右のX字状リンク16,17を各ロッド21を介して回動自在に連結している。
【0024】
そして,詳細は図示省略するが,最下段のX字状リンク16a,17aのインナーアーム161の下端部が車台13の前端部に枢着され,最下段のアウターアーム162下端部が車台13の後部で機体10長手方向へ摺動自在に支持され,さらに,最上段のX字状リンク16d,17dのインナーアーム161上端部がデッキ15の後部にデッキ長手方向へ摺動可能に支持され,アウターアーム162の上端部は,デッキ15の前端部に枢着されている。
【0025】
又,最上段及び最下段の左右のX字状リンク16d,17d及び16a,17aの交点は,両X字状リンクを構成する各アウターアーム及びインナーアームと共に枢着軸20b,20aで連結されている。なお,中間段の左右のX字状リンク16b,16cの交点は,左右それぞれ別々にインナーアームとアウターアームとが枢着軸で連結されている。
【0026】
又,昇降機構14は上下複数段に枢着して連結された左右一対の各X字状リンク16a〜d,17a〜dを垂直方向に移動させる油圧シリンダ19を備える。
【0027】
油圧シリンダ19は,最下段のX字状リンク16a,17aの左右のインナーアーム161,161にそれぞれ設けられたシリンダ取付用ブラケット26,26間に架設された枢軸にシリンダ19aが枢着され,その2段上方に位置するX字状リンク16c,17cの左右のインナーアーム161,161にそれぞれ設けられたシリンダ取付用ブラケット28,28間に架設された枢軸にピストンロッド19bが枢着されている。
【0028】
そして,前記油圧シリンダ19によって昇降機構14が作動し,デッキ15が水平状態を保って昇降する。
【0029】
以下,本発明に係る前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段について,説明する。
【0030】
図4(A)〜図4(C)に示すように,前記昇降機構14の最上段の左右のX字状リンク16d,17dの交点を連結する枢着軸20bには,機体10の重心Gの略垂直線上もしくはこれから均等に左右に延長した位置に懸吊具30が配置され,回動自在に取付けられる。該懸吊具30は,その上端にクレーン等のフックに掛止する孔部もしくは,フック状の掛止体を有する掛止部31が形成されており,この掛止部31はデッキ15の床面15aの下方に位置している。そして,前記懸吊具30の下端は,懸吊具30と一体に前記枢着軸20b上を回動する,ここでは,フック状の係合部34,34が形成されている。図示の実施形態における懸吊具30では,前記枢着軸20bに対して回動自在にこの枢着軸に外嵌した支軸40たる軸管29bを設け,前記軸管29bの軸心に対して直交方向に設けた掛止部31を設けて該軸管に固着形成し,前記軸管29bの軸心に対して前記掛止部31と点対称の位置に,フック状板片から成る2の係合部34,34を設け,この係合部34,34を支軸40を成す軸管29bの両軸端方向に等位置において,固着形成している。
【0031】
前記軸管29bには,平時,前記懸吊具30の掛止部31及び係合部34が最上段のX字状リンク16dのアウターアーム162に沿って固定されるよう,枢着軸20bと連結する図示せざるストッパーが設けられている。
【0032】
なお,図2(B)に示すように,前記懸吊具30及び固定具35は,前述実施形態に於ける,それぞれ,最上段及び最下段の左右のX字状リンク16d,17d,16a,17aの交点に限らず,X字状リンク16d,17d,16a,17aの交点に配置される支軸40を成す枢着軸と,懸吊具30が回動する枢着軸とを別々に構成し,懸吊具30が回動する支軸40を成す枢着軸をX字状リンクの交点に対して図中左方向へ移動させて,両X字状リンク16d,17d,16a,17aを同一平面上で連結し,機体10の重心Gの略垂直線上に懸吊具30を配置させてもよい。
【0033】
又,デッキ15の第1床面15a及びこれに対して摺動し,デッキを拡張する第2床面15bには,前記2の床面が重畳位置で,前記懸吊具30をのぞませる開口部32が形成され,この開口部32には,必要に応じ,蓋体33が開閉自在に設けられている。なお,上記開口部32が懸吊具30の掛止部31が回動して床上に突出させることができるスリット状のものとすることもできる。
【0034】
そして,最下段のX字状リンク16a,17aの交点を,各アウターアーム及びインナーアームと共に連結する枢着軸20a上には,左右のインナーアームを連結し,前記枢着軸20aを外嵌する軸管29aを設け,前記デッキ15の最下降位置で,前記X字状リンクを固定して,懸吊時にX字状リンクが伸張して開かないようにするための固定具35が配置される。
【0035】
なお,前記固定具35は最下段のX字状リンク16a,17aの左右のインナーアームを連結する軸管29aに設けることに限らず,油圧シリンダ19と干渉しない範囲で,最下段のX字状リンク16a,17aと最上段のX字状リンク16d,17dとの間の中間段のX字状リンク16b,17b,又は16c,17cの左右のインナーアームを連結する軸管29aを設け,この軸管29aに固定具35を設けてもよい。
【0036】
図4(A)〜(C)に示す実施形態では,支軸40を成す前記軸管29b上に,略垂直に,前記係合部34,34の回動軌跡において,2の固定具35である係合杆36,36を立設し,この係合杆に前記係合部34,34が,前記懸吊具の回動軌跡において,嵌合,係合離脱自在と成す係合孔37,37を穿設形成したものである。
【0037】
固定具35は,前記懸吊具30の係合部34,34が係合すればよく,特に形状,構造等に限定を要しないが,図5(A),(B)に示す本発明の固定具35の他の実施形態においては,前記係合部34,34及びこれに対応して係合杆36,36の構成を変更したものである。
【0038】
図5(A)において,前記係合部34,34の下端をフック状とせずに,懸吊具30を,両端に係合ピン38,38を形成した係合杆とし,支軸40を成す前記軸管29b上に,垂直に2の係合杆36,36を立設し,この係合杆36,36に前記係合ピン38,38の回動軌跡において,該ピン38,38に係合可能な係合凹部39,39を設けたものである。
【0039】
支軸40を成す前記軸管29bに必要な剛性があれば,これを固定具35の係合杆36として前記軸管29bに対して係合するようにしてもよい(図5(B))。
【0040】
又,前記懸吊具30の掛止具31は,他の構成を図4に示すものと同様で,掛止具として,2の掛止孔31,31を設けた構成としてもよく,これにより,機体10の懸吊時,機体が安定して安全性を向上することができる(図5(C))。
【0041】
又,デッキ15の床面15a,15bの蓋体33a,33bは閉じられており,床面15a,15bと略同一平面を形成している。
【0042】
機体10をクレーン等で吊り上げる場合には,図1に示すように昇降機構14を縮めてデッキ15を最下降位置に位置させ,ついで,デッキ15の床面15a,15bの蓋体33a,33bを開放し,懸吊具30の支軸40を成す軸管29bと枢着軸20bと連結する図示せざるストッパーを外して懸吊具30を回動し,掛止部31を開口部32から床面上に突出させる。
【0043】
この懸吊具30の回動と同時に,係合部34が回動し,X字状リンク16a,17a間に架設した支軸40を成す軸管29b上の係合杆36の係合孔37,37に係合部34のフック状先端が前記係合孔内に嵌合して係合する(図4)。図5(A)に示す実施形態では,係合ピン38,38が固定具35の係合片36,36に形成した係合凹部39,39に係合する。又,同図(B)に示す実施形態では,懸吊具30のフック状係合部34が,固定具を成す前記軸管29bに係合する。
【0044】
そして,懸吊具30の掛止部31にクレーン等のフックを掛止して吊り上げると,前記懸吊具30の係合部34と,固定具35の係合孔37,37又は係合凹部39,39に対する係合ピン38,38は,懸吊具30の懸吊により,その係合を一層強固なものとされ,前記シザースリンク機構の伸張を規制し,又,懸吊具30は,機体10の重心の略垂直線上に配置されているため,機体10を略重心位置で,懸吊し,機体10は略水平状態で吊り上げられる。
【0045】
図6(A),(B)に示す実施形態では,固定具35は,車台13に設けられている。
【0046】
この固定具35は,車台13上に1組のブラケット52,52を左右それぞれ一対に立設し,それぞれのブラケット間を架橋するようにピン53が架設されている。懸吊具30の係合部34は車台13に設けた前記固定具35に係合する。
【0047】
本実施形態では,ブラケット52,52を車台13に溶接して固定しているが,ボルトやリベットなどで固着することもできる。
【0048】
又,支軸40を成す軸管29bを軸管291bと軸管とその両側に配置される軸管292b,292bに分割とし,懸吊具30の掛止部31を中央の軸管291bに固着し,懸吊具30の係合部34を中央の軸管291bに対して左右に配置した軸管292b,292bに固着する。
【0049】
さらに,図7(B)及び図10に示すように,軸管291bと軸管292bとが当接し組み合わされる軸端部に凸部42と凹部43をそれぞれ形成し,掛止部31の操作により係合部34が動作するように構成している。
【0050】
本実施形態では,軸管291bの両軸端に凸部42(,42)を形成し,軸管292b,292bの軸管291側の軸端に前記凸部幅よりも大きい幅の凹部(切り欠き)43,43を形成し,掛止部31の回動操作に遅れて凹凸部42,42,43,43が係合し,それにより係合部34が回動する。
【0051】
又,図11に示すように,軸管291b上には操作ボタン44の先端から突出し,軸管291bの外周壁に穿設した孔部から,枢着軸20b(支軸40)に設けた孔部に挿脱自在となるピン46を有するロック機構59を備え,掛止部31,従って,軸管291b上のロック機構59が共に回動して,同図に示す位置に掛止部31が達すると,ロック機構59のピン46が枢着軸20b(支軸40)に設けた孔部に挿入嵌合すると,掛止部31及び軸管291aの回動を阻止し,係合部34が固定具35から離脱することを防止し,安定して安全に掛止部による高所作業車の懸吊作業を確保することができる構成とすることができる。
【0052】
上記実施形態特有の作用としては,支軸40ないし軸管29bを分割したことで,懸吊具30の掛止部31の回動角度よりも係合部34の回動角度を小さくでき,係合部34が長くなっても他の部品と干渉することを防止できた。
【0053】
図7(A)に示す実施形態において,前述の実施形態では,最上段の左右X字状リンク間を連結する支軸40を成す枢着軸20bに外嵌して軸管29bを設けているのに対して,デッキ15の第1床面15aの裏側に左右一組の支軸を支持するブラケット41,41を固定し,このブラケットに軸着した支軸40に軸管291bと軸管292b,292bを回動自在に外嵌して設け,懸吊具30の掛止部31を中央の軸管291bに固着し,懸吊具30の係合部34を中央の軸管291bに対して左右に配置した軸管292b,292bに固着している。軸管291b及び292b,292bの軸端部の構造は図6に示す実施形態と同じである。
【0054】
本実施形態は固定具35を車台13に設けているが,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸に固定具を設けても良い。
【0055】
さらに,図8に示す実施形態では,支軸40を成す軸管29bは一体である。
【0056】
前記支軸ないし軸管に固定した懸吊具30の係合部34と,車台13等に設けた固定具35を省略可能な実施形態である。言うまでもなく,本実施形態において,図1〜図7における懸吊具30の係合部34と,車台13等に設けた固定具35を有する構成を共に採用してフェイルセイフとして適応することが可能である。
【0057】
前記デッキ15の第1床面15aの裏面のブラケット51に懸吊してリミットスイッチ50を設ける。このリミットスイッチ50は,懸吊具30を回動しデッキの床面15bの開口部32から,懸吊具30の上端が前記開口部上に突出した位置にあるとき,リミットスイッチ50の接点が掛止部31の端面と接触し信号を送るよう配置される。リミットスイッチ50の配置位置は,上記に限定されず懸吊具30がデッキ15bの床面から突出したことを検出できる位置であれよい。又,リミットスイッチ50に代えて懸吊具30の回動角度を検出する回転角度センサーとしてもよい。
【0058】
図9において,作動油タンク66から,モータ65に駆動される油圧ポンプ64を介して,リリーフバルブ63を分岐する回路を経て上昇用電磁弁62,そして下降用電磁弁61から油圧シリンダ19に至る油圧回路に伸張規制電磁弁60を設ける。
【0059】
この伸張規制用電磁弁60は高所作業車の図示せざるメインスイッチがOFFのとき,及びリミットスイッチ50の接点が掛止部31に接触しているときに図示の回路状態となっている。メインスイッチがONとなり,リミットスイッチ50の接点がOFFのときにのみ伸張規制電磁弁60が切り替わり,油圧シリンダ19が伸張可能状態となる。
【0060】
高所作業車を懸吊するときには通常メインスイッチがOFFとなっている。これにより,伸張規制電磁弁60は図の位置に切り替わっており,懸吊により油圧シリンダ19が伸張側に引っ張られたとしても伸張規制電磁弁60のチェックバルブで作動油タンク66内の作動油が吸い込まれることを規制して,油圧シリンダ19及びシザースリンクが伸張することを阻止する。
【0061】
メインスイッチがONとなっていたとしても,懸吊具30の掛止部31がデッキ上に突出すると,リミットスイッチ50がONで,伸張規制電磁弁60が図の位置に切り替わる。これにより,メインスイッチがOFFとなっている場合と同様に油圧シリンダ19及びシザースリンクが伸張することを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る懸吊装置を備えた高所作業車を示し,同図(A)は,正面図,同図(B)は,平面図,同図(C)は,側面図,
【図2】同図(A)及び(C)は,それぞれ同実施形態における,図1(A),図1(C)の一部切欠断面図,同図(B)は,同図(A)の懸吊装置の他の実施形態を示す,
【図3】同実施形態におけるX字状リンクを伸張した状態の正面図,
【図4】同実施形態における懸吊具及び固定具を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,側面図,(B)は,正面図,(C)は,懸吊具34の拡大図,
【図5】懸吊具及び固定具の他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,係合ピンによる実施形態を示し,(B)は,フックによる枢着軸への係合を示し,同図(C)は,懸吊具の他の実施形態を示す部分拡大図,
【図6】懸吊具及び固定具のさらに他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,車台に固定具を設けた実施形態を示し,(B)は部分拡大図,
【図7】懸吊具及び固定具のさらに他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A)は,支軸を枢着軸とは別個に設けた実施形態を示し,(B)は,支軸の分割構成の実施形態を示す部分拡大図,
【図8】懸吊具の係合部及び固定具を省略可能な他の実施形態を示す部分拡大切欠断面図で,同図(A),(B)はそれぞれ部分拡大図,
【図9】図8に用いる油圧配管系の回路図,
【図10】図7(B)における支軸の分割構成の実施形態を示す部分拡大断面図,
【図11】懸吊具のロック機構を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
10…高所作業車(機体)
12…走行機構
13…車台
14…昇降機構
15…デッキ
15a,15b…第1,第2床面
16,17…左右のX字状リンク
161…左のX字状リンクを成すインナーアーム
162…左のX字状リンクを成すアウターアーム
171…右のX字状リンクを成すインナーアーム
172…右のX字状リンクを成すアウターアーム
19…油圧シリンダ
20a,20b…枢着軸
21…ロッド
26…連結部材
28…連結部材
27…シリンダ
29a,29b,291b,292b,292b…軸管
30…懸吊具
31…掛止部
32…開口部
33a,33b…蓋体
34…係合部
35…固定具
36,36…係合杆
37,37…係合孔
38,38…係合ピン
39,39…係合凹部
40…支軸(軸管29b;291b,292b;,枢着軸20b)
41…ブラケット
42…凸部
43…凹部
44…操作ボタン
45…防護柵
46…ピン
50…掛止部位置検出手段(リミットスイッチ)
51,52…ブラケット
53…ピン
59…ロック機構
60…伸張規制電磁弁
61…下降用電磁弁
62…上昇用電磁弁
63…リリーフバルブ
64…油圧ポンプ
65…モータ
66…作動油タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台とデッキとの間に複数段のX字状リンクを配したシザースリンク機構を設け,該シザースリンク機構によって前記デッキを昇降させる高所作業車において,
前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンク間の同一平面上に配置された支軸に懸吊具を回動自在に設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,
前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したときに前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたことを特徴とする高所作業車の懸吊装置。
【請求項2】
前記支軸は,前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンクを同一平面上で連結するいずれかの枢着軸であることを特徴とする請求項1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項3】
前記伸張規制手段は,前記懸吊具に係合部を形成すると共に,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸に固定具を設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したとき,前記係合部が前記固定具に係合し,前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1又は2記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項4】
前記伸張規制手段は,
前記デッキの最下降位置で前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1〜3いずれか1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項5】
前記伸張規制手段は,前記車台に前記固定具を設けた,
ことを特徴とする請求項1,2又は4いずれか1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項6】
前記シザースリンク機構は,油圧シリンダを備え,該油圧シリンダの伸縮動作によって前記シザースリンク機構が作動し,前記デッキを昇降する構成であって,
前記伸張規制手段は,前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段と,前記油圧シリンダへの作動油を流通又は遮断する作動油遮断手段とを設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段の検出信号で,前記油圧シリンダへの作動油を遮断するよう前記作動油遮断手段を作動させ,前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項7】
前記懸吊具を回動自在に設けた支軸は,前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管であって,前記固定具は,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管に設けたことを特徴とする請求項2,3,4又は6記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項1】
車台とデッキとの間に複数段のX字状リンクを配したシザースリンク機構を設け,該シザースリンク機構によって前記デッキを昇降させる高所作業車において,
前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンク間の同一平面上に配置された支軸に懸吊具を回動自在に設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,
前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したときに前記シザースリンク機構の伸張を規制する伸張規制手段を設けたことを特徴とする高所作業車の懸吊装置。
【請求項2】
前記支軸は,前記デッキの下方位置に配置される左右のX字状リンクを同一平面上で連結するいずれかの枢着軸であることを特徴とする請求項1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項3】
前記伸張規制手段は,前記懸吊具に係合部を形成すると共に,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する何れか1段の左右のX字状リンクを同一平面上で連結する枢着軸に固定具を設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したとき,前記係合部が前記固定具に係合し,前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1又は2記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項4】
前記伸張規制手段は,
前記デッキの最下降位置で前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1〜3いずれか1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項5】
前記伸張規制手段は,前記車台に前記固定具を設けた,
ことを特徴とする請求項1,2又は4いずれか1記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項6】
前記シザースリンク機構は,油圧シリンダを備え,該油圧シリンダの伸縮動作によって前記シザースリンク機構が作動し,前記デッキを昇降する構成であって,
前記伸張規制手段は,前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段と,前記油圧シリンダへの作動油を流通又は遮断する作動油遮断手段とを設け,
前記懸吊具の回動軌跡において,前記懸吊具の上方位置のデッキ床面に形成した開口部から前記床面上に少なくとも前記懸吊具の掛止部を突出したことを検出する掛止部位置検出手段の検出信号で,前記油圧シリンダへの作動油を遮断するよう前記作動油遮断手段を作動させ,前記シザースリンク機構の伸張を規制することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の高所作業車の懸吊装置。
【請求項7】
前記懸吊具を回動自在に設けた支軸は,前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管であって,前記固定具は,前記懸吊具を回動自在に設けた支軸の下方に位置する前記X字状リンクの交点を連結する枢着軸に嵌装した軸管に設けたことを特徴とする請求項2,3,4又は6記載の高所作業車の懸吊装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−24509(P2008−24509A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149710(P2007−149710)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】
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