説明

高所作業車

【課題】ブームの転倒防止のためにウェイトを取り付けるのに、ブームを取り付けるコラムの中に隠れて挿入した高所作業車の提供。
【解決手段】走行機能を有するフレーム1の後部に設けられた旋回軸2に対して水平面内で旋回可能なコラム3を後方に延出して縦設し、コラムにゴンドラ4を取り付けたブーム5を起伏可能、かつ伸縮可能に接続した高所作業車において、コラムの中にウェイト23を挿入したことを特徴とする高所作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所で作業するときに使用する高所作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹園における作業、例えば、選定、受粉、除草、収穫といった作業は、高所でするばかりではなく、移動しながらする必要がある。このため、下記特許文献1に見られるような高所作業車を使用していることが多い。この高所作業車は、走行フレームに人が乗ることができるゴンドラを先端に取り付けたブームを旋回、起伏及び伸縮可能に設けたものであるが、従来の高所作業車は、ブームを360°全旋回させるものであった。
【0003】
これはこれで便利であるが、一方では、コストが高くなる。この種の高所作業車では、走行フレーム自体が操向機能を有していることから、全旋回は敢えて必要ではなく、部分旋回で十分である。また、全旋回を行わせると、その旋回中心は、フレームの中心に設定せざるを得ず、そうすると、旋回中心から接地部材の接地端までの距離が短くなって支持力が低下し、傾斜地等では転倒の危険さえある。さらに、ブームが他部材と干渉するのを避ける必要もあることから、ブームがどうしても高い位置になり、この点でも、姿勢安定性に欠けることになる。
【特許文献1】特開2001−19374公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような課題に対処したものであり、姿勢を安定させるための要因のうち、ブームの旋回中心付近の重量を重くしてブームが持ち上がるのを防いで転倒を避けるとともに、この重量増大化をウェイトを効果的に配することで達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、走行機能を有するフレームの後部に設けられた旋回軸に対して水平面内で旋回可能なコラムを後方に延出して縦設し、コラムにゴンドラを取り付けたブームを起伏可能、かつ伸縮可能に接続した高所作業車において、コラムの中にウェイトを挿入したことを特徴とする高所作業車を提供する。
【0006】
さらに、本発明は、以上の高所作業車において、請求項2に記載した、ブームがコラムから旋回軸を超えて180°前方の方向に延出している手段、請求項3に記載した、フレームが、左右二枚の縦部材を前後二本の横部材で渡設した井桁状をしており、旋回軸が後方の横部材の後方に設けられるものであり、後方の横部材の中にもウェイトが挿入される手段、請求項4に記載した、コラムに挿入されるウェイトと、横部材に挿入されるウェイトが同一のものである手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の手段によると、姿勢安定のための一つの方策としてフレームの重量を重くする場合に、これをブームの旋回中心である旋回軸に近い個所の重量をウェイトを付加することで達成しており、効率的である。したがって、種々の弊害があるフレーム全体を重くする必要がない。また、ウェイトは隠れるから、デザイン性も向上するし、スペースの有効利用になってフレームの面積が増えない。さらに、請求項2の手段によると、ブームとコラムとは、常に180°正反対に配されることから、効率的なウェイト効果を具現できるし、この関係は、ブームがどこに旋回していようと変わらない。
【0008】
また、請求項3の手段によると、旋回軸の前後にウェイトを配することができるから、重量付加を効率的にできるとともに、これにおいて、一方は縦方向、他方は横方向に配したものあるから、ウェイト効果を前後方向、左右方向へバランスよく波及できる。また、ウェイトの隠し、スペースの有効利用も上記と同様である。さらに、請求項4の手段によると、ウェイトにかかるコストが安くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一例を示す高所作業車の側面図、図2は平面図、図3は要部の側面図、図4は要部の平面図であるが、この高所作業車は、車台であるフレーム1と、フレーム1に設けられた縦方向の軸である旋回軸2と、旋回軸2の回りを水平面内で旋回するコラム3と、先端にゴンドラ4が取り付けられてコラム3に接続されるブーム5等からなる。
【0010】
フレーム1は、左右二個の縦部材6に前後二本の横部材7を渡した井桁状をしているものであり、本例では、縦部材6は、立てた板状のもの、横部材7は、縦部材6の上下中間付近からそれぞれ角パイプを左右に渡したもので構成している。この場合、後方の横部材7aは断面が正方形をしているが、前方の横部材7bは断面が平べったい長方形をしており、その底面を同じ高さに設定している。フレーム1の上には、エンジン8、油圧ポンプ9、作動油貯留タンク10、バッテリー11等が搭載される。
【0011】
本例では、フレーム1の縦部材6の後部には駆動輪12が、前部には従動輪13が設けられており、これら駆動輪12と従動輪13とにクローラ14が巻き掛けられている(15はこの間に設けられる何個かの接地遊動輪)。そして、左右の駆動輪12の内側にそれぞれHST型の油圧モータ16が直付けされており、油圧ポンプ9で加圧された作動油で駆動される。したがって、左右の油圧モータ16の回転数及び方向を調整することで、フレーム1は、前後進、速度変更、直進、転回が可能になる。
【0012】
この場合、エンジン8は、フレーム1の中程の位置で、進行方向の右側に設置されている。具体的には、前後の横部材7a、7bにベース17を渡し、この上に防振マウンと8aを介して載せている。このとき、ベース17の上面は、横部材7の上面よりも下げており、エンジン8の位置を低くしている。なお、エンジン8でもっとも高い位置にあるのは燃料タンク8bであるから、これを別体として別の場所(例えば、エンジン8の前方)にに配置すれば(図示省略)、更に低い位置に設置できるし、ブーム5等の干渉が避けられてこれを低い位置に設定できる。この他、油圧ポンプ9は、エンジン8の前方に設置されており、プーリベルト機構18で結合されている。
【0013】
作動油貯留タンク10は、エンジン8に対応して進行方向の左側に配置されており、また、エンジン8と同程度の低い位置に設けられている。さらに、バッテリー11は、作動油貯留タンク10の前方に配置されている。重量の重いエンジン8や作動油貯留タンク10をこのような配置にしたことで、重量バランスを取るとともに、重心を下げて姿勢を安定させたものである。なお、もっとも背の高い部材は、エンジン8と作動油貯留タンク10であるから、これらを左右二本のガード19で覆って保護している。
【0014】
コラム3は、旋回軸2の回りを回動するのであるが、本例では、後方の横部材7aの後部中央にスペーサ20を取り付け、このスペーサ20の後部に軸受筒21を起立させ、これにコラム3の前方に形成したボス22を挿入して旋回軸2を通す構造にしている。この点で、旋回軸2の位置はフレーム1の後部に設定されることになり、具体的には、クローラ14の接地域の後端かややそれよりも後方になっている。
【0015】
また、旋回軸2の上下位置もできるだけ低く保っており、クローラ14の側方投影面と重複させた位置にしている。ところで、コラム3には、角パイプを用いており、この中にウェイト23を挿入している。因みに、本例では、後方の横部材7aも角パイプを用いており、この中にもウェイト24が挿入できるようにしている。したがって、旋回軸2に接近した前後で二つのウェイト23、24が、一つは縦方向に、他は横方向に設けられるようになっており、旋回軸2の付近は重量が非常に重くなっている。加えて、両ウェイト23、24ともに隠れるから、デザイン性が向上するし、スペースを必要とせず、フレーム1の面積を増大させない。そして、このウェイト24は、先のウェイト23と同じものにしてあり、兼用効果を図っている。なお、両ウェイト23、24とも、コスト上、中実の丸棒が適するが、コラム3や横部材7aの中て躍ったりしては具合が悪いので、きっちりと嵌まるようにしておく。ウェイト23、24の重量としては、車長1.7m、車幅1.3m、ブーム5のゴンドラ4までの最大伸長長さ3.5m程度のもので、一つが80Kg、両方で160Kg程度を想定している。
【0016】
コラム3の旋回は、本例では、旋回シリンダ25によっている。すなわち、後方の横部材7a等に旋回シリンダ25のヘッド25aを水平面内で回転可能に取り付け、そのロッド25bをコラム3に突設したブラケット26に枢着している。したがって、旋回シリンダ25を伸縮させると、コラム3は、旋回軸2を中心に回動(旋回)する。これにおいて、旋回シリンダ25は、油圧モータ16の高さ付近に設けられ、かつ油圧モータ16や旋回軸2及びスペーサ20等で周囲を囲まれて保護されるものになっている。なお、この構成であると、コラム3の旋回範囲は有限になり、本例では、前方から左右へ30°の範囲に設定しているが、この他、0〜90°の範囲で設定されることがある。
【0017】
ところで、旋回シリンダ25は、油圧ポンプ9で加圧された作動油で駆動してもよいが、本例では、旋回軸2の傍に設けられた電動油圧ポンプ27で加圧された作動油で駆動するようにしている。ここでいう電動油圧ポンプ27とは、モータ、ポンプ及びタンクが一体になったもので、本例では、バッテリー11の電源を使用して駆動する。エンジン8を作動させていないときでも、ブーム5が旋回できることになり、作業の安全と効率を図ることができるからである。
【0018】
コラム3の上部には、ブーム5が連結ピン28で枢着される。このブーム5は、第1ブーム5aに第2ブーム5bが出入り可能に収容されているものであり、両ブーム5a、5bに伸縮シリンダ29を張り掛けておけば、伸縮シリンダ29を伸縮させることで、第2ブーム5bは、第1ブーム5aに対して伸縮する。このとき、ブーム5は、旋回軸2を超えてコラム3から延出するから、ブーム5とコラム3とは旋回軸2を挟んで180°対向した位置になる。なお、以上のブーム5の数については一例であって、これに限定されない。
【0019】
さらに、ブーム5は、コラム3に対して起伏できるようにもなっている。すなわち、コラム3と第1ブーム5aとの間に起伏シリンダ30を設けておき、起伏シリンダ30を伸縮させることで、ブーム5をコラム3に対して起伏させている。この場合、ブーム5は、コラム3に対してできるだけ低い位置に取り付けられのが好ましく、具体的には、ブーム5を一杯に伸長して最低位置に下げたとき、もっとも下に位置する部材である起伏シリンダ30がフレーム1に設けられるガード19に当たらない範囲まで下げている。
【0020】
第2ブーム5bの先端には、取付具31が設けられており、取付具31に対してゴンドラ4がピン32で固定されている。このゴンドラ4は、人がこの中に乗って作業するためのものであるから、これには、油圧モータ16や各シリンダ25、29、30等を遠隔操作するための各種の操作器具(図示省略)が設けられている。さらに、このゴンドラ4は、ブーム5の起伏角度にかかわらず、真っ直ぐに向いている必要がある。
【0021】
そこで、コラム3と第1ブーム5aとの間に入力シリンダ33を取り付けるとともに、取付具31とゴンドラ4との間には出力シリンダ34を取り付け、両シリンダ33、34を閉回路で1:1の関係で連結している。これによると、ブーム5の起伏に基づく入力シリンダ32の変位に応じて出力シリンダ34が変位するから、ゴンドラ4は、常に真直に向くことになる。
【0022】
以上の高所作業車は、トラック等に載せて或いは自走させて果樹園等の作業現場まで行き、そこで高所作業をするのは前述したし、このとき、果樹園等は傾斜地が多く、転倒の危険性をはらんでいることも前述した。このため、本発明は、この転倒の危険性を避けるために種々の配慮がなされており、その一つが、フレーム1の重量を重くすることあるが、これを効率的に行うために、本発明では、ブーム5の旋回中心、すなわち、旋回軸2付近の重量を重くしている。
【0023】
ブーム5の伸長や旋回に伴ってゴンドラ4にかかる力が相対的に増してフレーム1が転倒するときには、ブーム5の旋回中心が浮き上がるが、このとき、その部分の重量が重いと、浮き上がりが抑制され、転倒が防止される。具体的には、旋回軸2の前後に横部材7aとコラム3とを配し、それぞれにウェイト23、24を挿入していることである。このとき、一方のウェイト23はコラム3に縦に挿入され、他方のウェイト24は横部材7aに横に挿入されているから、前後方向、左右方向に対して効率的に効き、少ない重量のもので大きな効果が期待できるものとなる。加えて、両ウェイト23、24は外から見えないものになるし、スペースを有効利用できてフレーム1の面積増大につながらない。
【0024】
第二は、ブーム5の延伸方向に対するクローラ14の接地長を長くすることである。転倒方向は、前後方向、左右方向とあるが、いずれの方向でも、ブーム5の延伸方向に対してクローラ14の接地長が長いほど、支持力が増して姿勢は安定する。このため、本例では、ブーム5の旋回を前方から左右への一定範囲に抑えており、また、旋回軸2をクローラ14の接地域の後端かそれを後方に超えた辺りに設定している。
【0025】
第三は、フレーム1の重心を下げるとともに、ブーム5もできるだけ低い位置に設定していることである。フレーム1の重心が下がれば、姿勢が安定するのはいうまでもなく、本例では、エンジン8や作動油貯留タンク10をできるだけ低い位置に設けているのがそれである。また、ブーム5の旋回中心が高いと、わずかな傾斜も転倒モーメントとして大きく増幅されるからであり、本例では、起伏シリンダ30がフレーム1のガード19に干渉しない範囲まで下げている。
【0026】
以上の手段をとることにより、この高所作業車は、全方位15°以内の傾斜では、ブーム5を最大限伸長及び旋回させたとしても、転倒しないことが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一例を示す高所作業車の側面図である。
【図2】本発明の一例を示す高所作業車の平面図である。
【図3】本発明の一例を示す高所作業車の要部の側面図である。
【図4】本発明の一例を示す高所作業車の要部の平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 フレーム
2 旋回軸
3 コラム
4 ゴンドラ
5 ブーム
5a 第1ブーム
5b 第2ブーム
6 縦部材
7 横部材
7a 後方の横部材
7b 前方の横部材
8 エンジン
8a 防振マウント
8b 燃料タンク
9 油圧ポンプ
10 作動油貯留タンク
11 バッテリー
12 駆動輪
13 従動輪
14 クローラ
15 接地遊動輪
16 油圧モータ
17 ベース
18 プーリベルト機構
19 ガード
20 スペーサ
21 軸受筒
22 ボス
23 ウェイト
24 ウェイト
25 旋回シリンダ
25a 〃 のヘッド
25b 〃 のロッド
26 ブラケット
27 電動油圧ポンプ
28 連結ピン
29 伸縮シリンダ
30 起伏シリンダ
31 取付具
32 ピン
33 入力シリンダ
34 出力シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機能を有するフレームの後部に設けられた旋回軸に対して水平面内で旋回可能なコラムを後方に延出して縦設し、コラムにゴンドラを取り付けたブームを起伏可能、かつ伸縮可能に接続した高所作業車において、コラムの中にウェイトを挿入したことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
ブームがコラムから旋回軸を超えて180°前方の方向に延出している請求項1の高所作業車。
【請求項3】
フレームが、左右二枚の縦部材を前後二本の横部材で渡設した井桁状をしており、旋回軸が後方の横部材の後方に設けられるものであり、後方の横部材の中にもウェイトが挿入される請求項1又は2の高所作業車。
【請求項4】
コラムに挿入されるウェイトと、横部材に挿入されるウェイトが同一のものである請求項3の高所作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−225055(P2006−225055A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37528(P2005−37528)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】