説明

高所害虫駆除器具

【課題】アメリカシロヒトリの幼虫など高所害虫の駆除を簡便にすると共に、火事や火傷の危険が少ない人や周辺物に安全で、かつ、環境に配慮した駆除器具を提供すること。
【解決手段】連続的あるいは段階的に長さを可変可能とした長尺な支持部材1と、該支持部材1の先端部に取り付ける所定の発熱域を備えた電気発熱手段2と、該電気発熱手段2への通電手段4とを備えて構成し、前記支持部材1は、先端側に向け段階的に径を小さく形成する複数の管状部材11、12、13よりなり、先端側に位置する管状部材が、隣接する手基側に位置する管状部材に収容及び突出可能となるように形成され、一方、前記電気発熱手段は、シースヒーター2を全体として面状の発熱域となるような形状に形成して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木などの高所に発生した害虫を、熱により駆除するための高所害虫駆除器具に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木などの高所に発生する害虫、例えばアメリカシロヒトリの幼虫を駆除する手段としては、該幼虫が形成した巣網の付いた枝葉を高枝バサミなどで切り、切った巣網を焼却するなどにより駆除する、竹竿などの先に油を滲みこませた布を取り付け、該布に火を点けて巣網を焼いて駆除する、あるいは、樹木の一部または全体に散布器等を用いて薬剤を散布して駆除するといったことが行なわれている。
また、この高所害虫駆除のための器具として、長尺の噴霧用竿の先端に殺虫剤のスプレー缶(噴霧器)を取り付け、噴霧器先端の発射ノズルを押圧するプッシュバーと手元部に設けるハンドルとを連動させて構成し、手元のハンドル操作により先端のスプレー缶から殺虫剤を局所的に散布する噴霧用竿(特許文献1)や、竹竿の先にトーチバーナーを取り付け、該トーチバーナーにより害虫を焼殺する器具(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−15151号公報
【特許文献2】実登3114149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の手段や器具では、高枝バサミで切ったものに改めて処理が必要だったり、竹竿に布をセットし油を滲みこませたり、また、薬剤を調整する必要があるなど必ずしも簡便な手段とは言い難く、また、害虫を駆除するために火を利用したり、薬剤を利用したりする必要があり、火の使用は、周囲の状況(可燃物がある場合等)によっては火事の危険があり、不注意や風などの外的要因による不慮の事故による作業者や周辺の人の火傷の懸念も払拭できない。一方、薬剤の使用については、殺虫剤の多くは毒物、劇物を含んでおり、使用法や用量を誤ると、人体や作物に害を及ぼす可能性があり、また、周辺環境に悪影響を与えてしまう懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、アメリカシロヒトリの幼虫などの高所害虫の駆除を簡便にすると共に、火事や火傷の危険が少ない人や周辺物に安全で、かつ、環境に配慮された駆除器具を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高所害虫駆除器具は、連続的あるいは段階的に長さを可変可能とした長尺な支持部材と、該支持部材の先端部に取り付ける所定の発熱域を備えた電気発熱手段と、該電気発熱手段への通電手段とを備えて構成した。尚、所定の発熱域とは、駆除対象物により適切な大きさが異なるため特定するものではないが、例えば、駆除対象を樹木上のアメリカシロヒトリの幼虫の巣網とする場合には、少なくとも木の葉以上の大きさの発熱域となり、一方、大きさの上限としては、人により容易に保持可能な発熱手段の大きさに留めた発熱域を指している。
【0007】
また、各部は次の構成とすることが好ましい。
・前記長さを可変可能な支持部材は、先端側に向け段階的に径を小さく形成する複数の管状部材より構成し、先端側に位置する管状部材は、隣接する手基側に位置する管状部材に各々が収容及び突出可能に形成した。
・前記電気発熱手段は、シースヒーターを全体として面状の発熱域となるような形状に形成して構成した。
・前記電気発熱手段の供給電源は、家庭用電源、あるいは、車のバッテリーとした。
【0008】
(作用)
前記手段の高所害虫駆除器具によると、支持部材が長さを可変できることにより、使用しないときは短くしてコンパクトに収納しておくことができ、使用時には、低い位置から高い位置まで対象となる位置の高さに適合する長さに調整しての作業が可能となることで、使い勝手に優れた器具とすることができる。
また、支持部材の径を段階的に小さく形成し、太い管状部材内部に細い管状部材を次々に収容可能で、かつ、突出可能な伸縮竿のような構造とすると、内部に全ての管状部材が収納されるため、1本の短い棒状のものとして収納しておくことができ、また、前記作用の器具を容易に構成することができる。
【0009】
また、害虫駆除手段として電気発熱手段を使用していることにより、火を使う場合と同じ熱殺による駆除方法であっても、火事の危険性は小さく、また、必要により温度制御なども可能で、必要以上の高温にならないこと、風の影響など外的要因も受けにくいことで不慮の事故も起こりにくいことなどから火を使用する場合と比較して火傷などの危険性も小さくすることができる。また、熱そのものによる駆除のため、巣網など駆除対象域周囲の枝葉を燃やしてしまうことがなく、周囲に与える影響も小さくすることができる。更に、油を燃やすことにより発生する煙がなく、環境や生体に悪影響を与える可能性のある薬剤を使用していないため周辺環境を悪化させる懸念も少なくすることができる。
更に、電気発熱手段としてシースヒーターを使用すると、湾曲等変形が容易に可能であるため、長く形成した棒状のシースヒーターを適当な発熱域を有する適切な形状に形成することができる。また、発熱域を、全体として面状に形成すると、面状に広がる樹木の枝葉にある巣網などを駆除するのに都合の良い形状とすることができる。
加えて、電気発熱手段への供給電源に車のバッテリーを利用すると、戸外の電源のない場所での使用が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高所害虫駆除器具によると、前記手段及び作用により、アメリカシロヒトリの幼虫などの高所害虫の駆除を簡便に可能な、使用勝手に優れた器具とすることができる。 また、火事や火傷などへの懸念を少なくした、人や周辺物に安全で、かつ、環境に配慮した駆除器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の高所害虫駆除器具を示す全体構成図。
【図2】支持部材の伸縮、固定手段の例を示す概略図。
【図3】実施の形態に使用するシースヒーターの構造を示す模式図。
【図4】シースヒーターの構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参考にしながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の高所害虫駆除器具を示している。
本器具は、アメリカシロヒトリの幼虫など樹木の高所に発生した害虫の位置まで殺虫手段を到達させるため、先端側に向け徐々に径を小さく形成した3本の支持棒11、12、13より構成して、全体の長さを可変可能とした支持部材1と、該支持部材1の先端に取り付けられ、面状の発熱域を形成するように形作られた、加熱により害虫を駆除するための電気発熱手段(本例では、シースヒーター2)と、該シースヒーター2、及び、前記支持部材1の接続部となるターミナルボックス3と、前記シースヒーター2への通電手段4とにより構成した。
【0013】
支持部材1は、前述の通り基側から先端側に向け、径を段階的に小さく形成した、管状の3本の支持棒(基側より、第一の支持棒11、第二の支持棒12、第三の支持棒13)より形成され、径の太い基側の第一の支持棒11内に径の細い第二の支持棒12が、第二の支持棒12内に更に径の細い第三の支持棒13が各々収納され、それらを出没自在に形成し、該第一の支持棒11からの第二の支持棒12、又は/及び、第二の支持棒からの第三の支持棒を出し入れすることにより、支持部材1全体の長さを可変可能なものとして形成した。
そして、この支持棒の材質としては、作業性を考慮して軽量で、かつ、長尺であっても大きく撓むことのない丈夫さを兼ね揃えた、竹などの木、樹脂、軽量金属、カーボングラファイトなどより選択され、長さは、各々の支持棒を1m程度とし、全長として3m程度のものとして形成した。
【0014】
図2は、支持部材1の支持棒11、12、13間の伸張時における固定手段の例を示す概略図で、Aは、各々の接触面となる支持棒の端部をテーパー状51、52に形成し、該テーパー部51、52を嵌合することで固定手段としており、細径側の支持棒には、端部に向け徐々に外径を大きくするテーパー52を形成し、太径側の支持棒には、端部に向け徐々に内径を小さくするテーパー51を形成して、伸張したさいに該テーパー51、52同士が嵌合して、抜けを防止すると共に支持棒間を固定する構造となっている。
尚、材質などによりテーパーによる嵌合強度が弱く、固定が上手くいかない場合には、該テーパー部51、52の各々の接触面に細かな凹凸を設けたり、あるいは、接触抵抗の大きな材質を介在させたりすることにより、接触抵抗を大きくし、嵌合強度を高めて固定するものとしても良い。
Bは、ロックボタン61により、伸張時における対象となる2本の支持棒11と12、あるいは、12と13間を固定するもので、伸張時、対応する2本の支持棒端部の双方が一致する位置に連通する通孔63を設け、一方、細径側の支持棒内腔の通孔63の位置に、該通孔63より突出するロックボタン61と、該ロックボタン61を外部側に付勢するバネ材62からなるバネフック6を固定して設け、伸張時に双方の支持棒の通孔63が一致したさい、バネ材62に付勢されてロックボタン61が太径側の支持棒の通孔63から突出することで対象の2本の支持棒を伸張状態で固定する構造となっている。また、収納するさいは、バネ材62の付勢に抗してロックボタン61を押し、太径側の支持棒の通孔63より該ロックボタン61を外すことで固定を解除することができる。
Cは、ロックリング7の締付けにより、対象となる2本の支持棒11と12、あるいは、12と13間を固定するもので、本例のロックリング7は、太径側の支持棒先端に固定された雄(又は雌)ネジ部を備えるロックリング本体71と、細径側の支持棒を締め付けて固定する弾性部材よりなる締付けリング72と、該締付けリング72を内包してロックリング本体71のネジ部と勘合する雌(又は雄)ネジ部と締付けリング72への押圧部とを備えたロックキャップ73により構成し、対象となる2本の支持棒を固定するさいは、太径側の支持棒に固定されたロックリング本体71の雄ネジ部にロックキャップ73の雌ネジ部を締めこむことにより、ロックキャップ73内部に位置する、弾性部材よりなる締付けリング72が、ロックリング本体71の先端部とロックキャップ73の押圧部に押し潰され、内径を小さくすることにより、細径側の支持棒を締め付けて支持棒間を固定する構造となっている。また、ロックキャップ73を緩めると締付けリング72による支持棒への締付けも緩むことにより固定を解除することができる。
そして、本構成によると、前記2例の手段と異なり、細径側の支持棒を任意の位置で固定することができるため、段階的ではなく、連続的な長さ調整ができる器具とすることができる。
尚、前述した支持棒11、12、13間の固定手段は、例を示したもので、当然これら手段に限定されるものではなく、隣接する2本の支持棒が自在に伸縮、確実に固定できるものであれば公知のいかなる手段を用いても良い。
【0015】
図3は、本実施の形態の電気発熱手段となるシースヒーターを示し、図4は、シースヒーターの構造模式図を示している。
本例に用いられるシースヒーター20の構造を簡単に説明すると、ステンレス等からなる金属パイプ状の外筒22の内部に、ニクロム線等をコイル状に巻いた発熱線23を配置し、該発熱線23と外筒22の内部の隙間を酸化マグネシウム等よりなる電気絶縁剤24で充填して、両端部より電源供給部となるターミナル27を引き出し、該端部をシール材25、絶縁封材26で密封閉塞したパイプ状のヒーターとして形成しており、曲げ(湾曲)加工が比較的容易にできるといった特徴を備えている。
そして本例では、前記構成の一本の長尺なシースヒーター2を適当なパターン(本例においては、複数の同心円様の形状)に湾曲し、全体として平面様の円形形状となるように形成し、全体の大きさとしては、駆除対象物により適切な大きさが異なるため特定するものではないが、例えば、樹木におけるアメリカシロヒトリの幼虫の巣網を対象とする場合には、少なくとも木の葉以上の大きさとし、一方、上限は、作業性を考慮して人により容易に保持可能な大きさに留めた大きさとする。
そして、両端部をフランジ21によりターミナルボックス3に固定して構成した。
尚、シースヒーター2のパターン形状は、円形の渦巻き型、または、円形ではなく方形など、どのようなパターンであっても良いが、平面状に広がる巣網等を効果的に加熱するため、全体として平面様の構造を採ることが好ましい。
【0016】
ターミナルボックス3は、支持部材1の接続部で、シースヒーター2のターミナル27の接続部及び収納部となっており、また、該ターミナル27に接続された電源コード41が引き出されている。
通電手段4は、前記電源コード41の先端に自動車のバッテリーを電源供給源とするための電源コネクタ42を取り付け、該コード41中途の支持部材1を最大に伸ばしたさいに支持部材1の把持部となる部位の近辺にくるような位置に電源スイッチ43を設けて構成した。
尚、本例においては長時間の連続使用を想定しないため省略したが、必要に応じて、ヒーター装置に一般的に用いられる、温度センサー、温度制御装置、過昇防止等安全装置などは、公知のものを公知の手段で用いれば良い。また、供給電源は自動車のバッテリーではなく家庭用電源としても良く、その場合は、バッテリー用電源コネクタ42に換えて家庭用電源プラグを設ければ良い。
【符号の説明】
【0017】
1. 支持部材
11. 第一の支持棒
12. 第二の支持棒
13. 第三の支持棒
2.20. シースヒーター
21. フランジ
22. 金属外筒
23. 発熱線
24. 絶縁剤
27. ターミナル
3. ターミナルボックス
4. 通電手段
41. 電源コード
42. 電源コネクタ
43. 電源スイッチ
5. テーパー部
6. バネフック
61. ロックボタン
62. バネ材
63. 通孔
7. ロックリング
71. ロックリング本体
72. 締付けリング
73. ロックキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的あるいは段階的に長さを可変可能とした長尺な支持部材と、該支持部材の先端部に取り付ける所定の発熱域を備えた電気発熱手段と、該電気発熱手段への通電手段を備えて構成することを特徴とする高所害虫駆除器具。
【請求項2】
前記長さを可変可能な支持部材は、先端側に向け段階的に径を小さく形成する複数の管状部材より構成し、先端側に位置する管状部材は、隣接する手基側に位置する管状部材に各々が収容及び突出可能に形成される請求項1の高所害虫駆除器具。
【請求項3】
前記電気発熱手段は、シースヒーターを全体として面状の発熱域となるような形状に形成する請求項1乃至2の高所害虫駆除器具。
【請求項4】
前記電気発熱手段への供給電源は、家庭用の電源、あるいは、車のバッテリーを電源とする請求項1乃至3のいずれかの高所害虫駆除器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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