説明

高所掛止用フック金具

【課題】 ドロップ光ファイバー通信線が鉤部先端の嵌合溝に係止し、切断する恐れがあり、細心の注意を払って行っているので操作性の低下をきたすものである。
【解決手段】 上方に掛止空間1を有した鉤部2を設け、下方に環部3を備えたフック本体4を形成し、該フック本体4に枢設された開閉キャップ5と、該開閉キャップ5に連結して本体背面側に突設された吊環部7を備えた連結バー6を設け、該フック本体4の背面側上部に摺動材41、下部には係止ピン42を設け、連結バー6の上下方回動を制限した高所係止用フック金具であり、開閉キャップ5と連結バー6を回動自在に連結する連結軸62が、掛止空間1を閉鎖時に嵌合する鉤部2先端部の嵌合溝21の近傍に嵌脱自在にガイド部材8を設け、該ガイド部材8のガイド枠82外面81を鉤部2先端の内側面22と同等か若しくは突出する位置に配置し、嵌合溝21に細径の通信線が嵌入しない構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、高所作業者が墜落防止のために設置する墜落防止器具に設ける高所掛止用フック金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より高所掛止用フック金具としては、特公平5−8027号公報で開示したものがある。
これは、地上よりの操作により、簡単に墜落防止用ロープを設置することができるため、市場に受け入れられ各通信線工事時に使用されているものである。
【0003】
しかしながら、最近のIT化により通信線も複雑になってきているのが現状である。
つまり、既設のメタル通信線1本だけではなく、回線が増えることによる増設、また光ファイバー通信線の新設により、電柱付近は、非常に複雑になっている。
また、光ファイバー通信線から各家庭に配線する細径のドロップ光ファイバー通信線を既設のメタル通信線に添わして設置している。
よって、最近では、らせん状ハンガーを用いて既設の支持線,メタル通信線,増設メタル通信線,光ファイバー通信線,ドロップ光ファイバー通信線等を一束にしている。
【特許文献1】特公平5−8027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所掛止用フック金具を支持線、メタル通信線に掛止して使用するのであるが、従来の掛止対象の支持線・メタル通信線は太いものであったため、高所掛止用フック金具の鉤部先端の嵌合溝に引っ掛けることがなかった。
ところが、最近、らせん状ハンガーRによってメタル通信線や光ファイバー通信線等が一束化され、その中の細径のドロップ光ファイバー通信線が、取付け取り外し時に高所掛止用フック金具の鉤部先端の嵌合溝に引っかかり切断する恐れがあり、細心の注意を払って行うので操作性が低下するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
よって本願では、高所掛止用フック金具の鉤部2先端部にガイド8を設け、鉤部2の嵌合溝21に引っ掛けないようにしたものである。
具体的には、開閉キャップ5と連結バー6を回動自在に連結する連結軸62が、掛止空間1を閉鎖時に嵌合する鉤部2先端部の嵌合溝21の近傍に嵌脱自在にガイド部材8を設け、該ガイド部材8外面81を鉤部2先端の内側面22と同等か若しくは突出する位置に配置し、嵌合溝21に細径の通信線が嵌入しない構造である。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本願は、ガイド部材8を設けることにより、ドロップ光ファイバー通信線Dを引っ掛けることがなく、操作性の向上となる。
また、高所掛止用フック金具を吊り上げた場合、ガイド部材8がメタル通信線Cと接触し、フック金具がメタル通信線Cと直角に位置するので、開放距離が一番広い部分で取り外しを行うことができる。
また、ガイド部材8は、嵌脱自在の構造とし、既販売品に簡単容易に取付け、取り外しが可能である。
【実施例】
【0007】
本願の実施例を詳記すると、
上方にらせん状ハンガーRによって一束化された支持線、メタル通信線C等を掛止可能な掛止空間1を有した鉤部2を設け、下方に巻取式命綱9,ロープ等を連結可能な環部3を備えたフック本体4を形成し、該フック本体4に前記掛止空間1を開閉可能に枢設された開閉キャップ5と、該開閉キャップ5に連結して本体背面側に突設された吊環部7を備えた連結バー6を設け、該フック本体4の背面側上部には連結バー6の上方回動を制限し、かつ該連結バー6を摺動させる摺動材41を設け、同じく下部には、開閉キャップ5をフック本体4の掛止空間1を閉鎖状態に固定する連結バー6の掛止部61と当接し、下方向への回動を制限する係止ピン42を設けた高所係止用フック金具であり、開閉キャップ5と連結バー6を回動自在に連結する連結軸62が、掛止空間1を閉鎖時に嵌合する鉤部2先端部の嵌合溝21の近傍に嵌脱自在にガイド部材8を設け、該ガイド部材8のリング82外面81を鉤部2先端の内側面22と同等か若しくは突出する位置に配置し、嵌合溝21にドロップ光ファイバー通信線Dのような細径の通信線が嵌入しない構造を有している。
【0008】
ガイド部材8は、図3,4に示すように、フック本体4の鉤部2先端部に嵌脱自在に取付けられるように構成したものであり、丸棒を用いてリング状に形成したガイド枠82の上部離反部に鋼板をコ字状に折曲した取付金具83を配置し、該取付金具83の対辺壁に溶着し、ガイド枠82のほぼ中央水平部で折曲し、前記取付金具83の対辺壁間先端中央にナット84を溶着し、該ナットにボルト85を螺合したものである。
取付けは、鉤部2先端に取付金具83を嵌入し、ボルト85で鉤部2先端の外側面を押圧固定するだけで簡単容易に取付けることができるものである。
なお、図面では、ガイド部材8のガイド枠82を丸棒により形成しているが、鋼板状のものでもよく、ガイド枠82の外面81が鉤部2先端の内側面22と同等か若しくは突出する位置に配置するものであればよい。
【0009】
本願高所掛止用フック金具の使用方法の一例を説明する。
下部の環部3に巻取式命綱9を設けた図6,7の場合は、命綱先端のフックHを電柱下部(根本)に取付けるか、作業者が装着している安全帯のリングに掛止しておき、フック本体4の吊環部7に伸縮竿S先端金具を掛け、伸縮竿Sを伸ばしていき、一束化されたメタル通信線C,ドロップ光ファイバー通信線Dに鉤部2を掛止し、吊環部7より伸縮竿S先端金具を外せば開閉キャップ5はバネにより鉤部2先端部に回動し、掛止空間1を閉鎖すると共に、連結バー6の掛止部61が係止ピン42に掛止し、開閉キャップ5の不用意な回動を阻止するものである。
その後、伸縮竿Sを縮めて収納し、作業者は電柱の作業位置まで昇っていくものである。その時、万が一にもステップボルトより手足を滑らさせて落下しても巻取式命綱9の細幅織ベルトが急激に引っ張られることによりドラムが回転し、内蔵した係止爪が遠心力によって回動し、係止歯に係止してドラムの回転を阻止し、最小限の落下距離で停止するものである。
取り外しは、地上に降りた作業者が、再び伸縮竿Sを伸ばしていき吊環部7に伸縮竿S先端金具を掛止し、吊り上げることにより開閉キャップ5を回動し、掛止空間1を開放することができ、一束化されたメタル通信線C,ドロップ光ファイバー通信線Dより容易に取り外すことができる。そして伸縮竿Sを縮めて撤収完了となるものである。
【0010】
下部の環部3に親ロープを直接設けた場合は、フック本体4の吊環部7に伸縮竿S先端金具を掛け、伸縮竿Sを伸ばしていき、一束化されたメタル通信線C,ドロップ光ファイバー通信線Dに鉤部2を掛止し、吊環部7より伸縮竿S先端金具を外せば開閉キャップ5はバネにより鉤部2先端部に回動し、掛止空間1を閉鎖すると共に、連結バー6の掛止部61が係止ピン42に掛止し、開閉キャップ5の不用意な回動を阻止するものである。
その後、伸縮竿Sを縮めて収納し、作業者は電柱下部(根本)に親ロープ下端部を取り付けると共に、ロープ把持金具を取付け、ロープ把持金具の子綱先端に設けたフックを作業者が装着する安全帯のリングに掛止して作業位置まで昇っていくものである。その時、万が一にもステップボルトより手足を滑らさせて落下してもロープ把持金具により親ロープを掴持して墜落を防止するものである。
取り外しは、地上に降りた作業者が、再び伸縮竿Sを伸ばしていき吊環部7に伸縮竿S先端金具を掛止し、吊り上げることにより開閉キャップ5を回動し、掛止空間1を開放することができ、一束化されたメタル通信線C,ドロップ光ファイバー通信線Dより容易に取り外すことができる。そして伸縮竿Sを縮めて撤収完了となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願高所掛止用フック金具の正面図。
【図2】本願高所掛止用フック金具の左側面図。
【図3】本願高所掛止用フック金具の鉤部先端の正面図。
【図4】本願高所掛止用フック金具の鉤部先端の右側面図。
【図5】本願高所掛止用フック金具の吊上状態正面図。
【図6】本願高所掛止用フック金具の取付状態正面図。
【図7】本願高所掛止用フック金具の取付状態右側面図。
【符号の説明】
【0012】
1 掛止空間
2 鉤部
3 環部
4 フック本体
5 開閉キャップ
6 連結バー
7 吊環部
8 ガイド部材
9 巻取式命綱
21 嵌合溝
22 内側面
41 摺動材
42 嵌合溝
61 掛止部
62 連結軸
81 外面
82 ガイド枠
83 取付金具
84 ナット
85 ボルト
C メタル通信線
D ドロップ光ファイバー通信線
H フック
R らせん状ハンガー
S 伸縮竿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に支持線、通信線等に掛止可能な掛止空間1を有した鉤部2を設け、下方に巻取式命綱9,ロープ等を連結可能な環部3を備えたフック本体4を形成し、該フック本体4に前記掛止空間1を開閉可能に枢設51された開閉キャップ5と、該開閉キャップ5に連結して本体背面側に突設された吊環部7を備えた連結バー6を設け、該フック本体4の背面側上部には連結バー6の上方回動を制限し、かつ該連結バー6を摺動させる摺動材41を設け、同じく下部には、開閉キャップ5をフック本体4の掛止空間1を閉鎖状態に固定する連結バー6の掛止部61と当接し、下方向への回動を制限する係止ピン42を設けた高所係止用フック金具であり、開閉キャップ5と連結バー6を回動自在に連結する連結軸62が、掛止空間1を閉鎖時に嵌合する鉤部2先端部の嵌合溝21の近傍に嵌脱自在にガイド部材8を設け、該ガイド部材8外面81を鉤部2先端の内側面22と同等か若しくは突出する位置に配置し、嵌合溝21に細径の通信線が嵌入しない構造を特徴とする高所掛止用フック金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−305057(P2006−305057A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131217(P2005−131217)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(000232494)日本電話施設株式会社 (12)
【Fターム(参考)】