説明

高放電容量のリチウム・バッテリ

電気化学バッテリ・セル、特に、リチウム負極と二硫化鉄正極とを有するセルである。セルに用いる前に、二硫化鉄は固有pHを有し、又は、二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物は少なくとも所定の最小pH値の計算されたpHを有する。好ましい実施形態において、pH上昇添加剤は、元素周期表のグループIIA元素、又は酸捕集剤、或いは有機アミン、脂環式エポキシ、アミノアルコールのようなpH調整剤、又はオーバーベース・カルシウムスルホン酸塩を含む。一実施形態においては、セルに用いられる二硫化鉄粒子は、特定の減少した平均粒径範囲を有する。(a)固有pH、又は(b)所定の最小値より大きい又はそれに等しい計算されたpHを有する、(a)二硫化鉄、又は(b)二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物を含有する、カソードと、こうしたカソードを含む電気化学バッテリ・セルを用意する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学バッテリ・セル、特に、リチウム負極と二硫化鉄正極とを有するセルと、カソード及び電気化学バッテリ・セルを用意する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電気装置は、電源として電気化学バッテリ・セルを用いている。バッテリの寸法及び形状は、装置のバッテリ区画によって制限される場合が多い。製造業者らは電気装置の能力及び機能を増加させることを試み続けており、それに用いられるバッテリに対する要求も増加している。バッテリの形状及び寸法は固定である場合が多いため、バッテリ製造業者らは、増加した性能を提供するためにセルの特徴を修正しなければならない。
増加した性能を提供するための解決策は、シールとベントを含むハウジングがセル内で占領する体積を最小にすること、並びに、負極(アノード)と正極(カソード)との間のセパレータの厚さを減少させることを含む。こうした解決策は、活性材料のために利用可能な内部体積を最大にすることを試みるものである。
【0003】
望ましい性能特性を与えることから、活性材料として電気化学セルの正極に天然黄鉄鉱又は二硫化鉄(FeS2)鉱石を用いることも望ましい。しかしながら、天然の二硫化鉄鉱石は、天然物中に存在する、或いは、鉱業会社又は供給業者によって意図的に又は意図せず加えられた、幾らかの不純物を含有することがある。不純物の種類は、出所、すなわち、異なる採鉱領域からのサンプルによって、或いは同一の場所からのロットごとに変化することがある。不純物の種類又はレベル或いはその両方を制限するためにサンプリング及びロットの選択が用いられるが、不純物を完全になくすことはできない。これまで、20μmより大きい二硫化鉄平均粒径と、3.75から6.86までのpH値範囲であるときの、電極に用いられる前の約5.0の中央固有pH値とを有するリチウム/二硫化鉄バッテリが作成されていた。また、1μmから19μmの二硫化鉄平均粒径と、4.03から5.56までのpH値範囲であるときの約4.75の中央固有pH値とを有するリチウム/二硫化鉄バッテリが作成されていた。現在、合成の二硫化鉄を使用するのはコストが高い。
【0004】
電気化学セルのカソードに用いられる黄鉄鉱又は二硫化鉄粒子は、典型的には、粉砕され、熱処理され、20〜30ミクロンの平均粒径にまでドライミルされた天然鉱石から誘導される。粉砕の細かさは、粒子と空気及び水分との反応性によって制限される。粒径が減少するのに伴って、その表面積が増加し、風化される。風化は、二酸化鉄が水分及び空気と反応して硫酸鉄を生成する酸化プロセスである。風化プロセスによって、酸性度が増加し、電気化学活性が減少する。小さい黄鉄鉱粒子は、処理作業の間に危険な炎を発生させるのに十分なほどの熱を酸化の間に生じることがある。従来技術で用いられた二硫化鉄粒子は、ドライミル工程の非一貫性のために約80ミクロンの最終カソード・コーティング厚さに達する粒径を有することがある。
二硫化鉄のドライミル工程は、典型的には、大量の材料を製造する鉱業会社又は中間業者によって実行される。処理された二硫化鉄は、輸送されて、通常は、バッテリ産業によって用いられる前に、長期間にわたって保管される。したがって、保管期間の間に、前述の酸化及び風化が起こり、材料が劣化する。さらに、大きなサイズの二硫化鉄粒子は、カレンダ処理のような処理に影響を及ぼして、基板の歪み、基板結合へのコーティングの分断、並びに、セパレータ損傷からの故障を招くことがある。
【0005】
より小さい平均粒径の二硫化鉄を用いることによって電気化学バッテリ・セル性能を改善するのが望ましいことが見出されている。二硫化鉄の平均粒径は、典型的には、メディア・ミル又はジェット・ミルのようなミル法によって減少される。結果として、二硫化鉄の表面積が増加し、付加的な不純含有物が露出され、電解質中に放出される。
二硫化鉄正極と好ましくはリチウム負極とを有するバッテリは、時折、内部短絡を招く欠陥を呈する。欠陥は、二硫化鉄のような原材料源中に存在する金属、例えば亜鉛のような不純物によって引き起こされると考えられる。幾らかの不純物は非水性電解質中に可溶であり、デンドライトとして負極上に堆積する。デンドライトは、セパレータをまたぐ導電性ブリッジを形成するのに十分なほど大きく成長して、電気化学セルに内部短絡を生じさせることがある。
【0006】
上記の理由から、内部短絡、すなわちデンドライト成長又は形成が減少され又は実質的に防止された電気化学セルが必要とされている。デンドライト成長又は内部短絡の防止は、セル性能を犠牲にしてもたらされるべきではない。
【発明の開示】
【0007】
上記の問題及び考慮事項から見て、本発明の目的は、高容量を有し、期待された温度及び作動条件の下で良好に機能し、複数の温度での長い貯蔵寿命を有し、内部短絡の結果として故障する傾向のない、電気化学バッテリ・セルを提供することである。
本発明の目的はまた、ローパワー放電とハイパワー放電との両方において望ましい放電容量及び効率を呈する電気化学バッテリ・セルを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、増加したカソード界面容量をもち、改善されたエネルギー密度と内部短絡に対する良好な抵抗性を有するLi/FeS2セルを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、比較的小さい平均粒径のFeS2粒子を含む正極を有する電気化学セルを提供することである。さらなる目的は、増加した低定格及び高定格製品性能を有する電気化学セルを提供することである。さらに別の目的は、長期間にわたって高い電圧出力を維持する電気化学セルを提供することである。本発明のさらに別の目的は、電気化学セル、特に正極を製造する方法を提供することであり、その方法は、FeS2粒子と湿潤剤とを含有するスラリーを形成し、ミル、特にメディア・ミルを用いてFeS2粒子をミルし、その後、スラリーを用いて正極を形成するステップを含む。本発明の別の目的は、実質的に熱が発生せず、狭い粒径分布が得られるジェット・ミルのようなプロセスを用いて、所望の平均粒径範囲までミルされた二硫化鉄粒子を含む正極を有する電気化学セルを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、(a)FeS2、又は(b)FeS2と、電極で用いる前に少なくとも所定の最小値のpHを有する任意のpH上昇添加剤とを含有する正極を有する電気化学バッテリ・セルを提供することである。一実施形態においては、FeS2は、1μmから19μmまでの平均粒径を有する。本発明の1つの態様においては、元素周期表のグループIIA元素、酸捕集剤、又は、有機アミン、脂環式エポキシ、アミノアルコール又はオーバーベースのカルシウムスルホン酸塩のようなpH調整剤を含む、pH上昇添加剤が提供される。
本発明のさらに別の目的は、電気化学バッテリ・セルのための正極、並びに、その正極を含むセルを用意する方法を提供することであり、その方法は、FeS2サンプルのpHを測定し、pHを少なくとも所定の最小値まで増加させるためにpH上昇添加剤を任意に添加し、FeS2と任意にpH上昇添加剤をカソード基板に適用するステップを含む。一実施形態においては、電気化学バッテリ・セルを製造する方法は、(a)固有pHを有するFeS2、(b)FeS2と、所定の最小値より高い又はそれに等しい、計算されたpHを有するpH上昇添加剤とを含む混合物からなるカソードを含むセルを形成するステップを含む。
本発明によって、上記の目的が達成され、上記の従来技術の欠点が克服される。
【0009】
本発明の1つの態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、(a)6.0から14.0までの固有pHを有する二硫化鉄、又は(b)二硫化鉄と、混合物に5.0から14.0の計算されたpHを与えるのに有効な量で存在するpH上昇添加剤との混合物のいずれかを含む正極と、ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物とを含む、電気化学バッテリ・セルに向けられている。
本発明の別の態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、(a)セルに用いられる前に5.0から14.0までの固有pHを有し、1から19μmまでの平均粒径を有する二硫化鉄、又は(b)二硫化鉄と、混合物に5.0から14.0の計算されたpHを与えるのに有効な量で存在するpH上昇添加剤との混合物のいずれかを含む正極と、ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物とを含む、電気化学バッテリ・セルに向けられている。
本発明のさらに別の態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、二硫化鉄とグループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシ、アミノアルコール又はオーバーベースのカルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むpH上昇添加剤とを含み、pH上昇添加剤として水酸化カルシウムが存在する場合には炭酸リチウムを含有しない正極と、ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物と、負極と正極との間に配置されたセパレータとを含む、電気化学バッテリ・セルに向けられている。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、二硫化鉄を獲得し、二硫化鉄のpHを測定し、(a)二硫化鉄のpHが6.0から14.0までであり、平均二硫化鉄粒径が20μmから30μmである場合に、二硫化鉄を用いてカソードを形成し、(b)二硫化鉄のpHが5.0から14.0までであり、平均二硫化鉄粒径が1μmから19μmである場合に、二硫化鉄を用いてカソードを形成するステップを含む、カソードを製造する方法に向けられている。電気化学セルは、この方法に従って製造されたカソードを、リチウム及びアノードとカソードとの間に配置されるセパレータと組み合わせ、非水性電解質を添加し、アノード、カソード、セパレータ及び電解質をセル・ハウジング内にシールすることによって形成される。
本発明のさらに別の目的は、二硫化鉄を獲得し、二硫化鉄のpHを測定し、二硫化鉄とpH上昇添加剤との計算されたpHが4.0から14.0となるようにするのに有効な量のpH上昇添加剤を二硫化鉄に添加し、二硫化鉄及びpH上昇添加剤をカソード基板に適用するステップを含む、カソードを製造する方法に向けられている。電気化学セルは、この方法に従って製造されたカソードを、リチウムを含むアノード及びアノードとカソードとの間に配置されるセパレータと組み合わせ、非水性電解質を添加し、アノード、カソード、セパレータ及び電解質をセル・ハウジング内にシールすることによって形成される。
本発明のこれらの及び他の特徴、利点及び目的は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲及び添付の図面を参照することによって、当業者にさらに理解され認識されるであろう。
【0011】
他に規定されない限り、ここで用いられる以下に列挙した用語は、以下のように定義される。
・活性材料−セルの放電反応に不可欠なものであって、セルの放電容量に寄与する、不純物及び存在する少量の他の成分を含む、1つ又はそれ以上の化合物。
・活性材料混合物−集電体及び電極リードを除く、電極活性材料を含む、固体電極材料の混合物。
・平均粒径−Large Volume Recirculator(LVR)(体積4L)モデル9320を装備したMicrotrac Honeywell Particle Size Analyzer Model X−100を用いて測定される、組成物(MV)試料の体積分布の平均直径。測定方法は、塊を壊し、再び塊になるのを防止するために、超音波を用いる。約2.0グラムの試料を計量し、50mlのビーカーに入れる。20mlの脱イオン水と2滴の界面活性剤(100mlの脱イオン水中のFisher Scientificから入手可能な10mlの10%Aerosol OTから調製された、1%Aerosol OT溶液であり、この溶液は良く混合されている)。ビーカー試料溶液を、好ましくは攪拌棒で攪拌する。Large Volume Recirculatorに脱イオン水をレベルまで満たし、試料をビーカーからRecirculatorボウルに移す。洗ビンを用いて、あらゆる残留試料粒子をRecirculatorボウルの中にすすぎ出す。測定を開始する前に試料を1分間再循環させる。FeS2粒子についての以下のパラメータが入力される。透明な粒子−No(吸収)、球形の粒子−No、流体屈折率−1.33、ランタイム−60秒。
【0012】
・FeS2とpH上昇添加剤との混合物の計算されたpH−FeS2の固有pHと、FeS2とpH上昇添加剤の相対的な量に基づいて計算されたpH値。
・容量、放電−放電の間にセルによって発揮された実際の容量であり、通常、アンペア時(Ah)又はミリアンペア時(mAh)で表される。
・容量、入力−電極の各々の活性材料の重量にその活性材料の理論上の比容量をかけたものに等しい理論上の電極容量であり、各々の活性材料の理論上の比容量は以下の計算に従って求められる。
[(96,487アンペア−秒/モル)/(活性材料のグラム数/モル)]×(活性材料の電子数/モル)/(3600秒/時)×(1000ミリアンペア時/アンペア−時)
(例えば、Li=3862.0mAh/g、S=1672.0mAh/g、FeS2=893.6mAh/g、CoS2=871.3mAh/g、CFx=864.3mAh/g、CuO=673.8mAh/g、C2F=623.0mAh/g、FeS=609.8mAh/g、CuS=560.7mAh/g、Bi23=345.1mAh/g、MnO2=308.3mAh/g、Pb2Bi25=293.8mAh/g、及びFeCuS2=292.1mAh/g)
【0013】
・容量、セル界面−より小さい負極容量及び正極容量。
・容量、電極界面−全ての活性材料の完全反応を前提とする、全体のセル放電反応機構と、反対極の活性材料に隣接する活性材料混合物の部分に含まれる活性材料の総量とに基づく、セルの理論放電容量に対する電極の総寄与であり、通常、Ah又はmAhで表される(電極ストリップの2つの主要面の一方のみが反対極の活性材料に隣接し、電極のその側の活性材料のみ、−固体集電体シートのその側の材料か、又は、固体集電体シートなしのときの電極の厚さの半分の材料のいずれか−、が、界面容量の測定に含められる)。
・電極組立体−負極、正極及びセパレータ、並びに、それと共に組み入れられた、しかし活性材料、活性材料混合物又は集電体に取り付けられたいずれかの別個の導線を除く、いずれかの絶縁材料、オーバーラップ、テープなどの組み合わせ。
・電極ギャップ−隣接する負極及び正極間の距離。
・電極負荷−単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量であり、通常、グラム毎平方センチメートルで表される(g/cm2)。
・電極パッキング−単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量を、混合物中の固体材料の真の密度に基づく理論単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量で割ったものであり、通常、百分率で表される。
【0014】
・(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物のpH−それぞれ水中に浮遊させた(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物のpHであり、以下の方法によって求められる、(1)CO2フリーの脱イオン水をビーカーの中に入れる、(2)水を攪拌しながら、pHメーターでpHを測定し、必要に応じて希NaOH溶液でpH6.9から7.1に調整し、(3)(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物のサンプル5.000gを100mlビーカーの中に入れ、50mlのpH調整された水を加え、(4)それと水を攪拌しながら(水がキャビテートすることなくそれの大部分が浮遊した状態を維持するのに十分なだけ勢い良く)、pHが安定化するまで30秒間隔でpHを測定し、安定したpH値を(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物のpHとして記録する。
・折り畳み電極−ストリップの長さが互いに平行に又は交差するように折り畳むことによって組立体に合体された電極ストリップ。
・固有pH−鉱業会社又はバッテリ製造とは無関係の供給元から受け取った材料のpHであり、時間の経過と共に下がることがある。
【0015】
・界面高さ、電極組立体−組立体の電極の界面の、セルの縦軸に平行な、平均高さ。
・界面体積、電極組立体−コンテナ側壁の内面におけるセルの縦軸に垂直な断面積と、電極組立体界面高さとによって定められる、セル・ハウジング内の体積。
・公称−その特徴又は特性について何が期待されるかを表す、製造業者によって指定された値。
・放電率−放電の間にセルから取り出された定格容量の割合。
・室温−約20℃から約25℃までの間の温度。
・螺旋巻き電極−それらの長さ又は幅に沿って、例えば、マンドレル又は中心コアの周りに巻くことによって組立体に合体された電極ストリップ。
・気孔体積、電極組立体−電極組立体界面体積から、界面高さに含まれる非多孔性電極組立体成分の体積と多孔性電極組立体成分の固形分の体積との和を引くことによって求められる、単位界面高さ当たりの電極組立体気孔の体積(微孔性セパレータ、絶縁膜、テープなどは非多孔性及び非圧縮性であると想定され、多孔性電極の体積は、成分の真の密度及び総実体積を用いて求められる)であり、通常、cm3/cmで表される。
【0016】
本発明は、本発明の詳細な説明を図面と組み合わせて読むことによって、良く理解され、他の特徴及び利点が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のバッテリ・セルは、負極活性材料として金属リチウムを含むアノードを有する。アノード及びカソードは共にストリップの形態であり、それらは、活性材料を含有する電極の体積に対して高い界面表面積を与えるように、電極組立体に互いに接合される。界面表面積が高くなると、電流密度が下がり、放電時にハイパワーをもたらすセルの能力が高まる。セルはまた、電極組立体界面体積に対するカソード界面容量の高い比、少なくとも710mAh/cm2を有することができる。これは、電極組立体の中の活性材料の体積が高く、高い放電容量を与えることを意味する。活性材料の高い体積は、総入力容量に対する界面入力容量の比、カソード集電体の体積、カソード混合物中の活性カソード材料の濃度、及び電極組立体の中のセパレータの体積を含む変数の数を制御することによって達成される。
【0018】
本発明は、本発明に係るセルの実施形態を示す図1を参照すると良く理解されるであろう。セル10は、FR6型の円筒形Li/FeS2バッテリ・セルである。セル10は、セル・カバー14とガスケット16によって閉鎖された、閉鎖下端部と開放上端部とをもつカン12を含むハウジングを有する。カン12は、ガスケット16とカバー14を支持するために上端部の近くにビード、又は減少された直径の段差を有する。ガスケット16は、セル10内のアノード18、カソード20及び電解質をシールするために、カン12とカバー14との間で圧縮される。アノード18、カソード20、及びセパレータ26は、電極組立体として互いにらせん状に巻かれる。カソード20は、電極組立体の上端部から延びて接触ばね24によってカバー14の内面に接続された金属集電体22を有する。アノード18は、金属タブ(図示せず)によってカン12の内面に電気接続される。絶縁コーン46が、カソード集電体22がカン12と接触するのを防止するために電極組立体の上部周辺部の周りに配置され、カソード20の底部縁とカン12の底部との間の接触は、内向きに折り曲げられたセパレータ26の拡張と、カン12の底部に位置決めされた電気絶縁底部ディスク44によって防止される。セル10は、カン12の内向きに折れ曲がった上縁部とガスケット16によって所定位置に保持される別個の正端子カバー40を有する。カン12は、負接触端子として働く。端子カバー40の周辺フランジとセル・カバー14との間に配置されるのは、誤用電気条件下での電流の流れを実質的に制限する、正の温度係数(PTC)装置42である。セル10はまた、圧力逃がし通気孔を含む。セル・カバー14は、底部に通気孔30を備えた内向きに突出する中央通気ウェル28を含む開口部を有する。開口部は、通気ボール32と、通気ウェル28の垂直な壁と通気ボール32の周辺部との間で圧縮される薄壁の熱可塑性ブッシュ34とによってシールされる。セルの内圧が所定レベルを超えたときには、通気ボール32、又はボール32とブッシュ34との両方が、セル10から加圧されたガスを逃がすために開口部の外に押し出される。
【0019】
セル・コンテナは、一体の閉鎖底部を備えた金属缶である場合が多いが、缶の代わりに、両方の端部で最初に開かされる金属チューブが用いられてもよい。缶は、通常は、缶の外側を腐食から保護するために少なくとも外側がニッケルでめっきされたスチールである。めっきの種類は、種々の度合いの耐食性を与えるために、又は所望の外観を与えるために変えることができる。スチールの種類は、コンテナが形成される方法に、ある程度依存する。引抜缶においては、スチールは、拡散アニール低炭素アルミニウム・キルドSAE1006か、又は、それと同等の、ASTM9から11の粒度をもち、僅かに細長い粒子形状と等軸にされたスチールとすることができる。特別の必要に合わせてステンレス・スチールのような他のスチールを用いることもできる。例えば、缶がカソードと電気接触するときには、カソードと電解質による腐食に対する抵抗性を改善するために、ステンレス・スチールが用いられてもよい。
【0020】
セル・カバーは典型的には金属である。ニッケルめっきされたスチールを用いてもよいが、特にカバーがカソードと電気接触するときには、ステンレス・スチールが望ましい場合が多い。カバー形状の複雑さもまた、材料選択における1つのファクタとなる。セル・カバーは、厚い平らなディスクのような単純な形状を有してもよいし、又は、図1に示すカバーのような複雑な形状を有してもよい。カバーが図1のような複雑な形状を有するときには、所望の耐食性と金属形成の容易さを与えるために、ASTM8−9の粒度をもつタイプ304ソフト・アニール・ステンレス・スチールが用いられてもよい。形成されたカバーはまた、例えばニッケルでめっきされてもよい。
【0021】
端子カバーは、周囲環境中の水による腐食に対する良好な抵抗性、良好な導電性、及び、消費者に見えるときには魅力的な外観をもつべきである。端子カバーは、ニッケルめっきされ冷間圧延されたスチール、又は、カバーが形成された後でニッケルめっきされたスチールから形成される場合が多い。端子が圧力逃がし通気孔の上に配置される場合には、端子カバーは、通常、セルの通気を容易にするために1つ又はそれ以上の穴を有する。
【0022】
ガスケットは、所望のシール特性を与えるいずれかの適切な熱可塑性材料から形成される。材料の選択は、電解質の組成にある程度基づく。適切な材料の例には、ポリプロピレン、硫化ポリフェニレン、四フッ化−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの組み合わせがある。好ましいガスケット材料には、ポリプロピレン(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在のBasell Polyolefins社からのPRO−FAX(登録商標)6524)、ポリブチレンテレフタレート(例えば、米国ニュージャージー州サミット所在のTicona−US社からのCELANEX(登録商標)PBT、グレード1600A)、及び硫化ポリフェニレン(米国テキサス州シャイナー所在のBoedeker Plastics,Inc.からのTECHTRON(登録商標)PPSがある。少量の他のポリマー、強化無機フィラー、及び/又は、有機化合物を、ガスケットのベース樹脂に添加してもよい。
ガスケットは、良好なシールを与えるためにシーラントで被覆されてもよい。エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)が適切なシーラント材料であるが、他の適切な材料を用いることもできる。
【0023】
通気ブッシュは、高温(例えば75℃)でのコールドフローに対して抵抗する熱可塑性材料から形成される。熱可塑性材料は、エチレン−テトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレート、硫化ポリフェニレン、ポリフタルアミド、エチレンクロロ−トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、フッ素化ペルフルオロエチレンポリプロピレン、及びポリエーテルエーテルケトンのようなベース樹脂を含む。エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリフタルアミドが好ましい。樹脂は、通気ブッシュに高温での所望のシール特性及び通気特性を与えるために、熱安定化フィラーを添加することによって修飾される。ブッシュは、熱可塑性材料から注入成形される。TEFZEL(登録商標)HT2004(25重量パーセントのチョップドガラス・フィラーを伴うETFE樹脂)が、好ましい熱可塑性材料である。
通気ボールは、セル成分と接触した状態で安定であって、所望のセルシール特性及び通気特性を与えるいずれかの適切な材料から形成される。ステンレス・スチールのようなガラス又は金属を用いることができる。
【0024】
アノードは、リチウム箔と呼ばれることもあるリチウム金属ストリップを含む。リチウムの組成は変えることができるが、バッテリ・グレードのリチウムについては、純度は常に高い。リチウムは、所望のセル電気性能を与えるために、アルミニウムのような他の金属と合金にすることができる。0.5重量パーセントのアルミニウムを含有するバッテリ・グレードのリチウム−アルミニウム箔は、米国ノースカロライナ州キングスマウンテン所在のChemetall Foote Corp.から入手可能である。
アノードは、金属リチウム内に、又はその表面上に、集電体を有してもよい。図1のセルのように、リチウムは高い導電性をもつため、別個の集電体は必要ではないが、集電体は、例えば、リチウムが消費されるときに放電の間のアノード内の電気的連続性を維持するために含められる。アノードが集電体を含むときには、集電体は、その導電性のために銅から形成されてもよいが、それらがセル内部で安定であれば、他の導電性金属を用いることもできる。
【0025】
薄い金属ストリップは、しばしば、アノードを一方のセル端子(図1に示されたFR6セルの場合の缶)に接続する導線、又はタブとして働く。金属ストリップは、しばしば、ニッケル又はニッケルめっきされたスチールから形成され、リチウムに直接取り付けられる。これは、アノードの一部の中に導線の端を埋め込むことによって、又は導線の端をリチウム箔の表面上に押しあてることによって達成される。
【0026】
カソードは、集電体と、普通は微粒子の形態の1つ又はそれ以上の電気化学活性材料を含む混合物とを有する、ストリップの形態である。二硫化鉄(FeS2)が好ましい活性材料である。Li/FeS2セルにおいては、活性材料は、50重量%より多いFeS2を含有する。カソードはまた、所望のセル電気特性及び放電特性に応じて、1つ又はそれ以上の付加的な活性材料を含むことができる。付加的な活性カソード材料は、あらゆる適切な活性カソード材料とすることができる。その例には、Bi23、C2F、CFx、(CF)n、CoS2、CuO、CuS、FeS、FeCuS2、MnO2、Pb2Bi25及びSがある。より好ましくは、Li/FeS2セル・カソードのための活性材料は、少なくとも95重量%のFeS2を含み、さらに好ましくは少なくとも99重量%のFeS2を含み、最も好ましくはFeS2が、ただ1つの活性カソード材料である。少なくとも95重量%の純度レベルを有するバッテリ・グレードのFeS2は、米国ニュージャージー州カムデン所在のAmerican Minerals,Inc.、オーストリア、ウィーン所在のChemetall株式会社、マサチューセッツ州ノースグラフトン所在のWashington Mills社、及び、米国バージニア州Dillwyn所在のKyanite Mining Corp.から入手可能である。
【0027】
活性材料に加えて、カソード混合物は他の材料を含む。バインダは、通常、微粒子材料を互いに保持し、混合物を集電体に付着させるのに用いられる。混合物に改善された導電性を与えるために、金属、グラファイト及びカーボンブラック粉末のような1つ又はそれ以上の導電性材料を添加してもよい。用いられる導電性材料の量は、活性材料とバインダの導電性、集電体上の混合物の厚さ、及び集電体のデザインといった因子に依存する。カソードの製造及びセル性能を強化するために、少量の種々の添加剤が用いられてもよい。以下は、Li/FeS2セル・カソードのための活性材料混合物材料の例である。グラファイト:米国オハイオ州ウエストレーク所在のTimcal AmericaからのKS−6及びTIMREX(登録商標)MX15グレードの合成グラファイト。カーボンブラック:米国テキサス州ヒューストン所在のChevron Phillips Company LPからのグレードC55アセチレンブラック。バインダ:Polymont Plastics Corp.(以前はPolysar,Inc.)によって製造され、米国オハイオ州アクロン所在のHarwick Standard Distribution Corp.から入手可能なエチレン/プロピレンコポリマー(PEPP)。非イオン水溶性ポリエチレンオキシド(PEO):米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Chemical CompanyからのPOLYOX(登録商標)、及び、テキサス州ヒューストン所在のKraton PolymersからのG1651グレードのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロック・コポリマー。添加剤:米国ニュージャージー州タリタウン所在のMicro Powders Inc.によって製造されたFLUO HT(登録商標)微粉化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(米国オハイオ州クリーブランド所在のDar−Tech Inc.から市販されている)、及び、ニュージャージー州リッジフィールド所在のDegussa Corporation Pigment GroupからのAEROSIL(登録商標)200グレードのヒュームド・シリカ。
【0028】
集電体は、カソード表面内に配置されるか、又はその中に埋め込まれてもよく、或いは、カソード混合物は、薄い金属ストリップの一方の側又は両側の上にコーティングされてもよい。アルミニウムが一般的に用いられる材料である。集電体は、カソード混合物を含むカソードの部分を越えて延びてもよい。この集電体の延長部分は、正端子に接続された導線との接触を形成するのに便利な領域を与えることができる。セルの内部体積の多くを活性材料と電解質に利用できるようにするために、集電体の延長部の体積を最小に保つことが望ましい。
FeS2カソードの好ましい製造方法は、高揮発性有機溶媒中の活性材料混合物材料のスラリー(例えばトリクロロエチレン)を、アルミニウム箔のシートの両側にロール・コートし、コーティングを乾燥させて溶剤を除去し、コーティングされた箔をカレンダ加工してコーティングを圧縮し、コーティングされた箔を所望の幅にスリット形成し、スリット形成されたカソード材料のストリップを所望の長さに切断することである。セパレータを絶縁破壊する恐れを最小にするために、小さい粒子サイズを有するカソード材料を用いることが望ましい。例えば、FeS2は、使用の前に230メッシュ(63μm)スクリーンに通してふるいにかけられることが好ましい。100μm以下のコーティング厚さが一般的である。
【0029】
さらに別の実施形態においては、それを組み込んだ電気化学セルに有益な特性を与えるカソード又は正極が開示される。カソードは、メディア・ミルのようなウェット・ミル法か、又は、ジェット・ミルのような非機械的ミル装置を用いるドライミル法によって製造された所定の平均粒径を有するFeS2粒子を含む。減少した平均粒径のFeS2粒子を用いて作成された電気化学セルは、セル・サイズに関係なく、あらゆる所与の放電深度において増加したセル電圧を呈する。より小さいFeS2粒子はまた、集電体上のカソード材料のコーティングをより薄くすることができ、例えば、約10μmほどの薄さのコーティングを用いることができる。
本発明の一実施形態においては、カソードは、好ましくはメディア・ミルを用いるウェット・ミル法によって製造された、好ましくは天然の、小粒径のFeS2粒子を含む。メディア・ミルはまた、当該技術分野ではボール・ミル、バスケット・ミル、ビード・ミル、サンド・ミル、ロータリ−タンブリング・ミキサーなどとも呼ばれており、ウェット・ミル法においてはミル・メディアを用いることがある。ウェット・ミル・ステップは、カソード又は正極の構成中にイン・ラインで行われて、風化又は酸化、並びに、危険な乾燥ダスト黄鉄鉱の発火を実質的になくすことが好ましい。本発明のウェット・ミル・プロセスを用いることによって、上記のふるい分け作業をなくすことができる。
【0030】
ウェット・ミル法においては、FeS2及び湿潤剤を含有するカソード電気化学活性材料混合物が形成される。プロセスのこの時点で、FeS2は、20μmより大きい平均粒径を有する。これらに限られるものではないが、バインダ、導電性材料、添加剤などのような上記の活性又は不活性材料のいずれもまた、必要であれば、活性材料混合物に用いることができる。一実施形態においては、カソード活性材料混合物成分は、適切な容器内で組み合わされ、任意に、しかし好ましくは混合される。カソード活性材料混合物は、メディア・ミルの中に計量されて、ミルされる間にFeS2粒子の平均粒径が減少される。メディア・ミル内のカソード活性材料混合物の滞留時間は、所望のFeS2平均粒径範囲をもたらすのに十分なものである。
【0031】
湿潤剤は、スラリーのFeS2又は他の成分がミル・プロセス中に燃焼するのを実質的に防止する、好ましくは低粘度の液体などのいずれかである。好ましい湿潤剤は、湿潤ミル作業の間に用いられる処理条件では通常非引火性の溶剤である。適切な湿潤剤の例には、これらに限られるものではないが、トリクロロエチレン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ブチルグリコールアセテート、ミネラルスピリット、及び水がある。湿潤剤は、カソードの作成に用いられるバインダと少なくとも適合し、好ましくはそれを実質的に溶解することができるように選択される。湿潤剤の量は、変えることができ、通常は、約0.1ccから約5ccの範囲であり、好ましくは、カソード活性材料混合物の固形分1グラム当たり約0.5ccである。
カソード活性材料スラリー混合物は、ミル装置に移され、所望のFeS2平均粒径が達成されるまで適切な流速及び回転rpmでミルされる。好ましい実施形態においてはメディア・ミルが用いられる。メディア・ミルは、典型的には、ミルされる組成物の成分の粒径を減少させるために、回転ディスク及び/又はロータ、並びに、粉砕媒体に取り付けられたシャフトを備える。粉砕メディアは、実質的に球形、円筒形などとすることができ、約0.2mmから約30mm、望ましくは約0.5mmから約10mm、好ましくは約1.2mmから約1.7mmの範囲の平均直径をもつ球形が好ましい。円筒形の高さ範囲は、約1mmから約20mmであり、約5mmから約15mmが好ましい。これらに限られるものではないが、ソーダライム、ジルコニア−シリカ、酸化アルミナ、イットリア安定化ジルコニアシリカ、クロムスチール、ケイ酸ジルコニウム、セリウム安定化ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、及び炭化タングステンを含む、多くのタイプのメディアを用いることができる。適切な粉砕メディアは、Glass、ER120、Zirstar and ZirmilとしてSaint−Gobain of Worcester,Maと、アルミナ、スチール及びカーバイドとしてGlenn Mill of Cliffton,NJと、Zirconox and ZircosilとしてJyoti Ceramic Industries of Satpur,Nashik,Indiaといった供給業者から入手可能である。適切なメディア・ミルは、カリフォルニア州フラートン所在のMorehouse−COWLESから入手可能である。
【0032】
カソード活性材料スラリー混合物は、粉砕メディアと好ましくはシャフトが取り付けられた回転可能ロータを含むメディア・ミルのミル・チャンバに移される。メディアは、スラリーの中でミル・チャンバ壁の方に比較的高速で加速されて、スラリー混合物粒子に衝突し、剪断し、そのサイズを減少させる。ミルされたスラリー混合物は、その後、FeS2粒子の所望の平均粒径が達成された後で、さらなる処理のためにメディア・ミルからカソードの中に排出される。
本発明のウェット・ミル法を用いる処理の後で、FeS2粒子は、約1μmから約19μmまで、望ましくは約2μmから約17μm又は約18μmまで、及び好ましくは約5μm又は約10μmから約15μmまでの平均粒径を有する。FeS2粒子はまた、それに対して行われたメディア・ミル・プロセスに起因する狭い粒径分布を有する。
ウェット・ミルされた活性カソード材料混合物は、その後、前述のアルミニウム箔のようなシート上にロール・コートされ、湿潤剤を除去するために乾燥される。次に、コーティングを圧縮して滑らかな表面をもたらすために、コートされた箔ラミネートがカレンダ加工され、コートされた箔が、ここで説明されるような電気化学セルの組立体に用いるために、所望の幅及び長さにスリット形成される。
【0033】
本発明のさらなる実施形態においては、カソードは、非機械的ミル装置、好ましくはジェット・ミルによって得られる所定の平均粒径範囲の、好ましくは天然の、FeS2粒子を含む。「非機械的ミル装置」という用語は、破壊、チッピング、分割などによって材料の粒径を減少させるために2つ又はそれ以上のミル面間の圧力又は接触を用いない装置のことをいう。機械的ミル装置には、これらに限られるものではないが、ロール・ミル、造粒ミル、ボール・ミル、メディア・ミル、ビード・ミル、及びハンマー・ミルがある。非機械的ミル装置は、典型的には、移動ミル部品を用いることなく、粒子間の及び/又は粒子とミル装置の単一の面との間の衝突を用いてサイズを減少させるのではなく、FeS2粒子の平均粒径を減少させる。
【0034】
ジェット・ミルは、典型的には中央チャンバを含み、その中に、空気、蒸気又はガスのような流体が、音波に近い、音波又は超音波粉砕ストリームを生じさせるノズル又はジェットを通して導入される。粉砕メディアは用いられない。FeS2粒子を含む供給材料粒子は、ジェット・ミル内の高速粉砕ストリームの中に供給され又は注入される。二硫化鉄粒子又は他の粒子自体間の高速衝突、或いはミル面との衝突の結果として、サイズが減少する。ジェット・ミルは、大き過ぎる粒子を再循環させ、粒子衝突の発生及び効果を増強させるように設計される。FeS2粒子のサイズが減少するので、それらは、排出ポートの方に移動し、そこから、カソードを形成するのに用いられる活性材料混合物に用いるために収集される。好ましい実施形態においては、FeS2のジェット・ミルは、FeS2粒子の発火又は燃焼を防止するために、窒素、アルゴンなどのようなガスを用いる不活性雰囲気内で行われ、窒素が最も好ましい。ミル面上でこすれるFeS2粒子の摩擦によって、及び、少なくともスロットリング時のジュエル−トンプソン効果に起因する、ミル内で起こる衝突から、熱が発生するが、ミルの間の正味の温度増加はないと報告されている。生成物の温度は、ミルに供給される流体の温度に実質的に等しい。ジェット・ミルは、ニュージャージー州モーズタウン所在のJet Pulverizer Company、マサチューセッツ州ハノーバー所在のSturtevant、並びに、ペンシルバニア州テルフォード所在のFluid Energyから入手可能である。
【0035】
本発明の非機械的又はジェット・ミル法を用いる処理の後で、FeS2粒子は、約1μmから約19μmまで、望ましくは約1.5μmから約10μm又は約15μmまで、好ましくは約2μmから約6μmまでの平均粒径を有する。ジェット・ミルされたFeS2粒子は、全粒子の80%が約1.0μmから約15μmまでの間、好ましくは約1.0μmから約10μmの間である粒径分布を有する。粒径分布は、粒子の凝集を防止するために試験の間に音波が用いられる、前述のMicrotrac Honeywell Particle Size Analyzer X−100を用いて測定された。
【0036】
FeS2粒子の平均粒径をここで定められた範囲内に減少させるために用いられる本発明のミル・プロセスは、例えば、改善された低温バッテリ性能、アルミニウム基板へのカソード活性材料混合物の改善された付着、活性材料混合物の小さい粒径に起因するポリマー・セパレータ・インシュレータ・フィルムへの低い損傷、セル放電時にリチウムイオンを受け入れるための増加した表面積をもつ、より多くの黄鉄鉱粒子によってもたらされる改善されたカソード効率、定電力装置用途においてセルがより低電流で作動できるようにする、減少したアノード分極からの改善されたセル作動電圧、及び、電流分布をその界面表面積にわたってより一様に適用することができる、反対側のリチウム・アノードにおけるより効率の良い一様な放電を含む、幾つかの利点を与えることを示している。
【0037】
ウェット・ミルされたFeS2粒子又はジェット・ミルされたFeS2粒子を用いて作成されたFR6型電気化学セルは、200mAの定格で連続的に1ボルトまで放電したときに少なくとも3,000ミリアンペア−時(mAh)、並びに、室温で1アンペアの定格で連続的に1ボルトまで放電したときに少なくとも2,700mAh又は好ましくは少なくとも2,800mAhの放電容量を与えることができる。したがって、本発明のセルは、低定格用途と高定格用途との両方について優れた結果を与える。
【0038】
本発明において開示されるジェット・ミルされたFeS2粒子を用いるFR6電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、1.05ボルトまで、通常は少なくとも300分、望ましくは少なくとも320分、好ましくは少なくとも325分、最も好ましくは少なくとも330又は340分の放電時間を有することも見出されている。本発明で指定された範囲内の平均粒径を有するジェット・ミルされたFeS2粒子を含むFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、少なくとも180分、望ましくは少なくとも240分、好ましくは少なくとも270分にわたって、

の電圧を維持する。DSC手順は、1500mWで第1パルスを2秒間、その後650mWで第2パルスを28秒間というように、2つのパルスを用いて電気化学セルをサイクルする。パルス・シーケンスは10回繰り返され、その後55分間の休止期間がある。以後、パルス・シーケンス及び休止期間は、所定の電圧まで繰り返される。さらに、ウェット・ミルされたFeS2粒子を含むFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、少なくとも180分、望ましくは少なくとも210分、好ましくは少なくとも230分にわたって、

の電圧を維持する。ウェット・ミルされたFeS2粒子を用いるFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、1.05ボルトまで通常少なくとも300分、好ましくは少なくとも320分の放電時間を有する。測定は室温で行われた。
【0039】
ウェット・ミル又はジェット・ミルのような本発明のミル法から得られる比較的小さい平均粒径のFeS2粒子を用いて作成されたFR6電気化学セルは、図5に示されたように、約22マイクロメートルより大きい又はそれに等しい平均粒径を有するFeS2粒子を含む従来技術のセルと比べたときに、種々の放電深度割合において減少されたアノード電圧値を与える。50%放電深度において、本発明の範囲内の平均粒径のFeS2粒子を有する電気化学セルについてのアノード電圧は、190ミリボルトより低い、望ましくは170ミリボルトより低い、好ましくは100ミリボルトより低い、最も好ましくは約60ミリボルトより低い。25%放電深度において、アノード電圧は、140ミリボルトより低い、望ましくは120ミリボルトより低い、好ましくは75ミリボルトより低い。測定値を得るために、セルは、英国ファーンバラ所在のSolartron Analyticalから入手可能なSolartron 1470を用いて放電された。電流は、電流密度が約5mA/cm2となるように選択された。セルは、1アンペアで2分間、及び、0アンペアで5分間サイクルされた。セルは、セル缶底部を除去し、この場合、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.1:27.6:0.20重量%)の溶媒ブレンド中に溶媒(9.1重量%)リチウムヨウ素が0.75モル/リットルである、電解質の入っているビーカーの中にセルをつるすことによって参照された。バイコール・チップを有するシリンジ・バレル内の純リチウム金属ストリップである参照電極が、セルの横にずらして配置された。システムは、放電前に約30分間にわたって平衡化された。測定は室温で行われた。
【0040】
さらなる実施形態において、本発明のセルのカソードに用いられるFeS2は、セルに用いられる前に少なくとも所定の最小pHを有する。或いは、FeS2のpHを少なくとも所定の最小レベルまで上昇させるために、pH上昇添加剤がFeS2に加えられる。天然のFeS2は、一般に採掘産物である。出所、ロット、取り扱い、及びFeS2を処理するのに用いられた処理装置などに応じて、FeS2は、種々の量の種々の天然に生じる又はもしかすると供給元によって加えられる不純物を含有することがある。こうした不純物には、これらに限られるものではないが、FeS2の数ppbから数pptまでの範囲の量のAg、Al、As、Ba、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Ga、Hg、K、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、Pb、Se、Si、Sn、Sr、Te、Ti、Tl、V、Zn及びZrのような元素と、FeS2100部あたり約10部より少ない石英とを含む鉱物又は他の天然に生じる化合物がある。不純物の量及び種類、並びに、風化又はFeS2が大気に露出される度合い及び浮遊選鉱の使用のようなFeS2鉱石の処理条件といった他の要因が、FeS2の固有pHに寄与すると考えられえる。風化を防止し、FeS2の処理とカソード製造における使用との間の貯蔵期間を最小にするのに適した方法でFeS2を保管することが望ましい。
【0041】
少なくとも最小のpH値を有する(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物を電気化学バッテリ・セルのカソードに組み入れることは、内部短絡を実質的に防止し、又は内部短絡の頻度及び深刻さを低減することが、予期せず発見された。少なくとも最小のpH値の(a)FeS2又は(b)FeS2とpH上昇添加剤との混合物の使用は、セル、特にFeS2中に存在するルイス酸のような不純物の溶解性を低くする、したがってアノードとカソードをブリッジ形に接続することがあるデンドライトを形成する可能性を低くすることによって、内部短絡を防止し又は実質的に防止すると考えられる。
或いは、pH上昇添加剤は、電解質のようなセルの他の内部構成要素中に含めることができるが、添加剤はカソードに含めることが好ましい。
或る実施形態においては、pH上昇添加剤は、pH値を少なくとも所定の最小値に調整するのに有効な量で任意に添加される。pH上昇添加剤は、FeS2のpHを上昇させることができる塩基又は少なくとも弱塩基であることが好ましい。一般に、塩基がより強くなると、必要とされる添加剤がより少なくなる。一実施形態において、pH上昇添加剤は、1つ又はそれ以上の元素周期表のグループIIA元素、酸捕集剤、又は、オーバーベース金属、例えば、カルシウムスルホン酸塩、脂環式エポキシド、有機アミン、アミノアルコール、又はそれらの組み合わせのようなpH調整剤を含む。pH上昇添加剤のクラスは、酸化物、水酸化物、及びステアリン酸塩を含む。
【0042】
適切なグループIIA元素添加剤を含有するpH上昇添加剤の例には、これらに限られるものではないが、酸化カルシウム(CaO)、ステアリン酸カルシウム(Ca(C183522)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)がある。pH上昇添加剤、したがって本発明のカソード及び電気化学セルは、水酸化カルシウムとリチウム炭酸塩との組み合わせを含有しない。
一実施形態においてpH上昇添加剤として用いられるオーバーベース・スルホン酸カルシウムは、以下の化学式を有し、

式中、Rは12−20炭素単位の脂肪族鎖であり、nは20以上である。構造体の炭酸カルシウム部分は、FeS2のpHを修正するのに寄与すると考えられる。オーバーベース・スルホン酸カルシウムは、オランダ、ヘーレンフェーン所在のEfka AdditivesからEFKA(登録商標)6950として、並びに、コネチカット州ノーウォーク所在のKing IndustriesからK−STAY(登録商標)501として入手可能である。
【0043】
pH上昇添加剤として用いられる適切な有機アミンには、これらに限られるものではないが、ジエチルアミン及びトリエチルアミンがある。
pH上昇添加剤として用いられる適切な脂環式エポキシの例には、これらに限られるものではないが、酸化ブチレン、及びダイズ油エポキシドがある。
pH上昇添加剤として適切なアミノアルコールには、これらに限られるものではないが、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、及び、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールがある。
【0044】
FeS2のpH値を少なくとも所定の最小値まで上昇させるのに用いられるpH上昇添加剤の有効な量は、これらに限られるものではないが、FeS2の固有pH値、FeS2及びpH上昇添加剤混合物の目標pH値、及びFeS2のpHを調整する際の特定のpH上昇添加剤の有効性を含む多くの要因によって変化することがある。
例えば、FeS2が3.5のpHを有することが測定された場合には、理論計算は、pHを7.0に上昇させるために90ppmの酸化カルシウムが必要とされることを示す。2.5のpHを有する二硫化鉄は、理論上、pHを7.0に上昇させるために900ppmの酸化カルシウムを必要とする。上記の値は次式を用いて計算された。pH=−log[H+]、ここで[H+]は、水懸濁液(FeS2自体ではない)中のプロトン濃度である。前述のようなpH測定のために、示されたようにFeS2の固有pHを測定するために、5gのFeS2が50mLの水の中に懸濁される。これは、10の「測定希釈」比(mL溶液/g黄鉄鉱)を与える。この例においては、pHを上昇させるために酸化カルシウムが用いられた。式

によれば、2モルの酸が1モルの酸化カルシウムと反応する。これは、0.5の化学量論比を与える。pH上昇添加剤、この例では酸化カルシウムの量は、次式を用いて計算される。ppm pH上昇添加剤=[H+](測定希釈比)(化学量論比)(FW)1000。CaOのFW(式量)は56.08である。したがって、理論上必要な酸化カルシウムの量は、次式から計算される。ppm CaO=2.8×105[H+]。
【0045】
デンドライトの形成、したがって電気化学バッテリ・セルの内部短絡を妨げ又は防止するために、単独で又はpH上昇添加剤と組み合わせて用いられる、20μm以上の平均粒径を有するFeS2は、セルに用いられる前に、一般に4.0から約14.0まで、望ましくは5.0又は6.0から12.0まで、好ましくは6.5又は6.9から9.0までのpH値を有する。FeS2が、ここで説明される粒径減少ミル法を用いて得られた、説明された約1μmから約19μmまで、約1.5μmから約10μm又は約15μmまで、又は約2μmから約6μmまでのFeS2のような、19μm以下の平均粒径を有するときには、FeS2又はFeS2とpH上昇添加剤のpH値は、一般に、4.0又は5.0から約14.0まで、望ましくは5.3から12.0まで、好ましくは5.6から9.0までである。大量のpH上昇添加剤を用いて達成された比較的高いpH値は、カソード中の活性材料含有量を減少させ、電気化学バッテリ・セルの性能に影響を及ぼすことがある。したがって、pH値は、バッテリ特性のバランスを取るために細密に監視されるべきである。
【0046】
pH調整されたFeS2を含有するカソードは、ウェット法又はドライ法を用いて用意され、ウェット法が好ましい。ドライ法という用語は、カソード活性材料混合物成分が乾燥形態でFeS2と混合される方法のことをいう。乾燥混合物は、その後、モールド、又はバッテリ製造の当業者には公知の他の技術を用いてカソードに形成される。上記で言及されたウェット法は、活性材料混合物成分が少なくとも1つの湿潤剤、例えば有機溶媒のような液体を含む方法のことをいう。
いずれの方法においても、FeS2の供給源が得られ、上記のようにpHが求められる。固有pH値が、しかるべきFeS2平均粒径についての少なくとも所定の最小レベルである場合には、カソードは、FeS2を用いて用意される。前述のように、20μmより大きい平均粒径を有するFeS2が、供給業者から得られる。FeS2のpHが最小値より低い場合には、少なくとも要求された最小値のFeS2とpH上昇添加剤の混合物の計算されたpHを与えるのに十分な量の1つ又はそれ以上のpH上昇添加剤がFeS2と組み合わされる。FeS2とpH上昇添加剤の混合物は、その後、カソードを形成するのに用いられる。
【0047】
一実施形態においては、前述のように、固有pHをもつFeS2、任意には、所定の最小値の計算されたpHをもつFeS2とpH上昇添加剤の混合物を含むことに加えて、活性材料混合物は、付加的な活性材料、又は、バインダ、導電性材料又は他の添加剤のような他の材料を含むことができる。その後、望ましい活性材料混合物をカソード基板に適用してカソードを形成する。ウェット・カソード形成法が用いられる場合には、好ましくは揮発性有機溶媒中の、活性材料混合物のスラリーが、カソード基板の一方の側又は好ましくは両側にロール・コートされる。その後、コーティングが乾燥されて、溶媒又は他の湿潤剤が除去される。コーティングされた基板は、コーティングを圧縮するためにカレンダ加工され、その後、所望の幅にスリット形成され、所望の長さに切断される。
好ましい実施形態においては、前述のように1μmから19μmまで又はその範囲内の平均粒径を有し、そしてさらに、電気化学バッテリ・セルのカソードにおいて少なくとも最小の所定のpHを有するFeS2を用いることが望ましい。
【0048】
カソードを用意するための好ましい実施形態は、20μmより大きい平均粒径をもつFeS2を得ることで始まる。比較的大きい粒径のFeS2の固有pHが求められる。FeS2の固有pHが所定レベルより低い場合には、少なくとも最小の所定レベルのFeS2とpH上昇添加剤の混合物の計算されたpH値を与えるのに有効な量の、湿潤剤、FeS2、任意にpH上昇添加剤を含むスラリーが形成される。次に、平均FeS2粒径を1から19μmまでの間に又はそれらの間の範囲に減少させるために、スラリーがここで説明されるミルなどによって処理される。ミルされたスラリーがカソード基板に適用されてカソードが形成される。カソードは、後のステップにおいて乾燥され、説明されるように任意にさらに処理される。
ここで説明されるように、少なくとも所定の最小pHを有するFeS2(任意にpH上昇添加剤)を含有するカソードは、リチウムを含むアノードと組み合わされ、また、アノードとカソードとの間に通常位置決めされるセパレータが、セル・ハウジング内に配置される。非水性電解質がセルに加えられ、アノード、カソード、セパレータ及び電解質がセル・ハウジング内にシールされる。
【0049】
カソードは、セルの正端子に電気的に接続される。これは、図1に示されるような薄い金属ストリップ又はばねの形態である場合が多い導線を用いて達成される。導線は、ニッケルめっきされたステンレス・スチールから形成される場合が多い。
セパレータは、イオン透過性及び非導電性の薄い微孔性膜である。セパレータの孔の中に少なくとも幾つかの電解質を保持することができる。セパレータは、電極を互いから電気的に絶縁するために、アノードとカソードの隣接する面の間に配置される。セパレータの一部はまた、内部短絡を防止するために、セル端子と電気接触する他の構成要素を絶縁する。セパレータの縁は、アノードとカソードが、それらが互いに完全に位置合わせされない場合であっても電気的に接触しないことを保証するために、少なくとも1つの電極の縁を越えて延びる場合が多い。しかしながら、電極を越えて延びるセパレータの量を最小にすることが望ましい。
【0050】
良好なハイパワー放電性能を与えるために、セパレータは、引用によりここに組み入れられる、1994年3月1日に発行された米国特許第5,290,414号に開示された特徴(少なくとも0.005μmの最小寸法と、5μm四方より大きくない最大寸法と、30から70パーセントの範囲内の多孔性と、2ohm・cm2から15ohm・cm2までの面積抵抗率、及び2.5より小さいねじれをもつ孔)を有することが望ましい。適切なセパレータ材料はまた、内部短絡を招く断裂、分割、穴又は他のギャップが生じることなく、セル製造プロセス、並びに、セル放電中にセパレータにかかる圧力に耐えるのに十分に強いものであるべきである。
セル内の全セパレータ体積を最小にするために、セパレータは、できるだけ薄くすべきであるが、内部短絡を防止するためにカソードとアノードとの間に物理的障壁が与えられるように、少なくとも約1μm又はそれ以上であるべきである。すなわち、セパレータの厚さ範囲は、約1μmから約50μmまで、望ましくは約5μmから約25μmまで、及び好ましくは約10μmから約16μm又は約20μmまでである。要求される厚さは、セパレータ材料の強度と、電気的絶縁を与えるセパレータにかかる力の大きさ及び位置に、或る程度依存する。
【0051】
厚さの他にも多くの特徴がセパレータ強度に影響を及ぼす。その1つが引張応力である。高い引張応力が望ましく、1立方センチメートル当たり好ましくは少なくとも800、より好ましくは少なくとも1000キログラムの力(kgf/cm2)である。微孔性セパレータを形成するのに典型的に用いられる製造プロセスにより、引張応力は、典型的には、機械方向(MD)の方が横方向(TD)よりも大きい。要求される最小引張応力は、セルの直径に或る程度依存する。例えば、FR6型セルについては、好ましい引張応力は、機械方向に少なくとも1500kgf/cm2であり、横方向に少なくとも1200kgf/cm2であり、FR03型セルについては、好ましい引張応力は、機械方向に少なくとも1300kgf/cm2であり、横方向に少なくとも1000kgf/cm2である。引張応力が低すぎる場合には、製造及び内部セル力によって断裂又は他の穴が生じる。一般に、引張応力が高くなると、強度の観点からは良くなる。しかしながら、引張応力が高すぎると、セパレータの他の望ましい特性に悪影響を及ぼす。
【0052】
引張応力はまた、kgf/cmで表され、これは、kgf/cm2の引張応力にcmのセパレータ厚さを掛けることから計算される。kgf/cmの引張応力はまた、セパレータ強度に関連する望ましい特性を識別するのに有用である。したがって、セパレータは、機械方向及び横方向の両方において、少なくとも1.0kgf/cm、好ましくは少なくとも1.5kgf/cm、より好ましくは少なくとも1.75kgf/cmの引張応力を有することが望ましい。約0.45インチ(11.4mm)より大きい直径をもつセルについては、少なくとも2.0kgf/cmの引張応力が最も好ましい。
セパレータ強度の別の指標は、その絶縁破壊電圧である。平均絶縁破壊電圧は、好ましくは少なくとも2000ボルトであり、より好ましくは少なくとも2200ボルトである。約0.45インチ(11.4mm)より大きい直径をもつ円筒形セルについては、平均絶縁破壊電圧は、最も好ましくは少なくとも2400ボルトである。絶縁破壊電圧が低すぎる場合には、セル製造中の電気試験(例えば、電解質を加える前に電極組立体に印加された高い電圧の保持)によって、欠陥のある又は損傷したセパレータを備えたセルを確実に取り除くことは困難である。絶縁破壊は、他の望ましいセパレータ特性を依然として達成しながら、できるだけ高いことが望ましい。
【0053】
平均有効孔径は、セパレータ強度の別のより重要な指標である。セパレータを通るイオン輸送を最大にするために大きな孔が望ましいが、孔が大き過ぎる場合には、セパレータは、穿孔や電極間の短絡が生じやすくなる。好ましい最大有効孔径は、0.08μmから0.40μmであり、より好ましくは0.20μm以下である。
BET比表面積もまた、孔径、並びに、孔の数に関連する。一般に、セル放電性能は、セパレータが高い比表面積をもつときに良好となる傾向があるが、セパレータ強度は低くなる傾向がある。BET比表面積は、40m2/g以下となることが望ましいが、少なくとも15m2/gとなることも望ましく、少なくとも15m2/g、より好ましくは少なくとも25m2/gとなることも望ましい。
良好な高定格及びハイパワーセル放電性能のためには、低い面積抵抗率が望ましい。より薄いセパレータは、より低い抵抗をもつ傾向があるが、セパレータはまた十分に強くすべきであり、それはどれだけセパレータを薄くできるかを制限する。面積抵抗率は、好ましくは4.3ohm・cm2以下であり、より好ましくは4.0ohm・cm2以下であり、最も好ましくは3.5ohm・cm2以下である。
【0054】
リチウム・バッテリに用いられるセパレータ膜は、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、超高分子量ポリエチレンから形成される場合が多く、ポリエチレンが好ましい。セパレータは、二軸配向微孔性膜の単一層とすることができ、或いは、直交する方向に所望の引張強度を与えるように2つ又はそれ以上の層を互いにラミネートすることができる。コストを最小にするには単一層が好ましい。適切な単一層二軸配向ポリエチレン微孔性セパレータは、Tonen Chemical Corp.から入手可能であり、米国ニューヨーク州マケドニア所在のEXXON Mobile Chemical Co.から入手可能である。Setela F20DHIグレード・セパレータは、20μmの公称厚さを有し、Setela 16MMSグレード・セパレータは、16μmの公称厚さを有する。
【0055】
アノード、カソード及びセパレータ・ストリップは、電極組立体において互いに組み合わされる。電極組立体は、巻きつけが完了したときに電極組立体から取り出されるマンドレルの周りに、カソード、セパレータ及びアノードのストリップを交互に巻きつけることによって形成された、図1に示されるような螺旋巻き設計とすることができる。少なくとも1層のセパレータ、及び/又は、少なくとも1層の電気絶縁膜(例えばポリプロピレン)が、通常、電極組立体の外側の周りにラップされる。これは、多くの目的を果たす、すなわち、組立体を互いに保持する一助となり、組立体の幅又は直径を所望の寸法に調節するのに用いられる。セパレータ又は他の外側フィルム層の最外端は、1枚の接着テープで又は熱シールによって止めつけられてもよい。
螺旋巻きされるのではなく、電極組立体は、電極ストリップとセパレータ・ストリップを互いに折り畳むことによって形成されてもよい。ストリップがそれらの長さに沿って位置合わせされ、次いでアコーディオン状に折り畳まれてもよく、或いは、アノードと一方の電極ストリップがカソードと他方の電極ストリップに対して垂直に置かれ、電極が一方が他方を横切るように(直角配向に)交互に折り畳まれてもよく、いずれの場合においても交互のアノード層及びカソード層のスタックを形成する。
【0056】
電極組立体は、ハウジング・コンテナの中に挿入される。螺旋巻き電極組立体の場合には、円筒形コンテナと角柱形コンテナのいずれにおいても、電極の主要面はコンテナの側壁に垂直である(言い換えれば、電極組立体の中央コアは、セルの縦軸に平行である)。折り畳まれた電極組立体は、典型的には角柱形セルに用いられる。アコーディオン折りの電極組立体の場合には、組立体は、電極層のスタックの両端部における平らな電極表面がコンテナの両側に隣接するように配向される。これらの構成においては、アノードの主要面の全面積の大部分は、セパレータを通じて、カソードの主要面の全面積の大部分に隣接し、電極の主要面の最外部は、コンテナの側壁に隣接する。このようにして、アノードとカソードの組み合わされた厚さの増加に起因する電極組立体の膨張が、コンテナ側壁によって制約される。
【0057】
本発明のバッテリ・セルにおいては、汚染物質として非常に少量の(例えば、使用される電解質塩に応じて、約500ppm以下の)水のみを含む非水性電解質が用いられる。リチウム及び活性カソード材料と共に用いるのに適したいずれの非水性電解質が用いられてもよい。電解質は、有機溶媒中に溶解された1つ又はそれ以上の電解質塩を含有する。Li/FeS2セルについては、適切な塩の例には、臭化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、及びヨウ化リチウムがあり、適切な有機溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、ギ酸メチル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、3,5−ジメチルイソキサゾール、n,n−ジメチルホルムアミド及びエーテルのうちの1つ又はそれ以上を含む。塩/溶媒の組み合わせは、所望の温度範囲にわたってセル放電要件を満たすのに十分な電解質伝導度及び電気伝導度を与える。エーテルは、それらの一般的に低い粘度、良好な湿潤可能性、良好な低温放電性能、及び良好な高定格放電性能のために望ましい場合が多い。これは、エーテルはMnO2カソードの場合、より安定であり、より高いエーテルレベルを用いることができるため、Li/FeS2セルにおいては特にそうである。適切なエーテルには、これらに限られるものではないが、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジ(メトキシエチル)エーテル、トリグリーム、テトラグリーム、及びジエチルエーテルのような非環式エーテル、並びに、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、及び、3−メチル−2−オキサゾリジノンのような環式エーテルがある。
【0058】
したがって、電解質塩と有機溶媒との種々の組み合わせを用いて電気化学セルのための電解質を形成することができる。電解質塩のモル濃度は、電解質の導電特性を修正するために変えることができる。有機溶媒中に溶解された1つ又はそれ以上の電解質塩を含む適切な非水性電解質の例には、これらに限られるものではないが、2.5mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で24.80:60.40:0.20%)の溶媒ブレンド中に1モル/リットルの溶媒濃度のリチウムトリフルオロメタンスルホネート(重量比で14.60%)、3.46mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で23.10:56.30:0.20%)の溶媒ブレンド中に1.5モル/リットルの溶媒濃度のリチウムトリフルオロメタンスルホネート(重量比で20.40%)、及び、7.02mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で63.10:27.60:0.20%)の溶媒ブレンド中に0.75モル/リットルの溶媒濃度のヨウ化リチウム(重量比で9.10%)がある。本発明の電気化学セルに用いられる電解質は、通常約2.0mS/cmより大きい、望ましくは約2.5又は約3.0mS/cmより大きい、好ましくは約4、約6又は約7mS/cmより大きい導電率を有する。
指定のアノード、カソード及び電解質の組成及び量は、所望のセル製造特性、性能特性及び保管特性を与えるように調節することができる。
【0059】
セルは、いずれかの適切な方法を用いて閉鎖しシールすることができる。こうした方法は、これらに限られるものではないが、クリンピング、再絞りすること、コレットにはめること、及びこれらの組み合わせを含む。例えば、図1のセルについては、電極と絶縁体コーンが挿入され、ガスケット及びカバー組立体(セル・カバー、接触ばね及び通気ブッシングを含む)が缶の開放端に配置された後で、缶の中にビードが形成される。セルは、ガスケット及びカバー組立体がビードに対して押し下げられた状態で、ビードにおいて支持される。ビードの上の缶の上部の直径は、ガスケット及びカバー組立体をセル内の所定位置に保持するために、セグメント化されたコレットを用いて減少される。電解質が、通気ブッシング及びカバーの孔を通してセルの中に供給された後で、セル・カバーの孔をシールするために、通気ボールがブッシングの中に挿入される。PTC装置及び端子カバーが、セル・カバー上のセルの上に置かれ、ガスケット、カバー組立体、PTC装置及び端子カバーを保持するために缶の上縁部がクリンピング・ダイを用いて内向きに折り曲げられ、ガスケットによって缶の開放端のシールが完成される。
【0060】
上記の説明は、特に、スイス、ジュネーブの国際電気標準会議によって発行された国際標準IEC60086−1及びIEC60086−2において定義されるように、FR6及びFR03型のような円筒形Li/FeS2セルに関連する。しかしながら、本発明はまた、他のセル・サイズ及び形状に、並びに、他の電極組立体、ハウジング、シール及び圧力逃がし弁設計をもつセルに適合させることができる。
本発明の特徴及びその利点は、以下の実施例においてさらに説明され、特に指定のない限り、実験は室温で行われた。
【実施例1】
【0061】
螺旋巻き電極組立体を備えたFR6型円筒形Li/FeS2セルを、約0.373から約0.455cm3/cmの範囲にわたる、種々の界面電極組立体高さセンチメートル当たりの電極組立体気孔体積で作成した。気孔体積は、カソード上にコーティングされた活性材料混合物内の気孔の体積を調節することによって変化させられた。これは、混合物の組成、厚さ及びパッキングの種々の組み合わせを用いてなされた。全てのセルにおいて用いられるセパレータ材料は、結晶性が高く、一軸方向に配向された、25μmの公称厚さをもつ微孔性ポリプロピレン材料であった。
【実施例2】
【0062】
実施例1からのセルのサンプルを試験のために用意した。単位高さ当たり所与の気孔体積をもつ各々のグループについて、幾つかのセルは放電しないままであり、幾つかのセルは50%放電した(50%の定格容量を引き出すのに要求される時間にわたって200mAの定格で放電された)。放電されていないセル及び50%放電したセルは、衝撃試験で試験され、試験されたセルの各々の外面温度は、試験の間、及び試験後6時間にわたって観測した。
衝撃試験においては、サンプル・セルが平らな面上に置かれ、直径15.8mmのバーがサンプルの中央を横切って置かれ、9.1kgのおもりが61±2.5cmの高さからサンプル上に落下される。サンプル・セルは、平らな面に平行な、かつ、セルの中央を横切って位置する直径15.8mmのバーの縦軸に垂直なその縦軸に、衝撃が加えられる。各々のサンプルには1回だけ衝撃が加えられる。
非放電セルのいずれも、170℃を超える外面温度をもたなかった。外面温度が170℃を超えた50%放電セルの割合をプロットした。プロット点の最善の曲線のあてはめが図2に示されており、単位高さ当たりの気孔体積(cm3/cm)がx軸上に、そして、170℃を超える外面温度を有するセルの割合がy軸上に示される。
【0063】
衝撃試験結果は、電極組立体の気孔体積の減少と共に、170℃を超える外面温度をもつセルの割合が増加することを示す。図2のグラフから、界面高さの約0.45cm3/cmの気孔体積をもつセルの0%が170℃を越える外面温度をもつと予想され、約0.37cm3/cmの気孔体積をもつセルの60%以上が170℃を越えると予想される。高い外面温度は、セパレータへの損傷に寄与し、結果として熱を発生する内部短絡を生じる。
異なるレベルの放電後の両方のFR6Li/FeS2セルの後続の試験は、放電が進むのに伴って大きくなるFR6セルの全電極体積の純増加によって、セルが50%放電したときには、電極ストリップの曲がり及び座屈と、電極組立体の中央コアのつぶれが生じる。対照的に、螺旋巻き電極を備えたLi/MnO2セルの同様の試験は、50%放電時に電極組立体の識別できる変化はほとんどないことを示した。活性材料の体積と放電反応生成物の体積との間の差が、螺旋巻き電極組立体のLi/FeS2セル及びLi/MnO2セルにおける放電の影響の違いについての説明を与える。
【実施例3】
【0064】
各々が異なる材料から形成されたセパレータを備える、FR6セルの4つのロットを作成した。セパレータ材料の説明が表1の中で与えられ、後述する方法によって求められた典型的なセパレータ特性が表2においてまとめられる。ロットAのために用いられるセパレータ材料は、実施例1のセルに用いられたものと同じである。各々のセルは、約1.60gの電解質を含み、その電解質は、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.05:27.63:0.18重量%)の溶媒ブレンド中に9.14重量%のLiI塩からなるものであった。
【0065】

【0066】

【0067】
ロットA−Dの全てについて同じセル設計が用いられた。セル設計は、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルに比べて、より多い量の活性材料、カソード混合物中のより高濃度のFeS2、及び、増加した電極界面表面積、並びに、より低いアノード:カソード全入力容量比を有し、結果としてセル界面容量が22%増加した。
【実施例4】
【0068】
実施例3の各々のロットからのセルを50%放電し、次いで衝撃試験で試験した。試験で170℃を超えるセルの割合は、ロットAについては20%、ロットBについては80%、ロットC及びDについては0%であった。
界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルに比べて界面容量が22%増加することによって、衝撃試験で170℃を超えるセルの割合は、0%から20%まで増加した。ロットAからのセルは、未反応の活性材料の体積に比べて、放電反応生成物の体積の純増加に適応するための減少した量の気孔スペースを有し、実施例2において観測されたLi/FeS2電極組立体に対する放電の悪影響を増加させる。
ロットAに比べて減少したロットBのセパレータ材料厚さは、衝撃試験で170℃を超えるセルの割合の20%から80%へのさらなる増加に寄与した。
ロットC及びロットDのセパレータ材料の厚さは、ロットBのセパレータの厚さと同じであったが、ロットC又はロットDのいずれにおいてもセルは存在しなかった。ロットC及びロットDにおいてカソード内の気孔体積及びセパレータ材料厚さが両方とも減少するにもかかわらず、ロットC及びロットDについての結果は、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルについての結果に匹敵するものであった。
【実施例5】
【0069】
比較的低定格及び高定格の放電試験でFR6セルの実性能を比較するために、FR6セルの3つのロットを用いた。第1ロットは実施例3からのロットDであった。ロットDの特徴は図3にまとめられている。列挙された値は公称値であり、典型的な製造許容誤差内で変化することがある。
ロットE及びFのセルは、従来技術に従って作成した。ロットFのセルは、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1と同様のものであった。ロットE及びFの特徴は表3に示されている。ロットEにおいては、ロットFと同じセパレータ材料が用いられたが、ロットEにおいては、カソード混合物の組成が変更され、セル界面容量がロットFに比べて18%増加した。ロットDにおけるより薄い(厚さ20μm)セパレータの使用は、ロットFに比べてセル界面容量を22%増加させた。
【0070】



【実施例6】
【0071】
各々のロットD、E及びFからのセルを、200mAで連続的に1.0ボルトまで、及び、1000mAで連続的に1.0ボルトまで放電させた。表4は結果を比較するものである。
【0072】

【0073】
以下のセパレータ材料特性は、対応する方法に従って求められる。特に指定のない限り、全ての開示された特性は、室温(20−25℃)で求められる。
・引張応力は、ASTM D882−02に従ってInstron Model 1123 Universal Testerを用いて求められた。サンプルは、0.50インチ(1.27cm)×1.75インチ(4.45cm)に切断された。最初のジョー分離は1インチ(2.54cm)であり、歪み速度は2インチ(5.08cm)毎分であった。引張応力は、かけられた力を最初の断面積(かけられた力に垂直なサンプルの幅にサンプルの厚さをかけたもの)で割ったものとして計算された。
・最大有効孔径は、Scanning Electron Microscopeを用いて倍率30,000倍で作成され4μm×3μmの面積をカバーするイメージ上で測定された。各々のセパレータ・サンプルについて、イメージは両方の主要面からなるものであった。各々のイメージ上で、孔壁内に適合する最大円直径(個々の孔の最大有効直径)を求めるために最大孔が測定された。サンプルの最大有効孔径は、各側における2つの最大孔の最大有効孔径を平均することによって計算された(すなわち、4つの個別の孔の平均)。
・多孔率は、(1)セパレータ・サンプルを切断し、(2)サンプルを計量し、(3)サンプルの長さ、幅及び厚さを測定し、(4)質量と測定値から密度を計算し、(5)計算された密度を、セパレータの製造業者によって提供されるセパレータのポリマー樹脂の理論密度で割り、(6)割られたものに100を掛け、(7)100からこの値を引くことによって求められた。
【0074】
・絶縁破壊電圧は、セパレータ・サンプルを、それぞれ直径2cmであって平らな円形先端部を有する2つのステンレス・スチール・ピンの間に配置し、Quadtech Model Sentry 20ハイポット・テスターを用いてピンの両端に増加する電圧を印加し、表示された電圧(電流がサンプルを通ってアーク放電するときの電圧)を記録することによって求められた。
・引張伸び(破壊までの伸び)は、ASTM D882−02に従ってInstron Model 1123 Universal Testerを用いて求められた。サンプルは、0.50インチ(1.27cm)×1.75インチ(4.45cm)に切断された。最初のジョー分離は1インチ(2.54cm)であり、歪み速度は2インチ(5.08cm)毎分であった。引張伸びは、破壊時のサンプル長さから最初のサンプル長さを引き、残りを最初のサンプル長さで割り、割られたものに100%を掛けることによって計算された。
【0075】
・面積抵抗率(ASR)は、抵抗測定を行うために、米国オハイオ州イエロースプリングス所在のYellow Springs InstrumentからのModel 34 Conductance−Resistance Meterを用いて、2つのプラチナ電極間の電解質中に吊り下げられたセパレータ・サンプルについて求められた。使用された電解質溶液は、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.05:27.63:0.18重量%)の溶媒ブレンド中に9.14重量%のLiI塩であった。全ての試験は、水が1ppmより少なく、酸素が100ppmより少ない雰囲気内で行われた。セパレータの1.77cm2の面積が露出された状態でセパレータ・サンプルを保持するように設計された非導電性のサンプル・ホルダを、サンプルを保持するためのホルダの部分が、0.259cm離れた2つのプラチナ電極間の中間に位置するように、電解質溶液の中に浸した。電極間の抵抗を測定した。ホルダを電解質から取り出し、セパレータ・サンプルをホルダの中に挿入し、サンプルが完全に電解質で溢れてサンプル内に気泡が閉じ込められないように、同じ設定レベルまで、ホルダを電解質溶液の中にゆっくりと下ろした。抵抗を測定した。ASRは、次式を用いて計算した。
ASR=A(R2−R1+ρL/A)
式中、Aは、セパレータ・サンプルの露出面積であり、R2は、膜が存在するときの抵抗値であり、R1は、膜が存在しないときの抵抗値であり、Lは、セパレータ・サンプルの厚さであり、ρは、使用された電解質の導電率である。
【0076】
・比表面積は、米国ジョージア州ノークロス所在のMicromeritics Instrument CorporationからのTriStarガス吸着分析器を用いて、BET法によって求められた。0.1gから0.2gのセパレータ・サンプルを1cm2より小さい小片に切断してサンプル・ホルダに嵌め、窒素ストリームの下で70℃で1時間脱気し、吸着ガスとして窒素を用いて孔径分布分析を行い、フル吸着/脱着等温線を収集した。
【実施例7】
【0077】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルは、22μmのFeS2粒子(対照)、75μmの粗いサイズのFeS2、5から10μmの間のメディア・ミルされたFeS2(計算された推定値)、及び、4.9μmのジェット・ミルされたFeS2といった種々の平均粒径のFeS2粒子を用いて構成された。セルは、FeS2平均粒径と、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDのセルと同一であった。図3a及び図3bは、それぞれ、従来の(ミルされていない)及びメディア・ミルされたカソード・スラリー混合物を用いて作成されコーティングされたカソードの断面のSEM写真である。
【0078】
各々のセルの放電時間は、前述の1500/650mW 2/28s×10毎時 DSC試験を用いて試験された。結果を表5a及び5bに示す。メディア・ミルされたFeS2含有セルを用いて2組の試験が行われた。
【0079】

【0080】

【0081】
表5a及び表5bから明らかなように、メディア・ミルされたFeS2粒子及びジェット・ミルされたFeS2粒子を用いて用意されたセルは、従来技術の平均粒径22μmの対照FeS2粒子及び平均粒径75μmの粗サイズFeS2粒子と比べたときに、1.05ボルトまでの実質的に長い放電時間を与えることが示されている。メディア・ミルされたFeS2含有セルはまた、

ボルトの供給時間の平均69.6%にわたって

のカット電圧を維持し、一方、対照は、こうした電圧を供給時間の平均58.9%にわたってのみ維持した。同様に、ジェット・ミルされたFeS2含有セルは、

ボルトの放電時間の85.7%にわたって

のカット電圧を維持した。
【実施例8】
【0082】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルを作成した。FeS2平均粒径、電解質組成、及びセパレータ厚さを、表6に記載されたように変化させた。セルの残りの特徴は、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと同一であった。セル1−4は従来技術のセルを表す。
【0083】

【0084】
各々のセルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験を用いて試験された。電解質−セパレータ抵抗とFeS2粒子サイズの影響が図4に示されている。セル群のプロットは、セパレータ厚さの減少、比較的小さい平均粒径のFeS2粒子の使用、並びに、電解質の種類が、カソード効率に個々に影響を及ぼすことを示している。図4においては、最も低いラインは、セル1−4の実験結果の最良適合ラインのプロットを表す。同様に、残りのラインは、上昇順に、それぞれセル5−8、9−12及び13−16の結果を表す。
【実施例9】
【0085】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルのアノード電圧を、セルの寿命にわたって測定した。セルは、第1セルが平均粒径22μmのFeS2から構成され、第2セルが5μmから10μmの間の平均粒径(計算された推定値)のメディア・ミルされたFeS2粒子を使用し、第3セルが平均粒径4.9μmのジェット・ミルされたFeS2粒子を使用したことと、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと実質的に同一の構成であった。各々のセルのアノード電圧を、図5に示すように放電深度の関数としてプロットした。放電深度の関数としてのフル・セル電圧は、図6にプロットされる。試験手順は上記に記載されている。
【0086】
50%放電深度において、アノード電圧は40ミリボルト減少し、平均粒径は22μmから5.2μmに減少する。平均FeS2粒径を22μmから4.9μmに減少させることにより、アノード電圧が150ミリボルト減少した。L92サイズの電気化学セルを同様の方法で作成し試験した。ここで開示された平均粒径範囲のFeS2を用いることにより、セルのサイズに関係なく、あらゆる所定の放電深度において全てのセル電圧が増加することが分かった。
【実施例10】
【0087】
FeS2平均粒径は、標準雰囲気条件において高いセル性能に強く影響するが、低温ではさらに大きな影響を有する。以下の表7は、5μmから10μmまでの間の平均粒径(計算された推定値)のメディア・ミルされたカソードと平均粒径22μmの対照FeS2との2つの異なる研究と、温度の関数としてのセル性能を比較するものである。セルは、典型的な及び予想されるプロセス変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと実質的に同じく構成された。試験は、1.05ボルトに予め定められた(1500mW/650mW)、提案された標準模擬DSC−ANSIアプリケーションである。粒径の減少によって、周囲条件において性能が5%又はそれ以上向上するが、−20℃において600%を上回る向上が観測される。
【0088】

【実施例11】
【0089】
2つのロットのLi/FeS2セルが組み立てられ、一方(ロットG)はロットD(表2及び表3)と実質的に同一であり、他方(ロットH)はカソード混合物の組成以外はロットGと同じであった。両方のロットに用いられたFeS2は、供給業者から受け取ったときに3.9の固有pHを有し、その後、直径1.2mmから1.7mmまでのZirconoxメディアを用いるベンチトップ・メディアミルを用いてメディア・ミルされて、双峰粒径分布をもたらし、米国ニューヨーク州ベッドフォードヒルズ所在のDispersion Technology,Inc.からのModel DT1200分光計を用いる音響減衰によって求められたときに、一方のモードは約2μmの平均粒径を有し、同様の分布の他方のモードは約10μmの平均粒径を有した。ロットHに用いられたカソード混合物は、91.3重量%のFeS2、1.40重量%のアセチレンブラック、4.00重量%のグラファイト、2.00重量%のバインダ、0.3重量%のPTFE、0.3重量%のシリカ、及び0.7重量%のCaOを含有した。これは、CaOがFeS2の一部と置き換えられ、CaOの量がFeS2のpHを3.9から約12.4に上昇させるのに十分なものとなるように計算された量であるという点で、ロットGに用いられたカソード混合物とは異なるものであった。電極組立体が巻かれ、缶に挿入された後で、FeS2の風化の悪影響を拡大するために、セルへの電解質の追加は3日間遅らせられた。
【0090】
セルが電解質で満たされ、シールされ、予備放電された後で、両方のロットからのセルが、71℃で1週間貯蔵され、その後、OCVについて試験された。OCV分布を表8に示す。ロットGのセルの30%が1.80ボルトを下回るOCVを有し、一方、ロットHの全てのセルは約1.80ボルトを上回った。
【0091】

【0092】
したがって、少なくとも所定の最小pH値を有するFeS2を含む本発明のセルは、所定の最小pH値を下回る固有pHを有する対照配合物と比べたときに、望ましい開放電流電圧値を有し、したがって、内部短絡がないことが示された。
【0093】
当業者であれば、開示された概念の精神から逸脱することなく、本発明に種々の修正及び改善を加えることができることが分かるであろう。与えられる保護の範囲は、請求項によって、及び、法によって許可される解釈の幅によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の電気化学バッテリ・セルの実施形態を示す図である。
【図2】界面高さ内の電極組立体の単位高さ当たりの気孔の体積の関数としての部分的に放電されたFR6セルについての衝撃試験結果を示すグラフである。
【図3a】従来技術のFeS2粒子を含む正極の一部の、倍率1,000倍のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3b】本発明のメディア・ミル・プロセスを用いて製造されたFeS2粒子を含む正極の一部の、倍率1,000倍のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図4】種々のセパレータ厚さ、FeS2の平均粒径、及び電解質組成物を有する、構成されたFR6タイプのセルのセットについての、セパレータ厚さの関数としてのDSCアプリケーションにおけるカソード効率のプロットである。
【図5】従来技術のFeS2含有電気化学セル、メディア・ミルされたFeS2粒子を含有するセル、及びジェット・ミルされたFeS2粒子を含有するセルについての、放電深度割合の関数としてのアノード電圧のグラフである。
【図6】従来技術のFeS2含有電気化学セル、メディア・ミルされたFeS2粒子を含有するセル、及びジェット・ミルされたFeS2粒子を含有するセルについての、放電深度割合の関数としてのセル電圧のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
(a)セルに用いる前に6.0から14.0までの固有pHを有する二硫化鉄、又は(b)二硫化鉄と、5.0から14.0までの計算されたpHを混合物に与えるのに有効な量で存在するpH上昇添加剤との混合物、のいずれかを含む正極と、
前記ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物と、
を含むことを特徴とするセル。
【請求項2】
(a)前記二硫化鉄の固有pH、又は(b)前記二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物の計算されたpHが、6.5から14.0までであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項3】
(a)前記二硫化鉄の固有pH、又は(b)前記二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物の計算されたpHが、6.9から14.0までであることを特徴とする請求項2に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項4】
前記pH上昇添加剤が存在し、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項5】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項4に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項6】
前記二硫化鉄が、1μmから19μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項7】
前記二硫化鉄が、1.5μmから15μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項2に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項8】
前記二硫化鉄が、20μmから30μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項3に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項9】
前記二硫化鉄が正極活性材料の80%より多くを構成し、前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項10】
前記二硫化鉄が正極活性材料の95%より多くを構成し、隣接する前記負極及び前記正極間の電極ギャップが15μmから45μmまでであることを特徴とする請求項6に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項11】
前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成し、前記正極が、集電体基板と、前記基板の各側におけるコーティングとを含み、前記コーティングが前記活性材料を含み、前記各々のコーティングが10μmから100μmまでの厚さを有し、前記セパレータが5μmから25μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項10に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項12】
前記pH上昇添加剤が存在し、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項11に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項13】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項12に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項14】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
(a)セルに用いる前に5.0から14.0までの固有pHを有し、1μmから19μmまでの平均粒径を有する二硫化鉄、又は(b)前記二硫化鉄と、5.0から14.0までの計算されたpHを混合物に与えるのに有効な量で存在するpH上昇添加剤との混合物、のいずれかを含む正極と、
前記ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物と、
を含むことを特徴とするセル。
【請求項15】
(a)前記二硫化鉄の固有pH、又は(b)前記二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物の計算されたpHが、5.3から14.0までであることを特徴とする請求項14に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項16】
(a)前記二硫化鉄の固有pH、又は(b)前記二硫化鉄とpH上昇添加剤との混合物の計算されたpHが、5.6から14.0までであることを特徴とする請求項15に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項17】
前記pH上昇添加剤が存在し、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項14に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項18】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項17に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項19】
前記二硫化鉄が正極活性材料の80%より多くを構成し、前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成することを特徴とする請求項16に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項20】
前記二硫化鉄が正極活性材料の95%より多くを構成し、隣接する前記負極及び前記正極間の電極ギャップが15μmから45μmまでであることを特徴とする請求項19に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項21】
前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成し、前記正極が、集電体基板と、前記基板の各側におけるコーティングとを含み、前記コーティングが前記活性材料を含み、前記各々のコーティングが10μmから100μmまでの厚さを有し、前記セパレータが1μmから50μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項20に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項22】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項21に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項23】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
二硫化鉄と、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含み、pH上昇添加剤として水酸化カルシウムが存在する場合には炭酸リチウムを含有しない正極と、
前記ハウジング内に配置された溶媒中に溶解された少なくとも1つの塩を含む非水性電解質混合物と、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
を含むセル。
【請求項24】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項25】
前記二硫化鉄が正極活性材料の80%より多くを構成し、前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成することを特徴とする請求項24に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項26】
前記負極、前記正極及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成し、前記正極が、集電体基板と、前記基板の各側におけるコーティングとを含み、前記コーティングが前記活性材料を含み、前記各々のコーティングが10μmから100μmまでの厚さを有し、前記セパレータが5μmから25μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項25に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項27】
前記二硫化鉄と前記pH上昇添加剤が、5.0から約14.0までの計算されたpHを有することを特徴とする請求項26に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項28】
前記二硫化鉄と前記pH上昇添加剤が、6.9から約14.0までの計算されたpHを有することを特徴とする請求項27に記載の電気化学バッテリ・セル。
【請求項29】
カソードを製造する方法であって、
二硫化鉄を獲得し、
前記二硫化鉄のpHを測定し、
(a)前記二硫化鉄のpHが6.0から14.0までであり、平均二硫化鉄粒径が20μmから30μmまでである場合に、前記二硫化鉄を用いてカソードを形成し、
(b)前記二硫化鉄のpHが5.0から14.0までであり、平均二硫化鉄粒径が1μmから19μmまでである場合に、前記二硫化鉄を用いてカソードを形成する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記(a)における前記二硫化鉄のpHが6.9から14.0までであり、前記(b)における前記二硫化鉄のpHが5.6から14.0までであることを特徴とする請求項29に記載のカソード製造方法。
【請求項31】
カソードを製造する方法であって、
(c)前記二硫化鉄のpHが6.0より低く、平均二硫化鉄粒径が20μmから30μmまでである場合に、前記二硫化鉄と、6.0から14.0までの二硫化鉄及びpH上昇添加剤の計算されたpHを与えるのに有効な量のpH上昇添加剤とを用いてカソードを形成し、
(d)前記二硫化鉄のpHが5.0より低く、平均二硫化鉄粒径が1μmから19μmまでである場合に、前記二硫化鉄と、5.0から14.0までの二硫化鉄及びpH上昇添加剤の計算されたpHを与えるのに有効な量のpH上昇添加剤とを用いてカソードを形成する、
ステップを含むことを特徴とする請求項29に記載のカソード製造方法。
【請求項32】
前記pH上昇添加剤が存在し、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項31に記載のカソード製造方法。
【請求項33】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項32に記載のカソード製造方法。
【請求項34】
前記スラリーをミルして前記二硫化鉄の平均粒径を1μmから19μmまでに減少させるステップと、前記ミルされたスラリーをカソード基板に適用してカソードを形成するステップと、前記カソードを乾燥させるステップとをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載のカソード製造方法。
【請求項35】
電気化学バッテリ・セルを製造する方法であって、
請求項23の方法に記載の前記カソードを、リチウムを含むアノード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に配置されるセパレータと組み合わせ、
非水性電解質を加え、
前記アノード、前記カソード、前記セパレータ及び前記電解質をセル・ハウジング内にシールする、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
カソードを製造する方法であって、
二硫化鉄を獲得し、
前記二硫化鉄及びpH上昇添加剤の計算されたpHが4.0から14.0までとなるようにするのに有効な量のpH上昇添加剤を前記二硫化鉄に添加し、
前記二硫化鉄及び前記pH上昇添加剤をカソード基板に適用する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
前記pH上昇添加剤が存在し、グループIIA元素、有機アミン、脂環式エポキシド、アミノアルコール又はオーバーベースの金属スルホン酸塩、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項36に記載のカソード製造方法。
【請求項38】
前記pH上昇添加剤が、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、酸化ブチレン、ダイズ油エポキシド、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オーバーベース・カルシウムスルホン酸塩、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項37に記載のカソード製造方法。
【請求項39】
湿潤剤、前記二硫化鉄、及び前記pH上昇添加剤を含むスラリーを形成するステップと、前記スラリーを前記カソード基板に適用するステップと、前記基板を乾燥させるステップとをさらに含むことを特徴とする請求項38に記載のカソード製造方法。
【請求項40】
前記pH上昇添加剤の量が、5.6から14.0までの前記二硫化鉄及び前記pH上昇添加剤の計算されたpHを与えるのに有効な量であり、前記プロセスが、前記スラリーをミルして前記二硫化鉄の平均粒径を1μmから19μmまでに減少させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項39に記載のカソード製造方法。
【請求項41】
電気化学バッテリ・セルを製造する方法であって、
請求項36の方法に記載の前記カソードを、リチウムを含むアノード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に配置されるセパレータと組み合わせ、
非水性電解質を加え、
前記アノード、前記カソード、前記セパレータ及び前記電解質をセル・ハウジング内にシールする、
ステップを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525966(P2008−525966A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548362(P2007−548362)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045984
【国際公開番号】WO2006/069011
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】