説明

高昇圧比昇圧形DC−DCコンバータ

【課題】 簡単な構成でありながら高い昇圧比を得ることができるDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】 スイッチS1オフ時には、コンデンサC1、C2がダイオードD1、D2を通して互いに並列に接続され、よく知られた昇圧形コンバータと等価となる。スイッチS1がオンすれば、D1、D2がコンデンサ電圧で逆バイアスされるためオフし、2つのコンデンサ電圧はスイッチS1を通して直列に接続されるため、(vC1+vC2)の電圧で負荷の平滑コンデンサC0が充電される。本発明の回路はこの動作モードに特徴があり、従来の昇圧形コンバータに比較し、同じスイッチの通流率に対してより高い電圧が出力に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成でありながら高い昇圧比を得ることができるDC-DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコン等の普及に伴い、数KVA容量のUPS(無停電電源装置)の普及がはかられており、また、環境対策の面から分散電源の普及が期待される。エネルギー蓄積要素としてバッテリを用いる場合、そのセル数を減らすことがコスト低減の有効な手段とされる。しかし、バッテリセルの減少は直流電圧を低下させ、電力系統と接続するためには300[V]程度まで昇圧する高昇圧比コンバータが必要となる。また、燃料電池を用いた分散電源を採用する場合においては、12〜50[V]の電圧を300[V]まで昇圧できる広い昇圧比幅を持つコンバータの開発が必要とされる。
【0003】
直流電源の電圧よりも高い直流出力を得るためには、スイッチングを用いた昇圧形DC-DCコンバータが広く使用されている。図1に示す従来の昇圧形DC-DCコンバータは、スイッチング素子S1で直流電源E1と昇圧用リアクトルL1を短絡(オン)と開放(オフ)を高速で繰り返すことにより、ダイオードD1を通して負荷R0の両端に電源電圧より高い電圧を得ている。このとき、より高い電圧を得るにはスイッチングの周期に対するオン時間の割合(通流率)を大きく取る必要がある。しかし、オン時間を長くし過ぎると入力電流のピーク値が大きくなり、効率が低下するという難点をもっており、実用的な昇圧比は2〜3倍に制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の昇圧形DC-DCコンバータが持つ問題点を解決した、高昇圧比DC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る昇圧形DC-DCコンバータは、
a)直流電源に直列に接続された第1コイルL1及びスイッチS1と、
b)一対の対向辺にそれぞれコンデンサC1、C2が、他の一対の対向辺にそれぞれダイオードD1、D2が一方向ループを成すように配置された四端子回路であって、対向頂点がスイッチS1の両端に接続された回路と、
c)四端子回路の他の対向頂点に直列に接続された第2コイルL2及びコンデンサC0と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明におけるコンバータ回路によれば、従来回路に比べてより高い昇圧比(5〜6倍)を比較的簡単な回路で得ることができる。このため、一般需要家に設置されるUPSや燃料電池発電用パワーコンディショナ等に応用できる経済的な高昇圧比コンバータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のコンバータ回路の一実施例を図2に示す。スイッチS1オフ時には、コンデンサC1、C2がダイオードD1、D2を通して互いに並列に接続され、従来の昇圧形コンバータと等価となる。スイッチS1がオンすれば、D1、D2がコンデンサ電圧で逆バイアスされるためオフし、2つのコンデンサ電圧はスイッチS1を通して直列に接続されるため、(vC1+vC2)の電圧で負荷の平滑コンデンサC0が充電される。本発明の回路はこの動作モードに特徴があり、従来の昇圧形コンバータに比較し、同じスイッチの通流率に対してより高い電圧が出力に得られる。
【0008】
スイッチS1の通流率をαとしたとき、図2に示した回路の出力電圧E0と電源電圧E1の関係は次式で与えられる。
【0009】
【数1】

これに対し、図1に示した従来の昇圧形コンバータの出力電圧E0と電源電圧E1の関係は次式で与えられる。
【0010】
【数2】

【実施例1】
【0011】
図3は(1)式の理論出力と実測値を比較したものである。この図より、測定値は理論値にほぼ等しいことが分かる。また、比較のため(2)式に示した従来形コンバータの理論出力の値もこのグラフにプロットしている。
【0012】
たとえば、α=0.5、0.6、0.66としたとき、図2の提案回路の出力電圧はE0=3E1、4E1、5E1であるのに対し、図1の従来形はE0=2E1、2.5E1、3E1となる。逆に、従来形で出力電圧E0=5E1を得るためにはα=0.8となり、実用的な範囲を超えてしまう。
【0013】
提案型コンバータ回路の基本動作を確かめるため、以下に示すようなパラメータで図2の回路を構成し、実験した。
E1=50[V]、L1=L2=700[uH]、C1=C2=10[uF]、C0=1000[uF]、fs=16[kHz]、P0=300[W]
図4は負荷を抵抗とした場合の、α=1/3、 0.5、 0.6に対する提案型コンバータの効率を示している。また、この時の出力電圧をプロットしたものを図5に示す。多くの昇圧コンバータは入力電流が大きいとスイッチング損失が増加する傾向にある。図4に示す効率はαの増加とともに低下している。これは、メインスイッチの損失がαとともに増加するためで、最適な素子の選択を行えば改善されることが期待できる。また、図5の出力電圧は、αの値が小さい場合には理論値とほぼ一致しているが、αが大きな値となった場合は電圧降下を無視できなくなる。図6にα=1/3、 出力電力220[W]で動作している回路の電流、電圧波形を示す。入力電流および出力電圧のリプルは、同じ通流率で運転する従来の昇圧形コンバータ回路と比較して小さくなることは、理論的にも実験的にも明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の高昇圧比DC/DCコンバータ回路は、同じ通流率で運転する従来の昇圧形コンバータ回路と比較して、より高い出力電圧を供給できるとともに、より良好な入出力リプル特性を持つ事が確認できた。したがって、この特徴を生かした各種電源装置、たとえば一般需要家に設置されるUPSや燃料電池発電用パワーコンディショナ等に応用できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の昇圧形DC-DCコンバータ
【図2】本発明の一実施例の高昇圧比DC-DCコンバータの基本回路図
【図3】本実施例の高昇圧比DC/DCコンバータの出力特性
【図4】本実施例の回路の効率特性
【図5】本実施例の回路の出力電圧特性
【図6】本実施例の回路の電圧・電流波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)直流電源に直列に接続された第1コイルL1及びスイッチS1と、
b)一対の対向辺にそれぞれコンデンサC1、C2が、他の一対の対向辺にそれぞれダイオードD1、D2が前記電源に関して順方向に配置された四端子回路であって、対向頂点がスイッチS1の両端に接続された回路と、
c)四端子回路の他の対向頂点に直列に接続された第2コイルL2及びコンデンサC0と、
を備えることを特徴とする昇圧形DC-DCコンバータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−271101(P2006−271101A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85247(P2005−85247)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「平成16年度電気関係学会四国支部連合大会講演論文集」、平成16年9月25日、電気関係学会四国支部連合会発行
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】