説明

高減衰ゴム組成物及び制振部材

【課題】多環芳香族炭化水素を含む可能性のあるアロマ系オイルを使用せず、環境負荷を低減しながら、弾性率の温度依存性が小さく、大変形時においても高い制振性能を発揮することができる高減衰ゴム組成物及び該高減衰ゴム組成物からなる制振部材を提供する。
【解決手段】基材ゴム100質量部に対して、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤が10質量部以上30質量部以下、カーボンブラックが5質量部以上30質量部未満、シリカが100質量部以上180質量部以下、該シリカ100質量部に対してシラン化合物が5質量部以上25質量部以下で配合され、かつ、多環芳香族炭化水素を含有するオイルが配合されていない高減衰ゴム組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高減衰ゴム組成物及び該高減衰ゴム組成物からなる制振部材に関し、特に、建造物等の大変形時における振動減衰性能および弾性率の環境依存性の改善および環境負荷を低減するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅、ビル等の建築物、橋梁等において、地震、交通振動、風揺れ等で生じる振動エネルギーを吸収する装置(制振装置)が用いられている。制振装置のなかでも高減衰ゴムを制振部材として用いる制振装置は、優れた振動減衰性能を有しながら、比較的安価で、風揺れのような微小振動に対しても制振効果を発揮できるという利点があるため、広く用いられている。
【0003】
しかし、ゴムのような粘弾性体は、低温時には剛性が高くなるが高温時に剛性が低くなり、気温に応じて剛性や弾性率が変化し、安定した制振性能が得られにくいという問題がある。
そこで、本出願人は、特開平7−41603号公報(特許文献1)において、主鎖にC−C結合を有する基材ゴム100重量部に対してシリカを30〜200重量部添加し、該シリカに対してシラン化合物を5〜50重量%配合し混練したシリカ配合高減衰ゴム組成物を提供している。該ゴム組成物から、高減衰性を発揮し、かつ、弾性率の温度依存性の少ない高減衰ゴムを得ることができる。
さらに、本出願人は、特開平10−81787号公報(特許文献2)において、基材ゴムに対して所定量のシリカ及びシラン化合物を含有するゴム組成物を加硫成形した制振部材を提供している。該制振部材は、ケーブル長の長い長大橋においても十分な制振性能を発揮すると共に、温度依存性が小さい特性を有する。
【0004】
【特許文献1】特開平7−41603号公報
【特許文献2】特開平10−81787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の制振部材は、弾性率の温度依存性が小さく、制振性能に優れるものである。しかし、高減衰ゴムの厚みの2倍を超える大きな剪断変形を加えられる大地震の発生時、台風などの強風時の風揺れ、さらに、高層階では高振動が発生しやすい高層ビルの制振装置に用いられる場合には、制振性能や弾性率については十分とは言い難く改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2を含めて、制振ゴム組成物の作製時に使用されているアロマ系オイルは、含有している多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon:PAH)が人体や環境に悪影響を及ぼす恐れがあることが、近年、認識されつつある。このため、欧州においては、PAHを含む有害可塑剤の使用を全面中止した規則も成立しており、タイヤ等においては、アロマ系オイルの使用量低減の自主規制が進められている。
しかし、多量のシリカやカーボンブラック等の補強剤を配合した場合、軟化剤として混練性を向上させる効果が高いアロマ系オイルの添加は従来、必須とされ、特許文献2の配合ではアロマ系オイルが用いられている。アロマ系オイルを蒸留して多環芳香族炭化水素を除去する検討も行われているが、複数回の蒸留を行う必要があり、コスト高になり実際的ではない。
このように、アロマ系オイルを配合しなくても、良好な混練性が得られ、かつ、高い制振性能が得られる高減衰ゴム組成物が求められている。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、多環芳香族炭化水素を含む可能性のあるアロマ系オイルを使用せず、環境負荷を低減しながら、弾性率の温度依存性が小さく、地震や台風時等に大変形の発生時においても高い制振性能を発揮することができる高減衰ゴム組成物及び該高減衰ゴム組成物からなる制振部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の発明として、基材ゴム100質量部に対して、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤が10質量部以上30質量部以下、カーボンブラックが5質量部以上30質量部未満、シリカが100質量部以上180質量部以下、該シリカ100質量部に対してシラン化合物が5質量部以上25質量部以下で配合され、かつ、多環芳香族炭化水素を含有するオイルが配合されていないことを特徴とする高減衰ゴム組成物を提供している。
【0009】
本発明では、前記PAHを含むアロマ系オイルの代替として、軟化剤として、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上を用いている。よって、アロマ系オイルを軟化剤として用いる場合に問題となる人体や環境への悪影響を低減あるいは除去することができる。
また、基材ゴムに対して、前記軟化剤、カーボンブラック、シリカ及びシラン化合物を前記配合比で配合することで、高減衰ゴム組成物の混練時に、粘着性を低下させて基材ゴムへの混練性を向上させ、得られた混練物の密閉式混練機からの取り出しも容易とし、加工性を向上させている。
さらに、前記高減衰ゴム組成物から製造された高減衰ゴムからなる制振部材は、弾性率の温度依存性が小さく、かつ、大きな剪断変形時における弾性係数に優れ、軟化剤のブリードを大幅に抑制し、耐久使用における物性変化を低減することができる。
以下、各成分について詳細に述べる。
【0010】
前記基材ゴムとして、天然ゴム及び各種合成ゴムを用いることができる。
合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム等を使用することができる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上組合わせて用いてもよい。
なかでも、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることが好ましい。
【0011】
前記軟化剤としては、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上を用いている。前記軟化剤は、液状ゴムとパラフィンオイルのいずれかとすることが好ましく、液状ゴムとすることが最も好ましい。
液状ゴムは、原料ゴムを室温での形状で分類し、液状であって流動性のあるものである点で、前記基材ゴムと区別される。該液状ゴムは、化学反応により鎖延長と架橋が進行し、高分子量の架橋ゴムとすることができる。
前記液状ゴムとしては、硬化して基材ゴムと一体化したゴム成分となりやすい、液状ジエン系ゴムを用いることが好ましい。
液状ジエン系ゴムとしては、液状イソプレンゴム、液状スチレンイソプレンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、液状ブタジエンゴム、液状クロロプレンゴム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組合わせて用いてもよい。
【0012】
なかでも、液状イソプレンゴム、液状スチレンイソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム及び液状アクリロニトリルブタジエンゴムから選択される1種以上の液状ジエン系ゴムを用いることが好ましく、該液状ジエン系ゴムを天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される1種以上の基材ゴムと共に用いることが好ましい。
基材ゴムと液状ゴムをこのような組み合わせで用いると、基材ゴムと液状ゴムの相溶性が良く、均一に混練されるので混練性及び加工性を極めて向上させることができる。また、得られた高減衰ゴム中において液状ゴムが基材ゴムと共に架橋されやすくゴム成分としても働くため、軟化剤のブリードを大幅に低減することができる。
なかでも、基材ゴムとして分子量の大きい天然ゴムを用い、液状ゴムとして液状イソプレンゴムを用いると、低温での減衰性能の温度依存性を極めて小さくすることができ、好ましい。
【0013】
前記パラフィンオイルとしては、公知のパラフィン系プロセスオイルを用いることができる。例えば、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW、ダイアナフレシアP、W、K、Sの各シリーズを挙げることができる。
前記ナフテンオイルとしては、公知のナフテン系オイルを用いることができる。例えば、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルNS、NR、NM、ダイアナフレシアG、F、NR、N、Uの各シリーズを挙げることができる。
このほか、パラフィンオイルとナフテンオイルの混合オイルを用いることもできる。例えば、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルNPが挙げられる。
【0014】
前記液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤は基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下の割合で配合されている。これは基材ゴム100質量部に対して、10質量部未満であると、混練困難となり加工性が低下し、30質量部を超えると軟化剤が多すぎて、得られる高減衰ゴムの剛性が低くなり、制振性能が低下するからである。
【0015】
また、基材ゴム100質量部に対して、カーボンブラックを5質量部以上30質量部未満の割合で配合するとしている。
これは、カーボンブラックが5質量部未満であると、十分な補強効果が得られにくく、30質量部以上であると混練性や成形加工性の低下を招くからである。
カーボンブラックは、基材ゴム100質量部に対して15質量部以上30質量部未満とするのがさらに好ましい。
【0016】
前記カーボンブラックとしては、FEFカーボン、ISAFカーボン、SAFカーボン、HAFカーボン等の一般的なカーボンブラックのほか、高活性カーボンブラックを用いることができる。
【0017】
前記シリカは、減衰性を高め、弾性率の温度依存性を小さくすることができる。
シリカは、前記基材ゴム100質量部に対して100質量部以上180質量部以下の割合で配合されている。好ましくは、120質量部以上150質量部以下である。これは、100質量部未満では大きな剪断変形が付与された場合の減衰性能や弾性率の温度依存性が悪化し、180質量部を超えるとゴムへの混練が困難になるからである。
【0018】
本発明に使用されるシリカは、含水、無水シリカのいずれでもよいが、含水シリカを用いるのが好ましい。シリカの比表面積は100m/g〜400m/gの範囲がよく、好ましくは150m/g〜300m/gの範囲である。
シリカの比表面積は吸着気体として、窒素ガスを用いる気相吸着法(例えば、柴田化学器械工業(株)の迅速表面積測定装置SA−1000)で測定される。比表面積が100m/g未満では、減衰付与効果が少なくなり、400m/gを超えるものは混練性に問題があり、コスト的にも好ましくない。
【0019】
さらに、前記シリカ100質量部に対して5質量部以上25質量部以下のシラン化合物が配合されている。
前記シラン化合物は混練性を向上させる効果があるが、シリカ100質量部に対して5質量部未満の場合は、シリカに対する反応量も少なく、混練性、加工性の改善効果がない。シラン化合物が25質量部を超えると配合量が過剰となり、添加する効果が薄れる。前記配合割合とすると、基材ゴム及びシリカとの親和性に優れる。
シラン化合物の配合量は、好ましくはシリカ100質量部に対して15〜20質量部である。
【0020】
前記シラン化合物としては、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはアルコキシ基、またはハロゲン原子を示し、他は同一または異なって水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
【0021】
前記一般式(1)で表されるシラン化合物において、R〜Rに相当するアルコキシ基としては、C2n+1Oで表される種々の炭素数のものが挙げられる。なかでも、炭素数が1〜2であるメトキシ基、エトキシ基が好ましい。またハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
【0022】
前記アルキル基としては、C2n+1で表される種々の炭素数のものが挙げられるが、炭素数は1〜20程度であるものが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第2級ブチル基、第3級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、o−テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)で表わされるシラン化合物の具体的な例としては、これに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシラン等が挙げられる。
【0024】
本発明の高減衰ゴム組成物は、他の成分においても多環芳香族炭化水素が含まれていないことが好ましい。
多環芳香族炭化水素とは、6角のベンゼン環を2個以上持つ化合物の総称であり、ベンゼン環2個からなるナフタレン、3個からなるアントラセン、4個のベンゾピレン等が代表として挙げられる。
【0025】
本発明の高減衰ゴム組成物には、前述した以外にも加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、シリカ、カーボンブラック以外の補強剤・充填剤、前述した以外の他の軟化剤、可塑剤、粘着性付与剤等の各種の添加剤を添加してもよい。その他、混練時の分散性を向上させるため、分散剤、溶剤などを適宜配合してもよい。
【0026】
前記加硫剤としては、硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が挙げられ、前記加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルルなどのジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素などのチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)などの無機促進剤が挙げられる。
【0027】
前記加硫促進助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸などの脂肪酸や、あるいは亜鉛華などの金属酸化物等を例示できる。加硫遅延剤としては、たとえばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸などの芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミンなどのニトロソ化合物などが例示できる。
前記加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤および加硫遅延剤は、その合計の配合量が、基材ゴム100質量部に対して4〜15質量部程度であるのが好ましい。
【0028】
前記老化防止剤としては、特に限定されないが、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノールなどのフェノール類等が例示できる。
老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して1.5〜5質量部程度が好ましい。
【0029】
前記シリカ、カーボンブラック以外の充填剤としては、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレーなどの無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)などの有機補強剤を使用することができる。
また、前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土などがあげられる。
上記シリカ、カーボンブラック以外の補強剤および/または充填剤を含む場合、その配合量は、基材ゴム100質量部に対して1〜30質量部程度が好ましい。
【0030】
前記液状ゴム、ナフテンオイル、パラフィンオイル以外の他の軟化剤を配合する場合には、多環芳香族炭化水素を含まないものを用いており、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックスなどの植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤が例示できる。
前記液状ゴム以外の軟化剤を含む場合、その配合量は基材ゴム100質量部に対して10〜30質量部程度が好ましい。
【0031】
前記粘着性付与剤としても多環芳香族炭化水素を含まないものを用いることが好ましく、シクロペンタジエン系樹脂等の石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ロジン系樹脂などを単独、あるいは、2種以上混合して用いることができる。なかでも、クマロン・インデン樹脂、シクロペンタジエン系樹脂を用いることが好ましい。
粘着性付与剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5〜50質量部であるのが好ましく、5〜40質量部であることがより好ましい。
【0032】
前記した高減衰ゴム組成物は、各成分を密閉式混練機などを用いて混練した後、該混練機から取り出して押出機に投入して押し出し、これを所要形状に切断し、予備成形した後、金型成形機に充填し、所要温度で加熱して加硫成形して、高減衰ゴムからなる制振部材を製造している。
【0033】
第2の発明として、前記した高減衰ゴム組成物を加硫成形した制振部材からなり、
測定温度0℃及び20℃の動的粘弾性試験において、厚さの50%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq50%)が0.7N/mm以上、等価粘性減衰定数(heq50%)が0.25以上で、かつ、厚さの300%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq300%)が0.3N/mm以上で、等価粘性減衰定数(heq300%)が0.20以上であることを特徴とする制振部材を提供している。
【0034】
制振部材が建造物等に付与する減衰性能は、概ね制振部材の有する剛性(ここでは等価剪断弾性率(Geq))と減衰定数(ここでは等価粘性減衰定数(等価減衰定数)(heq))との積で表現することができる。そのため、等価剪断弾性率(Geq)と等価粘性減衰定数(等価減衰定数)(heq)はいずれも大きい程、好ましい。
0℃と20℃の両方の温度条件において、前記範囲の等価剪断弾性率(Geq)及び等価粘性減衰定数(heq)を有する本発明の制振部材は、環境依存性が小さく、制振性能に優れている。また、厚さの50%の剪断変形時だけでなく、300%の剪断変形時においても制振性能を発揮することができ、良好な制振性能を得ることができる。
【0035】
前記動的粘弾性試験における等価粘性減衰定数(等価減衰定数)(heq)および等価剪断弾性率(Geq=Keq/(S/D))とは、粘弾性材料の剪断変形を生じさせる正弦波加振を行い、その際の履歴ループ(ヒステリシス曲線)を測定し、その結果に基づいて計算している。
図1に基づいて説明すると、heqは下記式(数1)で計算される数値である。
heq=ΔW/2πW (数1)
W:剪断変形の弾性エネルギー(図1において示される2つの三角形の面積。単位はN・mm)
ΔW:剪断変形により吸収するエネルギーの合計(図1において示されるヒステリシス曲線で囲まれた面積。単位はN・mm)
【0036】
Geqは下記式(数2)にて計算される数値である。
Geq=Keq/(S/D)=F/UBe/(S/D)(数2)
F:最大変位を与えるときの荷重(単位はN)
Be:最大変位(単位はmm)
S/D:試験サンプルの形状係数(サンプルの剪断面積/サンプルの剪断隙間,単位はmm)
【0037】
前記制振部材の使用環境が0℃〜20℃であれば、50%剪断変形時において、0℃のときの等価剪断弾性率Geq(t=0℃)と、20℃のときの等価剪断弾性率Geq(t=20℃)の比、Geq(t=0℃)/Geq(t=20℃)≦2.2であることが好ましい。それに加え、300%剪断変形時において、0℃のときの等価剪断弾性率Geq(t=0℃)と、20℃のときの等価剪断弾性率Geq(t=20℃)の比、Geq(t=0℃)/Geq(t=20℃)≦1.6であることが好ましい。
【0038】
前記制振部材は、縦10〜500mm、横10〜500mm、厚さ3〜60mmの直方体形状あるいは直径10〜300mm、厚さ3〜60mmの円柱形状とされ、高層建造物、住宅、橋梁用ケーブル及び橋桁用の制振装置に好適に用いられる。
前記直方体形状あるいは円筒形状とした高減衰ゴムからなる制振部材の対向面を、金属プレートと接着固定した制振ユニットとし、前記金属プレートを建造物や橋桁の被固定部材に固定して用いることが好ましい。
前記金属プレート間に高減衰ゴムからなる制振部材を狭持した制振ユニットは、工場による量産が可能であり、多種多能なタイプの制振装置の部品として用いることができる。
【0039】
接着への信頼性の観点から、前記高減衰ゴム組成物の加硫と同時に、前記金属プレートと加硫接着して、前記制振ユニットを製造することが好ましい。
例えば、次の製造方法で作製することができる。
(1)未加硫の前記高減衰ゴム組成物を所定の形状を有するように押し出した後、切断し、予備成形した状態で所定の型内で加熱して加硫成形すると共に、該プレス加硫と同時に、制振装置への取り付け用の金属プレートとの加硫接着する。
(2)未加硫の高減衰ゴム組成物を所定の型を用いてプレス加硫すると共に、該プレス加硫と同時に、制振装置への取り付け用のプレートと加硫接着する。
【0040】
なお、屋内、屋外の使用に関わらず、高減衰ゴムの耐候劣化を防止するため、その外周面が耐候性に優れた被覆層によって被覆されていてもよい。
前記被覆層を構成する、耐候性に優れた材料としては、パラメチルスチレン−イソブチレン共重合体の臭素化物や、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム等が挙げられる。
被覆層は、未加硫の予備成形体の外周面に、前記材料からなる被覆層用の未加硫のシートを巻きつけておいて、加硫成形と同時に、シート自体の加硫と接着とを行うことで形成すればよい。
【発明の効果】
【0041】
前述したように、本発明の高減衰ゴム組成物は、基材ゴムに、所定量の液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤、カーボンブラック、シリカ、シラン化合物が配合されているので、該組成物から弾性率の温度依存性が小さく、大変形時においても高い制振性能を発揮する高減衰ゴムからなる制振部材を得ることができる。
【0042】
また、軟化剤の配合量が少ないので軟化剤のブリードを抑制することができる。特に、軟化剤として液状ゴムを使用した場合、該液状ゴムは基材ゴムと共に架橋されるので、軟化剤のブリードを大幅に抑制することができる。さらに、従来のような多環芳香族炭化水素を含む可能性のあるアロマ系オイルを使用していないので、環境や人体に与える負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の制振部材は、基材ゴムに、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤と、カーボンブラックと、シリカと、シラン化合物とが配合され、加硫して得られる高減衰ゴム組成物から得られるものである。
【0044】
次に、高減衰ゴム組成物の成分について述べる。
基材ゴム100質量部に対し、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤を10質量部以上30質量部以下の割合で配合している。基材ゴムとしてはジエン系ゴムを用いており、本実施形態では天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムのいずれかを用いている。
また、液状ゴムとしては、液状イソプレンゴム、液状スチレンイソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴムあるいは液状アクリロニトリルブタジエンゴムのいずれかからなる液状ジエンゴムを用いている。
パラフィンオイルとしては、パラフィン系プロセスオイルを用いている。
ナフテンオイルとしては、ナフテン系プロセスオイルを用いている。
本実施形態の高減衰ゴム組成物では、軟化剤としてアロマ系オイルを使用しておらず、軟化剤に多環芳香族炭化水素は含んでいない。
【0045】
カーボンブラックは、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上30質量部未満の割合で配合している。
カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積が約79m/g、DBP吸油量が約101ml/100gのHAFカーボンを用いている。
【0046】
さらに、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上180質量部以下のシリカと、該シリカ100質量部に対して5〜25質量部のシラン化合物を配合している。
シリカとしては、BET比表面積100〜400m/gのものを用い、シラン化合物としてはフェニルトリエトキシシランを用いている。
【0047】
さらに、粘着性付与剤として、石油樹脂を基材ゴム100質量部に対して10〜40質量部配合している。石油樹脂としては、クマロン樹脂とジシクロペンタジエン系石油樹脂を併用しており、質量比で(クマロン樹脂:ジシクロペンタジエン系石油樹脂)=(1:5)〜(5:1)の割合で用いている。
【0048】
加硫剤としては粉末硫黄を用いており、基材ゴム100質量部に対し0.5〜5質量部配合している。
加硫促進剤として、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとテトラブチルチウラムジスルフィドを併用し、各々を基材ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部の割合で配合している。
加硫促進助剤としては酸化亜鉛を基材ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部の割合で配合していると共に、ステアリン酸を基材ゴム100質量部に対して0.3〜5質量部の割合で配合している。
老化防止剤として2−メルカプトベンヅイミダゾール、ポリマライズド2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを基材ゴム100質量部に対して各々を0.5〜5質量部の割合で配合している。
前記高減衰ゴム組成物は、軟化剤のみならず、他の配合する成分についても発がん性や内分泌かく乱性の疑いのある多環芳香族炭化水素を含まないものを用いて製造している。
【0049】
前記成分を配合した高減衰ゴム組成物は、下記の方法で高減衰ゴム部材からなる制振部材として製造している。
まず、ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉式混練機、一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、または熱ロールなどの混練装置を用いて基材ゴム、軟化剤、カーボンブラック、シリカ、シリカ化合物及び他の配合剤を予め混練し、得られた混練物に加硫剤を添加して混練する。
【0050】
前記混練物を120〜180℃で所定時間(10分以上3時間未満)プレス加硫して、成形と加硫を同時に行い、高減衰ゴムからなる制振部材を取得している。
該制振部材は、縦10〜500mm、横10〜500mm、厚さ3〜60mmの直方体形状としている。あるいは直径10〜300mm、厚さ3〜60mmの円柱形状としている。
該高減衰ゴムからなる制振部材を金属プレートに接着剤を用いて接着している。
あるいは、予めブラスト加工等の表面処理を施したアルミ、鉄、ステンレス等の金属プレート2枚に、前記混練物を挟み、プレス加硫と共に加硫接着を行い、高減衰ゴムからなる制振部材に金属プレートが固着された状態として製造している。
【0051】
前記高減衰ゴムからなる制振部材は、測定温度0℃及び20℃の動的粘弾性試験において、前記厚さの50%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq50%)が0.7N/mm以上、等価粘性減衰定数(heq50%)が0.25以上で、かつ、前記厚さの300%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq300%)が0.3N/mm以上で、等価粘性減衰定数(heq300%)が0.20以上であり、温度依存性が小さく、大きな剪断変形時の弾性率に極めて優れたものとしている。
動的粘弾性試験の測定は、後述する実施例に記載の方法で行っている。
【0052】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0053】
(実施例1〜21,比較例1〜14)
表1及び表2に示す配合量の成分、及び、天然ゴムあるいはイソプレンゴム100質量部に対して、下記に示す石油樹脂を35質量部、加硫剤を1.5質量部、加硫促進剤1を1質量部、加硫促進剤2を0.7質量部、亜鉛華を4質量部、ステアリン酸を1質量部計量し、密閉式混練機に投入して70〜200℃に加熱しながら10分〜1時間混練りした。
【0054】
各成分の詳細、及び具体的な製品名は下記のとおりである。
・天然ゴム;SMR−CV60
・イソプレンゴム;日本ゼオン(株)製「Nipol IR2200(商品名)」
・シリカ;日本シリカ(株)製「ニプシルKQ(商品名)」(BET比表面積236m/g)
・シラン化合物;信越化学工業(株)製フェニルトリエトキシシラン「KBE103(商品名)」
・カーボンブラック1;東海カーボン(株)製FEFカーボン「シーストSO(商品名)」(窒素吸着比表面積 42m/g、DBP吸収量 115ml/100g)
・カーボンブラック2;東海カーボン(株)製HAFカーボン「シースト3(商品名)」(窒素吸着比表面積 79m/g、DBP吸収量 101ml/100g)
・液状イソプレンゴム1;クラレ(株)製「クラプレンLIR50(商品名)」(ガラス転移温度 −63℃、分子量47,000)
・液状イソプレンゴム2;クラレ(株)製「クラプレンLIR30(商品名)」(ガラス転移温度 −63℃、分子量 29,000)
・液状スチレンイソプレンゴム;クラレ(株)製「クラプレンLIR310(商品名)」(ガラス転移温度 −63℃、分子量 31,000)
・液状BR(液状ブタジエンゴム);クラレ(株)製「クラプレンLIR300(商品名)」(ガラス転移温度 −95℃、分子量 45,000)
・液状NBR(液状アクリロニトリルブタジエンゴム);日本ゼオン(株)製「Nipol 1312(商品名)」(ガラス転移温度 −40℃(アクリロニトリル量からの推定値))
・液状SBR(液状スチレンブタジエンゴム);サートマー社製
・石油樹脂:丸善化学(株)製ジシクロペンタジエン系石油樹脂「マルカレッツM809A(商品名)」(石油樹脂1)と新日鐵化学(株)製クマロン樹脂「エスクロンG−90(商品名)」」(石油樹脂2)を質量比(石油樹脂1:石油樹脂2)=(10:25)で使用
・パラフィンオイル1;出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)」
・パラフィンオイル2;出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−380(商品名)」
・ナフテンオイル1;出光興産(株)製「ダイアナフレシアN−90(商品名)」
・ナフテンオイル2;出光興産(株)製「ダイアナフレシアN−430(商品名)」
・アロマオイル;出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルAH−16(商品名)」
・加硫剤;鶴見化学工業(株)製5%オイル処理粉末硫黄
・加硫促進剤1;大内新興化学工業(株)製N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド「ノクセラーNS(商品名)」
・加硫促進剤2;大内新興化学工業(株)製テトラブチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTBT(商品名)」
・亜鉛華;三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種(商品名)」
・ステアリン酸;日本油脂(株)製「つばき(商品名)」
・老化防止剤1;大内新興化学工業(株)製2−メルカプトベンヅイミダゾール「ノクラックMB(商品名)」
・老化防止剤2;松原産業(株)製ポリマライズド2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン「アンチオキシダントFR(商品名)」
【0055】
得られた混練物を、130℃〜180℃で10分以上3時間未満プレス加硫成形して高減衰ゴムからなる制振部材を得た。該制振部材は直径25mm、厚さ5mmとした。
前記制振部材110を2枚の金属板111,112に接着し、図2(A)に示す制振ユニット113を得た。
【0056】
前記制振ユニット113を2つ1組として、図2(B)のように測定装置((株)島津製作所、EHF−EV020K2−040−1 A形サーボパルサー耐久試験機)に設置し、0℃及び20℃における動的粘弾性評価試験を行ない、等価剪断弾性率(Geq)及び等価粘性減衰定数(heq)を求めた。
詳細には、矢印方向に周波数2Hzで加振させて、図1に示す荷重−歪みループ曲線の荷重値と歪みから、等価剪断弾性率(Geq)及び等価粘性減衰定数(heq)を求めた。
なお、試験は0℃と20℃の各条件で、剪断歪みを試料厚みに対して±50%、±300%の条件で行った。
【0057】
各成分の配合の相違と共に、測定結果を表1乃至表4に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
軟化剤としてアロマオイルを用いた比較例1は、20℃でのGeq300%が0.3N/mmを下回り、大変形時の弾性率に欠けていた。また、多環芳香族炭化水素を含む可能性のあるアロマオイルを使用しているので、環境や人体に対する影響が懸念されるものであった。
シリカの配合量を基材ゴム100質量部に対し100質量部未満とした比較例2は、20℃でのGeq300%が0.3N/mmを下回り、大変形時の弾性率に欠けていた。
一方、シリカの配合量を基材ゴム100質量部に対し180質量部より多く配合した比較例3は、加工性が悪く、基材ゴムへシリカやカーボンブラック等を均一に混練させることができなかった。
【0063】
パラフィンオイルを30質量部より多く配合した比較例4,5は、20℃におけるGeq300%が0.3N/mmを下回り、大変形時の弾性率に欠けていた。
軟化剤として液状ゴム、パラフィンオイル、ナフテンオイルのいずれも配合しなかった比較例6、該軟化剤の配合量が基材ゴム100質量部に対して10質量部未満と少ない比較例7は、加工性が悪く、基材ゴムへ均一に混練させることができなかった。液状ゴムの配合量が基材ゴム100質量部に対して30質量部より多い比較例8は、20℃でのGeq300%が0.3N/mm未満で、常温付近における大変形時の弾性率に欠けていた。
また、カーボンブラックの配合量を基材ゴム100質量部に対し5質量部未満とした比較例9、14は、20℃でのGeq300%が0.3N/mmを下回り、常温付近における大変形時の弾性率に欠けていた。カーボンブラックの配合量を基材ゴム100質量部に対し30質量部以上とした比較例10は、加工性が悪く、硬くなり過ぎ、基材ゴムへ均一に混練させることができなかった。
シラン化合物を全く配合しなかった比較例11、シラン化合物の配合量をシリカ100質量部に対して5質量部未満とした比較例12、シラン化合物の配合量をシリカ100質量部に対して25質量部より多くした比較例13は、共に加工性が悪く、基材ゴムへ均一に混練させることができなかった。特に比較例12、13はゴム練りができず、ボソボソの状態となった。
【0064】
これに対し、基材ゴム100質量部に対し、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤を10質量部以上30質量部以下、カーボンブラックを5質量部以上30質量部未満、シリカを100質量部以上180質量部以下、該シリカ100質量部に対して5〜25質量部のシラン化合物を配合した高減衰ゴム組成物から作製した実施例1〜21の高減衰ゴムからなる制振部材は、0℃と20℃のいずれの温度条件においても、厚さの50%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq50%)が0.7N/mm以上、等価粘性減衰定数(heq50%)が0.25以上で、かつ、厚さの300%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq300%)が0.3N/mm以上で、等価粘性減衰定数(heq300%)が0.20以上であり、高い等価剪断弾性率及び等価粘性減衰定数を有し、減衰性能に極めて優れ、減衰特性の温度依存性も小さく、優れていた。
また、本発明の高減衰ゴム組成物は、加工性にも優れ、基材ゴムと他の配合剤を均一に混練でき、軟化剤として多環芳香族炭化水素を含まないので、環境や人体に対する負荷を与えない点でも優れている。
【0065】
本発明の高減衰ゴム組成物からなる制振部材は、種々の制振装置に適用することができる。例えば、戸建住宅、マンション、ビル等の高層建造物の制振壁構造、連結タイプ、ブレースタイプのビル用制振材や、橋梁用の制振装置、制振機能を付与した浮き消波堤、制振装置を搭載したキャビネット、テレビアンテナ用制振システム等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ヒステリシス曲線測定結果から等価粘性減衰定数(heq)を計算する方法を示す図である。
【図2】(A)実施例の制振部材を示す斜視図であり、(B)は(A)を用いた動的粘弾性試験の方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
110 制振部材
113 制振ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴム100質量部に対して、液状ゴム、パラフィンオイル及びナフテンオイルからなる群から選択される1種以上の軟化剤が10質量部以上30質量部以下、カーボンブラックが5質量部以上30質量部未満、シリカが100質量部以上180質量部以下、該シリカ100質量部に対してシラン化合物が5質量部以上25質量部以下で配合され、かつ、多環芳香族炭化水素を含有するオイルが配合されていないことを特徴とする高減衰ゴム組成物。
【請求項2】
前記基材ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される1種以上からなる請求項1に記載の高減衰ゴム組成物。
【請求項3】
前記軟化剤が、液状イソプレンゴム、液状スチレンイソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム及び液状アクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される1種以上の液状ジエン系ゴムである請求項1または請求項2に記載の高減衰ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高減衰ゴム組成物を加硫成形して製造した制振部材であって、
測定温度0℃及び20℃の動的粘弾性試験において、厚さの50%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq50%)が0.7N/mm以上、等価粘性減衰定数(heq50%)が0.25以上で、かつ、厚さの300%剪断変形時の等価剪断弾性率(Geq300%)が0.3N/mm以上で、等価粘性減衰定数(heq300%)が0.20以上であることを特徴とする制振部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−30016(P2009−30016A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102940(P2008−102940)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】