説明

高温無煙炭化薪窯

【課題】効率よく高温、短時間で、また、無煙炭で高品質の完全炭化炭を焼くためのコンパクトな構造を持つ炭焼き薪窯を提供する。
【解決手段】窯全体の構造は、第一燃焼室2、初期燃焼室6、第二燃焼室7、高温炭化室9、煙突12等の窯を構成する主要素が各々独立し、且つ縦方向に立体的に組み合わされた構造を有する。燃料を投入する第一燃焼室2に近接する独立した第二燃焼室7を設け、且つ、その第二燃焼室7内部に炭化させる木材を収納する高温炭化室9を二重構造として配置し、高温炭化室9内部で生じる炭化不燃ガスを第一燃焼室2に送り込み完全燃焼させるため、高温炭化室9と第一燃焼室2の間に炭化ガス再燃パイプ11を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく高温、短時間で、また無煙で高品質の完全炭化炭を焼くためのコンパクトな構造を持つ炭焼き薪窯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炭焼き薪窯では、窯内部の燃焼温度を短時間で1200度以上の高温にすることが困難で炭精製まで数日間もの時間を費やした。また、燃焼時には煙を大気中に発散し大気汚染の原因にもなっていた。
【0003】
また、高温度を得る焼き窯には、高い煙突のドラフト(引き)により燃焼室の熱空気である炎を燃焼室下方の焼成室へ引き込む方式であるバリーボックス焼成構造が古く欧米の陶芸家の間で用いられているが、不完全燃焼ガスによる無煙化は達成できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭が精製されるために必要な窯の内部を高温に上げる行程時間を短縮させ効率よく炭を精製すること。
および、大気汚染など環境問題に多大な影響を及ぼしている不完全燃焼によって放出される排出ガスの無煙処理の必要性が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の炭焼き薪窯は、短時間で高温を得るための高い煙突による強力なドラフト(引き)を持つバリーボックス構造を改良し、別個に独立する二次的な燃焼室を新たに加え、その内部に独立した炭化室を設けた二重構造とし、これらを特別な構成配置することによって、燃焼室の燃料や炭化させる木材から発生する不完全燃焼ガスを完全燃焼させ、高温かつ無煙の炭焼き窯を実現した。
【0006】
本発明を図1にしたがって説明すれば、薪燃料を投入する燃料投入口(1)を設けた第一燃焼室(2)で燃焼した熱空気である炎は、高い煙突(12)の強力な引きにより、燃焼中の熱空気を第一燃焼室(2)下部のロストル(4)を通過させ、灰取り出し口(5)を設けた初期燃焼室(6)へ引き込み、これに接する第二燃焼室(7)に向かわせる。
【0007】
初期燃焼室(6)は、窯の火入れの際にロストル(4)の間隙を塞ぎ、灰取り出し口(5)より投じた燃料をその内部で燃焼させ、窯内部の熱空気を煙突(12)に導くドラフト(引き)を最初に作り出すための燃焼室である。
窯内部全体に十分なドラフトが生じた後、ロストル(4)を開き、以降の燃焼は第一燃焼室(2)で行われる。
【0008】
第二燃焼室(7)の内部空間の中央には、炭の素材である木材を収納する高温炭化室(9)が設けられ、高温炭化室蓋(10)で蓋をされるが、両者の隙間を耐火粘土を用いて完全に密閉し、高温炭化室(9)に酸素が混入し内部の木材を燃焼させることを防いでいる。
【0009】
第二燃焼室(7)に達した炎は、高温炭化室(9)全体を包みこむように、内部の木材を蒸し焼きにしながら炭化させるが、その際に発生する不完全燃焼ガスは、炭化ガス再燃パイプ(11)から第一燃焼室に押し出され再び燃焼され、ロストル(4)、初期燃焼室(6)を通過して第二燃焼室(7)へ向かう。
【0010】
窯全体の最高温度に達した第二燃焼室(7)内で完全燃焼され、無煙となった燃焼ガスは上方の煙突(12)に導かれ大気へ放出される。
【発明の効果】
【0011】
高い煙突(12)による強力なドラフト(引き)により、第一燃焼室(2)に設けられた空気取り入れ口(3)から、第二燃焼室(7)に必要十分な高温度が得られる空気を燃焼室内部に取り込むことができ、補助的な送風装置を必要とせず、大がかりな装置機構が簡略化され、設備費の大幅な軽減がはかれる。
【0012】
また、窯全体のドラフト(引き)は、煙突下部のダンパー(13)を設け、この開閉により細かいドラフト調整が可能である。
【0013】
高温炭化室(9)内に収納された木材の炭化進行により発生する不完全燃焼ガスは、炭化ガス再燃パイプ(11)をを通して第一燃焼室(2)に送り込まれ、燃料とともに燃焼し初期燃焼室(6)および第二燃焼室(7)内部で完全に燃焼される。
【0014】
窯全体の構造は、第一燃焼室(2)、初期燃焼室(6)、第二燃焼室(7)、高温炭化室(9)、煙突(12)等の窯を構成する主要素が各々独立し、且つ縦方向に立体的に組み合わされているため、設置平面積が比較的小さい場所に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の基本的構造は、バリーボックス焼成構造をさらに無煙化を実現するために第二燃焼室(7)を独立して設け、その内部空間に木材を炭化するための独立した高温炭化室(9)を配置するものである。
本発明の実施例として、図1によって以下説明すば、第一燃焼室(2)正面に燃料投入口(1)および側面に複数の空気取り入れ口(3)が設けられている。
第一燃焼室(2)で燃焼された燃料の熱空気である炎は鉄製の簀の子状のロストル(4)を通過し下方の初期燃焼室(6)に向かうが、同時に第一燃焼室(2)で残った灰はロストル(4)の隙間から落下し、初期燃焼室(6)側面の灰取り出し口(5)より取り出される。
一方、熱空気である炎は、第一燃焼室(2)および初期燃焼室(6)に接して設けられた第二燃焼室(7)に向かうが、その内部空間中央には高温炭化室支柱(8)によって支えられた高温炭化室(9)が設けられている。
高温炭化室(9)は、炭を精製する木材を収納した後、カーボランダム板で作られた高温炭化室蓋(10)で蓋をされるが、その両者の隙間は耐火粘土で酸素の混入を防ぐため密閉され、内部の木材を蒸し焼き状にし炭化させる。
木材の炭化中に発生する不完全燃焼ガスは、炭化ガス再燃パイプ(11)を通って第一燃焼室(2)に押し出され、一連の燃料の燃焼経路をたどり完全燃焼されて無煙ガスとなって煙突(12)に導かれ排出される。
【0016】
煙突(12)の下部にダンパー(13)を施し、その開閉により窯全体のドラフト(引き)を制御し、窯内部の温度を適温に調整することが可能となる。
【0017】
高温炭化室(9)は、必要に応じて燃焼室等の比例バランスによりさらに大きな炭化室の設置も可能であり、また炭化室上部にさらに個別に炭化室を設置して効率よく炭精製に寄与することもできる。
【0018】
窯の主構成材料は、窯の耐久保全のため外壁および内壁に耐火煉瓦を、また窯内部の温度効率をあげるため部分的にイソライト、セラミックウールを用いる。
【0019】
また、初期燃焼室(6)や第二燃焼室(7)、およびその上部空間を副次的に効率よく活用することによって、陶器焼成、発電、温水、調理等の炭精製以外の目的とする高温熱エネルギーシステムに有効利用出来る副焼成室(14)を設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 図1は、本発明の正面断面図である。
【符合の説明】
【0021】
1.燃料投入口
2.第一燃焼室
3.空気取り入れ口
4.ロストル
5.灰取り出し口
6.初期燃焼室
7.第二燃焼室
8.高温炭化室支柱
9.高温炭化室
10.高温炭化室蓋
11.炭化ガス再燃パイプ
12.煙突
13.ダンパー
14.副焼成室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を投入する第一燃焼室(2)に近接する独立した第二燃焼室(7)を設け、且つ、その第二燃焼室(7)内部に炭化させる木材を収納する高温炭化室(9)を二重構造として配置する。
【請求項2】
高温炭化室(9)内部で生じる炭化不燃ガスを第一燃焼室に送り込み完全燃焼させるため、高温炭化室(9)と第一燃焼室(2)の間に炭化ガス再燃パイプ(11)を配置する。

【図1】
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【公開番号】特開2010−254936(P2010−254936A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124681(P2009−124681)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(504373037)
【Fターム(参考)】