説明

高温空気加熱器

【課題】受け金物の腐食を抑制し、高い耐久性を備えた高温空気加熱器を提供すること。
【解決手段】燃焼排ガスの流路内に吊り下げられる金属内管3と、その金属内管3を包囲する耐火性外管5と、金属内管の下方に形成されて耐火性外管を支持する平板状の受け金物9と、耐火性外管の下方に形成されて受け金物よりも大径の開口を有する筒状部21と、受け金物との間に空間をもたせて開口を封止する底蓋7とを備え、金属内管には、金属内管内と耐火性外管内とを連通する通孔11と、受け金物を貫いて空間側に延在する管端の封止面に形成されて金属内管内と空間とを連通する通孔17とが設けられ、受け金物には、耐火性外管が載置される受け部に耐火性外管内と空間とを連通する通孔19が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温空気加熱器に係り、具体的には、燃焼排ガスの熱により空気を加熱する高温空気加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物の処理法として、例えば、廃棄物を熱分解反応器で熱分解し、生成された熱分解ガスと熱分解残渣の一部を燃焼溶融炉に導いて燃焼処理する方法が知られている。この方法においては、燃焼排ガスの熱を有効利用するため、燃焼排ガスの流路内に高温空気加熱器を設置し、伝熱管内を流れる低温の被加熱空気と高温の燃焼排ガスとを熱交換するようにしている。ここで回収された熱は、例えば、熱分解の熱源として利用されている。
【0003】
ところで、廃棄物を燃焼させて発生する高温の燃焼排ガスは、廃棄物に起因した塩素や塩化水素などの腐食性物質を含むことから、金属材料の伝熱管をそのままの状態で用いることはできない。そのため、例えば、金属製の内管を耐火材の外管で被覆した多重管構造が採用されている。
【0004】
この点、本出願人は、燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられて内部に被加熱空気が流れる金属製の内管と、この内管を包囲して設けられ、内管との間に被加熱空気の流路を形成する耐火製の外管と、内管の下方に連結されて外管を支持する平板状の受け金物とを備えた2重管構造の高温空気加熱器を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この高温空気加熱器は、外管の下方に、受け金物よりも大径の開口を有する筒状部を形成し、その筒状部の下端の開口を底蓋で閉鎖することにより、受け金物と底蓋と筒状部との間に空間を形成している。そして、この空間と内管内又は外管内との少なくとも一方を通孔で連通させて、内管内と外管内を流れる被加熱空気(本流)の一部を空間内に導入するようにしている。
【0006】
これによれば、空間内の圧力が増加するため、例えば、筒状部と底蓋との隙間から空間内への燃焼排ガスの浸入を抑制できるとともに、空間内に浸入した燃焼排ガスを冷却することができる。そのため、外管などの大きな荷重を受ける受け金物などの酸化腐食を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−266540号公報(第5−6頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の高温空気加熱器において、例えば、受け金物の下方の空間を内管内及び外管内とそれぞれ連通させた場合、被加熱空気は空間内を周回するようになるため、空間内に浸入した燃焼排ガスの腐食成分は冷却固化される。このように腐食成分が固化されると、受け金物の急激な腐食は抑えられるため、耐食性の向上が期待できる。
【0009】
しかしながら、空間内を流れる被加熱空気の流量は、設計上、内管内と外管内を流れる本流の被加熱空気の流量と比べて大きく制限されている。そのため、空間内に被加熱空気が導入されても、空間内の一部の領域、例えば、受け金物の近傍に偏って流れることも考えられる。この場合、空間内に拡散浸入した燃焼排ガスの冷却が不十分となり、受け金物の酸化腐食を生じさせるおそれがある。
【0010】
本発明は、受け金物の腐食を抑制し、高い耐久性を備えた高温空気加熱器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられて内部に被加熱空気が通流する金属内管と、この金属内管を包囲して設けられて金属内管との間に被加熱空気の流路を形成する耐火性外管と、金属内管の下方に形成されて耐火性外管を支持する平板状の受け金物と、耐火性外管の下方に形成されて受け金物よりも大径の開口を有する筒状部と、受け金物との間に空間をもたせて開口を封止する底蓋とを備える高温空気加熱器において、金属内管には、金属内管内と耐火性外管内とを連通する第1の通孔と、受け金物を貫いて空間側に延在する管端を封止する封止面に形成されて金属内管内と空間とを連通する第2の通孔とが設けられ、受け金物には、耐火性外管が載置される受け部に形成されて耐火性外管内と空間とを連通する第3の通孔が設けられてなることを特徴としている。
【0012】
このように、第2の通孔を受け金物から空間側に突出させて配置することにより、例えば、金属内管を流れる被加熱空気を底蓋の近傍から空間内へ導入することができる。そして、空間内に導入された被加熱空気は、第2の通孔から第3の通孔へ向けて流れるが、このとき、被加熱空気は筒状部と底蓋の隙間付近を流れることから、燃焼排ガスはこの隙間付近、或いは、隙間を拡散浸入する途中で冷却固化される。すなわち、燃焼排ガスの腐食成分を筒状部と底蓋の隙間、つまり空間の入口付近で積極的に冷却固化させることにより、空間の入口を閉塞させて燃焼排ガスの浸入を防ぎ、受け金物の酸化腐食を抑制することができる。
【0013】
また、上記に代えて、本発明は、燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられて内部に被加熱空気が通流する金属内管と、金属内管を包囲して設けられて金属内管との間に被加熱空気の流路を形成する耐火性外管と、金属内管の下方に形成されて耐火性外管を支持する平板状の受け金物と、耐火性外管の下方に形成されて受け金物よりも大径の開口を有する筒状部と、受け金物との間に空間をもたせて開口を封止する底蓋とを備える高温空気加熱器において、金属内管には、金属内管内と耐火性外管内とを連通する第1の通孔が設けられ、受け金物には、金属内管を封止する封止面に形成されて金属内管内と空間とを連通する第2の通孔と、耐火性外管が載置される受け部に形成されて耐火性外管内と空間とを連通する第3の通孔と、第2の通孔と第3の通孔とを仕切って封止面から空間側に延在する筒状の突起とが設けられてなるように構成してもよい。
【0014】
このように、空間内に突起部を形成することにより、空間内を流れる被加熱空気を筒状部と底蓋の隙間付近に流すことができるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0015】
この場合において、底蓋と筒状部との間には、耐熱シール材として、例えば、セラミックス製シートや耐火モルタルなどを配置することが好ましい。これによれば、被加熱空気による冷却効果を高めて、隙間のシール性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受け金物の腐食を抑制し、高い耐久性を備えた高温空気加熱器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる高温空気加熱器の一実施の形態を示す断面図である。
【0018】
本実施の形態の高温空気加熱器1は、金属製の内管3を耐火性の外管5と底蓋7により被覆して形成され、例えば、内管3内から供給される被加熱空気を外管5内へ導くとともに、外管5を介して高温の燃焼排ガスGと熱交換し、被加熱空気を加熱するものである。
【0019】
高温空気加熱器1は、燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられる金属性の内管3と、その内管3を包囲して設けられる耐火性の外管5と、外管5の下方に形成され、外管5を下から支持する受け金物9と、外管5の下端の開口を封止する底蓋7を備えて構成される。
【0020】
内管3の上部は図示しない被加熱空気の入口管に連結される一方、下方の管側壁には通孔11が設けられ、通孔11を介して、内管3内の風路13と内管3と外管5との間に形成される風路15とが連通するようになっている。
【0021】
そして、内管3の下方には、円盤状に形成された受け金物9が側壁の周方向で水平に固定されている。換言すれば、内管3は、受け金物9を上方から垂直方向に貫いて、断面コ字状に下方に延在して形成され、その下端を封止する封止面の中央に通孔17が設けられている。一方、受け金物9には、内管を取り囲むように、周方向に複数(例えば4個)の通孔19が設けられている。
【0022】
外管5は、耐火性材料、例えば、セラミックスにより略円筒状に形成されたセラミックス管を同軸上に積み上げて形成され、その最上部は、図示しない被加熱空気の排出管に連結される一方、最下部は、セラミックス管の内径よりも大径の受け金物9により支持されている。これらのセラミックス管の内径は、高さ方向で均一になるように形成されているが、最下部のセラミックス管の下方には、受け金物9の外径よりも大径の開口を有する筒状部21が一体的に形成されている。
【0023】
筒状部21の開口端は、外管5と同じく、例えば、セラミックスで形成された底蓋7により封止され、底蓋7と内管3の封止面及び受け金物9とが対向することにより、これらの隙間には一つの空間23が形成される。ここで、内管3の封止面と底蓋7との間隔は、例えば、空間23内に導入された被加熱空気a1が支障なく流れる程度に設定される。なお、底蓋7は、耐熱シール材25、例えば、セラミックス製シートや耐熱モルタルなどを介して、筒状部21の開口端に対して所定の回転を施して取り付けられている。
【0024】
次に、このようにして構成される高温空気加熱器の動作を説明する。内管3内の風路13に供給された被加熱空気a1は、通孔11を介して風路15に流出し、外管5を介して燃焼排ガスGの熱と熱交換することにより加熱された被加熱空気a2となり、風路15内を上昇して図示しない排出管から熱分解反応器などへ送られる。
【0025】
一方、被加熱空気a1の一部は、通孔17を介して空間23内に導入されて、この空間23内を昇圧させる。詳述すると、空間23内に導入された被加熱空気a1は、底蓋7と衝突し、底蓋7と内管3の封止面に挟まれた空間を分散して放射状に流れ、続いて通孔19に向かって折り返し、通孔19から風路15に導かれる。
【0026】
このように、通孔17を受け金物9に対して空間23側に突出させて配置、つまり、底蓋7の近傍に配置することにより、被加熱空気a1を底蓋7の近傍から空間23内へ直接供給することができる。これにより空間23内に導入された被加熱空気a1は、底蓋7に沿って筒状部21の内壁側へ向かって流れることから、底蓋7と筒状部21との隙間27付近に被加熱空気a1を供給することができる。
【0027】
したがって、燃焼排ガスGは、隙間27付近、或いは、隙間27を拡散浸入する途中で腐食成分が冷却固化されて析出するため、隙間27は次第に閉塞し、引き続いて空間23内への燃焼排ガスの浸入を防ぐことができる。また空間23内に燃焼排ガスが浸入したとしても、受け金物9や金属製の内管3は、被加熱空気a1の流れに取り囲まれているため、燃焼排ガス中の腐食成分は、その被加熱空気a1により冷却されて安定した固相状態となり、急激な腐食が抑えられる。そのため、高温空気加熱器1の耐久性を一層向上させることができる。
【0028】
なお、空間23内に導入される被加熱空気の流量は、例えば、高温空気加熱器1を流れる全空気量の約8〜10%となるように、通孔の大きさ、設置数などを定めることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。図2は、本発明を適用してなる高温空気加熱器の他の実施の形態を示す断面図である。
【0030】
本実施の形態の高温空気加熱器31は、内管3内と空間23とを連通する通孔33を、受け金物9から空間23側に突出させない代わりに、通孔33の周囲の面から筒状の突起部35を空間23側に突出させるように構成したもので、その他の構成は、図1と同じである。すなわち、内管3は、その端部が円盤状の受け金物9によって一体的に封止されており、その封止面に通孔33が形成されている。そして、通孔33を取り囲む周囲の封止面には、円筒状の突起部35が空間側に突出して設けられている。突起部35は、その開口端が底蓋7の付近まで達している。
【0031】
この構成によれば、通孔33を介して空間23内に導入された被加熱空気a1は、突起部35に囲まれた空間を流れ、その開口端と底蓋7との隙間を抜けて、底蓋7と筒状部21との隙間27付近を流れる。したがって、燃焼排ガスGは、隙間27付近、或いは、隙間27を拡散浸入する途中で腐食成分が冷却固化されて析出するため、燃焼排ガスによる受け金物9を始めとする金属製の突起部35などは酸化腐食が抑制される。
【0032】
なお、本実施の形態において、受け金物9は、内管3の端部を封止する封止面と、その外周側の外管5を受ける受け部とを平面的に一体で形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、封止面と受け部が段付きになるように形成してもよい。
【0033】
以上述べたように、本発明にかかる高温空気加熱器は、本流の被加熱空気a1の一部を受け金物の下方に形成される空間23内に導いて周回させ、その被加熱空気a1を底蓋7と筒状部21との隙間27付近へ安定して流すことができるため、空間23内の圧力増加とともに、空間23内に浸入する燃焼排ガスの腐食成分の冷却固化を促進させて、受け金物9の酸化腐食を抑えることができる。
【0034】
図3は、本発明の高温空気加熱器が配置される煙道の一例を示す構成図である。
【0035】
高温空気加熱器41は、廃棄物を処理した燃焼排ガスGが鉛直上向きに流れる煙道43と、その後流側で燃焼排ガスGが鉛直下向きに流れる煙道45とにそれぞれ複数配置され、いずれも天井壁を貫通して吊り下げて設けられている。煙道43に配置される高温空気加熱器41aと煙道45に配置される高温空気加熱器41bは、上記の実施の形態で説明した構成を備えるものとし、図では、金属製の内管47と、その内管を包囲する外管49以外の構成を省略している。
【0036】
高温空気加熱器41a,41bの外管49a,49bは、連結管51を介して互いに連結されている。この例では、被加熱空気53は、下流側の内管47bより流入し、図の矢印で示すように下流側の外管41b、連結管51、上流側の外管49a、内管47aを順次流れ、その内管47aより外部に取り出されるようになっている。このように、本発明にかかる高温空気加熱器41は、内管から被加熱空気を流入させて外管より抜き出すだけでなく、外管から被加熱空気を流入させて内管より抜き出すようにしても、燃焼排ガスGの腐食成分の浸入による受け金物などの酸化腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用してなる高温空気加熱器の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明を適用してなる高温空気加熱器の一実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明の高温空気加熱器が配置される煙道の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 高温空気加熱器
3 内管
5 外管
7 底蓋
9 受け金物
11,17,19 通孔
21 筒状部
23 空間
27 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられて内部に被加熱空気が通流する金属内管と、該金属内管を包囲して設けられて前記金属内管との間に被加熱空気の流路を形成する耐火性外管と、前記金属内管の下方に形成されて前記耐火性外管を支持する平板状の受け金物と、前記耐火性外管の下方に形成されて前記受け金物よりも大径の開口を有する筒状部と、前記受け金物との間に空間をもたせて前記開口を封止する底蓋とを備える高温空気加熱器において、
前記金属内管には、該金属内管内と前記耐火性外管内とを連通する第1の通孔と、前記受け金物を貫いて前記空間側に延在する管端を封止する封止面に形成されて前記金属内管内と前記空間とを連通する第2の通孔とが設けられ、
前記受け金物には、前記耐火性外管が載置される受け部に形成されて前記耐火性外管内と前記空間とを連通する第3の通孔が設けられてなることを特徴とする高温空気加熱器。
【請求項2】
燃焼排ガスの流路内に天井から吊り下げられて内部に被加熱空気が通流する金属内管と、該金属内管を包囲して設けられて前記金属内管との間に被加熱空気の流路を形成する耐火性外管と、前記金属内管の下方に形成されて前記耐火性外管を支持する平板状の受け金物と、前記耐火性外管の下方に形成されて前記受け金物よりも大径の開口を有する筒状部と、前記受け金物との間に空間をもたせて前記開口を封止する底蓋とを備える高温空気加熱器において、
前記金属内管には、該金属内管内と前記耐火性外管内とを連通する第1の通孔が設けられ、
前記受け金物には、前記金属内管を封止する封止面に形成されて前記金属内管内と前記空間とを連通する第2の通孔と、前記耐火性外管が載置される受け部に形成されて前記耐火性外管内と前記空間とを連通する第3の通孔と、前記第2の通孔と前記第3の通孔とを仕切って前記封止面から前記空間側に延在する筒状の突起とが設けられてなることを特徴とする高温空気加熱器。
【請求項3】
前記底蓋と筒状部との間には、耐熱シール材を配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の高温空気加熱器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate