説明

高温腫瘍治療器

【課題】手術後に人体に残る微細腫瘍細胞をより精密で効果的に破壊することができる、人体に無害な腫瘍治療器を提供する。
【解決手段】外部の貯蔵タンクに連結され、前記液体が循環される供給管および排出管を含む本体;前記本体に結合され、前記供給管および排出管を取り囲む延長管が一体に結合され、内側には前記供給管および排出管が連結され、前記高温液体を受ける中空部が備えられた治療球;および治療部位の温度を測定する温度センサーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍除去手術後に手術部位の周りに残っている微細腫瘍細胞を除去するための腫瘍治療器に係り、より詳しくは腫瘍を外科的な手術で一次に除去し、手術部位に生じた中空部に腫瘍治療器を挿入して、手術部位の周りに残り得る微細腫瘍細胞を適切に破壊することができる腫瘍治療器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次に腫瘍細胞を外科的に除去する手術後に別途の治療が必要な理由は、脳または乳房などの身体部位は外科的に腫瘍を除去するに際して、他の身体部位よりも正確に腫瘍細胞のみを除去しなければならないからである。
【0003】
脳の場合、腫瘍を除去するために腫瘍周辺の元気な細胞が除去されれば、患者が回復した後にも、致命的な麻痺症状、言語障害および記憶力減退などの後遺症に苦しむ危険がある。
【0004】
乳房の場合にも、前記脳の場合のような致命的な障害が発生するものではないが、美容上の理由で、腫瘍細胞のみを精密に除去することが必要である。
【0005】
このように、外科的な手術で腫瘍を除去した後、別の治療装置を利用して、手術部位周辺の組職に残り得る微細腫瘍細胞を精密に除去することは患者の生に非常に大きな影響を及ぼす。
【0006】
一方、腫瘍細胞は、正常細胞とは異なり、40〜43℃の温度で破壊される特性がある。このような腫瘍細胞の特性を利用して、40〜43℃の高熱を利用して、人体に発生した腫瘍を治療する方法が使われている。光照射による方法と無線周波数による放射治療法などがこれにあたる。
【0007】
しかし、前記光の照射による方法と放射治療法などは手術部位から遠距離で治療が行われ、治療すべき部位を外れた広い範囲で治療が行われるため、正常細胞にも影響を与え、精密な治療が必要な脳または乳房などの身体部位には使いにくい問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記のような問題点に鑑みてなされたもので、人体に無害であり、手術後に人体に残る微細腫瘍細胞をより精密で効果的に破壊することができる高温腫瘍治療器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明による腫瘍治療器は、外部の貯蔵タンクに連結され、液体が循環される供給管および排出管を含む本体;前記本体に結合され、前記供給管および排出管を取り囲む延長管が一体に結合され、内側には前記供給管および排出管が連結され、前記液体を受ける中空部が備えられた治療球;および治療部位の温度を測定する温度センサー;を含むことを特徴とする。
【0010】
前記治療球は、前記温度センサーが突出するように、前面に温度センサー突設口が備えられ、治療部位の大きさによって直径の異なる治療球が使用できるように、前記本体に入替え可能に結合される。
【0011】
前記温度センサーは、前記本体の内側に挿入された後、固定手段によって固定され、一端部が外部と信号交換するように、前記本体の外部に露出する固定部と、前記固定部の下部に結合され、前記本体と治療球の内部に挿入されるセンサー管と、前記センサー管の先端部に備えられ、前記治療球の前方に突出するように設置され、治療部位の温度を測定する温度感知部とを含む。
【0012】
前記温度感知部は前記センサー管の切欠孔に設置され、前記治療球の内部で循環される前記高温液体の熱に影響されないように、前記温度感知部と前記切欠孔との間には断熱材が設置される。
【0013】
前記固定手段は、前記固定部の外側に一定間隔で形成された複数の係止溝と、前記固定部の係止溝に対応するように前記本体に設けられた係止突起とからなるか、あるいは前記固定部と本体に備えられたネジ部からなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明による腫瘍治療器は、従来の方式に比べ、治療部位の腫瘍を除去するための最適の温度を維持しやすいし、治療が必要な手術部位の周りにだけ治療ができるので、微細腫瘍細胞を精密に治療することができる効果がある。さらに、液体を使用する本発明の腫瘍治療器は、従来の腫瘍治療器より体積が小さくて操作が簡便で、人体にも安全であり、微細腫瘍細胞を治療することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明による腫瘍治療器の好適な実施例を詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3に示すように、本発明による腫瘍治療器は、本体100、延長管300が結合された治療球200、および温度センサー400から構成される。
【0017】
本体100は、外部の貯蔵タンク510(図6参照)から供給される高温液体600(図6参照)が治療球200の中空部210に連続的に供給されるように、供給管110と排出管120を含む。供給管110と排出管120は、本体100の内部に長手方向に貫置され、治療球200の中空部210の内部まで伸びて設置される。
【0018】
供給管110と排出管120は、一端部がそれぞれ本体100の後端部に露出し、別途の連結手段を介して貯蔵タンク510と連結される。
【0019】
本体100の中心部には、内部の長手方向に温度センサー400が挿入されるセンサー挿入管130を備える。本体100は円筒状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、四角柱または六角柱などの形状であることもできる。また、本体100の先端部には、治療球200が結合されるように、延長管締結部150を備える。
【0020】
治療球200は内部が空いている中空部210が形成された球状であり、その一側には延長管300が結合される。延長管300は前記本体100の延長管締結部150に結合される。本実施例においては、延長管300が延長管締結部150に嵌め合わせられるものを例示しているが、螺合されることも可能である。
【0021】
治療球200は、前面に温度センサー突設口220が形成され、前記温度センサー突設口220を通じて、温度センサー400の温度感知部420が手術部位に一定深さだけ挿入されるように露出する。
【0022】
前記延長管300は、本体100を貫いて治療球200に連結される供給管110、排出管120およびセンサー挿入管130を取り囲む円筒状である。
【0023】
このような治療球200は、手術部位の大きさを考慮し、直径を所要大きさ別にそれぞれ製作されて、本体100に入替え可能に結合される。よって、使用者は、治療球200を大きさ別に準備した後、患者の手術部位の大きさに合う治療球200を選択し、本体100の延長管締結部150に結合して使用することができる。
【0024】
腫瘍細胞は、正常細胞とは異なり、40〜43℃程度の温度で破壊される。
【0025】
したがって、腫瘍除去手術後にできた空洞Cに、本発明による高温腫瘍治療器の治療球200を挿入し、腫瘍が破壊される温度を一定時間維持すれば、手術部位の周りに残っている微細腫瘍細胞が破壊される。
【0026】
温度センサー400は、図4および図5に示すように、固定部430、センサー管410および温度感知部420から構成される。
【0027】
固定部430は本体100に固定手段450によって固定され、後端部が本体100の後端に露出する。前記固定手段450は、本体に備えられた係止突起452と、固定部430の外側に一定間隔で備えられた係止溝451とから構成される。この際、係止突起452はスプリング452aによって弾支される。
【0028】
センサー管411は、上部が前記固定部430の先端部に結合され、下部は後述する温度感知部420が露出するように切欠孔411が形成された断面円形の管状である。
【0029】
温度感知部420は治療部位の温度を感知するためのもので、センサー管410に挿入されて、センサー管410下部の切欠孔411に露出するように設置され、外部と信号交換できるように提供される。
【0030】
このような温度センサー400は、前記治療球200で循環される高温液体600の熱気が微細腫瘍細胞の予想分布部分まで均一に伝達されるかを監視するために挿入される温度検出手段で、治療球200の前面に形成された温度センサー突設口220に突設される。
【0031】
前記治療球200の前方に突設される温度センサー400は、治療球200から手術部位に挿入される温度感知部420の挿入深さを調節することが望ましい。これは、腫瘍の大きさと患者の状態によって微細腫瘍細胞の分布部分が違い、これによる治療範囲および治療時間にも違いがあるからである。すなわち、腫瘍細胞が破壊される部分の正確な温度を測定することにより、高温液体600の熱気が均一に治療部位に伝達されて効果的な治療が可能である。
【0032】
このために、前記実施例による固定手段450は、固定部430の後端部を摘み、図5の矢印の方向に、上下に移動すれば、本体100側の係止突起452に固定部430側の係止溝451が係合されて、本体100の外に押し出されないで本体100に固定される。また、係止溝451の離隔距離の分だけ挿入深さを調整することができるものである。
【0033】
図6は前記固定手段450の他の実施例を示すもので、固定手段450は、前記の係止溝451と係止突起452ではなく、固定部430と本体100にそれぞれ形成されたネジ部455a、455bからなる。
【0034】
固定部430と本体100は、前記固定手段450のネジ部455a、455bによって螺合される。
【0035】
このように、固定部430が本体100に螺合されるので、固定部430を回転させて温度センサー400の挿入深さを調節することができる。すなわち、ネジ部455a、455bが形成された範囲内で温度センサー400の挿入深さを自由に調整することができるという利点がある。
【0036】
また、治療球200の中空部210(図3参照)で循環される高温液体600の熱気がセンサー管410を通じて感知部420に伝達されることを防止するために、センサー管410の切欠孔411には、センサー管410と温度感知部420が直接接触しないように、断熱材440が挿入される。よって、温度センサー400の温度感知部420は治療部位の温度を正確に測定することができることになる。
【0037】
このように構成された本発明による腫瘍治療器は、脳または乳房などの如く、腫瘍の除去に際して、他の身体部位は残し腫瘍のみを精巧に除去しなければならない場合に、手術後に手術部位の周りに残っている微細腫瘍細胞をまったく破壊させることができる効果がある。
【0038】
図7および図8に基づいて、本発明の実施例による腫瘍治療器の使用状態を説明する。
【0039】
図8に示すように、使用者は、腫瘍除去手術の後、患者の身体に腫瘍の除去によって生じた空洞Cに、適切な大きさの治療球200が結合された高温腫瘍治療器を挿入する。治療球200には高温液体600が継続的に供給されるので、治療部位が加熱されて微細腫瘍細胞は破壊される。
【0040】
図7に示すように、本発明による腫瘍治療器の供給管110および排出管120は、高温液体600を保存している貯蔵タンク510と連結される。
【0041】
腫瘍治療器に熱を供給するために使用される高温液体600は、治療中に流出しても人体に無害な蒸留水を使用することが望ましいが、人体に無害な液体であればいずれのものを使用してもかまわない。
【0042】
供給ポンプ530によって供給管110に流入した高温液体600は、本体100および連結管300を通じて治療球200に入る。その後、さらに連結管300および本体100を経て排出管120を通じて排出される。加熱器520は高温液体600を加熱する。制御器500は、温度センサー400と信号交換するように連結され、温度センサー400によって感知された治療部位の温度を表示する。また、制御器500は、供給ポンプ530および加熱器520と信号交換するように連結され、供給ポンプ530および加熱器520が適切に動作するように制御する。
【0043】
前述したように、本発明による腫瘍治療器は高温の液体600を利用して腫瘍細胞を治療するもので、治療の効果を高めるためには、治療部位の温度を正確に制御するのが重要である。
【0044】
一方、手術部位に直接挿入されて、手術部位の周りに残り得る微細腫瘍細胞を治療するための本発明による腫瘍治療器は人体の内部に接触するもので、腫瘍治療器を構成する金属は人体に対する反応性が低くなければならない。したがって、腫瘍治療器は、人体に反応性が低い金または銀のような物質より製作されるかメッキされることが望ましい。
【0045】
以上本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前述した特定の実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者であれば、特許請求範囲の思想および範疇を逸脱せずに、本発明に対する複数の変更および修正が可能であり、そのようなすべての適切な変更および修正の均等物なども本発明の範囲に属するものと見なされなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、手術後に人体に残る微細腫瘍細胞をより精密で効果的に破壊することができる、人体に無害な腫瘍治療器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例による腫瘍治療器を示す斜視図である。
【図2】図1の温度センサーを除いた本体と治療球が分離された状態を示す斜視図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿って取った断面図である。
【図4】本発明の実施例による腫瘍治療器の温度センサーを示す斜視図である。
【図5】本発明に実施例による腫瘍治療器の温度センサー固定部を拡大した部分断面図である。
【図6】本発明に実施例による腫瘍治療器の固定手段の他の実施例を示す部分破断斜視図である。
【図7】本発明の実施例による腫瘍治療器の使用状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例による腫瘍治療器の患者に対する使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
100 本体
110 供給管
120 排出管
130 センサー挿入管
150 延長管締結部
200 治療球
210 中空部
220 温度センサー突設口
300 延長管
400 温度センサー
410 センサー管
411 切欠孔
420 温度感知部
430 固定部
440 断熱材
450 固定手段
451 係止溝
452 係止突起
452a スプリング
455a ネジ部
455b ネジ部
500 制御器
510 貯蔵タンク
520 加熱器
530 供給ポンプ
600 高温液体
C 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の貯蔵タンクに保存された液体を利用して腫瘍を治療する高温腫瘍治療器において、
前記貯蔵タンクと連結され、前記液体が循環される供給管および排出管を含む本体;
前記本体に結合され、前記供給管および排出管を取り囲む延長管が一体に結合され、内側には前記供給管および排出管が連結され、前記液体を受ける中空部が備えられた治療球;および
治療部位の温度を測定する温度センサー;を含むことを特徴とする腫瘍治療器。
【請求項2】
前記治療球は、
前記温度センサーが突出するように、前面に温度センサー突設口が備えられ、
治療部位の大きさによって直径の異なる治療球が使用できるように、前記本体に入替え可能に結合されることを特徴とする請求項1に記載の腫瘍治療器。
【請求項3】
前記温度センサーは、
前記本体の内側に挿入された後、固定手段によって固定され、一端部が外部と信号交換するように、前記本体の外部に露出する固定部と、
前記固定部の下部に結合され、前記本体と治療球の内部に挿入されるセンサー管と、
前記センサー管の先端部に備えられ、前記治療球の前方に突出するように設置され、治療部位の温度を測定する温度感知部とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の腫瘍治療器。
【請求項4】
前記温度感知部は前記センサー管の切欠孔に設置され、前記治療球の内部で循環される前記液体の熱に影響されないように、前記温度感知部と前記切欠孔との間には断熱材が設置されることを特徴とする請求項3に記載の腫瘍治療器。
【請求項5】
前記固定手段は、
前記固定部の外側に一定間隔で形成された複数の係止溝と、
前記固定部の係止溝に対応するように前記本体に設けられた係止突起とからなることを特徴とする請求項3に記載の腫瘍治療器。
【請求項6】
前記固定手段は、
前記固定部と本体に備えられたネジ部からなることを特徴とする請求項3に記載の腫瘍治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−301369(P2007−301369A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124448(P2007−124448)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(507151124)ナショナル キャンサー センター (9)
【Fターム(参考)】