説明

高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物

【課題】二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、調製したコンクリート組成物の経時的な流動性の低下や空気量の低下を抑えて良好な施工性を確保することができ、また得られる硬化体の乾燥収縮を抑制することができ、更に得られる硬化体に必要な強度を発現させることができるコンクリート組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製した。
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物に関する。近年、二酸化炭素の排出量の削減やエネルギー消費効率の改善についての要求が益々強くなっている。かかる事情に鑑み、コンクリート組成物の分野においても、製鉄所から副産する高炉水砕スラグが、高炉スラグ微粉末の形で高炉セメントの原料として有効利用されている。一般にコンクリート組成物に使用されている高炉セメントは、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を混合して造られ、JIS−R5211の規格では、高炉スラグ微粉末の分量によって、A種(5%超〜30%)、B種(30%超〜60%)及びC種(60%超〜70%)の3種類に分けられている。かかる高炉セメントは、水和熱が低い、長期強度の伸びが大きい、水密性が大きい、硫酸塩に対する化学的侵食に対して抵抗性が大きい、アルカリ骨材反応の抑制効果がある等の有利な点を有しているが、乾燥収縮がポルトランドセメントに比べて大きく、高炉セメントを用いたコンクリート組成物から得られる硬化体は収縮ひび割れが発生し易いという問題や、ポルトランドセメントに比べて中性化による劣化が速いという不利な点も有している。このような理由から、高炉セメントとしては、性能バランスの良い高炉セメントB種に限られて使用されているのが実情であるが、高炉セメントB種はコンクリート1m中に250〜450kgの割合で混入するのが一般的であり、高炉セメントB種1トンを工場で製造するために約400kgの二酸化炭素を排出しているので、高炉セメントB種を用いてコンクリート組成物1mを調製するためには、施工機械の運転や材料の運搬等により発生する二酸化炭素の排出を除き、100〜180kgの二酸化炭素を排出していることになる。そのため、コンクリート工事においては、施工性を確保しつつ、得られる硬化体が必要な強度を有することを前提として、高炉スラグ微粉末をもっと高い割合で使用することにより二酸化炭素の発生を抑制する技術の出現が要求されている。本発明はかかる要求に応える高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いる高炉スラグ微粉末の粉末度や置換率がコンクリート組成物に及ぼす影響について報告されている(例えば、非特許文献1参照)。ここでは、普通ポルトランドセメントに対する高炉スラグ微粉末の使用量が多くなると、普通ポルトランドセメント単独使用に比べて、初期強度が低下し、中性化が早くなり、乾燥収縮が大きくなる等、コンクリート物性のマイナス傾向が顕著になることが報告されている。別に、かかる高炉スラグ微粉末等に加えて各種の混和材を用いたいくつかの提案も報告されている(例えば、特許文献1〜9参照)。しかし、これらの従来提案には実際のところ、高炉スラグ微粉末の使用量を多くすると、1)良好な施工性を確保できない、2)硬化体の乾燥収縮率を抑えることが難しい、3)硬化体の圧縮強度の低下が大きい等、何らかの点で重大な支障をきたすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−158146号公報
【特許文献2】特開昭63−2842号公報
【特許文献3】特開平1−167267号公報
【特許文献4】特開平10−114555号公報
【特許文献5】特開2000−143326号公報
【特許文献6】特開2003−306359号公報
【特許文献7】特開2005−281123号公報
【特許文献8】特開2007−217197号公報
【特許文献9】特開2007−297226号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの技術の現状」、日本建築学会編、1992年、3頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高炉スラグ微粉末の使用割合を高くすることにより二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、1)調製したコンクリート組成物の経時的な流動性の低下や空気量の低下を抑えて良好な施工性を確保すること、2)得られる硬化体の乾燥収縮率が高炉セメントB種を用いた場合に比べて大きくならないようにすること、3)得られる硬化体が必要な強度を発現すること、以上の1)〜3)の基本的な諸性能を同時に発現できるコンクリート組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、結合材として、高炉スラグ微粉末を高い割合で含有し、ポルトランドセメントを含有しない特定の高炉スラグ組成物を混和材と共に用いたコンクリート組成物が正しく好適であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成ることを特徴とする高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物に係る。
【0008】
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【0009】
本発明に係る高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物(以下、本発明のコンクリート組成物という)は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るものである。本発明のコンクリート組成物は結合材として特定の高炉スラグ組成物を用いたものであり、かかる高炉スラグ組成物は、粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加したものである。
【0010】
前記の高炉スラグ微粉末は、粉末度が3000〜13000cm/gのものを使用するが、好ましくは3000〜8000cm/gのものを使用し、より好ましくは3500〜6500cm/gのものを使用する。粉末度が3000〜13000cm/gの範囲を外れたものを使用すると、調製したコンクリート組成物の流動性が悪くなったり、得られる硬化体の強度発現が低下したりする。尚、本発明において粉末度はブレーン法による比表面積で表したものである。
【0011】
また石膏としては、無水石膏、二水石膏、半水石膏が挙げられるが、無水石膏が好ましい。無水石膏としては、それを90質量%以上の純度で含有するものであれば使用でき、天然無水石膏や副産無水石膏等を使用できる。粉末度は、3000〜8000cm/gのものが好ましく、3500〜6500cm/gのものがより好ましい。
【0012】
更に再生コンクリート微粉末としては、粉末度が2000〜7000cm/gのものを使用するのが好ましい。また水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%のものを使用するが、好ましくは6〜12質量%のものを使用する。解体コンクリートから分離する方法は特に限定されず、これには例えば、破砕機を用いて破砕する方法や破砕物どうしを機械ですりもむ方法が挙げられる。解体コンクリートから分離された再生コンクリート微粉末は、例えば、解体コンクリートから粗骨材や細骨材を取り除くことにより得ることができる。このとき解体コンクリートから分離された粗骨材や細骨材も再生品として使用することができる。解体コンクリートから分離した再生コンクリート微粉末であって、水酸化カルシウムを上記の含有率で含む再生コンクリート微粉末を得る手段としては、機械擦りもみ方式が好ましく、機械擦りもみ方式のなかでは偏心ロータ方式がより好ましい。以下、このような再生コンクリート微粉末の製造方法について説明する。本発明における好ましい再生コンクリート微粉末は、加熱を行わない機械擦りもみ方式により製造されることが、製造時の二酸化炭素の削減及び得られる微粉末の品質にばらつきがないという観点から好適である。特に、偏心ロータ方式や遊星ミル等の機械擦りもみ装置で製造する際に、機械すりもみプロセスを密閉された空間内で行い、空間内の空気中のCOを除去する方法、或いは、チッソガスなどの不活性ガスを封入する方法をとることで、処理中の炭酸化による水酸化カルシウム含有率の減少を抑制した再生コンクリート微粉末は本発明における如き、アルカリ刺激材として使用するのに最適な水酸化カルシウム含有率の微粉末を得ることができる。他方、解体コンクリート塊をジョークラッシャーやインペラーブレーカー等の破砕機を用いて破砕する方法においては、骨材とモルタル・ぺーストが同時に破砕されるため、再生コンクリート微粉末中に骨材粉が多くなり易く、また、微粉中の骨材粉とモルタル・ぺースト粉の比率もコンクリートの配(調)合によっては相当変化することとなり、高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激材として用いるには、品質のコントロールが極めて困難であり、また、加熱と機械擦りもみによって骨材を取り出す加熱すりもみ方式で製造した微粉末は骨材粉が少なく、アルカリ刺激材として適しているものの、加熱によって解体コンクリート中の水和物が変化する懸念があり、また、製造エネルギーが大きくなり、セメント製造時の二酸化炭素を削減するという観点からも好適とは言い難い。
【0013】
本発明のコンクリート組成物において、細骨材としては、公知の川砂、砕砂、山砂等を使用でき、粗骨材としては、公知の川砂利、砕石、軽量骨材等を使用できる。
【0014】
本発明のコンクリート組成物では、水/高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製するが、好ましくは35〜55%に調製する。かかる質量比が60%より大きいと、得られる硬化体の乾燥収縮が大きくなり過ぎたり、強度の低下が著しくなる。逆に、かかる質量比が30%より小さいと、調製したコンクリート組成物の流動性や空気量の経時的な低下が大きくなり、施工性が低下する。尚、本発明において水/高炉スラグ組成物の質量比は、(用いた水の質量/用いた高炉スラグ組成物の質量)×100で求められるものである。
【0015】
本発明のコンクリート組成物において、混和材としては、従来公知のコンクリート用に用いられるものが挙げられる。これには例えば、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等が挙げられる。本発明のコンクリート組成物では、セメント分散剤と乾燥収縮低減剤を、またセメント分散剤と膨張材を、更にはセメント分散剤と乾燥収縮低減剤と膨張材を混和材として使用することができる。
【0016】
セメント分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、セメント分散剤としては、ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体が好ましく、その構成単位の種類や組成比率及び分子量等の適切なポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体がより好ましい。かかるポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体としては、メタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体(例えば特開昭58−74552号公報、特開平1−226757号公報等に記載されているもの)、またマレイン酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体(例えば特開昭57−118058号公報、特開昭63−285140号公報、特開2005−132956号公報等に記載されているもの)が挙げられるが、そのなかでもセメント分散剤としては、メタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ水溶性ビニル共重合体がより好ましく、分子中に下記の構成単位Aを45〜85モル%、下記の構成単位Bを15〜55モル%及び下記の構成単位Cを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000(GPC法、プルラン換算、以下同じ)の水溶性ビニル共重合体が特に好ましい。
【0017】
構成単位A:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位B:分子中に5〜150個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位C:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0018】
以上説明したポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤それ自体は公知の方法で合成できる。それがメタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体の場合は、例えば特開昭58−74552号公報、特開平1−226757号公報等に記載されている方法で合成でき、またマレイン酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体の場合は、例えば特開昭57−118058号公報、特開2005−132956号公報、特開2008−273766号公報等に記載されている方法で合成できる。これらのポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤の使用量は、高炉スラグ組成物100質量部当たり、0.1〜1.5質量部の割合とするのが好ましい。
【0019】
乾燥収縮低減剤としては、公知のものを使用でき、特に限定されないが、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる乾燥収縮低減剤が好ましく、なかでもジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれるものが好ましい。かかる乾燥収縮低減剤の使用量は、高炉スラグ組成物100質量部当たり、0.2〜4.0質量部の割合とするのが好ましい。
【0020】
膨張材としては、公知のものを使用でき、大別してカルシウムスルホアルミネート系のものと石灰系のものとの2種類が挙げられる。いずれも水和反応によりエトリンガイト及び水酸化カルシウムを生成して膨張する無機系の混和材であり、コンクリート用膨張材として、JIS−A6202の規格を満足するものが好ましい。かかる膨張材の使用量は、コンクリート組成物1m当たり、10〜25kgの割合とするのが好ましい。
【0021】
本発明のコンクリート組成物を、通常3〜6容量%の空気を連行させたAEコンクリートとする場合、空気連行(AE)剤を補助剤として使用できる。かかるAE剤としては、公知のものを使用でき、特に限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン石けん、高級脂肪酸石けん、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等の公知のAE剤を使用できる。逆に、本発明のコンクリート組成物を調製する際に空気量過多になる場合には、消泡剤を単独使用したり、又は前記の空気連行剤と併用することができる。かかる消泡剤としては、公知のものを使用でき、特に限定されないが、ポリオキシアルキレングリコールエーテル誘導体、変性ポリジメチルシロキサン、リン酸トリアルキル等の消泡剤を使用できる。これらの空気量調節剤の使用量は、高炉スラグ組成物100質量部当たり、0.001〜0.01質量部の割合とするのが好ましい。
【0022】
本発明のコンクリート組成物は公知の方法で調製できるが、高炉スラグ組成物、水、細骨材及び粗骨材をミキサーで空練りする一方で、前記したセメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材、空気量調節剤等を適宜に練り混ぜ水で希釈し、しかる後に双方を練り混ぜる方法が好ましい。本発明のコンクリート組成物の調製に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤等の添加剤を併用することもできる。
【0023】
以上説明した本発明のコンクリート組成物によると、得られる硬化体は乾燥収縮率が800×10−6以下のものとなる。また本発明のコンクリート組成物は建設現場で打設されるコンクリート組成物としてだけでなく、コンクリート製品工場で加工される二次製品用のコンクリート組成物としても適用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、コンクリート組成物を調製するに当たり二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、調製したコンクリート組成物の経時的な流動性の低下や空気量の低下を抑えて良好な施工性を確保することができ、また得られる硬化体の乾燥収縮を抑制することができ、更に得られる硬化体に必要な強度を発現させることができるという効果がある。
【0025】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0026】
試験区分1(水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(p−1)の合成
メタクリル酸60g、メトキシポリ(オキシエチレン単位数が23個、以下n=23とする)エチレングリコールメタクリレート300g、メタリルスルホン酸ナトリウム5g、3−メルカプトプロピオン酸4g及び水490gを反応容器に仕込んだ後、48%水酸化ナトリウム水溶液58gを加え、攪拌しながら部分中和して均一に溶解した。反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液25gを加えてラジカル重合反応を開始し、5時間反応を継続して反応を終了した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液23gを加えて反応物を完全中和し、メタクリル酸塩から形成された単位を構成単位にもつポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体(p−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(p−1)を分析したところ、メタクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位/メタリルスルホン酸ナトリウムから形成された構成単位=70/27/3(モル%)の割合で有する質量平均分子量が33800の水溶性ビニル共重合体であった。
【0027】
・水溶性ビニル共重合体(p−2)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)の合成
水溶性ビニル共重合体(p−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(p−2)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)を合成した。以上で合成した各水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。

【0028】
【表1】

【0029】
表1において、
構成単位A〜C:各構成単位を形成することとなる単量体で表示した。
A−1:メタクリル酸ナトリウム
A−2:メタクリル酸
B−1:メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレート
B−2:メトキシポリ(n=68)エチレングリコールメタクリレート
B−3:メトキシポリ(n=9)エチレングリコールメタクリレート
C−1:メタリルスルホン酸ナトリウム
C−2:アリルスルホン酸ナトリウム
C−3:メチルアクリレート
【0030】
試験区分2(高炉スラグ組成物の調製)
表2に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、無水石膏、再生コンクリート微粉末を混合して高炉スラグ組成物を調製し、高炉スラグ組成物(S−1)〜(S−4)及び(R−1)〜(R−5)を得た。
【0031】
【表2】

【0032】
表2において、
sg−1:粉末度が4100cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5900cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が1020cm/gの高炉スラグ微粉末
gp−1:粉末度が4150cm/gの無水石膏
gp−2:粉末度が5800cm/gの無水石膏
rc−1:粉末度が5860cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が9.2%の再生コンクリート微粉末
rc−2:粉末度が4620cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が6.5%の再生コンクリート微粉末
rc−3:粉末度が4350cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が1.5%の再生コンクリート微粉末
【0033】
試験区分3(コンクリート組成物の調製)
実施例1〜16
表3に記載の配合条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、練り混ぜ水(水道水)、高炉スラグ組成物、細骨材(大井川水系産川砂、密度=2.58g/cm)の各所定量を投入し、またセメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等の混和材の各所定量を投入して、更に空気量調節剤(竹本油脂社製のAE剤、商品名AE−300)を投入し、45秒間練り混ぜた。最後に、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)の所定量を投入し、60秒間練り混ぜて、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%とした水/高炉スラグ組成物比が45%又は40%のコンクリート組成物を調製した。
【0034】
比較例1〜12
表3に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、水/高炉スラグ組成物比が45%のコンクリート組成物を調製した。
【0035】
比較例13及び14
表3に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、高炉セメントB種を用いた水/高炉スラグ組成物比が45%又は50%のコンクリート組成物を調製した。



















【0036】
【表3】

【0037】
表3において、
二酸化炭素排出量:コンクリート組成物1mを製造する場合の二酸化炭素の排出量(kg)。但し、石膏及び再生コンクリート微粉末の製造に必要なエネルギーに由来する二酸化炭素の排出量を除いてポルトランドセメントの使用量から計算した値
セメント分散剤の種類:表1に記載した水溶性ビニル共重合体又は下記のP−5
P−5:ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤として、竹本油脂社製の商品名チューポールHP−11W(マレイン酸とα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンとの共重合体塩)
使用量:高炉スラグ組成物100質量部当たりの、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤又は膨張材の固形分としての質量部
高炉スラグ組成物の種類:表2に記載したもの
*1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
*2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
*3:太平洋マテリアル社製の商品名が太平洋ハイパーエクスパン(石灰系膨張材)
*4:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm、ブレーン値3850cm/g、ポルトランドセメントを50%含有)
【0038】
試験区分4(調製したコンクリート組成物の評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求めた。また各コンクリート組成物から得た硬化体について、乾燥収縮率及び圧縮強度を下記のように求めた。
【0039】
・空気量(容量%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び更に60分間静置後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例のコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体についてコンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例のコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日及び材齢28日で測定した。
【0040】
結果を表4にまとめて示した。各実施例で調製した本発明のコンクリート組成物は、高炉セメントB種を用いた場合に比べて、コンクリート1mを製造するための二酸化炭素の排出量が少なく、またコンクリート組成物の経時的な流動性に優れ、得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6よりも小さく、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。
























【0041】
【表4】

【0042】
表4において、
比較例2、3及び10〜12:目標とする流動性(スランプ値)が得られなかったので測定しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成ることを特徴とする高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【請求項2】
石膏が無水石膏である請求項1記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項3】
高炉スラグ微粉末が、その粉末度が3500〜6500cm/gのものである請求項1又は2記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項4】
再生コンクリート微粉末が、その水酸化カルシウム含有率が6〜12質量%のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項5】
混和材の少なくとも一部として、ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤を、高炉スラグ組成物100質量部当たり0.1〜1.5質量部の割合で含有する請求項1〜4のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項6】
ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体が、分子中に下記の構成単位Aを45〜85モル%、下記の構成単位Bを15〜55モル%及び下記の構成単位Cを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量が2000〜80000のものである請求項5記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
構成単位A:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位B:分子中に5〜150個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位C:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【請求項7】
混和材の少なくとも一部として、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる乾燥収縮低減剤を、高炉スラグ組成物100質量部当たり0.2〜4.0質量部の割合で含有する請求項1〜6のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項8】
乾燥収縮低減剤が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれるものである請求項7記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項9】
混和材の少なくとも一部として、膨張材を、コンクリート組成物1m当たり10〜25kgの割合で含有する請求項1〜8のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項10】
水/高炉スラグ組成物の質量比を35〜55%に調製した請求項1〜9のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。
【請求項11】
得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6以下となるものである請求項1〜10のいずれか一つの項記載の高炉スラグ組成物を用いたコンクリート組成物。

【公開番号】特開2010−285289(P2010−285289A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137959(P2009−137959)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/エネルギー・CO2ミニマム(ECM)セメント・コンクリートシステムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】