高炉操業方法
【課題】鉱石コークス混合装入法を用いた高炉操業において、還元効率を高めてコークスの使用量を低減することができる高炉操業方法を提供する。
【解決手段】炉頂バンカー11内上部に、炉頂バンカー11へ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板12を設ける。そして、炉頂バンカー11への混合原料(コークス混合鉱石層を形成するための鉱石とコークスとを混合した原料)の装入中に、偏析制御板12の傾斜角を、混合原料の落下位置が炉頂バンカー11の排出口の上方近傍の位置となる第1傾斜角から、排出口の上方近傍から水平方向で遠ざかる位置となる第2傾斜角へ切り替える。これにより、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加させる。
【解決手段】炉頂バンカー11内上部に、炉頂バンカー11へ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板12を設ける。そして、炉頂バンカー11への混合原料(コークス混合鉱石層を形成するための鉱石とコークスとを混合した原料)の装入中に、偏析制御板12の傾斜角を、混合原料の落下位置が炉頂バンカー11の排出口の上方近傍の位置となる第1傾斜角から、排出口の上方近傍から水平方向で遠ざかる位置となる第2傾斜角へ切り替える。これにより、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉頂から原料を装入してコークス層とコークス混合鉱石層とを交互に形成する高炉の操業方法に関し、特にコークス混合鉱石層を形成するに際し、鉱石とコークスとをあらかじめ混合させた混合原料を装入する鉱石コークス混合装入法を用いた高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の効率的な操業のためには、炉内のガスを半径方向に適切に分配する必要がある。そこで、炉内ガス流分布を制御するために、コークスの装入地点を調整し、主として通気の確保が行われてきた。さらに、近年では炉頂装入設備が発展したことから、鉱石−コークスの混合装入が可能となり、通気と還元効率双方の向上が可能となっている。
高炉操業では、通常、炉頂から鉱石とコークスとをそれぞれが交互に層状となるように装入して鉱石層とコークス層とを形成している。これに対して、鉱石層中にコークスをあらかじめ混合させて装入することで、鉱石層自体の還元性を向上させる方法が鉱石コークス混合装入法である(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
鉱石層とコークス層とを形成する通常の操業では、融着帯において、鉱石層の空隙率の低下により通気性が悪化し、鉱石とコークスの接触が少なく還元反応が停滞する。一方、鉱石コークス混合装入法では、融着帯において、鉱石中に混合されたコークスにより融着層の粗大化が抑制されるため、空隙が確保され、通気性が向上し、その結果、鉱石とコークスとの接触が増加して還元性が向上する。
特許文献1に記載の技術においては、ベルレス装入装置を用いて鉱石コークス混合装入を行うために、鉱石とコークスとをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、炉頂バンカーから高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法を採用している。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術においては、複数の炉頂バンカーを有するベルレス装入装置を用いて高炉に原料を装入する際に、鉱石とコークスとを別々の炉頂バンカーに装入し、炉頂バンカーからの排出時に鉱石とコークスの一部を同時に排出して高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法を採用している。
これらの技術は、コークスの単独装入と、鉱石コークス混合装入とを交互に行う方法である。コークスと鉱石とが混合されたコークス混合鉱石層では、鉱石とコークスとがほぼ均一に混合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−211210号公報
【特許文献2】特開2004−107794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、環境問題の観点から、高炉でのコークスの使用量をできるだけ低減できる技術の開発が求められている。したがって、鉱石コークス混合装入法においても、還元効率を一層向上させて、高炉におけるコークスの使用量を低減することが期待される。
そこで、本発明は、鉱石コークス混合装入法を用いた高炉操業において、還元効率を高めてコークスの使用量を低減することができる高炉操業方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る高炉操業方法は、炉頂バンカーに貯留された原料を、該炉頂バンカーの下方に設置した旋回シュートを介して炉頂から装入し、鉱石層とコークス層とを交互に形成する高炉操業方法であって、前記鉱石層は、前記炉頂バンカーに貯留された鉱石とコークスとの混合原料により形成されるコークス混合鉱石層であり、前記炉頂バンカー内上部に、該炉頂バンカーへ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板を設け、前記炉頂バンカーへの前記混合原料の装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を、前記混合原料の落下位置が前記炉頂バンカーの排出口の直上位置となる第1傾斜角から、前記混合原料の落下位置が前記排出口の直上位置から水平方向に離れた側壁位置となる第2傾斜角へ切り替えることを特徴としている。
【0008】
このように、炉頂バンカーに混合原料を装入するに際し、先ず初めに偏析制御板を第1傾斜角として、混合原料の落下位置を炉頂バンカーの排出口の上方近傍の位置とし、その後、偏析制御板を第2傾斜角に切り替え、混合原料の落下位置を上記排出口から遠い位置とする。これにより、炉頂バンカー内で、混合原料中のコークスを上記排出口から遠い位置に偏析して堆積させることができる。さらにこのとき、炉頂バンカー内で、混合原料中のコークスが上記排出口から遠い位置に集中しすぎるのを抑制することができる。
【0009】
炉頂バンカー中に堆積した混合原料は排出口の直上から排出されるため、上記のように堆積された混合原料を炉頂バンカーの排出口から排出した場合、混合原料のコークス混合率は、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加することになる。したがって、炉頂バンカーから排出される混合原料を、旋回シュートを介して炉内の下層から上層へ順次装入すると、炉内で形成されたコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができる。
これにより、炉内において、コークス混合鉱石層の下方ではコークス層からの還元ガスを、上方ではコークス混合鉱石層内に混合されたコークスから発生する還元ガスを、鉱石の還元に利用することができ、還元ガスを効率的に利用することができる。
【0010】
また、上記において、前記偏析制御板の傾斜角を第1傾斜角として前記炉頂バンカーに装入する前記混合原料の量を、当該混合原料の前記炉頂バンカーへの総装入量の60mass%以上95mass%以下とすることを特徴としている。
これにより、炉頂バンカーから排出される混合原料のコークス混合率が排出末期で急増することを防止しつつ、当該コークス混合率を排出初期から排出後期にかけて確実に増加させることができる。
【0011】
さらに、上記において、前記コークス混合鉱石層を形成するための混合原料の高炉への装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの少なくとも2バッチに分割し、前記炉周辺部への装入バッチで高炉へ装入する前記混合原料の前記炉頂バンカーへの装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角から前記第2傾斜角へ切り替える制御を行うことを特徴としている。
これにより、炉周辺部に形成されるコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができ、炉周辺部における還元ガスを効率的に利用することが可能となる。このように、一般に比較的ガス利用率が低くなる傾向がある炉周辺部の還元効率を改善することで、高炉全体の還元効率を効果的に改善することができる。
【0012】
また、上記において、前記炉周辺部は、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径r/Rが0.7以上1以下の領域内で設定することを特徴としている。
このように、炉周辺部を0.7≦r/R≦1の領域内で設定することで、より効果的に高炉全体の還元効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができるので、鉱石の還元効率を高めることができ、効率的な高炉の操業が可能となる。また、鉱石の還元効率の向上によりコークスの使用量を低減することができるので、CO2の発生を削減して、地球環境に貢献した操業とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】均一混合のコークス混合鉱石層の模式図である。
【図2】コークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層の模式図である。
【図3】鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。
【図4】鉱石層とコークス層の一例を模式的に示す側面断面図である。
【図5】偏析制御板の傾斜角の違いによる混合原料の堆積状況の違いを示す図である。
【図6】本実施形態での炉頂バンカー内の混合原料の堆積状況を示す図である。
【図7】炉頂バンカーから排出される混合原料中のコークス混合率の変化を示す図である。
【図8】偏析制御板の傾斜角を、混合原料の装入量が95mass%超えで第1傾斜角から第2傾斜角に切替えて装入した場合の炉頂バンカー内の混合原料の堆積状況を示す図である。
【図9】コークス混合鉱石層内の還元率分布の測定結果である。
【図10】鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。
【図11】ベルレス装入装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者らは、鉱石層中にコークスが混合されたコークス混合鉱石層におけるコークスの上部偏析の効果を調査するために、荷重軟化試験装置を用いて試験を行った。
荷重軟化試験装置は、高炉内で原料が受ける温度、雰囲気、荷重を再現するものであり、直径100mmの黒鉛るつぼ内に装入した原料を還元ガス雰囲気で所定の温度に加熱して試験を行った。
【0016】
このような荷重軟化試験装置にて、コークス層の上に、鉱石層として鉱石のみの層を積層した場合(混合なし)と、鉱石層としてコークスと鉱石とを均一に混合したコークス混合鉱石層を積層した場合(均一混合)と、鉱石層としてコークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層を積層した場合(上部偏析)とを用いて実験を行い、それぞれの場合の鉱石の平均還元率を測定した。
ここで、試料としては、コークス層を形成する原料には、平均粒径15mm〜25mmの塊コークスを、コークス混合鉱石層を形成する原料には、平均粒径8mm〜10mmの鉱石と平均粒径8mm〜10mmのコークスとを用いた。
【0017】
図1は、均一混合のコークス混合鉱石層の模式図であり、図中符号1は鉱石、符号2はコークスである。この均一混合のコークス混合鉱石層の平均コークス混合率は、120kg/t−p相当とした。ここで、kg/t−pは、溶銑1トンあたりのコークス量を示す単位である。
図2は、上部偏析のコークス混合鉱石層の模式図である。この上部偏析のコークス混合鉱石層の平均コークス混合率は、上記の均一混合のコークス混合鉱石層と同じ120kg/t−p相当とし、上部50体積%内の平均コークス混合率を170kg/t−p相当、下部50体積%内の平均コークス混合率を70kg/t−p相当とした。すなわち、この上部偏析の例では、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの70mass%程度を混合した。
【0018】
図3は、鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。この図3に示すように、コークスと鉱石との混合装入を行うことで、鉱石の単独装入と比べて還元率が向上し、さらにコークスを上部に偏析させることで、還元率がより一層向上している。このように、鉱石層をコークス混合鉱石層とし、さらにこのコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることで、還元効率を向上させる効果があることが分かった。
均一混合のコークス混合鉱石層を適用した場合、コークス層とコークス混合鉱石層とが層状に重なる炉内において、マクロ的にはコークス層とその上部に積層されたコークス混合鉱石層との境界では、コークス層近傍の鉱石量に対して還元ガスの量が余剰である。そのため、還元効率が低下してしまう。
【0019】
これに対して、上部偏析されたコークス混合鉱石層を適用した場合には、炉内において、コークス混合鉱石層の下方ではコークス層からの還元ガスを、上方ではコークス混合鉱石層内に混合されたコークスから発生する還元ガスを、鉱石の還元に利用することができる。そのため、還元ガスを効率的に利用することができ、トータルの還元効率が向上すると考えられる。
そこで、本実施形態では、鉱石層を、コークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層とし、コークス混合鉱石層の上方をコークスが密の状態に、下方をコークスが粗の状態とする。
【0020】
この場合、コークス混合鉱石層内の上部ほどコークス密度の高い状態であることが好ましく、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの60mass%以上が混合されていることが好ましい。さらに好ましくは、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの70mass%以上が混合されていることである。
【0021】
なお、実際に高炉内に形成されるコークス混合鉱石層の表面は水平ではなく、高さ分布を有する。つまり、その上面高さ位置は、炉内半径位置により異なる。上記において、コークス混合鉱石層の上半分である上部50体積%とは、コークス混合鉱石層の任意の範囲における、コークス混合鉱石層の上面から、コークス混合鉱石層の垂直方向の厚さの50%に相当する距離だけ垂直下方向に離れた点を結んで形成される曲面を仮想した場合、該曲面より上部に位置するコークス混合鉱石層の体積をいう。
【0022】
コークス混合鉱石層内に混合させるコークス量については、多いことが好ましく、コークスを炉頂から装入する全コークス量に対して10mass%以上、特に好ましくは30mass%以上コークス混合鉱石層内に混合すると還元効率向上の効果が高い。一方で、コークスをコークス混合鉱石層内に混合する量が多すぎると、コークス層が薄くなり、融着帯でコークススリットが薄くなるため炉下部での通気性が悪化する。したがって、コークス混合鉱石層内に混合するコークスは、コークスを炉頂から装入する全コークス量に対して50mass%以下とすることが好ましい。
【0023】
図4は、本発明に係る高炉操業方法を用いて形成した一例での鉱石層とコークス層を模式的に示す側面断面図である。
この図4(a)において、r/Rは、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径であり、r/R=0は高炉の中心位置、r/R=1は炉壁位置を示している。
【0024】
コークス層を形成する際には、当該コークス層を形成する1チャージ分のコークスを2バッチに分割して炉頂から装入し、1バッチ目でコークス層3aを形成し、2バッチ目でコークス層3bを形成した。また、鉱石層を形成する際には、当該鉱石層を形成するための原料の装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの2バッチに分割し、1バッチ目で炉中心部の鉱石層4aを形成し、2バッチ目で炉周辺部の鉱石層4bを形成した。なお、炉周辺部は、r/Rが0.7以上1.0以下の領域とした。
【0025】
ここで、鉱石層4a,4bは、鉱石とコークスとが混合されたコークス混合鉱石層である。また、本実施形態では、鉱石層4aを均一混合のコークス混合鉱石層、鉱石層4bを上部偏析のコークス混合鉱石層とする。
炉頂バンカーから排出される原料を、ベルレス装入装置の旋回シュートを用いて炉内に旋回装入した場合、例えば鉱石層4bの場合を図4(b)に示すように、装入初期の混合原料は下層部へ、装入後期の混合原料は上層部へと、下層から上層へ順次堆積する。
したがって、この鉱石層4b内でコークスを上部偏析させるためには、炉頂バンカーから排出する鉱石層4bを形成するための混合原料のコークス混合率(=コークス量/(鉱石量+コークス量))を、排出初期から排出後期にかけて増加させればよい。以下、コークスを鉱石層内で上部偏析させる方法について説明する。
【0026】
ところで、コークスを鉱石層内に均一に混合させる方法としては、炉頂バンカーと旋回シュートを有するベルレス装入装置を用い、鉱石とコークスをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、炉頂バンカー受け入れ時に混合させてから高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法や、複数の炉頂バンカーからの排出時に鉱石とコークスの一部を同時に排出して高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法等が知られている。
【0027】
コークスを鉱石層内に偏析させるには、例えば上記において、切り出しの際にコークスの混合量を変更したり、複数の炉頂バンカーから鉱石とコークスの一部を同時に排出する際に、炉頂バンカーからの排出量や排出速度を、流量調整ゲート等を用いて調節して、コークスの混合割合を変えたりすることで対応できる。しかしこのような方法では、原料装入工程が複雑となり、非効率な操業となるおそれがある。また、流量調整ゲートを有していない設備では対応が困難な場合もある。
【0028】
そこで、本実施形態では、より簡易且つ効果的に上部偏析させる方法として、図5に示すように、炉頂バンカー11内上部に、該炉頂バンカー11へ装入される原料の落下方向を変更する傾動自在な偏析制御板12を設け、当該偏析制御板12を活用した方法を採用する。
すなわち、炉頂バンカー11への原料装入中に偏析制御板12の傾斜角を変更することで、混合原料の落下位置を装入初期と装入後期とで変更するようにする。このようにして、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率が排出初期から排出後期になるにつれて徐々に増加するような原料分布を形成しながら、炉頂バンカー11に混合原料を堆積させる。以下、この方法について具体的に説明する。
【0029】
ここでは、図5に示すように、炉頂バンカー11の排出口13が、該炉頂バンカー11の上方から見て中心から一方へ寄った位置に設けられている場合について説明する。
図5(a)は、炉頂バンカー11内の偏析制御板12の角度を、排出口13側(以下、バンカー中心寄りという)に傾斜するように設定した場合である。このとき、偏析制御板12の傾斜角を、炉頂バンカー11に装入される混合原料が矢印Aに示すように排出口13の直上位置に落下する角度(第1傾斜角)に設定すると、鉱石1はバンカー中心寄りに堆積するが、鉱石1より粒径が大であるコークス2はバンカー外周寄りに流れ込む。
【0030】
これに対して、図5(b)は、炉頂バンカー11内の偏析制御板12の角度を、水平方向で排出口13側とは反対側(以下、バンカー外周寄りという)に傾斜するように設定した場合である。このとき、偏析制御板12の角度を、炉頂バンカー11に装入される混合原料が矢印Bに示すように排出口13の直上位置から水平方向に離れた側壁位置に落下する角度(第2傾斜角)に設定すると、鉱石1はバンカー外周寄りに堆積するが、鉱石1より粒径が大であるコークス2はバンカー中心寄りに流れ込む。
【0031】
炉頂バンカー11に堆積した混合原料は、排出口13の直上が先に排出される。したがって、図5(a)の場合には、混合原料中のコークスがバンカー外周寄りに集中しているため、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は排出後期で増加するものの、排出末期で急増してしまう。つまり、コークス混合率が排出初期から排出後期にかけてほぼ均一に増加するような理想的な結果が得られない。一方、図5(b)の場合には、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は、排出後期で増加しない。
【0032】
本実施形態では、炉頂バンカー11に混合原料を装入する場合に、装入初期は図5(a)のようにして、炉頂バンカー11に装入される混合原料をバンカー中心寄りに落下させ、装入末期は図5(b)のようにして、炉頂バンカー11に装入される混合原料をバンカー外周寄りに落下させるようにする。
これにより、図6に示すように、炉頂バンカー内でコークス2をバンカー外周寄りに堆積させつつ、その一部2aをバンカー中心寄りに堆積させる。すなわち、バンカー外周寄りのコークスの集中を抑制するようにする。その結果、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出末期で急激に増加することなく、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加するようにする。
【0033】
図7は、原料装入中における偏析制御板12の角度の違いによる混合原料中のコークス混合率の変化を示す図である。この図7は模型試験の結果であり、鉱石の平均粒径は1.5mm、コークスの平均粒径は2.0mmとした。
比較例1として、偏析制御板12を、装入初期から装入後期までの全期間で図5(b)に示すように混合原料をバンカー外周寄りに落下させるようにして炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。
【0034】
また、比較例2としては、偏析制御板12を、装入初期から装入後期までの全期間で図5(a)に示すように混合原料をバンカー中心寄りに落下させるようにして炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。
実施例1としては、偏析制御板12を、装入初期は図5(a)に示す第1傾斜角、装入後期は図5(b)に示す第2傾斜角として炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。この実施例1では、炉頂バンカー11内に装入する混合原料のうち、80mass%を第1傾斜角、残りの20mass%を第2傾斜角で装入した。
【0035】
また、実施例2としては、偏析制御板12を、装入初期は図5(a)に示す第1傾斜角、装入後期は図5(b)に示す第2傾斜角として炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。この実施例2では、炉頂バンカー11内に装入する混合原料のうち、60mass%を第1傾斜角、残りの40mass%を第2傾斜角で装入した。
図7を参照すると、比較例1では、排出初期から排出後期にかけてコークス混合率に大きな変化はなく、このようにして炉頂バンカー11から排出された混合原料により形成されるコークス混合鉱石層は、均一混合となることがわかる。
【0036】
比較例2では、比較例1と比較して、炉頂バンカー11からの排出初期から排出後期にかけてコークス混合率が増加していることがわかる。特に、装入初期から装入後期までの全期間で図5(a)に示す装入により、混合原料中のコークスの大部分をバンカー外周寄りに堆積させると、炉頂バンカーから排出される原料のコークス混合率が排出末期で急激に増加することがわかる。これにより、比較例2の条件で炉頂バンカーから排出された混合原料により形成されるコークス混合鉱石層は、最上層部にコークスが密集した上部偏析となることがわかる。
【0037】
一方、実施例1,2のように、装入初期は第1傾斜角で混合原料をバンカー中心寄りに落下させ、排出後期は第2傾斜角で混合原料をバンカー外周寄りに落下させると、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は排出初期から排出後期にかけて増加するが、比較例2のように排出末期で急激に増加することはない。また、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が装入量の60mass%以上であれば、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出後期にかけて増加させられることもわかった。
【0038】
また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1は、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が80mass%と多いため、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が60mass%の実施例2よりも炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率が排出末期で増加する比率が大きいことがわかる。
ただし、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が多すぎると、混合原料の落下位置をバンカー外周寄りに変えても、炉頂バンカー11内でコークスがバンカー外周寄りからバンカー中心寄りに向けて流れ込む効果が得られないため、混合原料のコークス混合率が排出末期で急激に増加してしまい、好ましくない。
【0039】
図8は、炉頂バンカー11に装入される混合原料の装入量が95mass%を超えてから、偏析制御板12を第1傾斜角から第2傾斜角に切り替えた場合の炉頂バンカー11内の混合原料の堆積状況を示す図である。このように、バンカー外周寄りに装入した混合原料中のコークス2aは、バンカー中心寄りに流れ込むことができず、バンカー外周寄りに堆積してしまう。そのため、図8に示すように堆積された混合原料を排出した場合、コークス混合率は排出末期で急増してしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、バンカー中心寄りに装入する混合原料の量を、炉頂バンカー11に装入する混合原料の総装入量の60mass%以上95mass%以下とする。これにより、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出初期から排出後期にかけて徐々に増加させるようにする。そして、炉内に形成されるコークス混合鉱石層内で、下層部から上層部にかけてコークスが徐々に密になるように、コークスを上部偏析させる。
【0041】
次に、上述した比較例1、比較例2、実施例1および実施例2について、それぞれ荷重軟化試験によるコークス混合鉱石層内の還元率分布を測定した。その結果を図9に示す。
図9を参照すると、均一混合の比較例1では、コークス混合鉱石層の高さが高くなるほど(上層部ほど)還元率が低くなっていることがわかる。一方、排出末期で急激にコークス混合率が増加する上部偏析の比較例2では、コークス混合率が高い最上部の還元率が大きく改善されていることがわかる。これに対して、排出後期で全体的にコークス混合率が増加する上部偏析の実施例1及び実施例2では、上層部で全体的に還元率が改善されていることがわかる。
【0042】
さらに、上述した比較例1、比較例2、実施例1および実施例2について、鉱石の平均還元率を測定したところ、図10に示す結果が得られた。
この図10を参照すると、上部偏析の比較例2では、均一混合の比較例1と比較して全体の平均還元率が向上していることがわかる。しかしながら、実施例1および実施例2では、比較例2に対して平均還元率がさらに向上している。
【0043】
すなわち、装入初期から装入後期までの全期間バンカー中心寄りに装入するよりも、排出初期でバンカー中心寄りに装入し、その後の排出後期でバンカー外周寄りに装入する方が、全体の平均還元率を向上させることができることがわかった。また、バンカー中心寄りへの装入を80mass%とした実施例1の方が、バンカー中心寄りへの装入を60mass%とした実施例2よりも平均還元率が改善されていることもわかった。
【0044】
(実施例)
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
ここでは、内容積5000m3を超える大型高炉において、比較的ガス利用率が低い傾向がある高炉の無次元半径r/Rで0.7以上1.0以下の範囲に、コークス層と、コークスと鉱石とが混合されたコークス混合鉱石層とを交互に堆積させる操業を行った。コークス層およびコークス混合鉱石層を形成する原料は、図11に示すベルレス装入装置10により高炉20へ装入するようにした。
【0045】
ベルレス装入装置10は、図11に示すように、鉱石とコークスとを混合した混合原料が貯留される炉頂バンカー11と、コークスのみが貯留される炉頂バンカー14とを備える。そして、炉頂バンカー11,14の下部に設けられたゲート15,16の開閉により集合ホッパー17に装入された炉頂バンカー11内の混合原料、または炉頂バンカー14内のコークスが、旋回シュート18により高炉20に装入されるようになっている。
混合原料を炉頂バンカー11に貯留する際には、鉱石とコークスをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、サージホッパーを介して炉頂バンカー11に装入した。このとき、ゲート15は原料装入制御部30によって閉状態に制御した。
【0046】
また、炉頂バンカー11には、当該炉頂バンカー11に装入された混合原料の質量を測定する、例えばロードセルで構成される質量計31が設けられており、原料装入制御部30は、質量計31で測定した炉頂バンカー11の質量変化(混合原料の装入量に対応)に応じて、炉頂バンカー11内上部に設置された偏析制御板12の傾斜角を混合原料の落下位置が中心寄りまたは外周寄りになるように制御するようにした。
さらに、高炉内でコークス混合鉱石層を形成するための混合原料は2バッチに分割して高炉20へ装入した。このとき、1バッチ目は高炉20の中心〜中間部に装入し、2バッチ目を高炉20の周辺部(r/R=0.7)に装入した。
【0047】
ここで、比較例としては、炉頂バンカー11に混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目共に第2傾斜角で100mass%装入した。すなわち、1バッチ目、2バッチ目共に、装入初期から装入後期までの全期間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に維持し、混合原料を装入した。
そして、その炉頂バンカー11から高炉20へ混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目ともに、旋回シュート18を逆傾動(炉中心から炉壁方向へと傾動)とした。このようにして、コークスがほぼ均一に分布したコークス混合鉱石層を形成し、操業を行った。
【0048】
一方、実施例としては、炉頂バンカー11に混合原料を装入するに際し、1バッチ目は第2傾斜角で100mass%装入し、2バッチ目は第1傾斜角で80mass%装入した後、第2傾斜角で20mass%装入する方法とした。すなわち、1バッチ目では、装入初期から装入後期までの全期間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に維持し、混合原料を装入した。
そして、2バッチ目では、混合原料が80mass%装入されるまでの間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(a)に示す第1傾斜角とし、質量計31によって混合原料が80mass%装入されたことを検出したとき、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に切り替えて、混合原料を装入した。これにより、2バッチ目の混合原料のコークス混合率は、図7の実施例1に示されるように、排出後期になるにつれて徐々に上昇するようにした。
【0049】
そして、その炉頂バンカー11から高炉20へ混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目ともに、旋回シュート18を逆傾動(炉中心から炉壁方向へと傾動)とした。このように、1バッチ目で炉中心〜中間部に均一混合のコークス混合鉱石層を形成し、2バッチ目で高炉の無次元半径で約0.7〜1.0の範囲に、コークスが上部に偏析された上部偏析のコークス混合鉱石層を形成して操業を行った。
ここで、鉱石の平均粒径、混合コークスの平均粒径は、比較例、実施例ともにそれぞれ15mm、25mmとした。操業条件及び操業結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
なお、表1における通気抵抗指数は、高炉シャフト部での通気抵抗を指数化した指標であり、下記(1)式より計算した。
通気抵抗指数=((A2−B2)/C)×(1/D1.7)×(273/E) ………(1)
但し、
A=((BP/98.0665)+1.033)×10000,
B=((TP/98.0665)+1.033)×10000,
C=1.033×10000×LST,
D=BGV/SAVE,
E=((SGT+273)/2)+273
であり、BPは送風圧力[kPa]、TPは炉頂圧力[kPa]、LSTはストックラインから羽口までの距離[m]、BGVはボッシュガス流量[Nm3/min]、SAVEは高炉シャフト部の平均水平断面積[m2]、SGTは高炉シャフト部の代表ガス温度(1000℃に固定)である。
【0052】
また、表1におけるガス利用率は、炉頂ガス中のCOとCO2の合計量に対するCO2の比率である。
この表1において比較例と実施例の操業を比較すると、上部偏析とすることで、通気抵抗指数は同等であるにもかかわらず、還元効率が改善した効果によりガス利用率が上昇して、還元材比(コークス比+微粉炭比)が低下することがわかる。また、コークス比も低下することがわかる。
以上の結果より、本発明は、高炉の還元効率の改善技術として有効であり、さらに、低コークス比操業技術としても有効であることが確認された。
【符号の説明】
【0053】
1…鉱石、2…コークス、3a,3b…コークス層、4a,4b…鉱石層、10…ベルレス装入装置、11…炉頂バンカー、12…偏析制御板、13…排出口、14…炉頂バンカー、15,16…ゲート、17…集合ホッパー、18…旋回シュート、20…高炉、30…原料装入制御部、31…質量計
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉頂から原料を装入してコークス層とコークス混合鉱石層とを交互に形成する高炉の操業方法に関し、特にコークス混合鉱石層を形成するに際し、鉱石とコークスとをあらかじめ混合させた混合原料を装入する鉱石コークス混合装入法を用いた高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の効率的な操業のためには、炉内のガスを半径方向に適切に分配する必要がある。そこで、炉内ガス流分布を制御するために、コークスの装入地点を調整し、主として通気の確保が行われてきた。さらに、近年では炉頂装入設備が発展したことから、鉱石−コークスの混合装入が可能となり、通気と還元効率双方の向上が可能となっている。
高炉操業では、通常、炉頂から鉱石とコークスとをそれぞれが交互に層状となるように装入して鉱石層とコークス層とを形成している。これに対して、鉱石層中にコークスをあらかじめ混合させて装入することで、鉱石層自体の還元性を向上させる方法が鉱石コークス混合装入法である(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
鉱石層とコークス層とを形成する通常の操業では、融着帯において、鉱石層の空隙率の低下により通気性が悪化し、鉱石とコークスの接触が少なく還元反応が停滞する。一方、鉱石コークス混合装入法では、融着帯において、鉱石中に混合されたコークスにより融着層の粗大化が抑制されるため、空隙が確保され、通気性が向上し、その結果、鉱石とコークスとの接触が増加して還元性が向上する。
特許文献1に記載の技術においては、ベルレス装入装置を用いて鉱石コークス混合装入を行うために、鉱石とコークスとをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、炉頂バンカーから高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法を採用している。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術においては、複数の炉頂バンカーを有するベルレス装入装置を用いて高炉に原料を装入する際に、鉱石とコークスとを別々の炉頂バンカーに装入し、炉頂バンカーからの排出時に鉱石とコークスの一部を同時に排出して高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法を採用している。
これらの技術は、コークスの単独装入と、鉱石コークス混合装入とを交互に行う方法である。コークスと鉱石とが混合されたコークス混合鉱石層では、鉱石とコークスとがほぼ均一に混合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−211210号公報
【特許文献2】特開2004−107794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、環境問題の観点から、高炉でのコークスの使用量をできるだけ低減できる技術の開発が求められている。したがって、鉱石コークス混合装入法においても、還元効率を一層向上させて、高炉におけるコークスの使用量を低減することが期待される。
そこで、本発明は、鉱石コークス混合装入法を用いた高炉操業において、還元効率を高めてコークスの使用量を低減することができる高炉操業方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る高炉操業方法は、炉頂バンカーに貯留された原料を、該炉頂バンカーの下方に設置した旋回シュートを介して炉頂から装入し、鉱石層とコークス層とを交互に形成する高炉操業方法であって、前記鉱石層は、前記炉頂バンカーに貯留された鉱石とコークスとの混合原料により形成されるコークス混合鉱石層であり、前記炉頂バンカー内上部に、該炉頂バンカーへ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板を設け、前記炉頂バンカーへの前記混合原料の装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を、前記混合原料の落下位置が前記炉頂バンカーの排出口の直上位置となる第1傾斜角から、前記混合原料の落下位置が前記排出口の直上位置から水平方向に離れた側壁位置となる第2傾斜角へ切り替えることを特徴としている。
【0008】
このように、炉頂バンカーに混合原料を装入するに際し、先ず初めに偏析制御板を第1傾斜角として、混合原料の落下位置を炉頂バンカーの排出口の上方近傍の位置とし、その後、偏析制御板を第2傾斜角に切り替え、混合原料の落下位置を上記排出口から遠い位置とする。これにより、炉頂バンカー内で、混合原料中のコークスを上記排出口から遠い位置に偏析して堆積させることができる。さらにこのとき、炉頂バンカー内で、混合原料中のコークスが上記排出口から遠い位置に集中しすぎるのを抑制することができる。
【0009】
炉頂バンカー中に堆積した混合原料は排出口の直上から排出されるため、上記のように堆積された混合原料を炉頂バンカーの排出口から排出した場合、混合原料のコークス混合率は、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加することになる。したがって、炉頂バンカーから排出される混合原料を、旋回シュートを介して炉内の下層から上層へ順次装入すると、炉内で形成されたコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができる。
これにより、炉内において、コークス混合鉱石層の下方ではコークス層からの還元ガスを、上方ではコークス混合鉱石層内に混合されたコークスから発生する還元ガスを、鉱石の還元に利用することができ、還元ガスを効率的に利用することができる。
【0010】
また、上記において、前記偏析制御板の傾斜角を第1傾斜角として前記炉頂バンカーに装入する前記混合原料の量を、当該混合原料の前記炉頂バンカーへの総装入量の60mass%以上95mass%以下とすることを特徴としている。
これにより、炉頂バンカーから排出される混合原料のコークス混合率が排出末期で急増することを防止しつつ、当該コークス混合率を排出初期から排出後期にかけて確実に増加させることができる。
【0011】
さらに、上記において、前記コークス混合鉱石層を形成するための混合原料の高炉への装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの少なくとも2バッチに分割し、前記炉周辺部への装入バッチで高炉へ装入する前記混合原料の前記炉頂バンカーへの装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角から前記第2傾斜角へ切り替える制御を行うことを特徴としている。
これにより、炉周辺部に形成されるコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができ、炉周辺部における還元ガスを効率的に利用することが可能となる。このように、一般に比較的ガス利用率が低くなる傾向がある炉周辺部の還元効率を改善することで、高炉全体の還元効率を効果的に改善することができる。
【0012】
また、上記において、前記炉周辺部は、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径r/Rが0.7以上1以下の領域内で設定することを特徴としている。
このように、炉周辺部を0.7≦r/R≦1の領域内で設定することで、より効果的に高炉全体の還元効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることができるので、鉱石の還元効率を高めることができ、効率的な高炉の操業が可能となる。また、鉱石の還元効率の向上によりコークスの使用量を低減することができるので、CO2の発生を削減して、地球環境に貢献した操業とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】均一混合のコークス混合鉱石層の模式図である。
【図2】コークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層の模式図である。
【図3】鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。
【図4】鉱石層とコークス層の一例を模式的に示す側面断面図である。
【図5】偏析制御板の傾斜角の違いによる混合原料の堆積状況の違いを示す図である。
【図6】本実施形態での炉頂バンカー内の混合原料の堆積状況を示す図である。
【図7】炉頂バンカーから排出される混合原料中のコークス混合率の変化を示す図である。
【図8】偏析制御板の傾斜角を、混合原料の装入量が95mass%超えで第1傾斜角から第2傾斜角に切替えて装入した場合の炉頂バンカー内の混合原料の堆積状況を示す図である。
【図9】コークス混合鉱石層内の還元率分布の測定結果である。
【図10】鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。
【図11】ベルレス装入装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者らは、鉱石層中にコークスが混合されたコークス混合鉱石層におけるコークスの上部偏析の効果を調査するために、荷重軟化試験装置を用いて試験を行った。
荷重軟化試験装置は、高炉内で原料が受ける温度、雰囲気、荷重を再現するものであり、直径100mmの黒鉛るつぼ内に装入した原料を還元ガス雰囲気で所定の温度に加熱して試験を行った。
【0016】
このような荷重軟化試験装置にて、コークス層の上に、鉱石層として鉱石のみの層を積層した場合(混合なし)と、鉱石層としてコークスと鉱石とを均一に混合したコークス混合鉱石層を積層した場合(均一混合)と、鉱石層としてコークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層を積層した場合(上部偏析)とを用いて実験を行い、それぞれの場合の鉱石の平均還元率を測定した。
ここで、試料としては、コークス層を形成する原料には、平均粒径15mm〜25mmの塊コークスを、コークス混合鉱石層を形成する原料には、平均粒径8mm〜10mmの鉱石と平均粒径8mm〜10mmのコークスとを用いた。
【0017】
図1は、均一混合のコークス混合鉱石層の模式図であり、図中符号1は鉱石、符号2はコークスである。この均一混合のコークス混合鉱石層の平均コークス混合率は、120kg/t−p相当とした。ここで、kg/t−pは、溶銑1トンあたりのコークス量を示す単位である。
図2は、上部偏析のコークス混合鉱石層の模式図である。この上部偏析のコークス混合鉱石層の平均コークス混合率は、上記の均一混合のコークス混合鉱石層と同じ120kg/t−p相当とし、上部50体積%内の平均コークス混合率を170kg/t−p相当、下部50体積%内の平均コークス混合率を70kg/t−p相当とした。すなわち、この上部偏析の例では、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの70mass%程度を混合した。
【0018】
図3は、鉱石の平均還元率の測定結果を示す図である。この図3に示すように、コークスと鉱石との混合装入を行うことで、鉱石の単独装入と比べて還元率が向上し、さらにコークスを上部に偏析させることで、還元率がより一層向上している。このように、鉱石層をコークス混合鉱石層とし、さらにこのコークス混合鉱石層内でコークスを上部偏析させることで、還元効率を向上させる効果があることが分かった。
均一混合のコークス混合鉱石層を適用した場合、コークス層とコークス混合鉱石層とが層状に重なる炉内において、マクロ的にはコークス層とその上部に積層されたコークス混合鉱石層との境界では、コークス層近傍の鉱石量に対して還元ガスの量が余剰である。そのため、還元効率が低下してしまう。
【0019】
これに対して、上部偏析されたコークス混合鉱石層を適用した場合には、炉内において、コークス混合鉱石層の下方ではコークス層からの還元ガスを、上方ではコークス混合鉱石層内に混合されたコークスから発生する還元ガスを、鉱石の還元に利用することができる。そのため、還元ガスを効率的に利用することができ、トータルの還元効率が向上すると考えられる。
そこで、本実施形態では、鉱石層を、コークスを上部偏析させたコークス混合鉱石層とし、コークス混合鉱石層の上方をコークスが密の状態に、下方をコークスが粗の状態とする。
【0020】
この場合、コークス混合鉱石層内の上部ほどコークス密度の高い状態であることが好ましく、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの60mass%以上が混合されていることが好ましい。さらに好ましくは、コークス混合鉱石層の上半分(上部50体積%)内に、コークス混合鉱石層内に混合されるコークスの70mass%以上が混合されていることである。
【0021】
なお、実際に高炉内に形成されるコークス混合鉱石層の表面は水平ではなく、高さ分布を有する。つまり、その上面高さ位置は、炉内半径位置により異なる。上記において、コークス混合鉱石層の上半分である上部50体積%とは、コークス混合鉱石層の任意の範囲における、コークス混合鉱石層の上面から、コークス混合鉱石層の垂直方向の厚さの50%に相当する距離だけ垂直下方向に離れた点を結んで形成される曲面を仮想した場合、該曲面より上部に位置するコークス混合鉱石層の体積をいう。
【0022】
コークス混合鉱石層内に混合させるコークス量については、多いことが好ましく、コークスを炉頂から装入する全コークス量に対して10mass%以上、特に好ましくは30mass%以上コークス混合鉱石層内に混合すると還元効率向上の効果が高い。一方で、コークスをコークス混合鉱石層内に混合する量が多すぎると、コークス層が薄くなり、融着帯でコークススリットが薄くなるため炉下部での通気性が悪化する。したがって、コークス混合鉱石層内に混合するコークスは、コークスを炉頂から装入する全コークス量に対して50mass%以下とすることが好ましい。
【0023】
図4は、本発明に係る高炉操業方法を用いて形成した一例での鉱石層とコークス層を模式的に示す側面断面図である。
この図4(a)において、r/Rは、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径であり、r/R=0は高炉の中心位置、r/R=1は炉壁位置を示している。
【0024】
コークス層を形成する際には、当該コークス層を形成する1チャージ分のコークスを2バッチに分割して炉頂から装入し、1バッチ目でコークス層3aを形成し、2バッチ目でコークス層3bを形成した。また、鉱石層を形成する際には、当該鉱石層を形成するための原料の装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの2バッチに分割し、1バッチ目で炉中心部の鉱石層4aを形成し、2バッチ目で炉周辺部の鉱石層4bを形成した。なお、炉周辺部は、r/Rが0.7以上1.0以下の領域とした。
【0025】
ここで、鉱石層4a,4bは、鉱石とコークスとが混合されたコークス混合鉱石層である。また、本実施形態では、鉱石層4aを均一混合のコークス混合鉱石層、鉱石層4bを上部偏析のコークス混合鉱石層とする。
炉頂バンカーから排出される原料を、ベルレス装入装置の旋回シュートを用いて炉内に旋回装入した場合、例えば鉱石層4bの場合を図4(b)に示すように、装入初期の混合原料は下層部へ、装入後期の混合原料は上層部へと、下層から上層へ順次堆積する。
したがって、この鉱石層4b内でコークスを上部偏析させるためには、炉頂バンカーから排出する鉱石層4bを形成するための混合原料のコークス混合率(=コークス量/(鉱石量+コークス量))を、排出初期から排出後期にかけて増加させればよい。以下、コークスを鉱石層内で上部偏析させる方法について説明する。
【0026】
ところで、コークスを鉱石層内に均一に混合させる方法としては、炉頂バンカーと旋回シュートを有するベルレス装入装置を用い、鉱石とコークスをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、炉頂バンカー受け入れ時に混合させてから高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法や、複数の炉頂バンカーからの排出時に鉱石とコークスの一部を同時に排出して高炉内へ装入し、コークス混合鉱石層を形成する方法等が知られている。
【0027】
コークスを鉱石層内に偏析させるには、例えば上記において、切り出しの際にコークスの混合量を変更したり、複数の炉頂バンカーから鉱石とコークスの一部を同時に排出する際に、炉頂バンカーからの排出量や排出速度を、流量調整ゲート等を用いて調節して、コークスの混合割合を変えたりすることで対応できる。しかしこのような方法では、原料装入工程が複雑となり、非効率な操業となるおそれがある。また、流量調整ゲートを有していない設備では対応が困難な場合もある。
【0028】
そこで、本実施形態では、より簡易且つ効果的に上部偏析させる方法として、図5に示すように、炉頂バンカー11内上部に、該炉頂バンカー11へ装入される原料の落下方向を変更する傾動自在な偏析制御板12を設け、当該偏析制御板12を活用した方法を採用する。
すなわち、炉頂バンカー11への原料装入中に偏析制御板12の傾斜角を変更することで、混合原料の落下位置を装入初期と装入後期とで変更するようにする。このようにして、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率が排出初期から排出後期になるにつれて徐々に増加するような原料分布を形成しながら、炉頂バンカー11に混合原料を堆積させる。以下、この方法について具体的に説明する。
【0029】
ここでは、図5に示すように、炉頂バンカー11の排出口13が、該炉頂バンカー11の上方から見て中心から一方へ寄った位置に設けられている場合について説明する。
図5(a)は、炉頂バンカー11内の偏析制御板12の角度を、排出口13側(以下、バンカー中心寄りという)に傾斜するように設定した場合である。このとき、偏析制御板12の傾斜角を、炉頂バンカー11に装入される混合原料が矢印Aに示すように排出口13の直上位置に落下する角度(第1傾斜角)に設定すると、鉱石1はバンカー中心寄りに堆積するが、鉱石1より粒径が大であるコークス2はバンカー外周寄りに流れ込む。
【0030】
これに対して、図5(b)は、炉頂バンカー11内の偏析制御板12の角度を、水平方向で排出口13側とは反対側(以下、バンカー外周寄りという)に傾斜するように設定した場合である。このとき、偏析制御板12の角度を、炉頂バンカー11に装入される混合原料が矢印Bに示すように排出口13の直上位置から水平方向に離れた側壁位置に落下する角度(第2傾斜角)に設定すると、鉱石1はバンカー外周寄りに堆積するが、鉱石1より粒径が大であるコークス2はバンカー中心寄りに流れ込む。
【0031】
炉頂バンカー11に堆積した混合原料は、排出口13の直上が先に排出される。したがって、図5(a)の場合には、混合原料中のコークスがバンカー外周寄りに集中しているため、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は排出後期で増加するものの、排出末期で急増してしまう。つまり、コークス混合率が排出初期から排出後期にかけてほぼ均一に増加するような理想的な結果が得られない。一方、図5(b)の場合には、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は、排出後期で増加しない。
【0032】
本実施形態では、炉頂バンカー11に混合原料を装入する場合に、装入初期は図5(a)のようにして、炉頂バンカー11に装入される混合原料をバンカー中心寄りに落下させ、装入末期は図5(b)のようにして、炉頂バンカー11に装入される混合原料をバンカー外周寄りに落下させるようにする。
これにより、図6に示すように、炉頂バンカー内でコークス2をバンカー外周寄りに堆積させつつ、その一部2aをバンカー中心寄りに堆積させる。すなわち、バンカー外周寄りのコークスの集中を抑制するようにする。その結果、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出末期で急激に増加することなく、排出初期から排出後期にかけて徐々に増加するようにする。
【0033】
図7は、原料装入中における偏析制御板12の角度の違いによる混合原料中のコークス混合率の変化を示す図である。この図7は模型試験の結果であり、鉱石の平均粒径は1.5mm、コークスの平均粒径は2.0mmとした。
比較例1として、偏析制御板12を、装入初期から装入後期までの全期間で図5(b)に示すように混合原料をバンカー外周寄りに落下させるようにして炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。
【0034】
また、比較例2としては、偏析制御板12を、装入初期から装入後期までの全期間で図5(a)に示すように混合原料をバンカー中心寄りに落下させるようにして炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。
実施例1としては、偏析制御板12を、装入初期は図5(a)に示す第1傾斜角、装入後期は図5(b)に示す第2傾斜角として炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。この実施例1では、炉頂バンカー11内に装入する混合原料のうち、80mass%を第1傾斜角、残りの20mass%を第2傾斜角で装入した。
【0035】
また、実施例2としては、偏析制御板12を、装入初期は図5(a)に示す第1傾斜角、装入後期は図5(b)に示す第2傾斜角として炉頂バンカー11内に混合原料を装入し、試験を行った。この実施例2では、炉頂バンカー11内に装入する混合原料のうち、60mass%を第1傾斜角、残りの40mass%を第2傾斜角で装入した。
図7を参照すると、比較例1では、排出初期から排出後期にかけてコークス混合率に大きな変化はなく、このようにして炉頂バンカー11から排出された混合原料により形成されるコークス混合鉱石層は、均一混合となることがわかる。
【0036】
比較例2では、比較例1と比較して、炉頂バンカー11からの排出初期から排出後期にかけてコークス混合率が増加していることがわかる。特に、装入初期から装入後期までの全期間で図5(a)に示す装入により、混合原料中のコークスの大部分をバンカー外周寄りに堆積させると、炉頂バンカーから排出される原料のコークス混合率が排出末期で急激に増加することがわかる。これにより、比較例2の条件で炉頂バンカーから排出された混合原料により形成されるコークス混合鉱石層は、最上層部にコークスが密集した上部偏析となることがわかる。
【0037】
一方、実施例1,2のように、装入初期は第1傾斜角で混合原料をバンカー中心寄りに落下させ、排出後期は第2傾斜角で混合原料をバンカー外周寄りに落下させると、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率は排出初期から排出後期にかけて増加するが、比較例2のように排出末期で急激に増加することはない。また、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が装入量の60mass%以上であれば、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出後期にかけて増加させられることもわかった。
【0038】
また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1は、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が80mass%と多いため、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が60mass%の実施例2よりも炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率が排出末期で増加する比率が大きいことがわかる。
ただし、バンカー中心寄りに落下させる混合原料の割合が多すぎると、混合原料の落下位置をバンカー外周寄りに変えても、炉頂バンカー11内でコークスがバンカー外周寄りからバンカー中心寄りに向けて流れ込む効果が得られないため、混合原料のコークス混合率が排出末期で急激に増加してしまい、好ましくない。
【0039】
図8は、炉頂バンカー11に装入される混合原料の装入量が95mass%を超えてから、偏析制御板12を第1傾斜角から第2傾斜角に切り替えた場合の炉頂バンカー11内の混合原料の堆積状況を示す図である。このように、バンカー外周寄りに装入した混合原料中のコークス2aは、バンカー中心寄りに流れ込むことができず、バンカー外周寄りに堆積してしまう。そのため、図8に示すように堆積された混合原料を排出した場合、コークス混合率は排出末期で急増してしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、バンカー中心寄りに装入する混合原料の量を、炉頂バンカー11に装入する混合原料の総装入量の60mass%以上95mass%以下とする。これにより、炉頂バンカー11から排出される混合原料のコークス混合率を排出初期から排出後期にかけて徐々に増加させるようにする。そして、炉内に形成されるコークス混合鉱石層内で、下層部から上層部にかけてコークスが徐々に密になるように、コークスを上部偏析させる。
【0041】
次に、上述した比較例1、比較例2、実施例1および実施例2について、それぞれ荷重軟化試験によるコークス混合鉱石層内の還元率分布を測定した。その結果を図9に示す。
図9を参照すると、均一混合の比較例1では、コークス混合鉱石層の高さが高くなるほど(上層部ほど)還元率が低くなっていることがわかる。一方、排出末期で急激にコークス混合率が増加する上部偏析の比較例2では、コークス混合率が高い最上部の還元率が大きく改善されていることがわかる。これに対して、排出後期で全体的にコークス混合率が増加する上部偏析の実施例1及び実施例2では、上層部で全体的に還元率が改善されていることがわかる。
【0042】
さらに、上述した比較例1、比較例2、実施例1および実施例2について、鉱石の平均還元率を測定したところ、図10に示す結果が得られた。
この図10を参照すると、上部偏析の比較例2では、均一混合の比較例1と比較して全体の平均還元率が向上していることがわかる。しかしながら、実施例1および実施例2では、比較例2に対して平均還元率がさらに向上している。
【0043】
すなわち、装入初期から装入後期までの全期間バンカー中心寄りに装入するよりも、排出初期でバンカー中心寄りに装入し、その後の排出後期でバンカー外周寄りに装入する方が、全体の平均還元率を向上させることができることがわかった。また、バンカー中心寄りへの装入を80mass%とした実施例1の方が、バンカー中心寄りへの装入を60mass%とした実施例2よりも平均還元率が改善されていることもわかった。
【0044】
(実施例)
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
ここでは、内容積5000m3を超える大型高炉において、比較的ガス利用率が低い傾向がある高炉の無次元半径r/Rで0.7以上1.0以下の範囲に、コークス層と、コークスと鉱石とが混合されたコークス混合鉱石層とを交互に堆積させる操業を行った。コークス層およびコークス混合鉱石層を形成する原料は、図11に示すベルレス装入装置10により高炉20へ装入するようにした。
【0045】
ベルレス装入装置10は、図11に示すように、鉱石とコークスとを混合した混合原料が貯留される炉頂バンカー11と、コークスのみが貯留される炉頂バンカー14とを備える。そして、炉頂バンカー11,14の下部に設けられたゲート15,16の開閉により集合ホッパー17に装入された炉頂バンカー11内の混合原料、または炉頂バンカー14内のコークスが、旋回シュート18により高炉20に装入されるようになっている。
混合原料を炉頂バンカー11に貯留する際には、鉱石とコークスをベルトコンベア上で積層させるように切り出して、サージホッパーを介して炉頂バンカー11に装入した。このとき、ゲート15は原料装入制御部30によって閉状態に制御した。
【0046】
また、炉頂バンカー11には、当該炉頂バンカー11に装入された混合原料の質量を測定する、例えばロードセルで構成される質量計31が設けられており、原料装入制御部30は、質量計31で測定した炉頂バンカー11の質量変化(混合原料の装入量に対応)に応じて、炉頂バンカー11内上部に設置された偏析制御板12の傾斜角を混合原料の落下位置が中心寄りまたは外周寄りになるように制御するようにした。
さらに、高炉内でコークス混合鉱石層を形成するための混合原料は2バッチに分割して高炉20へ装入した。このとき、1バッチ目は高炉20の中心〜中間部に装入し、2バッチ目を高炉20の周辺部(r/R=0.7)に装入した。
【0047】
ここで、比較例としては、炉頂バンカー11に混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目共に第2傾斜角で100mass%装入した。すなわち、1バッチ目、2バッチ目共に、装入初期から装入後期までの全期間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に維持し、混合原料を装入した。
そして、その炉頂バンカー11から高炉20へ混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目ともに、旋回シュート18を逆傾動(炉中心から炉壁方向へと傾動)とした。このようにして、コークスがほぼ均一に分布したコークス混合鉱石層を形成し、操業を行った。
【0048】
一方、実施例としては、炉頂バンカー11に混合原料を装入するに際し、1バッチ目は第2傾斜角で100mass%装入し、2バッチ目は第1傾斜角で80mass%装入した後、第2傾斜角で20mass%装入する方法とした。すなわち、1バッチ目では、装入初期から装入後期までの全期間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に維持し、混合原料を装入した。
そして、2バッチ目では、混合原料が80mass%装入されるまでの間、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(a)に示す第1傾斜角とし、質量計31によって混合原料が80mass%装入されたことを検出したとき、偏析制御板12を原料装入制御部30によって図5(b)に示す第2傾斜角に切り替えて、混合原料を装入した。これにより、2バッチ目の混合原料のコークス混合率は、図7の実施例1に示されるように、排出後期になるにつれて徐々に上昇するようにした。
【0049】
そして、その炉頂バンカー11から高炉20へ混合原料を装入するに際し、1バッチ目、2バッチ目ともに、旋回シュート18を逆傾動(炉中心から炉壁方向へと傾動)とした。このように、1バッチ目で炉中心〜中間部に均一混合のコークス混合鉱石層を形成し、2バッチ目で高炉の無次元半径で約0.7〜1.0の範囲に、コークスが上部に偏析された上部偏析のコークス混合鉱石層を形成して操業を行った。
ここで、鉱石の平均粒径、混合コークスの平均粒径は、比較例、実施例ともにそれぞれ15mm、25mmとした。操業条件及び操業結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
なお、表1における通気抵抗指数は、高炉シャフト部での通気抵抗を指数化した指標であり、下記(1)式より計算した。
通気抵抗指数=((A2−B2)/C)×(1/D1.7)×(273/E) ………(1)
但し、
A=((BP/98.0665)+1.033)×10000,
B=((TP/98.0665)+1.033)×10000,
C=1.033×10000×LST,
D=BGV/SAVE,
E=((SGT+273)/2)+273
であり、BPは送風圧力[kPa]、TPは炉頂圧力[kPa]、LSTはストックラインから羽口までの距離[m]、BGVはボッシュガス流量[Nm3/min]、SAVEは高炉シャフト部の平均水平断面積[m2]、SGTは高炉シャフト部の代表ガス温度(1000℃に固定)である。
【0052】
また、表1におけるガス利用率は、炉頂ガス中のCOとCO2の合計量に対するCO2の比率である。
この表1において比較例と実施例の操業を比較すると、上部偏析とすることで、通気抵抗指数は同等であるにもかかわらず、還元効率が改善した効果によりガス利用率が上昇して、還元材比(コークス比+微粉炭比)が低下することがわかる。また、コークス比も低下することがわかる。
以上の結果より、本発明は、高炉の還元効率の改善技術として有効であり、さらに、低コークス比操業技術としても有効であることが確認された。
【符号の説明】
【0053】
1…鉱石、2…コークス、3a,3b…コークス層、4a,4b…鉱石層、10…ベルレス装入装置、11…炉頂バンカー、12…偏析制御板、13…排出口、14…炉頂バンカー、15,16…ゲート、17…集合ホッパー、18…旋回シュート、20…高炉、30…原料装入制御部、31…質量計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉頂バンカーに貯留された原料を、該炉頂バンカーの下方に設置した旋回シュートを介して炉頂から装入し、鉱石層とコークス層とを交互に形成する高炉操業方法であって、
前記鉱石層は、前記炉頂バンカーに貯留された鉱石とコークスとの混合原料により形成されるコークス混合鉱石層であり、
前記炉頂バンカー内上部に、該炉頂バンカーへ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板を設け、前記炉頂バンカーへの前記混合原料の装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を、前記混合原料の落下位置が前記炉頂バンカーの排出口の直上位置となる第1傾斜角から、前記混合原料の落下位置が前記排出口の直上位置から水平方向に離れた側壁位置となる第2傾斜角へ切り替えることを特徴とする高炉操業方法。
【請求項2】
前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角として前記炉頂バンカーに装入する混合原料の量を、当該混合原料の前記炉頂バンカーへの総装入量の60mass%以上95mass%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記コークス混合鉱石層を形成するための混合原料の高炉への装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの少なくとも2バッチに分割し、
前記炉周辺部への装入バッチで高炉へ装入する前記混合原料の前記炉頂バンカーへの装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角から前記第2傾斜角へ切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉操業方法。
【請求項4】
前記炉周辺部は、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径r/Rが0.7以上1以下の領域内で設定することを特徴とする請求項3に記載の高炉操業方法。
【請求項1】
炉頂バンカーに貯留された原料を、該炉頂バンカーの下方に設置した旋回シュートを介して炉頂から装入し、鉱石層とコークス層とを交互に形成する高炉操業方法であって、
前記鉱石層は、前記炉頂バンカーに貯留された鉱石とコークスとの混合原料により形成されるコークス混合鉱石層であり、
前記炉頂バンカー内上部に、該炉頂バンカーへ装入される原料の落下方向を変更するための傾斜角を調整可能な偏析制御板を設け、前記炉頂バンカーへの前記混合原料の装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を、前記混合原料の落下位置が前記炉頂バンカーの排出口の直上位置となる第1傾斜角から、前記混合原料の落下位置が前記排出口の直上位置から水平方向に離れた側壁位置となる第2傾斜角へ切り替えることを特徴とする高炉操業方法。
【請求項2】
前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角として前記炉頂バンカーに装入する混合原料の量を、当該混合原料の前記炉頂バンカーへの総装入量の60mass%以上95mass%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記コークス混合鉱石層を形成するための混合原料の高炉への装入の1チャージを、炉中心部への装入バッチと当該炉中心部より炉壁側の炉周辺部への装入バッチとの少なくとも2バッチに分割し、
前記炉周辺部への装入バッチで高炉へ装入する前記混合原料の前記炉頂バンカーへの装入中に、前記偏析制御板の傾斜角を前記第1傾斜角から前記第2傾斜角へ切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉操業方法。
【請求項4】
前記炉周辺部は、高炉の半径をR、高炉の中心からの半径方向の位置をrとしたときの高炉の無次元半径r/Rが0.7以上1以下の領域内で設定することを特徴とする請求項3に記載の高炉操業方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−95970(P2013−95970A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240576(P2011−240576)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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