説明

高炉炉底の構築方法

【課題】充填材の施工工程が簡略化できるとともに良好な冷却性能が得られる高炉炉底の構築方法を提供すること。
【解決手段】基礎5上に複数の主梁材111を配列して空間部20Uを形成し、主梁材111に底板14を張って空間部20Uの上面を閉鎖し、空間部20U内にキャスタブル17を充填する際に、外部からキャスタブル17を空間部20Uの一端側に注入する注入口21と、注入口21から空間部20Uの他端側へと配列された複数の充填確認用開口99とを形成しておき、注入口21に近い充填確認用開口99からキャスタブル17の流出を順次確認しつつ注入口21にキャスタブル17を注入し、空間部20Uの他端側の排出口からキャスタブルの流出が確認された後にキャスタブル17の注入を停止し、注入口21、排出口および充填確認用開口99を完全に封止する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉底の構築方法に関し、高炉の炉底部分の構築に利用できる。
【背景技術】
【0002】
高炉は、その内側に施工された炉底部耐火物の損耗により15〜20年で寿命に達し、耐火物の巻き替えを含めた改修が実施される。
炉底耐火物の損耗を減少させるために、従来の高炉では、水冷パイプを埋め込んだステーブクーラーと呼ばれる冷却帯を側面部に設置し、底面には水冷パイプを埋設することで、冷却を強化して溶銑との接触界面に保護層を形成させている。これら冷却部と耐火物間には、冷却能を損なわないように高熱伝導率の耐火材が充填される。
【0003】
炉底部分は、炉体の膨大な重量が直接配管やその周囲の耐火物に掛からないように、敷きビーム等と呼ばれる高剛性の構造体が使用される。
敷きビームは長尺の鋼材を用いて剛性を高めた梁組構造物であり、基礎上に複数の主梁材を並行に設置し、これらを交差方向の梁材で接合して全体として面状に構築される。
炉内からのガスリークを防止するために、敷きビーム上には、底板が設置される。高炉の炉体は敷きビームの上面に形成されることもあるが、敷きビームが炉体鉄皮の内側に包囲される構成も採用される。
【0004】
このような敷きビームおよび耐火材の例として特許文献1がある。
特許文献1において、敷きビームとなる主梁材は複数が並行に配列され、各々は炉体の鉄皮で包囲されている。梁材の間に形成される空間部には複数回に分けて充填材が充填される。
すなわち、空間部の基礎コンクリート層の上に二次コンクリート層が敷かれ、その上に冷却管が設置される。冷却管の上下には、黒鉛質スタンプ材や炭化珪素(SiC)キャスタブル等の高熱伝導充填材が、冷却管に対して隙間無く充填される。これら二層の高熱伝導充填材の上面には鋼製の底板が張られ、炉体内側の耐火煉瓦層はこの底板の上に構築される。
ここで、底板を張った際には、空間部に充填された充填材の上面との間に隙間が避けられない。ところが、充填材と底板との間に隙間が残ると、炉内から底板を通しての抜熱が不十分となる。このような隙間により、冷却管による所定の冷却効果が得られなくなり、炉底耐火物の損耗に影響が生じる。このような問題を回避するために、前述した隙間には、流動性を高めた充填材を別途圧入し、底板と充填材との密着性および伝熱性を確保している。
【0005】
一方、前述した特許文献1の手順では、冷却管の周囲への充填施工が三段階(配管の下、配管の上、隙間への圧入)と多く、工数が低減できない。また、各々の施工においては、黒鉛質の高熱伝導性スタンプや、底板との間の隙間への耐火性材料の圧入など煩雑な処置が必要であり、施工工程が簡略化できないという問題がある。
これに対し、本願出願人により、区画工程、配管工程、閉鎖工程を先行しておき、閉鎖された空間部に対して、空間部の側面の注入口から前述したキャスタブル等の不定形耐火材を充填し、これにより冷却管を包囲するとともに不定形耐火物を底板に密着させる(充填工程)技術が提案されている。
この提案によれば、冷却管を包囲する充填工程を一気に行うことができ、空間部の充填を一工程で済ますことができ、大幅な工程の簡素化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−156133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した提案における充填工程では、空間部が高炉の炉底を横断する長大な長さとなり、不定形耐火物を相当な長さにわたって充填し続ける必要がある。充填する長さが大きくなると、中間部分で予期しない残留物や閉塞の可能性があり、注入側から反対側まで不定形耐火物を円滑かつ確実に充填することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明の主な目的は、不定形耐火物の充填工程が簡略かつ確実にできる高炉炉底の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基礎上に梁組構造物を配列して前記梁組構造物の間に空間部を形成し、前記梁組構造物に底板を張って前記空間部の上面を閉鎖し、前記空間部内に不定形耐火材を充填して前記不定形耐火物を前記底板に密着させる高炉炉底の構築方法において、外部から前記不定形耐火物を前記空間部の一端側に注入する注入口と、前記空間部の他端側から前記不定形耐火物を排出する排出口と、前記注入口から前記排出口までの間の前記底板に、前記注入口から注入された前記不定形耐火物の充填確認を行うための充填確認用開口とを形成しておき、前記注入口に近い前記充填確認用開口から前記不定形耐火物の流出を順次確認しつつ前記注入口に前記不定形耐火物を注入し、前記排出口から前記不定形耐火物の流出が確認された後に前記不定形耐火物の注入を停止し、前記充填確認用開口を完全に封止する、ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明においては、区画工程、配管工程、閉鎖工程を先行しておき、冷却管を包囲する充填工程を一気に行う。
すなわち、敷きビーム等の梁組構造体の間に空間部を形成し(区画工程)、空間部に冷却管を設置し(配管工程)、底板を張って空間部を閉鎖する(閉鎖工程)。この際、適宜支持部材等を追加して冷却管を空間部内で宙吊りとしてもよい。
閉鎖された空間部に対して、空間部の側面あるいは炉内の底面の注入口から不定形耐火物を充填し、これにより冷却管を包囲するとともに不定形耐火物を底板に密着させる(充填工程)。この際、充填された不定形耐火物が空間部の隅々まで行き渡るように、不定形耐火物の流動性を調整しておくとともに、炉体に影響しない範囲内で適宜加圧等を行うことが望ましい。
【0011】
本発明では、不定形耐火物の一括充填にあたって、注入口に近い充填確認用開口から不定形耐火物の流出を順次確認しつつ、注入口に不定形耐火物を注入してゆく。不定形耐火物の注入に伴い、充填確認用開口のうち注入口に近いものから順に不定形耐火物が流出する。この流出により、当該部位までの区画では不定形耐火物の充填ができたことが確認できる。続いて、不定形耐火物を更に注入することで、不定形耐火物が流出する充填確認用開口が順次増えてゆき、排出口に近い充填確認用開口から不定形耐火物の流出が確認されたら、空間部の注入口側から排出口側までの全区間にわたって不定形耐火物の充填ができたことになる。この後、不定形耐火物の注入を停止し、注入口と排出口および充填確認用開口を完全に封止する。これにより、空間部には全長にわたって不定形耐火物が確実に充填される。
【0012】
このような本発明によれば、空間部に不定形耐火物を一括して充填し、不定形耐火物で冷却管を包囲するとともに、不定形耐火物が底板にも密着するようにできるため、熱伝導性を確保して冷却性能を高めることができる。
これにより、従来のような狭い隙間への圧入が必要なくなり、狭い隙間への圧入に必要だった高圧化を避けることができる。
【0013】
なお、空間部としては、空間部を形成する個々の区画が炉体を横断するように配置しておき、注入口から注入された不定形耐火物が空間部の一端側から他端側へ流動して充填されるような構成とすることが望ましい。
このようにすることで、炉体の直下を空間部が潜るように設置することができ、空間部への不定形耐火物の注入を炉底の外側からの作業だけで行うことができる。
【0014】
本発明の高炉炉底の構築方法において、前記充填確認用開口は、内径4〜10mmで形成することが望ましい。
このような構成とすることで、不定形耐火物の確認に十分な流出が得られるとともに、必要以上の過剰な流出を抑制することができる。
【0015】
本発明の高炉炉底の構築方法において、前記充填確認用開口には、前記不定形耐火物の流出が確認できたものから順次封止栓で封止してゆくことが望ましい。
このような構成とすることで、確認が済んだ後の無用な流出を遮断することができる。
【0016】
本発明の高炉炉底の構築方法において、前記注入口および前記排出口は、前記底板にねじ止めされるパイプ状の接続部材であることが望ましい。
このような構成とすることで、不定形耐火物の充填完了後の注入口の撤去が容易かつ迅速に行える。
【0017】
本発明の高炉炉底の構築方法において、前記注入口および前記充填確認用開口の封止は、前記注入口、前記排出口および前記充填確認用開口を覆う封止板を当て、前記封止板を前記底板に溶接することが望ましい。
このような封止工程を行うことで、注入口や排出口および充填確認用開口から高炉炉内ガスがリークすることを防止でき、底板の下面に隙間が生じるといった不都合を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の梁組構造物を示す平面図。
【図2】前記第1実施形態の梁組構造物を示す交差梁材方向の縦断面図。
【図3】前記第1実施形態の注入口側を示す主梁材方向の縦断面図。
【図4】前記第1実施形態の注入口側を示す平面図。
【図5】前記第1実施形態の排出口側を示す主梁材方向の縦断面図。
【図6】前記第1実施形態の排出口側を示す平面図。
【図7】前記第1実施形態の充填材注入の初期状態を示す注入口側の縦断面図。
【図8】前記第1実施形態の充填確認用開口からの充填材の流出状態を示す注入口側の縦断面図。
【図9】前記第1実施形態の充填確認用開口の封止状態を示す注入口側の縦断面図。
【図10】前記第1実施形態の充填材注入の中間状態を示す排出口側の縦断面図。
【図11】前記第1実施形態の充填材注入の完了状態を示す排出口側の縦断面図。
【図12】本発明の第2実施形態の注入口周辺を示す主梁材方向の縦断面図。
【図13】前記第2実施形態の排出口周辺を示す主梁材方向の縦断面図。
【図14】本発明の第3実施形態の注入口側を示す主梁材方向の縦断面図。
【図15】前記第3実施形態の排出口側を示す主梁材方向の縦断面図。
【図16】前記第3実施形態の注入口を示す縦断面図。
【図17】前記図16の注入口を撤去した状態を示す縦断面図。
【図18】前記第3実施形態の他の注入口を示す縦断面図。
【図19】前記図18の注入口を撤去した状態を示す縦断面図。
【図20】本発明の第4実施形態の梁組構造物を示す主梁材と交差方向の縦断面図。
【図21】前記第4実施形態の注入口側を示す主梁材方向の縦断面図。
【図22】本発明の第5実施形態の梁組構造物を示す主梁材と交差方向の縦断面図。
【図23】本発明の実施例の評価用装置の縦断面を示す模式図。
【図24】前記図23と直交する方向の縦断面を示す模式図。
【図25】前記図23の装置の注入口、排出口および充填確認用開口を示す模式図。
【図26】前記図23の装置の充填確認用開口の封止栓を示す拡大図。
【図27】前記図23の装置の注入口、排出口および充填確認用開口の封止状態を示す模式図。
【図28】本発明の実施例の評価用装置を示す概略三面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1には、高炉炉底に設置される梁組構造物である敷きビーム11の平面形状が図示されている。
敷きビーム11は、長尺のH型鋼材を用いた主梁材111および交差梁材110を直交方向に組んだ格子状のフレームを有する。
本実施形態の敷きビーム11は、長方形の本体部分11Aと、その両側に張り出した拡張部分11Bとを備え、拡張部分11Bでは本体部分11Aよりも主梁材111が短く、交差梁材110が長く形成されている。
【0020】
敷きビーム11は、基礎5の上に構築され、敷きビーム11の上には鉄皮を含む炉底マンテル12が構築される。これらの敷きビーム11および炉底マンテル12により、高炉の炉底部である炉底ブロック10が構成される。なお、基礎5の四隅には炉体櫓2が組まれ、炉底ブロック10よりも上方に構築される炉体保持に利用される。
敷きビーム11には、運転時に炉底マンテル12内から基礎5への伝熱を緩和するための冷却管16が設置されている。冷却管16は、主梁111の間に形成される空間部20(後述する上段の空間部20U)内に、主梁111と平行に設置されている。
【0021】
図2および図3には、本実施形態の敷きビーム11の断面形状が拡大図示されている。
敷きビーム11は、主梁材111が複数平行に配列された上段と、交差梁材110が複数平行に配列された下段とで構成されている。
【0022】
敷きビーム11の下段においては、複数の交差梁材110の間に、交差梁材110の全長にわたる升状の空間部20Lが形成されている。空間部20Lは、交差梁材110に沿って敷きビーム11の一端側から他端側まで横断している。
交差梁材110は基礎5の上面に敷設される。基礎5の表面には交差梁材110の直下に荷重分散用の鉄板が埋設される。
隣り合う交差梁材110の端部の間には閉止板19が架け渡されており、空間部20Lの両端はそれぞれ閉止板19で閉止されている。
これらの交差梁材110、閉止板19および基礎5の表面で囲まれた升状の空間により空間部20Lが形成される。
空間部20L内には耐熱性コンクリート18が充填される。固化した耐熱性コンクリート18の表面は、交差梁材110の上面と同じ高さに形成される。
【0023】
敷きビーム11の上段においては、複数の主梁材111の間に、主梁材111の全長にわたる升状の空間部20Uが形成されている。空間部20Uは、主梁材111に沿って敷きビーム11の一端側から他端側まで横断している。
主梁材111は交差梁材110および耐熱性コンクリート18の上面に敷設される。主梁材111の荷重は主に交差梁材110によって支持される。
隣り合う主梁材111の端部の間には閉止板19が架け渡されており、空間部20Uの両端はそれぞれ閉止板19で閉止されている。
これらの主梁材111、閉止板19および耐熱性コンクリート18の表面で囲まれた升状の空間により空間部20Uが形成される。
空間部20U内には、冷却管16が一区間あたり2〜4本づつ配列される。
主梁材111の上面には鋼製の底板14が張られる。この底板14により空間部20Uは上面を閉じられ、冷却管16を収容した閉じた空間とされる。
【0024】
底板14は炉底マンテル12の底面を構成するものである。
底板14の上には炉底マンテル12を構成する鉄皮15が設置される。炉底マンテル12は、この鉄皮15の内側にステーブクーラーや耐火煉瓦(いずれも図示省略)を装着して構成される。
【0025】
なお、空間部20Lに充填される耐熱性コンクリート18は、主梁材111および空間部20Uの形成前に施工しておいてもよいが、形成前であってもよい。この際、主梁材111は交差梁材110によって支持されるため、耐熱性コンクリート18がない状態、あるいは未硬化の状態であっても施工が可能である。
【0026】
空間部20U内には、耐熱性コンクリート18の上に、冷却管16を埋設するように、不定形耐火材としてのキャスタブル17が充填される。
なお、前述した本体部分11Aにおいては上述した構成であるが、拡張部分11Bにおいては耐熱性コンクリート18上方に冷却管16が設置されず、上側の空間部20Uは下側と同様な耐熱性コンクリート18が充填される。
【0027】
冷却管16としては、呼び径25A〜50Aの配管材が用いられる。
冷却管16に通される冷却水の流速は1〜5m/秒とすることが好ましい。流速が1m/秒より小さいと、これらの寿命が短くなる可能性がある。流速が5m/秒より大きいと、冷却水を循環させるための運転コストが高くなるとともに、冷却水による吸熱が十分でなくなり冷却効率が低下する。
【0028】
キャスタブル17は、流動性を有する状態で空間部20U内へ注入され、所定時間の経過とともに固化するものであり、冷却管16を包囲するとともに底板14の下面に密着するように充填される。
キャスタブル17としては、SiCを40〜80質量%、Al23を20〜40質量%、残部がSiO2という組成とされ、かつ熱伝導率λが10〜30W/m・KであるSiC質のものが用いられる。
このようなキャスタブル17は、上段の空間部20Uに充填する際の流動性を確保しつつ、空間部20U内に充填されて固化した際の強度および伝熱性能を適切なものとすることができる。
【0029】
キャスタブル17を空間部20U内に充填するために、空間部20Uの両端の閉止板19には、空間部20U内に連通する注入口21および排出口22が設置される。
図1において、敷きビーム11の一方(図中上側)の辺縁に配置された交差梁材110(下段)の上部に設けられた閉止板19(上段)には注入口21が形成され、他方(図中下側)の辺縁に配置された交差梁材110の上部に設けられた閉止板19には排出口22が形成されている。
【0030】
本実施形態において、使用するキャスタブル17の量を削減するために、キャスタブル17の充填は炉底マンテル12に対応した平面形状が略円形の部分に限定される。そのために、空間部20Uの内部には、空間部20Uの端部近傍を仕切る仕切壁23が設置されている(図3〜図6参照)。
仕切壁23は、炉底マンテル12の鉄皮15の下方であって、鉄皮15の直下またはその外側の位置に設置される。
仕切壁23には、主梁材111あるいは冷却管16が挿通する開口部分の周囲にシール材等が設置され、同開口部分からキャスタブル17が漏れ出して仕切壁23を超えることがないように形成されている。
【0031】
図4および図5において、注入口21はパイプ状の部材であり、敷きビーム11上段の閉止板19(空間部20Uの端部を閉止する)を貫通した状態で溶接され、外部と空間部20U内部とを連通している。
注入口21が形成された閉止板19と最寄りの仕切壁23との間には、注入口21と同径のパイプ状部材を用いた延長管24が設置されている。この延長管24は注入口21と連通されるとともに、仕切壁23を貫通してその反対側の空間(空間部20Uのうち炉底マンテル12の下面側にあたる領域)へと連通されている。
従って、外部から注入口21にキャスタブル17を圧入すれば、キャスタブル17は延長管24を経由して空間部20Uの炉底マンテル12の下面側にあたる領域へと導入される(図7参照)。
【0032】
図5および図6において、排出口22はパイプ状の部材であり、敷きビーム11上段の閉止板19(空間部20Uの端部を閉止する)を貫通した状態で溶接され、外部と空間部20U内部とを連通している。
排出口22が形成された閉止板19と最寄りの仕切壁23との間には、排出口22と同径のパイプ状部材を用いた延長管25が設置されている。この延長管25は排出口22と連通されるとともに、仕切壁23を貫通してその反対側の空間(空間部20Uのうち炉底マンテル12の下面側にあたる領域)へと連通されている。
【0033】
なお、排出口22は、その空間部20Uと連通された側と反対側の開口が、空間部20Uよりも高い位置、具体的には底板14よりも高い位置に設置され、大気開放されている。
従って、空間部20Uに注入口21側からキャスタブル17が導入された際には、これらの延長管25および排出口22から空間部20U内に予め存在した空気が排出される。
さらに、十分な量のキャスタブル17が空間部20Uに充填されると、キャスタブル17の一部は延長管25を経由して排出口22へと誘導され、外部へ排出される(図11参照)。この排出を確認することで、空間部20U内に十分なキャスタブル17が導入されたことを認識することができる。
なお、排出口22および延長管25の径は、注入口21および延長管24の径と同じでもよいが、通過させるものは余剰空気および確認用のキャスタブル17だけであり、より小径のものであってもよい。
【0034】
このようなキャスタブル17の充填を、空間部20Uの全長にわたって円滑かつ確実に行うために、底板14には複数の充填確認用開口99が形成されている。
図2、図4および図6に示すように、充填確認用開口99は、空間部20Uの幅方向の中間位置(隣り合う主梁材111の中間位置)において底板14の表裏を貫通して形成され、これにより空間部20Uと底板14の表面側(炉底マンテル12内の空間)とが連通されている。
【0035】
これらの充填確認用開口99は、例えば内径4〜10mmの丸孔状に形成される。この内径では、キャスタブル17がその流動性により、その供給圧が比較的低圧でも容易に流出することができる。但し、同内径であれば、キャスタブル17が過剰に流出することがなく、キャスタブル17の通過確認に適した流出のみが得られる。
さらに、同内径であれば、底板14に対して充填確認用開口99を閉塞させる封止栓98(図9または図11参照)を容易かつ確実に形成することができる。
【0036】
本実施形態においては、基礎5とは別の作業現場において、敷きビーム11および冷却管16を含む炉底ブロック10を製造する(区画工程、配管工程、閉鎖工程)。
続いて、敷きビーム11を含む炉底ブロック10を基礎5上に移載し、下段の空間部20Lへの耐熱性コンクリート18を打設し、次にキャスタブル17の充填を行い、これにより冷却管16を包囲するとともにキャスタブル17を底板14に密着させる(充填工程)。
【0037】
図7〜図11には本実施形態におけるキャスタブル17の注入手順が示されている。
図7において、外部で製造した炉底ブロック10を基礎5上に移設する。敷きビーム11の注入口21にキャスタブル17の供給源(図示せず)の供給管17Aを接続する。この状態でキャスタブル17を圧送すると、キャスタブル17は注入口21から延長管24を経て空間部20U(一対の仕切壁23で挟まれた炉底マンテル12の下面側にあたる領域)へと導入される。
【0038】
図8において、キャスタブル17の注入を続けると、キャスタブル17は注入口21側(図中左側)から空間部20Uの底面(仕切板19の上面)に沿って進むとともに、注入口21近傍から徐々に上方へ膨れてゆき、その上面は冷却管16を包囲し、さらに底板14の下面に密着する。
この状態でキャスタブル17の注入を続けることにより、キャスタブル17の前縁は底板14の下面に密着しながら進み、底板14に充填確認用開口99がある部位まで達すると、キャスタブル17の一部が充填確認用開口99から排出される。キャスタブル17が排出されれば、当該部位まではキャスタブル17が充填されたことが確認できる。
【0039】
図9に示すように、充填確認用開口99からのキャスタブル17の排出が確認できたら、それ以上のキャスタブル17の流出は必要ないため、封止栓98を形成して充填確認用開口99に塞いでおく。
なお、後述するように、全ての充填確認用開口99からの排出が確認できてからまとめて封止栓98を形成してもよい。
【0040】
一方、充填確認用開口99からのキャスタブル17の排出が確認できない場合、当該部位の手前に何らかの障害物などの原因があると考えられる。このような場合、当該部位の手前に別途注入孔を形成し、炉底マンテル12内からキャスタブル17を注入する等の代替措置により、当該区間のキャスタブル17の充填を確保するとともに、以降の充填確認用開口99へ向けてキャスタブル17の充填を継続する。
【0041】
図10において、キャスタブル17の注入を続けると、キャスタブル17の前縁は底板14の下面に密着しながら進み、底板14に充填確認用開口99がある部位まで達すると、キャスタブル17の一部が充填確認用開口99から排出される。
【0042】
図11において、キャスタブル17が十分な量注入されると、キャスタブル17は排出口22側の仕切壁23に到達し、延長管25および排出口22を経て一部が外部へと排出される。
こうしてキャスタブル17が排出されたら、空間部20U内に十分なキャスタブル17が導入されたと判定できるから、キャスタブル17の注入を停止する。
この後、キャスタブル17の供給源の供給管17Aを取り外す。所定の時間経過してキャスタブル17が固化したら、敷きビーム11への充填が完了する。
【0043】
本実施形態において、注入口21、排出口22、延長管24,25等はそのまま敷きビーム11に残しておいてよい。キャスタブル17が固化することで、注入口21、排出口22を塞がなくても特に問題は生じない。
但し、前述した充填工程の後、注入口21を溶接あるいは図示しない封止用キャップ等で塞ぐようにしてもよい(封止工程)。このような封止工程を行うことで、注入口21からの空気が入ることを防止でき、底板14の下面に隙間が生じるといった不都合を避けることができる。
【0044】
このような本実施形態においては、次のような効果が得られる。
敷きビーム11の製造において区画工程、配管工程、閉鎖工程を先行しておき、敷きビーム11を移載した基礎5上でキャスタブル17の充填工程を一気に行うことができる。特に、空間部20Uの充填に関しては従来の手順より大幅な工程の簡素化ができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、空間部20Uにキャスタブル17を一括して充填し、キャスタブル17で冷却管16を包囲するとともに、キャスタブル17が底板14にも密着するようにできるため、熱伝導性を確保して冷却性能を高めることができる。
これにより、従来のような狭い隙間への圧入が必要なくなり、狭い隙間への圧入に必要だった高圧化を避けることができる。
この際、空間部20Uの長手方向に沿って複数の充填確認用開口99を設置し、各々からのキャスタブル17の排出を確認することで、キャスタブル17の供給が比較的低圧であっても、空間部20Uの全長にわたるキャスタブル17の充填を円滑かつ確実に行うことができる。
さらに、底板14に形成した充填確認用開口99は、封止栓98で封止するようにしたため、炉底マンテル12における底板14の遮蔽性能をある程度有しているが、長期的なガスシール性を確保するためには、封止材98上に封止板を当てて溶接することが望ましい。
【0046】
空間部20Uは互いに連通されて炉底マンテル12を横断する配置とされ、キャスタブル17は空間部20Uの一端側(図2上側)から注入されて他端側(図2下側)へ流動するようにしたため、炉底マンテル12の直下を空間部20Uが潜るように設置することができ、空間部20Uへのキャスタブル17の注入を炉底マンテル12の外側からの作業だけで行うことができる。
【0047】
キャスタブル17の注入に、空間部20Uの側面に配置された注入口21を用いることで、注入口21が底板に表れないので、炉底マンテル12の構築にあたって注入口21の撤去処理あるいは封止処理を行う必要がなく、施工を簡略化することができる。
【0048】
空間部20Uは主梁材111と閉止板19とで区画され、注入口21は閉止板19に形成されることで、主梁材111を用いる敷きビーム11において、簡単な構造にできるとともに、前述した側面からのキャスタブル17の注入を行うことができる。
【0049】
炉底マンテル12の外周に対応した位置(鉄皮15の位置)に空間部20Uを仕切る仕切壁23を設置し、注入口21には仕切壁23まで延びて空間部20Uの一端側に連通する延長管24を連結したため、主梁材111と交差梁材110とを用いる敷きビーム11において、前述した側面からのキャスタブル17の注入を行うとともに、空間部20Uのうち炉底マンテル12に対応した部分にのみキャスタブル17を充填することで、必要な冷却性能を最小限の資材で効率よく実現することができる。
【0050】
空間部20Uの他端側に連通した排出口22を設置することで、キャスタブル17が空間部20Uの一端側に注入された際に、空間部20U内の空気を排出口から排出させることができるとともに、排出口22からキャスタブル17の一部が排出されることを確認することで、キャスタブル17が空間部20Uの一端側から他端側まで充填されたことを判別することができる。
また、排出口22が底板より高い位置で大気開放されているため、キャスタブル17が充填された際に空間部20U内の空気を確実に押し出すことができ、空間部20U内に充填されたキャスタブル17上面と底板14との間に隙間が生じないようにすることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
図12および図13には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態は、基本的に前述した第1実施形態と同様な構成を備え、一部の構成が異なる。このため、重複する説明は省略し、以下には異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態では、空間部20Uには第1実施形態のような仕切壁23が設置されておらず、キャスタブル17は空間部20Uの全体にわたって充填される。
【0052】
図12には、本実施形態の注入口21の周辺構造が示されている。注入口21は前記第1実施形態と同様なパイプ状の部材であるが、閉止板19を貫通するのみで閉止板19の内側に延長管等はなく、空間部20Uには閉止板19のすぐ内側からキャスタブル17が充填される。
図13には、本実施形態の排出口22の周辺構造が示されている。排出口22は前記第1実施形態と同様なパイプ状の部材であるが、閉止板19を貫通するのみで閉止板19の内側に延長管等はなく、空間部20Uには反対側の閉止板19の内側までキャスタブル17が充填される。
【0053】
このような本実施形態では、敷きビーム11の平面形状の一端側から他端側まで横断するように、空間部20Uの全域にわたってキャスタブル17が充填されることを除き、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
すなわち、本実施形態においても、底板14に充填確認用開口99が形成されており、キャスタブル17の充填に伴って、充填確認用開口99からキャスタブル17の一部が排出され、これにより充填の進行が確認できる。本実施形態においても、封止栓による封止を適宜行ってよい。
一方、敷きビーム11の平面形状の全域にわたってキャスタブル17が充填されることから、前記第1実施形態よりもキャスタブル17の使用量が増えるが、一方で前記第1実施形態における仕切壁23、延長管24,25の設置が不要となり、構造的な簡略化が図れ、製造期間も短縮できるというメリットがある。
【0054】
〔第3実施形態〕
図14および図15には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態は、基本的に前述した第1実施形態と同様な構成を備え、一部の構成が異なる。このため、重複する説明は省略し、以下には異なる部分についてのみ説明する。
第1実施形態では、注入口21および排出口22が空間部20Uの側面に設置されていたが、本実施形態では、注入口21Aおよび排出口22Aが底板14の仕切板23の近傍に設置され、炉底マンテル12内から底板14を貫通して空間部20U内へと連通されている。
【0055】
このような本実施形態では、キャスタブル17の注入および最終的な排出が注入口21Aおよび排出口22Aとなることを除き、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
すなわち、本実施形態においても、底板14に充填確認用開口99が形成されており、キャスタブル17の充填に伴って、充填確認用開口99からキャスタブル17の一部が排出され、これにより充填の進行が確認できる。本実施形態においても、封止栓98等による封止を適宜行ってよい。
【0056】
本実施形態のような底板14に設置する注入口21Aまたは排出口22Aは、例えば図16から図19に示す構成を利用することができる。
【0057】
図16には、本実施形態で注入口21Aまたは排出口22Aとして利用できる接続部材30が示されている。接続部材30は、パイプ状の本体31の両側にボルト33を挿通可能なブラケットを有する。底板14には貫通孔141が形成され、その両側にはナット34が溶接等で固定されている。本体31の下端を貫通孔141にあてがい、ブラケットを挿通したボルトをナット34に螺合させる。この状態で、予めボルト33の途中に螺合させておいてナット32を下方へ締め込むことにより、ブラケットが底板14に対して締め付けられ、これにより接続部材30が底板14に固定される。
従って、このような接続部材30を用いて注入口21Aまたは排出口22Aを形成し、キャスタブル17の充填を行うことができる。
【0058】
図17に示すように、キャスタブル17の充填が完了した際には、ナット32およびボルト33を緩めることで接続部材30を取り外し、蓋板142をあてがい、その全周を溶接することで貫通孔141の封止を行うことができる。
【0059】
図18には、本実施形態で注入口21Aまたは排出口22Aとして利用できる接続部材40が示されている。接続部材40は、パイプ状の本体41の端部に雄ねじ形状42を有する。底板14には貫通孔141が形成され、その内周面には雌ねじ形状144が形成されている。雄ねじ形状42を雌ねじ形状144に螺合させることにより、接続部材40が底板14に固定される。
従って、このような接続部材40を用いて注入口21Aまたは排出口22Aを形成し、キャスタブル17の充填を行うことができる。
【0060】
図19に示すように、キャスタブル17の充填が完了した際には、雄ねじ形状42および雌ねじ形状144を緩めることで接続部材40を取り外し、蓋板145をあてがい、その全周を溶接することで貫通孔141の封止を行うことができる。
【0061】
〔第4実施形態〕
図20および図21には、本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態は、基本的に前述した第1実施形態と同様な構成を備え、一部の構成が異なる。このため、重複する説明は省略し、以下には異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態では、空間部20は第1実施形態のような上段・下段がなく、第1実施形態における下段の交差梁材110が省略されているとともに、空間部20には仕切壁23が設置されていない。さらに、炉底マンテル12の鉄皮15が下方まで延長され、敷きビーム11の主梁材111、底板14および冷却管16は全周を鉄皮15で包囲されている。
【0062】
本実施形態の注入口21あるいは反対側の排出口22は、それぞれ鉄皮15に形成され、空間部20内に連通されている。これらの注入口21によりキャスタブル17が空間部20内に注入され、余剰空気あるいは一部のキャスタブル17は反対側の排出口22から排出される。
本実施形態においても、底板14に充填確認用開口99が形成されており、キャスタブル17の充填に伴って、充填確認用開口99からキャスタブル17の一部が排出され、これにより充填の進行が確認できる。本実施形態においても、封止栓による封止を適宜行ってよい。
【0063】
このような本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様な効果が得られる。さらに、敷きビーム11の周囲として鉄皮15を用いることで、敷きビーム11の構造として制約を受け、あるいは別の作業現場で炉底ブロック10を製造して基礎5上に移載する等の処理が難しくなるが、主梁材111あるいはキャスタブル17を炉底マンテル12の大きさに限定することで、材料の使用量を削減できる。
【0064】
〔第5実施形態〕
図22には、本発明の第5実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第4実施形態と同様に敷きビーム11の周囲を鉄皮15で形成したものであるが、側面に設置された注入口21および排出口22に代えて底板14に設置された注入口21Aおよび排出口22Aを用いたものである。
このような本実施形態によっても、基本的に前記第4実施形態と同様な効果が得られる。さらに、本実施形態においても、底板14に充填確認用開口99が形成されており、キャスタブル17の充填に伴って、充填確認用開口99からキャスタブル17の一部が排出され、これにより充填の進行が確認できる。本実施形態においても、封止栓による封止を適宜行ってよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例として、図28に示す評価用装置において、具体的な試験を行った結果について説明する。
〔評価用装置の構成〕
図28に示す評価用装置は、前述した第2実施形態(図14および図15参照)に基づくものであり、底面14にパイプ状の注入口21Aおよび排出口22Aを設置した構成とされる。
【0066】
〔実施例1〕
実施例1として、充填確認用開口99の開口寸法について実験による評価を行った。
図28の装置において、底板14に直径2〜14mmの範囲で開口を形成して充填確認用開口99とし、不定形耐火材として微粒からなる圧入材とキャスタブルとの2材質について圧入テストを実施した。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
圧入材を充填した場合、直径2mmでは開口からの流出がなく、直径4〜8mmでは開口から適度に流出があった。この流出は、木栓等で容易に開口を閉鎖することができる程度であった。
キャスタブルを充填した場合、直径4mmでは、少しだけ水分が流出したが直ちに閉塞した。直径6〜10mmでは、適度にキャスタブルが流出し、木栓等で容易に閉鎖することができた。
【0069】
このことから、底板14上に形成する充填確認用開口99の開口寸法としては、直径4〜10mmが望ましく、それ未満では材料の流出が確認できず、それを超えると、閉鎖するまでに大量の材料が流出することが解った。
[評価] ×:何も流出しないまたは、大量に流出
△:流出小で閉塞または、流出大で止めに時間を要す。
○:適度に流出し、止めも短時間で可能
◎:下記の中で最も良好
【0070】
〔実施例2〕
実施例2として、充填確認用開口99を封止するための封止栓98として用いる金属製ピンの材質について実験による評価を行った。
図25において、底板14に形成された充填確認用開口99は、不定形耐火物の充填確認後に順次、金属製ピンを用いた封止栓98で封止される。
本実施例において、底板14に形成される充填確認用開口99は直径6mmの開口とし、封止栓98として下記3材質のピンを用いて開口の閉塞を実施した。
封止栓98のサイズは、頭部の直径7mm、軸部の直径5mm、長さ15mmとし、底板14の厚さは32mmとする。
このような条件のもとで、各材質の封止栓98を充填確認用開口99に打ち込み、打ち込んだあとの底板表面のピンの広がり寸法Rと高さHを測定した(図26参照)。以上の金属製ピンを用いた封止栓98の材質比較結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
その結果、どの材質も容易に打ち込むことができたが、鉄とアルミニウムは、底板より盛り上がりHが大きく、次工程でその上面をシールするために蓋板145(図27参照)としての鉄板を置いて溶接する際、底板14との間の隙間が大きくなってしまう。このような場合、盛り上がり部をサンドペーパ等による仕上げ削りを行う必要があった。しかし、真鍮の場合は顕著な盛り上がりはなく、仕上げを必要としなかった。なお、盛り上がり部を削るのは、底板と鉄板間に隙間に密封された空気があると溶接欠陥が生じやすくなるためで、削って隙間を小さくする方が好ましい。
以上より、金属製ピンの材質は、いずれの金属でもよいが、真鍮が最も盛り上がりがなく、好ましい。
【0073】
〔実施例3〕
実施例1および実施例2の結果に基づき、実際の製鉄所の高炉改修工事において下記に示す方法で実施工を行った(図23および図24参照)。 図23および図24の装置では、基礎5上に空間20Uが33列、その中に水冷パイプ16が66本配列された梁組構造物11を据付け、その上部に炉底マンテル12を据え付けた。続いて、冷却パイプ16の下端近くまで耐熱コンクリート18を施工し、梁レベルより4〜6mm低いレベルまでSiC質のキャスタブル17を施工した。その後、平面直径17mの円形の底板14を溶接し、底板14に取り付けられた注入孔21Aより随時圧入を実施した。
【0074】
注入口21Aおよび排出口22Aは、図25に示すように、ボルト33による取り外し式とした(図16の第3実施形態参照)。本実験例では、注入口21Aおよび排出口22Aとして、鉄板35Bにパイプ状の本体31を貫通状態で溶接するとともに、その周囲に4つのナット34Bを溶接しておき、4本のボルト33がねじ込まれたものとした。底板14側には、4本のボルト33に対応する4つのナット34Aが溶接された鉄板35Aを溶接しておいた。なお、前述した第3実施形態(図16参照)のように、ナット34Aを直接底板に溶接してもよいが、位置のケガキが事前に行えるため、あらかじめナット34Aが溶接された鉄板35Bを用いた。
【0075】
パイプ状の本体31と底板14との接触面には、厚さ2mmのゴムパッキン36を使用した。先の鉄板35Bに取り付けられたボルト33をナット34Aにねじ込んだ後、ナット34Bを締め付けて本体31でゴムパッキン36を挟んで底板14に押し付けることにより、注入口21Aおよび排出口22Aを固定した。
注入口21Aおよび排出口22Aの取り付け位置は、空間20Uの一端部および他端部とし、本体31のサイズは、直径50mmとした。
注入口21Aと排出口22Aの個数は、各空間20Uにそれぞれ1つ配置し、総個数はそれぞれ33個であった。
注入口21Aと排出口22Aとの間には、3m間隔で直径6mmの充填確認用開口99を設けた。
【0076】
33列の空間部20Uの最も端の列から、注入口21Aにバルブ26および圧送用ホース27を接続し、キャスタブル17の圧入を行った。キャスタブル17の圧入に伴い、充填確認用開口99からキャスタブル17の液分と空気が流出するのを確認しながら、他端の排出口22Aからキャスタブル17が流出したことを確認したら一時圧送を停止し、注入口21Aに取り付けているバルブ26を閉とし、途中の充填確認用開口99に真鍮製ピンによる封止栓98を木槌と金物ハンマーを用いて打ち込んだ。次いで圧送用ホース27を外し、次列へホースを繋ぎ換え、順次次列の圧送に移った。
先に圧送が完了した列については、数分後、排出口22A内のキャスタブル17のレベルがほとんど変化していないことを観察し、充填完了とした。なお、排出口22A内のキャスタブル17のレベルが明らかに低下していた場合は、注入口21Aから再度圧入を実施した。充填完了となった列については、その後直径30mm、厚さ6mmの封止板145を溶接してシールを行った(図27参照)。
【0077】
以上の作業を繰り返して、33列の施工を完了した。キャスタブル17の硬化が確認できたものから、随時注入口21Aと排出口22Aのボルト33を外し、ハンマーで軽く叩くことにより取り外した。取り外し跡の孔部のキャスタブル17の手入れを行った後、直径90mm、厚さ9mmの封止板142を溶接してシールを行った(図27参照)。
このように、本実施例では、大部分の作業をキャスタブル17の施工時や硬化待ち時に並行して行うことができ、キャスタブル17の圧入、硬化後の作業時間としては、6時間で完了した。また、注入口21Aと排出口22Aの着脱等にガス切断作業を皆無としたことで、炉内の環境は大幅に改善できた。
以上のように、本発明により定形耐火物の充填工程が簡略かつ確実にできることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、高炉炉底の構築方法に関し、高炉の炉底部分の構築に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
2…炉体櫓
3…炉体
5…基礎
10…炉底部である炉底ブロック
11…梁組構造物である敷きビーム
12…炉底マンテル
14…底板
15…鉄皮
16…冷却管
17…不定形耐火材であるキャスタブル
18…耐熱性コンクリート
19…閉止板
20…空間部
20U…上段の空間部
20L…下段の空間部
21,21A…注入口
22,22A…排出口
23…仕切壁
24…注入口の延長管
25…排出口の延長管
99…充填確認用開口
98…封止栓
110…交差梁材
111…主梁材
142,145…封止版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に梁組構造物を配列して前記梁組構造物の間に空間部を形成し、前記梁組構造物に底板を張って前記空間部の上面を閉鎖し、前記空間部内に不定形耐火材を充填して前記不定形耐火物を前記底板に密着させる高炉炉底の構築方法において、
外部から前記不定形耐火物を前記空間部の一端側に注入する注入口と、前記空間部の他端側から前記不定形耐火物を排出する排出口と、前記注入口から前記排出口までの間の前記底板に、前記注入口から注入された前記不定形耐火物の充填確認を行うための充填確認用開口とを形成しておき、
前記注入口に近い前記充填確認用開口から前記不定形耐火物の流出を順次確認しつつ前記注入口に前記不定形耐火物を注入し、
前記排出口から前記不定形耐火物の流出が確認された後に前記不定形耐火物の注入を停止し、
前記充填確認用開口を完全に封止する、ことを特徴とする高炉炉底の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載された高炉炉底の構築方法において、
前記充填確認用開口は、内径4〜10mmで形成することを特徴とする高炉炉底の構築方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された高炉炉底の構築方法において、
前記充填確認用開口には、前記不定形耐火物の流出が確認できたものから順次封止栓で封止してゆくことを特徴とする高炉炉底の構築方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載された高炉炉底の構築方法において、
前記注入口および前記排出口は、前記底板にねじ止めされるパイプ状の接続部材であることを特徴とする高炉炉底の構築方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載された高炉炉底の構築方法において、
前記注入口、前記排出口および前記充填確認用開口の封止は、前記注入口および前記充填確認用開口を覆う封止板を当て、前記封止板を前記底板に溶接することを特徴とする高炉炉底の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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