説明

高炉用炉底マンテルの搬送方法

【課題】高炉の基礎以外の場所で事前にレンガを施工して重量が増大した炉底マンテルを高炉基礎上まで安定して搬送することのできる高炉用炉底マンテルの搬送方法を提供する。
【解決手段】高炉の基礎以外の場所で炉底マンテルを構築する際に、厚さAが700〜2200mmのバランスビーム16の上面に厚さHが480〜1000mmの敷きビーム12を載置し、その上に炉底マンテルを構築していく。該炉底マンテルにレンガ9,10を施工して高炉基礎上まで搬送する際には、炉内に施工したレンガ上面の撓み量をマンテル半径1m当たり3mm以下として搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉基礎以外の場所で事前に高炉炉体を構築し、既存炉体の解体後、その基礎上に高炉を搬送する搬送方法で、特にレンガを事前に施工した高炉用炉底マンテルを高炉基礎まで搬送する高炉用炉底マンテルの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高炉改修に際しては、古くなった高炉(旧高炉)を小片に分割して高炉基礎上から撤去した後に、その基礎上で短冊形の鉄皮を一枚一枚溶接接合して新たな高炉本体を据え付け、その後に炉内にレンガ積みを実施する工法、換言すると一から新たな高炉を構築する工法を採っていた。このため、従来の工法では改修に長期間を要するとともに、高炉本体の据え付け後にステーブクーラや冷却配管等の冷却装置を取り付ける高所作業が必要となり、安全保安上や工事品質上の問題もあった。
【0003】
一方、近年においては工期短縮を図るべく、旧高炉の操業と並行して、近くの別の場所(地組場)で新しい高炉を複数のリング状ブロックに分割して各ブロックを一斉に組み立て始め、旧高炉を基礎上から完全に撤去した後に、これらのブロックをドーリー等の大規模重量物搬送台車を用いて搬入し、ジャッキやクレーン等で吊り上げて設置し、各ブロックが接する部分の鉄皮や配管などを溶接接合して一体化する、いわゆるブロック工法が採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
例えば、特許文献1には、高炉を炉底部、朝顔部、炉腹部、炉胸部、炉口部等に分割し、その分割した各部を夫々高炉周辺の各部分毎に移動用足場を用いて順次横方向に移動して積み重ね、全体を結合して一体に構成し、高炉の建設工期を短縮することが開示されている。
【0004】
上記のように高炉改修における工期短縮は古くから検討されている技術ではあるが、大型構造物および大重量物であるため実機への適用が難しく、現在もなお各社種々の検討を行い、特許出願も多数されている。例えば、特許文献2には、既存高炉の解体または再建をするに当たり、(a)炉体を、その炉頂部から炉底部まで数個のリング状ブロックに分割し、それぞれ高炉基礎以外の場所で建造すること、(b)上記リング状ブロックのうち、最下段の炉底部ブロックを除くブロックにそれぞれ、レンガ積み部の反りやひずみの防止手段および真円度の確保手段を付与すること、(c)他方、炉底部ブロックは、その下端に設置される炉底板の上にレンガを積んでおくこと、(d)炉底部ブロックを除くリング状ブロックは、横送りで該基礎上に搬送した後リフトアップ工法により炉頂部から順次リフトアップしつつ互いに接合すること、(e)炉底部ブロックは高炉基礎レベルを横送りで該基礎上に搬送設置した後、上部ブロックと接合することの工程により高炉の短期改修・建設方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、高炉の既存炉体をその炉頂部から炉底部まで複数のリングブロックに分割して解体し、また同様のリングブロックを作成して高炉基礎上でリングブロックを組み上げる高炉炉体構築方法において、高炉基礎以外の場所に炉体のリングブロックを昇降させる吊り換え装置を設置し、リングブロックを高炉基礎レベルに積荷レベルを合わせるように積荷レベル調整用架構を載荷した輸送台車に移し、前記吊り換え装置へ輸送し吊り換え装置で前記リングブロックを支持した後、前記積荷レベル調整用架構を除去し、搬送台車が最小限上架可能なレベルまでリングブロックをリフトダウンして輸送台車により置き台へ輸送し、一方、輸送台車が最小限上架可能な低いレベルでリングブロックを建造し、輸送台車により前記吊り換え装置まで輸送し、吊り換え装置で前記リングブロックを支持して高炉基礎レベル上へ移動可能なレベルまでリフトアップし、積荷レベル調整用架構を載荷して高炉基礎レベルに積荷レベルを合わせた輸送台車に上架して高炉基礎上まで搬送する高炉炉体の構築方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭47−1846号公報
【特許文献2】特開平09−143521号公報
【特許文献3】特開平10−102778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、分割した各々のブロックを組み立て完成高さと同じ高さの足場上で施工し、完成後部分毎に移動足揚を用いて移動させ、完成させる方法である。高炉本体の高さが100m程度あり、この炉体を分割して、分割高さ毎に足場を組んでこの足場の上でブロックを施工することになる。分割したブロックでも重量は数千トンに達し、この重量に耐える剛性が必要となり、また、分割ブロック毎にこの足場が必要となり、この足場の製作費用が高いため実現しなかった。
【0007】
特許文献2に記載の方法においては、リング状にブロック化された炉体を高炉基礎上まで移動し、リフトアップしてそれぞれのリングを接合し、最後に炉底ブロックを移動させて、炉底ブロックに載置接合して完成する。この時炉底ブロックには炉底板の上にレンガを積んでおくと記載されている。しかし、高炉の炉底は、直径で10〜20mもあり、炉底にレンガを積む場合、炉底の変形が最も重要な課題であるが、本参考文献にはこの重要課題が一斉開示されていない。従って、炉底ブロックにレンガを積んでおくという発想はあったものの、具体的にどのように上記課題を解決するのか当業者間でも懸案事項であり実現されていないのが実情であった。
【0008】
また、特許文献3においては、高炉基礎以外の場所に炉体のリングブロックを昇降させる吊り換え装置を設置し、リングブロックを高炉基礎レベルに積荷レベルを合わせるように積荷レベル調整用架構を載荷した輸送台車により高炉基礎へ移動する方法が開示されているが、ブロック化された炉体へのレンガの事前施工等については一切開示されていない。
【0009】
このように、高炉のブロック化施工は工期短縮に必須の技術であるが、ブロック化が進めば進むほどブロックごとの重量が増し、高度な搬送技術が必要とされるところ、上記文献等にはこれに関する記載が一切ない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく本発明者が誠意検討した結果、完成されたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)高炉基礎以外の場所で事前に高炉炉底マンテルを建設し、該炉底マンテルにレンガを施工して高炉基礎上まで搬送する炉底マンテルの搬送方法において、炉内に施工したレンガ上面の撓み量をマンテル半径1m当たり3mm以下として搬送することを特徴とする高炉用炉底マンテルの搬送方法。
(2)前記炉底マンテルの下面に厚さAが700mm以上2200mm以下のバランスビームを設置したことを特徴とする前記(1)に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
【0011】
(3)前記炉底マンテルの下面に厚さHが480mm以上1000mm以下の敷きビームを設置し、且つ、前記敷きビームの下面に厚さAが700mm以上2200mm以下のバランスビームを設置したことを特徴とする前記(1)に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
(4)ドーリーを長手方向に連結して複数のドーリー列を形成し、該ドーリー列を前記バランスビームと地表面との間に形成した間隙内に並列に引き込み、各ドーリー列の長さを中央列から端列にいくに従い減少させて配置することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
【0012】
(5)前記バランスビームの形状を引き込むドーリー列の長さに応じた形状とすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
(6)前記ドーリーに設置された油圧シリンダ間距離Pが2.5m以内となるように前記ドーリー列を並列に配置したことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
(7)炉底マンテルに施工されたレンガ上面の任意位置にレーザー発信器を設置し、同じくレンガ上面の任意位置に複数のレーザー受信器を直線上に配置し、受信するレーザーの鉛直方向変位量を検出して得られるレンガ上面の撓み量を測定しながら炉底マンテルを搬送することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
(8)前記レーザー受信器により検出した鉛直方向変位量から、レンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器の傾きによって生ずる誤差をキャンセルする補正を行い、当該補正後の鉛直方向変位量を真の撓み量とすることを特徴とする前記(7)に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高炉の基礎以外の場所で事前にレンガを施工して重量が増大した炉底マンテルであっても、レンガの目地切れ等生じることなく高炉基礎上まで安定して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図17を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1において、高炉の解体改修は、高炉の炉体2を水平方向に切断して垂直方向に複数段に分割して高炉基礎上から高炉基礎外に搬出される。一方、新設される炉体2は高炉基礎以外の場所(地組場)であらかじめ設定されたブロック数で構築される。
【0015】
図2はブロック化され、地組場で構築された炉底マンテル1を搬送するときの状態を示す図で、炉体を事前に構築する地組場では、バランスビーム16を地表より立設し、このバランスビーム16の上面に敷きビーム12を載置する。敷きビーム12とバランスビーム16の間には敷きビームを浮上させるエアーキャスタ18が内蔵できるようになっている。このように構成した敷きビーム12の上面に炉底マンテル1を構築していく。なお、図4および図12にエアーキャスタ18の配置例の一態様を示すが、エアーキャスタ18の配置方法はこれに限定されるものではない。
【0016】
詳述すると、炉底板6に鉄皮7を立設し、鉄皮7の内側にはステーブクーラ8を張設し、炉底板6の上面に目地材11を介して炉床レンガ9を施工する。そして、この炉床レンガ9の上面に目地を介してカーボンレンガ10を施工する。この状態で炉底マンテル1の重量は約1000トン以上となり、地組場に設置したバランスビーム16上でこの炉底マンテル1を構築するには、バランスビーム16に剛性を持たせて、炉底マンテルの変形を防止する必要がある。
しかし、具体的にどのように防止してよいのか開示された技術は一切無かった。そこで、本発明者らは有限要素法による数値解析および実験を重ね、炉底マンテル1に施工されるカーボンレンガ10の上面でマンテル半径lm当たりの撓み量を3mmに抑えて搬送することで、高炉基礎上に載置して、そのまま使用することができる知見を得た。
【0017】
実験用では図3に示すように、炉底板6にスタンプ材25を介して炉床レンガ9を施工し、この炉床レンガ9の上面にスタンプ材25を介してカーボンレンガ10を施工した、ミニモデルを採用した。図3に示すようにミニモデルの炉底マンテルの下部にジャッキ24を設置し、ジャッキを作動させて、カーボンレンガ間に施工した目地やスタンプ材25との隙間の状態を観察した。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1の結果から撓みが3mm/mを超えると目地t部に隙間が発生し、3mm/m以下では目地の伸縮により目地切れが発生することは無かった。したがって、カーボンレンガ上面での撓みを3mm/m以下に抑えるため、具体的に検討を実施した。
【0020】
高炉炉底部は、敷きビーム12を持つタイプの高炉と炉底板を直接基礎に設置するタイプの2通りがあり、図2は前者の敷きビームに炉底マンテルを載置した炉体を搬送する概略図である。高炉基礎上には炉底マンテルと敷きビームが設置される。このため敷きビーム12に剛性を持たせる必要がある。
【0021】
敷きビーム12の構造について図4に示す。図4(a)および(b)に示すように、敷きビーム12はH形鋼を井桁状または格子状に組んで、耐火コンクリート15を流し込んで剛性をアップしている。このように構成した敷きビームの撓み量を示したものを図5に示す。敷ビームの厚さHが480mm以上なければ実験で求めた撓み量3mm/mを超えてしまい、敷ビームの厚さHが480mm以上必要であることが判明した。また1000mmを超えると重量が増えるだけで経済的ではない。
【0022】
次に図2では敷きビームはバランスビーム上に載置されている。したがって、バランスビーム16は炉底マンテル1と敷きビーム12を支持し、炉底マンテル内のカーボンレンガ上面の撓みを3mm/m以下に抑えるための剛性が必要となる。
撓みを3mm/m以下に抑えるためには、図6および図7に示すように、バランスビームの厚さAは700mm以上が必要で、700mm以上であればカーボンレンガ上面の撓みを3mm/m以下に抑えることはできるが、バランスビームを含む炉底マンテル及び敷きビームを搬送するためのドーリーに限界があり、バランスビームの高さAは2200mm以下となる。
【0023】
次に地組場から高炉基礎横までの搬送は、図8(b)に示すように大規模重量物搬送台車であるドーリー17を使用する。すなわち、ドーリー17を搬送方向(長手方向)に連結して複数のドーリー列を形成し、形成した複数のドーリー列を並列に前記バランスビームと地表面との間に形成された間隙内に引き込み、ドーリーの油圧を操作してバランスビーム16を上昇させ、高炉基礎横まで搬送する。なお、図8(a)は、地組場でレンガを施工した炉底マンテル、(b)はドーリー搬送される炉底マンテル、(c)はエアーキャスタを用いて搬送される炉底マンテルを示す図である。
【0024】
並列に配列した各ドーリー列の長さについては、図9(a)に示すように、中央列から端列にいくにしたがって列の長さを減少させて配置している。炉底マンテル1は円筒状のため、中央部から端部にむかつてドーリー列の長さを減少させることで、ドーリーにかかる荷重をバランスよく吸収することができる。また、ドーリー列の配列としてドーリー間の距離を2.5m以内とすることで、ドーリーに配置されているシリンダ間距離Pが2.5m以下となり、バランスビーム16を支持する距離が2.5m以下となる。このバランスビームの支持点を2.5m以下とすることで、バランスビームの撓みも最小限に抑えることができ、炉底マンテル外径からはみ出す部分を極力抑えることができる。
なお、図9(b)に示すように、従来は各ドーリー列の長さを揃えるのが一般的であるが、この場合には、炉底板中心からの距離が遠くなる部分ほど、その他の部分と比較して炉底マンテル1およびその下面に設置される敷きビーム12やバランスビーム16からの荷重が乗らないことから、バランスビームを介して炉底マンテルを大きく変形させてしまう。
【0025】
さらには、バランスビーム16の形状を、引き込むドーリー列の長さに応じた形状にするのが望ましい。このような形状にすれば、ドーリーにかかる荷重を均等に分散させることが可能となり、ひいては搬送時の撓み量を低減させることができる。
【0026】
図10は補強リング19の概略図で、炉底マンテル1の上方外周に配置している。炉底マンテル内へのレンガの事前施工部分が炉床レンガ9及びカーボンレンガ10であれば、炉底マンテルの鉄皮部分があるため、この部分の撓みによる炉底マンテル鉄皮の変形(内側への倒れ)を防止する。
【0027】
図11は炉底マンテル内面に設置したステー材21の概略図で、ステー材21は放射状に配置している。炉底マンテル内に施工したカーボンレンガ上部近傍に配置する。これは、カーボンレンガ上面の撓みを極力防止するため、できるだけカーボンレンガ10の上面に近い方がよい。
【0028】
以上、説明したように本発明は、高炉の基礎以外の場所で事前にレンガを施工して重量が増大した炉底マンテル1であっても、炉内に施工したレンガ上面の撓み量をマンテル半径1m当たり3mm以下として搬送すれば、レンガの目地切れ等生じることなく高炉基礎上まで安定して搬送することができるという従来技術には存在しない新規かつ有用な技術的知見に基づいて完成した発明である。したがって、当該安定した搬送をより確実なものとすべく、ドーリー17やエアーキャスタ18を用いて炉底マンテル1を搬送する際には、所定の測定機器を用いてレンガ上面の撓み量を測定しながら搬送することが望ましい。
【0029】
レンガ上面の撓み量を測定するためには、レーザー発信器26と該レーザー発信器が発信したレーザー28を受信する複数のレーザー受信器27を炉底マンテル1に施工されたレンガ上面に設置することが望ましい。本来、変形する対象物の撓み量を測定しようとする場合は、図17に示すようにレーザー等の発信器は固定点に設置し、かつ固定点の一箇所に不動の基準点を設け、基準点との相対比較で測定点における鉛直方向変位量を求めるのが一般的である。しかしながら、炉底マンテル1に施工されたレンガ上面の撓み量を測定しようとする場合、測定する対象物が鉄皮7で囲まれた内部に位置しており、外部の固定点から測定点を観測することは困難である。また、対象物も数十〜数百m移動することから、発信器を固定点に置くことは受信器の受信能力の観点からも不可能といえる。また、炉内に人が入って撓み量を測定することも可能ではあるが、搬送中に炉内に入ることは極めて危険である。さらには、レンガ上面の撓みは時々刻々と変化しており、人力で瞬時に測定することは不可能である。
【0030】
したがって、図13(a)に示すように炉底マンテル1に施工されたレンガ上面の任意位置にレーザー発信器26を設置し、同じくレンガ上面の任意位置に複数のレーザー受信器27を設置することが望ましい。これにより各レーザー受信器27が受信するレーザーの鉛直方向変位量、すなわちマンテル搬送前と比較して各レーザー受信器27におけるレーザー受信位置がどのくらい鉛直方向に変位したかを検出することによって、レンガ上面の撓み量を測定することができる。この場合、複数のレーザー受信器27を直線上に配置することが望ましい。直線上に配置することにより、図13(b)に示すように当該線上における鉛直方向変位量、すなわちレンガ上面の撓み量を正確に測定することができる。
【0031】
レーザー発信器26としては特に限定されるものではなく、図13(a)に示す回転レーザーを用いることができる。回転レーザーを用いることにより、時々刻々と変化する鉛直方向変位量を瞬時に検出することができる。同様にレーザー受信器27としても特に限定されるものではなく、回転レーザー用変位測定器を用いることができる。
また、図示しないが無線又は有線による通信手段によって各レーザー受信器27におけるレーザー受信位置データが炉外の作業者に伝達できることが望ましい。例えば、無線又は有線による通信手段によって各レーザー受信器27と炉外に設置された計算機(コンピュータ)を接続することにより、マンテル搬送によって時々刻々と変化する各レーザー受信器における鉛直方向変位量、すなわち撓み量を随時確認することができる。
なお、鉛直方向変位量の検出は、マンテル搬送前におけるレーザー受信位置を記憶することができるとともに時々刻々と変化するレーザー受信位置との差分を演算できるレーザー受信器27を使用する場合にはレーザー受信器自体が行ってもよいし、無線又は有線による通信手段によって接続した計算機(コンピュータ)によって前記差分を演算してもよい。
【0032】
前記したように本発明においてはレーザー発信器26とレーザー受信器27を炉底マンテルに施工されたレンガ上面に設置しているため、図14に示すようにレンガ上面に撓みが生ずると、レーザー発信器26に傾きが生じ、これに伴い各レーザー受信器27におけるレーザー受信位置、ひいては検出する鉛直方向変位量に誤差が含まれることとなる。当該誤差は図14に示すようにレーザー発信器26と各レーザー受信器27との距離に比例して大きくなる。すなわち、炉底マンテル1の半径が大きくなるほど、また撓み量が大きくなるほど当該測定誤差は無視できなくなるおそれがある。図15は、レーザー発信器26とレーザー受信器27の配置例の他の形態を示す説明図であり、このように配置することによりレンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器26の傾きによって生ずる誤差をキャンセルする補正を行うことができる。
【0033】
この方法は、複数のレーザー受信器27を同一直線上に配置し、検出した鉛直方向変位量から、レンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器26の傾きによって生ずる誤差をキャンセルする補正を行い、当該補正後の鉛直方向変位量を真の撓み量とするものであり、具体的には表2に示すように直線上に配置した最端部のレーザー受信器A(測定点A)を常に0基準とする。そして、反対側の最端部に設置したレーザー受信器Bの値を読み取り、その間に設置した受信器の値を設置距離Lにより補正する方法である。当該方法によれば、図16に示すようにレンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器26の傾きによって生ずる誤差をキャンセルすることができ、これにより炉底マンテル1の搬送をより安定したものとすることができる。
【0034】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】高炉の概略説明図である。
【図2】本発明に係る炉底マンテルの施工概略図である。
【図3】実験用ミニモデルの概略説明図である。
【図4】敷きビームの構造を模式的に示す断面図である。
【図5】敷きビームの厚さと撓み量の関係を示すグラフである。
【図6】バランスビームの構造を模式的に示す断面図である。
【図7】バランスビームの厚さと撓み量の関係を示すグラフである。
【図8】(a)は地組場で煉瓦を施工した炉底マンテル、(b)はドーリー搬送される炉底マンテル、(c)はエアーキャスタを用いて搬送される炉底マンテルを示す図である。
【図9】(a)は本発明に係るドーリーの配置方法を示す説明図であり、(b)は従来の配置方法を示す説明図である。
【図10】(a)は補強リングの設置方法の一例を示す説明図であり、(b)は補強リングの拡大図である。
【図11】(a)はステー材の設置方法の一例を示す説明図であり、(b)はステー材の拡大図である。
【図12】エアーキャスタの配置例の一態様を示す模式図である。
【図13】(a)はレーザー発信器とレーザー受信器の配置例の一形態を示す説明図であり、(b)はレンガ上面の撓み量を示す説明図である。
【図14】レンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器の傾きによって生ずる誤差を示す説明図である。
【図15】レーザー発信器とレーザー受信器の配置例の他の形態を示す説明図である。
【図16】レンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器の傾きによって生ずる誤差をキャンセルする補正方法を示す説明図である。
【図17】炉底マンテルに施工されたレンガ上面に測定機器を設置する技術的意義を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 炉底マンテル 2 炉体
3 炉体支持柱 4 環状管
5 基礎 6 炉底板
7 鉄皮 8 ステーブクーラ
9 炉床レンガ 10 カーボンレンガ
11 目地 12 敷きビーム
15 耐火コンクリート 16 バランスビーム
17 ドーリー 18 エアーキャスタ
19 補強リング 20 リブ
21 ステー材 22 固定プレート
23 締結部材 24 ジャッキ
25 スタンプ材 26 レーザー発信器
27 レーザー受信器 28 レーザー
A バランスビームの厚さ H 敷きビームの厚さ
P 油圧シリンダ間距離 t モルタルの厚さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉基礎以外の場所で事前に高炉炉底マンテルを建設し、該炉底マンテルにレンガを施工して高炉基礎上まで搬送する炉底マンテルの搬送方法において、炉内に施工したレンガ上面の撓み量をマンテル半径1m当たり3mm以下として搬送することを特徴とする高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項2】
前記炉底マンテルの下面に厚さAが700mm以上2200mm以下のバランスビームを設置したことを特徴とする請求項1に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項3】
前記炉底マンテルの下面に厚さHが480mm以上1000mm以下の敷きビームを設置し、且つ、前記敷きビームの下面に厚さAが700mm以上2200mm以下のバランスビームを設置したことを特徴とする請求項1に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項4】
ドーリーを長手方向に連結して複数のドーリー列を形成し、該ドーリー列を前記バランスビームと地表面との間に形成した間隙内に並列に引き込み、各ドーリー列の長さを中央列から端列にいくに従い減少させて配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項5】
前記バランスビームの形状を引き込むドーリー列の長さに応じた形状とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項6】
前記ドーリーに設置された油圧シリンダ間距離Pが2.5m以内となるように前記ドーリー列を並列に配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項7】
炉底マンテルに施工されたレンガ上面の任意位置にレーザー発信器を設置し、同じくレンガ上面の任意位置に複数のレーザー受信器を直線上に配置し、受信するレーザーの鉛直方向変位量を検出して得られるレンガ上面の撓み量を測定しながら炉底マンテルを搬送することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。

【請求項8】
前記レーザー受信器により検出した鉛直方向変位量から、レンガ上面の撓みに起因するレーザー発信器の傾きによって生ずる誤差をキャンセルする補正を行い、当該補正後の鉛直方向変位量を真の撓み量とすることを特徴とする請求項7に記載の高炉用炉底マンテルの搬送方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−307319(P2006−307319A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363618(P2005−363618)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】