説明

高耐圧ホースの製造方法

【課題】長さ方向端部の拡径時にホース体に座屈が生じるのを防止でき、かつ、面倒なホース本体の後処理工程が不要となる高耐圧ホースの製造方法を提供する。
【解決手段】内面側層13、補強層15及び外面側層17を積層した、全長にわたって同一の内径、外径及び肉厚を有するホース体31を形成し、ホース体31を保持型33で保持しておく。そして、ホース体31の長さ方向端部側にマンドレルを押し込み、長さ方向端部側を拡径する。保持型33の収容部43をホース体31を圧迫して収容するように形成しておき、かつ、収容部43に逃し凹部45を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアコンホース等の高耐圧ホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエアコンホースには、ゴム製の内面側層の外側に、補強線材(補強糸)を編組(例えばスパイラル編組)して補強層を形成し、この補強層の外側をゴム製の外面側層でカバーした構成のホースが使用されている(例えば特許文献1参照)。こうようなホースでは、内部流体である冷媒の透過量を低減して地球温暖化を防止するために、内面側層の内側に樹脂バリア層が形成される場合も多い。
【0003】
こういったエアコンホースは、エンジン側と車体側とを連結するものであるため、エンジン振動やコンプレッサ振動あるいは走行時の車体振動などが相手側に伝達されないような十分な振動吸収性を備えていることが好ましい。しかしながら、樹脂バリア層の形成により、エアコンホースの耐冷媒透過性は向上するが、このような振動吸収性は低下する。そこで、エアコンホースを長く形成して(例えばホースによる連結個所間の距離が300mm程度であっても400mm前後の長さに形成する)、樹脂バリア層の形成によりエアコンホースに振動吸収性の不足が生じないようにしておく必要がある。
【0004】
ところが、自動車のエンジンルーム内では、部品などが密集して配置されているので、十分な配管スペースを確保することができない場合も多い。したがって、樹脂バリア層を形成し、ホースを長尺化するといった対処方法は得策ではないことも少なくない。そこで、樹脂バリア層を形成する代わりに、エアコンホースをできるだけ短く形成しておくことが考えられる。ホースが十分短ければ、ホースからの冷媒透過量を低く抑えることが可能である。そして、短くても十分な振動吸収性を確保できるホース構造を構成できれば、狭い配管スペース内に収まり、かつ、冷媒透過量が少なく、しかも振動吸収性の良好なエアコンホースを提供できることとなる。
【0005】
ところで、エアコンホースの振動吸収性不足は、ホース内に冷媒が高い圧力で導かれた場合に発生し、ホース内に冷媒が導かれていない場合には、ほとんど問題とはならない。すなわち、ホース内に冷媒が高圧で供給されると、ホースと冷媒とが一体化してホースは剛性化していき、このホースの剛性化が振動吸収不足を招くこととなる。そして、ホースの剛性化は、ホース内部の断面積(径方向に切断したときの断面の面積)に依存し、断面積が大きくなれば剛性化の程度は大きくなり、断面積が小さければ剛性化の程度は小さい。
【0006】
そこで、エアコンホースを細径化して振動吸収性を確保することが考えられるが、エアコンホース(ホース本体)の端部には、例えば、インサートパイプとソケット金具(締め付け具)を備えた継手具が取り付けられる。したがって、ホース本体を全長にわたって細径に形成すると、継手具のインサートパイプをホース本体の端部(締め付け部、より具体的にはかしめ部)に挿入する際、かしめ部(かしめられたソケット金具によって締め付けられる部分)を拡径させながらこのかしめ部内に挿入しなければならない。ところが、エアコンホースは破裂圧が5Mpa以上となるように形成されるが普通であるため、挿入抵抗が過大となってインサートパイプの挿入が実際上困難になってしまう。
【0007】
そこで、主部が細径で、かしめ部が拡径状態のホース本体を製造しておき、主部よりも大径に形成されているかしめ部にインサートパイプを挿入し、かしめ部の外周に嵌められたソケット金具をかしめて、かしめ部をインサートパイプに締め付ける(かしめ付ける)といった手段の採用が考えられる。この点に関し、例えば特許文献2、3には、ホースのパイプとの接続部を予め拡径状態に形成しておく技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−68659号公報
【特許文献2】特許第3244183号公報
【特許文献3】特公平8−26955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような、主部が細径で、かしめ部が大径のホース本体は、全長にわたって主部の径と同一の径を有するホース体を形成しておき、このホース体の長さ方向端部にマンドレルを押し込み、長さ方向端部を拡径して大径のかしめ部を形成することにより製造することができる。マンドレルのホース体の長さ方向端部への押し込みに際しては、ホース体に座屈が生じ、マンドレルの押し込みができない、といったことがないように、ホース体の長さ方向中間部を保持型で保持しておく必要がある。保持型でのホース体の長さ方向中間部の保持は、保持型を複数の分割保持型で構成しておき、この分割保持型の型合わせによって形成される収容部でホース体をしっかりと挟み込んで保持することにより行うことができる。
【0010】
分割型の型合わせにより形成される収容部は、ホース体を圧迫するような断面形状を有しているのが効果的である。収容部がホース体を圧迫すれば、あるいは、圧迫していれば、ホース体の収容部内での径方向への膨らみは抑制される。したがって、マンドレルの押し込み時にホース体に座屈は生じない。
【0011】
しかしながら、収容部がホース体を圧迫するように形成されている場合には、分割保持型の型合わせ時に、分割保持型間から外面側層の材料が押し出され、製造されるホース本体にバリが生じるおそれがある。そうすると、ホース本体を製造した後の後処理工程が面倒になってしまう。
【0012】
そこで本発明は、長さ方向端部の拡径時にホース体に座屈が生じるのを防止でき、かつ、面倒なホース本体の後処理工程が不要となる高耐圧ホースの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するための本発明の高耐圧ホースの製造方法は、内面側層、この内面側層の外側の、補強線材を編組して形成した補強層及びこの補強層の外側のカバー層としての外面側層を含んだ積層構造を有し、主部及びこの主部よりも大径に形成された、長さ方向端部(例えば長さ方向両端部)の締め付け部を備えるホース本体と、前記主部よりも大径に形成されている前記締め付け部内に挿入されたインサートパイプ及び前記締め付け部の外周に嵌められ、前記締め付け部を前記インサートパイプに締め付ける締め付け具を有して前記締め付け部に固定されている継手具と、を具備した高耐圧ホースの製造方法であって、前記内面側層、前記補強層及び前記外面側層を含んだ前記積層構造を有し、全長にわたって同一の内径、外径及び肉厚を有するホース体を準備する工程と、前記ホース体を、長さ方向端部(例えば長さ方向両端部)が外側に突出するように、保持型で保持する工程と、前記保持型で前記ホース体を保持したまま、前記ホース体の長さ方向端部(例えば長さ方向両端部)にマンドレル(拡径具)を押し込み、この長さ方向端部(例えば長さ方向両端部)を拡径して前記締め付け部を形成する工程と、前記締め付け部が形成された前記ホース体を加硫して前記ホース本体を形成する工程と、前記ホース本体の前記締め付け部に前記継手具を固定する工程と、を備え、前記保持型は、収容部構成凹部が設けられた複数の分割保持型を有して構成され、かつ、前記分割保持型の型合わせにより、前記収容部構成凹部が組み合わさって形成される収容部(キャビティ)に前記ホース体を収容して保持するように構成されていて、前記収容部は、前記ホース体を圧迫して収容し、かつ、圧迫された前記ホース体の変形部分が逃げ込む逃し部を有しているものである。収容部構成凹部は、例えば、分割保持型に、全長にわたって設けられる。また、収容部は、例えば、保持型を長さ方向に貫通して設けられる。製造される高耐圧ホースは、例えば5Mpa以上の破裂圧を有する。高耐圧ホースの補強層は、補強線材をブレード編組して形成することができるが、補強線材をスパイラル編組して形成してもよい。補強層の編組密度は50%以上とすることができる。補強層の編組密度は、補強層の面積に対する補強線材の占める面積の割合(%)であり、具体的には、(糸幅×糸本数/(2×π×内面側層外径又は補強層のすぐ内側の層外径×cos編組角度))×100によって求められる。
【0014】
分割保持型を型合わせすると、収容部構成凹部がホース体をはさんで組み合わさり、ホース体を収容する収容部を形成する。収容部はホース体を圧迫するように形成されるので、収容部構成凹部は、組み合わさるときに、ホース体を押圧し、押し潰し、締め付け又は挟み付ける。したがって、ホース体は分割保持型の収容部内に拘束状態で収容される。収容部構成凹部が組み合わさって収容部が形成されるとき、ホース体は押圧されたりするので、ホース体が変形したり、ホース体の材料が移動したりするが、ホース体の変形部分は収容部に形成される逃し部に逃げ込むので、分割保持型の間からホース体の材料がはみ出さないように構成されている。逃し部は型合わせ位置(型合わせ面位置)に又は2つの分割保持型に跨って設けられるのが効果的である。
【0015】
構造を簡単なものとするために、一対の分割型(分割保持型)により保持型を構成することができる。ここで、収容部構成凹部をそれぞれ、ホース体の外径よりも小径の円形断面を有する収容部が構成されるように、断面半円形に形成しておけば、ホース体を収容部内にしっかりと保持することができる。そして、収容部の両側に逃し部が形成されるように、収容部構成凹部の両側縁部に浅い逃し部構成凹部を設けておけば、ホース体の材料が収容部からはみ出さないように、型合わせ位置に形成される逃し部に、ホース体の変形部分を効果的に逃すことができる。
【0016】
また、収容部構成凹部をそれぞれ、ホース体の外径よりも短い型合わせ方向の短軸又は短径と、この短軸と直交する、ホース体の外径よりも長い長軸又は長径と、を有する楕円形断面又は長円形断面の収容部が構成されるように、断面半楕円形又は断面半長円形に形成しておいても、ホース体を収容部内にしっかりと保持することができる。ここでは、収容部は、長軸の両端部位置(型合わせ位置)に逃し部を形成することとなる。
【0017】
ホース体の長さ方向端部とマンドレルとの間に挿入助剤を供給すれば、マンドレルに作用する挿入抵抗を軽減できるので、長さ方向端部にマンドレルを容易に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、大径の締め付け部を有するホース本体に継手具が固定された高耐圧ホースを簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明に係る高耐圧ホースの製造方法によって製造される高耐圧ホースの斜視図、図2は高耐圧ホースのホース本体の積層構造を示す図、図3は高耐圧ホースの断面図である。
【0021】
高耐圧ホース1は、自動車のエアコンホースとして使用されるものであり、ホース本体3の長さ方向両側に金属製の継手具5をそれぞれ固定した構造を有している。ホース本体3は、長さ方向中間部の主部7と、長さ方向両端部のかしめ部(締め付け部)9、9と、主部7及びかしめ部9のそれぞれの間のテーパ部11、11と、から構成されていて、主部7は全長にわたって同一の内径及び外径を有する細長い筒状に形成され、かしめ部9はそれぞれ、主部7より大径の内径及び外径を有して筒状に形成され、そして、テーパ部11はそれぞれ、かしめ部9から主部7まで漸次縮径するテーパ状に形成されている。
【0022】
ホース本体3はまた、ゴム製の内面側層(内面層)13と、この内面側層13の外周に補強糸(補強線材)をブレード編組することにより形成された補強層15と、この補強層15の外周に形成されたゴム製の外面側層(外面層)17と、を有する積層構造を全長にわたって備えていて、補強層15は内面側層13の外周に直接、形成され、外面側層17は補強層15の外周に直接、形成されている。なお、図2のθは、補強線材がホース軸となす角度である編組角度を示している。
【0023】
継手具5は、ホース本体3のかしめ部9内に挿入された金属製のインサートパイプ19と、かしめ部9の外周に嵌められた金属製のソケット金具(締め付け具)21と、を備え、インサートパイプ19の外端部の外周には、内周面に雌ネジが形成された金属製の接続用ナット23が抜止状態で回転可能に嵌められている。インサートパイプ19は、外周面に固定用の環状溝部25を有し、この環状溝部25がホース本体3の軸端面の外側に位置するように、より具体的には、環状溝部25がホース本体3の軸端面の外側に、かつ、軸端面と隣接して位置するように、かしめ部9内に挿入されている。また、ソケット金具21は、スリーブ27と、このスリーブ27の外端部に一体的に形成された内向きフランジ29と、を有している。ソケット金具21のスリーブ27は、内向きフランジ29が、インサートパイプ19の環状溝部25と対応して、ホース本体3の軸端面の外側に位置するように、かしめ部9の外周に嵌められていて、このスリーブ27をかしめることにより、スリーブ27がかしめ部9をインサートパイプ19に締め付け又はかしめ付け、かつ、内向きフランジ29が環状溝部25内に入り込んで、インサートパイプ19とソケット金具21とが一体化されている。なお、スリーブ27は、長さ方向3位置(A、B、C)でそれぞれかしめられ、かしめ部9はこの3位置(A、B、C)でそれぞれ締め付けられている。位置Aから位置Cに至るかしめ個所の最も内側の位置C、C間のホース本体3の部分は変形領域を形成し、この変形領域の軸方向長さL1は、無加圧時で、300mm以下となるように設定されている。また、変形領域の軸方向長さL1に対する主部7の軸方向長さL2の割合は、無加圧時で65%以上93%以下となっている。なお、変形領域の軸方向長さL1は、(主部7の軸方向長さL2+テーパ部11の軸方向長さL3の2倍+かしめ部9のかしめ個所Cから内側の部分の軸方向長さ(変形領域内のかしめ部9の長さ又は軸方向長さ)L4の2倍)である。
【0024】
内面側層13及び外面側層17には、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Halogenated butyl rubber)、すなわち塩素化ブチルゴム(ClIIR)又は臭素化ブチルゴム(BrIIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム状共重合体(ECO)、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等を単独で、あるいはブレンドして用いることができる。また、外面側層17はここではゴム製であるが、アクリル系、スチレン系、オレフィン系、ジオレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系及びフッ素系等の収縮チューブや熱可塑性エラストマ(TPE)を使用することもできる。そして、補強層15に用いられる補強糸には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アラミド、ポリアミド(PA)、ビニロン、レーヨン等を用いることができ、さらに、補強糸を金属ワイヤとすることもできる。
【0025】
図4乃至図11は本発明に係る高耐圧ホースの製造方法で高耐圧ホース1を製造する場合を説明する図である。
【0026】
高耐圧ホース1の製造にあたっては、まず、内面側層13、補強層15及び外面側層(カバー層)17を積層した、全長にわたって同一の内径、外径及び肉厚を有する長尺体を成形し、この長尺体を切断してホース体31を形成する(図4)。補強層15は、補強糸を編組角度48度以上54度未満で編組することにより形成されている。補強層15によって内面に凹凸が生じるといったことがないように、内面側層13の肉厚は1.0mm以上であるのが好ましく、補強層15によって外面に凹凸が生じるといったことがないように、外面側層17の肉厚は0.9mm以上であるのが効果的である。
【0027】
つぎに、ホース体31を、長さ方向両端側が外側に突出した状態となるように、保持型(保持部材)33で保持する。保持型33は、半割り状の上型35及び下型37から構成されていて、上型35及び下型37の型合わせ面にはそれぞれ、断面半円状の収容部構成凹部39、41が形成されている(図5参照)。収容部構成凹部39、41は、上型35及び下型37の型合わせにより、断面円形の細長い(より具体的には、主部7の長さL2に等しく又はほぼ等しく長い)収容部(キャビティ)43を構成するが(図6参照)、この収容部43の径は、ホース体31の外径よりも若干小さい。すなわち、収容部構成凹部39、41の径(半径)は、ホース体31の外径(半径)よりも若干小さい。また、それぞれの収容部構成凹部39、41の両側縁部には、浅い逃し溝(逃し部構成凹部)39a、41aが形成されていて、上型35及び下型37の型合わせにより、逃し溝39aと逃し溝41aとが組み合わさって、収容部43の両側部に、外側に突出する逃し凹部(逃し部)45を構成する(図7参照)。逃し溝39a、41aはそれぞれ、断面4分の1円あるいは断面4分の1楕円又は断面4分の1長円に形成でき、逃し凹部45は断面半円(例えば断面半径1mm程度の半円)あるいは断面半楕円又は断面半長円に形成できる。したがって、ホース体31を収容部構成凹部39、41で挟むようにして、上型35及び下型37の型合せを行い、保持型33でホース体31を保持すると、ホース体31の長さ方向両端側が保持型33から外側に突出した状態で、ホース体31の外径よりも小さな径の収容部43内にホース体31は圧迫されてきつく収容されることとなる(図6及び図7参照)。ホース体31は長さ方向にずれないように、かつ、径方向に膨らんで変形できないように保持型33内に保持される。また、収容部構成凹部39、41がホース体31を圧迫してきつく挟む際のホース体31の変形は、逃し凹部45によって吸収される。したがって、ホース体31にバリが発生するのを効果的に防止できる。なお、保持型33は、例えば保持装置に取り付けられて保持される。
【0028】
なお、収容部構成凹部として、断面半楕円状又は断面半長円状のものを形成することもできる。そして、このような収容部構成凹部47、49が組み合わさったときに、短軸方向の長さ(D1)がホース体31の外径よりも短く、長軸方向の長さ(D2)がホース体31の外径よりも長い楕円状又は長円状の断面形状を有する収容部(キャビティ)51が構成されるようにしておけば、収容部構成凹部47、49によってホース体31を圧迫してきつく挟み付けることができ、しかも、ホース体31の変形を、長軸の両端部位置の逃し部52で吸収するので、やはり、バリが発生するのを効果的に防止できる(図8)。
【0029】
ホース体31を保持型33で挟んで保持したら、保持型33から突出しているホース体31の長さ方向両端側にマンドレル(拡径用ロッド)53を挿入してホース本体3のかしめ部9を形成する。ここでは、マンドレル53を挿入するに先立って、補強層15が内面側層13に食い込みにくくなるように、ホース体31を半加硫しておくのが得策である。マンドレル53は、形成すべきかしめ部9の内径に等しい又はほぼ等しい外径を有する大径部55と、この大径部55に設けられた先端側ガイド部57とから一体的に形成されていて、先端側ガイド部57は、ホース体31の内径と同一又はほぼ同一の外径を有する先端部59と、この先端部59及び大径部55間に形成された、先端部59側に向かって縮径するテーパ状の拡径部61と、を有している(図9)。ここで、拡径部61はホース本体3のテーパ部11を形成する部分であり、拡径角度(外面の軸方向に対する傾き)は5度乃至25度が適当である。拡径角度が5度未満だと、ホース本体3のテーパ部11の軸方向長さが大きくなりすぎるし、拡径角度が25度を超えると、マンドレル53の挿入性が悪化する。
【0030】
マンドレル53の挿入を円滑に行えるように、マンドレル53に、先端部59の先端で開口する加圧孔を貫通して形成しておき、この加圧孔から加圧気体をホース体31に供給しながら、あるいは供給して、マンドレル53をホース体31に挿入することができる。あるいは、マンドレル53とホース体31内面との間の摺動抵抗を低下させ、マンドレル53をホース体31に対して滑りやすくするために、マンドレル53とホース体31との間に挿入助剤を用いることもできる。挿入助剤としては、水、冷凍機油又はシリコンなどを使用することができる。
【0031】
マンドレル53のホース体31内への挿入により、ホース体31の長さ方向端部側は拡径され、大径のかしめ部9及びテーパ部11が形成される(図10)。かしめ部9及びテーパ部11では、当初、補強層15の補強糸の編組角度は、48度以上54度未満となっていたが、押し広げられることにより、それぞれで、補強層15の補強糸の編組角度が、57度を超えて68度以下、ほぼ55度を超えて(より具体的には、54.7度又は静止角を超えて)61度以下(テーパ部11の軸方向中央での編組角度)となっている。なお、かしめ部9では、補強層15の補強糸の編組角度が、60度乃至68度となるように設定してもよい。また、テーパ部11では、補強層15の補強糸の編組角度(テーパ部11の軸方向中央での編組角度)が、ほぼ55を超えて60度以下となるように設定してもよい。テーパ部11では、編組角度は、主部7側からかしめ部9側に向かって主部7の編組角度からかしめ部9の編組角度まで変化するが、ここでのテーパ部11の編組角度は、テーパ部11の軸方向又は長さ方向中央での編組角度である。
【0032】
マンドレル53をホース体31内に挿入したら、保持型33で保持したまま、ホース体31を加熱して加硫する。その後、保持型33及びマンドレル53を取り外せば、ホース本体3を得ることができる(図11)。このようにして製造したホース本体3のかしめ部9に継手具5を取り付けて、図1に示すような高耐圧ホース1を製造する。ここでは、高耐圧ホース1の加圧時長さ変化率は、−5%乃至10%の範囲内となっている。長さ変化率は、((加圧時のホース本体3の変形領域長さL1−加圧前のホース本体3の変形領域長さL1)/加圧前のホース本体3の変形領域長さL1)×100で求められるが、長さ変化率が−5%を下回ると、加圧時のホース本体3の長さ方向の収縮程度が大きくなりすぎて、高耐圧ホース1が引っ張られた状態となるため、かしめ部9に大きな応力が生じてホース寿命が短くなる。また、長さ変化率が10%を上回ると、加圧時のホース本体3の長さ方向の伸張程度が大きくなりすぎて、高耐圧ホース1が周辺部品等と接触又は当接したり、配管スペースからはみ出てしまうおそれがある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の高耐圧ホースの製造方法を用いれば、例えば、高圧流体を移送するために、エンジンルームなどの狭い配管スペースに配置されて使用される高耐圧ホースを簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る高耐圧ホースの製造方法によって製造される高耐圧ホースの斜視図である。
【図2】高耐圧ホースのホース本体の積層構造を示す図である。
【図3】高耐圧ホースの断面図である。
【図4】ホース体を示す図である。
【図5】保持型の構成を示す図である。
【図6】保持型によるホース体の保持状態を示す図である。
【図7】ホース体を保持型で保持したときの収容部構成を示す図である。
【図8】別の収容部構成を示す図である。
【図9】マンドレルを示す図である。
【図10】マンドレルをホース体に挿入した状態を示す図である。
【図11】ホース本体を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 高耐圧ホース
3 ホース本体
5 継手具
7 主部
9 かしめ部
13 内面側層
15 補強層
17 外面側層
19 インサートパイプ
21 ソケット金具
31 ホース体
33 保持型
35 上型
37 下型
39、41、47、49 収容部構成凹部
43 収容部
53 マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面側層、この内面側層の外側の、補強線材を編組して形成した補強層及びこの補強層の外側のカバー層としての外面側層を含んだ積層構造を有し、主部及びこの主部よりも大径に形成された締め付け部を長さ方向端部に備えるホース本体と、前記主部よりも大径に形成されている前記締め付け部内に挿入されたインサートパイプ及び前記締め付け部の外周に嵌められ、前記締め付け部を前記インサートパイプに締め付ける締め付け具を有して前記締め付け部に固定されている継手具と、を具備した高耐圧ホースの製造方法であって、
前記内面側層、前記補強層及び前記外面側層を含んだ前記積層構造を有する、全長にわたって同一の内径、外径及び肉厚を有するホース体を準備する工程と、
前記ホース体を、長さ方向端部が外側に突出するように、保持型で保持する工程と、
前記保持型で前記ホース体を保持したまま、前記ホース体の長さ方向端部にマンドレルを押し込み、この長さ方向端部を拡径して前記締め付け部を形成する工程と、
前記締め付け部が形成された前記ホース体を加硫して前記ホース本体を形成する工程と、
前記ホース本体の前記締め付け部に前記継手具を固定する工程と、を備え、
前記保持型は、収容部構成凹部が設けられた複数の分割保持型を有して構成され、かつ、前記分割保持型の型合わせにより、前記収容部構成凹部が組み合わさって形成される収容部に前記ホース体を収容して保持するように構成されていて、
前記収容部は、前記ホース体を圧迫して収容し、かつ、圧迫された前記ホース体の変形部分が逃げ込む逃し部を有している、ことを特徴とする高耐圧ホースの製造方法。
【請求項2】
前記保持型は、前記収容部構成凹部を有する一対の前記分割保持型を有して構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の高耐圧ホースの製造方法。
【請求項3】
前記収容部構成凹部はそれぞれ、前記ホース体の外径よりも小径の円形断面を有する前記収容部を構成するように、断面半円形に形成されていて、かつ、前記収容部の両側に前記逃し部を形成するように、両側縁部に浅い逃し部構成凹部を有している、ことを特徴とする請求項2記載の高耐圧ホースの製造方法。
【請求項4】
前記収容部構成凹部はそれぞれ、前記ホース体の外径よりも短い型合わせ方向の短軸と、この短軸と直交する、前記ホース体の外径よりも長い長軸と、を有する楕円形断面又は長円形断面の前記収容部を構成するように、断面半楕円形又は断面半長円形に形成されていて、
前記収容部は、前記長軸の両端部位置に前記逃し部を有している、ことを特徴とする請求項2記載の高耐圧ホースの製造方法。
【請求項5】
前記ホース体の長さ方向端部に前記マンドレルを押し込む際に、長さ方向端部と前記マンドレルとの間に挿入助剤を供給しておく、ことを特徴する請求項1、2、3又は4記載の高耐圧ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−255542(P2007−255542A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79823(P2006−79823)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】