高脂血症・高アルブミン血症モデル動物
高脂血症や高アルブミン血症の予防・治療薬の開発に有用な、特に老齢(加齢)期(ヒトにおいては中高年)に高脂血症や高アルブミン血症を発症する、高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を提供するものである。レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニックラット(ホモ体)を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期、例えば36週齢まで飼育することにより、高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を得る。このモデル動物は、血清アルブミン、HDL−コレステロール及びトリグリセリド濃度が有意にかつ著しく上昇する上に、骨病態をも呈する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、好ましくは老齢(加齢)期まで飼育したレギュカルチン過剰発現トランスジェニック非ヒト動物である高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、かかる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いる高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドホルモンが細胞膜の受容体に結合し、細胞内にその情報を伝達する仕組みの中で、Ca2+は主役を演じている。細胞内にはCa2+を結合する多くのタンパク質が存在するが、その作用を増幅するタンパク質として、カルモジュリンは重要な役割を果たしており、Ca2+はこのカルモジュリンに結合し、細胞機能の調節に関与する各種の酵素を活性化することが解明されている(Science, 202, 19-27, 1984)。また、Ca2+がプロテインキナーゼCやその他のCa2+結合タンパク質(酵素も含む)に作用することも知られている(Science, 233, 305-312, 1986)。レギュカルチンも、本発明者らによりラット肝細胞質から単離されたCa2+結合蛋白質である。
【0003】
レギュカルチンは、分子量が33388のCa2+結合タンパク質で、そのCa2+結合定数が4.19×105M−1を示し、6〜7個の高親和性Ca2+結合部位を持ち、α−ヘリックス構造を34%含む、肝臓に顕著に存在する等電点pI5.20の酸性蛋白質である。レギュカルチンは、カルモジュリンや他の多くのCa2+結合タンパク質にみられる部位EFハンド構造(領域)を含まない特異なタンパク質で、例えば、Ca2+を結合することにより、カルモジュリンはα−ヘリックス含量が増加し、その構造が堅固になるが、レギュカルチンはα−ヘリックス含量が減少する。また一方、細胞機能調節において、レギュカルチンは、カルモジュリンによる酵素活性化を阻害し、プロティンキナーゼCの活性化をも阻害することが明らかになっている。このように、レギュカルチンは、シグナリングの制御タンパク質として機能するなど多くの知見が蓄積されている(FEBS Lett, 327, 251-255, 1993)。
【0004】
レギュカルチン遺伝子は、ラットにおいてX染色体(Xq 11.1-12)に存在し、ヒトにおいてもX染色体に位置する。レギュカルチン遺伝子は、ラットやヒトの他、サル,マウス,イヌ,ウシ,ウサギ,ニワトリ等の高等動物に見い出されているが酵母にはなく、高度に分化されたタンパク質をコードするものと考えられている。レギュカルチンcDNAはクローニングされており、その全構造も決定されている(特開平7−123985号公報)。ラット肝のレギュカルチンcDNAは、全アミノ酸をコードする塩基対が0.897kbであり、299のアミノ酸を翻訳する。また、マウス肝やヒト肝のレギュカルチンcDNAの塩基配列も決定されており、ラット肝のレギュカルチンcDNAと比較して、それぞれ94%と約89%のホモロジーを有している。レギュカルチンmRNAの発現は、ヒト,ラット,マウス,ウシ,ニワトリ等の肝臓においてみられ、これらの肝臓にはレギュカルチンタンパク質の存在も確認されている。
【0005】
レギュカルチンは、多機能性を有する細胞内Ca2+シグナリングの制御蛋白質として特徴を有する蛋白質であり、細胞機能調節に関与する重要な蛋白質であることが知られている(Life Sciences 66, 1769-1780, 2000、Biochemical and Biophysical Research Communications 276, 1-6, 2000)。また、生体内における肝臓や腎臓におけるレギュカルチンの発現が肝障害(Molecular and Cellular Biochemisty 131, 173-179, 1994)や腎障害(Molecular and Cellular Biochemisty 151, 55-60, 1995)時に低下することが動物実験的に明らかにされており、レギュカルチンと病態成因との関連が示唆されている。そして、GOT、GPT等の既存の肝機能マーカーと異なって肝臓に特異的に存在するレギュカルチンの血清中の濃度を測定することにより、肝疾患患者血清を鑑別する方法、すなわち、肝疾患患者の血清ではレギュカルチンが有意に上昇している一方、健常人の血清ではレギュカルチンはほとんど検出されず、その測定が肝疾患患者血清の鑑別手段として有用であることも知られている(特開平10−26623号公報)。
【0006】
上記のように、レギュカルチンタンパク質は、肝臓に特異発現される他、腎臓,心臓,大脳(神経細胞)にも低レベルで発現し、細胞内のCa2+シグナリング関連細胞機能の調節に関与し、その発現が低下すると生理的異常を来たす特異な多機能性蛋白質であり、これまでラットの肝臓から単離した蛋白質や抗レギュカルチンモノクローナル抗体を用いて、その機能解析が行われ、上記のカルシウムシグナルの制御因子としての役割の他、細胞内カルシウム輸送酵素の調節や、プロテアーゼの活性化因子としての役割や、細胞核のカルシウム輸送の調節、細胞核DNA分解における役割、肝再生時の細胞核機能における役割等の細胞核機能の調節や、腎尿細管カルシウム再吸収における役割など、多くの生体調節におけるレギュカルチンの機能的役割が本発明者により明らかにされている。
【0007】
本発明者は、レギュカルチンの種々の機能的役割の解明についての研究過程で、レギュカルチンが他の数多くのCa2+結合タンパク質とは異なる特異的作用を有する点に着目し、カルシウムが関与する各種細胞の機能調節は、生体内におけるレギュカルチンの発現量とカルモジュリンをはじめとする他の数多くのCa2+結合タンパク質の発現量とのバランスの上に成立していると考え、レギュカルチンの発現量と他の数多くのCa2+結合タンパク質の発現量とのバランスが崩れた場合に、生体に生じる変化・影響を、トランスジェニックラットを作製して調べた。ラット肝臓cDNAライブラリーからレギュカルチンcDNAをクローニングし、レギュカルチン蛋白質の全長をコードするcDNAを単離し、このラットレギュカルチン全長cDNAよりORFを切り出し、発現ベクター(pCXN2)に導入し、この遺伝子発現ベクターをラット受精卵雄性前核にマイクロインジェクションし、この受精卵を仮親ラットの卵管に移植し、仔ラットを発生させ、その産仔の組織からDNAを抽出し、PCR法によってレギュカルチンcDNAが組み込まれているラットを確認したところ、29匹の産仔からレギュカルチンcDNAを発現するホモ体のラット5匹(雄4匹、雌1匹)が作出され、かかるトランスジェニックラットの体重の増加が有意に抑制されることや、外見上何ら骨病態を呈していない上記レギュカルチン遺伝子導入によりレギュカルチン過剰発現能を獲得した形質転換ラットについて、偶々、動物研究用pQTC(peripheral Quantitative Computed Tomography)骨密度測定装置による骨の形態学的(骨密度、骨強度、骨幹部皮質骨厚さ、皮質骨周囲長さ)測定評価、及び骨成分の生化学的(カルシウム量、骨芽細胞・造骨細胞のマーカー酵素であるアルカリホスファターゼ活性、骨組織中の細胞数指標であるDNA量)測定評価を実施したところ、特に大腿骨において形態学的にも生化学的にも、骨量、骨密度の減少による骨吸収(骨塩溶解)による骨組織の脆弱化、骨形態変化、および尾骨成長遅延などの顕著な骨病態を呈することや、このレギュカルチン過剰発現病態モデルラットの形質が継代的に安定しており、商業的生産に耐えるものであることを報告している(特開2003−164238号公報)。
【0008】
他方、高脂血症は、血清中のコレステロールやトリグリセライド等の脂質濃度が高くなった病態をいい、動脈硬化、高血圧、脳卒中など循環器系の疾患の発症と密接な関係がある。また、高アルブミン血症は、肝臓で合成される血清中のアルブミン濃度が高くなった病態をいい、種々の肝臓の疾患に関係する。上記高脂血症のモデル動物に関する技術として、ヒト巣状糸球体硬化症の動物モデルとして有用である高脂血症ラット(K. Yamasaki and Y. Yoshikawa著 Laboratory Animal Science A4 (2)、1994, 125-130)や、外来性25−水酸化ビタミンD324−水酸化酵素遺伝子を組み込んだDNAを有する、腎疾患、骨疾患、関節疾患、肺疾患、高脂血症、動脈硬化症、心疾患、糖尿病、肥満症、消化器疾患、感染症、アレルギー疾患、内分泌疾患、痴呆症、癌等のビタミンD3代謝異常に起因する疾患を呈する非ヒト哺乳動物(特開平11−9140号公報)や、LDL(low density lipoproteins)レセプター遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いて得られる高脂血症治療モデルに有用な病体モデル動物(特開平10−56915号公報)や、糖尿病(NIDDM)ラット(ZDF/Gmi−fa/fa;日本チャ−ルス・リバー)、SDF(Spontaneously Diabetic Torii)ラット(鳥居薬品)、WHHLウサギ(北山ラベス/オリエンタル酵母)が知られている。
【0009】
本発明の課題は、最近の生活様式の変化に伴い急増しつつある高脂血症や高アルブミン血症の予防・治療薬の開発に有用な高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、特に老齢(加齢)期(ヒトにおいては中高年)に高脂血症や高アルブミン血症を発症する高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、かかる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いる高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供することにある。
【0010】
本発明者が既に開発したレギュカルチンを過剰発現したトランスジェニックラットは5週齢の成長期において骨粗鬆症を引き起こし、そのモデル動物としての有用性が評価され、すでに上市されている。かかるレギュカルチントランスジェニックラットを老齢(加齢)期(ヒトにおいては中高年)まで飼育し、生体機能の変容について調べてみた。加齢(36週齢)(9か月齢)においてラットを解剖したところ、成長期ラットにおいてこれまでに知られていた骨量減少と血清無機リン濃度上昇に加えて、新たに血清アルブミン、HDL−コレステロール及びトリグリセリド濃度が有意にかつ著しく上昇していることを見い出し、レギュカルチントランスジェニックラットは加齢期において高アルブミン血症及び高脂血症をもたらすことが明らかとなった。血清アルブミン、HDL−コレステロール並びにトリグリセリドは肝臓から産生放出されることから、加齢期レギュカルチントランスジェニックラットにおいては、肝臓の病態をもたらしていることが考えられた。実際に、ラットの解剖時には、正常のラットの肝臓と比較して、レギュカルチントランスジェニックラットの肝臓においては、脂肪肝様状態を示すことが観察された。
【0011】
その後、週齢14、25、36、50のトランスジェニックラットを用いて、高脂血症・高アルブミン血症の発現における加齢による変動について調べた。その結果、血清中脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)濃度が、雌ラットの14週齢から高値を示すことが見出され、50週齢(1年齢)では顕著であることが明らかになった。また一方、血清中アルブミン濃度は雌ラットにおいて25週齢のものから高値を示すことが明らかとなった。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【発明の開示】
【0012】
すなわち本発明は、(1)レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(2)トランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られることを特徴とする上記(1)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(3)トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られることを特徴とする上記(1)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(4)非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(5)ホモ体であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(6)非ヒト動物がラットであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に関する。
【0013】
また、本発明は、(7)老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする上記(6)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(8)レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法や、(9)トランスジェニック非ヒト動物を、老齢(加齢)期まで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する上記(8)記載の方法や、(10)トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する上記(8)記載の方法や、(11)非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれか記載の方法や、(12)ホモ体であることを特徴とする上記(8)〜(11)のいずれか記載の方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、(13)非ヒト動物がラットであることを特徴とする上記(8)〜(12)のいずれか記載の方法や、(14)老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする上記(13)記載の方法や、(15)上記(1)〜(7)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法や、(16)上記(1)〜(7)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清カルシウムの測定結果を示す図である。
【図2】第2図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清無機リンの測定結果を示す図である。
【図3】第3図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清亜鉛の測定結果を示す図である。
【図4】第4図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清グルコースの測定結果を示す図である。
【図5】第5図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清トリグリセリドの測定結果を示す図である。
【図6】第6図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清HDL−コレステロールの測定結果を示す図である。
【図7】第7図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清アルブミンの測定結果を示す図である。
【図8】第8図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの体重の測定結果を示す図である。
【図9】第9図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のカルシウム量の測定結果を示す図である。
【図10】第10図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のDNA量(細胞数の指標)の測定結果を示す図である。
【図11】第11図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清遊離脂肪酸の測定結果を示す図である。
【図12】第12図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清トリグリセリドの測定結果を示す図である。
【図13】第13図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清HDL−コレステロールの測定結果を示す図である。
【図14】第14図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清遊離コレステロールの測定結果を示す図である。
【図15】第15図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清アルブミンの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のモデル動物としては、レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の方法としては、レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法であれば特に制限されるものではなく、ここで、レギュカルチンを過剰発現するとは、野生型の非ヒト動物のレギュカルチン発現量に比べて有意に多量のレギュカルチンを発現することをいう。また、上記非ヒト動物としては、ラット,マウス,ウシ,ブタ,ニワトリ,カエル,ヒト,イヌ,ウサギ等を挙げることができるが、中でもラットが好ましい。モデル動物としてよく用いられているマウスでは臓器が小さく病態の解析には限界があることもあるが、例えば血圧測定などラットにおいてはこれが可能になり、病態解明や遺伝子治療のための動物実験的手段としてきわめて有用となる。
【0017】
上記トランスジェニック非ヒト動物としては、例えば、サイトメガロウイルス−IEエンハンサー,チキンβ−アクチンプロモーター,レギュカルチン遺伝子,ラビットβ−グロビンポリAシグナルの順に配列された直鎖DNAが導入されたトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができる。例えば、マーカー遺伝子,サイトメガロウイルス−IEエンハンサー,チキンβ−アクチンプロモーター,cDNA挿入サイト,ラビットβ−グロビンポリAシグナル等を有する発現ベクター(pCXN2)にレギュカルチン全長cDNAを導入したものを用いると、効率よくトランスジェニック非ヒト動物を得ることができる。
【0018】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物の好ましい態様として、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られるトランスジェニック非ヒト動物や、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られる雌のトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができ、また、レギュカルチン遺伝子が、配列表の配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であるトランスジェニック非ヒト動物、特に、配列表の配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が、配列表の配列番号1記載のDNA配列からなるラットレギュカルチン遺伝子であるトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができるが、レギュカルチン遺伝子の由来としては、ラットの他、マウス,ウシ,ブタ,ニワトリ,カエル,ヒト,イヌ,ウサギ等特に制限されるものではない。
【0019】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物の好ましい態様として、ホモ体であるトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができる。かかる変異染色体をホモに有するホモ体は、染色体をヘテロに有するラット等の非ヒト動物同士を交配することにより得ることができ、レギュカルチン発現量がヘテロ体よりも多いことから、実験モデル動物として特に好ましい。
【0020】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物として、老齢(加齢)期において、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状に加え、骨病態を呈する非ヒト動物が好ましく、ここで骨病態とは、骨粗鬆症に代表されるカルシウム骨代謝異常等により、骨量の減少、骨組織の脆弱化、骨形態変化、骨成長遅延等の骨やその成長が正常でない状態をいう。老齢(加齢)期において、高脂血症や高アルブミン血症の症状に加え、骨病態を呈する非ヒトモデル動物の場合、高脂血症や高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニングに用いることができるほか、老齢(加齢)期における骨粗鬆症の予防・治療薬のスクリーニングにも用いることができる。
【0021】
非ヒト動物がラットである場合、すなわちレギュカルチンを過剰発現するトランスジェニックラットの場合、老齢(加齢)期として、30週齢以上、好ましくは36週齢〜50週齢を挙げることができる。また、雌のトランスジェニックラットの場合、25週齢のものから血清中のアルブミン濃度が高値を示す。
【0022】
本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法としては、上記本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法としては、上記本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、被検物質としては、公知の合成化合物、ペプチド、蛋白質などの他に、例えば哺乳動物の組織抽出物、細胞培養上清などや、各種植物の抽出成分等が用いられる。例えば、被検化合物を本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に経口的又は非経口的に投与し、該モデル動物における、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価や、肝臓の病態の観察・評価を実施することにより、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬をスクリーニングすることができる。また、これらのスクリーニングに際して、野生型非ヒト動物、特に同腹の野生型非ヒト動物における場合と比較・評価することが、個体レベルで正確な比較実験をすることができることから好ましい。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
[トランスジェニックラットの作製]
(RNAの調製)
ウイスター系雄性ラット(3週齢)から肝臓を摘出し、グアニジン−イソチオシアネート液(4Mグアニジニウムチオシアネート,25mMクエン酸ナトリウム(pH7.0),0.5%サルコシル,0.1M2−メルカプトエタノール,2M酢酸ナトリウム)でホモジナイズした。これをフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール混液で抽出し、4℃、10,000×gで20分遠心した。水層にイソプロパノールを加え、−20℃で放置し、RNAを沈澱させた。回収した沈澱はジエチルピロカーボネート処理した0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに溶解した。これをオリゴ(dT)セルロースカラムに通し、ポリ(A)+RNAを精製した。
【0025】
(cDNAライブラリーの作製)
精製したポリ(A)+RNA(5μg)に50unitのMoloney-Murine Leukemiaウイルス逆転写酵素とオリゴ(dT)18プライマーリンカーを添加し、1本鎖cDNAを合成した。さらに合成した1本鎖cDNAに大腸菌リボヌクレアーゼHとDNAポリメラーゼIを添加し、2本鎖cDNAを合成した。これにEcoRIアダプターを付加し、XhoI,EcoRIで消化したファージ発現ベクター(λZAPII)と連結した。さらにパッケージングエキストラクトを用いてファージにパッケージングしcDNAライブラリーのファージを作製した。
【0026】
(RCcDNAクローンの選抜)
ラット肝のcDNAライブラリーのファージ約1×106個を大腸菌と混合し20個の寒天プレートに植菌した。42℃で3時間半インキュベートした後、プレートに10mMイソプロピルチオβ−D−ガラクトシドで処理したニトロセルロース膜をのせ、37℃で3時間半インキュベートした。ニトロセルロース膜はブロッキングした後、抗RCウサギ血清(×200)と室温で2時間インキュベートした。膜は洗浄した後、アルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を加えインキュベートした。これを発色液(0.35mMニトロブルーテトラゾリウム,0.4mM5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート)に浸し発色させ、RCcDNA陽性プラークを同定した。
【0027】
(プラスミドベクターへのサブクローニング)
ファージベクターλZAPIIは、その配列中にプラスミドベクターであるpBluescriptの塩基配列を含み、λZAPIIにクローニングされたRCのcDNA断片はこのpBluescriptに挿入されている。また、pBluescriptの両端にはヘルパーファージの複製開始点と終結点が存在している。そこで同定したプラークよりファージを単離し、R408ヘルパーファージとともに大腸菌SUREに感染させ、RCのcDNA断片を含むpBluescriptを大腸菌内で合成させ、ヘルパーファージの形で大腸菌体外に放出させた。このファージ液をさらに大腸菌SUREに感染させ、RCのcDNA断片を有するプラスミドとして菌内で複製させた。この大腸菌を50μg/mlアンピシリン含有のLBプレートに植菌し、アンピシリン耐性コロニーを選択した。
【0028】
(cDNAインサートの塩基配列の決定)
Sequenaseシステム(US Biochemical社製)を用いてcDNAインサートの全塩基配列を決定した。すなわちプラスミドDNAをEcoRIで切断し、断片はアルカリ変性処理した後、プライマーを加えアニーリングした。これに35S dCTP、0.1M DTT、Sequenase用酵素液を添加した後4等分し、各々にddATP、ddGTP、ddTTP、ddCTPを加え、37℃5分間インキュベートした。これらはアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、オートラジオグラフィーを行ない、塩基配列を読み取った。配列番号1にレギュカルチンcDNAの全塩基配列を示す。また、得られたアミノ酸配列も配列番号2に示す。これから計算されるレギュカルチンの分子量は33,388であった。この値は精製したレギュカルチンをSDSポリアクリルアミド電気泳動法により算出した分子量と一致した。
【0029】
(導入遺伝子の構築)
得られたラットレギュカルチン全長cDNAを含むプラスミド、RC−900(glycerol stock;RC−F)、ベクター pBluescript SK(−)より、ORF全てを含むDNA断片をPstIを用いて切り出した。この切り出したPstIフラグメントをpBluescript II KS(+) のPstIサイトに組み込んだ。次にEcoRIで切り出し、得られたEcoRIフラグメントを、発現ベクターpCXN2(クロンテック社)(Gene 108, 193-199, 1991)のEcoRIサイトに導入し、ラットレギュカルチン発現ベクターRC/pCXN2を調製した。このRC/pCXN2をSalIとSfiIとMluIで切断し、リニアライズされた3.6kbpのフラグメントを得た。
【0030】
(トランスジェニックラットの作製)
ラットの前核期受精卵への上記リニアライズされた3.6kbpのDNAフラグメント溶液のマイクロインジェクションは下記の要領で実施した。4週齢のスプラーグ−ドーリー(SD;Sprague-Dawley)系雌ラットを明暗サイクル12時間(明時間 4:00〜16:00)、温度約23℃、湿度約55%で飼育し、膣スメア法により雌の性周期を観察してホルモン処理日を選択した。雌ラットに150IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(日本全薬社製「PMSゼンヤク」)を腹腔内投与して過剰排卵処理を行い、その48時間後に150IU/kgのヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(三共エール薬品(株)社製「プべローゲン」)を腹腔内投与した後、雄との同居により交配を行わせ、ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン投与32時間後に卵管灌流により前核期受精卵を採取した。
【0031】
この様にして調製したウイスターラットの受精卵の雄性前核に、前記3.6kbpのDNAフラグメント溶液(5ng/μl濃度)を顕微注入した。DNAフラグメントが注入された卵を、CO2インキュベーター内でm−KRB(m−クレブスリンガー緩衝液)培地を用いて1晩培養した。翌日2細胞へと発生が進み、異常の認められない2細胞期胚を9匹の仮親(精管結紮雄と交配させた偽妊娠雌ラット)の卵管内に1匹あたり20〜30個程度を移植し、29匹の産仔を得た。4週齢まで生存した27匹の産仔の尾よりDNAを採取し、採取したDNAをプライマーhuRC−1;GGAGGCTATGTTGCCACCATTGGA(配列番号3)、プライマーhuRC−2;CCCTCCAAAGCAGCATGAAGTTG(配列番号4)を用いてPCR法により検定した(図4)。その結果、合計5匹(雄4匹、雌1匹)のラットに導入遺伝子の存在を確認した。そのうち5匹が次世代に導入遺伝子を伝えた。
【実施例2】
【0032】
[加齢飼育と成分の測定]
(加齢飼育)
実施例1で得られたトランスジェニックラット(ヘテロ体)の系統の内、尾組織におけるレギュカルチン発現量が最も多い系統同士を交配することにより、トランスジェニックラット(ホモ体)を得た。また、ホモ体であることは、ラット尾組織より抽出したゲノムDNAへの導入遺伝子の組み込みをPCR法にて確認し、ヘテロ体のcDNA量の2倍以上の組み込み量を検出することにより確認した。かかるホモ体の雌雄6匹ずつのトランスジェニックラットと、スプラーグ−ドーリー(SD;Sprague-Dawley)系の雌雄6匹ずつの野生型ラット(6匹)を、25℃の空調設備の整った飼育室で、固形飼料(オリエンタル酵母、MF)を自由に摂取させ、出産から36週齢まで飼育した。
【0033】
(解剖と測定項目)
エーテル麻酔下で、上記36週齢まで飼育したラットを解剖し、心臓せん刺により採血するとともに、大腿骨組織を摘出した。血液は室温で2.0分間放置し、3000回転で5分間遠心分離して、血清を採取した。血清は、その成分を測定するまで−32℃で保存した。大腿骨組織は、冷0.25Mショ糖溶液中で筋肉組織をはがし、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織に分け、骨髄を洗浄除去して骨質を得た。血清成分は、和光純薬工業社製の測定用キットを用いて、カルシウム(カルシウム C−テストワコー)、無機リン(P−テストワコー)、亜鉛(亜鉛 テストワコー)、グルコース(グルコース テストワコー)、トリグリセリド(トリグリセリド テストワコー)、HDL−コレステロール(HDL−コレステロール テストワコー)及びアルブミン(アルブミン テストワコー)をそれぞれ定量した。大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のカルシウム量(mg/g骨乾燥重量)の測定は、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)を、100℃で6時間乾燥し、重量を測り、120℃で24時間分解し、液量を測定後、その後6N塩酸に溶解して骨カルシウム量を原子吸光度にて測定した。骨組織中のDNA量(細胞数の指標)の測定は、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)を、それぞれ氷冷した6.5mMパルビタール緩衝液(pH7.4)3mlに浸し、小片にカットした後、氷冷した0.1N水酸化ナトリウム溶液4.0mlにて24時間振り混ぜてアルカリ抽出した後、10,000rpmで5分間遠心分離し、得られた上清をDNA量の測定に使用し、DNA量はCeriottiの方法(J. Biol. Chem., 214, 39-77,1955)に準じて測定した。得られた実験結果の有意差検定のための統計的処理はStudent's t-検定を用いて行った。
【0034】
(血清成分の測定結果)
トランスジェニックラット(ホモ体)と野生型の別、かつ雌雄別で、血清中のカルシウム、無機リン、亜鉛、グルコース、トリグリセリド、HDL−コレステロール、アルブミンの各濃度を測定した結果を図1〜7及び表1に示す。図1〜7及び表1の各値は6匹のラットの平均値とその標準誤差を示す。また、図1〜7及び表1中、*:P<0.05(対照群の値と比較して)、**:P<0.025(対照群の値と比較して)、及び#:P<0.001(対照群の値と比較して)を表す。表1から、無機リン(雌)、トリグリセリド(雌雄)、HDL−コレステロール(雌雄)及びアルブミン(雌)濃度が有意に上昇するが、カルシウム、亜鉛及びグルコースは有意に変動しないことがわかる。レギュカルチントランスジェニックラットにおいて、血清無機リンの上昇は5週齢ラットにおいても見い出されたが、血清トリグリセリド、HDL−コレステロール及びアルブミンの増加については知られていなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
以上の知見から、高齢期におけるレギュカルチントランスジェニックラットは、肝臓病態に関係した高アルブミン血症並びに高脂血症をもたらすことが明らかになった。なお、図8及び表1に示すように、36週齢におけるラット体重は、レギュカルチントランスジェニックラットにおいて、正常ラット(野生型)と比較して有意に変動していなかった。
【0037】
(骨組織中のカルシウム量の測定結果)
大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のカルシウム量(mg/g骨乾燥重量)の測定結果を図9に示す。図9から、36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のカルシウム量は、雄及び雌いずれにおいても、正常ラット(野生型)と比べて有意に減少していることを認め、レギュカルチントランスジェニックラットにおいては加齢時においても骨量減少がもたらされていることが明らかになった。図9中、*:P<0.01(対照群の値と比較して)を表す。
【0038】
(骨組織中のDNA量の測定結果)
大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のDNA量(細胞数の指標)の測定結果を図2に示す。図10から、骨組織中のDNA量は、特に、骨幹端部において雄及び雌のレギュカルチントランスジェニックラットにおいて有意に減少していることが見い出され、骨形成が抑制されるものと考えられた。図10中、*:P<0.01(対照群の値と比較して)を表す。
【実施例3】
【0039】
[週齢14、25、36、50のトランスジェニックラットにおける成分の測定]
週齢14、25、36、50におけるレギュカルチン過剰発現ラットを用いて、高脂血症・高アルブミン血症の発現について調べた。レギュカルチントランスジェニックラット(ホモ体の雌雄)と正常ラット(雌雄)は、各週齢14、25、36及び50週齢において解剖して採血し、血清中の脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)、並びに血清中のカルシウム、無機リン、亜鉛、グルコース及び尿素窒素濃度を実施例2と同様にして測定し、これら各成分の加齢による変動を調べた。なお、遊離脂肪酸と尿素窒素の測定には、和光純薬工業製の測定用キット「NEFA C−テストワコー」及び「尿素窒素B−テストワコー」を用いた。結果を図11〜15及び表2に示す。図11〜15及び表2の各値は6匹のラットの平均値とその標準誤差を示す。また、図11〜15中、*:P<0.01(対照群である各週齢の正常ラットの値と比較して)を表し、表2中、a p<0.05, b p<0.01(対照群である各週齢の正常ラットの場合と比較して)を表す。
【0040】
その結果、図11〜14に示すように、血清中脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)濃度が、雌ラットの14週齢から高値を示すことが見出され、50週齢(1年齢)では顕著であることが明らかになった。
【0041】
また一方、図15に示すように、血清中アルブミン濃度は雌ラットにおいて25週齢のものから高値を示すことが明らかとなった。
このような、雌ラットにおいて高脂血症及び高アルブミン血症が著しいことは、レギュカルチン遺伝子がX染色体に位置していることと関連しているものと推察される。
【0042】
【表2】
【0043】
さらに、表2に示すように、血清カルシウム濃度がレギュカルチントランスジェニックラット(雄、雌)の50週齢で有意に上昇することが見い出され、また、血清無機リン濃度は14、25、36週齢の雌レギュカルチントランスジェニックラットにおいて有意に上昇した。
【0044】
なお、血清中、亜鉛、グルコース及び尿素窒素濃度はレギュカルチントランスジェニックラット(雄、雌)の14、25、36及び50週齢において、正常ラットと比較して、有意に変動しなかった。
【0045】
このように、レギュカルチントランスジェニックラットにおいては、高脂血症が極めて特徴的であり、とくに雌ラットにおける高アルブミン血症も特異な現象であった。
【0046】
レギュカルチントランスジェニックラットが高脂血症・高アルブミン血症モデル動物として有用であることがさらに支持する知見が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いると、加齢期における肝臓病態及び高脂血症発症メカニズムの基礎的知見が得られるばかりでなく、高脂血症や高アルブミン血症の臨床例を示す疾患の予防・治療剤の開発に有利に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、好ましくは老齢(加齢)期まで飼育したレギュカルチン過剰発現トランスジェニック非ヒト動物である高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、かかる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いる高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドホルモンが細胞膜の受容体に結合し、細胞内にその情報を伝達する仕組みの中で、Ca2+は主役を演じている。細胞内にはCa2+を結合する多くのタンパク質が存在するが、その作用を増幅するタンパク質として、カルモジュリンは重要な役割を果たしており、Ca2+はこのカルモジュリンに結合し、細胞機能の調節に関与する各種の酵素を活性化することが解明されている(Science, 202, 19-27, 1984)。また、Ca2+がプロテインキナーゼCやその他のCa2+結合タンパク質(酵素も含む)に作用することも知られている(Science, 233, 305-312, 1986)。レギュカルチンも、本発明者らによりラット肝細胞質から単離されたCa2+結合蛋白質である。
【0003】
レギュカルチンは、分子量が33388のCa2+結合タンパク質で、そのCa2+結合定数が4.19×105M−1を示し、6〜7個の高親和性Ca2+結合部位を持ち、α−ヘリックス構造を34%含む、肝臓に顕著に存在する等電点pI5.20の酸性蛋白質である。レギュカルチンは、カルモジュリンや他の多くのCa2+結合タンパク質にみられる部位EFハンド構造(領域)を含まない特異なタンパク質で、例えば、Ca2+を結合することにより、カルモジュリンはα−ヘリックス含量が増加し、その構造が堅固になるが、レギュカルチンはα−ヘリックス含量が減少する。また一方、細胞機能調節において、レギュカルチンは、カルモジュリンによる酵素活性化を阻害し、プロティンキナーゼCの活性化をも阻害することが明らかになっている。このように、レギュカルチンは、シグナリングの制御タンパク質として機能するなど多くの知見が蓄積されている(FEBS Lett, 327, 251-255, 1993)。
【0004】
レギュカルチン遺伝子は、ラットにおいてX染色体(Xq 11.1-12)に存在し、ヒトにおいてもX染色体に位置する。レギュカルチン遺伝子は、ラットやヒトの他、サル,マウス,イヌ,ウシ,ウサギ,ニワトリ等の高等動物に見い出されているが酵母にはなく、高度に分化されたタンパク質をコードするものと考えられている。レギュカルチンcDNAはクローニングされており、その全構造も決定されている(特開平7−123985号公報)。ラット肝のレギュカルチンcDNAは、全アミノ酸をコードする塩基対が0.897kbであり、299のアミノ酸を翻訳する。また、マウス肝やヒト肝のレギュカルチンcDNAの塩基配列も決定されており、ラット肝のレギュカルチンcDNAと比較して、それぞれ94%と約89%のホモロジーを有している。レギュカルチンmRNAの発現は、ヒト,ラット,マウス,ウシ,ニワトリ等の肝臓においてみられ、これらの肝臓にはレギュカルチンタンパク質の存在も確認されている。
【0005】
レギュカルチンは、多機能性を有する細胞内Ca2+シグナリングの制御蛋白質として特徴を有する蛋白質であり、細胞機能調節に関与する重要な蛋白質であることが知られている(Life Sciences 66, 1769-1780, 2000、Biochemical and Biophysical Research Communications 276, 1-6, 2000)。また、生体内における肝臓や腎臓におけるレギュカルチンの発現が肝障害(Molecular and Cellular Biochemisty 131, 173-179, 1994)や腎障害(Molecular and Cellular Biochemisty 151, 55-60, 1995)時に低下することが動物実験的に明らかにされており、レギュカルチンと病態成因との関連が示唆されている。そして、GOT、GPT等の既存の肝機能マーカーと異なって肝臓に特異的に存在するレギュカルチンの血清中の濃度を測定することにより、肝疾患患者血清を鑑別する方法、すなわち、肝疾患患者の血清ではレギュカルチンが有意に上昇している一方、健常人の血清ではレギュカルチンはほとんど検出されず、その測定が肝疾患患者血清の鑑別手段として有用であることも知られている(特開平10−26623号公報)。
【0006】
上記のように、レギュカルチンタンパク質は、肝臓に特異発現される他、腎臓,心臓,大脳(神経細胞)にも低レベルで発現し、細胞内のCa2+シグナリング関連細胞機能の調節に関与し、その発現が低下すると生理的異常を来たす特異な多機能性蛋白質であり、これまでラットの肝臓から単離した蛋白質や抗レギュカルチンモノクローナル抗体を用いて、その機能解析が行われ、上記のカルシウムシグナルの制御因子としての役割の他、細胞内カルシウム輸送酵素の調節や、プロテアーゼの活性化因子としての役割や、細胞核のカルシウム輸送の調節、細胞核DNA分解における役割、肝再生時の細胞核機能における役割等の細胞核機能の調節や、腎尿細管カルシウム再吸収における役割など、多くの生体調節におけるレギュカルチンの機能的役割が本発明者により明らかにされている。
【0007】
本発明者は、レギュカルチンの種々の機能的役割の解明についての研究過程で、レギュカルチンが他の数多くのCa2+結合タンパク質とは異なる特異的作用を有する点に着目し、カルシウムが関与する各種細胞の機能調節は、生体内におけるレギュカルチンの発現量とカルモジュリンをはじめとする他の数多くのCa2+結合タンパク質の発現量とのバランスの上に成立していると考え、レギュカルチンの発現量と他の数多くのCa2+結合タンパク質の発現量とのバランスが崩れた場合に、生体に生じる変化・影響を、トランスジェニックラットを作製して調べた。ラット肝臓cDNAライブラリーからレギュカルチンcDNAをクローニングし、レギュカルチン蛋白質の全長をコードするcDNAを単離し、このラットレギュカルチン全長cDNAよりORFを切り出し、発現ベクター(pCXN2)に導入し、この遺伝子発現ベクターをラット受精卵雄性前核にマイクロインジェクションし、この受精卵を仮親ラットの卵管に移植し、仔ラットを発生させ、その産仔の組織からDNAを抽出し、PCR法によってレギュカルチンcDNAが組み込まれているラットを確認したところ、29匹の産仔からレギュカルチンcDNAを発現するホモ体のラット5匹(雄4匹、雌1匹)が作出され、かかるトランスジェニックラットの体重の増加が有意に抑制されることや、外見上何ら骨病態を呈していない上記レギュカルチン遺伝子導入によりレギュカルチン過剰発現能を獲得した形質転換ラットについて、偶々、動物研究用pQTC(peripheral Quantitative Computed Tomography)骨密度測定装置による骨の形態学的(骨密度、骨強度、骨幹部皮質骨厚さ、皮質骨周囲長さ)測定評価、及び骨成分の生化学的(カルシウム量、骨芽細胞・造骨細胞のマーカー酵素であるアルカリホスファターゼ活性、骨組織中の細胞数指標であるDNA量)測定評価を実施したところ、特に大腿骨において形態学的にも生化学的にも、骨量、骨密度の減少による骨吸収(骨塩溶解)による骨組織の脆弱化、骨形態変化、および尾骨成長遅延などの顕著な骨病態を呈することや、このレギュカルチン過剰発現病態モデルラットの形質が継代的に安定しており、商業的生産に耐えるものであることを報告している(特開2003−164238号公報)。
【0008】
他方、高脂血症は、血清中のコレステロールやトリグリセライド等の脂質濃度が高くなった病態をいい、動脈硬化、高血圧、脳卒中など循環器系の疾患の発症と密接な関係がある。また、高アルブミン血症は、肝臓で合成される血清中のアルブミン濃度が高くなった病態をいい、種々の肝臓の疾患に関係する。上記高脂血症のモデル動物に関する技術として、ヒト巣状糸球体硬化症の動物モデルとして有用である高脂血症ラット(K. Yamasaki and Y. Yoshikawa著 Laboratory Animal Science A4 (2)、1994, 125-130)や、外来性25−水酸化ビタミンD324−水酸化酵素遺伝子を組み込んだDNAを有する、腎疾患、骨疾患、関節疾患、肺疾患、高脂血症、動脈硬化症、心疾患、糖尿病、肥満症、消化器疾患、感染症、アレルギー疾患、内分泌疾患、痴呆症、癌等のビタミンD3代謝異常に起因する疾患を呈する非ヒト哺乳動物(特開平11−9140号公報)や、LDL(low density lipoproteins)レセプター遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いて得られる高脂血症治療モデルに有用な病体モデル動物(特開平10−56915号公報)や、糖尿病(NIDDM)ラット(ZDF/Gmi−fa/fa;日本チャ−ルス・リバー)、SDF(Spontaneously Diabetic Torii)ラット(鳥居薬品)、WHHLウサギ(北山ラベス/オリエンタル酵母)が知られている。
【0009】
本発明の課題は、最近の生活様式の変化に伴い急増しつつある高脂血症や高アルブミン血症の予防・治療薬の開発に有用な高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物、特に老齢(加齢)期(ヒトにおいては中高年)に高脂血症や高アルブミン血症を発症する高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、かかる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いる高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供することにある。
【0010】
本発明者が既に開発したレギュカルチンを過剰発現したトランスジェニックラットは5週齢の成長期において骨粗鬆症を引き起こし、そのモデル動物としての有用性が評価され、すでに上市されている。かかるレギュカルチントランスジェニックラットを老齢(加齢)期(ヒトにおいては中高年)まで飼育し、生体機能の変容について調べてみた。加齢(36週齢)(9か月齢)においてラットを解剖したところ、成長期ラットにおいてこれまでに知られていた骨量減少と血清無機リン濃度上昇に加えて、新たに血清アルブミン、HDL−コレステロール及びトリグリセリド濃度が有意にかつ著しく上昇していることを見い出し、レギュカルチントランスジェニックラットは加齢期において高アルブミン血症及び高脂血症をもたらすことが明らかとなった。血清アルブミン、HDL−コレステロール並びにトリグリセリドは肝臓から産生放出されることから、加齢期レギュカルチントランスジェニックラットにおいては、肝臓の病態をもたらしていることが考えられた。実際に、ラットの解剖時には、正常のラットの肝臓と比較して、レギュカルチントランスジェニックラットの肝臓においては、脂肪肝様状態を示すことが観察された。
【0011】
その後、週齢14、25、36、50のトランスジェニックラットを用いて、高脂血症・高アルブミン血症の発現における加齢による変動について調べた。その結果、血清中脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)濃度が、雌ラットの14週齢から高値を示すことが見出され、50週齢(1年齢)では顕著であることが明らかになった。また一方、血清中アルブミン濃度は雌ラットにおいて25週齢のものから高値を示すことが明らかとなった。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【発明の開示】
【0012】
すなわち本発明は、(1)レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(2)トランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られることを特徴とする上記(1)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(3)トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られることを特徴とする上記(1)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(4)非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(5)ホモ体であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(6)非ヒト動物がラットであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に関する。
【0013】
また、本発明は、(7)老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする上記(6)記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物や、(8)レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法や、(9)トランスジェニック非ヒト動物を、老齢(加齢)期まで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する上記(8)記載の方法や、(10)トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する上記(8)記載の方法や、(11)非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれか記載の方法や、(12)ホモ体であることを特徴とする上記(8)〜(11)のいずれか記載の方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、(13)非ヒト動物がラットであることを特徴とする上記(8)〜(12)のいずれか記載の方法や、(14)老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする上記(13)記載の方法や、(15)上記(1)〜(7)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法や、(16)上記(1)〜(7)のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清カルシウムの測定結果を示す図である。
【図2】第2図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清無機リンの測定結果を示す図である。
【図3】第3図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清亜鉛の測定結果を示す図である。
【図4】第4図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清グルコースの測定結果を示す図である。
【図5】第5図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清トリグリセリドの測定結果を示す図である。
【図6】第6図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清HDL−コレステロールの測定結果を示す図である。
【図7】第7図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清アルブミンの測定結果を示す図である。
【図8】第8図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの体重の測定結果を示す図である。
【図9】第9図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のカルシウム量の測定結果を示す図である。
【図10】第10図は、本発明の36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のDNA量(細胞数の指標)の測定結果を示す図である。
【図11】第11図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清遊離脂肪酸の測定結果を示す図である。
【図12】第12図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清トリグリセリドの測定結果を示す図である。
【図13】第13図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清HDL−コレステロールの測定結果を示す図である。
【図14】第14図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清遊離コレステロールの測定結果を示す図である。
【図15】第15図は、本発明の14、25、36及び50週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの血清アルブミンの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のモデル動物としては、レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の方法としては、レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法であれば特に制限されるものではなく、ここで、レギュカルチンを過剰発現するとは、野生型の非ヒト動物のレギュカルチン発現量に比べて有意に多量のレギュカルチンを発現することをいう。また、上記非ヒト動物としては、ラット,マウス,ウシ,ブタ,ニワトリ,カエル,ヒト,イヌ,ウサギ等を挙げることができるが、中でもラットが好ましい。モデル動物としてよく用いられているマウスでは臓器が小さく病態の解析には限界があることもあるが、例えば血圧測定などラットにおいてはこれが可能になり、病態解明や遺伝子治療のための動物実験的手段としてきわめて有用となる。
【0017】
上記トランスジェニック非ヒト動物としては、例えば、サイトメガロウイルス−IEエンハンサー,チキンβ−アクチンプロモーター,レギュカルチン遺伝子,ラビットβ−グロビンポリAシグナルの順に配列された直鎖DNAが導入されたトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができる。例えば、マーカー遺伝子,サイトメガロウイルス−IEエンハンサー,チキンβ−アクチンプロモーター,cDNA挿入サイト,ラビットβ−グロビンポリAシグナル等を有する発現ベクター(pCXN2)にレギュカルチン全長cDNAを導入したものを用いると、効率よくトランスジェニック非ヒト動物を得ることができる。
【0018】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物の好ましい態様として、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られるトランスジェニック非ヒト動物や、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られる雌のトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができ、また、レギュカルチン遺伝子が、配列表の配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であるトランスジェニック非ヒト動物、特に、配列表の配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が、配列表の配列番号1記載のDNA配列からなるラットレギュカルチン遺伝子であるトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができるが、レギュカルチン遺伝子の由来としては、ラットの他、マウス,ウシ,ブタ,ニワトリ,カエル,ヒト,イヌ,ウサギ等特に制限されるものではない。
【0019】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物の好ましい態様として、ホモ体であるトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができる。かかる変異染色体をホモに有するホモ体は、染色体をヘテロに有するラット等の非ヒト動物同士を交配することにより得ることができ、レギュカルチン発現量がヘテロ体よりも多いことから、実験モデル動物として特に好ましい。
【0020】
また、上記トランスジェニック非ヒト動物として、老齢(加齢)期において、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状に加え、骨病態を呈する非ヒト動物が好ましく、ここで骨病態とは、骨粗鬆症に代表されるカルシウム骨代謝異常等により、骨量の減少、骨組織の脆弱化、骨形態変化、骨成長遅延等の骨やその成長が正常でない状態をいう。老齢(加齢)期において、高脂血症や高アルブミン血症の症状に加え、骨病態を呈する非ヒトモデル動物の場合、高脂血症や高アルブミン血症の予防・治療薬のスクリーニングに用いることができるほか、老齢(加齢)期における骨粗鬆症の予防・治療薬のスクリーニングにも用いることができる。
【0021】
非ヒト動物がラットである場合、すなわちレギュカルチンを過剰発現するトランスジェニックラットの場合、老齢(加齢)期として、30週齢以上、好ましくは36週齢〜50週齢を挙げることができる。また、雌のトランスジェニックラットの場合、25週齢のものから血清中のアルブミン濃度が高値を示す。
【0022】
本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法としては、上記本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法としては、上記本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、被検物質としては、公知の合成化合物、ペプチド、蛋白質などの他に、例えば哺乳動物の組織抽出物、細胞培養上清などや、各種植物の抽出成分等が用いられる。例えば、被検化合物を本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に経口的又は非経口的に投与し、該モデル動物における、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価や、肝臓の病態の観察・評価を実施することにより、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防・治療薬をスクリーニングすることができる。また、これらのスクリーニングに際して、野生型非ヒト動物、特に同腹の野生型非ヒト動物における場合と比較・評価することが、個体レベルで正確な比較実験をすることができることから好ましい。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
[トランスジェニックラットの作製]
(RNAの調製)
ウイスター系雄性ラット(3週齢)から肝臓を摘出し、グアニジン−イソチオシアネート液(4Mグアニジニウムチオシアネート,25mMクエン酸ナトリウム(pH7.0),0.5%サルコシル,0.1M2−メルカプトエタノール,2M酢酸ナトリウム)でホモジナイズした。これをフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール混液で抽出し、4℃、10,000×gで20分遠心した。水層にイソプロパノールを加え、−20℃で放置し、RNAを沈澱させた。回収した沈澱はジエチルピロカーボネート処理した0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに溶解した。これをオリゴ(dT)セルロースカラムに通し、ポリ(A)+RNAを精製した。
【0025】
(cDNAライブラリーの作製)
精製したポリ(A)+RNA(5μg)に50unitのMoloney-Murine Leukemiaウイルス逆転写酵素とオリゴ(dT)18プライマーリンカーを添加し、1本鎖cDNAを合成した。さらに合成した1本鎖cDNAに大腸菌リボヌクレアーゼHとDNAポリメラーゼIを添加し、2本鎖cDNAを合成した。これにEcoRIアダプターを付加し、XhoI,EcoRIで消化したファージ発現ベクター(λZAPII)と連結した。さらにパッケージングエキストラクトを用いてファージにパッケージングしcDNAライブラリーのファージを作製した。
【0026】
(RCcDNAクローンの選抜)
ラット肝のcDNAライブラリーのファージ約1×106個を大腸菌と混合し20個の寒天プレートに植菌した。42℃で3時間半インキュベートした後、プレートに10mMイソプロピルチオβ−D−ガラクトシドで処理したニトロセルロース膜をのせ、37℃で3時間半インキュベートした。ニトロセルロース膜はブロッキングした後、抗RCウサギ血清(×200)と室温で2時間インキュベートした。膜は洗浄した後、アルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を加えインキュベートした。これを発色液(0.35mMニトロブルーテトラゾリウム,0.4mM5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート)に浸し発色させ、RCcDNA陽性プラークを同定した。
【0027】
(プラスミドベクターへのサブクローニング)
ファージベクターλZAPIIは、その配列中にプラスミドベクターであるpBluescriptの塩基配列を含み、λZAPIIにクローニングされたRCのcDNA断片はこのpBluescriptに挿入されている。また、pBluescriptの両端にはヘルパーファージの複製開始点と終結点が存在している。そこで同定したプラークよりファージを単離し、R408ヘルパーファージとともに大腸菌SUREに感染させ、RCのcDNA断片を含むpBluescriptを大腸菌内で合成させ、ヘルパーファージの形で大腸菌体外に放出させた。このファージ液をさらに大腸菌SUREに感染させ、RCのcDNA断片を有するプラスミドとして菌内で複製させた。この大腸菌を50μg/mlアンピシリン含有のLBプレートに植菌し、アンピシリン耐性コロニーを選択した。
【0028】
(cDNAインサートの塩基配列の決定)
Sequenaseシステム(US Biochemical社製)を用いてcDNAインサートの全塩基配列を決定した。すなわちプラスミドDNAをEcoRIで切断し、断片はアルカリ変性処理した後、プライマーを加えアニーリングした。これに35S dCTP、0.1M DTT、Sequenase用酵素液を添加した後4等分し、各々にddATP、ddGTP、ddTTP、ddCTPを加え、37℃5分間インキュベートした。これらはアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、オートラジオグラフィーを行ない、塩基配列を読み取った。配列番号1にレギュカルチンcDNAの全塩基配列を示す。また、得られたアミノ酸配列も配列番号2に示す。これから計算されるレギュカルチンの分子量は33,388であった。この値は精製したレギュカルチンをSDSポリアクリルアミド電気泳動法により算出した分子量と一致した。
【0029】
(導入遺伝子の構築)
得られたラットレギュカルチン全長cDNAを含むプラスミド、RC−900(glycerol stock;RC−F)、ベクター pBluescript SK(−)より、ORF全てを含むDNA断片をPstIを用いて切り出した。この切り出したPstIフラグメントをpBluescript II KS(+) のPstIサイトに組み込んだ。次にEcoRIで切り出し、得られたEcoRIフラグメントを、発現ベクターpCXN2(クロンテック社)(Gene 108, 193-199, 1991)のEcoRIサイトに導入し、ラットレギュカルチン発現ベクターRC/pCXN2を調製した。このRC/pCXN2をSalIとSfiIとMluIで切断し、リニアライズされた3.6kbpのフラグメントを得た。
【0030】
(トランスジェニックラットの作製)
ラットの前核期受精卵への上記リニアライズされた3.6kbpのDNAフラグメント溶液のマイクロインジェクションは下記の要領で実施した。4週齢のスプラーグ−ドーリー(SD;Sprague-Dawley)系雌ラットを明暗サイクル12時間(明時間 4:00〜16:00)、温度約23℃、湿度約55%で飼育し、膣スメア法により雌の性周期を観察してホルモン処理日を選択した。雌ラットに150IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(日本全薬社製「PMSゼンヤク」)を腹腔内投与して過剰排卵処理を行い、その48時間後に150IU/kgのヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(三共エール薬品(株)社製「プべローゲン」)を腹腔内投与した後、雄との同居により交配を行わせ、ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン投与32時間後に卵管灌流により前核期受精卵を採取した。
【0031】
この様にして調製したウイスターラットの受精卵の雄性前核に、前記3.6kbpのDNAフラグメント溶液(5ng/μl濃度)を顕微注入した。DNAフラグメントが注入された卵を、CO2インキュベーター内でm−KRB(m−クレブスリンガー緩衝液)培地を用いて1晩培養した。翌日2細胞へと発生が進み、異常の認められない2細胞期胚を9匹の仮親(精管結紮雄と交配させた偽妊娠雌ラット)の卵管内に1匹あたり20〜30個程度を移植し、29匹の産仔を得た。4週齢まで生存した27匹の産仔の尾よりDNAを採取し、採取したDNAをプライマーhuRC−1;GGAGGCTATGTTGCCACCATTGGA(配列番号3)、プライマーhuRC−2;CCCTCCAAAGCAGCATGAAGTTG(配列番号4)を用いてPCR法により検定した(図4)。その結果、合計5匹(雄4匹、雌1匹)のラットに導入遺伝子の存在を確認した。そのうち5匹が次世代に導入遺伝子を伝えた。
【実施例2】
【0032】
[加齢飼育と成分の測定]
(加齢飼育)
実施例1で得られたトランスジェニックラット(ヘテロ体)の系統の内、尾組織におけるレギュカルチン発現量が最も多い系統同士を交配することにより、トランスジェニックラット(ホモ体)を得た。また、ホモ体であることは、ラット尾組織より抽出したゲノムDNAへの導入遺伝子の組み込みをPCR法にて確認し、ヘテロ体のcDNA量の2倍以上の組み込み量を検出することにより確認した。かかるホモ体の雌雄6匹ずつのトランスジェニックラットと、スプラーグ−ドーリー(SD;Sprague-Dawley)系の雌雄6匹ずつの野生型ラット(6匹)を、25℃の空調設備の整った飼育室で、固形飼料(オリエンタル酵母、MF)を自由に摂取させ、出産から36週齢まで飼育した。
【0033】
(解剖と測定項目)
エーテル麻酔下で、上記36週齢まで飼育したラットを解剖し、心臓せん刺により採血するとともに、大腿骨組織を摘出した。血液は室温で2.0分間放置し、3000回転で5分間遠心分離して、血清を採取した。血清は、その成分を測定するまで−32℃で保存した。大腿骨組織は、冷0.25Mショ糖溶液中で筋肉組織をはがし、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織に分け、骨髄を洗浄除去して骨質を得た。血清成分は、和光純薬工業社製の測定用キットを用いて、カルシウム(カルシウム C−テストワコー)、無機リン(P−テストワコー)、亜鉛(亜鉛 テストワコー)、グルコース(グルコース テストワコー)、トリグリセリド(トリグリセリド テストワコー)、HDL−コレステロール(HDL−コレステロール テストワコー)及びアルブミン(アルブミン テストワコー)をそれぞれ定量した。大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のカルシウム量(mg/g骨乾燥重量)の測定は、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)を、100℃で6時間乾燥し、重量を測り、120℃で24時間分解し、液量を測定後、その後6N塩酸に溶解して骨カルシウム量を原子吸光度にて測定した。骨組織中のDNA量(細胞数の指標)の測定は、骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)を、それぞれ氷冷した6.5mMパルビタール緩衝液(pH7.4)3mlに浸し、小片にカットした後、氷冷した0.1N水酸化ナトリウム溶液4.0mlにて24時間振り混ぜてアルカリ抽出した後、10,000rpmで5分間遠心分離し、得られた上清をDNA量の測定に使用し、DNA量はCeriottiの方法(J. Biol. Chem., 214, 39-77,1955)に準じて測定した。得られた実験結果の有意差検定のための統計的処理はStudent's t-検定を用いて行った。
【0034】
(血清成分の測定結果)
トランスジェニックラット(ホモ体)と野生型の別、かつ雌雄別で、血清中のカルシウム、無機リン、亜鉛、グルコース、トリグリセリド、HDL−コレステロール、アルブミンの各濃度を測定した結果を図1〜7及び表1に示す。図1〜7及び表1の各値は6匹のラットの平均値とその標準誤差を示す。また、図1〜7及び表1中、*:P<0.05(対照群の値と比較して)、**:P<0.025(対照群の値と比較して)、及び#:P<0.001(対照群の値と比較して)を表す。表1から、無機リン(雌)、トリグリセリド(雌雄)、HDL−コレステロール(雌雄)及びアルブミン(雌)濃度が有意に上昇するが、カルシウム、亜鉛及びグルコースは有意に変動しないことがわかる。レギュカルチントランスジェニックラットにおいて、血清無機リンの上昇は5週齢ラットにおいても見い出されたが、血清トリグリセリド、HDL−コレステロール及びアルブミンの増加については知られていなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
以上の知見から、高齢期におけるレギュカルチントランスジェニックラットは、肝臓病態に関係した高アルブミン血症並びに高脂血症をもたらすことが明らかになった。なお、図8及び表1に示すように、36週齢におけるラット体重は、レギュカルチントランスジェニックラットにおいて、正常ラット(野生型)と比較して有意に変動していなかった。
【0037】
(骨組織中のカルシウム量の測定結果)
大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のカルシウム量(mg/g骨乾燥重量)の測定結果を図9に示す。図9から、36週齢のレギュカルチントランスジェニックラットの大腿骨の骨幹部と骨幹端部のカルシウム量は、雄及び雌いずれにおいても、正常ラット(野生型)と比べて有意に減少していることを認め、レギュカルチントランスジェニックラットにおいては加齢時においても骨量減少がもたらされていることが明らかになった。図9中、*:P<0.01(対照群の値と比較して)を表す。
【0038】
(骨組織中のDNA量の測定結果)
大腿骨組織の骨幹部と骨幹端部組織中のDNA量(細胞数の指標)の測定結果を図2に示す。図10から、骨組織中のDNA量は、特に、骨幹端部において雄及び雌のレギュカルチントランスジェニックラットにおいて有意に減少していることが見い出され、骨形成が抑制されるものと考えられた。図10中、*:P<0.01(対照群の値と比較して)を表す。
【実施例3】
【0039】
[週齢14、25、36、50のトランスジェニックラットにおける成分の測定]
週齢14、25、36、50におけるレギュカルチン過剰発現ラットを用いて、高脂血症・高アルブミン血症の発現について調べた。レギュカルチントランスジェニックラット(ホモ体の雌雄)と正常ラット(雌雄)は、各週齢14、25、36及び50週齢において解剖して採血し、血清中の脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)、並びに血清中のカルシウム、無機リン、亜鉛、グルコース及び尿素窒素濃度を実施例2と同様にして測定し、これら各成分の加齢による変動を調べた。なお、遊離脂肪酸と尿素窒素の測定には、和光純薬工業製の測定用キット「NEFA C−テストワコー」及び「尿素窒素B−テストワコー」を用いた。結果を図11〜15及び表2に示す。図11〜15及び表2の各値は6匹のラットの平均値とその標準誤差を示す。また、図11〜15中、*:P<0.01(対照群である各週齢の正常ラットの値と比較して)を表し、表2中、a p<0.05, b p<0.01(対照群である各週齢の正常ラットの場合と比較して)を表す。
【0040】
その結果、図11〜14に示すように、血清中脂質(遊離脂肪酸、トリグリセライド、HDL−コレステロール、遊離コレステロール)濃度が、雌ラットの14週齢から高値を示すことが見出され、50週齢(1年齢)では顕著であることが明らかになった。
【0041】
また一方、図15に示すように、血清中アルブミン濃度は雌ラットにおいて25週齢のものから高値を示すことが明らかとなった。
このような、雌ラットにおいて高脂血症及び高アルブミン血症が著しいことは、レギュカルチン遺伝子がX染色体に位置していることと関連しているものと推察される。
【0042】
【表2】
【0043】
さらに、表2に示すように、血清カルシウム濃度がレギュカルチントランスジェニックラット(雄、雌)の50週齢で有意に上昇することが見い出され、また、血清無機リン濃度は14、25、36週齢の雌レギュカルチントランスジェニックラットにおいて有意に上昇した。
【0044】
なお、血清中、亜鉛、グルコース及び尿素窒素濃度はレギュカルチントランスジェニックラット(雄、雌)の14、25、36及び50週齢において、正常ラットと比較して、有意に変動しなかった。
【0045】
このように、レギュカルチントランスジェニックラットにおいては、高脂血症が極めて特徴的であり、とくに雌ラットにおける高アルブミン血症も特異な現象であった。
【0046】
レギュカルチントランスジェニックラットが高脂血症・高アルブミン血症モデル動物として有用であることがさらに支持する知見が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物を用いると、加齢期における肝臓病態及び高脂血症発症メカニズムの基礎的知見が得られるばかりでなく、高脂血症や高アルブミン血症の臨床例を示す疾患の予防・治療剤の開発に有利に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項2】
トランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られることを特徴とする請求項1記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項3】
トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られることを特徴とする請求項1記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項4】
非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項5】
ホモ体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項6】
非ヒト動物がラットであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項7】
老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする請求項6記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項8】
レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法。
【請求項9】
トランスジェニック非ヒト動物を、老齢(加齢)期まで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する請求項8記載の方法。
【請求項10】
トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する請求項8記載の方法。
【請求項11】
非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の方法。
【請求項12】
ホモ体であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか記載の方法。
【請求項13】
非ヒト動物がラットであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法。
【請求項1】
レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物からなる高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項2】
トランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期まで飼育することにより得られることを特徴とする請求項1記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項3】
トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育することにより得られることを特徴とする請求項1記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項4】
非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項5】
ホモ体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項6】
非ヒト動物がラットであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項7】
老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする請求項6記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物。
【請求項8】
レギュカルチン遺伝子が導入され、レギュカルチンを過剰発現するトランスジェニック非ヒト動物を、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する方法。
【請求項9】
トランスジェニック非ヒト動物を、老齢(加齢)期まで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する請求項8記載の方法。
【請求項10】
トランスジェニック非ヒト動物(雌)を、高アルブミン血症の症状を呈するまで飼育して、高脂血症及び/又は高アルブミン血症のモデル動物として使用する請求項8記載の方法。
【請求項11】
非ヒト動物が、老齢(加齢)期において骨病態を呈することを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の方法。
【請求項12】
ホモ体であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか記載の方法。
【請求項13】
非ヒト動物がラットであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
老齢(加齢)期が、36週齢〜50週齢であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物に、被検物質を投与し、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の治療薬のスクリーニング方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか記載の高脂血症及び/又は高アルブミン血症モデル動物が、高脂血症及び/又は高アルブミン血症の症状を呈する老齢(加齢)期までに、被検物質を投与し、老齢(加齢)期以後に、血中の脂質及び/又はアルブミン量を測定・評価することを特徴とする高脂血症及び/又は高アルブミン血症の予防薬のスクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【国際公開番号】WO2005/041648
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515091(P2005−515091)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013061
【国際出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/013061
【国際出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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