説明

高血圧症改善剤

【課題】安全性が高く、十分な効果を有する天然物由来の高血圧症改善剤を提供する。
【解決手段】本発明の高血圧症改善剤は、メロン搾汁の80℃以上90℃未満での加熱処理物を有効成分として含有する。加熱処理温度は、80〜85℃の範囲にあることが好ましい。さらに、加熱処理時間は15〜25分の範囲にあることが好ましい。本発明は、この高血圧症改善剤を含有する高血圧症改善食品もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧症改善剤に関し、より詳細には天然植物由来で安全かつ効果の高い高血圧症改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧が正常な範囲を超えた高血圧症の患者の数は、800万人を超え、年率5.5%で増加している。高血圧症の状態が長く続くと、動脈硬化や脳卒中、心不全、腎不全等の合併症を引き起こす。しかし、高血圧症から合併症を併発するまでに数年から十数年の長期間を経るため、患者の危険意識はあまり高くないという調査結果もある。
【0003】
高血圧とは、血液が血管に通常以上の圧力をかけている状態である。血圧は、血圧計によって簡単に測定することができる。世界保健機構(WHO)の基準では、血管収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、及び/又は血管拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上を高血圧症としている。
【0004】
高血圧は大きく分けて、原因がはっきりしない本態性高血圧と、他の病気が原因で起こる二次性高血圧の2つに分けられる。日本人の患者の約90%は、本態性高血圧である。
【0005】
高血圧症の治療には、食事療法、運動療法及び薬物療法がある。正常血圧(130/85mmHg以下)を超えた者は、食事療法や運動療法で生活習慣を改善する。それでも効果が現れない者は、薬物療法で降圧剤を服用することとなる。
【0006】
高血圧症を治療する薬剤は、Ca拮抗剤、交感神経抑制薬、ACE阻害剤、AIIブロッカー及び降圧利尿剤に大きく分類することできる。
【0007】
Ca拮抗剤は、血管壁を弛緩させることによって血圧を低下させる薬であり、現在、多用されている。ベジル酸アムロジピン(商品名:アムロジン、ノルバスク等)は、長時間作用型で副作用が比較的少ないが、それでも肝障害、血小板減少、口渇、コレステロール上昇等の副作用を呈する場合がある。降圧剤として広く用いられているカルシウム拮抗剤は、心臓病死のリスクを増加させるという研究結果もある。
【0008】
交感神経抑制薬は、β遮断薬やα1遮断薬に細分される。β遮断薬(商品名:テノーミン、アーチスト、メインテート等)は、副作用として、心不全、気管支喘息、徐脈、房室ブロック等がある。α1遮断薬は、副作用として、起立性低血圧によるめまい、動悸、失神がある。
【0009】
ACE阻害剤(商品名:レニベース、アデカット等)は、レニン−アンギオテンシン系の抑制により降圧作用を示すが、副作用として、頭痛、発疹、めまい、掻痒、咳等が見られる。
【0010】
AIIブロッカー(商品名:ブロプレス、デオパン等)は、ACE阻害剤より特異性が高く比較的副作用が少ないが、妊婦や重症肝障害患者への投与は禁忌である。
【0011】
降圧利尿剤は、食塩摂取量の多いわが国で有用であるが、長期投与による代謝への影響があり、心血管系疾患の予防には向かない。副作用として、低カリウム血症、低マグネシウム血症、高尿酸血症、耐糖能低下、光線過敏症、脂質代謝障害等がある。
【0012】
以上のように、様々なメカニズムを利用した高血圧症改善剤があるが、どれも副作用の問題がある。化学合成された薬剤の副作用を回避するために、現在、患者がより安心して服用できる天然素材の高血圧症の治療又は予防剤が求められている。
【0013】
植物や動物由来の高血圧症改善剤が活発に研究されているが、例えば「桑類と蓮類とサンサ類とタンジン類を含有することを特徴とする組成物」(特許文献1)、「爆砕発酵バガス含有ACE阻害剤」(特許文献2)、紫トウモロコシ水性抽出物からなる「抗高血圧組成物」(特許文献3)、ナッツ類をプロテアーゼ処理して得られる「アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及びその製造方法、並びに機能性食品」、「西洋人参混合物及びその製造法」(特許文献4)、松樹皮抽出物を含有する「高血圧症の予防・治療剤」(特許文献5)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−214198
【特許文献2】特開2008−120739
【特許文献3】特開2005−272348
【特許文献4】特開2003−252785
【特許文献5】特開2003−095965
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来の天然植物由来の高血圧症改善剤は、実際に使用しても効果があまりないか、あるいは実際に効果があっても、食品加工の途中で高温殺菌すると失活してしまい、実用性に乏しいという問題があった。食品として安全性をクリアした形で流通する上で、高温加熱工程は必須であり、高温加熱しても効力が衰えず、かつ食品として重要な「風味」を損なわない高血圧症改善剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、繊維素溶解作用の知られているメロンに注目して、その生理活性や薬理活性を詳しく検討していたところ、メロン抽出物の加熱処理物に、高血圧症の改善作用があることを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、メロン搾汁の80℃以上90℃未満での加熱処理物を有効成分として含有する高血圧症改善剤を提供するものである。
【0017】
メロン抽出物は、これまで繊維素溶解剤(特開2005−314412)や高脂血症改善剤(WO2009/057295)としては知られているものの、本発明のように高血圧症改善剤として有効であることは、全く知られていなかった。
【0018】
本明細書において、「高血圧症改善」という用語は、最大血圧及び/又は最小血圧を下げる意味で使用する。
【0019】
前記加熱処理の温度は、80〜85℃の範囲にあることが好ましい。
【0020】
前記加熱処理の時間が15〜25分の範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、上記高血圧症改善剤を含有する高血圧症改善食品を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の高血圧症改善剤を、最小血圧及び/又は最大血圧が基準値よりも高い値を示す者に服用させると、その異常値を緩和することができる。しかも、この高血圧症改善剤の服用の効果は、服用後も持続しやすい。
【0023】
本発明の高血圧症改善剤は、天然に存在し食品として使用している植物由来成分であるために、従来の化学品のような副作用を心配する必要がない。さらに、本発明の高血圧症改善剤を過度に服用しても、血圧の基準値より下げるような心配もないか極度に少ない。したがって、本発明の高血圧症改善剤は、従来の化学薬品よりも極めて安全性に優れる。
【0024】
本発明の高血圧症改善剤は、80℃以上90℃未満という高温度で加熱しても、高血圧症改善剤としての効能を保持する。したがって、本発明の高血圧症改善剤は、より一層安全な高血圧症改善剤を市場に提供することができる。
【0025】
本発明の高血圧症改善剤は、食品として重要な「風味」を一切損なわないことから、高血圧症改善作用を有する健康食品としても優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の高血圧症改善剤を4名のボランティアに8週間摂取してもらい、投与前、投与中、及び投与期間経過後4週間の最大血圧及び最小血圧の測定した結果を平均値で示した図である。
【図2】本発明の高血圧症改善剤を血圧が高めの女性に3週間摂取してもらい、投与前、中、後の最大血圧及び最小血圧の測定した結果を示した図である。
【図3】本発明の高血圧症改善剤を血圧が高めの男性に3週間摂取してもらい、投与前、中、後の最大血圧及び最小血圧の測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
メロンは、東アフリカ地方、中近東地方を原産地とするウリ科キュウリ属に属する果実的野菜である。本発明の高血圧症改善剤の原料となるメロンは、特に制限がなく、例えばアーバン・デリシャスメロン、あっさぶメロン、アンデスメロン、エイネアメロン、キスミーメロン、クインシーメロン、サッポロレッドメロン、タカミメロン、ハニーゴールデンメロン、肥後グリーンメロン、ビューレッドメロン、ルピアメロン、レッドメロン、イエローキングメロン、カナリアメロン、キンショーメロン、クレオパトラIIメロン、しらかばメロン、ハネジューメロン、ホームランメロン、ユウカメロン、プリンスメロン、坂井メロン、パパイヤメロン等が挙げられる。これらの中で、ハネジューメロン及びホームランメロン(ハネジューメロンの改良種)が、一年を通して大量に入手可能な点で好ましい。メロンの採取時期は問われないが、服用の対象者に応じて、嗜好性の高い濃縮果汁を得る点では完熟しているものが好ましく、糖尿病患者用に糖度を抑える必要のある場合には完熟していないものが好ましい。
【0028】
メロンの使用部位に特に制限ないが、果実部を用いることが好ましい。果実部には、果皮、果肉、果汁、わた、種子等が含まれるが、より好ましくは果実部から種子やわたを除いた可食部を用いる。
【0029】
本発明の高血圧症改善剤は、メロンの例えば果実部を裏こしし、又は絞汁し、熱処理をし、乾燥後、必要に応じて剤形化することによって調製することができる。これらは、途中で必要に応じて濃縮するか又は適当な溶媒を用いてさらに抽出操作に供されてもよい。
【0030】
メロン搾汁加熱処理物の具体的な製法としては、例えば以下の工程による。まず、ハネジューメロン、ホームランメロン等の生メロンを洗浄後、剥皮する。剥皮したメロン果肉を麻袋に詰めて、スクリュープレス等の圧搾機で搾汁する。搾汁液をビニール袋内で凍結(例えば−25℃)し、生メロンの40%(w/w)のメロン果汁凍結体を得る。次いで、凍結メロン果汁を室温まで解凍し、加熱処理する。
【0031】
加熱処理の温度は、80〜90℃であり、好ましくは80〜85℃である。加熱温度が80℃未満では、加熱処理物の殺菌が充分でない。逆に、加熱温度が90℃を超えると、実施例5に示すように加熱処理物の酵素活性が著しく低減し、その結果として、高血圧症改善剤としての効果が失われやすい。
【0032】
加熱処理時間は、通常、10〜30分であり、好ましくは15〜25分である。加熱処理の温度と時間の特に好ましい組合せは、80℃×20分である。
【0033】
加熱方法は、スチーム(試料にはビニールを被せることが好ましい)、赤外線、マイクロウエーブ、電磁波等を採用し得る。
【0034】
前記加熱処理物を、適宜、乾燥させる。乾燥方法は、本発明の薬効を損なわない方法であれば特に制限されず、凍結乾燥以外にも、熱風乾燥、遠赤外線乾燥、減圧乾燥等を用いることができる。好ましくは、凍結乾燥である。こうして、搾汁液の10〜20%程度(w/w)のメロン搾汁加熱処理物の凍結乾燥体を得ることができる。
【0035】
メロン風味の甘味成分が濃縮されたメロン搾汁を使用することが、嗜好性の高い高血圧症改善剤を提供する点で好ましい。甘味度の高いメロン搾汁加熱処理物を製造するには、前記した製造工程の原料に、完熟したメロンを採用すればよい。
【0036】
本発明の高血圧症改善剤は、少量で血圧安定効果を発揮するので、糖分の摂取が制限される者に服用させても、弊害がないか、あっても少ない。それでも、甘味成分が低減したメロン搾汁を用いた高血圧症改善剤を提供することも可能である。それには、前記した製造工程の原料として、完熟していないメロンを保存中に完熟することのないように配慮しながらメロン搾汁を得るか、あるいは通常のメロン搾汁を得た後、透析等の手段で糖分を除去してもよい。
【0037】
本発明の高血圧症改善剤の投与形態としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、チュアブル錠、ドロップのような固形製剤や、ドリンク剤、水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ、ドライシロップのような液剤等の経口投与剤が挙げられる。
【0038】
本発明の高血圧症改善剤は、上記メロン搾汁加熱処理物を単独で経口用の固体又は液体状の経口用投与剤として調製してもよい。それに加えて製薬学的又は食品学上許容される担体や助剤を配合してもよい。具体的には、経口投与剤の形態に応じて、汎用の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、ビタミン、キサンチン誘導体、アミノ酸、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、粘稠剤、溶解補助剤、抗酸化剤、コーティング剤、可塑剤、界面活性剤、水、アルコール類、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、香料、着色剤等を発明の効果を損なわない質的及び量的範囲で添加することが可能である。
【0039】
本発明は、また、上記高血圧症改善剤を含有する食品を提供する。該食品は、高血圧症改善機能を有する健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等に利用することができる。さらに、本発明の高血圧症改善剤を日常の栄養剤や食品素材に添加してもよい。具体的には、パン、ケーキ、クッキー、パイ、ベーカリーミックス、そば、うどん、ラーメン、スープ等の飲食品類;だし巻き、卵豆腐、プリン等の卵製品;フレンチドレッシング、ソース等の調味料;マヨネーズ、マーガリン、ピーナツバター、スプレッド、ホイップクリーム等の油脂加工品;バター、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、加工乳、脱脂乳等の乳製品;チョコレート、ガム、キャンディー、キャラメル、クッキー、ポテトチップス、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等の菓子類;ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、清涼飲料、スポーツ飲料等の飲料水;ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ソーセージ、レバー、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉加工品;冷凍食品のような食品素材が挙げられる。
【0040】
本発明の高血圧症改善剤の用量は、対象とする疾患や症状、患者の体重や年齢等により異なるので特定できないが、メロン果実部の摂取量に換算(一玉600gとして)して、成人1日あたり、通常、1/50〜1個分、好ましくは1/20〜1個分、特に好ましくは1/5〜2/3個分に相当する量が望ましい。一日一回服用しても、何回かに分けて服用してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の内容を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
生メロン(品種:ハネジューメロン)を洗浄後、剥皮した。剥皮したメロン果肉を麻袋に詰めて、圧搾機で搾汁した。搾汁液をビニール袋内で凍結(−25℃)し、メロン果汁凍結体を得た(生メロンの40%(w/w))。次いで、凍結メロン果汁を室温まで解凍し、85℃×20分間の加熱処理した後、凍結乾燥機にて凍結乾燥させた。こうして、搾汁液の20%(w/w)のメロン搾汁加熱処理物の粉末を得た。なお、このメロン搾汁加熱処理物の粉末2.5gは、600gの生メロンの1/19個分に相当する。
【0042】
血圧が高めの者9名及び正常血圧の者3名に対して、メロン搾汁加熱処理物からなる高血圧症改善剤を表1に示す投与量と投与期間で、朝夕食後30分以内に計二回水又はぬるま湯とともに飲用させた。なお、投与期間中は、既存の降圧薬の服用を回避してもらった。投与試験前後に最小血圧及び最大血圧を測定した。測定結果を表1に示す。表1中、増減割合とは、試験後の最大(又は最小)血圧値/試験前の最大(又は最小)血圧値を意味する。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から、本発明の高血圧症改善剤の投与により、最大血圧及び最小血圧が有意に減少したことがわかる。具体的には、13人中12人が最大血圧及び最小血圧の少なくともいずれかに血圧低下を示した。効果のあった12人中9人が最大血圧及び最小血圧の両方に血圧低下を示した。そして、二週間投与による血圧の低下率(13名の平均値)は、最大血圧及び最小血圧ともに7%であった。さらに、最小血圧及び最大血圧が正常血圧に収まっている者(No.1、5及び10)に本発明の高血圧症改善剤を与えても、基準範囲を過度に下回ることがなかった。
【0045】
〔実施例2〕
生メロン(品種:ホームランメロン)を洗浄後、剥皮した。剥皮したメロン果肉を麻袋に詰めて、圧搾機で搾汁した。搾汁液をビニール袋内で凍結(−25℃)し、メロン果汁凍結体を得た(生メロンの40%(w/w))。次いで、凍結メロン果汁を室温まで解凍し、80℃×20分間の加熱処理した後、凍結乾燥機にて凍結乾燥させた。こうして、搾汁液の10%(w/w)のメロン搾汁加熱処理物の粉末を得た。なお、このメロン搾汁加熱処理物の粉末15gは、600gの生メロンの2/3個分に相当する。
【0046】
血圧が高めのボランティア4名(男性1名及び女性3名)に対して、上記メロン搾汁加熱処理物を7.5g×2回/日の摂取量で8週間投与した。投与試験前、投与中、及び投与期間から4週間経過に、最小血圧及び最大血圧を測定した。測定結果の平均値を図1に示す。
【0047】
4名の最大血圧(平均値)は試験前の136.2±26.3から12週間後に118.0±15.5と、そして最小血圧(平均値)は試験前の85.8±17.7から12週間後に73.5±13.7に、いずれも至適血圧まで低下した。しかも、本発明の高血圧症改善剤の摂取を止めても、血圧低下の効果が継続した。これにより、本発明の高血圧症改善剤を長期にわたって服用した場合、高血圧症改善作用が有効、安全かつ継続して発揮されることが実証された。
【0048】
〔実施例3〕
血圧が高めの女性(年齢62)に対して、実施例2のメロン搾汁加熱処理物を、図2に示す0.3〜0.6g/日という摂取量で投与した。投与試験前、投与中及び投与後の最小血圧及び最大血圧を測定した。測定結果を図2に示す。
【0049】
〔実施例4〕
血圧が高めの男性(年齢32)に対して、実施例2のメロン搾汁加熱処理物を、図2に示す0.3〜0.6g/日という摂取量で投与した。投与試験前、投与中及び投与後の最小血圧及び最大血圧を測定した結果を図3に示す。
【0050】
図2及び3の結果から、本発明の高血圧症改善剤は0.3〜0.6g/日という少量でも高血圧症改善作用が現れることが確認された。
【0051】
〔実施例5〕
本発明の高血圧症改善剤の主成分であるメロン搾汁の加熱処理物の酵素活性を、カゼインを基質とした酵素活性を測定する方法(Kunitz法)に基づいて以下の手順で測定した。
【0052】
生メロン(品種:ホームランメロン)の可食部分を搾汁し、その搾汁を各温度(25,60,65,70,75,80,85及び90℃)で20分間加熱処理した。各加熱処理後の搾汁0.05mLに水0.45mLを加えて希釈した。希釈したメロン果汁0.5mLに50mM Tris−HCl buffer (pH8.0)を0.3mL加え、基質としての1%カゼイン0.5mLを加えて37℃で10分間インキュベートした。インキュベート後の反応液に5%トリクロロ酢酸溶液を2mL加え、反応を停止させた。トリクロロ酢酸により変性した未反応のカゼインを東洋濾紙No.5Cろ紙にてろ過して除去した。ろ液中のタンパク質分解により生じたペプチド断片の生成量について、280nmにおける吸光度を測定し、対照(酵素反応を行っていないもの)の値を差し引いたものを酵素活性とした。各温度で3回測定した平均値をとり、最も高い活性が確認された60分における活性を100%とした相対残存活性で評価した。結果を表2に示す。
【0053】
また、加熱処理物の殺菌状態を以下の基準で評価した。その結果を表2に併記する。
× 殺菌されていない
△ 殺菌されていない場合がある
○ 殺菌されている
【0054】
【表2】

【0055】
表2の結果より、メロン搾汁の加熱処理の温度条件は、酵素活性及び殺菌状態の観点から80℃以上90℃未満で有効であることがわかる。さらに、80℃×20分間の熱処理は、約70%の酵素活性を保持できる点で好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロン搾汁の80℃以上90℃未満での加熱処理物を有効成分として含有する高血圧症改善剤。
【請求項2】
前記加熱処理の温度が80〜85℃の範囲にある、請求項1に記載の高血圧症改善剤。
【請求項3】
前記加熱処理の時間が15〜25分の範囲にある、請求項1又は2に記載の高血圧症改善剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の高血圧症改善剤を含有する高血圧症改善食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−285379(P2010−285379A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140739(P2009−140739)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(503027861)トーシン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】