説明

高解像度三次元再構成方法

【課題】
【解決手段】 結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法で、結晶を微結晶に粉砕し、微結晶の試料をクライオTEM用にガラス状にし、傾斜系列を記録し、FB+COMET法を用いて最初の三次元再構成を得る工程を特徴とする技術で知られる方法で結晶を成長させる工程からなる方法。試料が高品質であれば、反復構造と、可能であれば、結晶の空間群が決定される。空間群が決定されれば、第二の三次元再構成が空間群についての情報をも含めて得られる。結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法で、結晶を微結晶に粉砕し、微結晶の試料をクライオTEM用にガラス状にし、傾斜系列を記録し、FB+COMET法を用いて最初の三次元再構成を得る工程を特徴とする技術で知られる方法で結晶を成長させる工程からなる方法。試料が高品質であれば、反復構造と、可能であれば、結晶の空間群が決定される。空間群が決定されれば第二の三次元再構成が空間群についての情報をも含めて得られる。本発明の方法によれば、1nmオーダでの高解像度三次元再構成を達成するために、微結晶を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特許請求の範囲第1項前文に規定されている結晶の高解像度三次元再構成を達成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質およびその他の大型分子をX線あるいは中性子線結晶回折で研究するために、高分子はしばしばまず結晶に成長させられる。結晶は典型的には、10μmオーダーの比較的大きなものでなければならない。このような結晶はマクロ結晶と呼ばれる。
【0003】
所望の大きさの結晶を成長するのは難しい。僅少のタンパク質のみが大型結晶に育ち得る結晶を産生すると予測され、それでもその過程では多くの試行錯誤を伴う。
【0004】
結晶を成長させるための最先端の手順は以下の通りである。
結晶化させようとする分子の緩衝液を、ハンギングドロップまたはシッティングドロップとして塩等のより高い濃度の似かよった溶液に囲まれた状態で、ペトリ皿に入れる。 異なる濃度のために、ハンギングドロップまたはシッティングドロップ中の溶液はまもなく蒸発し、液滴内により高い濃度の分子の沈殿物を生じさせる。分子は条件しだいで結晶したりしなかったりする。結晶化に適した条件は分子の型が異なれば、同じではない。言い換えれば、それぞれの型の分子に対し、個別に実験してみなければならない、ということを意味する。
【0005】
通常たくさんの試料が作られ、異なる条件下に置かれる。例えば、異なる周囲溶液、低温、高温、温度変化、pHおよびイオン強度変化等を試用し、これらの条件のいくつかが結晶成長に望ましいものであることを期待する。次の段階では、ミクロ結晶(およそ10μmよりずっと小さい結晶)の形成に繋がる条件が整えられ、X線および中性子線結晶回折技術による画像形成用マクロ結晶の入手ために絞り込まれる。
【0006】
形成された結晶は非常に小さいものから、最良のケースでは、使用に耐え得る十分な大きさの物まである。十分な大きさの結晶にならなかった試料は、廃棄される。一般に試料のほとんどがこれにあてはまる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
したがって、本発明の目的は画像形成用により多くの試料を使用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件は、発明にしたがって、結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法によりなされるもので、
結晶を微結晶に粉砕する段階
微結晶の試料をクライオTEM(透過型電子顕微鏡)用にガラス状にする段階
傾斜系列を記録する段階
少なくとも一回の段階で事前に予断した分布が収集画像情報との比較対照に基づき改良される反復再構成方法を用いて、最初の三次元再構成を得る段階、
を特徴とする結晶を成長させる段階からなる。
【0009】
そのような方法の一つとしては、フィルタ補正逆投影法(FB)ソフトウエアやその他の早い手法で三次元構造の初期予測を得た後、高解像度の三次元構造になるよう精密化処理を施すという手法であろう。望ましくは、FB処理後、画像再構成に本件に参照文献として記載の国際特許出願WO97/33255(対応ヨーロッパ特許出願EP885430およびスウェーデン特許出願9601229−9)に述べるComet技術を使用する。
【0010】
Comet技術は、次の各段階に基づいている。
試料の初期予測分布が提供される
事前の不鮮明な予断分布が予測分布に基づき提供される
試料の観測データが提供される
反復過程中、計算手段は各々の反復処理で予測分布と試料の観測データの比較により、試料の新しい予測分布を計算する。また、不鮮明さが直前のものより少ない新しい事前の予断分布も計算される。
反復処理は新しい予測分布と直前の予測分布の差異が所定の条件より小さくなるまで続けられる。
【0011】
試料が高品質であれば、結晶の反復構造が決定され、可能であれば、結晶の空間群が決定される。
【0012】
空間群が決定されれば、図形は精密化され、上記の方法、たとえばフィルタ補正逆投影とCOMET技術の組み合わせを使用し、第二の三次元再構成が空間群の情報とともに得られる。
【0013】
空間群が決定されない場合は、試料で相関平均をとる。
【0014】
試料の質についての情報は結晶成長工程のためのフィードバックとして使われることもできる。
【0015】
本発明による方法によれば、1nmオーダでの非常に高い解像度の三次元再構成の達成に、微結晶が使用できる。
【0016】
このことはつまり、最先端技術をもってしても結晶を十分な大きさに成長させることができなかったゆえに現在X線または中性子線結晶回折技術では撮影できない分子に対しても、三次元再構成が可能であることを意味している。微結晶に成長させることができないのは、僅少の高分子である。対照的に、上記の通り、マクロ結晶まで成長させ得るのはほんの一部でしかない。
【0017】
この方法の主な利点は、修飾された分子を確認し分析できることである。一般に、たとえ分子は結晶化できても、リガンドの付加のようなわずかな修飾は、マクロ結晶に結晶化することが難しいか不可能である。タンパク質の化学者にとって、リガンドがどのようにある特定のタンパク質に結合するかを研究することは大変興味深く、本発明方法により、リガンドがどのアミノ酸に結合するかという水準まで研究できる。また、構造は既に決定されているタンパク質構造に比較対照できる。従って、本発明の方法により、さらに柔軟なリガンドの操作が可能になる。
【0018】
本発明による方法は、また、プロテオグリカンのようなまったく新しい型の分子の三次元再構成をも可能にするであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の全体フローチャートである図1を参照し、以下に本発明についてさらに詳細に述べる。
本発明では、当初に述べた結晶を育てる予備工程(S1)が終わると、まずどの試料が結晶を持っていそうか試料を検査する。この検査ははじめに裸眼あるいは光学顕微鏡で、次に透過型電子顕微鏡(TEM)などで目視にて行う。
【0020】
結晶を含む試料が選ばれ(S2)、以下のとおり処理される。
まず、例えば回転工程のような工程によって結晶を非常に小さな100nm台の微結晶に粉砕する(S3)。これらの微結晶をクライオTEM用にガラス状にするため液中でタンパク質に対すると同じ方法で処理する(S4)。すなわち、微結晶からなる溶液の薄膜を格子上に置き、急速氷結される。
後続の三次元再構成のために標準クライオTEMの傾斜系列を記録し、金マーカなどで整列する。
【0021】
少なくとも一回の段階で事前予断した分布が収集画像情報との比較対照に基づき精密化される反復再構成方法、例えば、上記のとおりフィルタ補正逆投影とCOMETとの組み合わせ法を用いて三次元再構成を生成する。これには、反復法を用いての画像化前に、まず逆投影を撮るか、または別な方法で構造の推測値を得る必要がある。これは結晶フラグメントの構造情報となる。
【0022】
次に結晶フラグメントを確認し、分析する(S7)。もし品質が劣っている場合は廃棄し(S9)、別の試料を用いて処理工程を再開する。試料の品質が劣っているという情報は、試料設置除外条件および結晶成長不適条件のフィードバックとして用いられる。
【0023】
結晶フラグメントが良質であれば、手法は以下の通り続く。サンプル品質情報は、結晶がより大きく成長するよう適用条件を調節するためのフィードバックとして使用され得る。
【0024】
本発明の工程にとってより重要なことは、結晶の反復構造が決定されることであり、またその空間群が決定されることである(S10)。
【0025】
空間群が決定されなければ、反復フラグメントを相関平均し、結晶格子の規則性を予測する(S12)。
これにより、質の査定と三次元構造についての予備情報が得られる。
【0026】
空間群が決定されれば、工程は以下のとおり続く。
空間群の図形が精密化され、幾何学的配置が決定される(S13)。上記のとおり空間群対称性を含む方法を用いて画像化(S14)。これにより、おそらくは先行技術を使ってマクロ結晶に対し得られたものと同じオーダーの非常に高い解像度をもつ三次元再構成が得られる。
【0027】
正二十面体構造に対してこれをどのように実施するかは、本件に参照文献として含まれている国際特許出願WO97/33255(対応ヨーロッパ特許出願 EP 885 430 およびスウェーデンの特許出願 9601229−9)に既に述べられている。
【0028】
全ての対称性群は、非結晶と同様結晶についても、探索方向の勾配地図の平均化と関係するのみなので、本文書に開示されている方法を用いて即座にCOMET法で実施され得る。参照文献に示された実施例では、正二十面体対称性は、カイ二乗とエントロピー関数の三次元勾配密度地図の二探索方向の平均化によってアデノウイルス構造の精密化で使用された。平均化はその後、指定対称性群のための仕様に正確にしたがった。熟練者はCOMET法がどんな種類の対称性の操作者にも応用できること、また上記に参照した実施例に似た方法で実施されるべきことが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の全体フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法であって、結晶 を成長させ、
結晶を微結晶に粉砕し、
微結晶の試料をクライオTEM用にガラス状にし、
傾斜系列を記録し、
少なくとも一回の工程で事前の予断分布が収集画像情報との比較対照に基づき精密化される反復再構成法を用いて最初の三次元再構成を得る工程、
を特徴とする結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法。
【請求項2】
反復再構成法がフィルタ補正逆投影と後続のCOMET法との組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料が高品質であれば、結晶の反復構成を決定し、結晶の空間群を決定する、さらなる段階からなる請求項2記載の方法。
【請求項4】
空間群が決められれば、図形を精密化し、空間群についての情報を含む第二の三次元再構成を得る段階からなる請求項3記載の方法。
【請求項5】
空間群が決められなければ、該試料に関し相関平均を行う段階からなる請求項4記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法であって、結晶 を成長させ、
微結晶の試料をクライオ透過型電子顕微鏡用にガラス状にし、
傾斜系列を記録し、
少なくとも一回の処置で事前の予断分布が収集画像情報との比較対照に基づき精密化される反復再構成法を用いて最初の三次元再構成を得ることを特徴とする結晶の高解像度三次元再構成を達成する方法。
【請求項2】
結晶を微結晶に粉砕する段階を更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
反復再構成法がフィルタ補正逆投影と後続のCOMET法との組み合わせであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
試料が高品質であれば、結晶の反復構成を決定し、結晶の空間群を決定する、更なる段階からなる請求項3記載の方法。
【請求項5】
空間群が決められれば、図形を精密化し、空間群についての情報を含む第二の三次元再構成を得る工程からなる請求項4記載の方法。
【請求項6】
空間群が決められなければ、該試料に関し相関平均を行う段階からなる請求項5記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−517667(P2006−517667A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502773(P2006−502773)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000075
【国際公開番号】WO2004/068415
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503322168)シデック テクノロジーズ アーベー (1)
【Fターム(参考)】