説明

高誘電性の絶縁同軸ケーブルを用いた原子炉出力監視装置

【課題】高精度の沸騰水型原子炉の局部出力領域監視方法を提供すること。
【解決手段】沸騰水型原子炉の炉心(12)の出力レベルの監視システムは、炉心(12)にきわめて近接する所望の長さの高誘電性の非線形材料の絶縁同軸型ケーブル(20)、および炉心(12)によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、同軸型ケーブル(20)に関連する一時的な特性インピーダンスの変化を測定するように構成された時間領域反射率測定装置(30)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に原子炉の局部出力領域の監視に関し、より具体的には、炉心について定常状態の局部出力レベルの測定を実施するための高誘電性の絶縁同軸ケーブルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の局部出力領域監視(LPRM)方法の1つは、移動式炉心内プローブ(TIP)技術に基づくものである。図1は、当技術分野において周知の沸騰水型原子炉を示している。周知のLPRM法の1つでは、三次元の出力プロファイルを得るために、200フィートの螺旋状駆動ケーブルの端部に中性子センサまたはガンマ線センサを使用する。それに伴うTIPの挿入および回収作業は、かなりのメンテナンスを要し、放射能汚染に曝され、データ収集が遅いという欠点があり、大きい占有面積を必要とし、また望ましくない空間的な不正確さを伴う。
【0003】
もう1つの沸騰水型原子炉の局部出力領域監視方法は、温度を測定するためのガンマサーモメータに基づくものである。しかしながら、ガンマサーモメータ技術はその精度がTIP技術に伴う精度より低く、また耐用年数が不明であり、メンテナンス費用が高い。
【0004】
提案されている沸騰水型原子炉の局部出力領域監視方法の1つは、緩く充填されたAlまたはMgOの粉末中での充填された不活性ガスのイオン化を含む、無機絶縁同軸ケーブルのインピーダンス変化の測定を対象としている。提案されている前述の方法は、同軸ケーブルを時間領域反射率測定(TDR)技術と共に利用する、より新しい概念である。この概念は、当技術分野において周知のTIP技術およびガンマサーモメータ技術に伴う不都合の多くを克服するが、依然として空間精度を高める余地を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のことを考慮すると、前述の問題を回避する沸騰水型原子炉の局部出力領域監視方法を提供すると有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔に述べると、一実施形態によれば、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心の局部出力領域監視(LPRM)システムは、
沸騰水型原子炉の炉心内の、所望の長さの高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル、および
炉心によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、同軸型ケーブルに関連する一時的な特性インピーダンスの変化を測定するように構成された時間領域反射率測定装置
を備えている。
【0007】
他の実施形態によれば、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心の局部出力領域監視(LPRM)システムは、
沸騰水型原子炉の炉心内にその全長に沿って存在する監視用の伝送線路組立体を形成するために、複数の核燃料棒と一緒に束ねられた少なくとも1つの高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブル型の伝送線路、および
炉心によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、少なくとも1つの同軸ケーブル型の伝送線路に関連する一時的な特性インピーダンスの変化を測定するように構成された測定システムを備えている。
【0008】
さらに他の実施形態によれば、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心の出力レベルの監視方法は、
所望の長さの高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブルを提供すること、
ある特性インピーダンスを有する伝送線路組立体を形成するために、所望の長さの高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブルを、複数の燃料セル棒(fuel cell rod)と一緒に束ねること、
伝送線路組立体の少なくとも一部を沸騰水型原子炉の炉心に挿入すること、および
炉心によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブルに関連する特性インピーダンスの変化を測定することを含む。
【0009】
本発明に関するこれらのおよび他の特徴、態様ならびに利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、より適切に理解されるであろう。図面全体を通じて、類似の符号は類似の部品を表している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】当技術分野において周知の原子炉を示す図である。
【図2】図1に示す炉心および計装管をさらに詳しく示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、ある長さの高誘電性の絶縁同軸型ケーブルを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、図3に示す高誘電性の絶縁同軸型ケーブルと共に使用するのに適した複数のTDR測定機器の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先に確認した図面は特定の実施形態を示しているが、議論の中で言及するように、本発明の他の実施形態も企図される。すべてのケースにおいて、この開示は、限定ではなく説明の目的で例示される本発明の実施形態を示している。当業者には、本発明の原理の範囲および趣旨に含まれる多数の他の変更形態および実施形態を考案することが可能である。
【0012】
本明細書において説明する実施形態は、図1に示す沸騰水型原子炉(BWR)の炉心など、原子炉の炉心の全長にわたって局部出力レベルを測定して三次元の出力プロファイルを確定するために、中性子照射および/またはガンマ線照射の下での高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブルのインピーダンス変化を利用する。伝送線路として構成された高誘電性の絶縁同軸ケーブルに関連する一時的な特性インピーダンスの変化を得るために、複数の測定を、時間領域反射率測定(TDR)技術を用いて、数秒のうちに約2分の1インチの空間分解能で行うことができる。特性インピーダンスは、中性子照査および/またはガンマ線照射によって引き起こされる、同軸ケーブル内の高い誘電率の変化および/または埋め戻された(backfilled)不活性ガスのイオン化に関連付けられる。
【0013】
以下に図面を参照して説明する同軸ケーブルの伝送線路では、制限はないが、アルミナ、シリカ、マグネシア、ガラスおよびハフニアなど低い誘電率を有する従来型の単純な酸化物の使用が避けられる。本発明のいくつかの態様によれば、高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブルは、非線形強誘電性のチタン酸ジルコン酸ランタン鉛、およびニオブ酸ナトリウムの反強誘電体などの高誘電率のセラミックスを使用する。
【0014】
本発明者らは、誘電率が高くなると、伝送線路内の中断ノード(interrupting node)間の空間距離が減少し、より高い分解能が得られるようになるが、信号の伝送は遅くなることを認めた。
【0015】
沸騰水型原子炉の局部出力レベルの監視方法の一実施形態によれば、炉心によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブルの伝送線路に関連する特性インピーダンスの変化を測定するために、高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブルの伝送線路の少なくとも一部が沸騰水型原子炉の炉心に挿入される。有利には、この技術は、周知の技術および材料を用いて得られるものより高い空間精度および分解能を実現する。周知のシステムおよび方法より優れた他の利点には、制限はないが、1)既存のTIP技術を用いると複数のデータセットの収集に約2時間を要するのに比べて、それが数秒以内で可能であること、2)セラミックスなどの高誘電体材料は照射下においてその誘電特性にかなりの変化を示すため、インピーダンス変化を容易にするための不活性ガスの使用が不要になること、3)特性インピーダンスを変化させる必要があるとき、緩く充填された粉末と同時に、充填されたガスおよび照射下でのそのイオン化に影響を及ぼすことが可能であること、4)高誘電体材料が、ガンマ線または中性子の放射に対してより高い耐性を有し、より長い耐用年数を示すこと、ならびに5)高誘電性の絶縁同軸ケーブルの伝送線路の使用によって、周知の監視システムおよび技術より実装に費用がかからない監視システムが提供されることが含まれる。
【0016】
以下に図面を参照してさらに詳しく説明する実施形態では、同軸ケーブルの構成に、同軸ケーブルの開発に一般的に使用される従来型の酸化物または窒化物の誘電体とは異なる誘電体材料を使用する。こうした異なる誘電体材料は、粉末の均一な分布を与えるように密に充填された誘電体の粉末の形にすることが可能であり、したがって、同軸ケーブルの品質が改善される。いくつかの実施形態では、制限はないが、N、Ar、Xeおよび/またはそれらの組み合わせなどの不活性ガスのイオン化を利用する。本発明者らは、照射下でのガスのイオン化と誘電率の直接的な変化を組み合わせた効果によって、インピーダンス変化に関してさらに情報を提供することが可能であることを認めた。
【0017】
不活性ガスと組み合わせて緩く充填された粉末を使用するケーブルの構成により、ガスのイオン化を緩く充填された粉末のインピーダンスの変化と組み合わせて利用して、TDR信号の品質および感度を著しく高めることも可能である。
【0018】
再び図1を参照すると、従来型の原子炉10が沸騰水型原子炉の炉心12を含むことを理解することができる。周知の束検出技術による局部出力領域監視を適応させるために、BWRの炉心12に複数の計装管14が組み込まれ、計装管14は、中性子センサおよび/またはガンマ線センサなど、少なくとも1つのセンサをそれぞれの管14に挿入することができるように構成される。
【0019】
図2は、炉心12および計装管14をさらに詳しく示している。それぞれの管14は、一般的には最低でも7〜9つの監視ポイント16を含むが、一実施形態では、炉心の全長に沿って1インチ刻みに間隔をおいて配置された1つの監視ポイントを有する。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態による高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20を示している。高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20を炉心12に挿入された複数の原子炉棒(通常は4つの棒)と一緒に束ねて、測定装置組立体を形成することができる。所望のLPRMデータを提供するために、複数のそうした測定装置組立体が炉心12に挿入される。したがって、図1および2に示す計装管14は、それぞれの管14が本発明の一態様による1つの測定装置組立体に対応するように、複数の測定装置組立体によって置き換えられる。
【0021】
高誘電性の絶縁同軸型ケーブル20は、絶縁体層24によって保護された内側の導電性電極(アノード)22を備えている。絶縁体層24によって、制限はないが、アルミナ、シリカ、マグネシア、ガラスおよびハフニアなど低い誘電率を有する単純な酸化物を含む従来型の低誘電率材料の使用が避けられる。また絶縁体層24によって、緩く充填された粉末の使用、および不活性ガス単独での使用または緩く充填された粉末と組み合わせた使用も避けられ、したがって、とりわけ先に述べたようなTDR信号の品質およびデータの適切な解釈の確実性を低下させる恐れがある、粉末の凝集および不均一な分布が生じる可能性が回避される。
【0022】
本発明のいくつかの態様によれば、高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20では、制限はないが、非線形強誘電性のチタン酸ジルコン酸ランタン鉛、およびニオブ酸ナトリウムの反強誘電体などのセラミックスを含めた(1つまたは複数の)誘電率の高い非線形高誘電率材料を用いて絶縁体層24を形成し、したがって前述の利点が実現される。他の高誘電率の非線形材料には、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BaSrTiO)、ランタンで修飾されたチタン酸ビスマス((BiLa)Ti12)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SrBiTa)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、ニオブ酸鉛マグネシウム(PbMgNbO)、チタン酸ニオブ酸鉛マグネシウム(PbMgNbTiO)、チタン酸ジルコン酸ニオブ酸鉛ニッケル(PbNiNb−PbZrTiO、lead nickel niobium zirconium titanium oxide)を含むことができる。
【0023】
高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20のいくつかの実施形態は、線形誘電体材料と非線形誘電体材料の組み合わせを使用して絶縁体層24を形成し、制限はないが、高温安定性など他の利点を得ることができる。高誘電率の非線形材料が本発明等によって発見されており、特にインピーダンスは誘電率に関係するため、それらの材料は、放射線照射によって生じる高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20に関連する(1つまたは複数の)特性インピーダンスの変化により、放射線照射に対するより高い感度をもたらす。約10より大きい誘電率(permittivityまたはdielectric constant)は、本明細書に記載の原理による実行可能な解決策を実現するのに適しているが、誘電率のレベルがさらに高くなる、すなわち約30より大きくなると、さらに望ましい結果がもたらされる。一部の高誘電体材料では、誘電率を約100,000程度とすることができる。前の2つのケースでは、図3に示す外側の接地電極を除き、2つの電極22、26(このうち、外側の電極26は同軸ケーブルのシールド電極である)の間の高誘電率の非線形絶縁体24のみからなる単純な同軸ケーブルの設計を残してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、絶縁体層24は、(1つまたは複数の)高誘電性の非線形材料と不活性ガスの組み合わせを使用することが可能であり、したがって、放射線照射によって引き起こされる特性インピーダンスの変化は、直接的に促される(1つまたは複数の)高誘電性の非線形材料のインピーダンス変化と組み合わせた不活性ガスのイオン化の関数になる。
【0025】
高誘電性の非線形無機絶縁同軸型ケーブル20は、内側の導電性電極22に対するシールドを形成し、TDRデータの生成を助けるのに用いることができる外側の導電性電極(カソード)26も備えている。時間領域反射率測定(TDR)の測定技術を用いて、終端の特性インピーダンスおよび同軸伝送線路に沿ったインピーダンス変化の位置を決める。TDRは閉ループレーダに相当する配置に、立ち上がり時間がきわめて早い電圧ステップ波発生装置および広帯域オシロスコープを使用する。ステップ波発生装置から同軸伝送線路の中へ発射された入射の電圧ステップ波は先へ進み、同軸伝送線路の遠端に向かって伝搬する。同軸伝送線路の長さに沿って遭遇する最初の特性インピーダンスの変化によって、入射の電圧ステップ波のエネルギーの一部がステップ波発生装置へ向かう反対方向に反射され、同軸伝送線路内へ戻される。入射電圧の振幅および反射電圧の振幅を測定して、同軸伝送線路の長さに沿って生じる、終端の特性インピーダンスの変化によって引き起こされたインピーダンス変化の量を決める。TDR測定技術はよく知られており、文献に記載されているので、簡潔さを保ち、本明細書に記載の実施形態を理解しやすくするために、本明細書ではTDR測定技術についてこれ以上詳しく記載しない。
【0026】
一実施形態によれば、炉心12内の同軸伝送線路に沿って低下した終端の特性インピーダンスの量および位置を決め、ガンマ線束に基づいて定常状態の局部出力の情報を確定するための電子測定機器には、以下のものが必要である。すなわち、
1) (一実施形態による典型的なLPRM位置すべてを含む)所望のどのセンサ位置にも原始炉容器10の底部から炉心12の上部への伝送経路を設けるための、適宜不活性ガスで埋め戻された、密に充填された高誘電性の非線形絶縁材料を有する高誘電性の非線形無機絶縁同軸伝送線路、
2) 原子炉格納容器の内部で最大華氏150度までの環境において機能する(または寿命および信頼性のある動作を維持するために、許容できる環境に離して配置することができる)、立ち上がり時間がきわめて早い電圧ステップ波発生装置、
3) 電圧ステップ波発生装置の出力を、電子的な同軸伝送線路スイッチ組立体と、時間および入射電圧の振幅および反射電圧の振幅の値を監視する電子計測回路への同軸伝送線路の両方に結合するための、インピーダンス出力の整合/結合ネットワーク、
4)スイッチを切り換え、ステップ波発生装置の出力から電子スイッチを通りLPRMセンサ内の同軸伝送線路までの、1ナノ秒以下の立ち上がり時間を有するきわめて高速の電圧ステップ波の波形インテグリティ、および炉心内の同軸伝送線路からの任意の反射電圧を維持するための、十分な帯域幅を有する電子的な同軸伝送線路スイッチ組立体(当該の電子的な同軸伝送線路スイッチ組立体は、電圧ステップ波を、ステップ波発生装置から、任意の単一のLPRMセンサまたは逐次LPRMセンサすべてに転換する)、
5) TDR電圧の符号を含む入射電圧および反射電圧の成分の波形インテグリティを維持する、原子炉収納容器の電気ペネトレーション内の予備の同軸伝送線路、
6) 少なくとも200の逐次リターンするTDR電圧の符号を取り込み、記憶し、そのアナログシグナルインテグリティを維持するための、信号のデジタル化および記憶回路、デジタルサンプリングレート(最低10ギガヘルツ)ならびに適切なデジタル記憶メモリ、
7) 炉心12の内部の同軸伝送線路に沿って、入射電圧および反射電圧の成分を絶えず評価し、同等の原子炉の出力レベルに一致させた終端の特性インピーダンスを決めるために必要な信号処理回路、
8) 終端の特性インピーダンスの変化を、炉心12の内部の同軸伝送線路に沿って生じる終端の特性インピーダンスの位置と関連付けるために必要な時間処理回路(終端の特性インピーダンスの正確な位置には、信号の伝搬速度の低下を引き起こす低下した終端の特性インピーダンスによって、それまでのすべての発生位置による蓄積された信号伝搬遅延全体を漸次的に明らかにし、それに対して補正する時間処理が必要である)、
9) 差動または同軸伝送線路によって電子的な同軸伝送線路スイッチに送られる、差動または同軸のシリアライズされた制御信号を用いて電子的な同軸伝送線路スイッチ組立体を制御し、単一のLPRMセンサまたは逐次LPRMセンサすべてを選択するための電子回路、ならびに
10) 差動または同軸のシリアライズされた制御信号を同軸伝送線路スイッチ組立体に伝送する原子炉収納容器の電気ペネトレーション内に、差動伝送線路を作成するための予備の同軸伝送線路または2つの予備の導体。
【0027】
有利には、高誘電性の絶縁同軸型ケーブル20、および炉心12に挿入された対応する原子炉棒によって形成される複数の測定装置組立体は、簡単に交換可能であり、また適所に固定されるため、周知のLPRM測定技術に関連する可動部分が不要になる。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態に従って、高誘電性の非線形無機絶縁同軸伝送線路と共に使用するのに適した複数の位置にあるTDRの電子測定機器を示している。1つの適切なTDR測定機器の位置30は、原子炉10のドライウェルの中に配置される。もう1つのTDR測定機器の位置32は、原子炉10から離れたところに位置する制御室内に配置される。
【0029】
要約した説明としては、可動部分のない電子システムを用いて機器を較正し、原子炉の炉心の三次元の出力プロファイルを確定するために、放射線レベルに比例する同軸伝送線路の特性インピーダンスの一時的な低下を利用して、定常状態の局部出力レベルの情報を得る。単純かつ安価であり、剛性の/ハードラインの、高誘電性の非線形無機絶縁同軸伝送線路に対してLPRMセンサの各位置で実施される時間領域反射率測定により、放射線レベルに比例する原子炉の炉心の全長にわたる(1つまたは複数の)原子炉の放射レベルの軸方向の走査が連続的に得られるようになる。
【0030】
本明細書において説明した実施形態および原理は、定常状態条件を必要とする既存の技術とは異なり、過渡状態または定常状態条件のどちらの監視も可能とし、これまで周知の技術を用いて得ることができなかった監視の新しい領域を切り開くものである。さらに既存の技術は、一般的には1インチごとに1回の測定を行うが、本明細書に記載の実施形態および原理では測定回数を少なくすることが可能であり、あるいは1インチの技術を継続することも可能であるが、それがきわめて高速に行われるというさらなる利点がある(周知の技術および方法を用いると時間単位であるのに比べて、前述の原理を用いると秒単位になる)。
【0031】
本明細書では、本発明の特定の特徴のみを図示および記載してきたが、当業者には多くの修正形態および変更形態が見出されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるそうしたすべての修正形態および変更形態を包含するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0032】
10 原子炉
12 沸騰水型原子炉の炉心
14 計装管
20 高誘電性の非線形材料の絶縁同軸型ケーブル
22 内側の導電性電極(アノード)
24 絶縁体層
26 外側の電極(同軸ケーブルのシールド電極)
30 TDR測定機器の位置
32 TDR測定機器の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉(BWR)の炉心(12)の局部出力領域監視(LPRM)システムであって、
前記沸騰水型原子炉の炉心(12)内の、所望の長さの高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)、および
前記炉心(12)によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、前記同軸型ケーブル(20)に関連する一時的な特性インピーダンスの変化を測定するように構成された時間領域反射率測定装置(30)を備えるシステム。
【請求項2】
前記高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)が高誘電性の非線形絶縁体材料(24)を含む、請求項1記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項3】
前記高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)が、高誘電性の非線形絶縁体材料(24)と組み合わされた不活性ガスをさらに含む、請求項2記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項4】
前記不活性ガスが、窒素、アルゴン、キセノンまたはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項3記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項5】
前記高誘電性の非線形絶縁体材料(24)が、非線形強誘電性のチタン酸ジルコン酸ランタン鉛、ニオブ酸ナトリウムの反強誘電体、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BaSrTiO)、ランタンで修飾されたチタン酸ビスマス((BiLa)Ti12)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SrBiTa)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、ニオブ酸鉛マグネシウム(PbMgNbO)、チタン酸ニオブ酸鉛マグネシウム(PbMgNbTiO)、またはチタン酸ジルコン酸ニオブ酸鉛ニッケル(PbNiNb−PbZrTiO)の少なくとも1つを含む、請求項2記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項6】
前記高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)が、密に充填された粉末の絶縁体材料を含む、請求項1記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項7】
前記高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)が、前記密に充填された粉末の絶縁体材料(24)と組み合わされた不活性ガスをさらに含む、請求項6記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項8】
前記高誘電性の無機絶縁同軸型ケーブル(20)が、約10以上の誘電率を有する、請求項1記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項9】
前記所望の長さが、前記BWRの炉心(12)の長さである、請求項1記載のBWRの炉心のLPRMシステム。
【請求項10】
沸騰水型原子炉(BWR)の炉心(12)の局部出力領域監視(LPRM)システムであって、
前記沸騰水型原子炉の炉心(12)内にその全長に沿って配置される監視用の伝送線路組立体を形成するために、複数の核燃料棒と一緒に束ねられた少なくとも1つの高誘電性の非線形無機絶縁同軸ケーブル型の伝送線路(20)、および
前記炉心(12)によって生成された中性子照射またはガンマ線照射の少なくとも1つに応答して、前記少なくとも1つの同軸ケーブル型の伝送線路(20)に関連する一時的な特性インピーダンスの変化を測定するように構成された測定システム(30)を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−71975(P2010−71975A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−166207(P2009−166207)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】