説明

高誘電性エポキシ樹脂組成物及び高周波デバイス

【課題】誘電率の高いエポキシ樹脂組成物を提供。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する高誘電性エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂として特定のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、前記無機充填材としてアルミナと酸化チタンを含有し、前記アルミナに対する前記酸化チタンの質量比が1/9〜1/3であることを特徴とする高誘電性エポキシ樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電性エポキシ樹脂組成物及び高周波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば衛星放送用受信パラボラアンテナで用いられる高周波デバイスは、アルミナ基板に搭載された高周波用の半導体チップを中空状で誘電率の高いセラミックで覆われたものが主流である。しかしながら、セラミック中空パッケージは高価であり、樹脂モールドパッケージと比べて作業工数が多い。このため、トランスファーモールド方式で高周波素子をエポキシ樹脂組成物で封止した樹脂モールドパッケージを採用して、パッケージコストを低減し量産性を向上させることが望まれている。トランスファーモールド方式でセラミック中空パッケージを用いた場合と同程度の信頼性を有する高周波デバイスを得るためには、誘電率が4前後の従来のエポキシ樹脂組成物に比べて誘電率が10を超える高誘電性を示すものが求められている。
【0003】
下記特許文献1には、半導体封止用のエポキシ樹脂組成物として、エポキシ樹脂、硬化剤、複合金属水酸化物及び2級アミノ基を有するシランカップリング剤を必須成分とし、エポキシ樹脂としてトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、無機充填材としてアルミナやチタニアを含有したエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3870825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、前記エポキシ樹脂組成物は、難燃剤として前記複合金属水酸化物を配合するので、ノンハロゲンかつノンアンチモンで、成形性、耐リフロー性、耐湿性、及び高温放置特性の信頼性を低下させずに良好な難燃性を示すことが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されたエポキシ樹脂組成物は、環境対応としてのノンハロゲンかつノンアンチモンの要請に応じつつ、難燃性と成形性を両立させることを目的としており、樹脂組成物自体の高誘電率化については全く検討されていない。又、無機充填材は吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上を目的に配合されているにすぎず、無機充填材中のアルミナとチタニアの配合比率がエポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率に与える影響については全く検討されていない。
【0006】
本発明は、従来のエポキシ樹脂組成物と同程度の流動性を有しつつ、従来のエポキシ樹脂組成物と比べて誘電率の高いエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物で高周波素子を封止成形して形成される高周波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する高誘電性エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂として下記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、前記無機充填材としてアルミナと酸化チタンを含有し、前記アルミナに対する前記酸化チタンの質量比が1/9〜1/3であることを特徴とする高誘電性エポキシ樹脂組成物である。
【0008】
【化1】

(上記式(1)中、mは1〜10の整数を示す。)
【0009】
本発明の高誘電性エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂として硬化物中の電荷の移動を高める上記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含有するとともに、前記無機充填材として誘電率が高いアルミナ及び酸化チタンの両方を前記アルミナに対する前記酸化チタンの質量比が1/9〜1/3で含有することにより、樹脂組成物の封止成形に必要な流動性を確保するとともに高誘電率化をしたものである。
【0010】
前記エポキシ樹脂として下記化学式(2)で表されるトリアジン型エポキシ樹脂をさらに含有することが好ましい。又、前記硬化剤として下記化学式(3)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂を含有することも好ましい。そうすることによって樹脂組成物の誘電率がより高まる。
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

(上記式(3)中、nは1〜10の整数を示す。)

【0013】
又、本発明の高周波デバイスは、高周波素子を前記高誘電性エポキシ樹脂組成物で封止して得られることを特徴とする高周波デバイスである。このような樹脂モールドパッケージの高周波デバイスは、セラミック中空パッケージで覆われた高周波デバイスと比べて生産コストの面で優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のエポキシ樹脂組成物と同程度の流動性を有しつつ、従来のエポキシ樹脂組成物と比べて誘電率の高いエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、該組成物で高周波素子を封止成形して形成される高周波デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する高誘電性エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂として下記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、前記無機充填材としてアルミナと酸化チタンを含有し、前記アルミナに対する前記酸化チタンの質量比が1/9〜1/3の高誘電性エポキシ樹脂組成物である。
【0017】
【化1】

(上記式(1)中、mは1〜10の整数を示す。)
【0018】
前記エポキシ樹脂として、上記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を用いる。トリフェニルメタン型エポキシ樹脂は流動性が高いだけでなく、これを含有したエポキシ樹脂組成物の硬化物に電圧をかけると、これを含有しないものと比べて正電荷及び負電荷が動きやすくなり、誘電率が高くなる。
【0019】
前記エポキシ樹脂として、上記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂とともに下記化学式(2)で表されるトリアジン型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。化学式(2)で表されるトリアジン型エポキシ樹脂は流動性が低く、単独で用いた場合にはエポキシ樹脂組成物全体の流動性を大幅に低下させる。しかしながら、化学式(2)で表されるトリアジン型エポキシ樹脂は、これを含有したエポキシ樹脂組成物の硬化物に対して電圧を印加した時に、硬化物内の電荷の移動を高める効果があり、化学式(1)と(2)のエポキシ樹脂を併用することで、化学式(1)のエポキシ樹脂のみを含有したエポキシ樹脂組成物と比べて、両者を含有したエポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率をさらに上昇させる効果がある。
【0020】
【化2】

【0021】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂に対するトリアジン型エポキシ樹脂の質量比(トリアジン型エポキシ樹脂の含有量(質量)/トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の含有量(質量))は35/65〜5/95であることが好ましい。この質量比を35/65以下にすることでエポキシ樹脂組成物全体としての高い流動性を確保することができる。そして、この質量比を下げるに従ってエポキシ樹脂組成物全体の流動性が高まる傾向がある。一方、この質量比を5/95以上にすることで、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂とトリアジン型エポキシ樹脂の併用効果が高まる傾向がある。
【0022】
上記トリフェニルメタン型エポキシ樹脂とトリアジン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、さらに公知のエポキシ樹脂を併用することができる。具体的には、例えば、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等を単独で又は2種以上を組み合わせて併用することができる。硬化剤と未反応のエポキシ樹脂を少なく抑える観点から、上記併用するエポキシ樹脂はエポキシ当量の小さいものが好ましい。
【0023】
前記硬化剤は、前記エポキシ樹脂を硬化させるためのものであり、公知の硬化剤を用いることができる。具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて併用することができる。エポキシ樹脂との反応をできるだけ高める観点から、上記併用する硬化剤はフェノール当量の小さいものが好ましい。
【0024】
これらの中では、トリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、下記化学式(3)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂であることがさらに好ましい。トリフェニルメタン型フェノール樹脂はトリフェニルメタン型エポキシ樹脂と類似した骨格を有するので、エポキシ樹脂組成物の硬化物に電圧をかけたときに電荷が移動しやすくなるので、硬化物の誘電率を向上させることができる。
【0025】
【化3】

(上記式(3)中、nは1〜10の整数を示す。)
【0026】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の割合(硬化剤/エポキシ樹脂)は特に限定されないが、当量比で、0.5〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。硬化剤の含有量が少なすぎる場合、硬化不足になり、硬化物の形状安定性が不充分となる傾向がある。又、硬化剤の含有量が多すぎる場合、経済的に不利であり、フリーのフェノールが残り、信頼性にも悪影響を与える。
【0027】
本発明に用いられる無機充填材としては、アルミナ及び酸化チタンの双方を用いる。アルミナを用いないで酸化チタンのみを用いた場合には、エポキシ樹脂組成物全体の流動性が大きく損なわれるため、トランスファーモールドによる量産をすることができない。
【0028】
一方、酸化チタンを用いないでアルミナのみを用いた場合には、エポキシ樹脂組成物全体の誘電率が十分に上昇しないため、高周波デバイスの封止材料として用いることができない。アルミナと酸化チタンの双方を用いることにより、エポキシ樹脂組成物全体の流動性を確保して硬化物の誘電率を十分に向上させることができる。そして、アルミナに対する酸化チタンの質量比(酸化チタンの含有量(質量)/アルミナの含有量(質量))は、1/9〜1/3である。球状アルミナと破砕物の酸化チタンは形状が大きく異なる。このため、この質量比を1/3以下にすることで、無機充填材中に占める尖状や不定形の粒子(酸化チタン)が減少して球状粒子(アルミナ)が増加し、エポキシ樹脂組成物全体の流動性が向上する。又、この質量比を1/9以上にすることで、エポキシ樹脂組成物全体の硬化物の誘電率が上昇する。
【0029】
アルミナの平均粒径は、1〜40μmが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。平均粒径が1μm未満であると、アルミナによる封止性を充分に発揮することができない場合がある。又、平均粒径が40μmを超えると、高誘電性エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材などのように、高周波デバイスを構成する高周波素子とリードフレームとの隙間に適用する場合等に、アルミナが隙間を通りにくくなり、好ましくない場合がある。一方、酸化チタンの平均粒径は、0.1〜20μmが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。平均粒径が0.1μm未満のときには、流動性を確保できない場合がある。又、平均粒径が20μmを超えると、パッケージの薄肉部への充填性が悪くなる場合がある。
【0030】
アルミナ及び酸化チタン以外の無機充填材として、さらに公知の無機充填材を併用することができる。具体的には、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、非晶質シリカ及び合成シリカ等のシリカ、アルミナ及び酸化チタン以外の金属酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の金属窒化物、ガラス、ミルドファイバーガラス、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン等を単独で又は2種以上を組み合わせて併用することができる。アルミナ及び酸化チタン以外の無機充填材の平均粒径は、アルミナ又は酸化チタンの平均粒径と同じ程度であることが好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂組成物全量中の無機充填材の含有比率は、75〜94質量%であることが好ましく、80〜92質量%であることがより好ましく、85〜90質量%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量が少なすぎる場合、硬化物の誘電率が低くなる傾向がある。又、無機充填材の含有量が多すぎる場合、エポキシ樹脂組成物全体の流動性が低くなる傾向がある。
【0032】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の水酸基との反応を促進させることができる硬化促進剤であればよく、公知の硬化促進剤を使用することができる。具体的には、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン及びベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの中では、イミダゾール類が好ましく、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールであることがより好ましい。硬化促進剤は、上記各硬化促進剤を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂と硬化剤との総量(全樹脂量)に対して、0.5〜3質量%であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が少なすぎる場合、硬化促進効果を発揮することができない傾向があり、硬化促進剤の含有量が多すぎる場合、成形性に不具合を発生させるおそれがある。尚、硬化促進剤を配合しない場合には、硬化時間が長くなりすぎるため、トランスファーモールド方式での量産性が低下する場合がある。
【0034】
本発明の高誘電性エポキシ樹脂組成物は、上記以外の組成として、本発明の目的とする所望の特性を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有してもよい。このような添加剤として、例えば、離型剤、シランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、シリコーン可とう剤、無機イオントラップ剤等のイオントラップ剤、流動改質剤、滑剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、などの各種添加剤を例示することができる。
【0035】
離型剤としては、公知の離型剤を使用することができる。具体的には、例えば、ステアリン酸、モンタン酸及びミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックス、カルボシキル基含有ポリオレフィン等が挙げられ、カルナバワックスが好ましく用いられる。
【0036】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を使用することができる。具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、メルカプトシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0037】
又、着色剤としては、公知の着色剤を使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック等の顔料等が挙げられ、カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0038】
シリコーン可とう剤としては、公知のシリコーン可とう剤を使用することができる。具体的には、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゲル、シリコーンゴム及びシリコーンエラストマ等が挙げられる。シリコーン可とう剤を含有すると、充填性及び耐ハンダリフロー性を向上させることができるため好ましい。シリコーン可とう剤の含有量としては、エポキシ樹脂組成物の全体量に対して好ましくは0.01〜3質量%とすることが望ましい。前記範囲の含有量とすることにより、添加剤としての効果が十分に発現されるとともに、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下を抑制することができる。
【0039】
消泡剤としては、公知の消泡剤を用いることができる。具体的には、例えば、オイル型、溶液型、粉末型、エマルジョン型等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0040】
前記のような各成分から本発明の高誘電性エポキシ樹脂組成物を調整するに当たっては、一般的な製法を適宜採用することができる。例えば、各成分をミキサー、ブレンダー等で、均一に混合した後に、ニーダーやロール等で加熱混練し、混練後冷却固化し、粉砕して粉粒状の樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
このようにして得られた本発明の高誘電性エポキシ樹脂組成物を用いて、高周波素子を封止するに当たっても、一般的な製法を適宜採用することができる。例えば、基板等に高周波素子を搭載した後、所定の封止領域を前記高誘電性エポキシ樹脂組成物で封止することにより高周波デバイスが得られる。この封止の手段としては、トランスファー成形(トランスファーモールド)等により、高周波素子を搭載した基板等を金型内のキャビティに配置した後、キャビティに上記高誘電性エポキシ樹脂組成物を充填し、これを加熱して硬化させる方法が挙げられる。このトランスファー成形を採用した場合の金型の温度は170〜180℃、成形時間は30〜120秒に設定することができるが、金型の温度や成形時間及びその他の成形条件は、従来の封止成形と同様に設定することができ、高誘電性エポキシ樹脂組成物の材料の種類や製造される高周波デバイスの種類によって適宜設定変更できる。
【0042】
本発明の高周波デバイスとは、高周波帯域にて用いられる半導体素子(高周波素子)が搭載されたデバイスであり、例えば、20GHz帯や12GHz帯の衛星放送用受信パラボラアンテナに用いられるパッケージがある。
【0043】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
表1に示す配合割合(質量部)で、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、三酸化アンチモン(難燃剤)、カルナバワックス、カーボンブラック、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融混練し、冷却後粉砕機で粉砕して高誘電性エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例及び比較例においては次の原材料を用いた。
・エポキシ樹脂:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製EPPN501HY、エポキシ当量167g/eq)、トリアジン型エポキシ樹脂(日産化学工業(株)製TEPIC−S、エポキシ当量105g/eq)、ビフェニルエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製YX4000H、エポキシ当量195g/eq)、ブロム化エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDB−400、エポキシ当量380〜420g/eq)
・硬化剤:トリフェニルメタン型フェノール(明和化成(株)製MEH−7500、水酸基当量100g/eq)、フェノールノボラック樹脂(荒川化学(株)製タマノール752、水酸基当量104g/eq)
・無機充填材:球状アルミナ(昭和電工(株)製AS20、平均粒径21μm)、酸化チタン(石原産業(株)製R820、平均粒径0.3μm)、溶融シリカ(電気化学工業(株)製FB820と、(株)アドマテックス製SO−25Rとを、質量比が9:1となるように混合した混合物)
・硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製2PHZ)
・三酸化アンチモン
・カルナバワックス:大日化学(株)製F1−100
・カーボンブラック:三菱化学(株)製40B
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製KBM403
上記のように調製した各組成物を用いて、以下に示す方法により評価を行った。
【0045】
(スパイラルフロー)
ASTM D3123に準じたスパイラルフロー測定金型を用いて金型温度175℃、注入圧力:6.9MPa、成形時間90秒間、後硬化175℃/6時間の条件で成形し、流動距離(cm)を測定した。
【0046】
(ゲルタイム)
キュラストメーター(JSRキュラストメーターIII PS型)を用い、170℃でのゲルタイム(所定のトルクに達した時点までの時間)を求めた。
【0047】
(誘電率)
エポキシ樹脂組成物の硬化物を安藤電気(株)製TO−9(商品名)を用いて、測定周波数1MHzにて測定した。
【0048】
結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、エポキシ樹脂としてトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、無機充填材としてアルミナと酸化チタンをそれぞれ所定量含有する高誘電性エポキシ樹脂組成物(実施例1〜7)は、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含有しないエポキシ樹脂組成物(比較例1〜3)、アルミナ及び酸化チタンの少なくとも1つを所定量含有しないエポキシ樹脂組成物(比較例4〜7)と比較して、高い流動性及び高い誘電率を両立している。
【0051】
以上より、本発明に係る実施例1〜7(硬化物)は、エポキシ樹脂としてトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含有するとともに無機充填材としてアルミナと酸化チタンの両方を所定量含有しているので、高誘電性を示す。よって、本発明に係る高誘電性エポキシ樹脂組成物を用いて高周波素子を封止すれば、樹脂モールドパッケージの高周波デバイスを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する高誘電性エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂として下記化学式(1)で表されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を、前記無機充填材としてアルミナと酸化チタンを含有し、
前記アルミナに対する前記酸化チタンの質量比が1/9〜1/3であることを特徴とする高誘電性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(上記式(1)中、mは1〜10の整数を示す。)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂として下記化学式(2)で表されるトリアジン型エポキシ樹脂をさらに含有する請求項1に記載の高誘電性エポキシ樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
前記硬化剤として下記化学式(3)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂を含有する請求項1又は請求項2に記載の高誘電性エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(上記式(3)中、nは1〜10の整数を示す。)
【請求項4】
高周波素子を請求項1〜3のいずれか1項に記載の高誘電性エポキシ樹脂組成物で封止して得られることを特徴とする高周波デバイス。

【公開番号】特開2010−195997(P2010−195997A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45110(P2009−45110)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】