説明

高透明性光触媒膜およびそれを有する物品

【課題】 基材上に形成されてなる、優れた親水性能と高い透明性を有する光触媒膜を提供する。
【解決手段】 基材上に、直接にまたは中間保護膜を介して形成されてなる光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを、一定の割合で含み、表面に凹凸を有する高透明性光触媒膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高透明性光触媒膜およびそれを有する物品に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた親水性能と高い透明性を有する光触媒膜、および基材上に該光触媒膜を有する物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、一般にそのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、伝導帯に電子が励起され、価電子帯に正孔が生じる。そして、励起されて生じた電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O2−)を生成すると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒からなる膜の表面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。
【0003】
このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、さらには廃水中や廃ガス中の環境汚染上の問題となっている各種物質の分解・除去などが検討されている。
【0004】
また、光触媒のもう1つの機能として、該光触媒が光励起されると、例えば特許文献1に開示されているように、光触媒膜表面は、水と接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。このような光触媒の超親水化機能を応用して、例えば、防曇性、防滴性、防汚性、防霜性、滑雪性付与を目的として、高速道路の防音壁、道路反射鏡、各種反射体、街路灯、自動車をはじめとする車両のボディーコートやサイドミラーあるいはウインド用フィルム、窓ガラスを含む建材、道路標識、ロードサイド看板、冷凍・冷蔵用ショーケース、各種レンズ類やセンサー類などに光触媒膜を用いることが検討されている。
【0005】
このような光触媒については、これまで数多く知られており、中でも酸化チタンは代表的なものの一つに挙げられる。酸化チタンには無定形のアモルファス型のほか、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの代表的な結晶系が存在し、これら3つの結晶系で光触媒活性を示し、有機物の分解能のほか、超親水性を発現することで有名である。これらの中でアナターゼ型が最も高い活性を示すことが一般に知られている。
【0006】
特に、高い親水性が要求される窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに用いられる光触媒膜には、前記親水性能と共に、高い透明性が要求されるが、このような物性を十分に満足する光触媒膜は、あまり見出されていないのが現状である。
【0007】
加えてこの超親水性がもたらす防汚性・防滴性・防曇性等は、光励起型であるがゆえに機能発現までの時間が太陽光のあたり方によって大きく変化することが指摘されている。特に防曇性においては、場合によっては優れた超親水性を短期間で発現せしめたい場合もあり、高度な透明性を損なうことがなく、超親水性に至る時間のみを今まで以上に速くすることが求められることも多い。
【0008】
ところで、光触媒膜からなる層をプラスチックなどの有機系基材上に設ける場合、光触媒を直接コーティングすると、光触媒作用により該有機系基材が短時間で劣化するのを免れないという問題が生じる。したがって、例えばプラスチックフィルム上に光触媒層を有する光触媒フィルムにおいては、光触媒作用による基材フィルムの劣化を防止するためと、基材フィルムに対する密着性を向上させるために、通常中間層が設けられている。この中間層としては、一般にシリコーン樹脂やアクリル変性シリコーン樹脂などからなる厚さ数μm程度のものが用いられている。
【0009】
また、本発明者らが先に見出した、厚さ方向に組成が連続的に変化する有機−無機複合傾斜材料(例えば、特許文献2参照)を用いることも効果的である。
【0010】
【特許文献1】国際特許公開96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開2000−336281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情のもとで、基材上に形成されてなる、優れた親水性能と高い透明性を有する光触媒膜、および基材上に該光触媒膜を有する物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に、直接にまたは中間保護膜を介して形成されてなる、光触媒粒子以外に、特定の粒径範囲の金属酸化物小粒子と、特定の粒径範囲の金属酸化物大粒子とを所定の割合で含み、表面に凹凸が付与された光触媒膜により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) 基材上に、直接にまたは中間保護膜を介して形成されてなる光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有することを特徴とする高透明性光触媒膜、
(2) JIS K 7361に準拠して測定される、基材上に設けられた全膜自身のヘイズ値が、0.6%未満である上記(1)項に記載の高透明性光触媒膜、
(3) 金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)または(2)項に記載の高透明性光触媒膜、
(4) 金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ系微粒子である上記(3)項に記載の高透明性光触媒膜、
(5) 光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度が2倍以上向上してなる上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜、
(6) 基材が、有機系基材であって、中間保護膜として、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が、表面から深さ方向に向かって連続的に変化する成分傾斜膜を設けてなる、上記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜、
(7) 基材の表面に、上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする物品、および
(8) 高透明性光触媒膜の表面に、さらに機能膜を有する上記(7)項に記載の物品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに好適な優れた親水性能と高い透明性を有する光触媒膜、および基材上に該光触媒膜を有する物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の光触媒膜について説明する。
[光触媒膜]
本発明の光触媒膜は、基材上に、直接にまたは中間保護膜を介して形成されてなる光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、後で説明するように、(a)特定の粒径範囲の金属酸化物小粒子と、(b)特定の粒径範囲の金属酸化物大粒子とを所定の割合で含み、表面に凹凸を有することを特徴とする。
【0016】
(基材)
本発明の光触媒膜における基材としては、無機系基材および有機系基材のいずれも用いることができる。無機系基材としては、特に制限はなく、例えばガラス板、金属板、セラミックス板などを用いることができる。
【0017】
一方、有機系基材としては、例えばポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレンやABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなる基材を挙げることができる。
【0018】
これらの有機系基材は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれる。
【0019】
なお、本発明において、有機基材としては、有機系材料以外の材料、例えば金属系材料、ガラスやセラミックス系材料、その他各種無機系または金属系材料からなる基材の表面に、有機系塗膜を有するものも包含する。
前記の無機系基材および有機系基材の厚さについては特に制限はなく、本発明の光触媒膜の用途に応じて適宜選定される。
【0020】
(中間保護膜)
本発明においては、基材として、無機系基材を用いる場合には、光触媒膜を基材表面に直接形成することができるが、有機系基材を用いる場合には、光触媒膜から発生する反応性活性種のもつ酸化分解能から、該有機系基材を保護するために、有機系基材と光触媒膜との間に中間保護膜を設ける。
【0021】
この中間保護膜としては特に制限はなく、従来、光触媒膜と有機系基材との間に設けられている公知の中間保護膜、例えば無機系コーティング膜などを設けることができるが、本発明においては、有機系基材との密着性および中間保護膜としての性能に優れる、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が、表面から深さ方向に向かって連続的に変化する成分傾斜膜を設けることが好ましい。
【0022】
この成分傾斜膜は、(A)チタンテトラアルコキシドを加水分解縮合させて得られるチタニアゾルと、(B)分子中に加水分解により酸化チタンと結合し得る金属含有基(加水分解性金属含有基と称することがある。)を有する有機高分子化合物とを含むコーティング剤を用いて形成することができる。
【0023】
(A)成分であるチタンテトラアルコキシドを加水分解縮合させて得られるチタニアゾルの調製において、原料となるチタンテトラアルコキシドとしては、アルコキシル基の炭素数が1〜4程度のチタンテトラアルコキシドが用いられる。このチタンテトラアルコキシドにおいては、4つのアルコキシル基は、たがいに同一でも異なっていてもよいが、入手の容易さなどの点から、同一のものが好ましく用いられる。上記チタンテトラアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシドおよびチタンテトラ−tert−ブトキシドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記チタンテトラアルコキシドを加水分解−縮合させて、チタニアゾル溶液を調製する。このチタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応は、好ましくは炭素数3以上のエーテル系酸素を有するアルコール類を溶媒として用い、酸性触媒の存在下でチタンテトラアルコキシドに水を作用させることにより行われる。
【0025】
上記炭素数3以上のエーテル系酸素を有するアルコール類としては、チタンテトラアルコキシドに対して相互作用を有する溶剤、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテルなどのセロソルブ系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。これらの中で、特にチタンテトラアルコキシドに対する相互作用が強いセロソルブ系溶剤が好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
このようなチタンテトラアルコキシドに対して相互作用を有する溶剤を溶媒として用いることにより、チタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応により得られたチタニアゾル溶液を安定化させることができ、縮合反応を進行させてもゲル化や粒子化が生じにくくなる。
【0027】
チタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応は、チタンテトラアルコキシドに対し、4〜20倍モル程度、好ましくは5〜12倍モルの上記アルコール類と、0.5倍モル以上4倍モル未満程度、好ましくは1〜3.0倍モルの水を用い、塩酸、硫酸、硝酸などの酸性触媒の存在下、通常0〜70℃、好ましくは20〜50℃の範囲の温度において行われる。酸性触媒は、チタンテトラアルコキシドに対し、通常0.1〜1.0倍モル、好ましくは0.2〜0.7倍モルの範囲で用いられる。
【0028】
上記(B)成分の加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物は、例えば(x)加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(y)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより、得ることができる。
【0029】
上記(B)(x)成分である加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体としては、一般式(4)
【0030】
【化1】

【0031】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aはアルキレン基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは加水分解性基または非加水分解性基であるが、その中の少なくとも1つは加水分解により、(A)成分と化学結合しうる加水分解性基であることが必要であり、また、Rが複数の場合には、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、Mはケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどの金属原子、kは金属原子Mの価数である。)
で表されるものを挙げることができる。
【0032】
上記一般式(4)において、Rのうちの加水分解により(A)成分と化学結合しうる加水分解性基としては、例えばアルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基、水酸基などが挙げられ、一方、(A)成分と化学結合しない非加水分解性基としては、例えば低級アルキル基などが好ましく挙げられる。
【0033】
一般式(4)における−Mk−1で表される金属含有基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリ−n−ブトキシシリル基、トリイソブトキシシリル基、トリ−sec−ブトキシシリル基、トリ−tert−ブトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、トリイソシアナトシリル基、メチルジイソシアナトシリル基など、トリメトキシチタニウム基、トリエトキシチタニウム基、トリ−n−プロポキシチタニウム基、トリイソプロポキシチタニウム基、トリ−n−ブトキシチタニウム基、トリイソブトキシチタニウム基、トリ−sec−ブトキシチタニウム基、トリ−tert−ブトキシチタニウム基、トリクロロチタニウム基、さらには、トリメトキシジルコニウム基、トリエトキシジルコニウム基、トリ−n−プロポキシジルコニウム基、トリイソプロポキシジルコニウム基、トリ−n−ブトキシジルコニウム基、トリイソブトキシジルコニウム基、トリ−sec−ブトキシジルコニウム基、トリ−tert−ブトキシジルコニウム基、トリクロロジルコニウム基、またさらには、ジメトキシアルミニウム基、ジエトキシアルミニウム基、ジ−n−プロポキシアルミニウム基、ジイソプロポキシアルミニウム基、ジ−n−ブトキシアルミニウム基、ジイソブトキシアルミニウム基、ジ−sec−ブトキシアルミニウム基、ジ−tert−ブトキシアルミニウム基、トリクロロアルミニウム基などが挙げられる。
【0034】
この(x)成分のエチレン性不飽和単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
一方、上記(y)成分である金属を含まないエチレン性不飽和単量体としては、例えば一般式(5)
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Xは一価の有機基である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、好ましくは一般式(5−a)
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、Rは前記と同じであり、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、あるいは上記一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて添加される密着性向上剤としての一般式(5−b)
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体との混合物を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、および各種のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが、炭素数6〜10のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが、炭素数7〜10のアラルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0043】
この一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示されるエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。上記置換基のハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子がよい。上記炭化水素基の具体例としては、前述の一般式(5−a)におけるRの説明において例示した基と同じものを挙げることができる。
【0045】
上記一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−グリシドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。
【0046】
また、上記一般式(5)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、これら以外にもスチレン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレン、m−、o−またはp−ブロモスチレン、m−、o−またはp−クロロスチレン、m−、o−またはp−ビニルフェノール、1−または2−ビニルナフタレンなど、さらにはエチレン性不飽和基を有する重合性高分子用安定剤、例えばエチレン性不飽和基を有する、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体とを併用する場合は、前者のエチレン性不飽和単量体に対し、後者のエチレン性不飽和単量体を1〜100モル%の割合で用いるのが好ましい。
【0048】
上記(x)成分の加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と(y)成分の金属を含まないエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合させることにより、(B)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物が得られる。
【0049】
本発明においては、上記のようにして得られた(A)成分であるチタニアゾルの溶液と、(B)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物を適当な極性溶剤中に溶解させた溶液との混合液を、塗布に適した粘度に調整することによってコーティング剤を得ることができる。この際、必要ならば、上記コーティング剤に水および/または酸性触媒を添加してもよい。
【0050】
さらに、成分傾斜構造を有する非晶質酸化チタン膜の形成に用いられるコーティング剤には、アモルファス状酸化チタンの結晶生成を調整する物質として、無機金属塩、有機金属塩並びにチタンおよび珪素以外の金属のアルコキシドの中から選ばれる少なくとも1種の金属系化合物を含有させることができる。具体的には、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムや、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム等の各塩類、ならびに、これら無機塩類の水和物、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどのアルミニウムキレート類、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの金属アルコキシド類、ならびにこれら化合物の加水分解物、あるいは、その縮合物を挙げることができる。これらの中で、特に硝酸アルミニウムならびにその水和物が好適である。前記結晶生成調整物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明においては、有機系基材上に、上述のようにして得られたコーティング剤を、乾燥塗膜の厚さが、通常0.01〜1μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲になるように、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手段により塗布し、溶媒を揮散させて塗膜を形成させることが好ましい。
【0052】
このようにして、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が、表面から深さ方向に向かって連続的に変化する成分傾斜膜からなる中間保護膜が形成される。
【0053】
成分傾斜構造は、例えば得られた膜表面にスパッタリングを施して削っていき、経時的に膜表面の炭素原子とチタン原子の含有率を、X線光電子分光法などにより測定することによって、確認することができる。
【0054】
(光触媒膜の形成)
本発明においては、前述したように、基材として無機系基材を用いる場合には、該基材上に、直接に光触媒膜を形成することができるが、有機系基材を用いる場合には、前述のように中間保護膜を設け、その上に光触媒膜を形成する。
【0055】
この光触媒膜は、例えば(W)光触媒活性粒子、(X)凹凸形成用の金属酸化物粒子、(Y)無機系バインダー、および(Z)所望により用いられる光触媒促進剤を含む分散液からなる光触媒膜形成用コーティング剤を、基材上に直接、または中間保護膜上に、公知の方法、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより塗布し、自然乾燥または加熱乾燥することにより、形成することができる。
【0056】
前記(W)成分の光触媒活性粒子としては、アナターゼ型、ルチル型およびブルッカイト型の結晶質二酸化チタンを好ましく挙げることができ、特にアナターゼ型二酸化チタンが好適である。このアナターゼ型二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。また、窒化チタンや低次酸化チタンを一部含有するもの、窒素や硫黄原子がドープされたもの、あるいはV、W、Fe、Co、No、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Pt、Auの中から含まれる少なくとも1種の金属および/または金属酸化物をはじめとする金属化合物を担持させたものなど、高感度型および/または可視光応答型の酸化チタンなども好適である。
【0057】
本発明においては、(W)成分として用いられる光触媒活性粒子の平均粒径は、通常1〜500nm、好ましくは1〜100nmである。
【0058】
前記(X)成分である凹凸形成用の金属酸化物粒子としては、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを用いる。
【0059】
前記金属酸化物粒子Aと、金属酸化物粒子BまたはCまたはDとの使用割合は、質量基準で下記関係式(1)〜(3)で示すとおりである。
【0060】
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
なお、上記関係式(1)の「80/20≦A/B≦45/55」は、AとBとの質量比が、80:20〜45:55の範囲にあることを示す。他の関係式(2)、(3)も同様である。
【0061】
金属酸化物粒子Aと、金属酸化物粒子BまたはCまたはDとの質量基準の割合が、それぞれ上記関係式(1)、(2)、(3)を満たすことにより、基材上に形成される全膜自身のJIS K 7361に準拠して測定したヘイズ値を0.6%未満にすることができると共に、光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度を2倍以上向上させることができる。
【0062】
この金属酸化物粒子A〜Dとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、このシリカ系微粒子が好適である。このシリカ系微粒子としては、コロイダルシリカが好ましい。
【0063】
前記(Y)成分である無機系バインダーとしては、バインダーとしての機能を発揮し得るものであればよく、特に制限されず、従来公知のもの、例えばケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タングステン、スズ、タンタルなどの金属の酸化物や水酸化物、あるいは上記金属の中から選ばれた2種以上の金属の複合酸化物や複合水酸化物などを挙げることができる。この無機系バインダーは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
一方、(Z)成分である所望により用いられる光触媒促進剤としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族金属が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の点から、通常、光触媒活性粒子と光触媒促進剤との合計量に基づき、1〜20質量%の範囲で選ばれる。
【0065】
本発明においては、光触媒膜形成用コーティング剤は、適当な溶媒中に、前記の(W)光触媒活性粒子、(X)凹凸形成用の金属酸化物粒子、(Y)無機系バインダー、および(Z)所望により用いられる光触媒促進剤を加え、分散液とすることにより、調製することができる。
【0066】
また、このコーティング剤には、従来光触媒膜形成用コーティング剤に使用される公知の他の添加成分、例えばシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、シランカップリング剤などを含有させることができる。
【0067】
当該コーティング剤中の固形分濃度としては、基材上または中間膜上に塗布し、所望の膜厚の薄膜を形成し得る粘度を有するものであればよく、特に制限はない。
【0068】
(光触媒膜の性状)
本発明の光触媒膜は、表面に凹凸を有し、優れた親水性能を発揮すると共に、反射率が低く、高い透明性を有している。
【0069】
ウエンツェルの法則によると、塗膜表面にある程度の凹凸を付与することにより、該塗膜の濡れ性が強調され、親水性能が向上することが知られている。本発明者らは、光触媒膜の親水性能を効果的に向上させると共に、反射率を低くして透明度を効果的に高める凹凸について、研究を重ね、本発明を完成するに至ったものである。
【0070】
すなわち、本発明の光触媒膜は、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有している。
【0071】
このような表面に凹凸を有することにより、基材上に形成される全膜自身のJIS K7361に準拠して測定したヘイズ値を0.6%未満にすることができると共に、光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度を2倍以上向上させることができる。
なお、上記の光触媒膜のヘイズ値および親水化速度は、下記の方法により測定した値である。
【0072】
<光触媒膜の親水化速度>
基板には2mm厚の無色透明アクリル板(三菱レーヨン社製、「アクリライトL」)、あるいは2mm厚の透明フロートガラスを用いた。中間保護膜を形成する場合は、2mm厚の無色透明アクリル板(前出)上に厚み100nmの中間保護膜を形成し、その上に厚み50nmの光触媒膜を形成させ、暗所保持下で十分に疎水下させたサンプルについて、ブラックライトブルー蛍光灯(NEC製、FLS BL−B 20W)光源を使用し、中心波長352nmの紫外線を照射したのち、接触角計(エルマ販売(株)製「G−1−1000」)で純水に対する接触角の経時変化を追跡した。また、2mm厚の透明フロートガラスを使用する場合は、直接光触媒膜を厚み50nmで形成させ、上記と同様の方法にて接触角の経時変化を追跡した。親水化速度は、光照射時間(min)に対して水接触角値の逆数をプロットし、その直線近似線の傾きを取ることによって求める。
【0073】
<光触媒膜のヘイズ値>
中間保護膜を形成する場合は、2mm厚の無色透明アクリル板(前出)上に厚み100nmの中間保護膜を形成し、その上に厚み50nmの光触媒膜を形成し、日本電色社製のヘイズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7361に準拠してヘイズ値を求める。この場合、光触媒膜自身のヘイズ値は、光触媒膜を成膜した前出の中間保護膜付き無色透明アクリル板のヘイズ値から、中間保護膜付きアクリル板単独のヘイズ値を差し引くことによって求めた。
【0074】
また、2mm厚の透明フロートガラスを使用する場合は、直接光触媒膜を厚み50nmで形成させ、上記と同様に、光触媒膜を成膜した前述のフロートガラスのヘイズ値から、フロートガラス単独のヘイズ値を差し引くことによって求めた。
【0075】
本発明で用いる前記金属酸化物粒子A〜Dとしては、前述したようにシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、シリカ系微粒子が、当該光触媒膜のヘイズ値低減および親水化速度の向上効果の観点から好適である。
【0076】
また、本発明の光触媒膜中に含まれる、前記金属酸化物粒子Aと、BまたはCまたはDとの合計量は、当該光触媒膜のヘイズ値低減および親水化速度の向上効果の観点から10〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。
なお、前記の各金属酸化物粒子の平均粒径は、レーザー散乱回折法により、測定される値である。
次に、本発明の物品について説明する。
【0077】
[物品]
本発明の物品は、基材の表面に本発明の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする。
【0078】
さらに、本発明の物品は、本発明の光触媒膜の機能を害さない範囲で、前記光触媒膜の表面に、厚みが500nm以下である機能膜をさらに設けることができる。
【0079】
上記機能膜の機能としては、暗所での親水保持性、導電性、帯電性、ハードコート性、反射特性制御、屈折率制御などが挙げられる。また、上記機能膜の具体的な構成成分としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ITO、酸化亜鉛などの金属酸化物系化合物が挙げられる。特に、太陽光が当たらない夜間において、親水性を保持するためなどを目的として、シリカを含んでなるものであることが好ましい。
【0080】
本発明の物品において、高透明性光触媒膜が形成される基材としては、前記で例示した無機系基材や有機系基材と同じものを挙げることができ、また有機系基材の場合は、前記と同様に、その上に設けられる光触媒膜との密着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。
【0081】
本発明の物品としては、高速道路の防音壁、道路反射鏡、各種反射体、街路灯、自動車をはじめとする車両のボディーコートやサイドミラーあるいはウインド用フィルム、窓ガラスを含む建材、道路標識、ロードサイド看板、冷凍・冷蔵用ショーケース、各種レンズ類やセンサー類などを挙げることができる。
【0082】
また、本発明の物品としては、農業用フィルムを挙げることもできる。農業用フィルムは、近年、ハウス栽培やトンネル栽培に盛んに用いられるようになってきたものであり、このような栽培においては、農業用フィルムを展張使用する際、水滴付着による生じる曇りを防止するために、展張後に、防滴剤(防曇剤)を内面にスプレーしていたが、この防滴剤(防曇剤)は、短期間で防滴効果が失われるものであった。これに対して、本発明の光触媒膜を表面に有する農業用フィルムは、長期間親水性を維持し得るものであるため、再塗布を必要とせずに農作業を継続することが可能となる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で形成された保護層と光触媒膜との全膜の性能は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)親水化速度
明細書本文記載の方法に従って、親水化速度を測定し、比較例1の光触媒膜の値を1として指数表示した。
(2)ヘイズ値
明細書本文記載の方法に従って、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れている。
【0084】
合成例1 チタンアルコキシドの加水分解縮合液の調製
エチルセロソルブ149gに、チタンテトライソプロポキシド(商品名:A−1、日本曹達(株)製)75.7gを攪拌しながら滴下し、溶液(A)を得た。この溶液(A)にエチルセロソルブ58.3g、蒸留水4.55g、60質量%濃硝酸12.6gの混合溶液を攪拌しながら滴下し溶液(B)を得た。溶液(B)をその後、30℃で4時間攪拌することによってチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を得た。
【0085】
合成例2 有機高分子成分溶液の調製
2Lセパラブルフラスコに窒素雰囲気下でメチルイソブチルケトン704g、メタクリル酸メチル332g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン42.0gを添加し、60℃まで昇温した。この混合溶液にアゾビスイソブチロニトリル3.2gを溶かしたメチルイソブチルケトン103gを滴下して重合反応を開始し、30時間攪拌して有機高分子成分溶液(D)を得た。
【0086】
合成例3 成分傾斜保護層の形成
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で作製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で作製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカ(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.78gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、成分傾斜中間層塗工液(H)を合成した。
【0087】
その後成分傾斜中間層塗工液(H)を、2mm厚の無色透明アクリル板(三菱レーヨン製、アクリライトL)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、ドライ厚みが100nmになるように塗布し、光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)とした。なおこの時保護層自身のヘイズ値は0.12%であった。
【0088】
実施例1
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.63g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)0.54gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0089】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.51%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して2.50倍であった。
【0090】
XPS装置「PHI−5600」[アルバックファイ(株)製]を用い、アルゴンスパッタリング(4kV)を3分間隔で施し膜を削り、膜表面の炭素原子と金属原子の含有率をX線光電子分光法により測定し、傾斜性を調べたところ、表面から深さ方向に金属原子の含有率が連続的に減少する成分傾斜構造を有していることが確認された。
【0091】
実施例2
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.08g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)1.08gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0092】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.57%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して2.30倍であった。
【0093】
実施例3
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.06g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm) 日産化学工業製)0.11gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作成した。
【0094】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.51%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して3.20倍であった。
【0095】
実施例4
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.63g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm) 日産化学工業製)0.54gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作成した。
【0096】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.56%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して3.56倍であった。
【0097】
実施例5
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.06g、コロイダルシリカD(商品名:MP2040(平均粒径190nm) 日産化学工業製)0.08gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0098】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.55%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して2.54倍であった。
【0099】
実施例6
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.95g、コロイダルシリカD(商品名:MP2040(平均粒径190nm) 日産化学工業製)0.16gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0100】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.59%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して2.33倍であった。
【0101】
実施例7
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.63g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)0.54gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0102】
その後光触媒トップコート液(I)を透明フロートガラス上にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.41%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例11のものに対して2.20倍であった。
【0103】
比較例1
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.17gを滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0104】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.48%であった。
【0105】
比較例2
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)2.17gを滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0106】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.55%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して0.59倍であった。
【0107】
比較例3
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm) 日産化学工業製)2.17gを滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0108】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.88%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して0.36倍であった。
【0109】
比較例4
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカB(商品名:MP2040(平均粒径190nm) 日産化学工業製)1.63gを滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0110】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は1.77%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して0.23倍であった。
【0111】
比較例5
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.06g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)0.11gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0112】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.50%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して1.33倍であった。
【0113】
比較例6
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)0.37g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm) 日産化学工業製)1.80gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0114】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.59%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して0.88倍であった。
【0115】
比較例7
エエチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.14g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径50nm) 日産化学工業製)0.02gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0116】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.49%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して1.54倍であった。
【0117】
比較例8
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.08g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径50nm) 日産化学工業製)1.08gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0118】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.59%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して0.92倍であった。
【0119】
比較例9
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.14g、コロイダルシリカD(商品名:MP2040(平均粒径190nm) 日産化学工業製)0.02gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0120】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.53%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して1.84倍であった。
【0121】
比較例10
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を3.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)1.84g、コロイダルシリカD(商品名:MP2040(平均粒径190nm) 日産化学工業製)0.24gをそれぞれ滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0122】
その後光触媒トップコート液(I)を上記光触媒トップコート用の成分傾斜保護層(J)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.88%であった。得られたサンプルの親水化速度は比較例1のものに対して2.75倍であった。
【0123】
比較例11
エチルセロソルブ42.1gと1−プロパノール44.5gとを混合させ、攪拌している中に、上記記載のチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を.52g加えた。続いてこの液に硝酸0.336gと水6.822gを混合した液をゆっくりと加えた。次にこの液を攪拌しながら、酸化チタンスラリー(PC201:住友化学製、平均粒径40nm)0.483gをゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながらコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm) 日産化学工業製)2.17gを滴下させ、その後、約30℃の温浴で4時間攪拌させて、光触媒トップコート液(I)を作製した。
【0124】
その後光触媒トップコート液(I)を透明フロートガラスにスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、ドライ厚みが50nmになるように塗布した。この時の光触媒膜自身のヘイズ値は0.28%であった。
以上、実施例1〜7および比較例1〜11の結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
表1から分かるように、本発明の光触媒膜(実施例1〜7)は、いずれも親水化速度指数が2以上であり、かつヘイズ値が0.6%未満である。
【0127】
これに対し、比較例1〜9および11は、いずれも親水化速度が2未満である。比較例10は、親水化速度が2.75と高いが、ヘイズ値が0.88%と大きい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の光触媒膜は、優れた親水性能を有すると共に、高い透明性を有し、例えば窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、直接にまたは中間保護膜を介して形成されてなる光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有することを特徴とする高透明性光触媒膜。
【請求項2】
JIS K 7361に準拠して測定される、基材上に設けられた全膜自身のヘイズ値が、0.6%未満である請求項1に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項3】
金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項4】
金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ系微粒子である請求項3に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項5】
光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度が2倍以上向上してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項6】
基材が、有機系基材であって、中間保護膜として、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が、表面から深さ方向に向かって連続的に変化する成分傾斜膜を設けてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項7】
基材の表面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする物品。
【請求項8】
高透明性光触媒膜の表面に、さらに機能膜を有する請求項7に記載の物品。

【公開番号】特開2010−115607(P2010−115607A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291438(P2008−291438)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】