説明

高速イオンを発生させるためのシステム及び方法

本発明は、高速イオンのビームを発生させるシステム及び方法を開示する。本システムは、共通の軸に沿って実質的に均一に配向したナノスケールパターン特徴部を備えたパターンのパターン化表面を有するターゲット基板と、高出力コヒーレント電磁放射ビームを受光して、それをターゲット基板のパターン化表面上にフォーカスして、高速イオンの生成を可能にする放射ビームと基板との間の相互作用を生じさせるビームユニットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速イオンを発生させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速イオンビームは、放射性同位体の生成、中性子生成、ラジオグラフィ、核融合等の多様な応用や、多様な形態の放射線治療に対して興味がもたれている。
【0003】
高速イオンのビームは典型的に、サイクロトロンやシンクロトロン等の多様な構成の加速器において生成される。加速器は比較的大型で高価な機械であり、運転及び維持に費用がかかる。超高強度及び電場を提供することができるレーザの開発は、物体をレーザ光電場に晒して高速イオンを発生させる研究、及び比較的安価な高速イオン源を提供するためのレーザの使用の興味を刺激している。
【0004】
特許文献1には、“略1から500フェムト秒(fs)の間のパルス長を有する”レーザパルスの使用が開示されていて、そのレーザパルスは、略1018から略1023ワットcm(W/cm)の間のエネルギー密度にフォーカスされて、医療目的用に使用可能なプロトン等のエネルギーイオンの高フラックスを生成する。パルスは、多様な設計のターゲットと相互作用して放射成分を提供するように向けられるが、その放射成分は、“イオン(例えばプロトン)、X線、電子、パルス102の残部、及び異なるエネルギー成分(例えば、特定のエネルギーバンド又はウィンドウ内のMeV、数十MeV、数百MeV)の異なる種を含む”。ターゲットは、パルスのプレパルスエネルギーを吸収するための薄い箔層を備え得る。ビーム輸送システムによって、ターゲット内で生じて所定のビームエミッタンス及びエネルギーを有するプロトン等のイオンを、治療用の“トリートメントフィールド”に伝播させる。特許文献1には、レーザパルスの伝播方向に対して相対的に下流のターゲットの側部において凹状であり、溝を有するか又はファイバ、クラスタ若しくはフォームを備えて形成され得るターゲットが開示されている。“溝402、ファイバ404、クラスタ406、フォーム408のサイズは、パルスフィールド内の電子の偏位のサイズよりも小さくなる(略1マイクロメートル以下)ように設計され得る。”
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6906338号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T.Palchan他、“Efficient Coupling of High Intensity Short Laser Pulse into Snow Clusters”、Applied Physics Letters、2007年1月24日[オンライン]、第90巻、p.041501
【非特許文献2】T.Palchan他、“Generation of Fast Ions by an Efficient Coupling of High Power Laser into Snow Nanotubes”、Applied Physics Letters、2007年12月18日[オンライン]、第91巻、p.251501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者の一部による非特許文献1(その開示内容は参照として本願に組み込まれる)には、強力なレーザ光を、“レーザ波長以下の小さな直径の細長のスノーフレーク”を備えたターゲットに結合させる旨が記載されている。スノーフレークは、真空チャンバ内に配置されて−70℃以下に冷却されたサファイヤ(Al)基板上に形成される。発明者は、スノーフレークに対して略1×1015W/cmから略2×1016W/cmの間の強度にフォーカスされた800nmの波長のレーザ光のパルスのエネルギーの略94%が、スノーフレークによって吸収されることを発見した。パルスは略150fsのパルス幅と、略10−3のコントラスト比を有する。
【0008】
また、本発明の発明者の一部による非特許文献2には、“中程度の強度(I〜1016‐1017W/cm)の短いレーザパルスとスノーナノチューブとの相互作用中の高速イオンの発生”について記載されている。非特許文献2(その開示内容は参照として本願に組み込まれる)には、最大100keVの運動エネルギーを有するHライク及びHeライクな酸素が相互作用において発生したと記されている。スノーナノチューブのターゲットは、“100Kの温度で厚さ1mmのサファイヤ(Al)プレート上に真空中でHO蒸気を堆積させることによって成長させたスノークラスターであった”。そのスノークラスターはランダムに堆積して、サファイヤ基板上に略100マイクロメートルの厚さの層を形成し、“0.01〜0.1μmの範囲内の特徴的なサイズの細長のクラスタ”を備えていた。
【0009】
本発明者は、所定の強度の高出力コヒーレント電磁放射に対して、上記文献で説明されているような非配向ターゲット(T)が、放射ビームと相互作用して、比較的高エネルギーイオンの比較的大きなフラックスを生じさせる傾向があることを発見している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、本発明者は、配向パターン化ターゲット(OPT,oriented patterned target)を開発し、そのような配向パターン化ターゲット(OPT)と入射電磁放射との相互作用を調べた。ターゲット基板の表面上のパターンは、特定の共通軸に沿って均一に配向した特定の長軸を有するパターン特徴部(所謂、“細長の特徴部”)を有する。OPTのこのようなパターン特徴部は、ワイヤ状の素子(例えばナノワイヤ、フィラメント等)によって構成可能である。こうした配向パターン特徴部は、OPT表面上に粗さを示し、その粗さは連続的な表面レリーフとして実現されても実現されなくてもよい。
【0011】
このようなOPTの使用によって、高運動エネルギーの高速イオンの生成に寄与するOPT内に結合する放射の効率を増強するように入射電磁放射のパラメータを最適化することができる。そのような最適化可能パラメータとして、OPT表面上への電磁放射のビームの入射角、及び/又は、入射ビームの偏光が挙げられる。後述のように、入射角は、所謂“グレージング角”であり、つまり、ビーム伝播軸とOPT表面との間の45°以下の角度(又は、ビーム伝播軸とOPT表面の垂線との間の角度としての“入射角”との意味では45°以上の角度)である。グレージング角の最適値(強度、方位角、仰角)は、最適な高速イオンビームの達成を達成するために、パターンの臨界寸法(ピットの深さを含む)及び配向方向に従って、適切に選択及び/又は徐々に変化させる必要がある点を理解されたい。
【0012】
偏光電磁放射(例えば直線偏光)について、この用語は、所定の好ましい偏光方向を有する光を意味するものであることを理解されたい。偏光方向は、OPTの配向軸に対して相対的に選択されて、イオンのフラックス及びエネルギーは、非配向ターゲット(T)と比較して増強されると考えられる。従って、OPTターゲットの使用は、比較的大きなフラックスにおいて比較的高速のイオンを生成するためにターゲットTを使用するよりも効率的である。
【0013】
ランダムに配向したフィラメントを備えるターゲットのことを、“ターゲット(T)”と称して、好ましい配向方向を示す表面パターンを有するターゲットのことを“配向パターン化ターゲット(OPT)”と称することは理解されたい。
【0014】
特に、略5×1019W/cmから略5×1020W/cmの間の強度を有するレーザパルスが、OPTターゲットと相互作用して、略20から200MeVの間のエネルギーを有するプロトンバーストを生じさせる。そのバーストは、10個以上のプロトン、10個以上のプロトン、10個以上のプロトン、10個以上のプロトン、又は1010個ものプロトンを備え得る。
【0015】
従って、本発明は、高速イオン(高速イオンのビーム)を発生させる新規システム及び方法を提供する。本システムは、特定の軸/共通の軸に沿って実質的に一様に/均一に配向した(つまり所定の配向方向を有する)ナノスケール特徴部(つまり粗さ)を備えた表面レリーフ(つまりナノスケールパターン特徴部を備えたパターンのパターン化表面)を有するターゲット基板と、高出力コヒーレント電磁放射源(例えばレーザ)と共に使用されるビームユニットとを備える。ビームユニットは、高出力コヒーレント電磁放射ビームを受光して、ターゲット基板のパターン化表面上に放射ビームをフォーカスして、高速イオンの生成を可能にする放射ビームと基板との間の相互作用を生じさせるように構成される。
【0016】
一部実施形態では、ビームユニットは、所定のグレージング角でターゲット基板のパターン化表面上に電磁放射ビームを向けるように構成される。グレージング角は、相互作用が所望の高運動エネルギーの高速イオンの生成を可能にするのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように、パターンに従って選択される。
【0017】
一般的に、グレージング角とは、ビームと表面との間の角度、つまり、90°から入射角を引いた角度のことを称する。一部実施形態では、グレージング角は、45°以下である。一部実施形態では、グレージング角は、略20°〜40°(つまり50°〜70°の入射角)の範囲内である。
【0018】
一部実施形態では、電磁ビームは、所定の偏光方向を有し、その偏光方向は、相互作用が所望の高運動エネルギーを有する高速イオンの生成を可能にするのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように選択された偏光方向とターゲット基板のパターン特徴部の配向軸との間の特定の角度を定める。
【0019】
従って、電磁放射のビームの偏光方向とターゲット基板のパターン特徴部の配向軸との間の角度、及びグレージング角は、放射ビームと基板との間の相互作用が高速イオンの生成を可能にするのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように選択される。このようにして、本発明は、比較的多量のイオンを生成するイオン源を提供することを可能にする。一部実施形態では、偏光方向と配向軸との間の角度は0°〜30°の範囲内である。
【0020】
本発明のシステムは、5MeV、50MeV、100MeV、150MeV、200MeVのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きい運動エネルギーを有する高速イオンを提供する。
【0021】
本発明の一部実施形態では、イオンはプロトンを備える。本発明の一部実施形態では、イオンは酸素イオンを備える。
【0022】
本発明の一部実施形態では、システムは、OPTの配向方向に対して異なる角度に偏光方向を選択的に調節するように構成され動作するビームユニットを備える。
【0023】
本発明の一部実施形態によると、放射ビームは、OPTの配向方向に対する所望の偏光方向を有する偏光ビームを備える。一部実施形態では、偏光方向は、配向方向と実質的に平行である。
【0024】
一部実施形態では、ビームユニットは、偏光方向が配向方向と実質的に平行になるようにその偏光方向を向けるように構成される。
【0025】
他の実施形態では、ビームユニットは、偏光方向が配向方向に対して比較的小さな角度(0°〜30°)を有するようにその偏光方向を向けるように構成される。
【0026】
本発明の一部実施形態では、ビームユニットは、ビームが1016W/cm、1017W/cm、1018W/cm、1019W/cm、1020W/cmのうち少なくとも一つと略等しい又はよりも大きい最大強度を有するターゲット内のスポットサイズに放射ビームをフォーカスするように構成され動作する。
【0027】
この構成では、強度I(W/cm)のレーザビームによって生じる電場がE≒27√(I)(V/cm)となる点を理解されたい。5マイクロメートルのスポット直径にフォーカスされた1012ワットの短くて強力なレーザビームに対して、略6×1010(V/cm)の電場が焦点領域に発生する。この電場が、水素原子内の電子を束縛している電場よりも大きい。従って、相互作用の間に、電子は、三つのメカニズムのうち一つを介して光イオン化される。主なプロセスは、レーザ強度及びイオン化ポテンシャルに依存する。第一のメカニズムは多光子イオン化メカニズムであり、複数の光子が同時に原子に当たり、イオン化に必要なエネルギーギャップを超える(800nmの光子一つは略1.5eVを有する)。第二のメカニズムはトンネルイオン化メカニズムであり、原子の電場がレーザビームによって歪められて、減じられたポテンシャル障壁によって電子がトンネリングする確率を無視できないものとする。第三のメカニズムは、障壁を超えるイオン化メカニズムであり、レーザビームの電場がイオン化ポテンシャルと比較して大きくて、電子が本質的に自由であり、レーザ電場から運動エネルギーを得る。γ=√(I/(2E))として定義されるケルディシュパラメータがポンデロモーティブポテンシャルであり、ここで、Iはイオン化ポテンシャルであり、E=9.33738×10−8I[TW/cm]λ[nm]である。γ>>1の場合、多光子イオン化が、イオン化の主なメカニズムである。本発明において、ターゲット上の焦点における放射ビームは、1016W/cm、1017W/cm、1018W/cm、1019W/cm、1020W/cmのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きい最大強度を有するので、γ<1であり、含まれるメカニズムは第二のメカニズム、場合によっては第三のメカニズムである。従って、放射ビームの前縁がターゲットに到達すると、原子がイオン化されて、放射ビームとOPTとの間の相互作用が本質的にプラズマと一緒になる。
【0028】
一部実施形態では、ターゲット基板のパターン化表面は連続的な表面であり、そのパターンが溝を備える。
【0029】
一部実施形態では、ナノスケール特徴部が、細長であり得る離散的なナノ構造を備える。
【0030】
例えば、ナノスケール特徴部は、0.5λ、0.25λ、0.1λ、0.05λ、0.02λのうち少なくとも一つと略等しい又はよりも小さい特徴的な幅と、λ、2λ、5λ、10λのうち少なくとも一つと略等しい又はよりも大きな特徴的な長さとを有する。
【0031】
本発明者は、ターゲットの表面パターンが、ターゲットと相互作用する電磁放射(例えば光パルス)の電場の電場コンセントレータとして機能するものと考えている。
【0032】
特に、本発明の一部実施形態によると、表面パターンは、実質的に均一な配向方向によって特徴付けられるフィラメント/ナノワイヤの層を備える。この場合、電場中の巨視的な金属ニードルがその点において強力な電場を発生させるのと同様に、又は、プラズモン共鳴において測定される局所的な電場増強と同様に、フィラメントは、その端部においてレーザ電場を集中させて増幅する導電性ニードルとして機能し得る。
【0033】
本発明の一部実施形態では、表面パターンは、基板上に散乱していて且つ全て同じ方向に整列したナノクレセント(三日月)状構造を備える。この場合、ナノクレセントは、その端部にレーザ電場を集中させて増幅する湾曲状の導電性ニードルとして機能し得る。
【0034】
本発明の一部実施形態では、フィラメントはアイスフィラメントである。本願の文脈中での、“アイス”、“スノー”、“HO蒸気”との用語は、水蒸気から形成されるパターン特徴部を指称するものとして全て相互可換に使用される点は留意されたい。
【0035】
本発明の一部実施形態では、パターン化表面は、1μm、10μm、20μm、50μm、100μmのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きな厚さを有する。
【0036】
一部実施形態では、ターゲット表面は、サファイヤ、シリコン、炭素、又はプラスチック材料のうち少なくとも一つで形成される。
【0037】
一部実施形態では、ターゲット基板は、基板をその基板にわたるバイアス電場下において真空チャンバ内で水蒸気と相互作用させることによって、電場に沿って配向したナノスケール特徴部を形成することによって、形成される。
【0038】
本発明の一部実施形態では、放射ビームは、レーザ光の少なくとも一つのパルスを備える。任意で、そのパルスは、1ps、0.5ps、0.2ps、0.1ps、0.03psのうち少なくとも一つに略等しい又はよりも小さな期間を有する。
【0039】
本発明の一部実施形態では、本発明が、プラズマ生成用の“プレパルス”を採用した新規方法を可能にする。プレパルスは、メインのプラズマ生成パルスに先行するエネルギーパルスである。一般的に、プレパルスは、レーザ増幅の結果によるものであり、そのプレパルスが先行するレーザ光パルスの10−3から10−6の間の強度を有することに留意されたい。プレパルスは一般的に、レーザ光パルスとターゲット中の物体との相互作用に干渉する。プレパルスは典型的に、プレパルスに続いてターゲット表面に入射するレーザ光パルスのエネルギーを反射するターゲット表面上のプラズマを生成することによって、後続の光パルスのエネルギーがターゲットに結合する効率を低減する。しかしながら、本発明の一実施形態によると、OPTターゲットと相互作用するレーザパルスを伴うプレパルスは、ターゲットの一部分のアブレーション及びイオン化によって消散する。本発明の一実施形態によると、OPTの一部分をアブレーション及びイオン化するプレパルスによって生成されるプラズマは、一般的にサブ臨界密度プラズマであり、プレパルスに伴いこれに続く後続のパルスのエネルギーと強力に相互作用しない。結果として、後続のパルスが、プレパルスによって発生するプラズマからの干渉が実質的になく、ターゲットのアブレーションされていない残留部分と比較的効率的に相互作用することができる。
【0040】
レーザパルス状のエネルギーパルスが好ましいものではあるが、他のタイプのエネルギーパルスも考えられ、超短電子ビームパルス等が挙げられる。しかしながら、以下の説明では、レーザパルス状のエネルギーパルスを好ましい例とする。電磁放射は、メインパルスに先行するプレパルスを典型的には備えたレーザ光パルスであり得る。しかしながら、本発明のシステムは、非常に低いコントラスト比に達するレーザシステム(つまり、プレパルスが、メインパルスの略10−14の強度を有する)でも使用可能である。ビーム源は、プレパルスが略10ns以上の周期でパルスに先行するように制御され得る。追加的に又は代わりに、表面パターンは、プレパルスの実質的に全てのエネルギーを吸収するのに十分な表面パターン内のビームの経路長と略等しいか又はよりも大きな特徴的な寸法を有する。
【0041】
本発明の他の広範な側面によると、高速イオンを発生させる方法も提供される。本方法は、高出力偏光コヒーレント電磁放射ビームをターゲット基板に照射するステップを備え、そのターゲット基板は、共通の配向軸に沿って実質的に均一に配向したナノスケールパターン特徴部を備えたパターンのパターン化表面を有する。パターンと電磁放射の少なくとも一つのパラメータとの間の関係は、電磁放射のビームの偏光方向と配向軸との間の角、及び電磁放射ビームの入射角のうち少なくとも一方を、放射ビームと基板のパターン化表面との間の相互作用が高速イオンビームの発生をもたらすのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように、選択することによって最適化される。
【0042】
一部実施形態では、本方法は、高出力コヒーレント偏光電磁放射ビームを受光するステップと、放射ビームを所望のグレージング角でターゲット基板の表面上に向けるステップとを備える。
【0043】
一部実施形態では、本方法は、基板と水蒸気とを、その基板にわたるバイアス電場下において真空チャンバ内で相互作用させることにより、電場に沿って実質的に一様な所定の方向に配向したナノスケール特徴部を有するパターンのパターン化基板状のターゲットを形成することによってターゲット基板を形成するステップを備える。
【0044】
本発明を理解し、実際に本発明が如何に実現されるのかを理解するため、以下、添付図面を参照して、非限定的な例としてのみの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明の一実施形態による高速イオンを発生させるシステム及び方法の一般的なブロック図を概略的に示す。
【図1B】本発明の一実施形態による高速イオンを発生させるシステム及び方法の一般的なブロック図を概略的に示す。
【図2】同一の放射ビームと異なる複数のターゲットとの相互作用をグラフで示す。
【図3A】異なる複数のグレージング角における放射ビームとターゲットとの相互作用を示す。
【図3B】異なる複数のグレージング角における放射ビームとターゲットとの相互作用を示す。
【図3C】異なる複数のグレージング角における放射ビームとターゲットとの相互作用を示す。
【図4】本発明の一実施形態による高速イオンを発生させるシステムの一例を概略的に示す。
【図5】本発明の他の実施形態による高速イオンを発生させるシステムの他の例を概略的に示す。
【図6A】本発明の一実施形態による図3に示されるターゲットと偏光放射ビームとの相互作用を概略的に示す。
【図6B】本発明の一実施形態による図3に示されるターゲットと偏光放射ビームとの相互作用を概略的に示す。
【図6C】本発明の一実施形態による図3に示されるターゲットと偏光放射ビームとの相互作用を概略的に示す。
【図7】本発明の一実施形態による高速イオンを発生させるシステムの他の構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1Aは、本発明の一実施形態による高速イオンのビームを発生させるシステム20のブロック図を概略的に示し、そのシステム20は、電磁放射32と相互作用する配向パターン化ターゲット(OPT,oriented patterned target)40を備える。OPT基板40は、参照番号44で指称される特定の軸に沿って実質的に一様に配向したサブ共鳴ナノスケール特徴部を備えた表面パターンを有する(つまり実質的に一様な所定の配向方向を有する)。システム20は、高出力コヒーレント電磁放射源92と共に使用されるビームユニット90を備え、高出力コヒーレント電磁放射ビームを受光して、所定の偏光方向を有する放射ビームを所望のグレージング角θでターゲット基板上に向けるように構成されて動作可能である。電磁放射のビームの偏光方向とターゲット基板のパターン特徴部の配向軸との間の角度、及びグレージング角は、放射ビームと基板との間の相互作用が高速イオンの生成を可能にするのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように選択される。特に、放射ビームの偏光方向は、放射ビーム32と基板40との間の相互作用が高速イオンの生成を可能にするのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するような基板の配向軸に対する所定の配向を有するように選択される。高速イオンのエネルギーは、生成されるプラズマによって放射されるX線のラインプロファイル測定(例えば酸素の多価イオンのX線放出スペクトルを介して)を用いて検出器によって測定可能である。検出器は、1.85〜1.90nmの波長範囲で軟X線スペクトルを測定する湾曲した雲母結晶(曲率半径R=150mm)を備えた高光度球形FSSRスペクトロメータであり得る。X線スペクトルは、各実験に対する多様な露光時間でAndor製の背面照射X線CCDによって記録可能である。
【0047】
図1Bは、本発明の教示に従って用いられるプロセスのフローチャートを示す。高速イオンを発生させる方法は、高出力偏光コヒーレント電磁放射ビーム(例えば、少なくとも1TWの出力を有する高出力レーザ源)をOPTに照射するステップと、電磁放射のビームの偏光方向とOPTの配向軸との間の角度、及び電磁放射のビームに対する入射角(つまりグレージング角)の少なくとも一方を、放射ビームとOPTのパターン化表面との間の相互作用が、高速イオンビームの発生をもたらすのに十分な放射ビームと基板との間の結合を提供するように、選択/制御することによって、OPTのパターンと電磁放射の少なくとも一つのパラメータとの間の関係を最適化するステップとを備える。
【0048】
図2は、放射ビームと三つの異なるレーザターゲットスキームとの間の相互作用をグラフで示し、正方形及び三角形のマークは、それぞれ短レーザパルス(>100f秒)、超短レーザパルス(<100f秒)によって照射された固体ターゲットから発生したイオンであり、黒丸は超短レーザ及びOPTターゲットからのイオンである。
【0049】
図の領域Dは、多様なレーザ構成を使用する分野における常識を表す。プロトンエネルギーは、レーザ強度の平方根に近似的にスケーリングされる(つまりEプロトン〜I0.6)。図から明らかなように、OPTターゲット(黒丸)は、他のターゲット(正方形及び三角形のマーク)によって得られる結果の略一桁上の値を与える。
【0050】
特定の非限定的な例では、OPTターゲットは、サファイヤの基板上に積層されたHOナノワイヤによって形成される。ワイヤの直径は略100nmであり、長さは数マイクロメートルである。従って、ワイヤはサブ共鳴であり、例えば、ワイヤの直径は、略0.8μmの照射されるレーザ電場の波長よりも小さい。本発明者は、露光された際に、ターゲットが入射光の95%以上を吸収することを発見した。更に、後述のように、ターゲットは、ターゲットに対する放射ビームの結合を典型的には低下させるプレパルスに対する感受性が低い。また、ターゲットは、荷電粒子の相互作用及び加速に関係する電場を増強する。
【0051】
一部実施形態では、ターゲットの表面パターンは、ターゲットと相互作用する電磁放射(例えば光パルス)の電場に対する電場コンセントレータとして機能する。特に、本発明の一部実施形態によると、表面パターンは、配向方向によって特徴付けられるフィラメント/ワイヤの層を備える。この場合、電場中の巨視的な金属ニードルがその点において強力な電場を発生させるのと同様に、フィラメントは、その端部においてレーザ電場を集中させて増幅する導電性ニードルとして機能し得る。ワイヤの端部におけるナローチップの幾何学的寸法は、電場によって照射された際に大きな電荷分離を発生させる。上述のように、高強度レーザパルスは、ワイヤをイオン化する。ワイヤの幾何学的形状によって誘起される電荷分離は、個々の粒子(電子及びプロトン)と相互作用するレーザの電場に局所的に追加される。
【0052】
電場の増強を計算するための主なパラメータは、幾何学的な比gであり、ここで、gは、ナノスケール特徴部の直径と長さとの間の比である。
【0053】
電場増強ファクタ(FEF,field enhancement factor)は、gと線形にスケーリングして、FEF=E増強/Eレーザ∝gとなる。ここで、Eレーザは、照射されるレーザパルスに対応する電場であり、E増強は、イオンの加速プロセスに含まれる有効電場である。
【0054】
図3A〜図3Cを参照すると、異なる入射角で入射する電磁ビームとOPTの相互作用によって発生するプロトンが示されている。この特定の非限定的な例では、イオンエネルギーが、特定のエネルギー以下のプロトンをブロックするアルミニウムシートで覆われたCR39プレートによって測定されている。図3Aは、参照目的用のシステムのバックグラウンドレベルを表す。図3Bは、45°の入射角でパターン化表面に当たる入射ビームとターゲットとの間の相互作用を表す。プロトンエネルギーのカットオフは0.5MeVである。CR39プレートによって覆われるイオンビームの立体角は略34°(ターゲットに対して垂直に)である。図3Cは、60°の入射角(つまり30°のグレージング角)でパターン化表面に当たる入射ビームとターゲットとの間の相互作用を表す。プロトンエネルギーのカットオフは5MeVである。CR39プレートによって覆われる立体角は略5°(ターゲットに対して垂直に)である。従って、OPTの使用によって、高運動エネルギーで高速イオンの生成に寄与するOPT内に放射結合の効率(つまりエネルギーカットオフ及び立体角)を増強するために、入射電磁放射のパラメータ(本例の入射角)を最適化することができることが明確に示されている。これらの図面は、OPT表面上への電磁ビームのグレージング角の変化の最適化を示す。従って、入射角は、ビーム伝播軸とOPT表面の垂線との間の角度である45°以上(小さなグレージング角)である。この特定の例では、略60°のグレージング角のOPTの照射は、少なくとも36倍の量の高速イオン(例えばプロトン)を発生させる。高速イオンビームは、少なくとも10倍高い運動エネルギーを有する。本発明の教示によると、最適角は、グレージング角を徐々に且つ適切に変化させて、発生した高速イオンビームの性質を測定することによって、決定可能である。グレージング角の実際の値が、特にパターンの特徴(例えば溝の高さ)に依存することは理解されたい。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態に従って電磁放射と相互作用する配向パターン化ターゲット(OPT)40を備えた高速イオンを発生させるシステム20の一例を概略的に示す。
【0056】
放射ビーム32は、所望のグレージング角θでターゲット40に向けられる。放射ビーム32は、矢印34によって示される所定の偏光方向を有する。例えば、ビームユニット30は、円60によって概略的に示されるOPT40の焦点領域にフォーカスされる偏光レーザビームパルスを提供するように制御可能である。
【0057】
この特定の非限定的な例では、OPT40の表面パターンは、ターゲット台50の上に形成されて支持された配向フィラメントを備える。矢印44は、ナノスケール特徴部42及びOPT40の配向を特徴付ける配向方向を示す。本発明の一実施形態では、偏光方向34は、OPT40の配向方向44と実質的に平行である。
【0058】
台50は、当該分野において知られている多様な方法のいずれかに従って構成された冷却ユニット52に結合されたサファイヤ基板51を備え得る。任意で、冷却ユニット52は、サファイヤ基板51から熱を逃がすための熱交換器を介して液体窒素をポンピングする液体窒素循環システム(図示せず)に結合されたCu熱交換器ブロック54を備える。基板は、電源55に接続されたバイアス電極の間に挟まれる。OPT40及び台50は、真空チャンバ(図示せず)内に配置される。
【0059】
本発明の一実施形態によりOPTを形成するため、真空チャンバ内の圧力を、略5×10−4mBarから略10−5mBarの間に低下させて、冷却ユニットを、基板51を略80Kに冷却するように動作させる。電源55は、配向方向44に平行なバイアス電場を基板51に発生させる電極56の間に電圧を印加する。そして、水蒸気を真空チャンバ内に導入して、基板51上に、細長のアイスフィラメント42状に凝固させる。水は極性分子なので、分子が基板上に凝固してアイスフィラメント42を成長させると、分子及びアイスフィラメントは、バイアス電場に平行に向いて、配向方向44に平行に向く。シリコン、炭素又はプラスチック(つまりC‐H複合材)等の共通軸に沿って実質的に均一に配向したナノスケールパターン特徴部を有するパターンにパターン化可能な他の材料も、本発明の教示に従って実質的に均一な配向方向を有するターゲット基板を形成するのに使用可能である。
【0060】
一部実施形態では、放射ビーム32はビームパルスを含む。
【0061】
本発明の一実施形態では、水蒸気が、プレパルス33及びパルス32の実質的に全てのエネルギーを吸収するのに十分な厚さまで表面パターンの層41を成長させるのに十分長い期間にわたって、真空チャンバ内に導入される。従って、プレパルス33のエネルギーは、層41の一部分をアブレーション及びイオン化することによって消散して、アブレーションされた材料の代わりに、比較的薄いサブ臨界密度のプラズマ(層に到達するパルス32に先立って層41の残留部分を覆う)を残す。サブ臨界密度のプラズマは、パルス32のエネルギーとは強力に相互作用せず、結果として、パルス32のエネルギーが、層41のアブレーションされずに残った部分のナノスケール特徴部と効率的に結合する。
【0062】
勿論、基板51内に発生する電場の存在は、全てのナノスケール特徴部42を方向44に沿って実質的に整列させるように基板上に凝固させるものではない。しかしながら、電場は、配向方向44を備えたOPT40及び層41を特徴付ける整列表面パターン(例えばアイスフィラメント)の或る密度をもたらす。そして、本発明の一実施形態に従って、ターゲット配向方向44に平行な一方向(例えば方向34)に偏光したビームのパルス33とOPT40との相互作用は、非配向ターゲットTとパルスとの相互作用に対して相対的に増強される。従って、OPT40と放射ビーム(例えばレーザ光パルス)との相互作用によって提供されるイオンフラックス及びエネルギーは、光パルスとターゲットTとの相互作用によって提供されるフラックス及びエネルギーに対して相対的に増強されると予想される。
【0063】
本発明者は、高速イオンを発生させる強力な800nmの波長のレーザ光パルスと相互作用する非配向アイスフィラメントの層を備えたターゲットTに対する実験を既に行っていた。本発明者によって行われた実験は、上述の非特許文献2に報告されている。その実験結果によると、150keVのプロトンのフラックスが、略0.1ps以下のパルス幅と、略1016W/cmの“中程度”の強度を有して且つ台50と同様のターゲット台上に形成された厚さ1mmのアイスフィラメントターゲットTに入射するレーザ光パルス毎に生成される。レーザ光パルスと固体非フィラメントターゲットとの従来の相互作用から同じエネルギーのプロトンを生成するためには、レーザパルスは典型的に、略1017W/cmの強度を要し、これはターゲットTを用いた場合に必要とされる強度よりも略一桁大きい。
【0064】
本発明の一部実施形態では、ビームユニット30は、1016W/cm、1017W/cm、1018W/cm、1019W/cm、1020W/cmのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きい最大強度に、ビーム放射32をフォーカスする。
【0065】
図5は、本発明のシステムの一例の構成を示し、ビームユニットは、焦点領域に放射ビームをフォーカスするように構成され動作する誘電体ミラー及び軸外パラボラミラー(例えば金コーティング)との配置構成を備える。
【0066】
図6A〜図6Cは、本発明の一実施形態による高速イオンを発生させるプロセスを概略的に示す。この特定の非限定的な例では、略50MeVのエネルギーを有する高速プロトンが本発明のシステム20によって生成されるが、ここで、放射ビーム32(例えばレーザ光パルス)は、800nmの波長、略0.1psのパルス幅、及び焦点面内における略5×1019W/cmの強度(ターゲットOPT40の焦点領域60にフォーカスされた際)を有するものとする。焦点領域60にフォーカスされた際に最大10−3のコントラスト比(プレパルス強度対メインパルス強度の比)であるとすると、プレパルス33は、最大1016W/cmに等しい強度を有する。従って、プレパルスのエネルギー及び焦点面の位置を、一方では結合に十分なビームの所望のエネルギーで相互作用を提供するように適切に調節し、他方では焦点面のエネルギーがパターン特徴部を破壊しないよう高くなり過ぎないように適切に調節しなければならない点は理解されたい。
【0067】
図6Aは、放射ビームとOPT20との間の相互作用の直前の本発明のシステム20を概略的に示す。
【0068】
図6Bは、プレパルス33がアブレーション及びイオン化を行い焦点領域60内のパターン化ナノスケール特徴部42を有する“焼き払われた”層を生じさせて、シェーディングされた領域62によって表されるサブ臨界密度プラズマを残した後の本発明のシステム20を概略的に示す。プラズマ62は、焦点領域60内のナノスケール特徴部42のアブレーションされずに残った領域64を覆う。この図面では、レーザパルス32はちょうど焦点領域60に入射している。プラズマ62はサブ臨界なので、レーザパルス32に実質的に影響しない。
【0069】
図6Cは、本発明の一実施形態によりアブレーションされていない領域64内においてナノスケール特徴部と相互作用して、一団の破線の矢印68によって概略的に表されるプロトンのフラックスを生じさせるレーザパルス32を概略的に示す。
【0070】
表面パターンが、サブ共鳴ナノスケール特徴部42(例えば表面パターンの幅がパルス32の光の波長よりもはるかに小さい)を有するので、所定の時点におけるパルスの電場は、表面パターン内部及びその近傍において実質的に一定である。特定の理論に縛られるものではないが、前述のように、本発明者は、表面パターンが、電場内においてその電場と平行な導電性ニードルと同様に機能して、その先端部に電場を集中させて、複数の配向ナノスケール特徴部42の集中した電場が、高速プロトンの比較的大きなフラックスの発生に対して特に有利であると考えている。挿入図70は、パルスの光の波長λよりも小さなパルス32の局所領域の電場内のナノスケール特徴部42を概略的に示す。ブロック矢印72は、特徴部42付近の光パルス32の電場を表し、特徴部の先端部74に向けて収束している破線の力線76は、先端部に集中した電場を概略的に表す。
【0071】
集中した電場76は、円80によって概略的に示されるホット電子のプルームを発生させ、そのホット電子は、特徴部内の水素及び酸素原子(図示せず)をイオン化することによって、その先端部74近傍において特徴部42から出て行く。特徴部42内の電子及びイオン化原子のプルームは、一団の矢印68によって表されるプロトンのフラックスを生じさせる比較的高いエネルギーにフィラメント中の水素イオンを加速させる強力な二重層電場(図示せず)を形成する。
【0072】
光パルス32がOPT40との相互作用によって高速イオン68を発生させる効率(図3)は、OPT40中のナノスケール特徴部の配向方向44に対するパルス32中の光の偏光方向34に応じたものである点に留意されたい。例えば、上述のように、光パルスは、方向34と特徴部の配向方向44が平行でありそれらの間の角度が小さい場合に、プロトン等の高速イオンのフラックスを生じさせるのに特に有効である。本発明の一部実施形態では、本発明のシステム20によって生成されるイオンの強度及び/又はエネルギーは、特徴部の配向方向に対する偏光方向34の角度を制御することによって制御される。偏光34とフィラメントの配向方向44との間の正しい角度から離れるように偏光を回転させることによって、プロトンのエネルギーは減少すると予測される。従って、偏光方向とパターンの配向軸との間の角度を、最適値に適切に調節することができる。
【0073】
図7は、本発明の一実施形態により、特徴部の配向方向44から離れるように回転させたパルス32の偏光を概略的に示す。
【符号の説明】
【0074】
20 高速イオン発生システム
30 ビームユニット
32 パルス
33 プレパルス
34 偏光方向
40 OPT(配向パターン化ターゲット)
41 表面パターン層
42 ナノスケール特徴部
44 配向方向
50 ターゲット台
51 サファイヤ基板
52 冷却ユニット
54 Cu熱交換器ブロック
55 電源
56 バイアス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速イオンのビームを発生させるシステムであって、
共通軸に沿って実質的に均一に配向したナノスケールのパターン特徴部を備えたパターンのパターン化表面を有するターゲット基板と、
高出力コヒーレントの電磁放射ビームを受光して、該電磁放射ビームを前記ターゲット基板のパターン化表面上にフォーカスして、高速イオンの生成を可能にする前記電磁放射ビームと前記ターゲット基板との間の相互作用を生じさせるように構成されたビームユニットとを備えたシステム。
【請求項2】
前記ビームユニットが、所定のグレージング角で前記ターゲット基板のパターン化表面上に前記電磁放射ビームを向けるように構成されていて、前記グレージング角が、前記相互作用が所望の高運動エネルギーの高速イオンの生成を可能にするのに十分な前記電磁放射ビームと前記ターゲット基板との間の結合を提供するように、前記パターンに従って選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記グレージング角が45°以下である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記グレージング角が略20°〜40°の範囲内である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記電磁放射ビームが所定の偏光方向を有し、該偏光方向が、前記相互作用が所望の高運動エネルギーを有する高速イオンの生成を可能にするのに十分な前記電磁放射ビームと前記ターゲット基板との間の結合を提供するように選択された前記偏光方向と前記ターゲット基板のパターン特徴部の配向軸との間の特定の角度を定める、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏向方向と前記配向軸との間の角度が0°〜30°の範囲内である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記偏向方向が前記配向軸と実質的に平行である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記ターゲット基板のパターン化表面が連続的な表面であり、前記パターンが溝を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ナノスケールのパターン特徴部が離散的なナノ構造を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ナノ構造が細長である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ナノ構造がフィラメント又はナノワイヤである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィラメントがアイスフィラメントである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ターゲット基板が、サファイヤ、シリコン、炭素、又はプラスチック材料のうち少なくとも一つで形成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ターゲット基板が、水蒸気と基板とを該基板にわたるバイアス電場下において真空チャンバ内で相互作用させることによって、前記バイアス電場に沿って配向したナノスケールの特徴部を形成することによって形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ビームユニットが、1016W/cm、1017W/cm、1018W/cm、1019W/cm、1020W/cmのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きい最大強度を有する前記ターゲット基板内のスポットサイズに前記電磁放射ビームをフォーカスするように構成されていて動作する、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記高速イオンが、5MeV、50MeV、100MeV、150MeM、200MeMのうち少なくとも一つと略等しいか又はよりも大きい運動エネルギーを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記高速イオンがプロトンを備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記高速イオンが酸素イオンを備える、請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
高出力偏光コヒーレントの電磁放射ビームでターゲット基板を照射するステップを備えた高速イオンを発生させる方法であって、前記ターゲット基板が、共通の配向軸に沿って実質的に均一に配向したナノスケールのパターン特徴部を備えたパターンのパターン化表面を有し、前記パターンと前記電磁放射ビームの少なくとも一つのパラメータとの間の関係が、前記電磁放射ビームと前記ターゲット基板のパターン化表面との間の相互作用が高速イオンビームの発生をもたらすのに十分な前記電磁放射ビームと前記ターゲット基板との間の結合を提供するように、前記電磁放射ビームの偏光方向と前記配向軸との間の角度、及び前記電磁放射ビームの入射角のうち少なくとも一方を選択することによって、最適化される、方法。
【請求項20】
前記高出力偏光コヒーレントの電磁放射ビームを受光するステップと、前記電磁放射ビームを所望のグレージング角で前記ターゲット基板の表面上に向けるステップとを備えた請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水蒸気と基板とを該基板にわたるバイアス電場下において真空チャンバ内で相互作用させることによって、前記バイアス電場に沿った実質的に一様な所定の方向に配向したナノスケールの特徴部を有するパターンのパターン化基板状のターゲットを形成することによって、前記ターゲット基板を形成するステップを備えた請求項19又は20に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−513085(P2012−513085A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541715(P2011−541715)
【出願日】平成21年12月20日(2009.12.20)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001201
【国際公開番号】WO2010/070648
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503083166)イサム・リサーチ・デベロツプメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシテイ・オブ・エルサレム・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】