説明

高速伝送ケーブル

【課題】高速伝送ケーブル自体が結露しても減衰量の低下を防止することが可能な高速伝送ケーブルを提供する。
【解決手段】高速伝送ケーブル1は、テープ外層4とテープ内層2とを有し、少なくともテープ外層4の構成として第一耐湿層14を設ける。高速伝送ケーブル1は、これを構成する編組5よりも内側に絶縁線心7を配置してなるもので、この絶縁線心7の絶縁体9に対しては、テープ内層2の中で第二金属箔層10を第二プラスチック層11や第二耐湿層12よりも近くに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿性を有する高速伝送ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、幾つかの種類の高速伝送ケーブルが開示されている。そのうちの二種類について、以下説明する。
【0003】
一つ目の高速伝送ケーブルは、IEEE1394通信ケーブルであって、ツイストペア線を二本撚り合わせるとともに、この外側を絶縁テープで被覆し、さらにこの外側を編組(シールド部材)及びシースで被覆することにより形成されている。すなわち、二本のツイストペア線と、絶縁テープと、編組と、シースとにより構成されている。ツイストペア線は、中心導体と、この中心導体を被覆する絶縁体と、を備える絶縁線心を二本撚り合わせてなるものであり、絶縁線心の外側には、金属テープ及び編組が設けられている(下記特許文献1の図3(a)参照)。
【0004】
二つ目の高速伝送ケーブルは、中心導体と、この中心導体を被覆する絶縁体と、絶縁体の周囲に巻き付けられる外部導体と、この外側に設けられる絶縁外皮と、を備える信号線を四本纏めて撚り合わせ、これによりカッド(Quad Cable:四本撚り線型)構造に構成し、そしてこの外側を絶縁テープで被覆し、さらに外側を編組(シールド部材)及びシースで被覆することにより形成されている。すなわち、四本の信号線と、絶縁テープと、編組と、シースとにより構成されている(下記特許文献1の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−34341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高速伝送ケーブルの一般的な使用例としては、例えばテレビ、ビデオをつなぐHDMIケーブル、IEEE1394ケーブル等が挙げられる。このような一般的に使用される高速伝送ケーブルにあっては、使用環境温度が常温レベル(−10℃〜40℃程度)であることから、高温高湿下にてケーブルが結露してしまう程の劣悪な環境で使用されることは想定されてない。しかしながら、車載用として車両に配索する場合、車両内部は場所によって常温以上に温度が上昇してしまうことから、最悪条件として高速伝送ケーブル自体が結露する環境下で使用されるという可能性を有している。
【0007】
本願発明者は、高速伝送ケーブル自体が結露した場合において、高周波領域での減衰量低下があることを見出している。減衰量低下の原因としては、水分がケーブル外装としてのシースを通り、金属テープ内側や絶縁体内部に入り込んでしまうことが挙げられる。
【0008】
金属テープと絶縁体との間に水分が入り込んでしまうと、この場合、静電容量が高くなって、高周波においては減衰量が悪化してしまうことになる(静電容量が高くなることにより、絶縁体から金属テープへのインピーダンスが低くなり、信号の漏れ量が増えてしまうためである)。また、水分が絶縁体内部に入り込んでしまうと、この場合、絶縁体自体の静電容量が高くなって、高周波においては減衰量が悪化してしまうことになる(上記と同じに信号の漏れ量が増えてしまうためである)。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、高速伝送ケーブル自体が結露しても減衰量の低下を防止することが可能な高速伝送ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の高速伝送ケーブルは、シールド部材として編組を構成に含む高速伝送ケーブルにおいて、第一プラスチック層と第一金属箔層とを含むテープ状のものを前記編組の内側又は外側の所定位置に巻き付けてなるテープ外層、及び、第二プラスチック層と第二金属箔層とを含むテープ状のものを前記テープ外層よりも内側の所定位置に巻き付けてなるテープ内層、の二層構造を備え、且つ、少なくとも前記第一プラスチック層における前記第一金属箔層の配設反対側に第一耐湿層を設け、且つ、前記編組よりも内側に配置される絶縁線心の絶縁体に対し前記第二金属箔層を前記第二プラスチック層よりも近くに配置することを特徴とする。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、テープ外層における特に第一耐湿層にて水分がシャットアウトされ、これによりテープ内層における第二金属箔層まで水分が浸入することはない。従って、絶縁線心の絶縁体に水分が入り込むことや、絶縁体と第二金属箔層との間に水分が入り込むことはない。本発明は、テープ外層とテープ内層とを有する二層構造にすることにより、浸入してくる水分量を抑えることが可能になるのは勿論のこと、例えば線心−GND間の静電容量をこの評価前後において変化がないようにすることも可能になる。
【0012】
請求項2記載の本発明の高速伝送ケーブルは、請求項1に記載の高速伝送ケーブルにおいて、前記第一耐湿層をホットメルト接着剤の層により形成するとともに、前記第二プラスチック層における前記第二金属箔層の配設反対側に第二耐湿層を設ける場合も、該第二耐湿層をホットメルト接着剤の層により形成することを特徴とする。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、ホットメルト接着剤の層が第一耐湿層や第二耐湿層となる。水分はホットメルト接着剤の層によりシャットアウトされ、これよりも内側への浸入が防止される。
【0014】
請求項3記載の本発明の高速伝送ケーブルは、請求項1又は請求項2に記載の高速伝送ケーブルにおいて、前記絶縁線心を二本撚り合わせてツイストペア線を形成しこれを二本撚り合わせる構造により前記編組の内側を形成する、又は、前記絶縁線心を四本撚り合わせるカッド構造により前記編組の内側を形成することを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、ツイストペア線を二本撚り合わせる構造や、カッド構造を有する高速伝送ケーブルに耐湿性(耐湿度性)を持たせることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、高速伝送ケーブルに耐湿性を持たせることができるという効果を奏する。従って、高速伝送ケーブル自体が結露しても減衰量の低下を防止することができるという効果を奏する。この他、本発明によれば、本発明の高速伝送ケーブルを用いることにより、高湿度下にての高速伝送システムの稼働を安定させることができるという効果を奏する。具体的には、本発明の高速伝送ケーブルにより通信エラーを無くすことができるという効果を奏する。また、耐湿性を向上させていることから、高速伝送ケーブルの長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載された本発明によれば、第一耐湿層や第二耐湿層をホットメルト接着剤の層で形成することにより、十分な耐湿性を確保することができるという効果を奏する。
【0018】
請求項3に記載された本発明によれば、ツイストペア線を二本撚り合わせる構造や、カッド構造を有する高速伝送ケーブルに適用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図(実施例1)である。
【図2】本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図(実施例2)である。
【図3】本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図(実施例3)である。
【図4】本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図(実施例4)である。
【図5】本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図(実施例5)である。
【図6】減衰量測定結果に係るグラフであり、(a)はSTP構造の場合のグラフ、(b)はSTQ構造の場合のグラフである。
【図7】静電容量測定結果に係るグラフであり、(a)は線心−GND間の静電容量のグラフ、(b)は線心間の静電容量のグラフである。
【図8】実施例5の減衰量測定結果に係るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
高速伝送ケーブルは、テープ外層とテープ内層とを有し、少なくともテープ外層の構成として第一耐湿層を設ける。高速伝送ケーブルは、これを構成する編組よりも内側に絶縁線心を配置してなるもので、この絶縁線心の絶縁体に対しては、テープ内層の中で第二金属箔層を第二プラスチック層(や第二耐湿層)よりも近くに配置する。
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照しながら第1の実施例を説明する。図1は本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図である。
【0022】
図1において、本発明の高速伝送ケーブル1は、テープ内層2を含むツイストペア線3を二本撚り合わせるとともに、この外側をテープ外層4で被覆し、さらにこの外側を編組5(シールド部材)及びシース6で被覆することにより形成されている。高速伝送ケーブル1は、二層構造となるテープ内層2及びテープ外層4を含んで構成されている。テープ内層2及びテープ外層4は、高速伝送ケーブル1に耐水性を持たせるために有用な構成となっている。
【0023】
高速伝送ケーブル1は、テープ内層2及びテープ外層4を含むことにより、車載用として車両に配索することができるようなものになっている。高速伝送ケーブル1は、最悪条件としてこれ自体が結露する環境下で使用できるようなものになっている(これらに関してはこの後の説明で分かるようになる)。
【0024】
ツイストペア線3は、絶縁線心7を二本撚り合わせてなるものであって、この絶縁線心7は中心導体8と、中心導体8を被覆する絶縁体9とを備えて構成されている。中心導体8及び絶縁体9は、公知のものが用いられている。
【0025】
テープ内層2は、絶縁線心7を二本撚り合わせた上に巻き付けられるテープ状のものであって、絶縁体9に近い順に構成を挙げると、第二金属箔層10、第二プラスチック層11、及び第二耐湿層12を有している。テープ内層2は、上記の各層を積層状態にして形成されている。テープ内層2の巻き方は、本実施例においてスパイラルとなる巻き方が採用されており、絶縁体9の外面が露出しないようになっている。
【0026】
第二金属箔層10は、金属箔からなる層状の部分として形成されている。金属箔としては、本実施例においてアルミニウム箔が採用されている。アルミニウム箔は、10μm〜15μm程度の厚みのものが用いられている(厚みは一例であるものとする)。
【0027】
第二プラスチック層11は、プラスチックからなる層状の部分として形成されている。プラスチックとしては、本実施例においてPET(ポリエチレンテレフタレート)が採用されている。第二プラスチック層11は、12μm〜16μm程度の厚みのものが用いられている(厚みは一例であるものとする)。
【0028】
第二耐湿層12は、耐湿性のある層状の部分として形成されている。第二耐湿層12は、本実施例においてホットメルト接着剤の層が採用されている(耐湿性のある接着剤であればホットメルト接着剤に限らないものとする)。ホットメルト接着剤の層は、3μm程度の厚みとなるように形成されている(厚みは一例であるものとする)。
【0029】
このようなテープ内層2の外側には、テープ部材13が被覆されている。テープ部材13は、ホットメルト接着剤の層からなる第二耐湿層12の上に巻き付けられる部材であって、例えばPEテープやPSテープが採用されている。テープ部材13は、二本の絶縁線心7を所定のピッチで撚り合わせし易くするために設けられている(第二耐湿層12を外側にして撚り合わせるよりも格段に効果的である)。
【0030】
テープ外層4は、ツイストペア線3を二本撚り合わせた上に巻き付けられるテープ状のものであって、絶縁体9に近い順に構成を挙げると、第一耐湿層14、第一プラスチック層15、及び第一金属箔層16を有している。テープ外層4は、上記の各層を積層状態にして形成されている。テープ外層4の巻き方は、本実施例においてスパイラルとなる巻き方が採用されている。
【0031】
第一耐湿層14は、耐湿性のある層状の部分として形成されている。第一耐湿層14は、本実施例においてホットメルト接着剤の層が採用されている(耐湿性のある接着剤であればホットメルト接着剤に限らないものとする)。ホットメルト接着剤の層は、3μm程度の厚みとなるように形成されている(厚みは一例であるものとする)。第一耐湿層14は、本実施例において上記第二耐湿層12と同じものとなっている。
【0032】
第一プラスチック層15は、プラスチックからなる層状の部分として形成されている。プラスチックとしては、本実施例においてPET(ポリエチレンテレフタレート)が採用されている。第一プラスチック層15は、12μm〜16μm程度の厚みのものが用いられている(厚みは一例であるものとする)。第一プラスチック層15は、本実施例において上記第二プラスチック層11と同じものとなっている。
【0033】
第一金属箔層16は、金属箔からなる層状の部分として形成されている。金属箔としては、本実施例においてアルミニウム箔が採用されている。アルミニウム箔は、10μm〜15μm程度の厚みのものが用いられている(厚みは一例であるものとする)。第一金属箔層16は、本実施例において上記第二金属箔層10と同じものとなっている。
【0034】
編組5は、導電性を有する細径線を編み込むことによって形成されている。シース6は、ケーブル外装として設けられている。編組5及びシース6は、公知のものが用いられている。
【0035】
上記構成において、高速伝送ケーブル1の構成を内側から外側へ順に挙げるとすると、中心導体8、絶縁体9、テープ内層2、テープ部材13、テープ外層4、編組5、シース6となっている。また、テープ内層2は、内側から第二金属箔層10、第二プラスチック層11、第二耐湿層12となっている。第二金属箔層10は、絶縁体9に接するように配設されている。また、テープ外層4は、内側から第一耐湿層14、第一プラスチック層15、第一金属箔層16となっている。第一金属箔層16は、編組5に接するように配設されている。
【実施例2】
【0036】
以下、図2を参照しながら第2の実施例を説明する。図2は本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
図2において、本発明の高速伝送ケーブル21は、テープ内層2を含むツイストペア線3を二本撚り合わせるとともに、この外側を編組5で被覆し、さらにこの外側をテープ外層4及びシース6で被覆することにより形成されている。高速伝送ケーブル21は、二層構造となるテープ内層2及びテープ外層4を含んで構成されている。テープ内層2及びテープ外層4は、高速伝送ケーブル21に耐水性を持たせるために有用な構成となっている。
【0038】
高速伝送ケーブル21は、テープ内層2及びテープ外層4を含むことにより、車載用として車両に配索することができるようなものになっている。高速伝送ケーブル21は、最悪条件としてこれ自体が結露する環境下で使用できるようなものになっている(これらに関してはこの後の説明で分かるようになる)。
【0039】
高速伝送ケーブル21は、実施例1の高速伝送ケーブル1と比べると、テープ外層4自体の配置、及びテープ外層4の構成位置が異なっている(構成位置は下記参照)。
【0040】
高速伝送ケーブル21の構成を内側から外側へ順に挙げるとすると、中心導体8、絶縁体9、テープ内層2、テープ部材13、編組5、テープ外層4、シース6となっている。また、テープ内層2は、内側から第二金属箔層10、第二プラスチック層11、第二耐湿層12となっている。第二金属箔層10は、絶縁体9に接するように配設されている。また、テープ外層4は、内側から第一金属箔層16、第一プラスチック層15、第一耐湿層14となっている。第一金属箔層16は、編組5に接するように配設されている。
【実施例3】
【0041】
以下、図3を参照しながら第3の実施例を説明する。図3は本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図3において、本発明の高速伝送ケーブル31は、中心導体32と、この中心導体32を被覆する絶縁体33とを備える絶縁線心34を四本纏めて撚り合わせ、これによりカッド(Quad Cable:四本撚り線型)構造に構成し、そしてこの外側をテープ内層2及びテープ外層4で被覆し、さらに外側を編組5及びシース6で被覆することにより形成されている。高速伝送ケーブル31は、二層構造となるテープ内層2及びテープ外層4を含んで構成されている。テープ内層2及びテープ外層4は、高速伝送ケーブル31に耐水性を持たせるために有用な構成となっている。
【0043】
高速伝送ケーブル31は、テープ内層2及びテープ外層4を含むことにより、車載用として車両に配索することができるようなものになっている。高速伝送ケーブル31は、最悪条件としてこれ自体が結露する環境下で使用できるようなものになっている(これらに関してはこの後の説明で分かるようになる)。
【0044】
絶縁線心34を構成する中心導体32及び絶縁体33は、公知のものが用いられている。
【0045】
テープ内層2は、カッド構造の上に巻き付けられるテープ状のものであって、絶縁体33に近い順に構成を挙げると、第二金属箔層10、第二プラスチック層11、及び第二耐湿層12となっている。テープ内層2は、これをカッド構造の上に巻き付けることにより、絶縁体33の外面が露出しないようになっている(テープ内層2の巻き方は、本実施例においてスパイラルとなる巻き方が採用されている)。
【0046】
このようなテープ内層2の上に巻き付けられるテープ状のテープ外層4は、絶縁体33に近い順に構成を挙げると、第一耐湿層14、第一プラスチック層15、及び第一金属箔層16となっている。テープ外層4の巻き方は、本実施例においてスパイラルとなる巻き方が採用されている。
【0047】
上記構成において、高速伝送ケーブル31の構成を内側から外側へ順に挙げるとすると、中心導体32、絶縁体33、テープ内層2、テープ外層4、編組5、シース6となっている。また、テープ内層2は、内側から第二金属箔層10、第二プラスチック層11、第二耐湿層12となっている。第二金属箔層10は、絶縁体33に接するように配設されている。また、テープ外層4は、内側から第一耐湿層14、第一プラスチック層15、第一金属箔層16となっている。第一金属箔層16は、編組5に接するように配設されている。
【実施例4】
【0048】
以下、図4を参照しながら第4の実施例を説明する。図4は本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図である。尚、上記実施例3と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図4において、本発明の高速伝送ケーブル41は、中心導体32と、この中心導体32を被覆する絶縁体33とを備える絶縁線心34を四本纏めて撚り合わせ、これによりカッド(Quad Cable:四本撚り線型)構造に構成し、そしてこの外側を編組5で被覆し、さらに外側をテープ内層2、テープ外層4、及びシース6で被覆することにより形成されている。高速伝送ケーブル41は、二層構造となるテープ内層2及びテープ外層4を含んで構成されている。テープ内層2及びテープ外層4は、高速伝送ケーブル41に耐水性を持たせるために有用な構成となっている。
【0050】
高速伝送ケーブル41は、テープ内層2及びテープ外層4を含むことにより、車載用として車両に配索することができるようなものになっている。高速伝送ケーブル41は、最悪条件としてこれ自体が結露する環境下で使用できるようなものになっている(これらに関してはこの後の説明で分かるようになる)。
【0051】
高速伝送ケーブル41は、実施例3の高速伝送ケーブル31と比べると、テープ内層2及びテープ外層4の配置が異なっている。すなわち、テープ内層2及びテープ外層4は、編組5の外側に配置されている(テープ外層4が外)。
【0052】
上記構成において、高速伝送ケーブル41の構成を内側から外側へ順に挙げるとすると、中心導体32、絶縁体33、編組5、テープ内層2、テープ外層4、シース6となっている。また、テープ内層2は、内側から第二金属箔層10、第二プラスチック層11、第二耐湿層12となっている。第二金属箔層10は、編組5に接するように配設されている(第二金属箔層10は絶縁体33に近い)。また、テープ外層4は、内側から第一耐湿層14、第一プラスチック層15、第一金属箔層16となっている。第一金属箔層16は、シース6に接するように配設されている。
【実施例5】
【0053】
以下、図5を参照しながら第5の実施例を説明する。図5は本発明の高速伝送ケーブルを示す構成図である。尚、上記実施例3、4と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
図5において、本発明の高速伝送ケーブル51は、中心導体32と、この中心導体32を被覆する絶縁体33とを備える絶縁線心34を四本纏めて撚り合わせ、これによりカッド(Quad Cable:四本撚り線型)構造に構成し、そしてこの外側をテープ内層52で被覆し、さらに外側を編組5、テープ外層4、及びシース6で被覆することにより形成されている。高速伝送ケーブル51は、二層構造となるテープ内層52及びテープ外層4を含んで構成されている。テープ内層52及びテープ外層4は、高速伝送ケーブル51に耐水性を持たせるために有用な構成となっている。
【0055】
高速伝送ケーブル51は、テープ内層52及びテープ外層4を含むことにより、車載用として車両に配索することができるようなものになっている。高速伝送ケーブル51は、最悪条件としてこれ自体が結露する環境下で使用できるようなものになっている。
【0056】
高速伝送ケーブル51は、実施例3及び実施例4の高速伝送ケーブル31と比べると、テープ内層52の構成がテープ内層2の構成と異なっている。また、テープ内層52及びテープ外層4の配置も異なっている。テープ内層52は編組5の内側、テープ外層4は編組5の外側に配置されている。
【0057】
テープ内層52は、カッド構造の外側の編組5に巻き付けられるテープ状のものであって、絶縁体33に近い順に構成を挙げると、第二金属箔層10及び第二プラスチック層11となっている(他の例と同様に第二耐湿層12を設けてもよいものとする)。テープ内層52は、編組5が露出しないように巻き付けられている(テープ内層52の巻き方は、本実施例においてスパイラルとなる巻き方が採用されている。尚、テープ外層4の巻き方はスパイラル又は縦添えのいずれであってもよいものとする。本実施例において、テープ外層4の巻き方は縦添えが採用されている)。
【0058】
上記構成において、高速伝送ケーブル51の構成を内側から外側へ順に挙げるとすると、中心導体32、絶縁体33、テープ内層52、編組5、テープ外層4、シース6となっている。また、テープ内層52は、内側から第二金属箔層10、第二プラスチック層11となっている。第二金属箔層10は、絶縁体33に接するように配設されている。また、テープ外層4は、内側から第一金属箔層16、第一プラスチック層15、第一耐湿層14となっている。第一金属箔層16は、編組5に接するように配設されている。
【0059】
以上、図1ないし図5を参照しながら説明してきたように、テープ外層4における特に第一耐湿層14にて水分がシャットアウトされ、これによりテープ内層2(52)における第二金属箔層10まで水分が浸入することはない。従って、絶縁線心7(34)の絶縁体9(33)に水分が入り込むことや、絶縁体9(33)と第二金属箔層10との間に水分が入り込むことはない。
【0060】
水分が入り込まないようにするため、従来の高圧ケーブルを例に挙げると、この高圧ケーブルに一層となる遮水テープの層を設けることが有効であり、これは周知となっている。ところで実験を行った結果、絶縁体内部に水分が入り込まない場合であっても減衰量の低下が見られた。これは、水分が絶縁体上のシールド層(遮水テープの金属箔層)に到達した時点で起こることが分かった。従って、上記高圧ケーブルのように遮水テープを施す場合でも、絶縁体に接する遮水テープのシールド層に水分が到達しないようにしなければ、高周波における減衰量低下を防ぐことができないことになる。以下、もう少し具体的に説明する。
【0061】
図6は減衰量測定結果に係るグラフであり、図6(a)はSTP構造の場合のグラフ、図6(b)はSTQ構造の場合のグラフを示している。尚、図6(a)におけるSTP構造とは、シールド部材として編組を構成に含むとともに、絶縁線心を二本撚り合わせてツイストペア線を形成しこれを二本撚り合わせる構造を指すものとする。また、図6(b)におけるSTQ構造とは、シールド部材として編組を構成に含むとともに、絶縁線心を四本撚り合わせるカッド構造を指すものとする。測定はネットワークアナライザーを使用するものとする。
【0062】
図6(a)には、STP構造を有する高速伝送ケーブルの減衰量測定結果として、初期状態のもの(遮水テープなし)、この初期状態のものを耐湿性試験にかけたもの、上記実施例1のテープ内層2の位置(No.1の位置とする)のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの、上記実施例1のテープ外層4の位置(No.2の位置とする)のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの、及び、上記実施例1のNo.1及びNo.2の位置に遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの(遮水テープ二重)、が示されている。尚、遮水テープとは、金属箔層(アルミ箔層)とプラスチック層(PET層)とで構成されるものであるものとする。
【0063】
一方、図6(b)には、STQ構造を有する高速伝送ケーブルの減衰量測定結果として、初期状態のもの(遮水テープなし)、この初期状態のものを耐湿性試験にかけたもの、遮水テープ(一重)を設け耐湿性試験にかけたもの、遮水テープ(二重)を設け耐湿性試験にかけたもの、が示されている。
【0064】
図6の減衰量測定結果から分かることは、遮水テープを二重に施したものは減衰量の悪化を抑えることができるということである。
【0065】
次に、絶縁体の水分量を測定した結果について表1を参照しながら説明する。表1には、STP構造を有する高速伝送ケーブルにおける絶縁体の水分量測定結果として、初期状態のもの(遮水テープなし)、この初期状態のものを耐湿性試験にかけたもの、上記No.1の位置のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの、上記No.2の位置のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの、及び、上記No.1及びNo.2の位置に遮水テープを設け耐湿性試験にかけたもの(遮水テープ二重)、が示されている。
【0066】
【表1】

【0067】
水分量350ppm以下であれば問題無しとすると、遮水テープ二重の構造が有効であるということが分かる(338.6ppm<350ppm)。
【0068】
ここで、上記No.2の位置のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたものの結果を見ると、400.5ppmであることから、No.1の位置のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたものと比べると格段に水分量が抑えられていると言える。しかしながら、No.2の位置のみに遮水テープを設け耐湿性試験にかけたものは、次の点で劣っていると言える。これは、図7を参照しながら次に説明する静電容量測定結果から分かる。
【0069】
図7は静電容量測定結果に係るグラフであり、図7(a)は線心−GND間の静電容量のグラフ、図7(b)は線心間の静電容量のグラフである。尚、図7中のRは絶縁体が赤色の絶縁線心を、Gは絶縁体が緑色の絶縁線心を、Lは絶縁体が青色の絶縁線心を、Oは絶縁体がオレンジ色の絶縁線心を、それぞれ指すものとする。線心−GND間の静電容量とは、各絶縁線心と編組との間の静電容量を指すものとする。また、線心間の静電容量とは、例えば図7(b)中のR/Gであると、絶縁体が赤色及び緑色の絶縁線心間の静電容量を指すものとする。測定はLCRメータを使用するものとする。
【0070】
図7(b)の静電容量測定結果から分かることは、遮水テープが一重であっても線心間の静電容量に変化が見られないことである。しかしながら、図7(a)の静電容量測定結果を見ると、遮水テープが一重では線心−GND間の静電容量に変化が出てしまうと言うことが分かる。これは、遮水テープの金属箔層と絶縁体との間に水分が入り込み、結果、静電容量が増加したと考えられる。従って、以上のことを鑑みると、遮水テープ二重の構造が必要不可欠であると言える。
【0071】
本発明は、テープ内層2(52)及びテープ外層4を有することにより、遮水テープ二重の構造と同様の二層の構造になることから、また、水分のシャットアウトに特に有効な第一耐湿層14や、第二耐湿層12を有することから、高周波における減衰量低下を防ぐことができると言える。
【0072】
図8は上記実施例5の減衰量測定結果に係るグラフである。評価に関しては、60℃、湿度90%、評価時間96hであり、テープ外層4の巻き方は縦添えするものとする。図8は、n数が3の初期状態と評価後の結果であり、この結果は、ほぼ重なり合って太線のようなグラフになっている。つまり、実施例5の高速伝送ケーブル51は、減衰量の悪化を抑えることができるということが分かる。
【0073】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の活用例として自動車分野が一例として挙げられる。本発明は、高温高湿下にてケーブルが結露してしまう程の劣悪な環境で使用される各種分野に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1…高速伝送ケーブル
2…テープ内層
3…ツイストペア線
4…テープ外層
5…編組(シールド部材)
6…シース
7…絶縁線心
8…中心導体
9…絶縁体
10…第二金属箔層
11…第二プラスチック層
12…第二耐湿層
13…テープ部材
14…第一耐湿層
15…第一プラスチック層
16…第一金属箔層
21…高速伝送ケーブル
31…高速伝送ケーブル
32…中心導体
33…絶縁体
34…絶縁線心
41…高速伝送ケーブル
51…高速伝送ケーブル
52…テープ内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド部材として編組を構成に含む高速伝送ケーブルにおいて、
第一プラスチック層と第一金属箔層とを含むテープ状のものを前記編組の内側又は外側の所定位置に巻き付けてなるテープ外層、及び、第二プラスチック層と第二金属箔層とを含むテープ状のものを前記テープ外層よりも内側の所定位置に巻き付けてなるテープ内層、の二層構造を備え、
且つ、少なくとも前記第一プラスチック層における前記第一金属箔層の配設反対側に第一耐湿層を設け、
且つ、前記編組よりも内側に配置される絶縁線心の絶縁体に対し前記第二金属箔層を前記第二プラスチック層よりも近くに配置する
ことを特徴とする高速伝送ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の高速伝送ケーブルにおいて、
前記第一耐湿層をホットメルト接着剤の層により形成するとともに、前記第二プラスチック層における前記第二金属箔層の配設反対側に第二耐湿層を設ける場合も、該第二耐湿層をホットメルト接着剤の層により形成する
ことを特徴とする高速伝送ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の高速伝送ケーブルにおいて、
前記絶縁線心を二本撚り合わせてツイストペア線を形成しこれを二本撚り合わせる構造により前記編組の内側を形成する、又は、前記絶縁線心を四本撚り合わせるカッド構造により前記編組の内側を形成する
ことを特徴とする高速伝送ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−287355(P2010−287355A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138754(P2009−138754)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】