説明

高速度ビデオカメラ

【課題】従来のビデオカメラにおいては、固体撮像素子の露光制御線とメモリ転送制御線が1本であり、ビデオカメラの撮影速度が全画素の読み出し時間が長くなる欠点があった。
【解決手段】本発明の高速度ビデオカメラは、夫々1つの光電変換素子とこの光電変換素子からの映像情報を一時的に記憶する1つの画素メモリとを有する画素を縦・横に複数個有する画素ブロックを縦・横に複数個有し、且つ上記画素ブロックの各画素の露光が異なる時刻になるよう制御する手段と、上記各画素ブロックの同じ番地に位置する画素の露光が同じ時刻になるよう制御する手段とを有する固体撮像素子より成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速度ビデオカメラ、特に、固体撮像素子を使用した高速度ビデオカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用などに使われているCMOS型あるいはCCD型固体撮像素子を用いた高速度かめらにおいては、高速度撮影の手段として、画素を高速度で走査し順次読み出すカメラ(第1の方式)を採るものがある。また画面を複数個の画素を有する画素ブロックに分けて各ブロック内の画素を並列に出力することができ、各ブロックを順次読み出すことによって高い撮影高度を得る方式(第2の方式)もある。また各画素の中に複数個のメモリを実装し露光時間ごとに異なるメモリに映像信号を記憶させ、後からこのメモリの信号を読み出すことによって、さらに高い撮影速度を得る方式(第3の方式)もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した公知の読み出し方式において、第1と第2の方式の撮影速度は全ての画素を順次読み出すことに要する時間によってほぼ決定される。第3の公知の読み出し方式では、撮影速度は露光時間と各画素の光電変換素子から画素内のメモリへ転送する時間によって決定される。この方式では全ての画素を読み出す時間は撮影速度に関係がないので高い撮影速度が得られるが、固体撮像素子は画素内のメモリへ転送すると同時に(全画素数)×(各画素のメモリの個数)の膨大な数のメモリを一斉に駆動して映像情報を1つ隣のメモリに転送しなければならない。この転送駆動を短時間に行うことは困難なため撮影速度は制限されている。
【0004】
本発明の目的は全ての画素を読み出す時間によって決まる制限をなくし、膨大な数のメモリを駆動する困難さによる制限をなくしてより高い撮影速度を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の高速度ビデオカメラは、夫々1つの光電変換素子とこの光電変換素子からの映像情報を一時的に記憶する1つの画素メモリとを有する画素を縦・横に複数個有する画素ブロックを縦・横に複数個有し、且つ上記画素ブロックの各画素の露光が異なる時刻になるよう制御する手段と、上記各画素ブロックの同じ番地に位置する画素の露光が同じ時刻になるよう制御する手段とを有する固体撮像素子より成ることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の高速度ビデオカメラは、上記固体撮像素子から読み出された1枚の映像を上記各画素ブロックの同じ番地に位置する画素ごとに分離し固体撮像素子の元の座標位置に配置した上で、空いた座標位置の映像信号を補間して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高速度ビデオカメラの撮影速度は画素ブロックの画素間の露光の時刻差によって決まり、全ての画素を読み出す時間には影響されない。この時刻差は露光開始から画素内のメモリへ映像信号を転送し終るまでの時間であり、ごく短い時間に設定することができるので非常に高い撮影速度が得られる。光電変換素子からメモリへ映像信号を同時に転送する数は撮像素子中の画素ブロック数に等しく、この数は少ないため転送駆動に困難さは発生しない。
【0008】
次に、本発明の高速度ビデオカメラは固体撮像素子から読み出された1枚の映像を各画素ブロックの同じ番地の画素ごとに取り出し固体撮像素子の元の座標位置に配置して、異なる露光時間の映像に分離する。この分離した映像は情報のない画素が多く存在するので、適切な画素補間方式によってこれら映像の空いた座標位置の映像情報を創り出す。この結果、非常に高い速度で撮影された映像を解像度を損なわずに得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の高速度ビデオカメラ基本ブロック図である。
【図2】本発明の固体撮像素子の各画素に番地がふられた1例を示す説明図である。
【図3】図2を例とした1つの画素ブロックの構造を示す説明図である。
【図4】本発明の固体撮像素子を動作させる時のタイミング説明図である。
【図5】本発明の高速度ビデオカメラ内の補間処理回路の処理手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の高速度ビデオカメラの基本ブロック図である。
【0012】
本発明おいては、被写体からの入射光を固体撮像素子1で撮影し、固体撮像素子1をカメラ制御回路4によって制御して高速度での撮影とその映像情報の読み出しを行うようにするとともに、この映像情報を記録回路2によって記録せしめる。ここでは図2に示すように縦4画素×横4画素を有する画素ブロックを縦256個×横256個有する縦1024画素×横1024画素の固体撮像素子1を例にとり本発明の実施例を説明する。各画素ブロックの縦4画素×横4画素の合計16画素に対して番地1から16を割り当て、画素ブロック中の座標位置が同じであれば同じ番地とする。
【0013】
図3は縦4画素×横4画素を有する1つの画素ブロックの構造を示す図であり、番地1の画素7から番地16の画素14までの各画素7〜14には光電変換素子5と、光電変換素子5からの映像情報を一時的に記憶する画素メモリ6とを有せしめる。
【0014】
本発明においては補間処理回路3をカメラ制御回路4により制御し、記録回路2から読み出された1枚の映像を各画素ブロックの同じ番地の画素ごとに分離し、固体撮像素子1の元の座標位置に配置した上で空いた座標位置の映像情報を補間して出力せしめる。
【0015】
まず、画素メモリ6は高速度で撮影する直前に、全画素のメモリクリア制御線25によって前に記憶された映像信号を消去する。図4は本発明の固体撮像素子1を動作させる時のタイミング図であり、全ての画素のメモリクリア時間を37で示す。この後、番地1の画素7の光電変換素子5から露光制御線17によって1枚目の映像信号を得る。露光終了の直後に、映像信号はメモリ転送制御線21によって光電変換素子5から画素メモリ6へ転送し記憶せしめる。番地1の画素の露光時間は38であり、番地1の画素のメモリ転送時間は39である。同様に、2枚目の映像信号は図3に示す露光制御線18とメモリ転送制御線22によって番地2の画素8の光電変換素子5から画素メモリ6へ転送し記憶せしめる。図4において番地2の画素の露光時間は40、番地2の画素メモリのメモリ転送時間は41である。同様に、3枚目から16枚目の映像信号は番地3の画素9から番地16の画素14までの画素メモリ6に記憶せしめる。制御は露光制御線19と、20と、27〜30およびメモリ転送制御線23と、24と、31〜34によって行なう。図4において番地3の画素の露光時間は42、番地15と番地16の画素の露光時間は44と46、番地3,15及び16の画素のメモリ転送時間は43、45及び47である。このようにして16枚の高速度の撮影が終わった後、図4の時刻T1から時刻T2までの1フレームの時間をかけて、全ての画素の映像信号を図3に示す行4mの読み出し制御線26ないし行4m+3の読み出し制御線35によって順次読み出す。ここでmは0から255の値をとる。
【0016】
図4において、時刻T0から時刻T1および時刻T1から時刻T2の時間は1フレームの時間であり、全ての画素を読み出すのに必要な時間を表す。また時刻t1から時刻t2の時間は露光時間の時刻差であり、時刻t1、t2、t3から時刻t16、t17まで等間隔である。この時刻差の逆数が撮影速度である。仮に1フレームの時間が1ミリ秒で露光時間の時刻差が1マイクロ秒とすれば、100万コマ毎秒の撮影速度で256画素×256画素分の16枚の映像情報が、1ミリ秒毎に1000回得られることになる。従来の固体撮像素子ないしカメラは全ての画素を読み出す時間によって撮影速度が決まっていたが、本発明のカメラの撮影速度は露光時間の時刻差によって決まる。
【0017】
先に述べたように、固体撮像素子1から読み出した映像情報は記録回路2に記憶する。図5では読み出された1フレームの映像を48で示す。補間処理回路3は記録回路2からこの映像48を得て、各画素ブロックの同じ番地の画素ごとに分離し固体撮像素子1の元の座標位置に配置する。その映像が図5に示す番地1の画素を分離した映像49、番地2の画素を分離した映像50および番地16の画素を分離した映像51である。次に補間処理回路3は空いた座標位置の映像情報を創り出す。これは映像49から補間処理で創りだされた映像52、映像50から補間処理で創り出された映像53及び映像51から補間処理で創り出された映像54などである。先の数字を例にとると、100万コマ毎秒の撮影速度で1024画素×1024画素相当の16枚の映像が出力できることになる。
【0018】
本発明の固体撮像素子においては従来の固体撮像素子の露光制御線とメモリ転送制御線を1本から複数本に増やすことにより飛躍的に高い撮影速度を得ているが、複数本の露光制御線とメモリ転送制御線をそれぞれ1本として扱えば、従来の固体撮像素子と同じ動作をさせることもでき、幅広い使い方が可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 固体撮像素子
2 記録回路
3 補間処理回路
4 カメラ制御回路
5 光電変換素子
6 画素メモリ
7 番地1の画素
8 番地2の画素
9 番地3の画素
10 番地4の画素
11 番地13の画素
12 番地14の画素
13 番地15の画素
14 番地16の画素
15 固体撮像素子の読み出し回路
16 画素ブロック
17 番地1の画素の露光制御線
18 番地2の画素の露光制御線
19 番地3の画素の露光制御線
20 番地4の画素の露光制御線
21 番地1の画素のメモリ転送制御線
22 番地2の画素のメモリ転送制御線
23 番地3の画素のメモリ転送制御線
24 番地4の画素のメモリ転送制御線
25 全画素のメモリクリア制御線
26 行4mの読み出し制御線
27 番地13の画素の露光制御線
28 番地14の画素の露光制御線
29 番地15の画素の露光制御線
30 番地16の画素の露光制御線
31 番地13の画素のメモリ転送制御線
32 番地14の画素のメモリ転送制御線
33 番地15の画素のメモリ転送制御線
34 番地16の画素のメモリ転送制御線
35 行4m+3の読み出し制御線
36 フレームパルス信号
37 全ての画素のメモリクリア時間
38 番地1の画素の露光時間
39 番地1の画素のメモリ転送時間
40 番地2の画素の露光時間
41 番地2の画素のメモリ転送時間
42 番地3の画素の露光時間
43 番地3の画素のメモリ転送時間
44 番地15の画素の露光時間
45 番地15の画素のメモリ転送時間
46 番地16の画素の露光時間
47 番地16の画素のメモリ転送時間
48 読み出された1フレームの映像
49 番地1の画素を分離した映像
50 番地2の画素を分離した映像
51 番地16の画素を分離した映像
52 49の映像から補間処理で創り出された映像
53 50の映像から補間処理で創り出された映像
54 51の映像から補間処理で創り出された映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々1つの光電変換素子とこの光電変換素子からの映像情報を一時的に記憶する1つの画素メモリとを有する画素を縦・横に複数個有する画素ブロックを縦・横に複数個有し、且つ上記画素ブロックの各画素の露光が異なる時刻になるよう制御する手段と、上記各画素ブロックの同じ番地に位置する画素の露光が同じ時刻になるよう制御する手段とを有する固体撮像素子より成ることを特徴とする高速度ビデオカメラ。
【請求項2】
上記固体撮像素子から読み出された1枚の映像を上記各画素ブロックの同じ番地に位置する画素ごとに分離し固体撮像素子の元の座標位置に配置した上で、空いた座標位置の映像信号を補間して出力することを特徴とする請求項1記載の高速度ビデオカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−54755(P2012−54755A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195643(P2010−195643)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【特許番号】特許第4657379号(P4657379)
【特許公報発行日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(390021751)株式会社ナックイメージテクノロジー (3)
【Fターム(参考)】