説明

高重合度を有するポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置

本発明は、ポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置に関するものであって、さらに詳細には、ポリビニルエステル溶液及び触媒混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造において、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で鹸化反応させることを特徴とするポリビニルアルコールの製造方法及びこれの製造装置に関するものである。
本発明によると、ポリビニルエステルがポリビニルアルコールに転換される時、ゲル化により生じる問題を解決することにより、高い濃度のポリビニルエステル溶液下でも高鹸化度、高重合度、及び見掛比重の高いポリビニルアルコールを製造することができて、溶媒使用量の画期的な節減及びこれに伴う反応器サイズの縮小により、装置費用及び溶媒回収費用を低減することができるポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置を提供する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置に関するものであって、さらに詳細には、ポリビニルエステルがポリビニルアルコールに転換される時、ゲル化により生じる問題を解決することにより、高い濃度のポリビニルエステル溶液下でも高鹸化度、高重合度、及び見掛比重の高いポリビニルアルコールを製造することができて、溶媒使用量の画期的な節減及びこれに伴う反応器サイズの縮小により、装置費用及び溶媒回収費用を低減することができるポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1924年、ヘルマンとヘネル(Hermann and Haehnel)がポリ酢酸ビニルの鹸化実験中に発見したポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルのようなビニルエステル系高分子を鹸化反応して製造されるヒドロキシ基含有線状結晶性高分子であって、優れた耐溶剤性と耐油性を有している。ポリビニルアルコールは、分子量、鹸化度及び立体規則性(stereoregularity)により、サイズ剤(sizing agents)、衣類や産業用繊維、分離用フィルター及び医学用高分子に至るまで、広範囲な活用範囲を有することが知られている。
【0003】
最近は、付加価値の高い高機能性ポリビニルアルコールの製造と応用に関する研究が活発に行われている。ポリビニルアルコールの優れた光学的特性により、フィルムを製造した場合、透明性に優れ、延伸した時に複屈折率が高く、各種光学用高分子フィルムとして脚光を浴びており、LCD用偏光フィルムとしても使用されている。偏光フィルム用途に使用するためには、製造されたポリビニルアルコールが高重合度と高鹸化度を有しなければならず、このような条件を満たすためには、高度の技術を必要とするため、極少数の製造会社だけが偏光フィルムに使用可能なポリビニルアルコールを製造しているのが実情である。
【0004】
このようなポリビニルアルコールの生産は、ビニルアルコール単量体の互変異性により直接重合できず、ビニルエステル単量体類、好ましくは、ビニルアセテートを乳化重合、懸濁重合、バルク重合などの方法によりポリビニルエステルを製造した後、製造されたポリビニルエステルの連続式あるいは回分式鹸化工程を通じて行われる。
【0005】
ポリビニルエステルを用いて鹸化反応をする時、最も代表的な方法は、ポリビニルエステルをアルコール類の溶媒に完全に溶かした後、強い酸や塩基を触媒として使用し反応を進行する方法であるが、この方法を利用する場合、重合度が高く(ポリビニルアルコールの数平均分子量132,000以上)、高鹸化度を有するポリビニルアルコールの製造時、ポリビニルエステル溶液の高粘度により、ポリビニルアセテートの濃度を非常に低く維持しなければならない。前記ポリビニルアセテートの濃度が6%以上になると、軸のある形態の攪拌器を使用する場合、 溶液の高粘度により、ノーマルフォース(Normal force)が増加して、溶解時あるいは相転換時、溶液やスラリーが軸に沿って上がっていくようなロッドクライミング(Rod climbing)現象が発生するなど、鹸化反応時、ポリビニルアルコールが分散された粒子状に得られず、大きい塊状のゲルが生成し、攪拌器や反応器の壁に付着してしまい、所望の反応が困難になる。前記ポリビニルアセテートの濃度を低く維持する場合、生産量を増やすために、鹸化反応時、反応器サイズを非常に大きくする必要があるだけではなく、使用した溶媒の量が非常に多くなるため、使用された溶媒を回収する際、莫大なエネルギー費用が発生するようになる。
【0006】
上記のような問題を解決することができると主張する幾つかの特許が発表されたが、問題点は依然として残っている。
【0007】
米国特許第4,954,567号では、鹸化反応時、ポリビニルアセテートを溶媒に溶かさずに、乾燥されたポリビニルアセテート粒子を触媒の含まれた溶媒に徐々に投入して製造する方法により、粒子状、見掛比重及び透明度を向上させることができると主張しているが、高鹸化度のポリビニルアルコール粒子を得るには限界がある。乾燥されたポリビニルアセテートを粒子状で使用して鹸化反応を進行する場合、コアは、ポリビニルアセテートで、シェルとしてポリビニルアルコールが得られるという問題が生じる。
【0008】
米国特許第5,753,753号では、ポリビニルアセテートを溶媒に溶かした後、鹸化反応前に核形成点(nucleating sites)としての役割をする反応性のない微細な物質(inert material、例えばSodium bicarbonate)を添加して、ポリビニルアセテート溶液中によく分散されるようにした後、触媒を投入して反応を進行する方法により、鹸化反応により生成されるポリビニルアルコールが核形成点に付着して生成されるようにして、深刻なゲル化を防止することにより、塊の形成を抑えることができると主張している。この方法の場合、最終形成されたポリビニルアルコールに最初に投入した反応性のない物質が最終製品の不純物として残るため、偏光板フィルムのような高純度と高透明度を要求する用途には適用し難い。
【0009】
また、米国特許第3,884,892号では、様々な密度の異なる溶媒を適用する方法であって、ポリビニルエステル溶液上に低い密度のアルコール溶媒層を載せて、その上にアルコール層より密度の高い触媒溶液を注意しながら投入して、密度差により触媒溶液層がポリビニルエステル溶液とアルコール溶媒層との間に位置するようにした後、攪拌しながら反応を進行すると、低い密度のアルコール層により小滴(droplet)状のポリビニルエステルが形成されて、懸濁液状態で反応が進行するため、ゲル化を防止することができると主張しているが、その方法自体が複雑で且つ運転することが難しい。
【特許文献1】米国特許第4,954,567号明細書
【特許文献2】米国特許第5,753,753号明細書
【特許文献3】米国特許第3,884,892号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、ポリビニルエステルがポリビニルアルコールに転換される時、ゲル化により生じる問題を解決することにより、高い濃度のポリビニルエステル溶液下でも高鹸化度、高重合度、及び見掛比重の高いポリビニルアルコールを製造することができて、溶媒使用量の画期的な節減及びこれに伴う反応器サイズの縮小により、装置費用及び溶媒回収費用を低減することができるポリビニルアルコールの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記ポリビニルアルコールの製造方法に適したポリビニルアルコールの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリビニルエステル溶液及び触媒を含む混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造方法において、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で前記鹸化反応をさせることを特徴とするポリビニルアルコールの製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、ポリビニルエステル溶液及び触媒を含む混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造装置において、ポリビニルエステル溶液投入ライン;触媒投入ライン;フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器;及び中和剤投入ライン;を含むことを特徴とするポリビニルアルコールの製造装置を提供する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、高粘度のポリビニルエステル溶液と、触媒として使用される酸やアルカリ水溶液との好ましい攪拌のためのインラインミキサー、及び触媒と均一に混合されたポリビニルエステルが反応器内でポリビニルアルコールに鹸化反応される時、溶液の高粘度及び相転換時急激に上昇するノーマルフォースにより発生するロッドクライミング現象により、生成するポリビニルアルコールが攪拌器軸やブレードに粘着する問題を根本的に解決するために、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングしたプラネタリー攪拌器とが含まれた製造装置を使用してポリビニルアルコールを製造する方法に関するものである。
【0016】
図1に示した本発明のポリビニルアルコールの製造工程は、次のようである。
【0017】
まず、ポリビニルエステル溶液及び触媒を、それぞれポリビニルエステル溶液投入ライン2及び触媒溶液投入ライン1に投入して混合する。前記混合物は、追加的にインラインミキサー3でさらに均一に攪拌することができる。
【0018】
攪拌支持台5にプラネタリー攪拌器4が装着された反応器で前記混合物を攪拌させながら鹸化反応を進行させる。前記反応器は、粉砕用ミキサー7をさらに装着することができる。
【0019】
前記鹸化反応の終了後、中和剤投入ライン8に中和剤を投入してポリビニルアルコールスラリーを製造して、前記収得されたスラリーは、ポリビニルアルコールスラリー回収ライン6により回収される。
【0020】
本発明のポリビニルアルコールの製造方法は、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で鹸化反応させることを特徴とするポリビニルアルコールの製造方法である。
【0021】
前記ポリビニルアルコールの製造方法は、(a)ポリビニルエステル溶液及び触媒を混合する段階;(b)前記混合物を、コーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で鹸化反応させる段階;及び(c)前記鹸化反応の終了後、中和剤を投入する段階;を含んでなる。
【0022】
〔(a)ポリビニルエステル溶液及び触媒を混合する段階〕
前記(a)段階は、ポリビニルエステル溶液に、反応に必要な触媒を投入して混合する段階である。
【0023】
ポリビニルアルコールは、ビニルアルコールの互変異性により、ビニルアルコール単量体を使用しての直接重合により製造することが不可能であるため、一般に、ビニルエステル単量体を重合してポリビニルエステルを製造した後、鹸化反応を通じてポリビニルアルコールを製造することができる。
【0024】
前記ポリビニルエステルの重合方法は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、またはミニエマルション重合などの方法を使用することができて、この中でも懸濁重合が好ましい。高い重合度を有するポリビニルアルコールを製造するためには、ポリビニルエステル重合時、枝の生成を減らすことが有利で、また主鎖長が長くなければならないため、枝の生成の多い溶液重合や乳化重合よりは、懸濁重合が最も一般的に使用される。
【0025】
前記ポリビニルエステルを製造するための単量体としては、ビニルホルメート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルバレリアネート(vinyl valerianate)、ビニルラウレート、またはビニルステアレートなどのビニルエステル単量体を単独または2種以上混合して使用することができ、高重合度を有するポリビニルアルコールを製造するためには、ビニルアセテートが好ましい。
【0026】
前記ポリビニルエステルは、単量体の他に、重合に一般に使用される重合開始剤、懸濁安定剤及び水などを使用して製造することができる。
【0027】
前記重合開始剤としては、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、イソブチルペルオキシド、ビス(4−ターシャリー−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジ−ノルマル−プロピルペルオキシカーボネート、α−クミル−ペルオキシネオデカノエートなどのようなペルオキシ化合物、または2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのようなアゾ化合物などを使用することができる。
【0028】
前記懸濁安定剤としては、88%の鹸化度を有するポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スターチ、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ゼラチン、または水酸化ナトリウムまたはアンモニア水で中和したスチレン−無水マレイン酸の等モル共重合体などを使用することができる。
【0029】
前記単量体は、重合に使用される水の含量に対し、1〜300重量部、開始剤は、単量体の含量に対し0.05〜10重量部、懸濁安定剤は、単量体の含量に対し、0.001〜10重量部で使用することが好ましい。
【0030】
前記懸濁重合により製造されたポリビニルエステルは、ろ過、水洗、乾燥を通じてポリビニルエステル最終粒子を製造することができる。
【0031】
前記製造されたポリビニルエステルは、含水率が30%以下であることが好ましい。前記含量が30%を超えると、鹸化反応時、触媒使用量が急激に増加し、高い鹸化度が得難いという問題点がある。
【0032】
前記製造されたポリビニルエステルは、球、シリンダー及びキューブ状など、様々な粒子状を有することができるが、球状であることが好ましい。
【0033】
前記製造されたポリビニルエステルは、粒子の大きさが10〜5000μmで、扱い易く、移送の容易なものが好ましい。
【0034】
前記製造されたポリビニルエステルは、鹸化反応を通じて製造された最終ポリビニルアルコールの4%水溶液粘度が30℃で130〜230cpであることが好ましい。
【0035】
本発明のポリビニルエステル溶液は、前記製造されたポリビニルエステルをアルコール類溶媒、好ましくは、メタノールに溶解して製造することができる。
【0036】
前記ポリビニルエステル溶液は、溶液中のポリビニルエステル濃度が5〜30重量%であることが好ましい。前記濃度が5%未満である場合は、粘度が低いため、ポリビニルエステル溶液の製造時及び鹸化反応が容易であるが、溶媒使用量が非常に多いため、ポリビニルアルコールの製造費用が増加し、且つポリビニルエステル溶液の製造容器と鹸化反応器の大きさがかなり大きくなる問題点があり、30%を超える場合は、ポリビニルエステル溶液の粘度が急激に上昇し移送が容易ではなく、溶質のポリビニルエステルが溶媒のメタノールによく溶けないため、ポリビニルエステル溶液の製造時、莫大な時間がかかるという問題点がある。
【0037】
前記ポリビニルエステル溶液は、触媒と攪拌する前に、鹸化反応により製造される製品であるポリビニルアルコールの熱安定性及び色相を向上させるために、過酸化水素水をさらに含めることができ、またはオゾンにより処理することもできる。これにより、ポリビニルエステルの末端にある二重結合が、鹸化反応が進行する時、アルデヒド基が形成されて、最終製品の熱安定性が低下することを事前に防止することができる。
【0038】
前記触媒は、塩酸、硫酸、リン酸などの強い無機酸、または水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基などを使用することができて、この中でも塩基を使用することが好ましく、より好ましくは、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
【0039】
前記触媒は、水やアルコール類溶媒と混合し、溶液形態にして使用することができる。
【0040】
前記触媒は、ポリビニルエステル100重量部に対し、0.2〜10重量部で使用することが好ましい。前記含量が0.2重量部未満であると、反応速度が非常に遅くなる問題があり、10重量部を超えると、反応速度が速すぎて、かなり大きい塊の粒子が形成されるおそれがあり、反応が終了して中和後、塩が多量生成されるため、洗浄時に多量の洗浄液が必要となり、生成した塩が最終ポリビニルアルコールの熱安定性を低下させる問題点がある。
【0041】
前記(a)のポリビニルエステル溶液及び触媒を混合する段階は、前記混合物をインラインミキサーでさらに攪拌する段階をさらに含んでもよい。
【0042】
〔(b)前記混合物を、コーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で鹸化反応させる段階〕
前記(b)段階は、前記(a)段階で攪拌された混合物を、コーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器である本発明のポリビニルアルコール製造装置で鹸化反応させる段階である。前記ポリビニルアルコール製造装置は、鹸化反応が進行されるにつれて発生するゲル化を、コーティングされたプラネタリー攪拌器で解いて、ロッドクライミングを生じることなく粒子状に転換して、ポリビニルアルコールスラリーを製造することができる。
【0043】
本発明のポリビニルアルコール製造装置は、ポリビニルエステル溶液及び触媒を含む混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造装置において、ポリビニルエステル溶液投入ライン;触媒投入ライン;フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器;及び中和剤投入ライン;を含むことを特徴とするポリビニルアルコールの製造装置である。
【0044】
前記プラネタリー攪拌器は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、シリコン樹脂またはエポキシ樹脂などのコーティング材料でコーティングされたものが好ましく、より好ましくは、非粘着性に非常に優れており、強度がよく、耐薬品性及び耐熱性に優れているエチレンテトラフルオロエチレンでコーティングされたものである。前記コーティング材料以外のものでコーティングされたプラネタリー攪拌器を使用する場合は、ポリビニルアルコール粒子の極性により、粒子が攪拌器に付着して粒子の回収が容易ではなく、攪拌器の性能を十分発揮できないという問題点がある。
【0045】
前記プラネタリー攪拌器の種類に制限はないが、ミキシングされない領域(デッドゾーン)を最小化できるスクリュータイプが好ましい。
【0046】
前記プラネタリー攪拌器は、1〜4個を使用することができる。
【0047】
前記ポリビニルアルコールの製造装置は、プラネタリー攪拌器と共に、粉砕用ミキサーをさらに含むことができる。
【0048】
前記粉砕用ミキサーは、プラネタリー攪拌器が自転する時、ミキシングされない領域に位置して、独立的に自転しながらプラネタリー攪拌器と共に公転することができる。
【0049】
前記粉砕用ミキサーは、プラネタリー攪拌器と同一のコーティング材料でコーティングできる。
【0050】
前記粉砕用ミキサーは、インペラとして、プロペラ、パドル、タービン、またはディスクインペラなどを使用することができる。
【0051】
前記(b)の鹸化反応する段階は、前記鹸化反応と同時または後に、粉砕用ミキサーで生成物を均一な大きさの粒子に粉砕する段階をさらに含むことができる。
【0052】
前記粉砕用ミキサーを利用した粉砕段階は、鹸化反応初期から含まれても、鹸化反応がある程度進行され、大きい粒子が形成された後に含まれても良い。前記粉砕段階が鹸化反応初期から含まれる場合は、非常に小さい粒子を得ることができ、粒子が形成された後に含まれる場合は、見掛比重のさらに高い粒子を得ることができる。
【0053】
前記鹸化反応は、反応温度が−10〜90℃であることが好ましく、より好ましくは、35〜60℃である。前記温度が−10℃未満であると、反応速度が著しく低下する問題点があり、90℃を超える場合は、ポリビニルエステルの鹸化反応時形成されるメチルアセテートにより水酸化ナトリウム触媒の損失が発生し、高鹸化度のポリビニルアルコールを製造することが難しいという問題点がある。
【0054】
〔(c)中和剤を投入する段階〕
前記(b)段階の鹸化反応の終了後、中和剤を添加してポリビニルアルコールスラリーを製造する段階である。
【0055】
前記中和剤は、使用される触媒により選択することができて、触媒が塩基である場合は、酸性中和剤を使用し、触媒が酸である場合は、塩基性中和剤を使用することができる。
【0056】
前記中和剤は、前記触媒の含量1モル当り0.5〜2モルで使用することが好ましい。
【0057】
前記製造されたポリビニルアルコールスラリーは、ろ過、水洗 、乾燥を通じて、ポリビニルアルコール最終粒子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、 実施例を通じて本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
温度計、窒素流入口、凝縮装置及びバッフルとピッチパドル型攪拌器を備えた反応器に、ビニルアセテートと水とを重量比で1:2、懸濁安定剤として鹸化度88%(重合度1800)のポリビニルアルコールをビニルアセテートに対し重量比で1:1×10−4、重合開始剤の2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をビニルアセテートに対し重量比で1:0.003の含量を使用した。水と懸濁安定剤とを反応器に投入した後、攪拌しながら、窒素を水面下に2時間強く吹き込んで溶存酸素を除去し、ビニルアセテートは、窒素雰囲気下で精製し、重合禁止剤と溶存酸素を除去した後、反応器に投入して、温度を反応温度の40℃に上げた後、窒素雰囲気下で6時間重合した。重合後、ポリビニルアセテートスラリーは、アスピレーター(aspirator)を使用してろ過した後、蒸留水で十分水洗して、30℃で24時間1mmHg下で真空乾燥し、水分含量0.4%以下のポリビニルアセテートを製造した。
【0060】
前記製造されたポリビニルアセテートにメタノールを投入して溶解し、濃度10%のポリビニルアセテート溶液を製造した。触媒として水酸化ナトリウムを、ポリビニルアセテートに対し重量比で1:0.03になるように投入し、インラインミキサーを利用してポリビニルアセテート溶液によく混ぜた後、エチレンテトラフルオロエチレンでコーティングされた本発明のプラネタリー攪拌器及び粉砕用ミキサーがさらに取り付けられた反応器を使用して、40℃で1時間鹸化反応を進行させた。この際、プラネタリー攪拌器の攪拌速度は43rpm、粉砕用ミキサーの攪拌速度は1000rpmとして行った。
【0061】
前記鹸化反応の終了後、水酸化ナトリウムと同一モル数の酢酸を投入して、10分間攪拌して中和し、ポリビニルアルコールスラリーを得た。
【0062】
上記で得られたポリビニルアルコールスラリーは、アスピレーターを使用してろ過した後、メタノールを使用して十分洗浄し、30℃で12時間1mmHg下で真空乾燥し、メタノール含量が0.3%以下であるポリビニルアルコールを製造した。
【0063】
[実施例2]
鹸化反応時、粉砕用ミキサーのない反応器を使用したことを除いて、前記実施例1と同様に行った。
【0064】
[実施例3]
ポリビニルアセテートをメタノールに溶解させて製造した濃度が15%であるポリビニルアセテート溶液を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行った。
【0065】
[実施例4]
ろ過した後の濡れたポリビニルアルコールを同一の反応器に再び投入して、メタノールを添加し、スラリー濃度が6.5%になるようにした後、温度を40℃に上げて、水酸化ナトリウムを、ポリビニルアセテートに対し重量比で1:0.03になるように投入した後、1時間鹸化反応を進行させたことを除いては、前記実施例1と同様に行った。
【0066】
[比較例1]
既存スラリー状の鹸化反応に使用されるタービンタイプのインペラ付き反応器を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行った。この際、インペラの攪拌速度を1700rpmとした。
【0067】
[比較例2]
5%のポリビニルアセテート溶液を使用したことを除いては、前記比較例1と同様に行った。
【0068】
[比較例3]
7%のポリビニルアセテート溶液を使用したことを除いては、前記比較例1と同様に行った。
【0069】
[比較例4]
コーティングされていないプラネタリーミキサーと粉砕用ミキサーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行った。
【0070】
前記実施例及び比較例で製造されたポリビニルアルコールの物性を下記の方法により測定して、その結果を表1に示した。
*ポリビニルアセテートの濃度(wt%):下記の式により測定した。
ポリビニルアセテートの重量/ポリビニルアセテート溶液の質量×100
*鹸化度(モル%):H−NMRピークによって測定した。
*粒子の大きさ:製造されたポリビニルアルコール粒子をミキサーを利用して粉末状に製造する前の、乾燥直後の粒子の大きさを測定した。
*粘着度(wt%):粒子が攪拌器に付着した程度で、下記の式により測定した。
付着したポリビニルアルコールの重量/総ポリビニルアルコールの質量×100
*見掛比重:製造されたポリビニルアルコール粒子をミキサーに投入し、粉末状にして、全ての実験におけるポリビニルアルコール粒子の大きさを同一にした後、ASTM D1895法により測定した。
*ポリビニルアルコールの重量平均分子量:JAPAN INDUSTRIAL STANDARD JIS K-6726-1977法により測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
上記表1から、本発明のコーティングされたプラネタリー攪拌器が装着されたポリビニルアルコール製造装置を使用して製造した実施例1〜4のポリビニルアルコールは、従来のタービン形態のインペラを使用して製造し、反応中に形成されたゲルが解けずにスラリーを収得することができなかった比較例1または3、及び、粒子は形成されたが粒子の分布が広く、見掛比重及び鹸化度が低い比較例2のポリビニルアルコールに比べ、鹸化度、重合度及び見掛比重が高く、優れていることを確認することができた。また、コーティングされていないプラネタリー攪拌器を使用して製造した比較例4は、製造されたポリビニルアルコールが攪拌器に粘着し、得られる粒子の収率を低下させる結果を示した。一方、粉砕用ミキサーを使用せずに製造した実施例2のポリビニルアルコールは、いくらかは長い形状、いくらかは球状、及びいくらかはキューブ状の無定形の粒子形態を示すことを確認することができた。
【0073】
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明は、コーティングされたプラネタリー形態の攪拌器を使用し、ポリビニルエステルがポリビニルアルコールに転換される時、ゲル化により大きい塊が発生する問題を解決することにより、ポリビニルエステル溶液の濃度を高く維持した状態でも、高鹸化度、高重合度、及び見掛比重の高いポリビニルアルコールを製造することができて、溶媒使用量の画期的な節減及びこれに伴う反応器サイズの縮小により、装置費用及び溶媒回収費用を低減することができるポリビニルアルコールの製造方法及び製造装置を提供するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のポリビニルアルコールの製造工程を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 触媒溶液投入ライン
2 ポリビニルエステル溶液投入ライン
3 インラインミキサー
4 プラネタリー攪拌器
5 攪拌器支持台
6 ポリビニルアルコールスラリー回収ライン
7 粉砕用ミキサー
8 中和剤投入ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルエステル溶液及び触媒を含む混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造方法において、
フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で前記鹸化反応させることを特徴とするポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールの製造方法は、
(a)ポリビニルエステル溶液及び触媒を混合する段階;
(b)前記混合物を、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器で鹸化反応させる段階;及び
(c)前記鹸化反応の終了後、中和剤を投入する段階;
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記(a)のポリビニルエステル溶液及び触媒を混合する段階が、前記混合物をインラインミキサーで攪拌させることを含むことを特徴とする請求項2に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項4】
前記(b)の鹸化反応する段階が、前記鹸化反応と同時または後に、粉砕用ミキサーで均一な大きさの粒子に粉砕することを含むことを特徴とする請求項2に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項5】
前記触媒が、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはナトリウムメトキシドであることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項6】
前記触媒の含量が、前記ポリビニルエステル100重量部に対し、0.2〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項7】
前記ポリビニルエステル溶液は、ポリビニルエステル濃度が5〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項8】
前記鹸化反応温度が、−10〜90℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項9】
前記中和剤の含量が、前記触媒1モル当り0.5〜2モルであることを特徴とする請求項2に記載のポリビニルアルコールの製造方法。
【請求項10】
ポリビニルエステル溶液及び触媒を含む混合物の鹸化反応によるポリビニルアルコールの製造装置において、
ポリビニルエステル溶液投入ライン;触媒投入ライン;フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされたプラネタリー攪拌器付き反応器;及び中和剤投入ライン;を含むことを特徴とするポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項11】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン共重合体、またはエチレンテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項10に記載のポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項12】
前記ポリビニルアルコールの製造装置が、前記攪拌器を1〜4個含むことを特徴とする請求項10に記載のポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項13】
前記ポリビニルアルコールの製造装置が、前記ポリビニルエステル溶液と前記触媒とを均一に攪拌するインラインミキサーを含むことを特徴とする請求項10に記載のポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項14】
前記ポリビニルアルコールの製造装置が、粉砕用ミキサーを含むことを特徴とする請求項10に記載のポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項15】
前記粉砕用ミキサーは、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から1種以上選択されるコーティング材料でコーティングされていることを特徴とする請求項14に記載のポリビニルアルコールの製造装置。
【請求項16】
前記粉砕用ミキサーが、インペラとして、プロペラ、パドル、タービン、またはディスクインペラを使用することを特徴とする請求項14に記載のポリビニルアルコールの製造装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−510880(P2008−510880A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542943(P2007−542943)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004040
【国際公開番号】WO2007/049867
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】