説明

高電圧インシュレータ及びこの高電圧インシュレータを備えた冷却要素

【課題】低い漏洩速度を有する高電圧インシュレータを提供する。
【解決手段】高電圧インシュレータHは、同軸の配置で、以下の要素を含む:ベアリング・リング10の形態の末端部を備えた絶縁チューブ1;前記ベアリング・リング10に保持された中空金属接片2;接着ジョイント51;キャビティ15。少なくとも一つの主として径方向にガイドされた接着剤のチャネル50が、前記キャビティ15と前記接着ジョイント51の間に配置され、この接着剤のチャネル50は、硬化された接着剤でシールされ、且つ、硬化された接着層の形成に先立って、未硬化の接着剤を、前記キャビティ15から前記接着ジョイント51の中にガイドするために十分な断面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提書き部分に基づく高電圧インシュレータ、このインシュレータを製造するための方法、この方法を実施するための装置、及びこの高電圧インシュレータを備えた冷却要素に係る。
【0002】
この高電圧インシュレータは、同軸の配置で、以下の要素を含んでいる:ベアリング・リングの形態の末端部を備えた少なくとも一つの絶縁チューブ;前記ベアリング・リングの上に保持された中空金属接片(armature);接着ジョイント、この接着ジョイントは、前記ベアリング・リングの接着領域と前記金属接片の接着領域との間に設けられ、硬化された接着層によりバキューム・タイトな状態で満たされている;キャビティ、このキャビティは、前記絶縁チューブの軸に沿って引き伸ばされ、前記絶縁チューブ及び前記金属接片により径方向に境界が定められている。一般的に、この高電圧インシュレータでは、前記ベアリング・リングから離れた前記絶縁チューブの他方の末端部は、同様にベアリング・リングの形態であって、接着ジョイントを介して更なる金属接片に接続される。
【0003】
そのようなインシュレータは、大電流を伝送する高電圧デバイスの受動的な冷却の場合に、絶縁部分として使用されることが可能である。ここで、高電圧は、原則として、1kVを超える動作電圧を意味するものとして理解される。好ましい電圧範囲は、100kV未満であるが、しかしながら、概ね、典型的に10kVから50kVの定格電圧を備えた大電流伝送装置及び設備に関わる。
【0004】
そのような装置及び設備の電流伝送能力は、熱的に制約される。例えば、発電機サーキット・ブレーカの形態のヘビー・デューティ・デバイスの中で移送されるような、典型的に10kAから50kAの範囲内の定格電流の場合に、能動的な冷却要素(例えば、ファンを備えた空気/空気熱交換器)、または特に良い効率を備えた受動的な冷却要素が、それ故に、特に使用される。後者の例は、特にヒート・パイプであって、それは、冒頭に規定された高電圧インシュレータに加えて、蒸発器及び熱交換器、並びに作業媒体を含んでいる。ヘビー・デューティ・デバイスの中での電流損失の結果として作り出された熱は、この場合には、作業媒体を蒸発させるために使用される。熱交換器の作業媒体は、外部に配置された熱交換器に移送され、そして、ヘビー・デューティ・デバイスの中で形成された損失熱を、そこでの凝縮の結果として、再び放出する。
【0005】
発電機サーキット・ブレーカの形態のヘビー・デューティ・デバイスは、一般的に、単相の密閉型のデザインを有し、インナー・コンダクターを有している。このインナー・コンダクターは、密閉容器の中に配置され、且つ高電圧電位にある。インナー・コンダクター上での電流損失の結果として形成された熱は、密閉容器を通って、周囲の空気へ放散されなければならない。これは、電気的な絶縁経路が、高電圧電位にある蒸発器と、接地電位に維持されたヒート・パイプの凝縮器の間に、配置されなければならないことを意味していて、この電気的な絶縁経路は、要求される高電圧(例えば150kV・BIL)に対応してデザインされなければならない。蒸発器及び熱交換器(凝縮器)は、高電圧インシュレータの両端で、バキューム・タイトな状態で保持される。
【0006】
ファンまたはブロアなどの、動く部分が最早無いので、そのような大電力の、受動的な冷却要素の場合には、この冷却要素を使用して、損失熱が、安価に且つ効率良く、密閉容器から取り除かれることが可能である。それに加えて、そのような冷却要素は、メインテナンスを必要としない。高電圧インシュレータは、この場合には、複数の機能を果たす。それは、主として、作業媒体をガイドする機能と、蒸発器及び凝縮器の電位を絶縁する機能である。そのような大電力の受動的な冷却要素の信頼性、及びそのような冷却要素を備えた高電圧の設備の信頼性は、長い年月に渡り、インシュレータが上述の機能を実現するときにのみ確保される。そのようなインシュレータは、それ故に、長期間に渡って(典型的には20年)、メインテナンスを必要とすべきではない。そのような高い長期間の安定性は、極めて低い漏洩速度を前提条件として要求する。その理由は、このようにしてのみ、作業媒体の損失を避けることが可能であるからである。
【背景技術】
【0007】
上述のタイプの高電圧インシュレータが、WO 2006/053552 A1 に記載されている。このインシュレータは、中空の冷却要素の部分であって、この部分は、ヒート・パイプの形態であり、送出発電機ラインから、熱を放散させるために使用される。このインシュレータは、同軸の配置で、繊維強化ポリマー及び同軸上に支持された拡散バリアで作られた機械的に支持された絶縁チューブ、並びに二つの中空の金属接片を有している。これらの金属接片は、絶縁チューブの二つの末端部にバキューム・タイトな状態で接着剤により接着され、これらの末端部は、それぞれベアリング・リングの形態である。接着ジョイントは、各ベアリング・リングの末端側からその横方向の表面の上に引き伸ばされ、且つ、硬化された接着層によりバキューム・タイトな状態で満たされていて、各二つのベアリング・リングの接着領域と各二つの金属接片の接着領域との間に設けられている。
【0008】
蒸発器は、高電圧コンダクターの電位に維持されており、二つの金属接片の内の一つの上に固定されている。凝縮器は、接地された密閉容器の電位に維持されており、他方の接片の上に固定されている。高電圧インシュレータは、冷却要素の絶縁経路を形成し、この絶縁経路は、高電圧コンダクターの中での電流損失により形成された熱を、密閉容器に移送する。この場合に、冷却要素の内部に配置された作業媒体、例えば、特にアセトンまたはハイドロフルオロエーテルなどが、熱の移送のために使用され、そしてこの場合には、蒸気の形態で蒸発器から絶縁チューブを通って凝縮器へ循環し、この凝縮器の中で、蒸気が熱を放出して、液体となって凝縮する。この液体は、高電圧インシュレータを通って再び蒸発器へ戻される。
【0009】
高電圧インシュレータは、それ故に、絶縁経路として使用されるだけではなく、作業媒体のためのラインとしても使用される。このラインは、化学的な媒体を収容し、典型的には80℃の恒久的温度に曝され、長い年月(典型的に20年)に渡って、リキッド・タイト、ガス・タイト及びバキューム・タイトが維持されなければならないので、厳しい要求が、絶縁チューブの二つの末端部の間の接着剤による接合部に課せられる。これらの二つの末端部は、それぞれ、ベアリング・リング及び金属接片の形態である。
【特許文献1】国際特許出願公開 WO 2006/053552 A1 号パンフレット
【発明の開示】
【0010】
本発明は、特許請求項において規定されているように、冒頭に述べたタイプの、低い漏洩速度を有する高電圧インシュレータを提供する目的に基づいている。また、本発明の高電圧インシュレータは、過酷な機械的、電気的、熱的及び化学的な負荷の下で、長い年月に渡る運転の後での高い運転上の信頼性によっても特徴付けられる。また、本発明の目的は、前記高電圧インシュレータを製造するための方法、前記方法を実施するための装置、及び前記インシュレータを含む冷却要素を規定することにもある。
【0011】
本発明に基づく高電圧インシュレータの場合には、少なくとも一つの主として径方向にガイドされた接着剤のチャネルが、キャビティと接着ジョイントの間に配置され、この接着剤のチャネルは、硬化された接着剤でシールされ、且つ、硬化された接着層の形成に先立って、未硬化の接着剤を、前記キャビティから前記接着ジョイントの中へガイドするために十分な断面を有している。接着剤が、硬化される前に、前記キャビティから前記接着剤のチャネルを介して前記接着ジョイントの中へガイドされるので、望ましくない空気が巻き込まれていない特に均一な接着層が、それ故に、接合される二つの部分の間に、即ち絶縁チューブのベアリング・リングと金属接片(armature)の間に、シンプルな手段を使用して且つ比較的短い時間で、実現されることが可能である。接合される二つの部分の接着領域が、硬化された接着剤で覆われ、全体の接着ジョイントが硬化された接着剤で完全に満たされるので、本発明に基づく高電圧インシュレータ、及びこの高電圧インシュレータを含む冷却要素は、非常に低い漏洩速度により、及び特にリーク電流に対する高い抵抗などの優れた絶縁挙動により、特徴付けられることになる。本発明に基づく高電圧インシュレータ及び冷却要素は、それに対応して、長期間の安定性を有している。
【0012】
高電圧インシュレータを製造するために特に適切な方法において、絶縁チューブ及び金属接片は、接着ジョイント及びキャビティを形成するように接合され、液状接着剤を含む注入補助器具(injection aid)がキャビティの中にインストールされ、この液状接着剤は、圧縮スペースの形態のキャビティの部分の中で、前記注入補助器具を用いて加圧され、圧縮スペースから、前記少なくとも一つの接着剤のチャネルを介して、接着ジョイント中に注入される。この方法において、接着剤は、気泡を伴うことなく、接着ジョイントの中に導入され、それによって、均一に分布され、それ故に、バキューム・タイトな接着ジョイントが、信頼性が高く且つ容易に再現可能なやり方で実現されることになる。この方法によれば、低い漏洩速度及び長い寿命を備えたバキューム・タイトな高電圧インシュレータが、それ故に、事実上不良品無しに、製造されることが可能である。
【0013】
この方法を実施するために好適な装置において、前記注入補助器具は、ピストン/シリンダ圧縮装置の形態であって、圧縮スペース及びピストンを有している。この圧縮スペースは、液状接着剤を収容するために適切にデザインされ、前記ベアリング・リングにより外側で径方向に境界が定められ、シリンダ・ベースにより軸方向に境界が定められる。このシリンダ・ベースは、前記金属接片の中に固定され、このピストンは、前記ベアリング・リングの中で軸方向に変位可能である。上記のピストン/シリンダ圧縮装置は、製造プロセスの中に容易に組み込まれることが可能であり、望ましくない空気が接着ジョイントから排除されることを確保し、接着ジョイントが、気泡無しに、接着剤で完全に満たされる。
【0014】
本発明の更なる特徴及び更なる好ましい効果は、以下に記載された実施形態の例からもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のこの実施形態の例が、以下において、図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【0016】
全ての図面において、同じ参照符号は、機能的に同一な部分を示している。軸対称にデザインされ、図1に示された高電圧インシュレータHは、その製造のための装置Vのクランプ装置3の中に、その対称軸“A”に沿って整列されるように配置されている。高電圧インシュレータは、絶縁チューブ1を含み、その二つの末端部は、それぞれ、ベアリング・リング10,10’及び二つの中空の金属接片2及び2’の形態である。絶縁チューブ1は、高分子複合材料から製造され、それは、例えばエポキシのようなデュロマー(duromer)、及び、例えばクォーツ・パウダーまたはグラス・ファイバーのようなフィラーに基づいているが、例えば陶器のようなセラミックから製造されることも可能である。
【0017】
同軸的な配置において、金属接片(armature)2がベアリング・リング10に、そして金属接片2’がベアリング・リング10’に、バキューム・タイトな状態で接着剤により接着される。クランプ装置3の、水平方向に整列されたベース・プレート30は、スペーサ脚部(spacer feet)31の上に支持され、クランプ装置3は、二つの垂直方向に整列されたネジ切りされたロッド32を有しており、それらのロッドは、ベース・プレート30にしっかり固定される。
【0018】
開口(図示せず)が、ベース・プレートの中に設けられ、この開口により、金属接片2の下側の部分がガイドされる。フィールド電極20の形態の金属接片2の部分は、ベース・プレート30の上に支持される。金属接片2’は、金属接片2と同じデザインを有しており、圧力バー33がその上に支持されるフィールド電極20’を含んでいる。接片2の下側の部分に対応する接片2’の部分は、同様に圧力バー33を通る開口(図示せず)によりガイドされる。圧力バー33は、二つの圧力ナット34により、フィールド電極20’に対して押し付けられ、これらの圧力ナットは、ネジが切られたロッド32の上でガイドされ、それ故に、クランプ装置3の中に高電圧インシュレータHを固定する。
【0019】
二つのベアリング・リング10,10’は、同一のデザインであって、スペーサ・カム11(ベアリング・リング10の場合が、図2及び3の中に示されている)を有している。これらのスペーサ・カムは、ベアリング・リング10の自由端側12の中に形成され、軸方向に整列されている。それぞれの場合において、二つのスペーサ・カム11が、末端側12の円周方向で、主として径方向にガイドされた接着剤のチャネル50の境界を定める。理解可能であるように、四つのスペーサ・カム11が、示された実施形態において見えているが、それらが、(軸Aに対して)円周方向に均一に分布された配置された四つの主として径方向に整列された接着剤のチャネル50の境界を定める。
【0020】
円筒状のシール面13が、ベアリング・リング10の内側の中に形成される。図6から理解可能であるように、このシール面が、キャビティ15の部分の周囲を取り囲み、このキャビティは、ベアリング・リング10により径方向に境界が定められ、接着剤のチャネル50とストップ14の間で軸方向に引き伸ばされ、インシュレータHまたは絶縁チューブ1及び二つの金属接片2,2’により取り囲まれている。
【0021】
接着領域16(図2及び3に示されている)が、ベアリング・リング10の外側の中に形成される。図6の中に示されているように、接着ジョイント51が、硬化された接着層によりバキューム・タイトな状態で満たされた状態で、この接着領域と金属接片2の接着領域21の間に設けられている。接着剤のチャネル50が、キャビティ15と接着ジョイント51の間に延びていて、硬化された接着剤によりバキューム・タイトな状態で同様にシールされる。接着ジョイント51は、複数の通気用開口52に接続され、それらの通気用開口は、円周方向に均一に分布され、且つ、金属接片2により、外側で主として径方向に、接着領域21の上方でガイドされている。接着ジョイント51は、その断面が接着剤のチャネル50と通気用開口52との間で減少するように、その寸法が定められている。
【0022】
そのような寸法を備えた接着ジョイント51は、接着領域16に円錐形に傾斜を付けることにより、好ましくも作り出されることが可能である。円錐形の接着領域16は、接着剤のチャネル50と通気用開口52の間で、軸方向に拡大し、絶縁チューブ1が製造されるときに、例えば、絶縁チューブが鋳造されるときに、および/または、絶縁チューブの前駆体ボディの金属切断により製造されるときに、ベアリング・リング10の中に容易に形成されることが可能である。
【0023】
高電圧インシュレータHを製造するため、絶縁チューブ1及び金属接片2は、接着ジョイント51を形成するように、接合される。その過程において、良好なプレス・フィットを実現するために、金属接片2は、典型的には約150℃に、加熱され、そして加熱された金属接片2は、ベアリング・リング10の上に、スペーサ・カム11がショルダー22に当たるまで延伸される。このショルダーは、金属接片2内側で径方向にガイドされる(図4から6)。対応するやり方で、金属接片2’及びベアリング・リング10’もまた、接合される。ただしこれらの二つの部分は、シール・リングを使用してネジで固定することにより、あるいは、鋳造による密閉容器により、互いに接続されることも可能である。いずれの場合にも、軸方向に引き伸ばされたキャビティ15が、このようにして形成され、このキャビティは、絶縁チューブ1及び二つの中空の金属接片2,2’により軸方向に境界が定められる。
【0024】
図4及び5において理解可能であるように、液状接着剤40を含む注入補助器具(injection aid)4が、キャビティ15の中にインストールされている。この注入補助器具は、ピストン/シリンダ圧縮装置の形態であって、圧縮スペース41(図4)及びピストン43を有している。この圧縮スペースは、液状の(未硬化の)接着剤40を収容し、且つ、ベアリング・リング10及び金属接片2のショルダー22により外側で径方向に境界が定められ、シリンダ・ベース42により軸方向に境界が定められ、このシリンダ・ベースは、金属接片10の中に固定される。上記のピストンは、ベアリング・リング10の中で軸方向に変位可能である。
【0025】
シリンダ・ベース42及びピストン43は、それぞれ、少なくとも一つのシール・リング(簡潔性を考慮して示されていない)を、それらの横方向の表面の上に、保持している。シリンダ・ベース42により保持されているシール・リングは、ショルダー22の領域で、金属接片2の軸対称の内側表面に、ガス・タイトなやり方で接している。これに対して、ピストン43のシール・リングは、ストップ14とシリンダ・ベース42の間で軸方向に変位されることが可能であって、シール面13に、ガス・タイト且つリキッド・タイトなやり方で取り付けられている。
【0026】
注入補助器具3の組み込みの間、絶縁チューブ1及び金属接片2,2’は、先ず始めに、金属接片2が上方に向くように保持される。ピストン43が、次に、金属接片2により、キャビティ15の中に導入され、ストップ14の上に保持される。理解可能であるように、液状接着剤40を収容するための円錐形の凹部44が、漏斗状の形態で形成され、この凹部は、圧縮スペース41の境界を定めるピストン43の側の中に形成される。計測された量の液状接着剤、例えばエポキシ系の二成分の接着剤が、この凹部の中に既に供給されている。
【0027】
それから、シリンダ・ベース42もまた、上方からキャビティ15の中に押し込まれる。ピストン・ベース42は、図1,4及び5に示された閉鎖ナット45により、脱落することがないように、保持される。それから、装置全体が下に向けて回転され、そしてそれ故に、図4に示された装置の位置が実現され、この位置において、注入補助器具4は、圧縮スペース41を有し、この圧縮スペースは、ショルダー22の領域内で、シール面13から、接着剤のチャネル50の入口を介して、金属接片2の内側の表面まで、軸方向に延びている。
【0028】
図1において理解可能であるように、上記の装置は、クランプ装置3の中に固定され、プランジャ46は、金属接片2’により、上方からキャビティ15の中に押し込まれる。このプランジャは、圧縮スペース41から離れたサイドで、ピストン43の上に支持される(図4)。もし、図4に示されているように、軸方向に下向きに向けられた力“K”が、このときにプランジャ46に作用した場合には、ピストン43が下向きにガイドされ、その過程において、圧縮スペース41の中の液状接着剤40の圧力を増大させる。流体圧力の効果により、その過程において生ずる金属接片2の変位が、クランプ装置3により防止される。
【0029】
液状接着剤40は、接着剤のチャネル50を介して、接着ジョイント51の中に注入される。接着剤のチャネル50は、硬化された接着層の形成に先立って、十分な量の未硬化の接着剤40が、圧縮スペース41から接着ジョイント51の中にガイドされるように、その寸法が定められる。供給された接着剤40は、接着ジョイント51の中の空気を圧縮して、通気用開口52まで、接着ジョイント51を満たす。過剰な接着剤40は、通気用開口52から排出される。閉鎖ナット45が取り除かれると、注入補助器具4及びプランジャ46は、キャビティ15から取り除かれることが可能であり、そして接着剤による接着ポイントは、典型的には60から80℃に上昇された温度で硬化されることが可能である。この接着剤による接着ポイントの漏洩速度は、典型的には、10−9[mbar・L/s](10−9[hPa・L/s])未満である。
【0030】
接着ジョイント51の中での接着剤40の特に良好な分布、及びそれ故に、空隙の無い硬化された接着層が、実現される。これは、接着剤が、円周方向に均一に分布された複数の接着剤のチャネル50を介して、接着ジョイント51の中に注入されると言う事実に起因している。接着ジョイントの断面が、液状接着剤40の流れの方向に減少すると言う事実の結果として、液状接着剤が、圧縮スペースから接着ジョイント51の中に、特に均一に且つ気泡無しで、通過する。空隙の無い硬化された接着層が、それ故に、接着剤による接着ポイントで実現される。更にまた、接着層の厚さは、ベアリング・リング10の末端側12の方向に向かって増大する。絶縁チューブ1の末端部での望ましくない過剰な高電圧が、それ故に、大幅に減少される。
【0031】
液体作業媒体、好ましくはハイドロフルオロエーテルで満たされた蒸発器が、二つの金属接片2,2’の内の一つにバキューム・タイトな状態でフランジにより接続され、そして凝縮器が、他方の金属接片にバキューム・タイトな状態でフランジで接続されると言う事実の結果として、無視できる程に小さい漏洩速度及び長期間の安定性を備えた受動的な冷却要素が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、装置の側面図を示し、この装置において、本発明に基づくまさに一つの高電圧インシュレータが作り出される。
【図2】図2は、図1に示された高電圧インシュレータの絶縁チューブの斜視図を示す。
【図3】図3は、図2に示された絶縁チューブのベアリング・リングの形態の末端部分IIIの拡大図を示す。
【図4】図4は、接着剤が、高電圧インシュレータの絶縁チューブのベアリング・リングと金属接片の間に配置された接着ジョイントの中に注入されたときの、図1に示され高電圧インシュレータの下部の末端部分を通る軸Aに沿った部分の平面図を示す。
【図5】図5は、接着剤の注入の後での、図4に示された平面図を示す。
【図6】図6は、装置の一部が除去された状態の、図4に示された平面図を示し、この装置は、高電圧インシュレータを製造するための注入補助器具の形態である。
【符号の説明】
【0033】
A…軸、H…高電圧インシュレータ、V…製造装置、K…力、1…絶縁チューブ、2,2’…金属接片、3…クランプ装置、4…注入補助器具、10,10’…金属接片、11…スペーサ・カム、12…末端側、13…シール面、14…ストップ、15…キャビティ、16…接着領域、20,20’…フィールド電極、21…接着領域、22…ショルダー、30…ベース・プレート、31…スペーサ脚部、32…ネジ切りされたロッド、33…圧力バー、34…圧力ナット、40…液状接着剤、41…圧縮スペース、42…シリンダ・ベース、43…ピストン、44…凹部、45…閉鎖ナット、46…プランジャ、50…接着剤のチャネル、51…接着ジョイント、52…通気用開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧インシュレータ(H)であって:
ベアリング・リング(10)の形態の末端部を備えた絶縁チューブ(1)と;
前記ベアリング・リング(10)に保持された中空金属接片(2)と;
前記ベアリング・リング(10)の接着領域(16)と前記金属接片(2)の接着領域(21)の間に設けられ、硬化された接着層によりバキューム・タイトな状態で満たされた、接着ジョイント(51)と;
前記絶縁チューブ(1)の軸(A)に沿って引き伸ばされ、前記絶縁チューブ(1)及び前記金属接片(2)により径方向に境界が定められた、キャビティ(15)と;
を同軸の配置で含む高電圧インシュレータにおいて:
少なくとも一つの主として径方向にガイドされた接着剤のチャネル(50)が、前記キャビティ(15)と前記接着ジョイント(51)の間に配置され、
この接着剤のチャネル(50)は、硬化された接着剤でシールされ、且つ、その硬化された接着層の形成に先立って、未硬化の接着剤(40)を前記キャビティ(15)から前記接着ジョイント(51)の中にガイドするために十分な断面を有していること、
を特徴とする高電圧インシュレータ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のインシュレータ:
前記少なくとも一つの接着剤のチャネル(50)は、軸方向に整列された二つのスペーサ・カム(11)により、円周方向に境界が定められている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載のインシュレータ:
複数のスペーサ・カム(11)が設けられ、それらは、円周方向に互いに距離を隔てて配置され、且つ、それらの内のそれぞれ二つが、円周方向に、複数の接着剤のチャネル(50)の内の一つの境界を定める。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項2または3に記載のインシュレータ:
前記スペーサ・カム(11)が、前記ベアリング・リング(10)の末端側(12)の中に形成されている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のインシュレータ:
円筒状のシール面(13)が、前記ベアリング・リング(10)の中に形成され、このシール面(13)は、前記ベアリング・リング(10)により径方向に境界が定められ、前記少なくとも一つの接着剤のチャネル(50)と前記絶縁チューブ(1)のストップ(14)との間で、軸方向に引き伸ばされた前記キャビティ(15)の部分の周囲を取り囲む。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のインシュレータ:
前記接着ジョイント(51)は、外側で主として径方向にガイドされた少なくとも一つの通気用開口(52)に接続されている。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載のインシュレータ:
前記接着ジョイント(51)の断面が、前記少なくとも一つの接着剤のチャネル(50)と通気用チャネルとの間で、減少する。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項7に記載のインシュレータ:
前記ベアリング・リング(10)の接着領域(16)は、円錐形であって、且つ、前記少なくとも一つの接着剤のチャネル(50)と前記通気用開口(52)との間で拡大する。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載されたインシュレータ(H)を製造するための方法であって:
前記接着ジョイント(51)及び前記キャビティ(15)を形成するように、前記絶縁チューブ(1)及び前記金属接片(2)が、接合されること;
液状接着剤(40)を含む注入補助器具(4)が、前記キャビティ(15)の中にインストールされること;及び、
前記注入補助器具(4)を使用して、前記液状接着剤(40)が、圧縮スペース(41)の形態の前記キャビティ(15)の断面の中に圧入され、そして、前記少なくとも一つの接着剤のチャネル(50)を介して、前記圧縮スペース(41)から、前記接着ジョイント(51)の中に注入されること;
を特徴とする方法。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載の方法:
前記接着ジョイント(51)は、前記ベアリング・リング(10)の上に収縮された前記金属接片(2)により形成されている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項9または10に記載の方法:
前記注入装置(4)の組み込みの後に、前記金属接片(2)に接合されている前記絶縁チューブ(1)が、クランプ装置(3)の中にクランプされる。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項9から11のいずれか1項に記載の方法:
前記液状接着剤(40)は、円周方向に分布されて、前記接着ジョイント(51)の中に注入される。
【請求項13】
請求項9から12の何れか1項に記載された方法を実施するための装置(V)であって:
前記注入補助器具(4)は、ピストン/シリンダ圧縮装置の形態であって、圧縮スペース(41)及びピストン(43)を有し、
前記圧縮スペースは、前記液状接着剤(40)を収容するために適切にデザインされ、且つ、外側で前記ベアリング・リング(10)により、軸方向にシリンダ・ベース(42)により境界が定められ、
前記シリンダ・ベースは、前記金属接片(2)の中に固定され、
前記ピストン(43)は、前記ベアリング・リング(10)の中で軸方向に変位可能であること、
を特徴とする方法。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項13に記載の装置:
前記液状接着剤(40)を収容するための凹部(44)が、前記圧縮スペース(41)境界を定める前記ピストン(43)の側の中に形成されている。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項14に記載の装置:
外側から圧力が加えられることが可能であるプランジャ(46)が、前記凹部(44)から離れた前記ピストン(43)の側に支持されている。
【請求項16】
請求項1から8の何れか1項に記載された高電圧インシュレータを備えた冷却要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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